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  • 特開-ポリエチレン系樹脂多層発泡シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037690
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】ポリエチレン系樹脂多層発泡シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20220302BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220302BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220302BHJP
   B65D 81/03 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B27/18 D
B32B27/32
B65D81/03 100Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141946
(22)【出願日】2020-08-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100109601
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 邦則
(72)【発明者】
【氏名】谷口 隆一
(72)【発明者】
【氏名】西本 敬
【テーマコード(参考)】
3E066
4F100
【Fターム(参考)】
3E066AA21
3E066CA01
3E066CB03
3E066DA01
3E066HA01
3E066LA19
3E066LA30
3E066NA01
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK04D
4F100AK04E
4F100AK06
4F100AK06A
4F100AK06B
4F100AK06C
4F100AK06D
4F100AK06E
4F100AK12
4F100AK12B
4F100AK12D
4F100AK70
4F100AK70C
4F100AK70E
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100CA22
4F100CA22B
4F100CA22C
4F100CA22D
4F100CA22E
4F100DJ01
4F100DJ01A
4F100GB15
4F100JG01
4F100JN01
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4F100YY00E
(57)【要約】

【課題】 本発明は、高度な帯電防止性能を備えるとともに、被包装物への低分子量成分の移行量が極めて少ないという低汚染性を備えるポリエチレン系樹脂多層発泡シートを提供することを目的とする。

【解決手段】 本発明のポリエチレン系樹脂多層発泡シートは、発泡層と、発泡層に積層された樹脂層とを有する多層発泡シートであり、樹脂層が、表面層と中間層とからなる多層構造を有し、表面層及び中間層が共にポリエチレン系樹脂と高分子型帯電防止剤とを含有し、
中間層中の高分子型帯電防止剤の含有割合が、30重量%以上70重量%以下であり、
表面層中の高分子型帯電防止剤の含有割合が、5重量%以上30重量%未満である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂発泡層と、該発泡層の少なくとも片面側に積層された樹脂層とを有する多層発泡シートにおいて、
該樹脂層が、該多層発泡シートの表面側に位置する表面層と、該表面層と該発泡層との間に位置する中間層とからなる多層構造を有し、
該表面層及び該中間層が共にポリエチレン系樹脂と高分子型帯電防止剤とを含有し、
該中間層中の高分子型帯電防止剤の含有割合が、30重量%以上70重量%以下であり、
該表面層中の高分子型帯電防止剤の含有割合が、5重量%以上30重量%未満であることを特徴とするポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項2】
前記中間層1m当たりの高分子型帯電防止剤の含有量(A)が、1~5g/mであることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項3】
前記表面層1m当たりの高分子型帯電防止剤の含有量(B)が、0.05~0.8g/mであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項4】
前記中間層1m当たりの高分子型帯電防止剤の含有量(A)に対する前記表面層1m当たりの高分子型帯電防止剤の含有量(B)の比(B/A)が、0.03~0.3であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項5】
前記表面層の坪量が0.5~10g/mであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項6】
前記表面層が3~35重量%のポリスチレン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項7】
前記中間層に含まれる高分子型帯電防止剤がアイオノマー樹脂系帯電防止剤であり、前記表面層に含まれる高分子型帯電防止剤がアイオノマー樹脂系帯電防止剤であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項8】
前記ポリエチレン系樹脂多層発泡シートの前記表面層側の表面抵抗率が1×10Ω未満であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹多層発泡シートに関し、詳しくは、電子機器等の間紙や包装材として使用可能なポリエチレン系樹脂多層発泡シートであって、帯電防止性能に優れると共に、被包装物への低分子量成分の移行が少ないポリエチレン系樹多層発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂多層発泡シートは、軽量であると共に、緩衝性に優れるため、エレクトロニクス機器やその素材の包装分野等、具体的には、液晶パネルに使用されるガラス板の間に介在させて梱包する間紙等の用途に広く使用されている。
【0003】
このような用途においては、通常、ポリエチレン系樹脂多層発泡シート(以下、単に多層発泡シート又は発泡シートともいう。)への埃や塵等の付着を抑制するために、多層発泡シートへの帯電防止性能の付与が行われる。帯電防止性能を付与した多層発泡シートとして、例えば、特許文献1には、表面層に高分子型帯電防止剤が配合された多層発泡シートが開示されている。
【0004】
該多層発泡シートは、その用途によっては、更に高度な帯電防止性能を有するものが要求されることがある。高度な帯電防止性能を有する多層発泡シートとしては、例えば、特許文献2に開示されたものがある。特許文献2には、表面層層が、25重量%以上70重量%未満の熱可塑性樹脂と、30重量%を超え75重量%以下の高分子型帯電防止剤とからなり(ただし、両者の合計が100重量%)、表面抵抗率が1.0×10Ω未満の多層発泡シートを得ることができた旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-181933号公報
【特許文献2】WO2012/105237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、多層発泡シートは、帯電防止性能に優れていることに加え、被包装物を汚染しないことが求められることがある。即ち、高分子型帯電防止剤自体に含まれるわずかな低分子量成分が被包装物へ移行することが見出され、その用途によっては、被包装物への低分子量成分の移行量が更に少ない、低汚染性のポリエチレン系樹脂発泡シートの開発が望まれるようになった。
【0007】
