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特開2022-37681非晶質シリカ粉末及びそれを含有する樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037681
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】非晶質シリカ粉末及びそれを含有する樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20220302BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220302BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220302BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
C01B33/18
C08L101/00
C08L63/00 C
C08K3/36
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141932
(22)【出願日】2020-08-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】畑山 靖明
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】杉本 敦也
【テーマコード(参考)】
4G072
4J002
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072BB05
4G072BB13
4G072DD04
4G072GG01
4G072HH16
4G072MM26
4G072MM28
4G072TT01
4G072TT02
4G072TT05
4G072UU09
4J002AA001
4J002CD021
4J002CD051
4J002CD061
4J002DJ016
4J002FD016
4J002GQ05
4J002HA01
(57)【要約】
【課題】充填性、保存性の何れにも優れた液状封止材を得るに好適な非晶質シリカ粉末及びそれが充填されてなる樹脂組成物を提供する
【解決手段】粒子径頻度分布において最頻径が1~10μmの範囲内にあり、0.50μm未満の粒子径の粒子の頻度が1.0%以上であり、かつ、1~12m/gの比表面積を有するように、非晶質シリカ粉末を調製する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径頻度分布において最頻径が1~10μmの範囲内にあり、0.50μm未満の粒子径の粒子の頻度が1.0%以上であり、かつ、1~12m/gの比表面積を有することを特徴とする非晶質シリカ粉末。
【請求項2】
前記比表面積が3~10.5m/gである、請求項1に記載の非晶質シリカ粉末。
【請求項3】
13μm以上の粒子径を有する粒子の篩上積算分布が1質量%以下である、請求項1または2に記載の非晶質シリカ粉末。
【請求項4】
溶融化率95%以上である、請求項1~3いずれかに記載の非晶質シリカ粉末。
【請求項5】
ウラン元素およびトリウム元素の含有量の合計が10ppb以下である、請求項1~4いずれかに記載の非晶質シリカ粉末。
【請求項6】
請求項1~5いずれかに記載の非晶質シリカ粉末を10~90質量%含有してなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項7】
液状封止材である、請求項6記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質シリカ粉末及び樹脂組成物に関し、詳しくは液状封止材の充填材として好適な非晶質シリカ粉末と、それを含有する樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化・軽量化・高性能化は、半導体素子の高集積化、半導体パッケージの多ピン化・薄型化及び回路基板への高密度実装化技術によって実現されてきた。最近では、従来のピン挿入型パッケージに代わって高密度実装が可能なクアッドフラットパッケージ(QFP)のような表面実装パッケージが主流となり、今後もより一層の小型化・薄型化の要求が高まりつつある。
【0003】
こうしたパッケージ実装技術のなかで、半導体素子を直接回路基板に搭載するベアチップ実装技術が、小型・薄型・軽量化、高密度実装化、短納期化、低コスト化などが要求される半導体及び電子機器の実装技術としてクローズアップされている。ベアチップ実装されるチップと基板間の電気的接続方法には、ワイヤーボンディング、フリップチップボンディングなどの方式があり、チップの保護、充填補強等の必要性から、実装されたチップはその大部分が液状封止材によって封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4244259号明細書
