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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037596
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】トルクセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
G01L3/10 317
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141817
(22)【出願日】2020-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 清和
(57)【要約】
【課題】分解能を担保しつつ、低コスト化を実現すること。
【解決手段】トルクセンサは、センサ部と、弾性体と、検出部とを備える。センサ部は、アクチュエータの回転体である出力部のうち、回転中心から第1の距離に位置する円環状の第1の領域の回転位置と、回転中心から第1の距離よりも長い第2の距離に位置する円環状の第2の領域の回転位置とを検出する。だ弾性体は、第1の領域と、第2の領域との間に設けられる。検出部は、センサ部による検出結果に基づいて出力部に加わるトルクを検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの回転体である出力部のうち、回転中心から第1の距離に位置する円環状の第1の領域の回転位置と、回転中心から前記第1の距離よりも長い第2の距離に位置する円環状の第2の領域の回転位置とを検出するセンサ部と、
前記第1の領域と、前記第2の領域との間に設けられる弾性体と、
前記センサ部による検出結果に基づいて、前記出力部に加わるトルクを検出する検出部と、
を備えるトルクセンサ。
【請求項2】
前記センサ部は、
前記第1の領域の回転位置を検出する第1のセンサと、前記第2の領域の回転位置を検出する第2のセンサとを有する
請求項1に記載のトルクセンサ。
【請求項3】
前記第1の領域に設けられる第1の位置検出用パターンと、
前記第2の領域に設けられる第2の位置検出用パターンと、
をさらに有し、
前記第1のセンサは、
前記第1の位置検出用パターンを検出することで、前記第1の領域の回転位置を検出し、
前記第2のセンサは、
前記第2の位置検出用パターンを検出することで、前記第2の領域の回転位置を検出する
請求項2に記載のトルクセンサ。
【請求項4】
前記検出部は、
前記第1の領域の回転位置と、前記第2の領域の回転位置との位相差に基づいて、前記トルクを検出する
請求項1に記載のトルクセンサ。
【請求項5】
前記弾性体は、
前記弾性体を構成する部材の一部を加工することにより構成される
請求項1に記載のトルクセンサ。
【請求項6】
前記弾性体は、
前記回転中心を基準として周方向に延伸する曲線状の切欠き部を有する
請求項5に記載のトルクセンサ。
【請求項7】
前記弾性体は、
互いに重複しない位置に、前記回転中心を基準として延伸方向が異なる複数の前記切欠き部を有する
請求項6に記載のトルクセンサ。
【請求項8】
前記弾性体は、
前記切欠き部に挿入された緩衝材を有する
請求項6に記載のトルクセンサ。
【請求項9】
前記弾性体は、
非接触のぜんまいばねで構成される
請求項1に記載のトルクセンサ。
【請求項10】
前記アクチュエータの出力側がオルダムタイプのカップリングを用いて、他の部材と連結される
請求項1に記載のトルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、労働力人口の減少に伴い、人間と同一の空間で作業にあたる協働ロボットの活躍が期待されている。協働ロボットは、人間と同一の空間で作業することから、その作業能力のみならず、動作の安全性が求められる。例えば、協働ロボットを安全に動作させるため、協働ロボットには、外部との接触や干渉等による外力を正確に検出することを目的として、予めキャリブレーションされたトルクセンサを搭載するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-103507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トルクセンサは製品として高価であり、協働ロボットに搭載する際のコスト負担が問題となっている。例えば、トルクセンサの製造プロセスにおいて、ひずみゲージを利用する点がトルクセンサを高価にしている要因の1つとなっている。
