(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037629
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/00 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
H05B3/00 365N
H05B3/00 310F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141861
(22)【出願日】2020-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000220033
【氏名又は名称】東京コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市倉 学
【テーマコード(参考)】
3K058
【Fターム(参考)】
3K058AA12
3K058AA91
3K058CA22
3K058CA34
3K058CA57
3K058CE12
3K058CE19
(57)【要約】
【課題】過熱を簡単に抑制する加熱装置を提供する。
【解決手段】通電により加熱する加熱部2を有し、加熱対象Hを加熱する加熱装置であって、加熱部2の上側に配置され、下側からの押圧に応じて切れるように脆弱部が形成されたヒューズ基板3と、ヒューズ基板3において脆弱部が形成された部分を横断するように配置され、加熱部2に直列に接続されたヒューズ4と、ヒューズ基板3の下側に配置されると共に周辺環境の変化に応じて変形するように形成され、変形によりヒューズ基板3を下側から押圧して脆弱部からヒューズ基板3をヒューズ4と共に切る変形部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により加熱する加熱部を有し、加熱対象を加熱する加熱装置であって、
前記加熱部の上側に配置され、下側からの押圧に応じて切れるように脆弱部が形成されたヒューズ基板と、
前記ヒューズ基板において前記脆弱部が形成された部分を横断するように配置され、前記加熱部に直列に接続されたヒューズと、
前記ヒューズ基板の下側に配置されると共に周辺環境の変化に応じて変形するように形成され、変形により前記ヒューズ基板を下側から押圧して前記脆弱部から前記ヒューズ基板を前記ヒューズと共に切る変形部とを備える加熱装置。
【請求項2】
前記変形部は、前記加熱部と前記ヒューズ基板との間に配置され、前記加熱部が所定の温度を超えると膨張して変形するように形成された膨張部を含む請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記脆弱部は、前記ヒューズ基板に形成された切れ目を含む請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記切れ目は、複数の切れ目が隙間を空けつつ線状に並ぶように形成され、
前記ヒューズは、前記複数の切れ目の隙間を横断するように配置される請求項3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記切れ目は、前記ヒューズ基板が固定された固定部分の近傍に形成される請求項3または4に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記切れ目は、前記ヒューズ基板の縁部を切断するように形成される請求項3~5のいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記ヒューズは、前記脆弱部を複数箇所で横断するように形成される請求項1~6のいずれか一項に記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばバッテリなどの加熱対象を加熱する加熱装置が実用化されている。加熱装置は、通電により加熱する加熱部がヒータ基板上に配置されており、この加熱部への通電を制御することにより、加熱対象を所定の温度に加熱することができる。ここで、加熱装置は、加熱部の異常過熱を抑制することが求められている。
【0003】
そこで、加熱部の異常過熱を抑制する技術として、例えば、特許文献1には、コード状ヒータ線近傍の異常発熱を防止する電気式床暖房装置が提案されている。この電気式床暖房装置は、ヒータ線と検知線とが短絡したときに検知線を流れる電流に起因してヒューズが溶断するため、ヒータ線の異常過熱を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置は、温度ヒューズなどを用いてヒータ線の異常過熱を抑制するため、その構成が複雑化するおそれがある。
【0006】