しかし、従来の多層発泡シートにおいては、高度な表面抵抗率を得るためには、表面層に多量の高分子型帯電防止剤を配合しなければならないので、低分子量成分の被包装物への移行を抑制することが困難であった。一方、高分子型帯電防止剤に由来する低分子量成分の移行を抑制するために、高分子帯電防止剤の配合量を少なくすると、高度な帯電防止性能を得ることができなかった。このように、高度な帯電防止性能と優れた低汚染性とは相反する課題であり、従来において、両者を高いレベルで両立させることは困難であった。
【0008】
本発明は、前記の問題点に鑑みなされたものであり、高度な帯電防止性能を備えるとともに、被包装物への低分子量成分の移行量が極めて少ないという低汚染性を備えるポリエチレン系樹脂多層発泡シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示す多層発泡シートが提供される。
[1]ポリエチレン系樹脂発泡層と、該発泡層の少なくとも片面側に積層された樹脂層とを有する多層発泡シートにおいて、
該樹脂層が、該多層発泡シートの表面側に位置する表面層と、該表面層と該発泡層との間に位置する中間層とからなる多層構造を有し、
該表面層及び該中間層が共にポリエチレン系樹脂と高分子型帯電防止剤とを含有し、
該中間層中の高分子型帯電防止剤の含有割合が、30重量%以上70重量%以下であり、
該表面層中の高分子型帯電防止剤の含有割合が、5重量%以上30重量%未満であることを特徴とするポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
[2]前記中間層1m当たりの高分子型帯電防止剤の含有量(A)が、1~5g/mであることを特徴とする前記1に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
[3]前記表面層1m当たりの高分子型帯電防止剤の含有量(B)が、0.05~0.8g/mであることを特徴とする前記1または2に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
[4]前記中間層1m当たりの高分子型帯電防止剤の含有量(A)に対する前記表面層1m当たりの高分子型帯電防止剤の含有量(B)の比(B/A)が、0.03~0.3であることを特徴とする前記1~3のいずれか一項に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
[5]前記表面層の坪量が0.5~10g/mであることを特徴とする前記1~4のいずれか一項に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
[6]前記表面層が3~35重量%のポリスチレン系樹脂を含むことを特徴とする前記1~5のいずれか一項に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
[7]前記中間層に含まれる高分子型帯電防止剤がアイオノマー樹脂系帯電防止剤であり、前記表面層に含まれる高分子型帯電防止剤がアイオノマー樹脂系帯電防止剤であることを特徴とする前記1~6のいずれか一項に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
[8]前記ポリエチレン系樹脂多層発泡シートの前記表面層側の表面抵抗率が1×10Ω未満であることを特徴とする前記1~7のいずれか一項に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリエチレン系樹脂多層発泡シートは、発泡層の少なくとも片面側に樹脂層が積層され、該樹脂層が、表面層と中間層とからなり、該中間層が、30~70重量%の高分子型帯電防止剤を含有し、該表面層が、5重量%以上30重量%未満の高分子型帯電防止剤を含有することにより、高度な帯電防止性能を有すると共に、被包装物への低分子量成分等の移行が極めて少ないという低汚染性を有する多層発泡シートである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の多層発泡シートの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のポリエチレン系樹脂多層発泡シートについて詳細に説明する。
本発明のポリエチレン系樹脂多層発泡シート(以下、単に多層発泡シートともいう。)は、発泡層と該発泡層の少なくとも片面側に積層された樹脂層とを有し、該樹脂層が、該多層発泡シートの表面側に位置する表面層と、該表面層と該発泡層との間に位置する中間層とからなる多層構造を有するものである。
該多層発泡シートの一例を図1に示す。図に示される多層発泡シートにおいては、発泡層2の両面に樹脂層5が積層され、該樹脂層5は多層発泡シートの表面側に位置する表面層4と、表面層4と発泡層2との間に位置する中間層3とからなる。中間層3と表面層4は積層接着している。なお、発泡層2と樹脂層5との間に、他の樹脂層(図示せず)を有していてもよい。
図1において、1は多層発泡シートを、2は発泡層を、3は中間層を、4は表面層、5は樹脂層をそれぞれ示す。
【0013】
該中間層と表面層とは、通常、共押出により積層接着される。共押出によれば、熱ラミネーションによっては形成することができないような厚みの薄い層を形成することがきる。また、中間層と表面層とを全面で接着させることができるためか、帯電防止効果を安定的に発現させることができる。更に、共押出により、発泡層と中間層と表面層とを積層し、樹脂層が発泡層の片面側及び/又は両面側に積層された多層発泡シートを得ることもできる。
【0014】
本発明において、発泡層はポリエチレン系樹脂を主成分として含有し、樹脂層(中間層、表面層)はポリエチレン系樹脂を含有している。本明細書において、ポリエチレン系樹脂とは、エチレン成分単位が50モル%以上の樹脂を意味する。ポリエチレン系樹脂としては、具体的には低密度ポリエチレン(PE-LD)、直鎖状低密度ポリエチレン(PE-LLD)、高密度ポリエチレン(PE-HD)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸エチル(EEAK)や、これらの混合物等が挙げられる。低密度ポリエチレンとしては、長鎖分岐構造を有し、密度が910kg/m以上930kg/m未満のポリエチレン系樹脂が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンとしては、エチレンと炭素数4~8のα-オレフィンとの共重合体であって実質的に分子鎖が線状であり、密度が910kg/m以上930kg/m未満のポリエチレン系樹脂が好ましく、高密度ポリエチレンとしては、エチレン単独重合体又はエチレンと炭素数4~8のα-オレフィンとの共重合体であって密度が930kg/m以上のポリエチレン系樹脂が好ましい。
なお、本明細書において、「主成分」とは、その含有割合が50重量%以上であることをいい、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%である。
【0015】
該発泡層を構成するポリエチレン系樹脂(A)は、前記のポリエチレン系樹脂の中でも、発泡性に優れると共に、柔軟性に優れることから、低密度ポリエチレン、又は低密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンの混合樹脂が好ましく、低密度ポリエチレンがより好ましい。混合樹脂の場合、直鎖状低密度ポリエチレンの配合量は、低密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとの合計100重量%に対して5~20重量%が好ましく、より好ましくは8~15重量%である。
【0016】
また、中間層が含有するポリエチレン系樹脂(B)は、前記ポリエチレン系樹脂の中でも、ポリエチレン系樹脂(A)と同種のポリエチレン系樹脂を用いることが、発泡層との接着性に優れることから好ましい。具体的には、低密度ポリエチレン、又は低密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンの混合樹脂が好ましく、低密度ポリエチレンがより好ましい。但し、異なる種類の樹脂を用いることもできる。
