(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037661
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】ウインドレギュレータ
(51)【国際特許分類】
E05F 11/48 20060101AFI20220302BHJP
E05F 15/689 20150101ALI20220302BHJP
B60J 1/17 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
E05F11/48 D
E05F11/48 E
E05F15/689
B60J1/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141904
(22)【出願日】2020-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000146434
【氏名又は名称】株式会社城南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金井 秀聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 秋吾
(72)【発明者】
【氏名】吉原 宏大
【テーマコード(参考)】
2E052
3D127
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA03
2E052DB03
2E052EA14
2E052EB01
2E052EC01
2E052KA15
3D127BB01
3D127CB05
3D127CC05
3D127DF03
3D127DF15
3D127DF24
3D127EE20
(57)【要約】
【課題】キャリアプレートの移動ストロークを短くすることなく、且つ上側の摺動位置や回転支点に対する下側の摺動位置の離間距離を大きく取ることができるウインドレギュレータを提供する。
【解決手段】窓ガラスGが取り付けられたキャリアプレート3と、キャリアプレート3を摺動自在に支持するガイドレール2と、ガイドレール2の下端部に設けられ、ドラム92を収容するハウジング95と、を備え、キャリアプレート3は、本体部30の下端面30aから下方に突出するように設けられ、ガイドレール2に摺動する下端摺動部102を有し、ハウジング95には、本体部30の下端面30aに接触しキャリアプレート3の下方への移動を規制する上面93aと、上面93aが下端面30aに接触した状態において下端摺動部102の突出部分102aを受容する受容部206と、が形成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラスが取り付けられたキャリアプレートと、
前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って前記キャリアプレートを摺動させるワイヤと、
回転により前記ワイヤを駆動するドラムと、
前記ガイドレールの前記昇降方向の下方の端部に設けられ、前記ドラムを回転自在に収容するハウジングと、を備え、
前記キャリアプレートは、本体部と、前記本体部の前記下方の下端面から前記下方に突出するように設けられ、前記ガイドレールに摺動する下端摺動部と、を有し、
前記ハウジングには、前記窓ガラスの全開状態において前記下端面に接触し前記キャリアプレートの前記下方への移動を規制する規制部と、前記規制部が前記下端面に接触した状態において前記下端摺動部における前記下端面から突出した突出部分を受容する受容部と、が形成されていることを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項2】
前記受容部は、前記キャリアプレートが傾こうとしたとき、前記突出部分に接触して前記キャリアプレートが傾くのを規制する傾き規制面を有することを特徴とする請求項1に記載のウインドレギュレータ。
【請求項3】
前記受容部は、前記突出部分が遊嵌することを特徴とする請求項2に記載のウインドレギュレータ。
【請求項4】
窓ガラスが取り付けられたキャリアプレートと、
前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って前記キャリアプレートを摺動させるワイヤと、
回転により前記ワイヤを駆動するドラムと、
前記ガイドレールの前記昇降方向の下方の端部に設けられ、前記ドラムを回転自在に収容するハウジングと、を備え、
