(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037712
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】造粒機
(51)【国際特許分類】
B01J 2/14 20060101AFI20220302BHJP
B01F 29/86 20220101ALI20220302BHJP
B02C 18/08 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
B01J2/14
B01F9/18
B02C18/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141980
(22)【出願日】2020-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】594148520
【氏名又は名称】株式会社新日南
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100075292
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】加島 洋一
(72)【発明者】
【氏名】小林 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】濱 優二
【テーマコード(参考)】
4D065
4G004
4G036
【Fターム(参考)】
4D065CA12
4D065CB02
4D065CC03
4D065CC08
4D065DD08
4D065DD22
4D065EB20
4D065ED16
4D065ED50
4D065EE02
4D065EE12
4D065EE15
4G004JA03
4G036AA23
(57)【要約】
【課題】 粉塵発生を抑制し、造粒容器の回転速度を高めても分級性能が低下することのない造粒機を提供する。
【解決手段】 本発明の造粒機100は、第1駆動源1と、投入された被処理物を造粒処理して粒状物を生成する中空略円柱形状の造粒容器3と、を備える。造粒容器3が、第1駆動源1によって回転駆動される、造粒機設置面Gと平行な略円板状の底面部34と、底面部34の周囲に設けられた略円筒状の側壁部33と、を有する。底面部34の上面周縁部に、底面部34に対して垂直な方向に向かって少なくとも一つの攪拌部材341a、341bが立設されており、側壁部33に少なくとも一つの排出開口331が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1駆動源と、投入された被処理物を造粒処理して粒状物を生成する中空略円柱形状の造粒容器と、を備える造粒機であって、
前記造粒容器が、
前記第1駆動源によって回転駆動される、造粒機設置面と平行な略円板状の底面部と、
該底面部の周囲に設けられた略円筒状の側壁部と、を有し、
前記底面部の上面周縁部に、前記底面部に対して垂直な方向に向かって少なくとも一つの攪拌部材が立設されており、
前記側壁部に少なくとも一つの排出開口が設けられている、造粒機。
【請求項2】
前記排出開口の前記底面部からの設置高さが変動可能に構成されている、請求項1に記載の造粒機。
【請求項3】
前記排出開口が正面視略矩形状に設けられており、その下端辺の高さを上下させることによって、前記排出開口の前記底面部からの設置高さを変動させる、請求項2に記載の造粒機。
【請求項4】
前記攪拌部材が二つ以上立設されている場合に、前記攪拌部材のそれぞれが他のいずれかの攪拌部材と対向する位置に配置されているか、前記攪拌部材のそれぞれが等間隔で配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の造粒機。
【請求項5】
前記第1駆動源とは別の第2駆動源と、
該第2駆動源によって駆動され、前記底面部の上面上を摺動回転する板状部材と、
をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の造粒機。
【請求項6】
前記底面部と平行に配置される少なくとも一つのディスク状解砕部を有する第1解砕部材と、
前記第1駆動源とは別の第3駆動源と、
該第3駆動源によって回転駆動され、前記底面部と平行に配置される少なくとも一つのディスク状解砕部を有する第2解砕部材と、をさらに備え、
前記第1解砕部材のディスク状解砕部の周端部と、前記第2解砕部材のディスク状解砕部の周端部とが、所定の間隔を開けて重なり合うように設置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の造粒機。
