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特開2022-37715廃可燃性物質から作られる廃棄物再生材料、およびその製造方法と製造装置
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  • 特開-廃可燃性物質から作られる廃棄物再生材料、およびその製造方法と製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037715
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】廃可燃性物質から作られる廃棄物再生材料、およびその製造方法と製造装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/08 20060101AFI20220302BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20220302BHJP
   B09C 1/02 20060101ALI20220302BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
A61L2/08 106
B09B3/00 303A
B09B3/00 303E
B09B3/00 303L
B09B3/00 303M
B09B3/00 304K
B09C1/08 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141984
(22)【出願日】2020-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】520325234
【氏名又は名称】山形商事有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100213746
【弁理士】
【氏名又は名称】川成 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100221752
【弁理士】
【氏名又は名称】古川 雅与
(72)【発明者】
【氏名】久保田 亨
【テーマコード(参考)】
4C058
4D004
【Fターム(参考)】
4C058AA27
4C058BB06
4C058BB07
4C058CC01
4C058DD04
4C058EE02
4C058EE29
4C058JJ26
4C058KK05
4C058KK22
4D004AA07
4D004AA36
4D004AA41
4D004AA46
4D004AB01
4D004AB03
4D004AC05
4D004BA02
4D004BA10
4D004CA04
4D004CA07
4D004CA15
4D004CA22
4D004CA34
4D004CA42
4D004CA50
4D004CB04
4D004CB13
4D004CB21
4D004CB31
4D004CC09
4D004CC11
4D004DA06
4D004DA09
4D004DA17
(57)【要約】
【課題】通常は通常は廃棄される都市ゴミや廃プラスチック等の可燃性物質およびその焼却灰等の廃可燃性物質を有効利用することで、経済的に多量の廃棄物を素早く安価に処理してリサイクル材料として多様な用途に利用可能な廃棄物再生材料を製造する方法を提供する。
【解決手段】金属元素を含有する廃可燃性物質を、内壁がセラミック加工された焼却炉を有する遠赤外線触媒還元装置を用いて、低酸素還元雰囲気中で加熱処理することにより廃棄物再生材料を製造する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属元素を含有する廃可燃性物質を、
内壁がセラミック加工された焼却炉を有する遠赤外線触媒還元装置を用いて、
低酸素還元雰囲気中で加熱処理することを特徴とする廃棄物再生材料の製造方法。
【請求項2】
前記加熱処理をおこなう前に、廃可燃性物質を含水量10%以下まで乾燥させる工程を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物再生材料の製造方法。
【請求項3】
前記加熱処理の温度が200~450℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の廃棄物再生材料の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の方法を実施するための装置であって、