前記キャリアプレートは、前記下方の下端面が前記窓ガラスの全開状態において前記ハウジングに接触する被接触面である本体部と、前記下端面から前記下方に突出するように設けられ、前記ガイドレールに摺動する下端摺動部と、を有することを特徴とするウインドレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドレギュレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウインドレギュレータとして、例えば、キャリアプレートをガイドレールに沿って昇降させて、窓ガラスを昇降するシングルレール式のウインドレギュレータがある(特許文献1参照)。このウインドレギュレータは、窓ガラスの昇降方向に沿って設けられたガイドレールと、ガイドレールと摺動して窓ガラスと共に移動するキャリアプレートと、キャリアプレートを牽引するケーブルと、ケーブルの一端が巻き回されたドラムと、ガイドレールの下端に設けられ、ドラムを収容するドラムハウジングと、を含んでいる。キャリアプレートは、本体部と、本体部の上下端部に設けられ、ガイドレールに摺動する上端摺動部及び下端摺動部と、を有し、ドラムハウジングは、窓ガラスの全開状態におけるキャリアプレートの下端面に接触する接触面を有している。
このウインドレギュレータでは、窓ガラスの全開状態において、キャリアプレートの下端面がドラムハウジングの接触面に接触することで、キャリアプレートの下方への移動が規制される。これにより、キャリアプレートの移動ストロークが規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のウインドレギュレータでは、上端摺動部の摺動位置と下端摺動部の摺動位置との離間距離が十分取れないため、各摺動部とガイドレールとの遊びに基づくキャリアプレートの回転ガタが大きくなり、窓ガラスが車両前後方向に大きく傾いてしまうという問題があった。また、窓ガラスが車両前後方向に傾くときのキャリアプレートの回転支点に対し、下端摺動部の摺動位置を十分離間させることができなかったため、窓ガラスが窓枠に引っかかった状態で昇降しようとしたとき等、窓ガラスが傾こうとする力が働いたとき、モーメント(てこの原理)によって、下端摺動部に強い応力がかかってしまう。これによって、下端摺動部やガイドレールに変形が生じてしまう虞があった。これらに対し、キャリアプレート全体を下方に延ばして下端摺動部の摺動位置を下方に移動することで、上端摺動部の摺動位置や上記回転支点に対する下端摺動部の摺動位置の離間距離を大きく取ることが考えられるが、かかる場合、キャリアプレートを下方に延ばした分だけ、キャリアプレートの移動ストロークが短くなってしまい、窓ガラスの移動ストロークが短くなってしまうという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、キャリアプレートの移動ストロークを短くすることなく、且つ上端摺動部の摺動位置や上記回転支点に対する下端摺動部の摺動位置の離間距離を大きく取ることができるウインドレギュレータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、窓ガラスが取り付けられたキャリアプレートと、前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレールと、前記ガイドレールに沿って前記キャリアプレートを摺動させるワイヤと、回転により前記ワイヤを駆動するドラムと、前記ガイドレールの前記昇降方向の下方の端部に設けられ、前記ドラムを回転自在に収容するハウジングと、を備え、前記キャリアプレートは、本体部と、前記本体部の前記下方の下端面から前記下方に突出するように設けられ、前記ガイドレールに摺動する下端摺動部と、を有し、前記ハウジングには、前記窓ガラスの全開状態において前記下端面に接触し前記キャリアプレートの前記下方への移動を規制する規制部と、前記規制部が前記下端面に接触した状態において前記下端摺動部における前記下端面から突出した突出部分を受容する受容部と、が形成されていることを特徴とするウインドレギュレータを提供する。
【0007】
また、本発明は、上記目的を達成するため、窓ガラスが取り付けられたキャリアプレートと、前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレールと、前記ガイドレールに沿って前記キャリアプレートを摺動させるワイヤと、回転により前記ワイヤを駆動するドラムと、前記ガイドレールの前記昇降方向の下方の端部に設けられ、前記ドラムを回転自在に収容するハウジングと、を備え、前記キャリアプレートは、前記下方の下端面が前記窓ガラスの全開状態において前記ハウジングに接触する被接触面である本体部と、前記下端面から前記下方に突出するように設けられ、前記ガイドレールに摺動する下端摺動部と、を有することを特徴とするウインドレギュレータを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るウインドレギュレータは、キャリアプレートの移動ストロークを短くすることなく、且つ上端摺動部の摺動位置や上記回転支点に対する下端摺動部の摺動位置の離間距離を大きく取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るウインドレギュレータ及び窓ガラスを示した全体概略図である。
【