【特許文献2】特許第5265097号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、電子機器は小型化や薄型化の傾向にあり、封止剤に用いられる樹脂組成物にも高い流動性が求められる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、流動性に優れた液状封止材を得るに好適な非晶質シリカ粉末及びそれが充填されてなる樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、非晶質シリカ粉末の粒子径分布およびその比表面積を適切に調整することによって、上記課題を解決することに成功した。
【0007】
すなわち、本発明は、ひとつの局面において、粒子径頻度分布において最頻径が1~10μmの範囲内にあり、0.50μm未満の粒子径の粒子の頻度が1.0%以上であり、かつ、1~12m/gの比表面積を有することを特徴とする非晶質シリカ粉末を提供する。
本発明の非晶質シリカ粉末は、前記比表面積が3~10.5m/gである。
本発明の非晶質シリカ粉末は、13μm以上の粒子径を有する粒子の篩上積算分布が1質量%以下である。
さらに、本発明の非晶質シリカ粉末は、溶融化率95%以上であり、また、ウラン元素およびトリウム元素の濃度の合計が10ppb以下である。
【0008】
本発明は、もうひとつの局面において、本発明の非晶質シリカ粉末を10~90質量%含有してなることを特徴とする樹脂組成物も提供する。
本発明の樹脂組成物は、液状封止剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の非晶質シリカ粉末を含有してなる樹脂組成物は、粘度特性に優れているので、特に液状封止材として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、更に詳しく本発明について説明する。
【0011】
<非晶質シリカ粉末>
本発明は、粒子径頻度分布において最頻径が1~10μmの範囲にある非晶質シリカ粉末において、0.50μm未満の粒子径の粒子を一定以上含有させ、比表面積を特定の範囲に調整する。この調整により、樹脂組成物としたときの流動性を改善することができる。
【0012】
本発明の非晶質シリカ粉末の粒子径頻度分布において、最頻径が1~10μmの範囲内にある。非晶質シリカ粉末の粒子径頻度分布における最頻径が10μmを超えると、上記の問題が生じる。一方、粒子径頻度分布における最頻径が1μm未満といった粒径の小さい粉末では液状封止材の粘度が高くなりすぎ、粉末の充填量を高くすることができなくなる。下限値は1.5μm以上であってよく、2.0μm以上であってよく、2.5μm以上であってよく、3.0μm以上であってよく、3.2μm以上であってよい。上限値は8.0μm以下であってよく、7.0μm以下であってよく、6.0μm以下であってよく、5.0μm以下であってよく、4.2μm以下であってよい。ここでいう最頻径とは、粉末の後述する測定方法により得られる粒子径分布において最も高い頻度を示す粒子径のことである。なお、原料となる非晶質シリカ粉末の最頻径が10μmを超えている場合、分級を行って、粒子径分布を調整する。
【0013】
また、1~10μmの範囲内に極大値を有するピークにおいて、0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度を2.0%未満とすれば、非晶質シリカ粉末の流動性をより高めることができる。より好ましくは1.5%以下、1.0%以下、0.5%以下であり、0.0%であってよい。0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度を2.0%未満にする方法は、従来公知の方法を採用でき、例えば、精密風力分級機を用いて粗粉側、微粉側をカットする方法を例示できる。なお、0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度は後述する粒度分布の測定方法にて得られる値とする。
【0014】
粒子径頻度分布において1~10μmの範囲内に頻度極大を示すピークの数は、本発明の効果を得る観点からは1つであってよいし、複数のピークであってもよい。
【0015】
粒子径頻度分布において1~10μmの範囲内に頻度極大を示す第1のピークの頻度極大における頻度が5体積%以上であってよい。頻度の下限値は、9体積%以上であってよい。頻度の上限値は、20体積%以下であってよく、15体積%以下であってよく、14体積%以下であってよい。
【0016】
また、本発明の非晶質シリカ粉末は、0.50μm未満の粒子径の粒子の頻度が1.0%以上である。最頻径が1~10μmの粒子に0.50μm未満の粒子径の粒子を加えることで、非晶質シリカ粉末の流動性を改善することができる。0.50μm未満の粒子径の粒子の頻度の上限は10%以下であってよく、9%以下であってよく、7%以下であってよく、5%以下であってよく、4%以下であってよく、3%以下であってよい。なお、0.50μm未満の粒子径の粒子の頻度は、後述する粒度分布測定により得られる値とする。
【0017】