内壁がセラミック加工された焼却炉を有する遠赤外線触媒還元装置を備えることを特徴とする廃棄物再生材料の製造装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の方法により製造された廃棄物再生材料。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物である可燃性物質を安定で安全な廃棄物再生材料にリサイクルする方法に関するものであり、通常は廃棄される都市ゴミや廃プラスチック等の可燃性物質およびその焼却灰を有効利用すると共に、得られる廃棄物再生材料は触媒、脱臭剤、脱水剤、固化剤、土壌改良剤、耐火煉瓦の原料等、幅広く種々の用途に使用可能である、廃可燃性物質から作られる廃棄物再生材料、およびその製造方法と製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ゴミ等のゴミの処分は焼却処理をおこなった後に埋立をおこなうのが一般的である。焼却処理は、化石燃料を使って焼却炉で空気を調合しておこなう燃焼熱分解である。このため排煙による公害問題や二酸化炭素の排出問題、残渣の処理問題等があり、また経費増大等の問題もある。また、焼却処理おこなった後の焼却灰のほとんどは処分場で埋立処分されるが、埋め立てられた焼却灰は雨水等の影響を受けることにより、灰に含まれている有害物質の流出が起こり得る。このため、焼却灰にセメントを混ぜて固化させることで有害物質の流出を抑えようとする試みもおこなわれている。この方法は一応の効果が認められるものであるが、セメント固化の際に用いる水が過剰であった場合などには、水分蒸発によってセメント固化物に毛細管状の浸透性路ができることによる微量の有害物溶出のおそれがある。これらの溶出は、短時間当たりの溶出が微量であっても長期間にわたって溶出が起これば環境への影響は無視できないほどになる。更に、ゴミの排出量増大、埋立用地確保の困難性等の問題も指摘されている。このため、廃棄物を捨てるという考え方を改めて資源として再利用することが求められるようになってきている。
【0003】
これに対し、出願人はこれまで、ゴミ等の焼却灰を一定の条件下で還元加熱処理することで、安定化し、これをセメントで固化し安定化および減容化すると共に、その固化物を再利用する種々の方法を提案してきた。例えば、特開平10-151437号公報に開示された技術は、都市ゴミの一般焼却灰を脱酸素状態の空間で一定温度を維持して処理することにより、重金属類やダイオキシン類で環境を汚染することのない安全なセメント系の資材を作る方法を提供するものである。また、特開平9-309749号公報に開示された技術は、一般ゴミ、下水汚泥、ヘドロ、産業廃棄物等を焼却した後に残る有害な重金属類を含む焼却灰をセメント化した焼却灰セメント化物をロータリーキルンで加熱することで、セメントの資材として使用できるセメント系特殊固化剤を作る方法を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-309749号公報
【特許文献2】特開平10-151437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの技術は、焼却灰から再利用可能な安定化された資材を製造する方法であるが、400℃以上の比較的高温である程度の時間をかけて処理をおこなう方法であった。しかし、負荷を更に低減するには、可能な限り低温で更に短い時間で処理できる方法が望ましいと言える。また、経済的観念からは、一般ゴミに代表される可燃性廃棄物、廃プラスチック等は、まとめて同時に処理できることが望ましいと言える。しかし、廃プラスチックは、分別回収され選別されたものは資源としてリサイクルされているが、混合廃棄物といわれるような他の品目が混じった状態となってしまった場合には、もはや再生資源とすることが困難となる。そのような場合には、混じった状態のものを焼却処分することになるが、ダイオキシン等の有害物質を発生させない処理が求められるのは当然のことである。
【0006】
これらのことを鑑み、本発明は、廃可燃性物質を原料として、資源として再利用可能な再生資材を製造する方法を提供するものであり、更に、有害物質を発生させることなく比較的低温・短時間で種々の品目が混合した状態にある廃可燃性物質をまとめて処理できる方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、金属元素を含有する廃可燃性物質を、内壁がセラミック加工された焼却炉を有する遠赤外線触媒還元装置を用いて、低酸素還元雰囲気中で加熱処理することで安定化させ、有害物質の溶出等を起こすことなく安全に再利用できる廃棄物再生材料を、比較的低温・短時間の加熱処理で製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