図2】(a)は、窓ガラスの全閉状態におけるウインドレギュレータを示した正面図であり、(b)は、窓ガラスの全開状態におけるウインドレギュレータを示した正面図である。
【
図3】(a)は、ガイドレールを示したA‐A´線断面図であり、(b)は、ガイドレールの下端部を示した正面図であり、(c)は、ガイドレール及び下端摺動部を示したA‐A´線断面図である。
【
図4】キャリアプレートを示した正面図(a)、下面図(b)及び裏面図(c)である。
【
図5】ドラムハウジングを示した正面図(a)、上面図(b)及び斜視図(c)である。
【
図6】窓ガラスの全開状態におけるキャリアプレート及びドラムハウジングを示した正面図である。
【
図7】(a)キャリアプレート及びドラムハウジングの第1変形例を示した正面図であり、(b)は、キャリアプレート及びドラムハウジングの第2変形例を示した正面図である。
【
図8】ドラムハウジングの第3変形例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るウインドレギュレータについて説明する。このウインドレギュレータは、自動車(車両)のドアパネルに取り付けられ、自動車に設けられたドアの窓ガラスを昇降する昇降装置である。特に、本ウインドレギュレータは、ガイドレールに対するキャリアプレートの摺動構造を改良したことで、キャリアプレートの回転ガタやウインドレギュレータの剛性を向上させたものである。なお、以下、窓ガラスの昇降方向を、単に昇降方向と呼称する。また、以下、各図に示す通り、左右、前後及び上下を規定して説明する。さらに、各図に示すウインドレギュレータの上下方向は、窓ガラスの昇降方向と一致している。
【0011】
図1は、窓ガラスGの全閉状態におけるウインドレギュレータ1及び窓ガラスGを示した全体概略図であり、窓ガラスGを二点鎖線で示したものである。また、
図2(a)は、窓ガラスGの全閉状態におけるウインドレギュレータ1を示した正面図であり、
図2(b)は、窓ガラスGの全開状態におけるウインドレギュレータ1を示した正面図である。
図1及び
図2に示すように、ウインドレギュレータ1は、ドアパネル(不図示)の内部に取り付けられており、ガラスホルダHを介して窓ガラスGが取り付けられたキャリアプレート3と、窓ガラスGの昇降方向に沿って設けられ、キャリアプレート3を摺動自在に支持するガイドレール2と、ガイドレール2に沿ってキャリアプレート3を摺動させる上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5(ワイヤ)と、ガイドレール2の上端に配設され、上昇側ワイヤ4を方向転換するプーリー6と、ガイドレール2の下端に配設され、上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5を駆動する駆動部9と、を備えている。すなわち、このウインドレギュレータ1は、いわゆるワイヤ式且つシングルレール式のウインドレギュレータ1である。また、駆動部9がガイドレール2の下端部に配設された、いわゆる下端レール型のウインドレギュレータ1である。
【0012】
上昇側ワイヤ4は、一端部がキャリアプレート3に取り付けられ、プーリー6を介して、他端部が駆動部9のドラム92(後述する)に連結されている。一方、下降側ワイヤ5は、一端部がキャリアプレート3に取り付けられ、他端部がドラム92に連結されている。
【0013】
駆動部9は、モータ91と、モータ91によって回転駆動され、回転することにより上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5の巻き取り及び繰り出しを行う円筒状のドラム92と、モータ91の回転をドラム92に伝達する減速機(図示省略)と、ガイドレール2の下端部が嵌合すると共にドラム92を回転自在に収容するドラムハウジング93、及びモータ91を保持するモーターハウジング94から成るハウジング95と、を有している。モーターハウジング94は、減速機を内蔵すると共に、ドラムハウジング93に固定されている。そして、モーターハウジング94は、減速機の出力軸をドラム92に接続させつつ、ドラムハウジング93のドラム収容部201(後述する)の開口を覆っている。なお、ドラムハウジング93の詳細については、後述する。
【0014】
モータ91を正転駆動すると、ドラム92が正転し、これに伴って、下降側ワイヤ5が繰り出されつつ上昇側ワイヤ4が巻き取られる。これによって、キャリアプレート3が上昇側ワイヤ4に引っ張られ上方に移動する。これにより、キャリアプレート3に取り付けられた窓ガラスGが上昇する。一方、モータ91を逆転駆動すると、ドラム92が逆転し、これに伴って、上昇側ワイヤ4が繰り出されつつ下降側ワイヤ5が巻き取られる。これによって、キャリアプレート3が下降側ワイヤ5に引っ張られ下方に移動する。これにより、キャリアプレート3に取り付けられた窓ガラスGが下降する。これにより、キャリアプレート3及び窓ガラスGを、ガイドレール2に沿って昇降させる。
【0015】