【請求項7】
前記第1駆動源によって前記第1解砕部材が回転駆動され、
前記第3駆動源によって前記第2解砕部材が前記第1解砕部材とは逆方向に回転駆動される、請求項6に記載の造粒機。
【請求項8】
前記第1解砕部材のディスク状解砕部及び/又は前記第2解砕部材のディスク状解砕部の位置を上下させることによって、前記所定の間隔が変動可能に構成されている、請求項6又は7に記載の造粒機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体原料から粒状物を生成する造粒機に関する。
【背景技術】
【0002】
肥料や農薬等は主に粉体として生産されるが、粉体のままだと散布時に飛散してしまうため、造粒機を用いて粉体を用途にあった適正な粒径の粒状品に加工することが多い。また、製鉄業や非鉄製錬業、窯業等の製造業においても、製造工程において粉体ダスト等の多量の粉体が発生し、それらをリサイクルして活用する際に粒状化や塊状化の必要があるため、同様に造粒機で粉体を造粒加工することが行われている。
【0003】
粉体を粒状物に造粒する造粒方法の一つとしては、転動造粒法がよく知られている。転動造粒は、造粒容器に粉体原料を供給し、造粒容器を回転させることにより粉体同士を凝集させて所望のサイズの粒状物に造粒する方法である。転動造粒法によって粉体原料を造粒する造粒機として、例えば特許文献1に示されているようなパン型造粒機が知られている。パン型造粒機は、回転駆動される円板形状の回転床部と、その周囲に設けられた円筒形状の側壁部とを有する造粒容器(パン)を傾斜した状態で配置し、造粒容器の所定位置に粉体原料を供給しながら適量の水や造粒促進材等の液体を加え、容器を回転させることで粒状物を徐々に大きくしていく。
【0004】
粒状物がある程度大きくなると、傾斜している容器から粒状物があふれ出ることで、パン型造粒機は分級効果を実現している。すなわち、パン型造粒機では、加湿された粉状原料が凝集し、さらに近傍の凝集物とひっつきながら容器内を転がる。凝集物のサイズが小さい間は回転する容器で発生する遠心力の方が重力よりも大きいため、凝集物は容器とともに大きな円を描くように転がるが、凝集が進んでサイズが大きくなるにつれて、凝集物(粒状物)に作用する遠心力よりも重力の方が大きくなり、回転する容器内で凝集物が転がる軌跡は徐々に小さくなり、粒状物として一定の大きさになったところで、傾斜した容器の下側の縁から容器外へと粒状物が排出されるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなパン型造粒機は、回転する容器から造粒物を容器外へと排出する機構上、造粒空間を密閉構造にできないため、操業時に粉塵発生が伴うという問題がある。また、造粒強度を高めるために容器の回転速度を高めたいという要求があるものの、一定速度以上に容器を高速回転させると、容器内の粒状物に働く遠心力が過大になり、粒の小さい粒状物も容器外へと排出されるようになってしまい、分級効果が低下してしまうという問題もある。
【0007】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、粉塵発生を抑制し、造粒容器の回転速度を高めても分級性能が低下することのない造粒機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、第1駆動源と、投入された被処理物を造粒処理して粒状物を生成する中空略円柱形状の造粒容器と、を備える造粒機であって、前記造粒容器が、前記第1駆動源によって回転駆動される、造粒機設置面と平行な略円板状の底面部と、該底面部の周囲に設けられた略円筒状の側壁部と、を有し、前記底面部の上面周縁部に、前記底面部に対して垂直な方向に向かって少なくとも一つの攪拌部材が立設されており、前記側壁部に少なくとも一つの排出開口が設けられている、造粒機を提供する(発明1)。
【0009】
かかる発明(発明1)によれば、底面部が回転することと、底面部に立設された攪拌部材が造粒容器内を回転することにより、造粒容器に投入された被処理物の造粒が進み、所望の大きさに造粒された粒状物が、底面部に立設された攪拌部材によって、攪拌部材の進行方向に対して斜め上方向に弾き飛ばされて、側壁部に設けられた排出開口から造粒容器の外へと排出される。このような構造であれば、造粒された粒状物を造粒容器の上縁部から容器外へと排出する必要がなくなるので、造粒容器を傾斜して設ける必要はなく、また、造粒容器内部を(側壁部に設けられた排出開口以外は)密閉した状態にすることができるので、操業時の粉塵発生を抑制することができる。加えて、造粒容器内部を密閉した状態にすることができることにより、造粒容器を高速回転させた際に、造粒容器内の粒状物に働く遠心力が大きくなっても、排出開口以外からは粒状物が造粒容器外へと排出されることがなく、底面部が設置面に対して平行に設けられた水平型造粒容器となっているため、造粒処理の安定性も向上する。ここで、攪拌部材によって粒状物が弾き飛ばされる度合い(どの程度の高さまで弾き飛ばされるか)は、粒状物の大きさ(質量)と底面部の回転速度に依存するため、排出開口の位置と底面部の回転速度を調整することにより、排出開口から造粒容器の外へと排出される粒状物のサイズを制御することも可能となる。