の廃棄物再生材料の製造方法の発明は、金属元素を含有する廃可燃性物質を、内壁がセラミック加工された焼却炉を有する遠赤外線触媒還元装置を用いて、低酸素還元雰囲気中で加熱処理することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の廃棄物再生材料の製造方法の発明は、請求項1に記載の加熱処理をおこなう前に、廃可燃性物質を含水量10%以下まで乾燥させる工程を含む、ことを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の廃棄物再生材料の製造方法の発明は、請求項1に記載の加熱処理の温度が200~450℃であることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の廃棄物再生材料の製造装置の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の方法を実施するための装置であって、内壁がセラミック加工された焼却炉を有する遠赤外線触媒還元装置を備えることを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の廃棄物再生材料の発明は、産業再生材料が請求項1から3のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の廃棄物再生材料の製造方法によれば、通常は廃棄される都市ゴミや廃プラスチック等の可燃性物質およびその焼却灰等の廃可燃性物質を有効利用して、多量の廃棄物を素早く安価に処理することでリサイクルし、廃棄物再生材料とすることができる。また、得られる本発明の廃棄物再生材料は、廃可燃性物質を有害金属等の溶出がない安定化状態であるため、優れたリサイクル品として触媒、脱臭剤、脱水剤、固化剤、土壌改良剤、耐火煉瓦の原料等、幅広く種々の用途に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に用いる遠赤外線触媒還元装置の一形態について、装置全体を示す側面図である。
図2】本発明に用いる遠赤外線触媒還元装置の一形態について、装置の処理槽を示す図であり、(a)は側面から見た内部構造を示す断面図(b)は上から見た内部構造を示す断面図である。
図3】本発明に用いる遠赤外線触媒還元装置の一形態について、装置の加熱装置部を示す図であり、(a)は側面から見た内部構造を示す断面図(b)は上から見た内部構造を示す断面図である。
図4】本発明に用いる遠赤外線触媒還元装置の一形態について、装置の下部ホッパー部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は内部構造を示す断面図である。
図5】本発明に用いる遠赤外線触媒還元装置を含む、本発明の廃棄物再生材料を製造するプラントの一態様について、当該プラント全体を示す平面図である(実施例)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の、廃棄物再生材料の製造方法は、金属元素を含有する廃可燃性物質を、内壁がセラミック加工された焼却炉を有する遠赤外線触媒還元装置を用いて、低酸素還元雰囲気中で加熱処理することを特徴とするものである。
【0016】
本発明の製造方法により廃可燃性物質から製造される廃棄物再生材料は、触媒、脱臭剤、脱水剤、固化剤、土壌改良剤、耐火煉瓦の原料等、幅広く種々の用途に使用できる優れた再生加工品と言えるものである。ここで、廃可燃性物質とは、例えば、(1)いわゆる一般ゴミである可燃性廃棄物、(2)一般ゴミを焼却処分することで生じる焼却灰、(3)廃プラスチック、特に分別が不十分で一般ゴミに混入しているもの、これら(1)~(3)全般の全てまたは一部を混合したものを指すが、これらは例示でしかなく、可燃性であれば本発明の処理対象とできるため、廃棄された可燃性物質を広く本発明の処理対象物をして廃可燃性物質と総称するものである。
【0017】
一般的に、廃棄物は全てを混合して焼却灰にすると鉱物元素の集合体とも言えるような種々の金属化合物が混じり合った混合物となる。廃棄物の大半は工場ゴミや家庭ごみであり、このうちの家庭ごみの組成比率をみると紙類が約35%、食品類が約30%、プラスチック類が約10%、ガラス類が10%、金属類が5%、木竹類が3%、繊維類が3%、陶磁器類1%、その他が1%である。これらの物質は、金属・非金属元素から成り、元素としての組成では、ケイ素を最も多く含み、他にアルミニウム、カルシウム、塩素、鉄、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、硫黄、リン、チタン等を含んでおり、更に、その他の極微量元素も含まれる。工場廃棄物は、工場の生産過程、生産品目によって特定有害産業廃棄物となり、そのうち、有害指定金属としては、鉛、六価クロム、カドミウム、ヒ素、水銀、セレンの6元素が指定されている。廃棄物中の金属の多くは、含有量1%未満の極微量元素であるが、塩素と結合した場合には水に溶けやすい塩化物となるため、含有量が極微量であっても溶出試験における基準を満たさない場合が多い。
