(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037620
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】排気ダクト温度警報装置
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20220302BHJP
F24F 11/77 20180101ALI20220302BHJP
G08B 21/18 20060101ALI20220302BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20220302BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F11/77
G08B21/18
F24F110:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141847
(22)【出願日】2020-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】593172083
【氏名又は名称】東亜管財株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110434
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】花木 俊介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正広
【テーマコード(参考)】
3L056
3L260
5C086
【Fターム(参考)】
3L056BD02
3L056BE00
3L056BF06
3L260AA08
3L260AB15
3L260BA12
3L260BA51
3L260CB56
3L260FC03
3L260GA17
5C086AA01
5C086AA06
5C086BA30
5C086CB01
5C086FA02
5C086FA06
5C086FA15
5C086FA17
5C086GA01
5C086GA06
(57)【要約】
【目的】 ダクト火災の発生を未然に防止できる排気ダクト温度警報装置を提供する。
【解決手段】 本発明の排気ダクト温度警報装置は、飲食店舗内の客席食卓に配置された火気器具と、前記客席食卓上の空間に天井から吊り下げられて配置され、一端に前記火気器具に対して開口する開口部を有し、他端に排気機構部を設けた中空の排気ダクトと、前記開口部から所定の高さの位置で前記排気ダクトの外側面に取り付けられ、当該外側面の温度を検知する温度センサーとを有することを特徴とし、ダクト火災の発生を未然に防止できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲食店舗内の客席食卓に配置された火気器具と、
前記客席食卓上の空間に天井から吊り下げられて配置され、一端に前記火気器具に対して開口する開口部を有し、他端に排気機構部を設けた中空の排気ダクトと、
前記開口部から所定の高さの位置で前記排気ダクトの外側面に取り付けられ、当該外側面の温度を検知する温度センサーとを有することを特徴とする排気ダクト温度警報装置。
【請求項2】
請求項1記載の排気ダクト温度警報装置であって、前記温度センサーの検知温度が所定の閾値以上の場合、ダクト火災が近いことを報ずる警報デバイスを有することを特徴とする排気ダクト温度警報装置。
【請求項3】
請求項1記載の排気ダクト温度警報装置であって、前記温度センサーの位置は、前記開口部の端部から20cm乃至50cmの範囲の高さであることを特徴とする排気ダクト温度警報装置。
【請求項4】
請求項1記載の排気ダクト温度警報装置であって、前記排気ダクトは、固定部と該固定部に対して可動に取り付けられた可動部からなり、前記温度センサーは前記可動部に取り付けられることを特徴とする排気ダクト温度警報装置。
【請求項5】
飲食店舗内の客席食卓に配置された火気器具と、
前記客席食卓上の空間に天井から吊り下げられて配置され、一端に前記火気器具に対して開口する開口部を有し、他端に排気機構部を設けた中空の排気ダクトと、
前記開口部から所定の高さの位置で前記排気ダクトの外側面に取り付けられ、当該外側面の温度を検知する温度センサーと、