0.50μm未満の粒子径の粒子の頻度は、本発明の効果を高める観点から、少なくとも0.10μm~0.50μmの範囲に現れることが好ましい。また、全ての頻度が0.10μm~0.50μmの範囲に無くてもよいが、0.1~0.3μmの範囲には頻度が現れることが好ましい。
【0018】
また、粒子径の頻度分布において、0.50μm未満の粒子径の粒子は、1~10μmの範囲内に極大値を有するピークと別のピークに含まれてよい。例えば、1~10μmの範囲内に極大値を有するピークと0.50μm未満に極大値を有するピークとを有する場合や、1~10μmの範囲内に極大値を有するピークと0.50~1μm未満に極大値を有するピークを含み、0.50~1μm未満に極大値を有するピークが0.50μm未満に1.0%以上の頻度を有する場合などである。なお、いずれの場合も上記2つのピークの裾は重なってもよいし、重なっていなくてもよい。
【0019】
また、0.50μm未満の粒子径の粒子は、1~10μmの範囲内に極大値を有するピークの一部であってもよい。例えば、1~10μmの範囲内に極大値を有するピークが0.50μm未満に1.0%以上の頻度を有する場合などである。
【0020】
また、0.50μm未満の粒子径の粒子は、一部が1~10μmの範囲内に極大値を有するピークに含まれ、他が1~10μmの範囲内に極大値を有するピークとは別のピークに含まれてもよい。例えば、1~10μmの範囲内に極大値を有するピークの裾が0.50μm未満に頻度を有し、0.50μm未満に極大値を有するピークがある場合などである。
【0021】
本発明においては、0.50μm未満に極大値を有するピークが、1~10μmの範囲内に極大値を有するピークとは独立している場合が好ましい。ただし、この場合であっても、それぞれのピークの裾は重なってもよいし、重ならなくてもよい。
【0022】
また、粒子径の頻度分布において、0.50μm未満の粒子径の粒子が、1~10μmの範囲内に極大値を有するピークとは別のピークに含まれる場合、0.50μm未満に頻度を有するピークの数は、特に限定されず、ピーク数は1であっても複数であってもよい。
【0023】
また、0.50μm未満の粒子径の粒子が、1~10μmの範囲内に極大値を有するピークとは別のピークに含まれる場合、0.50μm未満の粒子径の粒子を含むピークは0.50μm以上に頻度を有していてもよいし、頻度を有していなくてもよい。0.50μm以上に頻度を有する場合には、頻度の80%以上が0.50μm未満の頻度であることが好ましい。
【0024】
また、0.50μm未満の粒子径の粒子を含むピークが、1~10μmの範囲内に極大値を有するピークとは別のピークである場合において、0.50μm未満の粒子径の粒子を含むピークの極大値は0.1μm超0.4μm以下の範囲にあるのが好ましい。
【0025】
また、本発明の非晶質シリカ粉末において、比表面積を1~12m/gとする。非晶質シリカ粉末の比表面積が12m/gを超える場合には、微粒子間の凝集傾向が増して、非晶質シリカ粉末の流動性が低下する。上限は10.5m/g以下であってよく、9m/g以下であってよく、8m/g以下であってよい。一方、比表面積が1m/g未満の場合には、非晶質シリカ粉末が最密充填構造を形成しにくくなるために、その流動性が低下する。下限は3m/g以上が好ましく、4m/g以上がより好ましく、5m/g以上がさらに好ましい。
【0026】
特に、本発明の効果を高めるために、0.50μm未満の粒子径の粒子を含むピークが、1~10μmの範囲内に極大値を有するピークとは別のピークとした場合、非晶質シリカ粉末の比表面積が小さくなる傾向にあるが、0.50μm未満の粒子径の粒子の使用量を増やす等して、比表面積を所望の範囲に調整できる。
【0027】
特に、本発明の効果を高めるために、1~10μmの範囲内に極大値を有するピークにおいて、0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度を2.0%未満とした場合、非晶質シリカ粉末の比表面積が小さくなる傾向にあるが、0.50μm未満の粒子径の粒子の使用量を増やす等して、比表面積を所望の範囲に調整できる。
【0028】
本発明の非晶質シリカ粉末においてd10、d50、d90は特に限定されない。d10が0.5~4.0μmであってよい。d50は3.5~7.0μmであってよい。d90が4.0~9.0μmであってよい。ただし、本発明の効果を得る観点からは、d10は1.5~3.5μmが好ましい。d50は3.0~5.0μmが好ましい。d90は4.0~7.0μmが好ましい。ここで、d10、d50およびd90は、それぞれ、粒子径累積分布における累積値が10%、50%および90%での粒子径である。非晶質シリカ粉末につき、粒子径分布は、後述する方法で得られ、体積分布で示し、屈折率を1.5と設定する。
【0029】
本発明の非晶質シリカ粉末は、13μm以上の粒子径を有する粒子の篩上積算分布が1質量%以下であることが好ましい。0質量%であってもよい。粗粒子が少ないことにより、実装基板とチップ間の高さも狭ギャップの場合であっても好ましく用いることができる。また、粗粒子が少ないことで、非晶質シリカ粉末がさらに最密充填構造を形成しやすくすることが可能となり、液状封止材の流動性が向上する。