【0018】
これらの重金属は触媒還元装置を用いて低酸素還元雰囲気中で処理することにより、添加剤として加えられる硫黄やリン等の成分により、硫化物やリン化物へと分子が組み替えられて難溶性化合物を生成する。生ごみ類に多く含まれる塩化物、特に食塩(NaCl)は、触媒還元装置での次の反応により分解されることとなる。
CaCO3 → CaO + CO2 ・・・・(a)
石灰石(CaCO3)の反応により二酸化炭素が生成し、同じく炉内で発生するアンモニアと共に食塩と反応することとなる。
NaCl + NH3 + CO2 +H2O → NaHCO3 + NH4Cl・・・・(b)
この反応により食塩は分解され、生じた炭酸水素ナトリウムは更に分解され、炭酸ナトリウムと水と二酸化炭素になる。
2NaHCO3 → Na2CO3 +H2O + CO2 ・・・・(c)
また、食塩は以下の反応により炭酸ナトリウムと塩化カルシウムに変わり無害化される。
2NaCl + CaCO3 → Na2CO3 + CaCl2 ・・・・(d)
これらの反応を促進するために、(1)選別(磁選等)、(2)乾燥、(3)粉砕、(4)還元の4工程が重要となる。
【0019】
処理工程全般
本発明の、廃棄物再生材料の製造方法の概要に関して、以下に、処理工程の一態様について説明する。
(1)<受入れ> 受入ピットに廃可燃性物質を入れ、混合撹拌する。
(2)<選別> 振動選別機設備により粗大物を除外し、磁選機により粗大な鉄分を除外する。
(3)<破砕> 一次破砕機により破砕処理する。
(4)<選別> 風力選別機により比重選別をおこなう。
(5)<分別> コンベアを経由してホッパーに分別される。
(6)<破砕> 重量物は二次破砕される。
(7)<乾燥> コンベヤ付き乾燥機により乾燥する。この際に、添加剤や触媒が添加されてもよい。
(8)<選別> コンベヤ付き振動篩による選別をおこなう。
(9)<粉砕> コンベヤ付き破砕機により粉砕処理する。
(10)<撹拌> スクリューコンベヤ付き撹拌機により撹拌混合する。
(11)<添加> 貯留タンクへ入れられ、添加剤や触媒が添加される。
(12)<乾燥> スクリューコンベヤ付き乾燥保管器により乾燥する。
(13)<加熱> セラミック壁を有する遠赤外線触媒還元装置による加熱処理する。
(14)<貯留> 水冷コンベヤを経て製品ホッパーへ投入される。
ここで、(13)<加熱>工程、そして(7)<乾燥>および(11)<添加>の工程で加えられる添加剤および触媒が本発明の製造方法における特に重要な部分といえる。それ以外の工程については、同様の効果が得られる公知の方法に代替可能であり、また、効果に差異のない範囲で工程の順序を適宜変更することも可能である。ここに示した上記の工程例も実施態様の一例に過ぎない。
【0020】
ここで、廃可燃性物質は種類が非常に多く、単体や混合物、また様々な用途に用いられた物等、多種多様な物質が混じっているといえる。物質によっては、熱による腐食性や反応性等によって爆発や火災の恐れすらある。そこで、ARC「暴走反応装置」、DSC「示差走査熱量計」等を用いて分析計量をおこないながら処理することが望ましい。事前に、シュミレート、ラボテスト等のプロセスをとって実験データの解析を十分におこなっておくことも大切である。しかし、物質は元素の集合体であるので、上記の工程により減容化をおこなうことができる。本方法の名称は、「遠赤外線触媒還元処理」であり、セラミックから発生する遠赤外線を熱源とした化学反応による分子の組換えによって不溶性金属を生成するものである。
【0021】
本発明の製造方法における特徴的な部分について、以下、重点的に説明をしていく。上記工程のうち(13)<加熱>は、廃可燃性物質に金属元素を加えた後、内壁がセラミック加工された焼却炉を有する遠赤外線触媒還元装置を用いて低酸素還元雰囲気中で加熱処理をおこなうものである。本発明の廃棄物再生材料は、金属元素を含有する廃可燃性物質を外気と絶縁された低酸素状態の空間における還元雰囲気中で、一定温度を一定時間維持して加熱処理することにより、廃可燃性物質の有害物質を無害化処理することで製造されるものである。この加熱処理は触媒存在下でおこなうことが望ましい。
【0022】