前記温度センサーにて検知された温度情報に基づき、所定の警報を発する制御装置とを有することを特徴とする排気ダクト温度警報システム。
【請求項6】
請求項5の排気ダクト温度警報システムであって、前記制御装置は、所定の警報を発する場合に、前記排気機構部の送風能力を増加させることを特徴とする排気ダクト温度警報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き肉店などの客席食卓にガスコンロや七輪などの火気器具を有し、そこからの排気を行う排気ダクトを具備する排気システムで使用される排気ダクト温度警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店舗の1つの形態として、焼肉店があることは広く知られている。焼肉店における典型的な料理提供の形式は、生肉や野菜などの食材を提供し、客側でガスコンロ、カセットコンロや七輪などの火気器具を使用して、これらの食材を食前に焼く仕組みになっており、典型的な客席の各食卓には、中央に火気器具が配置されている。最近の焼肉店の傾向として、店内に肉を焼いた際の煙が広がらないように排気ダクトを設置することがあり、排気方式としては、火気器具の上空に排気ダクトの端部が開口するように構成された上引きダクトや、火気器具の周囲の空気を食卓の下方に引き込むタイプの下引きダクトも知られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このような焼肉店などの飲食店における火災の1つの形態として、排気ダクトの内部で火災が発生するダクト火災があり、防災上これを防ぐことが急務となっている。一般に上引きダクトの場合、店舗客席側の排気ダクトは天井に沿って主管が配され、その主管から枝分かれして各食卓に届かせるための枝管がある。枝管の一部には、火災を防ぐための防火ダンパーが配され、また枝管の途中には、油などのダクト内への広がりを防止するためのグリスフィルターなども配置されるものもある。
【0004】
しかしながら、高い頻度でダクト内を清掃しない場合には、焼肉の調理時にダクト内に残っていた油などに火気器具からの炎が移って、ダクト火災が発生し得る。特にホルモンなどの内蔵系の食材を調理する場合に、このような火災が発生し易い傾向がある。また、焼肉店のダクト火災は、厨房側ではなく店舗客席側で火災が発生するため、お店の店員が気づくのが遅れがちであり、ダクト火災を防止するための設備等が求められていた。
【0005】
そこで、本発明は、上述の技術的な課題に鑑み、ダクト火災の発生を未然に防止できる排気ダクト温度警報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等はかかる課題を解決すべく 鋭意研究を重ねた結果,飲食店舗内の客席食卓に配置された火気器具と、前記客席食卓上の空間に天井から吊り下げられて配置され、一端に前記火気器具に対して開口する開口部を有し、他端に排気機構部を設けた中空の排気ダクトと、前記開口部から所定の高さの位置で前記排気ダクトの外側面に取り付けられ、当該外側面の温度を検知する温度センサーとを有することを特徴とする排気ダクト温度警報装置によって、ダクト火災を未然に防止できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
火災を検知する場合には、火災に起因する温度の上昇を感知すれば良いが、ダクト火災が実際に起こってしまってからの温度上昇を感知しても火災を未然に防止するという観点からは火災に対する行動が遅くなってしまう。特に、排気ダクトの内部での火災発生が問題となるものの、排気ダクトの内部に温度センサーを配置しても、その場所は肉の調理毎に油を被るような位置であることから、センサー付近に滞留する油の状態が検出精度に影響し、確実な感知動作を得ることが難しい。本発明では、油の影響が少なくなる排気ダクトの外側面に温度センサーを取り付けるように構成し、発明者が行った数多くの実験データから得られた好適な位置で温度を感知することで、火災が実際に発生する前に警報を生じさせるようにしている。
【0008】
