(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037588
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】流体制御機器用子局
(51)【国際特許分類】
G05D 16/20 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
G05D16/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141803
(22)【出願日】2020-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 勢太
【テーマコード(参考)】
5H316
【Fターム(参考)】
5H316AA20
5H316BB02
5H316DD13
5H316EE07
5H316FF01
5H316HH04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】信号の授受による流体制御機器の応答時間の遅延やノイズの影響を低減することや、適切なPIDパラメータの設定にかかる作業負担を軽減することが可能な流体制御機器用子局を提供する。
【解決手段】電空レギュレータ13と、電空レギュレータ13が出力する制御流体の目標圧力値を指令するための信号である指令目標値を出力するマスタ11と、電空レギュレータ13が出力する制御流体の圧力値を検知し、検知信号を出力する圧力センサ14と、から構成されるフィールドネットワーク1に用いられ、マスタ11と、電空レギュレータ13と、圧力センサ14との間の信号を中継する流体制御機器用子局12において、流体制御機器用子局12が、指令目標値と、検知信号に基づき、電空レギュレータ13のフィードバック制御を行うフィードバック制御演算部121Aを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体制御機器と、前記流体制御機器の出力の目標値を指令するための信号である指令目標値を出力するマスタと、前記流体制御機器の出力を検知し、検知信号を出力するセンサと、から構成されるフィールドネットワークに用いられ、前記マスタと、前記流体制御機器と、前記センサとの間の信号を中継する流体制御機器用子局において、
流体制御機器用子局が、前記指令目標値と、前記検知信号に基づき、前記流体制御機器のフィードバック制御を行うフィードバック制御演算部を備えること、
を特徴とする流体制御機器用子局。
【請求項2】
請求項1に記載の流体制御機器用子局において、
前記フィードバック制御はPID制御であり、前記流体制御機器用子局は、 PIDパラメータを設定するパラメータ設定部を備えること、
を特徴とする流体制御機器用子局。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体制御機器用子局において、
前記流体制御機器は電空レギュレータであること、
前記マスタは、前記指令目標値として、前記電空レギュレータが出力する制御流体の目標圧力値を指令すること、
前記センサは圧力センサであり、前記電空レギュレータが出力する制御流体の圧力値を検知すること、
前記フィードバック制御演算部は、前記圧力値を、前記目標圧力値に近づけるよう、前記電空レギュレータを制御すること、
を特徴とする流体制御機器用子局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御機器と、流体制御機器の制御を行うための指令信号を出力するマスタと、流体制御機器の出力を検知し、検知信号を出力するセンサと、から構成されるフィールドネットワークに用いられ、マスタと、流体制御機器と、センサとの間の信号を中継する流体制御機器用子局に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の材料として用いられるウエハには、高い平坦性、無汚染の表面が求められる。そのため、ウエハの製造工程においては、例えば、きわめて平滑な研磨面を得ることが可能な、化学的機械研磨法により、ウエハ表面の研磨が行われる。このウエハ表面の研磨は、例えば、回転される研磨パッドにウエハ表面を接触させることで行われる。この接触させる際の研磨パッドとウエハとの接触圧力の制御は、例えば空気圧により行われ、この空気圧の制御は、例えば、特許文献1に示すような、流体制御機器としての電空レギュレータにより行われる。
【0003】
電空レギュレータは、例えば、
図4に示す電空レギュレータ13のように、マスタ51と、流体制御機器用子局52と、圧力センサ14とによりフィールドネットワーク5を構成しており、フィードバック制御(PID制御)により制御される。
【0004】