【0005】
そこで、本開示では、センサとしてのトルク分解能を担保しつつ、低コスト化を実現するトルクセンサを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示に係る一形態のトルクセンサは、センサ部と、弾性体と、検出部とを備える。センサ部は、アクチュエータの回転体である出力部のうち、回転中心から第1の距離に位置する円環状の第1の領域の回転位置と、回転中心から第1の距離よりも長い第2の距離に位置する円環状の第2の領域の回転位置とを検出する。弾性体は、第1の領域と、第2の領域との間に設けられる。検出部は、センサ部による検出結果に基づいて、出力部に加わるトルクを検出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示に係るトルクセンサの概要を説明するための模式図である。
図2】本開示の実施形態に係るアクチュエータの断面図である。
図3】本開示の実施形態に係る装置の各部を回転軸方向に沿って分解して示す斜視図である。
図4】本開示の実施形態に係る装置の各部を回転軸方向に沿って分解して示す斜視図である。
図5】本開示の実施形態に係る起歪体の外観構成を詳細に示す三面図である。
図6図5のVI-VI線断面を一部に示す斜視図である。
図7図5のVII-VII線断面を一部に示す斜視図である。
図8】変形例に係る切欠き部の構成例を示す図である。
図9】変形例に係る切欠き部の構成例を示す図である。
図10】変形例に係る緩衝材の挿入例を示す図である。
図11】変形例に係る出力部の連結方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、同一の部位には同一の数字又は符号を付することにより重複する説明を省略する場合がある。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の数字又は符号の後に異なる数字又は符号を付して区別する場合もある。
【0009】
また、以下に示す項目順序に従って本開示を説明する。
1.本開示に係る技術の概要
2.装置構成例
3.変形例
4.むすび
【0010】
<<1.本開示に係る技術の概要>>
本開示に係る技術の概要について説明する。本開示は、アクチュエータに搭載されるトルクセンサに関するものである。
【0011】
本開示の実施形態に係るトルクセンサは、いわゆる位相差式のトルクセンサである。本開示のトルクセンサは、センサ部と、弾性体と、検出部とを備える。センサ部は、アクチュエータの回転体である出力部のうち、回転中心から第1の距離に位置する円環状の第1の領域の回転位置と、回転中心から第1の距離よりも長い第2の距離に位置する円環状の第2の領域の回転位置とを検出する。弾性体は、第1の領域と、第2の領域との間に設けられる。検出部は、センサ部による検出結果に基づいて、出力部に加わるトルクを検出する。以下、図1を用いて、本開示のトルクセンサの概要について具体的に説明する。図1は、本開示に係るトルクセンサの概要を説明するための模式図である。
【0012】
本開示の実施形態に係るトルクセンサ200(以下、適宜「トルクセンサ200」と称する。)は、アクチュエータの回転体である出力部20に接続される。トルクセンサ200は、例えば、アクチュエータのモータの動力により、出力部20と同期して、回転中心Cを通る回転軸周りに周方向(矢印drで示す方向)に回転する。
【0013】
図1に示すように、トルクセンサ200は、起歪体210と、センサ部222と、検出部223とを備える。起歪体210の外観は、平面視で真円状の円形である。起歪体210は、モータの出力側に対応する第1出力部211と、アクチュエータの出力側に対応する第2出力部212と、第1出力部211から第2出力部212に対してモータの動力を伝達する弾性部213とを備える。
【0014】