【0010】
なお、本発明において「造粒機設置面」とは、造粒機が設置されて使用される場所となる地面や床面等を意味し、通常は平坦な水平面になると想定される。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記排出開口の前記底面部からの設置高さが変動可能に構成されていることが好ましく(発明2)、上記発明(発明2)においては、前記排出開口が正面視略矩形状に設けられており、その下端辺の高さを上下させることによって、前記排出開口の前記底面部からの設置高さを変動させることが好ましい(発明3)。
【0012】
かかる発明(発明2,3)によれば、排出開口の底面部からの設置高さを変動させることにより、排出開口から造粒容器の外へと排出される粒状物のサイズを容易に制御することができる。
【0013】
上記発明(発明1~3)においては、前記攪拌部材が二つ以上立設されている場合に、前記攪拌部材のそれぞれが他のいずれかの攪拌部材と対向する位置に配置されているか、前記攪拌部材のそれぞれが等間隔で配置されていることが好ましい(発明4)。
【0014】
かかる発明(発明4)によれば、二つ以上の攪拌部材が、底面部の上面周縁部にバランスよく配置されることになるため、回転する底面部の重量バランスを崩すことがなく、造粒処理の安定性も向上する。一例として、二つ以上偶数個の攪拌部材が底面部の上面周縁部に立設されている場合は、攪拌部材のそれぞれが他のいずれかの攪拌部材と対向する位置に配置されていても、攪拌部材のそれぞれが等間隔で配置されていてもよい。三つ以上奇数個の攪拌部材が底面部の上面周縁部に立設されている場合は、攪拌部材のそれぞれが等間隔で配置される。
【0015】
上記発明(発明1~4)においては、前記第1駆動源とは別の第2駆動源と、該第2駆動源によって駆動され、前記底面部の上面上を摺動回転する板状部材と、をさらに備えることが好ましい(発明5)。
【0016】
粒状物の造粒強度を確保すべく、造粒機に投入される被処理物には、水硬性が高い原料を配合したり、造粒促進材を添加したりするため、一般に凝集した被処理物は付着性が高くなり、造粒容器内の造粒空間に固着してしまって安定的な造粒処理に支障をきたすことがある。また、固着成長の状況によっては、造粒された粒状物の自動排出が損なわれ、造粒容器内で粒状物が異常に大きくなり、人力での排出が必要になる場合がある。かかる発明(発明5)によれば、板状部材が底面部の上面上を摺動回転することにより、造粒過程で底面部上面に被処理物が固着することを抑制することができるので、固着物を取り除くために装置を停止して定期的に造粒容器内を清掃する必要がなくなり、安定した造粒処理を連続的に行うことができる。
【0017】
上記発明(発明1~5)においては、前記底面部と平行に配置される少なくとも一つのディスク状解砕部を有する第1解砕部材と、前記第1駆動源とは別の第3駆動源と、該第3駆動源によって回転駆動され、前記底面部と平行に配置される少なくとも一つのディスク状解砕部を有する第2解砕部材と、をさらに備え、前記第1解砕部材のディスク状解砕部の周端部と、前記第2解砕部材のディスク状解砕部の周端部とが、所定の間隔を開けて重なり合うように設置されていることが好ましい(発明6)。
【0018】
造粒された粒状物のうち一部の粒状物は、本来排出開口から排出されるべきサイズに成長しても、攪拌部材によって弾き飛ばされるタイミングが排出開口の位置とうまく合わず、造粒容器内に滞留し続ける可能性がある。滞留し続けると粒状物はさらに大きな粒や塊となっていくが、一定以上の粒径に成長するとそれだけ質量が大きくなるので、慣性力が高くなって攪拌部材に弾き飛ばされにくくなり、装置を止めて人力で排出しない限り、造粒容器内に滞留し続けることになる。かかる発明(発明6)によれば、造粒容器内で大きくなり過ぎた粒状物(塊状物)が、第1解砕部材のディスク状解砕部と、回転駆動される第2解砕部材のディスク解砕部とによって解砕されて細かく砕かれるので、安定した造粒処理を連続的に行うことができる。
【0019】
なお、本発明においては、造粒機が板状部材と第2解砕部材の両者を備える場合、第2駆動源が第3駆動源を兼ねることを排除しない。