マスタ51は、電空レギュレータ13が出力する圧力値の目標値としての指令目標値や、電空レギュレータ13の操作量として、フィードバック制御を行うためのフィードバック指令値の出力を行う。
【0005】
マスタ51は、電空レギュレータ13のフィードバック制御を行うためのフィードバック制御演算部51AおよびPIDパラメータを設定するためのパラメータ設定部51Bを備えている。また、マスタ51は、PIDパラメータ設定モードと、電空レギュレータ制御モードを有している。作業者がPIDパラメータ設定モードを選択すると、パラメータ設定部51BによりPIDパラメータが算出され、算出されたPIDパラメータをマスタ51に記憶させることが可能である。そして、電空レギュレータ制御モードを選択すると、フィードバック制御演算部51Aが、パラメータ設定部51Bにより算出されたPIDパラメータや、後述する圧力センサ14から出力される検知信号に基づいて、電空レギュレータ13が出力する圧力値が指令目標値に近づくよう、電空レギュレータ13へのフィードバック指令値を調整し、当該フィードバック指令値により電空レギュレータ13の制御を行う。さらにまた、マスタ51は、流体制御機器用子局52とデジタル信号線53により接続されており、マスタ51と流体制御機器用子局52とは、相互にデジタル信号の授受をすることが出来る。
【0006】
流体制御機器用子局52は、CPU521と、D/A変換部522と、A/D変換部523と、を備える。また、流体制御機器用子局52には、アナログ信号線54,55により、電空レギュレータ13および圧力センサ14が接続されている。これにより、流体制御機器用子局52は、電空レギュレータ13にアナログ電圧信号を送信することが出来、圧力センサ14から出力されるアナログ電圧信号を受信することが出来る。
【0007】
電空レギュレータ13は、制御流体をエアとする流体制御機器であり、流体制御機器用子局52からアナログ信号線55を介して送信される信号に基づき、出力するエアの圧力値を制御する。
【0008】
圧力センサ14は、電空レギュレータ13の出力ポートにおける圧力値を検知するものである。そして、検知した圧力値を、検知信号として出力を行う。この圧力センサ14は、電空レギュレータ13と一体とされるものでも良いし、電空レギュレータ13と別体であっても良い。
【0009】
以上のような構成のフィールドネットワーク5によれば、電空レギュレータ13の制御は以下のようにして行われる。
【0010】
まず、作業者は、まずマスタ51をPIDパラメータ設定モードとし、パラメータ設定部51Bにより、PIDパラメータを算出し、算出されたPIDパラメータをマスタ51に記憶させておく。
【0011】
そして、マスタ51を電空レギュレータ制御モードに切り替える。まず、マスタ51は、指令目標値を、流体制御機器用子局52に出力する。この指令目標値はデジタル信号であり、流体制御機器用子局52は、指令目標値を受けると、D/A変換部522により、指令目標値をアナログ電圧信号に変換し、電空レギュレータ13に出力する。電空レギュレータ13は、この指令目標値を受け、出力する圧力値の制御を開始する。
【0012】
そして、圧力センサ14は、電空レギュレータ13の出力ポートにおける圧力値を検知しており、その検知された結果を、検知信号として、アナログ信号線55を介して、流体制御機器用子局52に出力する。この検知信号はアナログ電圧信号である。
【0013】
流体制御機器用子局52は、圧力センサ14からの検知信号を受信すると、該検知信号を、A/D変換部523により、デジタル信号に変換する。そして、デジタル信号に変換された検知信号は、マスタ51に送信される。フィードバック制御演算部51Aが、検知信号および予め設定されたPIDパラメータに基づいて、電空レギュレータ13が出力する圧力値が目標値に近づくよう、電空レギュレータ13へのフィードバック指令値を調整し、調整されたフィードバック指令値を、デジタル信号線53を介して、流体制御機器用子局52に出力する。このフィードバック指令値はデジタル信号である。
【0014】
流体制御機器用子局52は、フィードバック指令値を受信すると、D/A変換部522により、フィードバック指令値をアナログ電圧信号に変換し、電空レギュレータ13に出力する。電空レギュレータ13は、このフィードバック指令値を受け、出力する圧力値の制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