弾性部213は、弾性体として機能する。弾性部213は、少なくとも、アクチュエータの回転中心Cから第1の距離d(モータの出力側)に位置する円環状の第1の領域Aと、回転中心Cから第2の距離d(>d)(アクチュエータの出力側)に位置する円環状の第2の領域Aとの間に設けられる。
【0015】
また、センサ部222は、出力部20(起歪体210)のうち、第1の領域Aの回転位置Pと、第2の領域Aの回転位置Pとを検出する。検出部223は、センサ部222による検出結果に基づいて、出力部20に加わるトルクを検出する。具体的には、検出部223は、予めキャリブレーションを行って、回転位置Pと回転位置Pとの間に生じる位置の差に対応する初期位相差θ12を記録する。そして、検出部223は、出力部20に外力が作用した時に検出される回転位置Pと回転位置Pとの間に生じる位置の差を、初期位相差θ12と比較することによりトルクを検出できる。
【0016】
このように、本開示のトルクセンサ200は、ひずみゲージを用いることなく、センサとしてのトルク分解能を担保しつつ、低コスト化を実現する。
【0017】
<2.装置構成例>
以下、本開示の実施形態に係る装置構成例について説明する。図2は、本開示の実施形態に係るアクチュエータの断面図である。図2は、本開示の実施形態に係るトルクセンサ200が搭載されるアクチュエータ1を、アクチュエータ1の回転軸を含む平面のうち、鉛直方向の平面に沿って切断した切断面を示している。また、図3及び図4は、本開示の実施形態に係る装置の各部を回転軸方向に沿って分解して示す斜視図である。
【0018】
図2に示すように、アクチュエータ1は、モータ部10と、出力部20とを備える。モータ部10は、回転軸を駆動させる動力源であるギアードモータを固定するギアードモータ固定部11と、ギアードモータによる動力を出力するギアードモータ出力部12とを備えて構成される。
【0019】
また、出力部20には、図3又は図4に示すように、トルクセンサ200が接続される。トルクセンサ200は、起歪体210と、機能部220とを有して構成される。
【0020】
起歪体210は、所定の厚みを有する円板状であり、第1出力部211と、第2出力部212と、弾性部213とを備えて構成される。
【0021】
第1出力部211は、アクチュエータ1のギアードモータ出力部12に接続される。第2出力部212は、アクチュエータ1の出力側に対応する。例えば、アクチュエータ1が協働ロボットのひじ関節部分に設置される場合、第2出力部212は、前腕を構成する部材に接続される。
【0022】
弾性部213は、第1出力部211から第2出力部212に対して、アクチュエータ1の動力を伝達する。図5は、本開示の実施形態に係る起歪体の外観構成を詳細に示す三面図である。図5は、左から順に、起歪体210の正面210FP、右側面210SP、及び背面210BPを示している。図6は、図5のVI-VI線断面を一部に示す斜視図である。図7は、図5のVII-VII線断面を一部に示す斜視図である。
【0023】
弾性部213は、例えば、図5図7に示すように、回転中心Cを軸として周方向(矢印drで示す方向)に延伸する曲線状の切欠き部SLαを有する。切欠き部SLαは、起歪体210を構成する金属の円板に対して、円板の中心部から外周部に向かって時計回りに渦巻き状のレーザ加工を施すことにより、弾性部213の内部に形成される。これにより、弾性部213は、アクチュエータ1の動力や、出力部20に対する外力に対して柔軟に応答する。起歪体210は、弾性部213を歪ませながら、第1出力部211から第2出力部212に対してアクチュエータ1の動力を伝達させる。
【0024】
起歪体210は、切欠き部SLαを有する弾性部213により、第1出力部211と第2出力部212とを接続することにより、ばね全長を大きくすることができる。これにより、起歪体210に幅広い柔軟性を持たせることができる。切欠き部SLαを有する弾性部213をばねと見立てたときのばね定数は、例えば、以下の式(1)で表現される。式(1)において、「E」は、縦弾性係数を示し、「b」は、ばねの幅を示し、「t」は、ばねの厚さを示し、「L」は、ばねの全長を示す。
【0025】
【数1】
【0026】