【0017】
また、表面層が含有するポリエチレン系樹脂(C)は、前記ポリエチレン系樹脂の中でも、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、又は低密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンの混合樹脂が好ましく、低密度ポリエチレンがより好ましい。表面層が直鎖状低密度ポリエチレンを含有していると、低分子量成分の移行量をより少なくすることができる。中間層と表面層の接着性に優れ、製造が容易であることから、表面層が含有するポリエチレン系樹脂(C)は、中間層が含有量するポリエチレン系樹脂(B)と同種のポリエチレン系樹脂を用いることが好ましい。但し、異なる種類の樹脂を用いることもできる。
【0018】
該発泡層を構成する基材樹脂には、必要に応じて、熱可塑性エラストマーやポリエチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂等の他の重合体を配合することができる。他の重合体を配合する場合には、その配合量は、発泡層の基材樹脂100重量部に対して20重量部以下であることが好ましく、より好ましくは10重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下である。発泡層の基材樹脂はポリエチレン系樹脂のみで構成されることが特に好ましい。
【0019】
本発明の多層発泡シートにおいては、前記した中間層、及び表面層のそれぞれが、高分子型帯電防止剤を含有している。
該高分子型帯電防止剤としては、ポリエーテル、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルとポリオレフィンとのブロック共重合体、アイオノマー樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリエーテルとポリオレフィンとのブロック共重合体、アイオノマー樹脂が好ましく、アイオノマー樹脂が特に好ましい。
【0020】
該ブロック共重合体としては、ポリオレフィンのブロックとポリエーテルのブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合などの結合を介して繰り返し交互に結合した構造を有するものが挙げられる。
【0021】
アイオノマー樹脂は、エチレンまたはプロピレンなどのオレフィンと、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などのカルボン酸との共重合体の分子間を金属イオンで分子間架橋した樹脂であり、該金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属のイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属のイオン等が挙げられる。中でも、多層発泡シートに良好な帯電防止性能を付与することができることから、金属イオンとしてカリウムイオンを用いた、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のエチレン系カリウムアイオノマー樹脂が好ましい。
【0022】
これらの高分子型帯電防止剤の表面抵抗率は、好ましくは1×10Ω未満であり、より好ましくは5×10Ω以下、より好ましくは1×10Ω以下である。
なお、該表面抵抗率は、JIS K6271(2001年)の方法に準じて測定することができる。
【0023】
高分子型帯電防止剤の具体例としては、例えば、ポリエーテルとポリオレフィンとのブロック共重合体として三洋化成工業株式会社製「ペレスタット300」、「ペレスタット230」、「ペレスタットHC250」、「ペレクトロンPVH」、「ペレクトロンPVL」、「ペレクトロンHS」、「ぺレクトロンLMP」など、アイオノマー樹脂として三井・デュポンポリケミカル株式会社製「エンティラSD100」、「エンティラMK400」などの商品名で市販されているものが挙げられる。
【0024】
本発明においては、前記したように、該樹脂層が該中間層と該表面層とからなる多層構造を有し、更に、中間層と表面層とがそれぞれ特定量の高分子型帯電防止剤を含有している。この構成により、本発明の多層発泡シートは、帯電防止性能と低汚染性とを高いレベルで両立することができる。すなわち、該多層発泡シートは、表面抵抗率10Ω未満の高度な帯電防止性能を安定して発現することができ、さらに、被包装物への低分子量成分の移行量が極めて少なく、被包装物を汚染しにくいものである。
【0025】
次に、中間層と表面層の夫々について、高分子型帯電防止剤の含有量について説明する。該中間層における高分子型帯電防止剤の含有割合は、30重量%以上70重量%以下である。中間層が、この範囲内の高分子型帯電防止剤を含有することにより、帯電防止剤の導電ネットワーク構造が形成され、優れた帯電防止性が安定して発現する。該含有割合が小さすぎると、高度な帯電防止性能を得られないおそれがある。該含有割合が大きすぎると、中間層中の高分子型帯電防止剤に由来する低分子量成分が移行して被包装物を汚染する可能性がある。また、表面層や発泡層との接着性が低下し、良好な多層発泡シートが得られないおそれがある。かかる理由により、該含有割合の下限は、35重量%が好ましく、より好ましくは40重量%である。該含有割合の上限は、65重量%が好ましく、より好ましくは60重量%である。
中間層中の高分子型帯電防止剤の含有割合、更に後述する含有量は、製造時における、各原料の配合量から算出することができる。
【0026】
該表面層における高分子型帯電防止剤の含有割合は、5重量%以上30重量%未満である。表面層が、この範囲内の高分子型帯電防止剤を含有することにより、高度な帯電防止効果が発現する。その理由としては、中間層に加え、表面層にも特定量の高分子型帯電防止剤を含有することにより、前記した帯電防止剤の導電ネットワーク構造が多層発泡シート表面まで繋がるため、高度な帯電防止性能が発現すると考えられる。かかる理由により、該含有割合の下限は、7重量%が好ましく、より好ましくは10重量%である。該含有割合の上限は、25重量%が好ましく、より好ましくは20重量%である。
表面層中の高分子型帯電防止剤の含有割合、更に後述する含有量は、製造時における、各原料の配合量から算出できる。
【0027】
さらに、該表面層における高分子型帯電防止剤の含有割合が30重量%未満であることにより、表面層中の高分子型帯電防止剤に由来する低分子量成分が移行しにくくなり、被包装物の汚染が抑制される。また、表面層が存在することにより、中間層中の高分子型帯電防止剤に由来する低分子量成分の移行による被包装物の汚染も抑制される。
【0028】
本発明においては、該中間層1m当たりの高分子型帯電防止剤の含有量(A)は、1~5g/mであることが好ましい。該含有量(A)は、中間層の片面当たりの単位面積に含まれる高分子型帯電防止剤の絶対量を表す。
該含有量(A)が1g/m以上であれば、中間層中で高分子型帯電防止剤の密な導電ネットワーク構造が形成され、高度な帯電防止性能が安定して発現する。該含有量(A)が5g/m以下であれば、中間層に含まれる高分子型帯電防止剤に由来する低分子量成分等の有機物質が多層発泡シートの表面にブリードアウトすることがより抑制される。かかる理由により、該含有量(A)の下限は、1.5g/mであることがより好ましく、更に好ましくは2g/mである。また、該含有量(A)の上限は、4g/mであることがより好ましく、更に好ましくは3.5g/m、特に好ましくは3g/mである。
【0029】
また、該表面層1m当たりの高分子型帯電防止剤の含有量(B)は、0.05~0.8g/mであることが好ましい。該含有量(B)は、表面層の片面当たりの単位面積に含まれる高分子型帯電防止剤の絶対量を表す。該含有量(B)が、0.05g/m以上であれば、高度な帯電防止性能を安定して発現する多層発泡シートとなる。該含有量(B)が0.8g/m以下であれば、表面層に含まれる高分子型帯電防止剤に由来する低分子量成分等の有機物質が多層発泡シートの表面にブリードアウトすることがより抑制される。