本開示は、過熱を簡単に抑制する加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る加熱装置は、通電により加熱する加熱部を有し、加熱対象を加熱する加熱装置であって、加熱部の上側に配置され、下側からの押圧に応じて切れるように脆弱部が形成されたヒューズ基板と、ヒューズ基板において脆弱部が形成された部分を横断するように配置され、加熱部に直列に接続されたヒューズと、ヒューズ基板の下側に配置されると共に周辺環境の変化に応じて変形するように形成され、変形によりヒューズ基板を下側から押圧して脆弱部からヒューズ基板をヒューズと共に切る変形部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、過熱を簡単に抑制する加熱装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態に係る加熱装置の構成を示す部分断面図である。
【
図2】ヒューズ基板およびヒューズの構成を示す図である。
【
図3】ヒューズが加熱部に直列に接続された様子を示す図である。
【
図4】膨張部がヒューズ基板を切れ目から切る様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1に、本開示の実施の形態に係る加熱装置の構成を示す。加熱装置は、加熱対象Hを加熱するためのもので、ヒータ基板1と、加熱部2と、ヒューズ基板3と、ヒューズ4と、保護部5と、膨張部6とを有する。
【0012】
ヒータ基板1は、平板状に形成され、絶縁性および熱伝達性を有する材料から構成されている。ヒータ基板1は、例えば、バッテリなどの加熱対象Hに裏面を当接して配置される。
【0013】
加熱部2は、ヒータ基板1の表面上に配置され、通電により加熱するように所定の抵抗値を有する。加熱部2は、ヒータ基板1上を折り返しつつ線状に延びてヒータ基板1の所定の範囲を満たすように配置され、その両端部には端子2aおよび2bが形成されている。
【0014】
ヒューズ基板3は、矩形状の絶縁性フィルムから形成され、加熱部2の上側に加熱部2の全体を覆うように配置されている。ヒューズ基板3の短辺側の一対の縁部は、接着剤7を介してヒータ基板1に固定された固定部分8aおよび8bを形成する。ここで、ヒューズ基板3の長辺側の一対の縁部は、固定部分8aおよび8bが形成されていないため、ヒータ基板1に対して解放されていることになる。
【0015】
また、ヒューズ基板3は、下側からの押圧に応じて切れるように脆弱に形成された切れ目9を有する。この切れ目9は、複数の切れ目9が隙間を空けつつ直線状に並ぶように配置された、いわゆるミシン目状に形成されている。また、切れ目9は、ヒータ基板1に対してヒューズ基板3の縁部が固定された固定部分8aの近傍に固定部分8aに沿って直線状に並んで配置されている。
【0016】
ヒューズ4は、ヒューズ基板3上において複数の切れ目9の隙間を横断、すなわち切れ目9と切れ目9との間を横断するように配置されている。ヒューズ4は、導電性を有し、加熱部2に直列に接続されている。ヒューズ4は、例えば、黄銅などの割れ性の比較的高い材料から構成することができる。
【0017】
保護部5は、絶縁性フィルムから形成され、ヒューズ4と共にヒューズ基板3の全体を覆うように配置されている。なお、切れ目9は、保護部5にもヒューズ基板3と同様の箇所に形成されている。すなわち、切れ目9は、保護部5とヒューズ基板3を貫通するように形成されている。
【0018】
膨張部6は、絶縁性材料から構成され、加熱部2とヒューズ基板3との間に加熱部2の全体を覆うように配置されている。また、膨張部6は、加熱部2が所定の温度を超えると膨張して変形するように形成されている。ここで、所定の温度は、加熱部2の加熱温度より高い温度に設定され、具体的には加熱部2の短絡などにより異常過熱した場合の温度に基づいて設定されている。膨張部6が、膨張によりヒューズ基板3を下側から押圧することにより、切れ目9からヒューズ基板3がヒューズ4と共に切られる。膨張部6は、例えば、所定の温度を超えると発泡する塗料などを加熱部2に塗布して形成することができる。このとき、膨張部6は、体積が10倍以上に大きく膨張するものが好ましい。また、膨張部6は、難燃性や不燃性を有する材料から選定することが好ましい。このように、膨張部6は、本発明における変形部を構成するものである。
【0019】
次に、ヒューズ基板3およびヒューズ4の構成について詳細に説明する。
【0020】
図2に示すように、ヒューズ基板3は、ヒータ基板1に対して解放された縁部3aから縁部3bまで切れ目9が直線状に並んで配置されている。このとき、切れ目9は、ヒューズ基板3の縁部3aおよび3bを切断して切断部9aおよび9bを形成する。
【0021】