また、図3図5、又は図7に示すように、トルクセンサ200の機能部220は、エンコーダディスク221と、センサ部222と、検出部223とを備えて構成される。エンコーダディスク221は、アクチュエータ1のモータ部10の出力側に対応する位置に設けられる第1のエンコーダディスク221aと、アクチュエータ1の出力側に対応する位置に設けられる第2のエンコーダディスク221bとで構成される。
【0027】
第1のエンコーダディスク221a及び第2のエンコーダディスク221bは、それぞれ、起歪体210(出力部20)のうち、起歪体210の背面210BP(モータ部10側の面)に設置される。
【0028】
第1のエンコーダディスク221aの内径は、アクチュエータ1の回転中心Cから第1の距離dに一致する。これにより、第1のエンコーダディスク221aの中心と回転中心Cと合わせて、第1のエンコーダディスク221aを設置したとき、第1のエンコーダディスク221aは、モータ部10の出力側に対応する位置(第1の領域A)に配置される。第1のエンコーダディスク221aには、第1のセンサ222aが読み取り可能な位置検出用パターンが設けられる。第1のエンコーダディスク221aに設けられる位置検出用パターンは、第1の領域Aに設けられる第1の位置検出用パターンとして機能する。
【0029】
また、第2のエンコーダディスク221bの内径は、アクチュエータ1の回転中心Cから第2の距離dに一致する。これにより、第2のエンコーダディスク221bの中心と回転中心Cと合わせて、第2のエンコーダディスク221bを設置したとき、第2のエンコーダディスク221bは、アクチュエータ1の出力側に対応する位置(第2の領域A)に配置される。第2のエンコーダディスク221bには、第2のセンサ222bが読み取り可能な位置検出用パターンが設けられる。第2のエンコーダディスク221bに設けられる位置検出用パターンは、第2の領域Aに設けられる第2の位置検出用パターンとして機能する。なお、トルクセンサ200は、エンコーダディスク221を搭載する例に限定される必要はなく、第1の領域Aの回転位置及び第2の領域Aの回転位置を検出可能な位置検出パターンを、起歪体210の背面210BP(モータ部10側の面)に直接設けてもよい。
【0030】
センサ部222は、位置検出用のエンコーダIC(Integrated Circuit)である。センサ部222は、モータ部10の出力側(出力部20の内周側)に設置される第1のセンサ222aと、アクチュエータ1の出力側(出力部20の外周側)に設置される第2のセンサ222bとを備える。
【0031】
第1のセンサ222aは、第1のエンコーダディスク221a(の位置検出パターン)を読み取ることにより、アクチュエータ1の回転中心Cから第1の距離d(モータの出力側)に位置する円環状の第1の領域Aの回転位置(例えば、回転位置P)を検出する。第2のセンサ222bは、第2のエンコーダディスク221b(の位置検出パターン)を読み取ることにより、アクチュエータ1の回転中心Cから第2の距離d(モータの出力側)に位置する円環状の第2の領域Aの回転位置(例えば、回転位置P)を検出する。第1のセンサ222a及び第2のセンサ222bは、異方性磁気抵抗センサ等の磁気式のセンサや、光学変位センサなどの光学式のセンサや、渦電流型変位センサ等の誘導電流式のセンサ等により実現できる。
【0032】
検出部223は、センサ部222に対応するエンコーダIC等と共にエンコーダ基板に設置されるトルク検出用のICである。検出部223は、センサ部222による検出結果に基づいて、出力部20に加わるトルクを検出する。検出部223により検出されるトルクは、以下の式(2)により算出される。
【0033】
トルク(Torque)=((θ-θ)+θoffset)×Gain(CW,CCW)・・・(2)
【0034】
前述の式(2)において、「θoffset」は、無負荷時(重力加速度のみが作用している時)においてセンサ部222により検出されるセンサ値の差分を示す。また、前述の式(2)において、「θ」は、モータ部10の出力側(出力部20の内周側)に設置される第1のセンサ222aにより検出されるセンサ値を示す。また、前述の式(2)において、「θ」は、アクチュエータ1の出力側(出力部20の外周側)に設置される第2のセンサ222bにより検出されるセンサ値を示す。また、以下の式(2)において、「Gain CW」は、CW(Clock Wise)方向(時計回り方向)の起歪体210の感度を示す。また、以下の式(2)において、「Gain CCW」は、CCW(Counter Clock Wise)方向(反時計回り方向)の起歪体210の感度を示す。「θoffset」、「Gain CW」及び「Gain CCW」は、事前にキャリブレーションを実行して予め計測される。