かかる理由により、該含有量(B)の下限は、0.08g/mであることがより好ましく、更に好ましくは0.1g/mであり、特に好ましくは0.15g/mである。また、該含有量の上限は、0.7g/mがより好ましく、更に好ましくは0.6g/m、特に好ましくは0.5g/mである。
【0030】
本発明においては、該含有量(B)が、該含有量(A)に比べて少ないことにより、高帯電防止性能と低汚染性のバランスに優れる多層発泡シートが得られる。具体的には、該中間層1m当たりの高分子型帯電防止剤の含有量(A)に対する該表面層1m当たりの高分子型帯電防止剤の含有量(B)の比(B/A)が、0.03~0.3であることが好ましい。
比(B/A)が0.03以上であれば、表面層の単位面積当たりの高分子型帯電防止剤の含有量が、中間層の単位面積当たりの高分子型帯電防止剤の含有量に対して少なすぎるということがなく、高度な帯電防止性能がより安定して発現する。比(B/A)が、0.3以下であれば、表面層の単位面積当たりの高分子型帯電防止剤の含有量が、中間層の単位面積当たりの高分子型帯電防止剤含有量に対して多すぎるということがなく、表面層に含まれる高分子型帯電防止剤に由来する低分子量成分等の有機物質のブリードアウトがより確実に抑制される。かかる理由により、比(B/A)の下限は、0.05であることがより好ましく、更に好ましくは0.07である。また、比(B/A)の上限は、0.25であることがより好ましく、更に好ましくは0.2である。
【0031】
該含有量(A)は、前記したように、中間層の片面当たりの単位面積に含まれる高分子型帯電防止剤の絶対量であり、中間層中の高分子型帯電防止剤の含有割合(重量%)と中間層の坪量との積を単位換算することにより求めることができる。したがって、該含有量(A)は、中間層中の高分子型帯電防止剤の含有割合率を変更したり、中間層の坪量を変更したりすることにより調整することができる。
同様に、該含有量(B)は、表面層の片面当たりの単位面積に含まれる高分子型帯電防止剤の絶対量であり、表面層中の高分子型帯電防止剤の含有割合(重量%)と表面層の坪量との積を単位換算することにより求めることができる。したがって、該含有量(B)は、表面層中の高分子型帯電防止剤の含有割合を変更したり、表面層の坪量を変更したりすることにより調整することができる。
【0032】
該中間層の坪量は、1~10g/mであることが好ましい。この範囲内であれば、帯電防止性能と低分子量成分の移行による低汚染性能とのバランスが良好になる。かかる理由により、中間層の坪量は、より好ましくは2/m以上であり、更に好ましくは3g/mである。また、中間層の坪量の上限は、より好ましくは8g/m、更に好ましくは6g/mである。
【0033】
該表面層の坪量は0.5~10g/mであることが好ましい。該坪量が、この範囲内であれば、帯電防止性能と低分子量成分の移行による低汚染性能とのバランスが良好になる。該坪量が0.5g/m以上であれば、均一な厚みの表面層を形成しやすく、発泡シート全体にわたって均一な帯電防止性能を発現することができる。該坪量が10g/m以下であれば、低分子量成分の移行をより確実に抑制することができる。かかる理由により、表面層の坪量の下限は、0.8g/mであることがより好ましく、更に好ましくは1g/m、特に好ましくは1.5g/m、最も好ましくは2g/mである。また、表面層の坪量の上限は、8g/mであることがより好ましく、更に好ましくは6g/m、特に好ましくは4g/mである。
【0034】
該樹脂層の坪量は、1~20g/m以下であることが好ましい。該坪量が、この範囲内であれば、多層発泡シートの緩衝性や軽量性を確保することができる。また、後述する共押出により発泡層に樹脂層(中間層及び表面層)を積層する場合、良好な気泡構造を有する発泡層を形成することができる。かかる観点から、樹脂層の坪量の上限は、15g/mであることがより好ましく、さらに好ましくは12g/mであり、特に好ましくは10g/mである。一方、該樹脂層の坪量の下限は、2g/mであることがより好ましく、更に好ましくは3g/mである。
なお、本明細書において、前記樹脂層の坪量(表面層と中間層との合計坪量)、表面層の坪量、中間層の坪量は、樹脂層が発泡層の両面に積層されている場合には、各層のうち、片面側の坪量を意味する。
【0035】
本発明の多層発泡シートにおいては、前記したように、高分子型帯電防止剤としてアイオノマー樹脂を用いることが好ましい。即ち、該中間層に含まれる高分子型帯電防止剤がアイオノマー樹脂系帯電防止剤であり、該表面層に含まれる高分子型帯電防止剤がアイオノマー樹脂系帯電防止剤であることが好ましい。高分子型帯電防止剤としてアイオノマー樹脂を用いることにより、多層発泡シートの低汚染性をより高めることができる。
【0036】
高分子型帯電防止剤としてアイオノマー樹脂を用いる場合、優れた帯電防止性能を安定して発現させるため、ポリアルキレングリコールを用いてアイオノマー樹脂を表面層中や、中間層中に分散させることが好ましい。
共押出により多層発泡シートを製造する際に、該表面層や中間層が、ポリアルキレングリコールを含有していると、ポリエチレン系樹脂の連続相中にアイオノマー樹脂を良好に層状に分散させることができ、帯電防止性能により優れる多層発泡シートを安定して得ることができる。
また、該樹脂層(表面層、中間層)がポリアルキレングリコールを含有していると、帯電防止性能の湿度依存性が低減され、湿度が低い条件下においても良好な帯電防止性能を発揮する多層発泡シートとなる。
【0037】
ポリアルキレングリコールとしては、HLB値が8以上のポリアルキレングリコールを好ましく用いることができる。このようなポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。また、2種以上のポリアルキレングリコールを併用しても良い。
これらの中でも、安定してポリエチレン系樹脂中にアイオノマー樹脂を分散させることができると共に、帯電防止性能を高めつつ、帯電防止性能の湿度依存性をより低減できることから、ポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
【0038】
本発明において、前記HLB値はグリフィン法((1)式)により求められる値である。
HLB=20×親水基部分の分子量/親水性化合物全体の分子量 ・・・(1)
【0039】
本明細書において、ポリアルキレングリコールのHLB値をグリフィン法により求める場合、具体的には、次のように行う。
例えば、ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールとそれ以外のポリアルキレングリコールの共重合体とからなる場合には、ポリエチレングリコールを親水基部分と見なし、それ以外のポリアルキレングリコールについては、その親油性、親水性を考慮して、親水基部分であるか疎水基部分であるかを決定し、グリフィン法によりHLB値を求める。なお、ポリエチレングリコールの場合には、全てが親水基部分であるので、ポリアルキレングリコールのHLB値の上限は20となる。
ポリエチレン系樹脂中にアイオノマー樹脂を良好に分散させるためには、該HLB値は10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましい。
【0040】
ポリアルキレングリコールとしてポリエチレングリコールを用いる場合、その数平均分子量は100~10000であることが好ましく、150~1000であることがより好ましく、200~600であることがさらに好ましい。ポリエチレングリコールの分子量をこの範囲とすることで、優れた帯電防止性能が発現する多層発泡シートを安定して得ることができる。
ポリエチレングリコールの数平均分子量は、水酸基価から算出される周知の方法により求められる。
【0041】
該表面層や該中間層中のポリアルキレングリコールの含有量は、アイオノマー樹脂に対するポリアルキレングリコールの重量比(PAG/ASP)が、0.03~0.5となるようにすることが好ましい。該重量比(PAG/ASP)が、この範囲内となるようにすることで、ポリエチレン系樹脂中にアイオノマー樹脂をより良好に分散させることができる。