そして、ヒューズ4が、切れ目9に沿って延びるように配置され、ヒューズ基板3の縁部3aおよび3b近傍の2箇所で切れ目9を横断して一対の端子4aおよび4bが形成されている。具体的には、ヒューズ4は、切れ目9と切れ目9の間の隙間において最も縁部3a側の隙間と最も縁部3b側の隙間を横断するように形成されている。
【0022】
次に、加熱装置の電気的な接続について詳細に説明する。
図3に示すように、加熱装置は、電源10と、スイッチ11と、温度測定部12と、制御部13とをさらに有する。
【0023】
ここで、加熱部2の端子2aがヒューズ4の端子4bに直列に接続され、加熱部2の端子2bが電源10に接続されると共に、ヒューズ4の端子4aがスイッチ11に接続されている。
【0024】
電源10は、加熱部2に電流を供給するもので、加熱部2の端子2bとスイッチ11との間に接続されている。
スイッチ11は、電源10から加熱部2への通電のオンとオフを切り替えるものである。
【0025】
温度測定部12は、加熱対象Hに当接して配置され、加熱対象Hの温度を測定する。
制御部13は、温度測定部12とスイッチ11との間に接続され、温度測定部12で測定された温度に基づいて、加熱対象Hが所定の温度範囲に保たれるようにスイッチ11を切り替える。
【0026】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
【0027】
まず、
図1に示すように、加熱装置が、ヒータ基板1を加熱対象Hに当接して配置される。そして、
図3に示すように、制御部13がスイッチ11をオン状態とし、電源10から加熱部2に電流が供給される。この通電により加熱部2が加熱され、その熱が熱伝達性を有するヒータ基板1により加熱対象H側に伝達される。これにより、加熱対象Hを加熱することができる。
【0028】
また、制御部13が、温度測定部12で測定される温度に基づいて、加熱対象Hが所定の温度範囲に保たれるようにスイッチ11を切り替える。これにより、加熱対象Hを所定の温度範囲に保つことができ、加熱対象Hの機能を安定して維持することができる。
このとき、加熱部2は、所定の温度以下で加熱するため、膨張部6は、膨張することなく、そのままの状態で維持される。
【0029】
ここで、加熱部2が、例えば、短絡などにより局所的に異常過熱すると、その部分が所定の温度を超えることにより、膨張部6が膨張することになる。
例えば、
図4に示すように、加熱部2が過熱位置Pで局所的に異常過熱すると、膨張部6が、局所的に膨張して、ヒューズ基板3を下側から押圧する。この押圧により、ヒューズ基板3は、上方に持ち上げられて、固定部分8aに対して側方に引っ張られる。これにより、ヒューズ基板3は、固定部分8aの近傍に配置された切れ目9から保護部5と共に切断される。
【0030】
このとき、切れ目9を横断するようにヒューズ4が配置されているため、ヒューズ4が、ヒューズ基板3と共に切断される。そして、ヒューズ4の切断により、電源10から加熱部2への電流の供給が遮断される。これにより、加熱部2の加熱が停止され、異常過熱の広がりを抑制することができる。
【0031】
ここで、膨張部6が、加熱部2とヒューズ基板3との間に配置され、そのヒューズ基板3に形成された切れ目9を横断するようにヒューズ4が配置されている。これにより、膨張部6の膨張に応じて切れ目9からヒューズ基板3をヒューズ4と共に切ることができ、加熱部2の過熱を簡単に抑制することができる。
【0032】
また、複数の切れ目9が隙間を空けつつ直線状に並ぶように形成され、ヒューズ4が複数の切れ目9の隙間を横断するように配置されている。このため、加熱部2の加熱時におけるヒューズ4の断線を抑制しつつヒューズ4を切れ目9で容易に切断することができる。
【0033】
また、切れ目9は、ヒータ基板1に対してヒューズ基板3が固定された固定部分8aの近傍に形成されている。これにより、ヒューズ基板3が、膨張部6の膨張に応じて、固定部分8aに対して引っ張られるように持ち上げられるため、ヒューズ基板3を容易に切ることができる。
【0034】
また、切れ目9は、ヒューズ基板3の縁部3aおよび3bを切断して切断部9aおよび9bを形成する。これにより、ヒューズ基板3の切断を切断部9aおよび9bから容易に開始することができ、ヒューズ基板3を確実に切断することができる。
【0035】
また、ヒューズ4は、切れ目9を2箇所で横断するように形成されている。このため、ヒューズ基板3の切断に応じてヒューズ4を確実に切断することができる。
また、ヒューズ4は、複数の切れ目9の隙間において最も縁部3a側の隙間と最も縁部3b側の隙間を横断するように形成されている。これにより、ヒューズ基板3の切断が、縁部3aおよび縁部3bのどちらから開始された場合でも、ヒューズ4をより確実に切断することができる。