圧力センサ14からの出力は、流体制御機器用子局52に送られ、さらにマスタ51に送られる。そして、この出力に基づいたフィードバック指令値が、マスタ51から流体制御機器用子局52に送られ、さらに電空レギュレータ13に送られる。このように信号の授受を行うに当たって、信号が経由する機器の個数が多いため、圧力センサ14の出力があってから、実際に電空レギュレータ13が出力する圧力値が変動するまでの応答時間に遅延が生じるおそれがある。また、信号が経由する機器の個数が多いと、信号の授受を行う際に、信号がノイズの影響を受ける可能性が高くなる。応答時間の遅延やノイズの影響は微少なものと考えられるが、特に、電空レギュレータ13がウエハの研磨装置に用いられる場合、ウエハ表面には極めて高い平坦性が要求されるため、微少な応答時間の遅延やノイズによる影響が、ウエハの品質に悪影響を与えるおそれがある。
【0017】
マスタ51に、複数の流体制御機器用子局52を並列して接続することで、複数の電空レギュレータ13を導入することが可能であるが、電空レギュレータ13を使用する現場において、複数ある電空レギュレータ13のそれぞれに対して、適切なPIDパラメータの設定を行わなければならない。PIDパラメータの設定には時間がかかるため、作業負担の軽減が望まれる。
【0018】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、信号の授受による流体制御機器の応答時間の遅延やノイズの影響を低減することや、適切なPIDパラメータの設定にかかる作業負担を軽減することが可能な流体制御機器用子局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の流体制御機器用子局は、次のような構成を有している。
【0020】
(1)流体制御機器と、流体制御機器の出力の目標値を指令するための信号である指令目標値を出力するマスタと、流体制御機器の出力を検知し、検知信号を出力するセンサと、から構成されるフィールドネットワークに用いられ、マスタと、流体制御機器と、センサとの間の信号を中継する流体制御機器用子局において、流体制御機器用子局が、指令目標値と、検知信号に基づき、流体制御機器のフィードバック制御を行うフィードバック制御演算部を備えること、を特徴とする。
【0021】
(1)に記載の流体制御機器用子局は、流体制御機器(例えば電空レギュレータ)と、流体制御機器の出力の目標値(例えば電空レギュレータが出力する制御流体の目標圧力値)を指令するための信号である指令目標値を出力するマスタと、流体制御機器の出力(例えば電空レギュレータが出力する制御流体の圧力値)を検知し、検知信号を出力するセンサ(例えば圧力センサ)と、から構成されるフィールドネットワークに用いられるものであり、指令目標値と、検知信号に基づき、流体制御機器のフィードバック制御を行うフィードバック制御演算部を備えている。したがって、流体制御機器用子局自身が、指令目標値と検知信号とに基づいて、流体制御機器の出力が指令目標値に近づくよう、流体制御機器のフィードバック制御を行うことが出来る。流体制御機器用子局自身がフィードバック制御を行うため、フィードバック制御を行うための信号の授受が行われるに当たり、信号が経由する機器の個数を従来よりも少なくすることが出来る。よって、センサから検知信号の出力があってから、実際に流体制御機器の出力が変動するまでの応答時間に遅延が生じるおそれが低減される。また、信号が経由する機器の個数が従来よりも少なくすることで、信号の授受を行う際に、信号がノイズの影響を受ける可能性が低減される。このような流体制御機器用子局を、例えばウエハの研磨装置に用いられる電空レギュレータに用いれば、微少な応答時間の遅延やノイズによる影響によるウエハの品質への悪影響を抑えることが可能である。
【0022】
(2)(1)に記載の流体制御機器用子局において、フィードバック制御はPID制御であり、流体制御機器用子局は、PIDパラメータを設定するパラメータ設定部を備えること、を特徴とする。
【0023】
(2)に記載の流体制御機器用子局によれば、作業効率の向上を図ることが出来る。例えば、半導体製造メーカが流体制御機器を用いる場合、マスタは半導体製造メーカの設備であり、流体制御機器用子局は、流体制御機器とともに流体制御機器メーカから調達されることが一般的である。このような中、流体制御機器用子局が、PIDパラメータを設定するパラメータ設定部を備えていれば、流体制御機器メーカは、例えば、半導体製造メーカが半導体の試作段階で決定したPIDパラメータを、出荷段階で流体制御機器用子局に設定した状態で、半導体製造メーカに納入することが出来る。すると、作業現場において流体制御機器が複数台導入される場合でも、流体制御機器のそれぞれに対して、個々にPIDパラメータを設定する必要がなくなるため、現場における作業負担の軽減を図ることが出来る。
【発明の効果】
【0024】
本発明の流体制御機器用子局は、上記構成を有することにより、信号の授受による流体制御機器の応答時間の遅延やノイズの影響を低減することや、適切なPIDパラメータの設定にかかる作業負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態に係る流体制御機器用子局を用いて構成したフィールドネットワークの構成を表すブロック図である。