【0030】
本発明の非晶質シリカ粉末は、非晶質シリカ粉末以外のその他の成分(添加剤等)を本発明の効果を害さない範囲で含んでも良い。例えば、その他の成分は5質量%以下であってよく、3質量%以下であってよく、1質量%以下であってよく、0質量%であってもよい。
【0031】
また、本発明の非晶質シリカ粉末は、用途によっては、その他の成分として、ウラン元素やトリウム元素を含まないほうがよい。半導体を封止するための液状封止材に用いる場合、メモリの書き換えの不具合発生率を抑制する観点から、ウラン元素の濃度(含有量)とトリウム元素の濃度(含有量)の合計が10ppb以下であることが好ましい。
【0032】
本発明の非晶質シリカ粉末は、半導体チップと液状封止材との熱膨張率を近づけるという点において、結晶質シリカを高温で溶融ないしは合成法で製造された非晶質シリカ粉末が最適である。よって、本発明の非晶質シリカ粉末の溶融化率は95%以上であることが好ましい。
【0033】
非晶質シリカ粉末の形状としては、球状、破砕状、針状、フレーク状等の何れでも良いが、可及的に多量充填し液状封止材の熱膨張率を低減させる点からは、球状の非晶質シリカ粉末が好適である。
【0034】
本発明の非晶質シリカ粉末は、他の無機充填材と混合して用いてもよい。ここで他の無機充填材とは、アルミナ粉末やマグネシア粉末等のように種類が異なるもののほか、同じ非晶質シリカ粉末であっても粒度分布が異なるものも含む。
【0035】
なお、本発明の非晶質シリカ粉末の粒子径頻度分布は、コールター粒度分布測定器LS13 320型(コールターベックマン社)を用いて測定する。測定条件については、事前に超音波ホモジナイザーで分散させたシリカ水溶液を機器中に投入し、屈折率1.5の条件にて解析を行う。
【0036】
本発明の非晶質シリカ粉末を製造するには、異なる粒度構成を持つ粉末の適切量の混合または分級によって行うことができる。工業的には、分級機による分級が望ましく、分級操作は乾式法、湿式法のいずれの方式であってもよい。なお、生産性と粗大粒子除去の観点から乾式の精密風力分級機を用いることが好ましい。
【0037】
<樹脂組成物>
次に、本発明の樹脂組成物について説明する。
【0038】
本発明の非晶質シリカ粉末を樹脂に混合する際にしては、本発明の非晶質シリカ粉末を単独で使用してもよく、また通常の球状ないしは破砕状粉末と併用することもできる。樹脂の配合割合は、樹脂組成物の要求特性によって一概に決定することができないが、本発明の非晶質シリカ粉末の混入率として10~90質量%の範囲で選択される。
【0039】
本発明では、液状封止材に配合される非晶質シリカ粉末以外の配合材料、添加剤については特に限定されるものではなく、本発明の効果を害さない範囲で、従来一般に使用されているものを使用して良い。その他の成分(樹脂及び非晶質シリカ粉末以外の成分)は10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下であってよい。また、非晶質シリカ粉末の用途も封止材に限定されるものではなく、接着剤、塗料、テープ、樹脂基板等のフィラー用途や、アンチブロッキング材等にも利用できる。
【0040】
液状封止材に配合される非晶質シリカ粉末以外の配合材料、添加剤としては、常温で液状のエポキシ樹脂を典型例として挙げることができる。使用し得るエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、具体的にはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。その場合、液状エポキシ樹脂と本発明の非晶質シリカ粉末との密着性を高めるために、シラン系の表面処理剤で本発明の非晶質シリカ粉末を表面処理しておくことによって、または表面処理を施すまでもなく添加することによって、更に優れた特性を得ることができる。
【0041】
本発明の樹脂組成物には、更に必要に応じてメチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸等の硬化剤、ジシアンジアミド、高融点イミダゾール化合物等の硬化促進剤、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤、カーボンブラック等の顔料、ハロゲン化合物、リン化合物等の難燃剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤、ゴム、シリコーン化合物等の低応力付与剤を適宜配合してもよい。
【実施例0042】
<非晶質シリカ粉末の調製>
本発明の調製例の非晶質シリカ粉末は、以下の手順で調製した。なお、原料には市販の非晶質シリカを用いた。なお、この原料は、1~10μmの範囲に、最頻径のピーク1個がある。
【0043】
[粗粉分級]
まず、原料非晶質シリカ粉末は、大きな粒子径を除外するために粗粉分級した。13μm以上の粒子径を有する粒子の篩上積算分布を表1に示した。なお、実施例において、13μm以上の粒子径を有する粒子の篩上積算分布は0.0質量%である。