加熱処理に際して、セラミック加工された内壁に外部より熱が加えられることにより、セラミックから遠赤外線が射出されることとなる。遠赤外線は電磁波の一種であり、電磁波とは電場と磁場が交互に押し寄せる波であり、このうち0.75 ~1000 マイクロ・メーター(μm)の波長領域のものは赤外線と呼ばれ、特に3 ~ 1000μm の波長領域のものは遠赤外線と呼ばれる。
【0023】
遠赤外線は加熱作用を有しており、これは物質自体の分子運動や結晶格子振動等の熱振動が、遠赤外線を吸収することで激しくなることで熱を発生させる性質によるものである。高分子物質や食品等の有機物は、遠赤外線をよく吸収する性質を持っており、吸収された遠赤外線は前述の加熱作用により物質を内部から温める作用を持つ。
【0024】
この波長域は、金属以外の多くの物質に吸収されやすい性質を持っており、炭酸ガスCO2 や水蒸気H2Oは遠赤外線を吸収する性質を持っている。遠赤外線の加熱作用は、電気極性を持つ分子(水分子)などに振動エネルギーを与えて運動を活発化させる運動エネルギーを与えることによるものであり、遠赤外線エネルギーを得た分子は加速して他の分子と衝突し、衝突により熱に変わるが、遠赤外線そのものは熱ではなく、相手分子に自己発熱をさせる電磁波である。このように、有機物に吸収されやすい遠赤外線は、吸収されることで熱に変わって物質の深部に伝わり内部を温める作用を有する。
【0025】
次に、本発明の廃棄物再生材料を製造するのに用いられる装置、すなわち、内壁がセラミック加工された焼却炉を有する遠赤外線触媒還元装置について図を参照しつつ説明する。遠赤外線触媒還元装置の一実施形態について図1~7に示した。本実施形態はあくまでも一例であり、本発明の遠赤外線触媒還元装置はこれに限定されるものではない。図1は遠赤外線触媒還元装置1の全体を示した図である。装置は大きく分けて、図2から図5に示した焼却炉2部分と、図6および図7に示した下部ホッパー3から成る。焼却炉2部分のうち、図2および図3に示した上部を加熱槽21と称し、図4および図5に示した下部を加熱装置部22と称する。
【0026】
図1を参照して、遠赤外線触媒還元装置1の各部および装置1における処理の概要を述べる。後述する前処理を施された焼却灰は、スタンドベルトコンベアー4を通り、ロータリーバルブ5を経て、装置1の最上部に設けられた投入口23より焼却炉2内へ投入される。投入された焼却灰は、焼却炉2内で、触媒の存在下、低酸還元雰囲気中で加熱処理される。一定温度で一定時間加熱処理された後に、焼却灰は下部ホッパー3に送られ、下部ホッパー3の底部に設けられた処理済み焼却灰取出し口31より排出される。排出された加熱処理済みの焼却灰が、本発明の廃棄物再生材料となる。
【0027】
焼却炉2部分について詳述する。図2および図3は、焼却炉2の加熱部22の上部に設けられた加熱槽21の内部構造を示したものである。図2は、側面から見た内部構造を示す断面図であり、図3は、上から見た内部構造を示す断面図である。加熱槽21の最外面は鋼鉄1aで囲われ、順に内部へ断熱材1b、耐火キャスター1c、耐火煉瓦1dの構成となっている。耐火煉瓦1dの表面は後述するセラミック加工が施されている。開閉扉7は、加熱処理のために装置が稼働している間は閉じられている。頂部および底部は一部の排気口のみ開口した鋼鉄で囲まれているため、加熱処理中の焼却炉内は外気と遮断された減酸素還元雰囲気とされる。
【0028】
遠赤外線触媒還元装置1の内壁である耐火煉瓦1dは、焼却炉2の内側面にセラミック加工が施されている。セラミック加工は耐火煉瓦1dの表面にセラミックを貼り付ける等の公知の方法により施すことができる。また、セラミックを含有する液体に耐火煉瓦を所定時間浸すことで煉瓦にセラミックを含ませる加工を施したものでもよい。使用するセラミックは、アルミナAl23、ジルコニアZrO2、チッ化アルミAlN、炭化ケイ素SiC、チッ化ケイ素Si34、フォルステライト2MgO・SiO2、サイアロンSiAlON、チタン酸バリウムBaTiO3、フェライトM2+O・Fe23、ムライト3Al23・2SiO2等の一般的なものを用いることができる。中でも、安価で耐熱性や機械強度が高く、化学物質に対する浸食対抗性も備えているアルミナを好ましく用いることができる。アルミナは強い化学結合を有し、科学的にも物理的にも高い安定性をもち、耐熱性(融点2500℃)、室温熱伝導率、高強度、高硬度、電気絶縁性、耐食性など多様の性質を持つ優れた材料である。
【0029】
赤外線触媒還元装置1の焼却炉内壁をセラミック加工することによる副次的効果として、セラミックから射出される遠赤外線の効果により炉内が冷め難いという効果もある。このため、一旦、設定温度まで上がった炉内は追加加熱することなく長時間に渡って必要温度を維持できるため、灯油や電気等の加熱エネルギーを削減する効果もある。
【0030】