図2及び
図3に示すように、ガイドレール2は、長板状の金属板を所定の曲率で折り曲げて形成され、ドアに対して車両前後方向の後方側に傾いて配置されている。ガイドレール2は、その長手方向に延びる平板部21と、平板部21における長手方向に直交する幅方向の両端部から立設された右側板部22及び左側板部23と、右側板部22及び左側板部23の先端から平板部21とは逆側にそれぞれ張り出した右フランジ部24及び左フランジ部25と、を有している。右フランジ部24及び左フランジ部25は,平板部21に対して平行に、右側板部22及び左側板部23の先端からそれぞれ張り出している。
【0016】
なお、
図3(b)に示すように、ガイドレール2の長手方向において、ガイドレール2の右部は、左部よりも下方に延出している。すなわち、平板部21の右端部、右側板部22及び右フランジ部24は、平板部21の左端部、左側板部23及び左フランジ部25よりも、下方に延出している。具体的には、後述する受容部206の深さ分だけ、平板部21の右端部、右側板部22及び右フランジ部24が、平板部21の左端部、左側板部23及び左フランジ部25よりも、下方に延出している。
【0017】
次に
図4を参照して、キャリアプレート3について説明する。
図4に示すように、キャリアプレート3は、樹脂製(例えばポリアセタール樹脂製)の部材で構成されており、板状の本体部30と、本体部30の左右端部に配設され、窓ガラスGを取り付けるための2つの取付け孔31、31と、本体部30の後面側(
図4(a)中奥側)の中央右寄りに配設されたレール取付け部32と、レール取付け部32の左側に配設された下降側ワイヤ取付け部33と、下降側ワイヤ取付け部33の左側に配設された上昇側ワイヤ取付け部34と、を有している。また、キャリアプレート3は、ガイドレール2の右フランジ部24及び左フランジ部25の前面及び後面に押圧接触する複数の摺動ヒレ35を有している。
【0018】
本体部30は、前後方向を厚さ方向とする板状の部材で構成されている。また、本体部30の下端面30aは、窓ガラスGの全開状態において、ドラムハウジング93が接触する平坦面となっている。すなわち、本体部30の下端面30aは、窓ガラスGの全開状態において、ドラムハウジング93の上面93aが接触し、キャリアプレート3の下方への移動が規制される被接触面である。窓ガラスGが全開状態のとき、本体部30の下端面30aがドラムハウジング93の上面93aに接触して、キャリアプレート3の下方への移動が規制される。このときのキャリアプレート3の位置が、キャリアプレート3の移動範囲における下端位置となる。
【0019】
2つの取付け孔31、31は、窓ガラスGに固定された2つのガラスホルダH、H(
図1参照)を取り付けるためのものである。窓ガラスGに固定された2つのガラスホルダH、Hを各取付け孔31、31に取り付けることで、ガラスホルダH、Hを介して、窓ガラスGがキャリアプレート3に取り付けられている。
【0020】
下降側ワイヤ取付け部33は、下降側ワイヤ5の一端が取り付けられている。一方、上昇側ワイヤ取付け部34は、上昇側ワイヤ4の一端が取り付けられている。すなわち、キャリアプレート3は、この下降側ワイヤ取付け部33を介して、下降側ワイヤ5に下方に引っ張られ、この上昇側ワイヤ取付け部34を介して、上昇側ワイヤ4に上方に引っ張られる構成になっている。
【0021】
レール取付け部32は、本体部30の上端部に配設され、ガイドレール2の右側板部22に摺動する上端摺動部101と、本体部30の下端部に配設され、ガイドレール2の右側板部22に摺動する下端摺動部102と、を有している。
図3(c)及び
図4に示すように、上端摺動部101及び下端摺動部102は、右側板部22の右面に摺動する部分と、右側板部22の左面に摺動する部分と、を有し、右側板部22に摺動している。なお、
図3(c)では、右側板部22の右面に摺動する部分と、右側板部22の左面に摺動する部分とで、右側板部22を隙間無く挟持しているかのように図示されているが、厳密には、右側板部22の右面に摺動する部分及び右側板部22の左面に摺動する部分と、右側板部22との間には、微小な遊び(隙間)が形成されており、上端摺動部101及び下端摺動部102は、微小な遊びをもって、右側壁部22に摺動している。
【0022】
そして、下端摺動部102は、本体部30の下端面30aから下方に突出するように延出して形成されている。すなわち、下端摺動部102は、本体部30の下端面30aから下方に突出した突出部分102aを有している。この突出部分102aは、四角柱状の外形を有している。この突出部分102aを有することで、下端摺動部102における最下端の摺動位置を、上端摺動部101の摺動位置から離間させ、また、取付け孔31、31の位置から離間させている。本体部30の下端面30aは、上記したように、ドラムハウジング93の上面93aに接触する被接触面であるため、下端摺動部102は、キャリアプレート3の当該被接触面から突出するように延出して形成されているといえる。