【0036】
また、ヒューズ基板3は、ヒータ基板1に対して縁部3aおよび3bが解放されているため、膨張部6の膨張に応じて縁部3a側または縁部3b側から確実に切断することができる。
【0037】
また、膨張部6は、加熱部2の全体を覆うように配置されているため、加熱部2の異常過熱に応じて確実に膨張することができる。
【0038】
本実施の形態によれば、膨張部6が、加熱部2とヒューズ基板3との間に配置され、そのヒューズ基板3に形成された切れ目9を横断するようにヒューズ4が配置されている。これにより、膨張部6の膨張に応じて切れ目9からヒューズ基板3をヒューズ4と共に切ることができ、加熱部2の過熱を簡単に抑制することができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、ヒューズ基板3は、切れ目9が形成されたが、下側からの押圧に応じて切れるように脆弱部が形成されていればよく、切れ目9に限られるものではない。
【0040】
また、本実施の形態では、ヒューズ基板3は、複数の切れ目9が形成されたが、下側からの押圧に応じて切れるように1つの切れ目9を形成してもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、複数の切れ目9は、直線状に並ぶように形成されたが、線状に並ぶように形成されていればよく、直線状に限られるものではない。例えば、複数の切れ目9が、曲線状に並ぶように形成することもできる。
【0042】
また、本実施の形態において、切れ目9は、下側からの押圧に応じてヒューズ基板3の全てを切断するものに限られるものではなく、ヒューズ基板3の一部を切るように形成することもできる。
【0043】
また、ヒューズ4は、切れ目9の隙間を横断するように配置されたが、切れ目9が形成された部分を横断するように配置されていればよく、これに限られるものではない。
【0044】
また、本実施の形態では、ヒューズ4は、ヒューズ基板3上に配置されたが、ヒューズ基板3に配置されていればよく、ヒューズ基板3において膨張部6に対向する面に配置することもできる。
【0045】
また、本実施の形態では、加熱装置は、ヒータ基板1を加熱対象Hに当接して配置されたが、加熱対象Hを加熱することができればよく、これに限られるものではない。例えば、加熱装置は、保護部5を加熱対象Hに当接して配置することもできる。
【0046】
また、本実施の形態では、加熱装置は、加熱対象Hに当接して配置されたが、加熱対象Hを加熱することができればよく、これに限られるものではない。例えば、加熱装置は、加熱対象Hに対して離間して配置され、空気を介して加熱対象Hを加熱することができる。すなわち、加熱装置は、離れた加熱対象Hを加熱する暖房器具などに適用することもできる。
【0047】
また、本実施の形態では、変形部は、加熱部2が所定の温度を超えると膨張して変形する膨張部6から構成されたが、周辺環境の変化に応じて変形するものから構成されていればよく、これに限られるものではない。
【0048】
例えば、
図5に示すように、膨張部6を除くと共に、ヒータ基板1に換えてヒータ基板21を配置することができる。このヒータ基板21は、ヒューズ基板3の下側に配置され、加熱対象Hの変化に応じて変形するように高い柔軟性を有する。ヒータ基板21は、変形によりヒューズ基板3を下側から押圧することにより、切れ目9からヒューズ基板3をヒューズ4と共に切る。このように、ヒータ基板21は、本発明における変形部を構成するものである。
【0049】
このような構成により、加熱対象Hの膨張による応力または加熱対象Hの落下などによる衝撃に応じて、ヒータ基板21がヒューズ基板3に向かって凸状に変形する。これにより、ヒータ基板21が、ヒューズ基板3を下側から押圧して、切れ目9からヒューズ基板3をヒューズ4と共に切ることができる。
【0050】
その他、上記の実施の形態は、何れも本発明の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、上記の実施の形態で説明した各部の形状や個数などについての開示はあくまで例示であり、適宜変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示に係る加熱装置は、通電により加熱する加熱部を有する装置に利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1,21 ヒータ基板
2 加熱部
2a,2b 端子
3 ヒューズ基板
3a,3b 縁部
4 ヒューズ
4a,4b 端子
5 保護部
6 膨張部
7 接着剤
8a,8b 固定部分
9 切れ目
9a,9b 切断部
10 電源
11 スイッチ
12 温度測定部
13 制御部
H 加熱対象
P 過熱位置