【0020】
上記発明(発明6)においては、前記第1解砕部材が前記第1駆動源によって回転駆動され、前記第2解砕部材が前記第3駆動源によって前記第1解砕部材とは逆方向に回転駆動されることが好ましい(発明7)。
【0021】
かかる発明(発明7)によれば、第1解砕部材のディスク状解砕部と第2解砕部材のディスク解砕部の両者とも回転駆動され、かつ両者の回転方向が逆になっていることにより、造粒容器内で大きくなり過ぎた粒状物(塊状物)が、より効率的に解砕されて細かく砕かれる。
【0022】
上記発明(発明6,7)においては、前記第1解砕部材のディスク状解砕部及び/又は前記第2解砕部材のディスク状解砕部の位置を上下させることによって、前記所定の間隔が変動可能に構成されていることが好ましい(発明8)。
【0023】
かかる発明(発明8)によれば、第1解砕部材のディスク状解砕部と第2解砕部材のディスク状解砕部のどちらかの位置、あるいは両方の位置を上下させることにより、第1解砕部材のディスク状解砕部と第2解砕部材のディスク状解砕部との間の間隔を調整することができ、これによって解砕される対象となる粒状物(塊状物)の大きさを制御することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、粉塵発生を抑制することができるとともに、造粒容器の回転速度を高めても分級性能が低下することがない造粒機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る造粒機の構造を模式的に示す説明図である。
【
図2】同実施形態に係る造粒機の造粒容器の内部や排出開口の構造を模式的に示す説明図である。
【
図3】同実施形態に係る造粒機の内部を上から見た状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る造粒機について、適宜図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであって、何ら本発明を限定するものではない。
図1は本発明の一実施形態に係る造粒機100の構造を模式的に示す説明図であり、
図2は造粒機100の造粒容器3の内部や排出開口331の構造を模式的に示す説明図であり、
図3は造粒機100の内部を上から見た状態を模式的に示す説明図である。
図2及び
図3においては、造粒容器3から造粒した粒状物を排出開口331から排出するメカニズムが模式的に示されている。また、
図2及び
図3においては、わかり易さを優先して一部の構造が省略されている。
【0027】
本実施形態に係る造粒機100は、
図1に示すように、第1駆動装置1と、第2駆動装置2と、投入された被処理物を造粒処理して粒状物を生成する造粒容器3と、造粒容器3が載置された状態で支持する架台4とを備える。造粒容器3は、平面視略正円形状の天板31及び底板32と、略円筒形状の側壁33とによって、内部が中空構造になった、鉛直方向に軸芯を有する略円柱形状に構成されている。天板31には造粒容器3の内部に被処理物を投入するための投入口(不図示)が設けられている。架台4は、例えば工場・建屋内の地面や床面等(設置面G)に造粒機100を設置するために使用され、その形状は、造粒機100を設置面Gに設置できるものであれば特に限定されず、据え置き型であってもよいし、脚部にキャスター等を設けた可動型であってもよい。
【0028】
造粒容器3の内部には、第1駆動装置1によって回転駆動される略円板状の回転床ディスク34と、同じく第1駆動装置1によって回転駆動される第1解砕部材5と、第2駆動装置2によって回転駆動される第2解砕部材6と、同じく第2駆動装置2によって回転駆動されるクリーニング板7とを備える。回転床ディスク34は、造粒容器3の底板32の鉛直方向やや上方に、設置面Gと平行になるように配置されており、当該回転床ディスク34の周囲に略円筒状の側壁33が位置する位置関係となっている。
【0029】
第1駆動装置1は、造粒容器3の底板32の鉛直方向下側に設けられており、鉛直方向に伸びる回転軸A1に沿って回転する駆動軸11と、駆動軸11を回転させるモータ12とから構成される。モータ12としては、例えば回転数を60~180/分の範囲で調整できる直交軸ギアモータを用いることができる。駆動軸11は、駆動軸11の回転軸A1が底板32の中心を通るように、造粒容器3の底板32の中心から造粒容器3の内部へと挿通されている。第1駆動装置1は本発明における第1駆動源の一例である。
【0030】