【0035】
起歪体210は、弾性部213を歪ませながら、第1出力部211から第2出力部212に対して、アクチュエータ1の動力を伝達する。このため、第1出力部211と、第2出力部212との間に位相差(回転位置のずれ)が生じる。また、アクチュエータ1の動作中に出力部20が外力を受けた場合にも、起歪体210が備える弾性部213が歪み、第1出力部211と、第2出力部212との間に位相差(回転位置のずれ)が生じる。検出部223は、アクチュエータ1が外力を受けていない無負荷時の位相差を予め計測しておくことにより、アクチュエータ1が外力を受けた時のトルクを検出できる。具体的に、前述の式(2)に示すように、アクチュエータ1が外力を受けていない無負荷時の位相差に対応する「θoffset」と、アクチュエータ1が外力を受けている時のアクチュエータ1の出力側(出力部20の外周側)とモータ部10の出力側(出力部20の内周側)との差に対応する「θ-θ」基づいて、トルクを算出できる。なお、センサ部222による位置検出と、検出部223によるトルク検出は同一のICが処理してもよい。
【0036】
<<3.変形例>>
<3-1-1.弾性部のバリエーション(1)>
弾性部213の他の構成例について説明する。図8は、変形例に係る切欠き部の構成例を示す図である。
【0037】
上記実施形態では、起歪体210を構成する金属の円板に対して、レーザーカットにより円板の中心部から外周部に向かって時計回りに渦巻き状の一筆書き加工を施すことにより、弾性部213に切欠き部SLαを設ける例を説明した。この例には特に限定される必要はなく、弾性部213は、互いに重複しない位置に、回転中心Cを基準として、延伸方向が異なる複数の切欠き部を有してもよい。例えば、図8に示すように、弾性部213は、互いに重複しない位置に、切欠き部SLRと、切欠き部SLLとを有してもよい。切欠き部SLRは、起歪体210を構成する金属の円板に対して、円板の中心部から外周部に向かって加工始点SPRから加工終点EPRまで時計回りに渦巻き状のレーザ加工を施すことにより、弾性部213の内部に形成される。また、切欠き部SLLは、起歪体210を構成する金属の円板に対して、円板の中心部から外周部に向かって加工始点SPLから加工終点EPLまで時計回りに渦巻き状のレーザ加工を施すことにより、弾性部213の内部に形成される。
【0038】
なお、時計回り方向の切欠き部SLRと、反時計回り方向の切欠き部SLLとを1枚の円板に加工して起歪体210を構成する例には限定されない。例えば、時計回り方向の切欠き部SLRを有する円板と、反時計回り方向の切欠き部SLLを有する円板とを、回転軸方向に重ね合わせて起歪体210を構成してもよい。
【0039】
<3-1-2.弾性部のバリエーション(2)>
また、弾性部213は、上記実施形態で説明した切欠き部SLや、図8に示す例とは異なる形状を有してもよい。図9は、変形例に係る切欠き部の構成例を示す図である。図9に示すように、弾性部213は、起歪体210を構成する部材の一部を加工することにより、複数の切欠き部SLβを有してもよい。
【0040】
<3-1-2.弾性部のバリエーション(3)>
また、弾性部213は、起歪体210を加工することにより構成する例には限定されない、例えば、起歪体210が備える弾性部213の箇所に、ぜんまいばねを採用してもよい。これにより、トルクセンサ200の量産する際の更なるコストカット効果を期待できる。
【0041】
<3-2.緩衝材>
また、上記実施形態及び変形例において、切欠き部SLに緩衝材BMを挿入してもよい。図10は、変形例に係る緩衝材の挿入例を示す図である。図10に示すように、弾性部13が有する切欠き部SLの全周に渡って緩衝材BMを挿入する。緩衝材には、シリコンゴムやエラストマーなどを採用できる。これにより、ダンパー効果を期待できる。