かかる観点から、該重量比は、0.04~0.4であることがより好ましく、0.05~0.3であることがさらに好ましく、0.05~0.1であることが特に好ましい。
【0042】
本発明の多層発泡シートにおいては、該表面層がポリスチレン系樹脂を含有することが好ましい。これにより、該多層発泡シートは、滑り性に優れるものになる。特に、高分子型帯電防止剤としてアイオノマー樹脂を含有する場合であっても、滑り性が低下することが抑制され、例えば多層発泡シートをガラス板用間紙としてガラス間に介在させて包装する際に、多層発泡シートを搬送し、ガラス板に重ねる作業が円滑に行いやすいものとなる。
【0043】
該ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン(汎用ポリスチレン)、ゴム変性ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン)、スチレン-αメチルスチレン共重合体、スチレン-pメチルスチレン共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリスチレン又はゴム変性ポリスチレンが好ましく、ポリスチレンであることがより好ましい。
【0044】
該表面層中のポリスチレン系樹脂の含有割合は3~35重量%であることが好ましい。該ポリスチレン系樹脂の含有割合がこの範囲内であることにより、多層発泡シートの滑り性を向上させることができる。多層発泡シートの滑り性をより向上させるためには、表面層中のポリスチレン系樹脂の含有割合は5重量%以上であることが好ましい。
一方、多層発泡シートの優れた緩衝性を維持するためには、表面層中のポリスチレン系樹脂の含有割合は30重量%以下であることが好ましく、25重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることが更に好ましく、12重量%以下であることが特に好ましい。
【0045】
さらに、該表面層中における、ポリエチレン系樹脂の含有量に対するポリスチレン系樹脂の含有量の重量比(PS/PE)は0.03~0.6であることが好ましい。該比(PS/PE)が、この範囲内となるように、表面層がポリスチレン系樹脂を含有することにより、多層発泡シートの滑り性がより良好になる。かかる観点から、該比の上限は0.4であることが好ましく、より好ましくは0.3である。また、該比の下限は0.04であることがより好ましく、より好ましくは0.1である。
【0046】
多層発泡シートの滑り性を向上させるためには、該表面層に含まれるポリスチレン系樹脂の引張弾性率が1000MPa以上であることが好ましく、より好ましくは1500MPa以上である。
【0047】
該ポリスチレン系樹脂の引張弾性率は、JIS K6767:1999に準拠し、ダンベル型1号形に打ち抜いた試験片を用いて、試験速度500mm/minの条件で測定され、算出された値を採用する。
【0048】
該表面層がポリスチレン系樹脂を含有する場合、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との相溶化剤を含むことが好ましい。表面層が相溶化剤を含むことにより、表面層の製膜性を向上させることができ、表面層の坪量が小さくても良好な表面層を形成することができる。
【0049】
相溶化剤としては、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、これらの共重合体の水添物などのスチレン系エラストマーが挙げられる。該共重合体はブロック共重合体であることが好ましい。
【0050】
該表面層中における相溶化剤の含有量は、該ポリエチレン系樹脂と該ポリスチレン系樹脂と相溶化剤の合計100重量部に対して、1~20重量部であることが好ましい。該含有量の下限は、2重量部がより好ましく、さらに好ましくは3重量部である。その上限は、15重量部がより好ましく、更に好ましくは10重量部、特に好ましくは8重量部である。
【0051】
本発明の多層発泡シートにおいて、滑り性をより高めるために、表面層にタルクを配合することが好ましい。表面層中のタルクの含有割合は、5~30重量%であることが好ましく、10~25重量%であることがより好ましい。
【0052】
次に、本発明の多層発泡シートの物性について説明する。
【0053】
本発明の多層発泡シートは、前記構成を有することにより、優れた帯電防止性を有している。具体的には、多層発泡シートの表面抵抗率は1×10Ω未満であることが好ましく、より好ましくは9×10Ω以下、更に好ましくは8×10Ω以下、特に好ましくは5×10Ω以下である。
なお、表面抵抗率の下限は、特に限定されないが、概ね1×10Ωである。
【0054】
本明細書における表面抵抗率は、JIS K6271-2001に準拠して測定される。具体的には、多層発泡シートから切り出した縦100mm×横100mm×厚み:多層発泡シートの厚みのままの試験片に、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で500Vの電圧を印加し、印加1分後の表面抵抗率[Ω]を測定する。測定方法の詳細については、実施例で説明する。
【0055】
本発明の多層発泡シートの見掛け密度は15~300kg/mであることが好ましい。
該多層発泡シートの見掛け密度がこの範囲内であれば、引張強度等の機械的物性と軽量性と緩衝性とのバランスに優れた多層発泡シートとなる。かかる観点から、該見掛け密度の下限はより好ましくは20kg/m、さらに好ましくは25kg/mである。一方、該見掛け密度の上限は、より好ましくは150kg/m、更に好ましくは100kg/m、特に好ましくは70kg/m以下である。
【0056】
該多層発泡シートの全体厚みは0.05~3mmであることが好ましく、より好ましくは0.1~2.5mm、更に好ましくは0.2~2mmである。多層発泡シートの厚みがこの範囲内であれば、緩衝性と柔軟性とのバランスが良好となる。
【0057】
本発明の多層発泡シートの全体の坪量は5~100g/mであることが好ましく、より好ましくは10~80g/m、さらに好ましくは20~50g/mである。該多層発泡シートの坪量がこの範囲内であれば、軽量性と機械的物性とのバランスが良好となる。
【0058】
多層発泡シート全体の厚み、坪量、見掛け密度の測定方法は、次のように測定される。まず、多層発泡シートから、その幅方向に沿って、シート全幅[mm]×100mmの矩形状の試験片を5片切り出す。各試験片の厚みを多層発泡シートの幅方向に1cmごとに測定し、算術平均することにより、各試験片の厚み[mm]を求める。この各試験片の厚みの算術平均値を多層発泡シート全体の厚み[mm]とする。次に、各試験片の重量を測定し、その重量を試験片の面積(具体的には、シート幅[mm]×100mm)で除し、単位換算して各試験片の坪量[g/m]を求める。この各試験片の坪量の算術平均値を多層発泡シートの坪量[g/m]とする。さらに、坪量を先に求めた多層発泡シート全体の厚みで除し、単位換算して多層発泡シートの見掛け密度[kg/m]を求める。
【0059】
中間層、表面層の坪量は、各層の厚みに各層を構成している樹脂組成物の密度を乗じ、単位換算を行なって求められる。具体的には、多層発泡シートを幅方向に沿って切断して垂直断面を形成する。次に、該垂直断面において、幅方向に等間隔に多層発泡シートの表面側の拡大写真を片面当たり10点以上(両面で合計20点以上)撮影する。各点の拡大写真において、幅方向に1cm(実際の長さ)間隔で中間層、表面層の厚みを測定する。そして、得られた値のそれぞれの算術平均値を各面ごとの中間層、表面層の厚みとする。該厚みに樹脂組成物の密度を掛けると共に単位換算すれば、各面ごとの中間層、表面層のそれぞれの坪量が得られる。
表面層、中間層が無機充填剤等の添加剤を含有している場合は、樹脂組成物の密度は、添加剤を含む密度である。
【0060】
また、片面当たりの中間層の吐出量X[g/時]及び片面当たりの表面層の吐出量Y[g/時]、多層発泡シートの幅W[m]、多層発泡シートの引取速度L[m/時]が判る場合、これらの値を用いて、下記(2)式、(3)式により求めることもできる。
中間層の坪量[g/m]=〔X/(L×W)〕・・・(2)
表面層の坪量[g/m]=〔Y/(L×W)〕・・・(3)