【0023】
次に
図5を参照して、ドラムハウジング93について説明する。ドラムハウジング93には、ドラム92を収容するドラム収容部201と、ドラムハウジング93をドアパネル(不図示)に固定するための2つの固定孔202、202と、ガイドレール2の下端部を嵌合する嵌合穴203aを有した嵌合部203と、が形成されている。また、ドラムハウジング93の上面93aは、平坦面であり、窓ガラスGの全開状態において、キャリアプレート3の下端面30aと接触し、キャリアプレート3の下方への移動を規制する規制面及び規制部を成している。なお、ドラムハウジング93の上部が、規制面(上面93a)を有する規制部であるともいえる。
【0024】
また、ドラムハウジング93の上面93aには、上下方向に深さを有する矩形状の取付け穴204と、取付け穴204に配置され、キャリアプレート3とドラムハウジング93の上面93aとの接触時の衝撃を緩和するための弾性体(不図示)と、取付け穴204の右側に隣接して配設され、キャリアプレート3の上記突出部分102aを受容する受容部206と、が形成されている。
【0025】
受容部206は、上下方向に深さを有する矩形状の穴であり、突出部分102aに対応する位置、すなわちガイドレール2の右側板部22の位置に配設されている。また、受容部206は、四角柱状の中空部を有しており、下端摺動部102の突出部分102aに対し相補的な形状を有している。そして、受容部206は、窓ガラスGの全開状態、すなわち、キャリアプレート3の(本体部30の)下端面30aにドラムハウジング93の上面93aが接触した状態において、上方から進入してくる突出部分102aを受容する。この受容部206によって、キャリアプレート3の下端面30aにドラムハウジング93の上面93aが接触したとき、突出部分102aが、ドラムハウジング93の上面93aと干渉しないようになっている。
【0026】
また、受容部206は、突出部分102aが遊嵌する(遊びを持った状態で嵌る)ように構成されている(
図6参照)。すなわち、受容部206の左右内側面に、突出部分102aの左右外側面が遊嵌し、受容部206の前後内側面に、突出部分102aの前後外側面が遊嵌する。受容部206の左右内側面は、キャリアプレート3が左右方向(車両前後方向)に傾こうとしたとき、突出部分102aの左右外側面に接触し、キャリアプレート3が傾くのを規制する傾き規制面を成している。
【0027】
図6に示すように、窓ガラスGが全開状態になるとき、キャリアプレート3が移動範囲の下端に移動すると、突出部分102aが受容部206に受容され、突出部分102aが受容部206に遊嵌すると共に、キャリアプレート3の下端面30aにドラムハウジング93の上面93aが接触する。これによって、窓ガラスGの全開状態において、キャリアプレート3の下方への移動が規制されると共に、キャリアプレート3の左右方向(車両前後方向)への傾きが規制される。また、突出部分102aの高さ寸法(上下方向の寸法)によって、キャリアプレート3が移動範囲の下端に位置した状態だけでなく、下端付近に位置した状態でも、下端摺動部102の突出部分102aが受容部206に遊嵌する。そのため、窓ガラスGの全開状態への下降動作の完了直前や、窓ガラスGの全開状態からの上昇動作の開始直後においても、キャリアプレート3の車両前後方向の傾きが規制されることになる。
【0028】
なお、受容部206の位置は、ガイドレール2に摺動する突出部分102aが進入するため、ガイドレール2と嵌合することができない。そのため、
図6に示すように、ガイドレール2の右部の上記延出した部分が、受容部206の下の位置まで進入し、この部分と、嵌合部203の右部とが嵌合している。
【0029】
(実施形態の作用及び効果)
以上、上記実施形態の構成によれば、下端摺動部102を、キャリアプレート3の下端面30aから下方に突出するように設けたことで、上端摺動部101の摺動位置と下端摺動部102の摺動位置との離間距離を大きく取ることができる。これにより、各摺動部101、102とガイドレール2との遊びに基づくキャリアプレート3の回転ガタを抑制することができる。また、窓ガラスGが車両前後方向に傾くとき、取付け孔31の位置(厳密には2つの取付け孔31、31の中間位置)がキャリアプレート3の回転支点になるところ、この回転支点と下端摺動部102の摺動位置との離間距離を大きく取ることができる。そのため、窓ガラスGが窓枠(不図示)に引っかかった状態で昇降しようとしたとき等、窓ガラスGが傾こうとする力が働いたとき、モーメント(てこの原理)によって、下端摺動部102に強い応力がかかるのを抑制することができる。これによって、下端摺動部102やガイドレール2に変形が生じてしまうのを抑制することができる。さらに、下端摺動部102のみを下方に延ばした構成であるため、キャリアプレート3全体を下方に延ばした構成とは異なり、キャリアプレート3の移動ストロークを短くすることがない。このように、上記実施形態の構成によれば、キャリアプレート3の移動ストロークを短くすることがなく、且つ上端摺動部101の摺動位置や上記回転支点と、下端摺動部102の摺動位置との離間距離を大きく取ることができる。なお、上記実施形態においては、2つの取付け孔31、31の中間位置が、キャリアプレート3の本体部30の中心よりも上側に位置する構成であったが、2つの取付け孔31、31が本体部30の中心よりも上側に位置する構成や、2つの取付け孔31、31が本体部30の中心よりも下側に位置する構成であっても良い。いずれの場合にも、下端摺動部102やガイドレール2の変形を抑制できる旨の効果を奏するといえる。