【
図2】フィールドネットワークに用いる電空レギュレータの回路図である。
【
図3】流体制御機器用子局の動作フローを表す図である。
【
図4】従来技術に係るフィールドネットワークの構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の流体制御機器用子局の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る流体制御機器用子局12を用いて構成したフィールドネットワーク1の構成を表すブロック図である。
図2は、フィールドネットワーク1に用いる電空レギュレータ13の回路図である。
【0027】
図1に示すフィールドネットワーク1は、例えば、半導体の材料であるウエハの研磨装置に用いられる。フィールドネットワーク1は、親局としてのマスタ11と、子局としての流体制御機器用子局12とが、例えばCC-Link(登録商標)により接続されているシステムであり、さらに流体制御機器用子局12に接続される電空レギュレータ(流体制御機器の一例)13と、圧力センサ(センサの一例)14と、から構成されている。このようなフィールドネットワーク1によって、電空レギュレータ13のフィードバック制御(PID制御)を行うことが出来る。
【0028】
マスタ11は、例えばプログラマブルロジックコントローラ(PLC)であり、信号を入出力することでフィールドネットワーク1全体の管理等を行うユニットである。電空レギュレータ13が出力する制御流体の目標圧力値として、指令目標値の出力を行う。
【0029】
また、マスタ11は、流体制御機器用子局12とデジタル信号線15により接続されており、マスタ11と流体制御機器用子局12とは、相互にデジタル信号の授受をすることが出来る。
【0030】
流体制御機器用子局12は、CPU121と、D/A変換部122と、A/D変換部123とを備える。また、CPU121は、電空レギュレータ13のフィードバック制御を行うためのフィードバック制御演算部121Aと、PIDパラメータを算出し、算出したPIDパラメータを流体制御機器用子局12に記憶させるパラメータ設定部121Bとを有する。
【0031】
流体制御機器用子局12は、PIDパラメータ設定モードと、電空レギュレータ制御モードを有している。作業者がPIDパラメータ設定モードを選択すると、流体制御機器用子局12は、パラメータ設定部121Bにより、電空レギュレータ13をフィードバック制御するためのPIDパラメータを算出し、記憶することが可能である。そして、電空レギュレータ制御モードを選択すると、流体制御機器用子局12は、フィードバック制御演算部51Aにより、電空レギュレータ13が出力する圧力値がマスタ11から受信した指令目標値に近づくよう、電空レギュレータ13へのフィードバック指令値を調整する。このフィードバック指令値の調整は、パラメータ設定部51Bにより算出されたPIDパラメータや、後述する圧力センサ14から出力される検知信号に基づいて行われる。
【0032】
また、D/A変換部122は、デジタル信号をアナログ電圧信号に変換するものである。さらにまた、A/D変換部123は、アナログ電圧信号をデジタル信号に変換するものである。
【0033】
流体制御機器用子局12には、アナログ信号線16により、電空レギュレータ13が接続されている。より具体的には、電空レギュレータ13は、流体制御機器用子局12のD/A変換部122と、アナログ信号線16により接続されている。これにより、流体制御機器用子局12は、マスタ11から出力される指令目標値や、フィードバック制御演算部121Aにより調整されたフィードバック指令値を、D/A変換部122によってアナログ電圧信号に変換した上で、電空レギュレータ13に送信することが出来る。
【0034】
また、流体制御機器用子局12には、アナログ信号線17により、圧力センサ14が接続されている。より具体的には、圧力センサ14は、流体制御機器用子局12のA/D変換部123と、アナログ信号線17により接続されている。これにより、流体制御機器用子局12は、圧力センサ14から出力されるアナログ電圧信号を、A/D変換部123によってデジタル信号に変換した上で、受信することが出来る。
【0035】
電空レギュレータ13は、制御流体をエアとする流体制御機器であり、流体制御機器用子局12からアナログ信号線55を介して送信されるフィードバック指令値に基づき、出力するエアの圧力値を、約100Kpa~500Kpaの間で制御する。
【0036】
電空レギュレータ13は、ウエハ研磨装置において、ウエハ表面を研磨パッドに接触させる際の接触圧力の調整に用いられるものである。電空レギュレータ13は、