【0061】
本発明の多層発泡シートの独立気泡率は、被包装物の表面保護性、適切な滑り性、コシ強度などを考慮すると、20%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは50%以上、最も好ましくは55%以上である。
【0062】
前記独立気泡率は、ASTM-D2856-70の手順Cに従って、東芝ベックマン株式会社の空気比較式比重計930型を使用して多層発泡シート(カットサンプル)の真の体積Vxを測定し、得られたVxを用い、下記(4)式により計算する。なお、25mm×25mm×多層発泡シート厚みのサンプルを複数枚切り出して重ねることにより、25mm×25mm×約20mmの測定用カットサンプルとする。
【0063】
S(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ) (4)
Vx:前記方法で測定されたカットサンプルの真の体積(cm)であり、カットサンプルを構成する樹脂の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。
Va:測定に使用されたカットサンプルの外寸から計算されたカットサンプルの見かけ上の体積(cm)。
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)。
ρ:多層発泡シートを脱泡して求められる樹脂の密度(g/cm
【0064】
本発明の多層発泡シートは、前記したように、高分子型帯電防止剤を含有する樹脂層を、中間層と表面層とからなる多層構造とし、中間層と表面層とにおける高分子型帯電防止剤の含有割合を特定の量とすることにより、帯電防止性能と低汚染性とを高いレベルで両立することに成功したものである。換言すると、高分子型帯電防止剤を含有する層のうち、特に被包装物への移行を生じやすい、最も表面側に位置する層(表面層)中の高分子型帯電防止剤の含有量が少量であるにもかかわらず、高度な帯電防止性能を発現することができるものである。
すなわち、本発明によれば、以下の構成を満足する多層発泡シートが提供される。
【0065】
ポリエチレン系樹脂から構成される発泡層と、該発泡層の少なくとも片面側に積層されたポリエチレン系樹脂を含む樹脂層とを有する多層発泡シートであって、
前記多層発泡シートの樹脂層側の表面抵抗率(Ω)と、前記樹脂層を構成する層のうち、高分子型帯電防止剤を含み、かつ、発泡シートの最も表面側に位置する層1m当たりの高分子型帯電防止剤の含有量(g/m)との積SRCが、5×10(Ω・g/m)以下であることを特徴とする多層発泡シート。
【0066】
該積SRCが小さいことは、樹脂層において、高分子型帯電防止剤を含む層のうち、最も表面側に位置する層中に配合されている高分子型帯電防止剤の含有量が少量であっても、表面抵抗値を十分に小さくすることができることを意味している。かかる観点から、積SRCは3×10(Ω・g/m)以下であることがより好ましく、2×10(Ω・g/m)以下であることが更に好ましい。なお、積SRCの下限は概ね1×10(Ω・g/m)である。
また、該樹脂層は多層構造であることが好ましい。
【0067】
次に、本発明の多層発泡シートを製造する方法について説明する。
本発明の多層発泡シートは、公知の方法で製造することができる。その代表的な方法としては、例えば、共押出用ダイ内で、発泡層形成用溶融樹脂の片面及び/又は両面に中間層形成用溶融樹脂及び表面層形成用溶融樹脂を、この順で積層し、これらを共押出するとともに、発泡層形成用溶融樹脂を発泡させて、多層発泡シートを製造する方法が好ましく挙げられる。但し、中間層形成用溶融樹脂と表面層形成用溶融樹脂とを共押出用ダイを用いて積層し、これらを共押出して作成した多層構造の樹脂層を、別工程で作製された発泡シート(発泡層)の片面及び/又は両面に中間層を発泡シート側に向けて積層することによっても、多層発泡シートを製造することもできる。
【0068】
多層共押出法には、(1)フラットダイを用いシート状に共押出して多層発泡シートとする方法、(2)環状ダイを用いて筒状に共押出して筒状の多層発泡体を製造し、ついで筒状多層発泡体を押出方向に沿って切り開いて多層発泡シートとする方法がある。これらのうち、幅が1000mm以上ある幅広の多層発泡シートを得やすいことから、環状ダイを用いた多層共押出法を好適に用いることができる。
【0069】
前記環状ダイを用いて共押出しする場合について以下に詳細に説明する。
まず、前記ポリエチレン系樹脂(A)と、必要に応じて添加される気泡調整剤などの添加剤とを発泡層形成用押出機に供給し、加熱混練してから、押出機内に物理発泡剤を圧入し、さらに混練して発泡層形成用樹脂溶融物とする。同時に、前記ポリエチレン系樹脂(B)と、前記高分子型帯電防止剤などを中間層形成用押出機に供給し、加熱混練して中間層形成用樹脂溶融物とする。さらに同時に、前記ポリエチレン系樹脂(C)と高分子型帯電防止剤などを表面層形成用押出機に供給し、加熱混練して表面層形成用樹脂溶融物とする。
得られた、該発泡層形成用樹脂溶融物と該中間層形成用樹脂溶融物と該表面層形成用樹脂溶融物とを共押出用環状ダイに導入し、大気中に押出発泡させて、筒状発泡体を形成する。該筒状発泡体をマンドレル等の拡幅装置に沿わせて引取りながら、切り開くことにより多層発泡シートが得られる。
【0070】
なお、発泡性に優れることから、ポリエチレン系樹脂(A)のメルトフローレイト(MFR)は、0.1~20g/10分であることが好ましい。特に、ポリエチレン系樹脂(A)のMFRが0.1~1.5g/10分であると、共押出により多層発泡シートを製造する場合であっても、発泡層の独立気泡の低下が抑制されやすい。
また、共押出により樹脂層を積層する場合には、ポリエチレン系樹脂(B)及びポリエチレン系樹脂(C)のMFRは、ポリエチレン系樹脂(A)のMFRより大きいことが好ましい。なお、本明細書におけるMFRは、JIS K7210-1(2014)に基づき、190℃、荷重2.16kgの条件で測定されるメルトマスフローレイトを意味する。
【0071】
前記中間層形成用樹脂溶融物及び表面層形成用樹脂溶融物には揮発性可塑剤が添加されていることが好ましい。揮発性可塑剤としては、樹脂溶融物の溶融粘度を低下させる機能を有すると共に中間層、表面層形成後に、中間層、表面層より揮発して中間層、表面層中に存在しなくなるものが用いられる。揮発性可塑剤を樹脂溶融物中に添加することにより、多層発泡シートを共押出しする際に、中間層形成用樹脂溶融物、表面層形成用樹脂溶融物それぞれの押出温度を発泡層形成用樹脂溶融物の押出温度に近づけることができると共に、軟化状態の中間層、表面層の溶融伸びを著しく向上させることができる。そうすると、発泡時に樹脂層(中間層及び表面層)の熱によって発泡層の気泡が破壊されにくくなり、さらに樹脂層(中間層及び表面層)の伸びが発泡層の発泡時の伸びに追随しやすくなる。
【0072】
該揮発性可塑剤としては、炭素数3~7の脂肪族炭化水素や脂環式炭化水素、炭素数1~4の脂肪族アルコール、及び炭素数2~8の脂肪族エーテルから選択される1種又は2種以上のものが好ましく用いられる。揮発性可塑剤の代わりに所謂、滑剤のように揮発性の低いものを用いた場合、該滑剤は樹脂層に残存し、被包装体の表面を汚染することがある。これに対し揮発性可塑剤は、樹脂層の樹脂を効率よく可塑化させ、得られる樹脂層に揮発性可塑剤自体が残り難いという点から好ましいものである。
【0073】
揮発性可塑剤の沸点は、樹脂層から揮発し易いことから、120℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以下である。揮発性可塑剤の沸点がこの範囲内であれば、共押出しした後、得られた多層発泡シートを放置しておけば、共押出し直後の熱や、更に後の室温下でのガス透過により、揮発性可塑剤は樹脂層(中間層及び表面層)から自然に揮散して除去される。該揮発性可塑剤の沸点の下限値は、概ね-50℃である。
【0074】
揮発性可塑剤は、中間層や表面層形成用樹脂溶融物のそれぞれにおいて、ポリエチレン樹脂と必要に応じて添加される高分子型帯電防止剤との合計100重量部に対して5重量部~50重量部となるように添加することが好ましい。