第2駆動装置2は、造粒容器3の天板31の鉛直方向上側に設けられており、第1駆動装置1と同様に、鉛直方向に伸びる回転軸A2に沿って回転する駆動軸21と、駆動軸21を回転させるモータ22とから構成される。モータ22としては、例えば回転数を50~90/分の範囲で調整できる直交軸ギアモータを用いることができる。駆動軸21は、造粒容器3の天板31のやや周縁部寄りの位置において、造粒容器3の内部へと挿通されている。第2駆動装置2は本発明における第2駆動源の一例であり、かつ第3駆動源の一例である。すなわち、本実施形態においては、本発明の第2駆動源が第3駆動源を兼ねていることになる。
【0031】
図1及び
図2に示すように、造粒容器3の側壁33には、造粒容器3で造粒された粒状物が排出される、正面視略矩形状の排出開口331が設けられている。排出開口331は、側壁33の回転床ディスク34から鉛直方向やや上方の位置に設けられている。本実施形態においては、側壁33に排出開口331が一つだけ設けられているが、同様の排出開口331を側壁33の複数箇所に設けてもよい。
【0032】
回転床ディスク34の中心には第1駆動装置1の駆動軸11が連結されており、これにより、回転床ディスク34が第1駆動装置1によって回転駆動される構造を実現している。回転床ディスク34の上面周縁部には、回転床ディスク34に対して垂直な方向に向かって攪拌部材341が二つ(341a、341b)立設されている。攪拌部材341aと攪拌部材341bとは同じ板状の形状を有し、互いに対向する位置に配置されている。攪拌部材341は、回転床ディスク34の回転によって造粒容器3内部に投入された被処理物及び造粒された粒状物を攪拌するとともに、造粒された粒状物を弾き飛ばす機能を果たす。
【0033】
攪拌部材341は少なくとも一つ立設されていればよいが、造粒容器3内で造粒された粒状物を排出開口から外部へと弾き飛ばす効率を考慮すると、二つ以上設けられていることが好ましく、二つ以上立設されている場合には、攪拌部材341のそれぞれが他のいずれかの攪拌部材341と対向する位置に配置されているか、攪拌部材341のそれぞれが等間隔で配置されていることが好ましい。このようにすると、二つ以上の攪拌部材341が、底面部の上面周縁部にバランスよく配置されることになるため、回転する回転床ディスク34の重量バランスを崩すことがなく、造粒処理の安定性も向上する。二つ以上偶数個の攪拌部材341が回転床ディスク34の上面周縁部に立設されている場合は、攪拌部材341のそれぞれが他のいずれかの攪拌部材と対向する位置に配置されていても、攪拌部材341のそれぞれが等間隔で配置されていてもよい。三つ以上奇数個の攪拌部材341が回転床ディスク34の上面周縁部に立設されている場合は、攪拌部材341のそれぞれが等間隔で配置される。
【0034】
側壁33の外側には、排出開口331の位置に対応して排出部35が設けられている。排出部35は、排出開口331から排出された粒状物を受け止めて収容可能なように箱状に形成されている。排出部35は、造粒過程において造粒容器3の内部で生じる粉塵が排出開口331から外部へと拡散することを防止する、排出開口331のカバー部材を兼ねてもよい。
【0035】
このような構造の造粒機100では、回転床ディスク34が回転することと、回転床ディスク34に立設された攪拌部材341が造粒容器3内を回転することにより、造粒容器3に投入された被処理物の造粒が進む。すなわち、回転床ディスク34上に滞留する被処理物は、回転床ディスク34の回転により生じる回転遠心力によって側壁33の内壁へと押し出され、当該内壁を転がることで粒状物の成長が進む。また、回転する攪拌部材341によって粒状物が叩かれることにより粒状物の強度が増し、同時に攪拌部材341によって粒状物が弾かれて側壁33の内壁を転がることで、より粒状物の成長が促進される。造粒が所望の大きさに造粒された粒状物は、回転床ディスク34に立設された攪拌部材341によって、攪拌部材341の進行方向に対して斜め上方向に弾き飛ばされて、側壁33に設けられた排出開口331から造粒容器3の外へと排出される。
【0036】
このような構造であれば、造粒された粒状物を造粒容器3の上縁部から造粒容器3の外へと排出する必要がなくなるので、造粒容器3を傾斜して設ける必要はなく、また、造粒容器3の内部を(側壁33に設けられた排出開口331以外は)密閉した状態にすることができ、かつ排出開口331の外側にはカバー部材として排出部35を設けているので、操業時の粉塵発生を抑制することができる。加えて、造粒容器3の内部を密閉した状態にすることができることにより、造粒容器3を高速回転させた際に、造粒容器3内の粒状物に働く遠心力が大きくなっても、排出開口331以外からは粒状物が造粒容器3の外へと排出されることがなく、回転床ディスク34が設置面Gに対して平行に設けられた水平型の造粒容器3となっているため、造粒処理の安定性も向上する。