図2に示すように、制御回路138と、制御回路138により制御される給気用制御弁132および排気用制御弁133と、給気用制御弁132および排気用制御弁133により動作される主弁部134と、制御流体を入力する入力ポート131と、制御流体を出力する出力ポート137と、からなる。
【0037】
入力ポート131は入力流路139を介して、出力ポート137は出力流路140を介して、それぞれ主弁部134に連通している。入力ポート131は、制御流体(例えばエア)の供給源に接続されており、制御流体の供給がされる。主弁部134は図示しない弁体と弁座を備えており、該弁体と該弁座が当接離間することで、出力ポート137から出力される制御流体の圧力値を調整する。この制御流体の圧力値の調整は、マスタ11から出力される指令目標値や、流体制御機器用子局12から出力されるフィードバック指令値に基づき調整されるものであり、制御流体の圧力値が調整されることで、ウエハ研磨装置において、ウエハ表面を研磨パッドに接触させる際の接触圧力の調整が行われる。
【0038】
給気用制御弁132は、入力流路139を介して入力ポート131に接続され、流路142を介して主弁部134のパイロット室(図示せず)に接続されている。給気用制御弁132は、パイロット室へ給気を行うことで、主弁部134を動作させ、入力ポート131に入力される制御流体の、出力ポート137における出力圧力値を制御する。
【0039】
排気流路141は、給気用制御弁132と主弁部134との間で流路142から分岐し、大気に開放された排気ポート135に接続されている。排気流路141には、排気用制御弁133が配設されている。この排気用制御弁133は、主弁部134のパイロット室から流路142を介して排気ポート135に排気する制御流体を制御する。
【0040】
制御回路138は、給気用制御弁132と排気用制御弁133に、それぞれ電気的に接続されている。制御回路138は、流体制御機器用子局12に接続されており、指令目標値やフィードバック指令値を、アナログ電圧信号として受信する。制御回路18は、受信した指令目標値やフィードバック指令値に基づいて、給気用制御弁132または排気用制御弁133の開閉を制御し、主弁部134動作させることで、入力ポート131に入力される制御流体の、出力ポート137における圧力値を調整する。
【0041】
圧力センサ14は、電空レギュレータ13の出力流路140に接続されている。これにより、圧力センサ14は、常時、出力ポート137における制御流体の圧力値を検知することが出来る。検知された圧力値は、検知信号として、アナログ信号線17を介して流体制御機器用子局12に出力される。この圧力センサ14は、
図2においては、電空レギュレータ13と別体とされているが、電空レギュレータ13と一体とされるものであっても良い。
【0042】
以上のような構成のフィールドネットワーク1において、流体制御機器用子局12は、以下のようにして電空レギュレータ13の制御を行う。
図3は、流体制御機器用子局12の動作フローを表す図である。
【0043】
まず、電空レギュレータ13のフィードバック制御を行うためのPIDパラメータを設定するため、作業者は、流体制御機器用子局12をPIDパラメータ設定モードとしておく。流体制御機器用子局12を動作させると、まず、流体制御機器用子局12は、マスタ11から指令目標値を受信する(S11)。そして、次に、流体制御機器用子局12は、PIDパラメータ設定モードか、電空レギュレータ制御モードのどちらに設定されているかを判断する(S12)。PIDパラメータ設定モードとされていると判断されれば、パラメータ設定部51Bが動作される(S12:設定モード)。そして、流体制御機器用子局12は、パラメータ設定部51Bにより、電空レギュレータ13の出力する圧力値をマスタ11から受信した指令目標値に近づけるために適切なPIDパラメータを算出し、算出したPIDパラメータを記憶する(S16)。
【0044】
PIDパラメータを設定した上、電空レギュレータ13の制御を行う場合には、流体制御機器用子局12を電空レギュレータ制御モードに切り替える。流体制御機器用子局12を電空レギュレータ制御モードに切り替えると、フィードバック制御演算部が動作される(S11:制御モード)。そして、流体制御機器用子局12は、圧力センサ14の検知信号を、アナログ信号線55を介して、受信する(S13)。この検知信号は、アナログ電圧信号であるため、A/D変換部123によりデジタル信号に変換された上、フィードバック制御に用いられる。そして、フィードバック制御演算部121Aが、デジタル信号に変換された検知信号と、予め設定されたPIDパラメータに基づいて、電空レギュレータ13が出力する圧力値が、マスタ11から受信した指令目標値に近づくよう、電空レギュレータ13へのフィードバック指令値を調整する(S13)。このフィードバック指令値は、デジタル信号であるため、流体制御機器用子局12は、フィードバック指令値を、D/A変換部122によりデジタル信号に変換した上、電空レギュレータ13に出力する(S15)。電空レギュレータ13の制御回路138は、このフィードバック指令値を受け、出力する圧力値の制御を行う。