【0075】
前記した高分子型帯電防止剤としてアイオノマー樹脂を用いる場合、該揮発性可塑剤の中でも、沸点が120℃以下のアルコールと、炭素数が3~5の飽和炭化水素及び/又はアルキル鎖の炭素数が1~3のジアルキルエーテルとから選択される1種または2種以上を用いることがアイオノマー樹脂の分散状態をより良好にすることができるため好ましい。
【0076】
また中間層形成用樹脂溶融物及び表面層形成用樹脂溶融物には、本発明の目的を阻害しない範囲において該溶融物を形成する樹脂に各種の添加剤を添加してもよい。各種の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填剤、抗菌剤等が挙げられる。その場合の添加量は添加剤の目的、効果に応じて適宜定められるが、ポリエチレン樹脂と必要に応じて添加される高分子型帯電防止剤との合計100重量部に対して各々10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下が特に好ましい。
【0077】
前記発泡層形成用樹脂溶融物に添加される物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2-テトラフロロエタン、1,1-ジフロロエタン等のフッ化炭化水素等の有機系物理発泡剤、窒素、二酸化炭素、空気、水等の無機系物理発泡剤が挙げられる。場合によっては、アゾジカルボンアミド等の分解型発泡剤を使用することもできる。これらの物理発泡剤は、2種以上を併用することが可能である。これらのうち、特にポリエチレン樹脂との相溶性、発泡性の観点から有機系物理発泡剤が好ましく、中でもノルマルブタン、イソブタン、又はこれらの混合物を主成分とするものが好適である。
【0078】
物理発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、目的とする見掛け密度に応じて調整される。例えば、発泡剤としてイソブタン30重量%とノルマルブタン70重量%との混合ブタンを用いて前記見掛け密度範囲の多層発泡シートを得るためには、混合ブタンの添加量は、基材樹脂100重量部当たり好ましくは3~30重量部、より好ましくは4~20重量部、更に好ましくは6~18重量部である。
【0079】
前記発泡層形成用樹脂溶融物に添加される添加剤の主要なものとして、通常、気泡調整剤が添加される。気泡調整剤としては有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また有機系気泡調整剤としては、リン酸-2,2-メチレンビス(4,6-tert-ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。またクエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせたもの等も気泡調整剤として用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を併用することもできる。
なお、気泡調整剤の添加量は、基材樹脂100重量部当たり好ましくは0.01~3重量部、より好ましくは0.03~1重量部である。
【0080】
前記環状ダイ、押出機等の製造装置は、従来押出発泡の分野で用いられてきた公知のものを用いることができる。
【0081】
本発明の多層発泡シートは、緩衝性に優れ、且つ帯電防止性に優れると共に、被包装物への低分子量成分の移行量が極めて少ないので、ガラス板用の間紙等の電子機器用の包装材として好適に使用できるものである。
【実施例0082】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0083】
次に、実施例、比較例において使用した、原料について説明する。
実施例、比較例で使用したポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、高分子型帯電防止剤、相溶化剤、気泡調整剤を次に示す。
【0084】
ポリエチレン系樹脂
(1)略称「LDPE1」:株式会社NUC製低密度ポリエチレン「NS-1s」(密度922kg/m、MFR0.4g/10min、融点110℃、溶融粘度1468Pa/s、溶融張力199mN)
(2)略称「LDPE2」:株式会社NUC製低密度ポリエチレン「NUC8321」(密度922kg/m、MFR2.4g/10min、融点112℃、溶融粘度818Pa/s、溶融張力64mN)
【0085】
ポリスチレン系樹脂
(1) 略称「GPPS1」:PSジャパン株式会社製汎用ポリスチレン「680」(密度1050kg/m、MFR7.0g/10min、ビカット軟化温度98℃、引張弾性率3200MPa)
(2) 略称「HIPS1」:PSジャパン株式会社株式会社製耐衝撃性ポリスチレン「408」(密度1040kg/m、MFR7.0g/10min、ビカット軟化温度92℃)
【0086】
高分子型帯電防止剤
略称「SD100」:三井・デュポンポリケミカル株式会社製エチレン系カリウムアイオノマー樹脂「エンティラSD100」(MFR5g/10min、融点92℃、表面抵抗率:1.0×10Ω)
【0087】
相溶化剤
略称「H1041」:旭化成株式会社製水添スチレン系熱可塑性エラストマー「タフテックH1041」、ゴム分率70%
【0088】
気泡調整剤
略称「タルクMB」:低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、「LA500M」80重量%に対してタルク(松村産業株式会社製タルク「ハイフィラー#12」)20%配合してなる気泡調整剤マスターバッチを用いた。
【0089】
滑り性改善剤
略称「タルクMB」:前記気泡調整剤と同様のものを用いた。
【0090】
ポリアルキレングリコール
略称「PEG1」:三洋化成工業株式会社製ポリエチレングリコール「PEG300」(数平均分子量300)
【0091】
物理発泡剤
イソブタン
【0092】
揮発性可塑剤
混合ブタン(ノルマルブタン35重量%とイソブタン65重量%との混合物)
【0093】
装置
以下の押出機とダイを備えた多層発泡シート製造装置を用いた。
発泡層形成用押出機:バレル内径115mmの第一押出機
中間層形成用押出機:バレル内径65mmの第二押出機
表面層形成用押出機:バレル内径50mmの第三押出機
ダイ:出口直径96mmの共押出用環状ダイ
【0094】
実施例1~5、比較例3
表1、表2に示す種類、配合量のポリエチレン系樹脂(A)と、表1、表2に示す種類、配合量の気泡調整剤(タルクMB)とを第一押出機に供給し、これらを約200℃で混錬した後、物理発泡剤として表1、表2に示す量のイソブタンを圧入して、さらに混錬した。この混錬物を第一押出機にて表3に示す樹脂温度に調整して発泡層形成用樹脂溶融物を形成した。
同時に、表1、表2に示す種類、量のポリエチレン系樹脂(B)、表1、表2に示す種類、量の高分子型帯電防止剤、表1、表2に示す種類、量のポリアルキレングリコールを第二押出機に供給し、これらを約200℃で混錬した後、揮発性可塑剤として表1、表2に示す量の混合ブタン(ノルマルブタン/イソブタン=65重量%/35重量%)を圧入して、さらに混錬し、表3に示す樹脂温度に調整して中間層形成用樹脂溶融物を得た。
さらに同時に、表1、表2に示す種類、量のポリエチレン系樹脂(C)、表1、表2に示す種類、量のポリスチレン系樹脂、表1、表2に示す種類、量の相溶化剤、表1、表2に示す種類、量の高分子型帯電防止剤、表1、表2に示す種類、量のポリアルキレングリコール、表1、表2に示す種類、量の滑り性改善剤としてのタルクを第三押出機に供給し、これを約200℃で混錬した後、揮発性可塑剤として表1、表2示す量の混合ブタン(ノルマルブタン/イソブタン=35重量%/65重量%)を圧入して、さらに混錬し、表3に示す樹脂温度に調整して表面層形成用樹脂溶融物を得た。
【0095】