【0044】
[微粉分級]
次に、一部の実施例について、精密風力分級機を用いて微粉側をカットする方法にて、0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度を調整した。0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度は表1に示す通りである。なお、実施例において、1~10μmの範囲の最頻径における頻度は9.3~13.6体積%である。
【0045】
[超微粉配合]
次に、実施例については、微粉分級までの工程で得られた非晶質シリカ粉末と比較して、より粒子径の小さな非晶質シリカ粉体(粒子サイズ(中位径)が0.10μmまたは0.14μmの超微粉)を、表1に示す内添加比率で配合した。この配合において、いずれの実施例も0.1~0.3μmの範囲には頻度が現れる粒子サイズを選択した。また、1~10μmの範囲内に極大値を有するピークとは別のピークが現れるように配合した。また、粒子サイズが0.14μmの実施例では0.50μm未満の粒子径の粒子を含むピークの極大値は0.1~0.3μmの範囲になった。
【0046】
<樹脂組成物の調製>
液状エポキシ樹脂(JER-807(三菱ケミカル社製))と実施例又は比較例のシリカを35:65(重量%)の比率で混合した。
【0047】
<非晶質シリカ粉末および樹脂組成物の評価>
得られた非晶質シリカ粉末および樹脂組成物の特性値を以下に従って測定した。測定手法はそれぞれ以下の通りである。
【0048】
[非晶質シリカ粒子の評価]
(1)比表面積
ガス吸着法により測定した吸着等温線にBET理論を適用して、比表面積(BET値)を求めた(BET法)。
【0049】
(2)粒子径
粒子径頻度分布や粒子径累積分布は、サンプル密度に影響されないコールター法を用いて測定した。
超微粉の中位径d(μm)は、BET法を用いて測定したBET値から、シリカ粒子(密度2.2g/cm)に対する以下の数式:
【0050】
【数1】
に従って算出した。
【0051】
(3)溶融化率
本発明における溶融化率は、粉末X線回折装置を用い、CuKα線の2θが26°~27.5°の範囲において試料のX線回折分析を行い、特定回折ピークの強度比から測定することができる。すなわち、結晶シリカは、26.7°に主ピークが存在するが、溶融シリカではこの位置には存在しない。溶融シリカと結晶シリカが混在していると、それらの割合に応じた26.7°のピーク高さが得られるので、結晶シリカ標準試料のX線強度に対する試料のX線強度の比から、結晶シリカ混在率(試料のX線強度/結晶シリカのX線強度)を算出し、次式:
【0052】
【数2】
を用いて溶融化率を求めることができる。
【0053】
(4)ウラン元素およびトリウム元素の含有量
誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いてウラン元素およびトリウム元素の含有量を測定した。
【0054】
[樹脂組成物の評価]
混合後の樹脂組成物粘度をレオメーターで測定を行った(せん断速度:1(1/s)
、温度:30℃)。結果を表1に示した。
【0055】
[評価結果]
表1に、各非晶質シリカ粉末の調製条件(粉体分級条件、配合)、粉末特性および各非晶質シリカ粉末を用いた樹脂組成物の流動特性(粘度)の物性値を示す。
【0056】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0057】
粒子径頻度分布において最頻径が1~10μmの範囲内にあり、0.50μm未満の粒子径の粒子の頻度が1.0%以上であり、かつ、1~12m/gの比表面積を有する、本発明による非晶質シリカ粉末を充填した樹脂組成物は、流動性が優れているので、半導体装置用の封止剤に好適である。
【手続補正書】
【提出日】2021-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径頻度分布において最頻径が1~10μmの範囲内にあり、0.50μm未満の粒子径の粒子の頻度が1.0%以上であり、3~10.5/gの比表面積を有し、かつ、13μm以上の粒子径を有する粒子の篩上積算分布が1質量%以下であることを特徴とする非晶質シリカ粉末。
【請求項2】
溶融化率95%以上である、請求項1に記載の非晶質シリカ粉末。
【請求項3】
ウラン元素およびトリウム元素の含有量の合計が10ppb以下である、請求項1または2に記載の非晶質シリカ粉末。
【請求項4】
さらに、1~10μmの範囲内に極大値を有するピークにおいて、0.50~1.83μmの粒子径の粒子の頻度が2.0%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の非晶質シリカ粉末。
【請求項5】
請求項1~いずれかに記載の非晶質シリカ粉末を10~90質量%含有してなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項6】
液状封止材である、請求項5に記載の樹脂組成物。