また、本発明は、上述の如き構造の排気ダクト温度警報装置と、 前記温度センサーにて検知された温度情報に基づき、所定の警報を発する制御装置とを有する排気ダクト温度警報システムにより、ダクト火災を未然に防止する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態にかかる排気ダクト温度警報装置を示す概略図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態にかかる排気ダクト温度警報装置に用いられる温度センサーの一例を示す図である。
【
図3】
図2に示した温度センサーの一例の断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態にかかる排気ダクト温度警報システムのシステム構成図である。
【
図5】本発明の前提となる上引きダクトへの温度センサーの取り付け位置の複数個所を示す図である。
【
図6】本発明の前提となる上引きダクトへの温度センサーの取り付け位置を変えて実験した結果を示す図であり、火皿サイズ15cm、離隔距離20cmの場合の温度分布図である。
【
図7】本発明の前提となる上引きダクトへの温度センサーの取り付け位置を変えて実験した結果を示す図であり、火皿サイズ15cm、離隔距離30cmの場合の温度分布図である。
【
図8】本発明の前提となる上引きダクトへの温度センサーの取り付け位置を変えて実験した結果を示す図であり、火皿サイズ15cm、離隔距離40cmの場合の温度分布図である。
【
図9】本発明の前提となる上引きダクトへの温度センサーの取り付け位置を変えて実験した結果を示す図であり、火皿サイズ20cm、離隔距離20cmの場合の温度分布図である。
【
図10】本発明の前提となる上引きダクトへの温度センサーの取り付け位置を変えて実験した結果を示す図であり、火皿サイズ20cm、離隔距離30cmの場合の温度分布図である。
【
図11】本発明の前提となる上引きダクトへの温度センサーの取り付け位置を変えて実験した結果を示す図であり、火皿サイズ20cm、離隔距離40cmの場合の温度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明にかかる第1の実施形態について
図1乃至
図4を参照しながら説明する。本実施形態は、所謂焼肉店などの飲食店における店舗の上引き排気ダクトに取り付けられるように構成された排気ダクト温度警報装置及びシステムであり、後述するようにダクト火災を未然に防止する構造を提供する。
【0011】
図1は第1の実施形態にかかる排気ダクト温度警報装置を示す概略図であり、店舗内の客席側に食卓12が配置され、その中央部には、七輪やガスコンロなどからなる火気器具14が配設されている。火気器具14は、通常、焼肉料理の食材である生肉や野菜などを保持するための円形の網等が上面に載置されるが、ジンギスカン鍋のように鉄板が直接肉野菜に接する構造であっても良い。この食卓12上の火気器具14の上空には、焼いた肉からの煙、炭化物や油を空気共に排出するための上引きダクトが臨むように取り付けられている。
【0012】
この上引きダクトの構成は、天井に沿って主管30が設けられ、そこから分岐した枝管26が設けられている。枝管26の先端側は下部に向かって延長されており、防火ダンパー28を介してグリスフィルター24が設けられ、そのグリスフィルター24の下部には固定ダクト22と、上下方向に移動し得る可動ダクト18と、その可動ダクト18の先端部に設けられたフード16を有している。防火ダンパー28は、火災時の延焼防止や熱い空気の噴出を防ぐために取り付けられた板状の開閉器であり、また、グリスフィルター24は排気中に含まれる油脂等を除去するためのフィルターであり、部品の分離が可能で取り外しての洗浄が可能とされる。固定ダクト22と可動ダクト18は、例えば共に円筒状の部材であり、
図1の実施形態では、可動ダクト18の方が径大とされ、径小な固定ダクト22の外側を稼働ダクト18が摺動する構造となっているが、逆に可動ダクト18側の径が小さい構造であっても良い。フード16は火気器具14の網上から広がる煙を広い範囲で収集するための傘状の部材であり、使用した方が広い範囲での煙を収集できるが、客席での食卓上の空間を遮るように配置されることから、客同士の目線の障害とならないように控えめのサイズや設けないような構造とすることもできる。
【0013】