発泡層形成用樹脂溶融物、中間層形成用樹脂溶融物、表面層形成用樹脂溶融物のそれぞれを表3に示す吐出量で共押出用環状ダイ中へ導入し、中間層形成用樹脂溶融物を発泡層形成用樹脂溶融物の内外両面に合流積層させ、更に各中間層形成用樹脂溶融物に表面層形成用樹脂溶融物を合流積層させた。この積層物を環状ダイから共押出し、発泡層の内外両面に中間層が積層接着され、さらに各中間層に表面層が積層接着された3種5層構造の筒状多層発泡体を形成した。押出された筒状多層発泡体を直径333mmの円柱状の拡幅装置にて拡幅しながら表4、表5に示した全体坪量となるよう引き取りつつ、筒状積層発泡体を押出方向に沿って切り開いて多層発泡シートを得た。
【0096】
比較例1、2
中間層形成用押出機を使用せず、発泡層に表面層が積層接着された2種3層構造の筒状多層発泡体を形成した以外は上記方法と同様にして多層発泡シートを製造した。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
実施例、比較例で得られた多層発泡シートの物性を測定し、帯電防止性、低汚染性の評価を行った。測定結果・評価を、実施例については表4に、比較例については表5に示す。
【0101】
【表4】
【0102】
【表5】
【0103】
実施例1~5において得られた多層発泡シートは、高度な帯電防止性を発現するとともに、被包装物に対する汚染性が極めて抑制されたものであった。また、発泡シート表面の静摩擦力が低く、滑り性にも優れるものであった。
【0104】
比較例1は、実施例1に対し、中間層を設けずに多層発泡シートを製造した例である。得られた多層発泡シートは、帯電防止性に優れるものの、ヘーズ変化量が大きく、低汚染性に劣るものであった。
比較例2は、比較例1に対し、表面層中の高分子型帯電防止剤の配合量を減らした例である。得られた多層発泡シートは、ヘーズ変化量がやや高く、かつ帯電防止性もやや劣るものであった。すなわち、両者を高いレベルで両立できるものではなかった。
比較例3は、実施例1に対し、中間層中の高分子型帯電防止剤の配合量を増やし、表面層において、高分子型帯電防止剤を配合しない例である。得られた多層発泡シートは、高度な帯電防止性は発現したものの、ヘーズ変化量が大きく、低汚染性に劣るものであった。
【0105】
表4、表5中の各物性の測定、評価は次のように行った。
(1)多層発泡シートの全体厚み、坪量、見掛け密度
多層発泡シートの全体厚み、坪量、見掛け密度は、前記方法により測定した。具体的には、まず、多層発泡シートから、その幅方向に沿って、シート全幅[mm]×100mmの矩形状の試験片を5片切り出した。各試験片の厚みを多層発泡シートの幅方向に1cmごとに測定し、算術平均することにより、各試験片の厚み[mm]を求めた。得られた各試験片の厚みの算術平均値を多層発泡シート全体の厚み[mm]とした。
また、各試験片の重量を測定し、その重量を試験片の面積(具体的には、シート幅[mm]×100mm)で除し、単位換算して各試験片の坪量[g/m]を求めた。得られた各試験片の坪量の算術平均値を多層発泡シートの坪量[g/m]とした。
さらに、坪量を平均厚みで除し、単位換算して多層発泡シートの見掛け密度[kg/m]を求めた。
【0106】
(2-1)表面層及び中間層の坪量、樹脂層の厚み
表面層と中間層の各々の吐出量から、前記方法により表面層及び中間層の坪量を求めた。具体的には、まず、中間層の片面当たりの吐出量X[g/時]、表面層の片面当たりの吐出量Y[g/時]、多層発泡シートの幅W[m]、引取速度L[m/時]から下記(2)式、(3)によりそれぞれの坪量[g/m]を求めた。中間層と表面層との合計を樹脂層の坪量とした。多層発泡シートの一方の面側と他方の面側の表面層及び中間層の坪量が同一となる条件で、多層発泡シートを製造したため、表4、表5中には、片面側のみの坪量を示した。
中間層の坪量[g/m]=〔X/(L×W)〕・・・(2)
表面層の坪量[g/m]=〔Y/(L×W)〕・・・(3)
【0107】
(2-2)中間層1m当たりの高分子型帯電防止剤の含有量(A)、表面層1m当たりの高分子型帯電防止剤の含有量(B)
含有量(A)は、中間層中の高分子型帯電防止剤の配合割合x(重量%)を用いて、下記(5)式により、含有量(B)は、表面層中の高分子型帯電防止剤の配合割合y(重量%)を用いて、下記(6)式により求めた。
含有量(A)=〔(x/100)×X/(L×W)〕=(x/100)×中間層の坪量[g/m
・・・(5)
含有量(B)=〔(y/100)×〔Y/(L×W)〕=(y/100)×表面層の坪量[g/m
・・・(6)
【0108】
(3)帯電防止性の評価(表面抵抗率の測定)
多層発泡シートの幅方向中央部及び両端部付近から、縦100mm×横100mm×厚み:多層発泡シートの厚みのままの試験片を3片切り出した。JIS K6271-2001に準じて23℃、相対湿度50%の雰囲気下で試験片に500Vの電圧を印加し、印加1分後の試験片の表面抵抗率を測定した。なお、試験片の両面に対して表面抵抗率の測定を行ない(試験片3片×両面:計6回)、得られた測定値の算術平均値から表面抵抗率を求めた。測定装置として、日置電機株式会社製「SM-8220」を用いた。
表面抵抗率の測定値に基づき、帯電防止性を以下の基準で評価した。
○:表面抵抗率が、1.0×10Ω未満
△:表面抵抗率が、1.0×10Ω以上、1.0×1010Ω未満
×:表面抵抗率が、1.0×1010Ω以上
【0109】
(4)移行性試験(ヘーズ変化量の測定):低汚染性の評価
移行性の試験として、ヘーズ変化量の測定を行った。
【0110】
被包装物として松浪ガラス工業株式会社製プレクリンスライドガラスを用いた。このガラスを10枚重ねてガラス積層体とし、日本電飾工業(株)社製の「NDH2000」を用いて、ガラス積層体の厚み方向(ガラス積層方向)に対するヘーズ(1)を測定した。それぞれのガラスにサンプル(実施例・比較例で得られた発泡シート)を3.8g/cmの圧力で密着させつつ温度60℃、相対湿度90%の条件下で24時間静置した。その後、サンプルをガラスから取り除き、ガラスを10枚重ねて、ガラス積層体のヘーズ(2)を同様に測定した。ヘーズ(2)の値からヘーズ(1)の値を引き算してヘーズの変化量を求め(試験後のガラスヘーズ(%)-試験前のガラスヘーズ(%))、以下の基準で移行性(低汚染性)を評価した。ヘーズの変化量が小さいほど、ガラスへの多層発泡シートの帯電防止剤に含まれる低分子量成分の移行が少ないことを意味する。
〇:ヘーズ変化量が1%以下満
△:ヘーズ変化量が1%以上1.5%未満
×:ヘーズ変化量が1.5%以上
【0111】
(5)静摩擦力の測定
静摩擦力は、JISK7125:1999に準拠した方法により測定した。まず、多層発泡シートの無作為に選択した箇所から、試験片の1辺を多層発泡シートの押出方向に一致させて50mm×50mmの正方形状の試験片を6片切り出した。次に、試験片を23℃、湿度50%の雰囲気下に24時間載置して試験片の状態調節を行なった後、試験片を底面サイズ50mm×50mm、重量125g(5g/cm)の測定用治具の底面に固定し、スライドガラス(松浪硝子工業株式会社製、品名「標準大型白縁磨No.2」、品番S9112」)上に置いた。そして、多層発泡シートの押出方向と測定用治具の引張方向とを合わせて、測定用治具を100mm/分の速度で水平方向に引張ることにより、試験片をスライドガラス上で滑らせた。このときの第一極大点荷重を試験片における静摩擦力(N)とした。6片の試験片のうち3片の試験片についてはマンドレル当接面側の静摩擦力を求め、残りの3片についてはマンドレル当接面とは反対面側の静摩擦力を求めた。各試験片における静摩擦力の算術平均値(n=6)を多層発泡シートの低荷重下における静摩擦力(N)とした。
【0112】
(6)積SRCの算出
樹脂層を構成する層のうち、高分子型帯電防止剤を含み、かつ、多層発泡シートの最も表面側に位置する層について、該層中の1m当たりの高分子型帯電防止剤の含有量(g/m)と、(3)において得られた表面抵抗率(Ω)との積SRC(Ω・g/m)を算出した。
なお、実施例1~5、比較例1、比較例2において、「樹脂層を構成する層のうち、高分子型帯電防止剤を含み、かつ、発泡シートの最も表面側に位置する層」は、表面層であり、比較例3において、「樹脂層を構成する層のうち、高分子型帯電防止剤を含み、かつ、発泡シートの最も表面側に位置する層」は、中間層である。
【符号の説明】
【0113】
1 多層発泡シート
2 発泡層
3 中間層
4 表面層
5 樹脂層




図1