【0037】
ここで、攪拌部材341によって粒状物が弾き飛ばされる度合い(どの程度の高さまで弾き飛ばされるか)は、粒状物の大きさ(質量)と回転床ディスク34の回転速度に依存するため、排出開口331の位置と回転床ディスク34の回転速度を調整することにより、排出開口331から造粒容器3の外へと排出される粒状物のサイズを制御することも可能となる。
【0038】
本実施形態における排出開口331は、堰板36を用いることにより、回転床ディスク34からの設置高さを変動させることができるように構成されている。すなわち、排出開口331に堰板36を取り付けることにより、正面視略矩形状の排出開口331の下端辺の高さを上下させ、これによって排出開口331の回転床ディスク34 からの設置高さを変動させる。
【0039】
堰板36は、
図1、
図2及び
図3に示すように、側壁33の形状に合わせてやや湾曲した帯状のプレート部材である。例えば
図2では、堰板36が排出開口331の下側を閉鎖するように三枚並べて取り付けられており、これにより排出開口331の下端辺の高さを堰板36の幅三枚分だけ鉛直方向上側に引き上げている。このようにして、本実施形態の造粒機100では、排出開口331の回転床ディスク34からの設置高さを変動させることにより、排出開口331から造粒容器3の外へと排出される粒状物のサイズを容易に制御することができるようになっている。
【0040】
堰板36の排出開口331への取り付けは、例えば、側壁33の外側において、排出開口331の両側部にレール形状の取付部材(不図示)をそれぞれ設け、その取付部材間に堰板36を上側からスライド挿入することにより行ってもよいし、ビス留め等の固定手段を用いて堰板36を側壁33に着脱自在に締着することにより行ってもよい。また、例えば、側壁33の外側において、蝶番を用いて排出開口331の一側部に堰板36の一側部を取り付け、堰板36を扉のように開け閉めすることによって排出開口331の一部分を閉塞可能に構成してもよい。
【0041】
造粒された粒状物のうち一部の粒状物は、本来排出開口331から排出されるべきサイズに成長しても、攪拌部材341によって弾き飛ばされるタイミングが排出開口331の位置とうまく合わず、造粒容器3内に滞留し続ける可能性がある。滞留し続けると粒状物はさらに大きな粒や塊となっていくが、一定以上の粒径に成長するとそれだけ質量が大きくなるので、慣性力が高くなって攪拌部材341に弾き飛ばされにくくなり、造粒機100を停止して人力で排出しない限り、造粒容器3内に滞留し続けることになる。このような課題を解決するために、本実施形態に係る造粒機100では、造粒容器3の内部に第1解砕部材5及び第2解砕部材6が設けられている。
【0042】
第1解砕部材5は、回転床ディスク34と平行に配置される、周端部が凸凹形状に形成された円板状のディスクカッター51を有し、本実施形態では、3枚のディスクカッター51a、51b、51cと、ディスクカッター51a及び51b間に配置された円板状のスペーサ52aと、ディスクカッター51b及び51c間に配置された円板状のスペーサ52bとを備える。第1解砕部材5は第1駆動装置1に連結されており、ディスクカッター51a、51b、51cと、スペーサ52a、52bの中心に駆動軸11が挿通されている。第1駆動装置1によって第1解砕部材5が回転駆動され、ディスクカッター51a、51b、51cはその中心を回転軸として回転するように構成されている。本実施形態ではディスクカッター51a、51b、51cは同一の形状、サイズを有している。
【0043】
第2解砕部材6は、回転床ディスク34と平行に配置される、周端部が凸凹形状に形成された円板状のディスクカッター61を有し、本実施形態では、2枚のディスクカッター61a、61bと、ディスクカッター61a及び61b間に配置された円板状のスペーサ62aと、ディスクカッター61b及び後述するクリーニング板7間に配置された円板状のスペーサ62bとを備える。第2解砕部材6は第2駆動装置2に連結されており、ディスクカッター61a、61bと、スペーサ62a、62bの中心に駆動軸21が挿通されている。第2駆動装置2によって第2解砕部材6が回転駆動され、ディスクカッター61a、61bはその中心を回転軸として回転するように構成されている。本実施形態ではディスクカッター61a、61bは同一の形状、サイズを有している。
【0044】
第1解砕部材5のディスクカッター51a、51b、51cの周端部と、第2解砕部材6のディスクカッター61a、61bの周端部とは、所定の間隔を開けて重なり合うように設置されている。すなわち、