【0042】
<3-3.アクチュエータの出力側の連結方法>
図11は、変形例に係る出力部の連結方法の一例を示す図である。図11に示すように、上記実施形態及び変形例において、アクチュエータ1の出力側がオルダムタイプのカップリング30を用いて、他の部材と連結されるようにしてもよい。これにより、起歪体210が弾性部213を有することにより発生し得る軸心のずれを吸収できる。
【0043】
<3-4.画像処理によるトルクの検出>
上記実施形態及び変形例において、トルクセンサ200は、起歪体210が備える弾性部213の切欠き部SLの間隔を撮像した画像を取得し、取得した画像からトルクを検出してもよい。このとき、トルクセンサ200は、エンコーダディスク221及びセンサ部222の代わりに、弾性部213に設けられた切欠き部SLの間隔を撮像可能な撮像部と、撮像部により取得された画像を認識する画像認識部を備えればよい。画像認識部は、例えば、切欠き部SLの画像を入力して、アクチュエータ1(出力部20)に加わるトルクの推定値を出力する学習済みモデルを用いるように構成できる。学習済みモデルは、CNN(Convolutional Neural Network)など、機械学習に用いられる任意の学習アルゴリズムを用いて生成できる。
【0044】
<<4.むすび>>
本開示の実施形態に係るトルクセンサ200は、センサ部222と、弾性体である起歪体210と、検出部223とを備える。センサ部222は、アクチュエータ1の回転体である出力部20のうち、回転中心Cから第1の距離dに位置する円環状の第1の領域Aの回転位置(例えば、回転位置P)と、回転中心Cから第1の距離dよりも長い第2の距離dに位置する円環状の第2の領域Aの回転位置(例えば、回転位置P)とを検出する。弾性体である起歪体210は、第1の領域Aと、第2の領域Aとの間に設けられる。検出部223は、センサ部222による検出結果に基づいて、出力部20に加わるトルクを検出する。
【0045】
このようなことから、トルクセンサ200は、ひずみゲージを用いることなく、センサのトルク分解能を担保しつつ、低コスト化を実現する。
【0046】
また、トルクセンサ200のセンサ部222は、第1の領域Aの回転位置(例えば、回転位置P)を検出する第1のセンサ222aと、第2の領域Aの回転位置(例えば、回転位置P)を検出する第2のセンサ222bとを有する。これにより、第1の領域Aの回転位置と、第2の領域Aの回転位置とを精度よく検出できる。
【0047】
また、トルクセンサ200は、第1の領域Aに設けられる第1の位置検出用パターンとして機能する第1のエンコーダディスク221aと、第2の領域Aに設けられる第2の位置検出用パターンとして機能する第2のエンコーダディスク221bとをさらに有する。第1のセンサ222aは、第1の位置検出用パターンとして機能する第1のエンコーダディスク221aを検出することで、第1の領域Aの回転位置(例えば、回転位置P)を検出する。第2のセンサ222bは、第2の位置検出用パターンとして機能する第2のエンコーダディスク221bを検出することで、第2の領域Aの回転位置(例えば、回転位置P)を検出する。これにより、簡易な構成で、第1の領域Aの回転位置と、第2の領域Aの回転位置とを検出できる。
【0048】
また、トルクセンサ200の検出部223は、第1の領域A1の回転位置P1と、第2の領域A2の回転位置P2との位相差に基づいて、トルクを検出する。これにより、トルク分解能を担保できる。
【0049】
また、トルクセンサ200の弾性体である起歪体210は、起歪体210を構成する部材の一部を加工することにより構成される。これにより、起歪体210の製造コストをできるだけ抑えることができる。
【0050】
また、トルクセンサ200の弾性体である起歪体210は、アクチュエータ1の回転中心Cを基準として周方向(例えば、矢印drで示す方向)に延伸する曲線状の切欠き部SLを有する。これにより、起歪体210を弾性体として機能させることができる。
【0051】
また、トルクセンサ200の弾性体である起歪体210は、互いに重複しない位置に、回転中心Cを基準として延伸方向が異なる切欠き部SLRと、切欠き部SLLとを有する。これにより、時計回り方向(CW方向)と、反時計回り方向(CCW方向)でのトルクゲインの差異を低減させることができる。