固定ダクト22と可動ダクト18は、例えば1mm~2mm程度の厚みのステンレス材などの材質で構成されるものが多く、内部の直径としては約100ミリメートルのサイズから約175ミリメートル程度のものがある。固定ダクト22と可動ダクト18は、それぞれ内部を排気するように中空構造となっており、所定の風量で食卓上の空気を排気するように構成されている。一般に、固定ダクト22と可動ダクト18は、調理している時間では常に油を含んだ煙を排気し続けることから、比較的に簡単に分解して清掃が可能なように構成され、本実施形態ではグリスフィルター24の下部から、固定ダクト22と可動ダクト18をそれぞれ取り外して清掃することができる。
【0014】
このような上引きダクトには、その外周面にダクトの空気取り入れ開口部から所定の高さDaの位置に温度センサー20が取り付けられる。ここで、温度センサー20の取り付け位置は、開口部から所定の高さDaであって、その値は20cm乃至50cm、好ましくは25cm乃至45cm、さらに好ましくは25cm乃至40cmの間に設定される。これは外周面に温度センサー20を設置することの利便性に鑑み本件発明者らが行った模擬ダクト火災実験を重ねた結果得られた知見に基づいており、これら実験については後述する。
【0015】
本実施形態において、温度センサー20は円盤状の筐体40内に電子的に温度を計測するための電子回路を有し、熱電対端子50をセンサー裏面側にダクト外周面に接するように設けている。この熱電対端子50の両外側には、一対の永久磁石48が温度センサー20の裏面に固着されており、この一対のレール状の永久磁石48、48の磁力によって温度センサー20は排気ダクトの所望の位置に着脱自在に取り付けることができる。温度センサー20の内部には、断熱材が配され、電子回路を構成する基板43が保持され、さらに電源となるボタン電池45も側部で開閉するスロット部に保持される形で収納されている。温度センサー20の表面側には、液晶表示からなる温度表示部41が設けられ、熱電対端子50における温度をモニターするように表示できる。温度センサー20の表面側で温度表示部41の下部には、通電LED42、警報LED44、運転LED46が設けられており、当該温度センサー20の状態を指標する。すなわち、通電LED42は、内蔵するボタン電池45の供給電圧が正常の範囲であれば、緑色の発光がなされ、電池の出力が低下すれば、緑の発光が消える。警報LED44は、温度センサー20の感知温度が所定値よりも高くなった場合に、赤に点灯するLEDであり、店員などの人に対してダクト火災の危険性を知らせる発光素子である。運転LED46は、センサー20自体の動作が正常化かどうか報知するための発光素子であり、正常であれば緑の発光をする。
【0016】
ここで温度センサー20による警報について説明すると、本実施形態では、警報LED44が赤色に点灯することで、ダクト火災が迫っていることを報知するが、警報としては、LED44に代えて或いはLEDの点灯と共に、ビープ音などの警報音を発することもでき、“ダクト温度が上昇しています。”のような言葉での警報を発するようにすることもできる。また、通常店舗内には、複数の食卓が配置されて、複数の温度センサーを配置することも必要とされ、それぞれの温度センサー20を通常行われているような無線方式で無線接続することも可能である。この場合に温度センサー20は無線でのアラート信号を送信する。このように複数の温度センサーでシステムを構築する場合、後述するように、携帯電話機やコンピューターに複数の温度センサー20を監視するためのアプリケーションを必要に応じてダウンロードすれば良い。また、この監視についても店舗内だけで行うことも可能であるが、警報についての信号送受信する環境が整っていれば良く、例えば警備会社の集中管理センサーなどで監視するようなことも可能である。また、節電のため、温度センサー20は常時は信号を出さずに、アラート信号を送出する非常時にのみ作動する機構を有していても良い。
【0017】
ダクトの主管30は天井に沿って延長され、店舗外壁38に沿って下側にさらに延長されて外部ダクト管32を介して室外機34及び排気ファン36に接続する。排気ファン36はいくつかの排気ダクトを纏めて排気をするための空気の吸入をする装置であり、電力を供給して作動する図示しないモーターにより作動する。この排気ファン36の動作によって、排気ダクト内の排気される風量が制御される。例えば、排気ファン36の回転数に応じて3m/s、5m/s、7m/sなどの風量を作り出すことができ、これらの風量が店舗内の条件に合わせて選択される。
【0018】