図3に示すように、鉛直方向からみると、第1解砕部材5のディスクカッター51a、51b、51cの周端部と、第2解砕部材6のディスクカッター61a、61bの周端部とは重なっているが、
図1に示すように、水平方向からみると、第1解砕部材5のディスクカッター51a、51b、51cと、第2解砕部材6のディスクカッター61a、61bとは、設けられている高さが異なっていることにより、それぞれが回転駆動される際に干渉しないように構成されている。第1解砕部材5のディスクカッター51a及び51bの周端部の間に、第2解砕部材6のディスクカッター61aの周端部が位置し、第1解砕部材5のディスクカッター51b及び51cの周端部の間に、第2解砕部材6のディスクカッター61bの周端部が位置する。
【0045】
本実施形態では、
図3に示すように、第1駆動装置1の駆動軸11によって第1解砕部材5は時計回り方向に回転駆動され、第2駆動装置2の駆動軸21によって第2解砕部材6は反時計回りに回転駆動される。ただし、回転方向はこれに限られるものではなく、また、第1解砕部材5及び第2解砕部材6の両方が回転駆動されず、どちらか一方が回転駆動されてもよい。
【0046】
このような第1解砕部材5及び第2解砕部材6を備えることにより、本実施形態の造粒機100は、造粒容器3内で大きくなり過ぎた粒状物(塊状物)が、第1解砕部材5のディスクカッター51と、回転駆動される第2解砕部材6のディスクカッター61とによって解砕されて細かく砕かれるので、安定した造粒処理を連続的に行うことができる。特に、第1解砕部材5のディスクカッター51と第2解砕部材6のディスクカッター61の両方が回転駆動され、かつ回転方向が逆になっていることにより、造粒容器3内で大きくなり過ぎた粒状物(塊状物)が、より効率的に解砕されて細かく砕かれる。
【0047】
本実施形態においては、第1解砕部材5のディスクカッター51及び第2解砕部材6のディスクカッター61の位置を上下させることによって、第1解砕部材5のディスクカッターの周端部と、第2解砕部材6のディスクカッター61の周端部との間に形成される間隔が変動可能に構成されている。具体的には、第1解砕部材5においては、スペーサ52a、52bの厚みを変更するか、所定の厚みを有するスペーサ52a、52bの数を増減させることにより、ディスクカッター51a、51b、51cの位置を上下させることができる。また、第2解砕部材6においては、スペーサ62a、62bの厚みを変更するか、所定の厚みを有するスペーサ62a、62bの数を増減させることにより、ディスクカッター61a、61bの位置を上下させることができる。
【0048】
第1解砕部材5のディスクカッター51と第2解砕部材6のディスクカッター61のどちらかの位置、あるいは両方の位置を上下させることにより、第1解砕部材5のディスクカッター51と第2解砕部材6のディスクカッター61との間の間隔を調整することができ、これによって解砕される対象となる粒状物(塊状物)の大きさを制御することができる。
【0049】
粒状物の造粒強度を確保すべく、造粒機100に投入される被処理物には、水硬性が高い原料を配合したり、造粒促進材を添加したりするため、一般に凝集した被処理物は付着性が高くなり、造粒容器内の造粒空間に固着してしまって安定的な造粒処理に支障をきたすことがある。また、固着成長の状況によっては、造粒された粒状物の自動排出が損なわれ、造粒容器3内で粒状物が異常に大きくなり、人力での排出が必要になる場合がある。このような課題を解決するために、本実施形態に係る造粒機100では、造粒容器3の内部に、第2駆動装置2によって駆動され、回転床ディスク34 の上面上を摺動回転するクリーニング板7が設けられている。
【0050】
クリーニング板7は矩形状の板状部材であり、第2解砕部材6の下側において第2駆動装置2の駆動軸21に連結されている。第2駆動装置2は、クリーニング板7が第2駆動装置2によって回転駆動された際に、クリーニング板7が回転床ディスク34上に設けられた攪拌部材341及び第1駆動装置1の駆動軸11に干渉しないような位置に配置されることになる。このように設けられたクリーニング板7が回転床ディスク34上を摺動回転することにより、造粒過程で回転床ディスク34の上面に被処理物が固着することを抑制することができるので、固着物を取り除くために装置を停止して定期的に造粒容器3内を清掃する必要がなくなり、安定した造粒処理を連続的に行うことができる。
【0051】
また、クリーニング板7は、上述した第1解砕部材5と第2解砕部材6との間に造粒容器3内で大きくなり過ぎた粒状物を導くガイド部材としても機能する。すなわち、
図3に示すように、第2駆動装置2によって反時計回りに回転駆動されるクリーニング板7が粒状物を押し運び、第1解砕部材5と第2解砕部材6との間に導く。