【0052】
また、トルクセンサ200の弾性体である起歪体210は、切欠き部SLに挿入された緩衝材BMを有する。これにより、ダンパー効果を期待できる。
【0053】
また、トルクセンサ200の弾性体である起歪体210は、非接触のぜんまいばねで構成されてもよい。これにより、切欠き部SLを形成するためのレーザ加工を実施する場合と比較して、トルクセンサ200の量産する際の更なるコストカット効果を期待できる。
【0054】
また、トルクセンサ200は、アクチュエータ1の出力側がオルダムタイプのカップリング30を用いて、他の部材と連結されるようにしてもよい。これにより、起歪体210が弾性部213を有することにより発生し得る軸心のずれを吸収できる。
【0055】
以上、本開示の実施形態及び変形例について説明したが、本開示の技術的範囲は、上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、異なる実施形態及び変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0056】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示の技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者にとって明らかな他の効果を奏しうる。
【0057】
なお、本開示の技術は、本開示の技術的範囲に属するものとして、以下のような構成もとることができる。
(1)
アクチュエータの回転体である出力部のうち、回転中心から第1の距離に位置する円環状の第1の領域の回転位置と、回転中心から前記第1の距離よりも長い第2の距離に位置する円環状の第2の領域の回転位置とを検出するセンサ部と、
前記第1の領域と、前記第2の領域との間に設けられる弾性体と、
前記センサ部による検出結果に基づいて、前記出力部に加わるトルクを検出する検出部と、
を備えるトルクセンサ。
(2)
前記センサ部は、
前記第1の領域の回転位置を検出する第1のセンサと、前記第2の領域の回転位置を検出する第2のセンサとを有する
前記(1)に記載のトルクセンサ。
(3)
前記第1の領域に設けられる第1の位置検出用パターンと、
前記第2の領域に設けられる第2の位置検出用パターンと、
をさらに有し、
前記第1のセンサは、
前記第1の位置検出用パターンを検出することで、前記第1の領域の回転位置を検出し、
前記第2のセンサは、
前記第2の位置検出用パターンを検出することで、前記第2の領域の回転位置を検出する
前記(2)に記載のトルクセンサ。
(4)
前記検出部は、
前記第1の領域の回転位置と、前記第2の領域の回転位置との位相差に基づいて、前記トルクを検出する
前記(1)に記載のトルクセンサ。
(5)
前記弾性体は、
前記弾性体を構成する部材の一部を加工することにより構成される
前記(1)に記載のトルクセンサ。
(6)
前記弾性体は、
前記回転中心を基準として周方向に延伸する曲線状の切欠き部を有する
前記(5)に記載のトルクセンサ。
(7)
前記弾性体は、
互いに重複しない位置に、前記回転中心を基準として延伸方向が異なる複数の前記切欠き部を有する
前記(6)に記載のトルクセンサ。
(8)
前記弾性体は、
前記切欠き部に挿入された緩衝材を有する
前記(6)に記載のトルクセンサ。
(9)
前記弾性体は、
非接触のぜんまいばねで構成される
前記(1)に記載のトルクセンサ。
(10)
前記アクチュエータの出力側がオルダムタイプのカップリングを用いて、他の部材と連結される
前記(1)に記載のトルクセンサ。
【符号の説明】
【0058】
1 アクチュエータ
10 モータ部
20 出力部
30 カップリング
200 トルクセンサ
210 起歪体
211 第1出力部
212 第2出力部
213 弾性部
220 機能部
221 エンコーダディスク
221a 第1のエンコーダディスク
221b 第2のエンコーダディスク
222 センサ部
222a 第1のセンサ
222b 第2のセンサ
223 検出部
図1
図2
図3
図4
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図11