ダクト火災の原因は、ダクト内に形成された油の層に、食卓の火気器具14からの炎が移って炎上することが主な原因とされ、火災を未然に防止するためには、最も高い温度分布の位置で所定の温度(閾値)以下に制御することが重要とされる。そこでダクト内ではどの位置が最も高温を調べてみると、そこにはダクト内への空気の流入による放熱効果があり、また、約300度以上では概ね着火するものと考えられることが判明した。このようなダクト火災に対する分析を進めるため、本件発明者らは次のダクト火災を模した実験を行っている。これは、焼肉店舗を模した上引きダクトを設置して、油塵を塗布した上引きダクトへの着火の有無と温度分布状況についての実験であり、温度分布状況についてはダクト外周面の各位置における最高温度を測定している。これらの実験は、防災の観点から主に焼肉店舗におけるダクト火災の発生をシミュレーションすることを念頭に進められており、本発明の構成についても結果的にその効果が分析できる内容となったものである。
【0019】
先ず、このダクト火災を検証する実験では、
図5に示すような上引きダクトの装置を使用し、ダクト火災に関する実験を行っている。この上引きダクト装置は、最も下部に吸い込み口56が取り付けられ、それぞれ円筒状の部材である可動ダクト58と固定ダクト62が設けられ、その固定ダクト62の上端にはグリスフィルター64が配設される。径小の固定ダクト62の外側を可動ダクト58が上下方向に摺動しながら移動できるように構成されるが、本実験では、可動ダクト58と固定ダクト62重なりは最小限に設定され、特に可動ダクト58から固定ダクト62にかけて5cm刻みで、下側から(A)乃至(L)の記号を割り当て、外周面に沿って合計12個の熱電対を配した。また、熱電対は図示しない風力調整ダンパーの外側に1個、ファン吸込み外側に1個それぞれ取り付けた。温度分布は、各熱電対からの信号によって得ることができ、更に赤外線サーモグラフィ装置も使用してダクト外周面の温度分布を撮影することとした。また、風速については、3m/s、5m/s、7m/sと風速計を使用して測定しながら実験を進めた。
【0020】
このダクト火災模擬実験では、はじめにダクトに付着する油塵の層が模擬的に作り出され、ダンパーの固着が0.2mmで始まるというデータが示されていることから、本実験に際してのダクト内部へ塗布する油塵の厚みは0.4mmに設定した。塗布後は、簡易油塵測定ゲージにて厚みを計測し、概ね0.4mmであることが確認された。このような準備条件の設定をした後、ヘプタンへの点火を行い、実際にダクト内での着火があるか無いかの確認を行った。ヘプタンはメタン系炭化水素であり、燃料としても使用される化学物質であり、一般的に油塵を多量に発生させるホルモンなどの内蔵系の焼肉の代わりに使用したものであった。着火実験においては、火皿のサイズとして2種類のサイズのものが使用され、15cmの火皿には155gのヘプタンが使用され、20cmの火皿には247.5gのヘプタンが使用された。火皿への点火当初は、開口部を有した蓋が火皿を覆う構成とし、15cmの火皿は50秒後に蓋を取り、20cmの火皿は70秒後に蓋を取るものとした。蓋を火皿から取り外すことで燃焼しているヘプタンの表面には、多くの酸素が供給されて最大燃焼事象を再現しているものとし、ヘプタンの燃焼終了を以って着火実験を終了とした。下記の表1、表2で示す実験結果では、「無」は着火が見られなかったことを示し、「着火」は着火が発生したことを示す。表1は火皿が15cmのものの実験データであり、表2が火皿が20cmのものの実験データである。ここで離隔距離とは、火皿表面とダクト最下端部の間の距離であり、20cm、30cm、40cmに設定している。
【0021】
【0022】
【0023】
この表1及び表2で示す着火実験の結果からは、排気ダクトの排気風量に応じてダクトの各部分で、着火が発生したりしなかったりしているが、概ね風量が大きい7m/sでは、着火が発生することがなく、風量が小さい3m/sでは炎のサイズも小さくなる15cmの火皿でも着火が発生しており、風量が小さい方がダクト火災に転じ易いことが示された。
【0024】
このようなダクト火災の着火についての検証を更に進める実験として、ダクト外周面の最高温度を位置毎の分布で示したものが
図6乃至
図11に示すデータである。
図6は火皿サイズ15cm、離隔距離20cmの場合のダクト外周部の最高温度分布図であり、
図7は火皿サイズ15cm、離隔距離30cmの場合のダクト外周部の最高温度分布図であり、