【0045】
なお、上記実施形態においては、マスタ11に対して、1台の流体制御機器用子局12を接続し、1台の電空レギュレータ13の制御を行っているが、マスタ11に対して、複数台の流体制御機器用子局12を接続することで、複数台の電空レギュレータ13の制御を行うことが可能である。複数台の流体制御機器用子局12を用いる場合、例えば、半導体の試作段階などにおいて、1台目の流体制御機器用子局12で設定したPIDパラメータを、2台目以降の流体制御機器用子局12に、出荷される段階で設定しておけば、半導体の生産現場で、2台目以降の流体制御機器用子局12に個々にPIDパラメータを設定する必要が無い。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の流体制御機器用子局12によれば、
(1)流体制御機器(例えば電空レギュレータ13)と、流体制御機器(電空レギュレータ13)の出力の目標値(例えば電空レギュレータ13が出力する制御流体の目標圧力値)を指令するための信号である指令目標値を出力するマスタ11と、流体制御機器の出力(例えば電空レギュレータ13が出力する制御流体の圧力値)を検知し、検知信号を出力するセンサ(例えば圧力センサ14)と、から構成されるフィールドネットワーク1に用いられ、マスタ11と、流体制御機器(電空レギュレータ13)と、センサ(圧力センサ14)との間の信号を中継する流体制御機器用子局12において、流体制御機器用子局12が、指令目標値と、検知信号に基づき、流体制御機器(電空レギュレータ13)のフィードバック制御を行うフィードバック制御演算部121Aを備えること、を特徴とする。
【0047】
(1)に記載の流体制御機器用子局12よれば、流体制御機器用子局12自身が、指令目標値と検知信号とに基づいて、流体制御機器(電空レギュレータ13)の出力が指令目標値に近づくよう、流体制御機器(電空レギュレータ13)のフィードバック制御を行うことが出来る。流体制御機器用子局12自身がフィードバック制御を行うため、フィードバック制御を行うための信号の授受が行われるに当たり、信号が経由する機器の個数を従来よりも少なくすることが出来る。よって、センサ(圧力センサ14)から検知信号の出力があってから、実際に流体制御機器(電空レギュレータ13)の出力(圧力値)が変動するまでの応答時間に遅延が生じるおそれが低減される。また、信号が経由する機器の個数が従来よりも少なくすることで、信号の授受を行う際に、信号がノイズの影響を受ける可能性が低減される。このような流体制御機器用子局12を、例えばウエハの研磨装置に用いられる電空レギュレータ13に用いることで、微少な応答時間の遅延やノイズによる影響によるウエハの品質への悪影響を抑えることが可能である。
【0048】
(2)(1)に記載の流体制御機器用子局12において、フィードバック制御はPID制御であり、流体制御機器用子局12は、PIDパラメータを設定するパラメータ設定部121Bを備えること、を特徴とする。
【0049】
(2)に記載の流体制御機器用子局12によれば、作業効率の向上を図ることが出来る。例えば、半導体製造メーカが流体制御機器(例えば電空レギュレータ13)を用いる場合、マスタ11は半導体製造メーカの設備であり、流体制御機器用子局12は、流体制御機器(電空レギュレータ13)とともに流体制御機器メーカから調達されることが一般的である。このような中、流体制御機器用子局12が、PIDパラメータを設定するパラメータ設定部121Bを備えていれば、流体制御機器メーカは、例えば、半導体製造メーカが半導体の試作段階で決定したPIDパラメータを、出荷段階で流体制御機器用子局12に設定した状態で、半導体製造メーカに納入することが出来る。すると、作業現場において流体制御機器(電空レギュレータ13)が複数台導入される場合でも、流体制御機器(電空レギュレータ13)のそれぞれに対して、個々にPIDパラメータを設定する必要がなくなるため、現場における作業負担の軽減を図ることが出来る。
【0050】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、流体制御機器として電空レギュレータ13を挙げているが、その他の流体制御機器でも良い。また、センサとして圧力センサ14を挙げているが、これに限定されない。
【符号の説明】
【0051】
1 フィールドネットワーク
11 マスタ
12 流体制御機器用子局
13 電空レギュレータ(流体制御機器の一例)
14 圧力センサ(センサの一例)
121A フィードバック制御演算部
121B パラメータ設定部