【0052】
本実施形態に係る造粒機100において、造粒容器3を構成する各部材や第1解砕部材5及び第2解砕部材6を構成する各部材、駆動軸11、駆動軸21及び架台4の材質は、造粒機に必要な強度や耐久性を確保できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば一般構造用圧延鋼材(SS400等)や機械構造用炭素鋼(S25C等)を用いることができる。
【0053】
なお、造粒機100へと供給される被処理物は、粉体原料と造粒に必要な適量の水や造粒促進材等の液体であることが想定される。造粒処理では供給される粉体原料を均一に調湿することにより、所定粒度に対する処理のばらつきを抑制できるので、造粒機100の前段に加湿混錬可能な混合装置を配置し、粉体原料が予備的に均一に混合調湿された後に造粒機100に供給されることが好ましい。混合装置は、粉体原料を定量供給可能な原料供給機構と、添加する水や造立促進材等の液体を定量供給可能な液体供給機構とを用いて、一定配合比で供給された被処理物を均一に混合する加湿混錬機構を備えることが好ましい。
【0054】
また、造粒機100の前段で予備的に粉体原料が混合調湿される場合において、水和反応等による発熱を伴う場合は、必要に応じて、造粒機100の造立容器3内に少量の水を添加して調湿することで、粒度を微調整することができる。
【0055】
また、造粒機100の前段に混合装置を設置することが困難な場合は、造粒処理量を、混合装置を前段に設置する場合に対して半減させた上で、必要な水の全量を直接造粒機100に添加することで、造粒機100のみで造粒処理することもできる。
【実施例0056】
<実施例1>
以上説明してきた本実施形態に係る造粒機100を用いて、実際に電炉ダストを粉体原料として、水分を10~12%に調湿して造粒処理を行った。造粒機100における排出開口331の回転床ディスク34からの設置高さが150mmとなるように堰板36で排出開口331の下部を覆い、回転数が90~120/分となるように回転床ディスク34を回転駆動して造粒処理を行った結果、処理開始からおおよそ1分後には、粒径が5~10mmの粒状物を得ることができた。
<実施例2>
【0057】
実施例1と同じ造粒機100を用いて、実際に肥料を粉体原料として、水分を9~11%に調湿して造粒処理を行った。造粒機100における排出開口331の回転床ディスク34からの設置高さが150mmとなるように堰板36で排出開口331の下部を覆い、回転数が90~120/分となるように回転床ディスク34を回転駆動して造粒処理を行った結果、処理開始からおおよそ1分後には、粒径が2~4mmの粒状物を得ることができた。
【0058】
<実施例3>
実施例1と同じ造粒機100を用いて、実際に下水汚泥を粉体原料として、水分を30~40%に調湿して造粒処理を行った。造粒機100における排出開口331の回転床ディスク34からの設置高さが180mmとなるように堰板36で排出開口331の下部を覆い、回転数が120~150/分となるように回転床ディスク34を回転駆動して造粒処理を行った結果、処理開始からおおよそ1分後には、粒径が4~8mmの粒状物を得ることができた。
【0059】
以上の実施例1~3の結果を表1に示す。表1からわかるように、本実施形態に係る造粒機100を用いることにより、様々な種類の粉体原料から粒径にばらつきのない粒状物を得ることができることがわかる。
【0060】
【0061】
以上、本発明について図面を参照にして説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。例えば、上記実施形態においては、排出開口331が、堰板36を用いることにより、回転床ディスク34からの設置高さを変動させることができるように構成されているが、これに限られるものではなく、例えば排出開口331の下側から上側に向かって排出開口331を閉鎖可能なシャッター構造を設けることにより、排出開口311の回転床ディスク34からの設置高さを変動させることができるようにしてもよいし、排出開口311の下側を何らかの材質のシート状部材(例えばある程度の剛性を備えた合成樹脂製シート)で閉鎖するようにし、当該シート状部材を貼る位置を変動させることにより排出開口331の下側をどこまで閉鎖するか決定することにより、排出開口311の回転床ディスク34からの設置高さを変動させることができるようにしてもよい。
【0062】
また、第1解砕部材5及び第2解砕部材6のいずれかを回転駆動せず、もう一方のみを回転駆動する構造としてもよいし、第2解砕部材6とクリーニング部材7とを別々の駆動源で回転駆動するように、造粒機100が三つの駆動装置を備える造粒機としてもよい。