図8は火皿サイズ15cm、離隔距離40cmの場合のダクト外周部の最高温度分布図であり、
図9は火皿サイズ20cm、離隔距離20cmの場合のダクト外周部の最高温度分布図であり、
図10は火皿サイズ20cm、離隔距離30cmの場合のダクト外周部の最高温度分布図であり、
図11は火皿サイズ20cm、離隔距離40cmの場合のダクト外周部の最高温度分布図である。
【0025】
図6乃至
図11に示す実験結果のデータから示される概ね値は20cm乃至50cm、好ましくは25cm乃至45cm、さらに好ましくは25cm乃至40cmの間となっている。すなわち、
図6に示すデータからは、概ね(D)乃至(H)の範囲に最高温度が分布し、
図7に示すデータからは、概ね(D)乃至(H)の範囲に最高温度が分布し、
図8に示すデータからは、概ね(D)乃至(H)の範囲に最高温度が分布していることが分かる。また、
図9に示すデータからは、概ね(D)乃至(H)の範囲に最高温度が分布し、
図10に示すデータからは、概ね(D)乃至(G)の範囲に最高温度が分布し、
図11に示すデータからは、概ね(E)乃至(H)の範囲に最高温度が分布していることが分かる。風量が少ないほど最高温度は上昇する傾向にあり、火皿のサイズが大きいほど着火し易いことは先に述べた通りである。
【0026】
この最高温度分布から、着火が発生するような状況であっても、それはダクト外周部の最高温度を計測することで把握される事象であることが分かり、さらに温度センサー20の取り付け位置を、開口部から所定の高さDaとした場合に、20cm乃至50cm、好ましくは25cm乃至45cm、さらに好ましくは25cm乃至40cmの間であれば良好に検知できることが示されることになる。本実験がなければ上述の火皿に近い位置の方が温度測定には良いようなことも推論できるが、実際は当該上引きダクトが排気ダクトとして使用されている場合には、ダクトには外に空気を逃がす機能があり、その排気される空気の流れにのって放熱される影響もあることから、例えば0cm~15cm程度の火皿に近い位置では最高温度を取りにくく、結果としては上述のような温度センサーの最適位置が存在することになる。
【0027】
例えば、着火ありの状態は、実際の火災につながることが予想されるため、開口部から30cmの位置に温度センサーを配置した場合においては、風力にも依存するが、摂氏300度以下であれば着火が発生しておらず、その摂氏300度よりも低めの200度や150度程度の温度を閾値として、警報を発することでダクト火災を未然に防止することができる。
【0028】
図4は所定の警報を発する制御装置を有する排気ダクト温度警報システムの模式図である。上述の如き最適位置に配置される温度センサー70は、モニター74を有したコンピューターからなる制御器72に接続され、さらに制御器72には排気の風量を調整するための排気ファンの動力源であるファンモーター76に接続される。この排気ダクト温度警報システムでは、温度センサー70が警報となる温度上昇を検知した際には、警報を発すると共に制御器72に信号を送り、その警報信号を受信した制御器72はファンモーター76の回転数を増加させるように信号を送って、排気ダクト全体の排気風量を上昇させて火災を未然に防ぐことができる。
【0029】
上述のように、本発明の排気ダクト温度警報装置は、温度センサーが排気ダクトの外周面の所定の高さの位置に取り付けられることから、容易にダクト火災が発生する前に未然に温度上昇を使用者に報知することができる。また、温度センサーは排気ダクトの外周面に配置されることから、ダクト内部の清掃の邪魔になることもなく、温度センサーを磁石などで着脱自在とすればより清掃も容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0030】
12 食卓
14 火気器具
16 フード
18 可動ダクト
20 温度センサー
22 固定ダクト
24 グリスフィルター
26 枝管
28 防火ダンパー
30 主管
36 排気ファン
38 店舗外壁
40 筺体
41 温度表示部
42 通電LED
43 基板
44 警報LED
45 ボタン電池
46 運転LED
48 永久磁石部
50 熱電対
56 吸い込み口
58 可動ダクト
62 固定ダクト
64 グリスフィルター
70 温度センサー
72 制御器
74 モニター
76 ファンモーター