【0030】
また、ドラムハウジング93に突出部分102aを受容する受容部206を設けたことで、窓ガラスGの全開状態において、突出部分102aが、ドラムハウジング93と干渉するのを避けることができる。
【0031】
さらに、下端摺動部102の突出部分102aが、受容部206に遊嵌する構成としたことで、キャリアプレート3が移動範囲の下端付近に位置したとき、下端摺動部102の突出部分102aが受容部206に遊嵌し、突出部分102aの、昇降方向以外の方向への移動が規制される。これにより、キャリアプレート3が車両前後方向に傾くのを規制することができる。これによって、窓ガラスGの全開状態のときはもちろん、窓ガラスGの全開状態への下降動作の完了直前や、窓ガラスGの全開状態からの上昇動作の開始直後に、キャリアプレート3が車両前後方向に傾き、窓ガラスGが車両前後方向に傾くのを抑制することができる。例えば、突出部分102aの高さ寸法(上下方向の寸法)が、3mm以上であり、突出部分102aに対する受容部206の遊び(突出部分102aの左右方向の幅と、受容部206の左右方向の幅との差分)が、0.5mm以下である場合には、キャリアプレート3の傾きを、0.5°以下に抑えることができ、キャリアプレート3の下端面30aとドラムハウジング93の上面93aとが成す傾き抑制機能(0.8°以下に抑制)以上の傾き抑制機能を得ることができる。
【0032】
(その他の実施形態について)
なお、上記実施形態において、
図7(a)に示すように、突出部分102aの高さ寸法を短くし、受容部206の深さ寸法を短くする構成であっても良い。
【0033】
また、上記実施形態においては、突出部分102aを有する下端摺動部102が、ガイドレール2の右側板部22に摺動する構成であったが、
図7(b)に示すように、突出部分102aを有する下端摺動部102が、ガイドレール2の左側板部23に摺動する構成であっても良い。かかる場合、下端摺動部102が左側板部23の位置になるため、受容部206をこれに合わせた位置にする。
【0034】
なお、上記実施形態においては、受容部206に、突出部分102aが遊嵌する構成であったが、受容部206は、突出部分102aを受容する構成であれば、突出部分102aが遊嵌しない構成であっても良い。また、受容部206において、受容部206の左右内側面に突出部分102aの左右外側面が遊嵌し、受容部206の前後内側面に突出部分102aの前後外側面が遊嵌しない構成であっても良い。かかる場合、
図8に示すように、受容部206の前後内側面(前後側壁)を省略しても良い。
さらに言えば、キャリアプレート3が左右方向に傾こうとしたときに、突出部分102aに接触してキャリアプレート3が傾くのを規制する傾き規制面を有していれば良いため、受容部206において、左右内側面(左右側壁)のいずれか一方を省略する構成であっても良い。
【0035】
また、上記実施形態において、突出部分102aが、受容部206に対し遊嵌(遊びをもって嵌る)構成であったが、突出部分102aが、受容部206に対し、遊びをもたずに嵌合(接触嵌合)する構成であっても良い。
【0036】
なお、上記実施形態においては、ドラムハウジング93の上面93aが、窓ガラスGの全開状態においてキャリアプレート3の下端面30aに接触しキャリアプレート3の下方への移動を規制する規制部を成す構成であったが、ドラムハウジング93の取付け穴204に取り付けた弾性体が、当該規制部を成す構成であっても良い。
【0037】
また、上記実施形態においては、シングルレール式のウインドレギュレータ1に本発明を適用したが、2本のガイドレールを備えたダブルレール式のウインドレギュレータに本発明を適用しても良い。
【0038】
なお、上記実施形態においては、自動車の窓ガラスGを昇降させるウインドレギュレータに本発明を適用したが、車両の窓ガラスGを昇降させるウインドレギュレータであれば、鉄道車両の窓ガラスGを昇降させるウインドレギュレータに本発明を適用しても良い。
【0039】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:ウインドレギュレータ、 2:ガイドレール、 3:キャリアプレート、 4:上昇側ワイヤ、 5:下降側ワイヤ、 30:本体部、 30a:下端面、 92:ドラム、 95:ハウジング、 93a:上面、 102:下端摺動部、 102a:突出部分、 206:受容部、 G:窓ガラス