また、焼却炉2の内壁に設けられるセラミック加工された耐火煉瓦1dの表面や煉瓦と煉瓦の間に金属触媒を存在させることが望ましい。金属触媒は、Pt、Pd、Ti等の公知の金属触媒を用いることができる。
【0031】
本発明による加熱処理は、低酸素還元雰囲気で加熱することにより行なうが、これは、酸化反応を極力小さくし、焼却灰に含まれる重金属の安定化反応を促進することを目的とするものである。加熱条件は、焼却炉の内壁が最低200℃になるように外部から加熱する。好ましくは内壁温度が250℃以上になるように加熱をおこなう。このとき、焼却炉内壁のセラミックから射出される遠赤外線の効果により焼却炉内部の温度は上昇していく。温度センサー等により、炉内の温度が450℃に達したときに外部からの加熱を止めるように設定されていることが好ましく、炉内の温度が400℃以内に維持されるように設定されていることが特に好ましい。加熱は、10分間から3時間、好ましくは20分~40分間、上記の温度を維持することによりおこなわれる。温度が低すぎると重金属の安定化が十分ではなく、温度が高いほどエネルギー消費量が多大となり経済的に得策ではない。加熱時間は、長いほど無害化反応の進行は完全になるが、処理工程やコストなどの経済性から3時間以内のできるだけ短い時間とすることが好適である。この加熱処理は、単純に燃焼させるのみである熱分解ではなく、セラミックスから発生する電磁波である遠赤外線と触媒の相乗効果によってもたらされる分子運動による熱の発生を利用して、燃焼と電磁波と触媒による化学反応により物質を分解する還元処理をおこなうものであり、安定化されたリサイクル資源となる再生資源を生産することが可能となる。
【0032】
上述のように、本発明の廃棄物再生材料は、金属元素を含有する廃可燃性物質を一定条件で加熱処理することで製造されるものである。本発明の処理対象となる廃可燃性物質は、前述のように、例えば(1)いわゆる一般ゴミである可燃性廃棄物、(2)一般ゴミを焼却処分することで生じる焼却灰、(3)廃プラスチック、特に分別が不十分で一般ゴミに混入しているもの等である。これらの廃可燃性物質には金属元素が含まれており、例えば、一般廃棄物である都市ゴミを通常の方法で焼却処理することによって排出される都市ゴミの焼却灰には、後述するように遷移元素等の金属元素が多種含まれている。このため、わざわざ金属元素を加えずとも、金属元素の存在下で加熱する効果を得ることができ、本発明の廃棄物再生材料の製造に最適なものである。
【0033】
他の例としては、例えば、活性汚泥、下水汚泥、消化汚泥などの汚泥類の焼却灰、産業廃棄物の焼却灰も原料とすることができる。ただし、有害なダイオキシン類を含有しない焼却灰であることがより望ましい。これらの焼却灰にはカドミウム、鉛、六価クロムのような有害物質が含有されている場合があり、更に、有害物質の種類、含有量は常に変動するものであるが、本工法はこれらの変動にも確実に対応できるものである。また、原料とする都市ゴミ等の焼却灰中にこれらの金属類が十分でない場合には、チタン化合物やマグネシウム化合物、ハイドロソーダライトなど適宜添加することが好ましい。
【0034】
原料として好適なものひとつである都市ゴミの焼却灰について更に詳しく述べる。都市ゴミの焼却灰は多種多様な物質から成る都市ゴミを高温で燃やしたものであるため、30元素以上の金属元素が含まれている。具体的には、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Cu、Zn、Pb等が酸化物として存在しており、これらの金属が本発明の製造方法における加熱処理に際して有用な働きをすることで、廃可燃性物質から本発明の廃棄物再生材料を製造することが可能となる。
【0035】
焼却灰にはダイオキシン類や重金属類の有害物質が含まれていることから、法律では埋め立処分することとなっている。しかし、埋め立て処分場の設置問題等から、現在ではセメントに添加剤として利用することも認められている。だが、たとえ微量であっても重金属類を含有する焼却灰を無害化せずに用いるのは好ましくない。実際、セメントと共に高温焼成処理しても重金属類は安定とはならず、エコセメントで生じる事故の原因の多くはそのようなセメント中の不純物の悪戯によるものであったと言える。
【0036】
特に、焼却灰に含まれる金属はそのままの形では水に溶けるため、焼却灰から溶出して環境汚染に繋がることが懸念される。焼却灰を資源として利用するためには、これらの含有金属を安定化して無害化する必要がある。またその処理工程は、環境に負荷をかけることなく安価に処理できる経済性が求められる。 本発明の方法は、低温(例えば、400℃以下)で処理ができるため経済面で優れていると共に、二酸化炭素の排出量も低減でき、環境への負荷の面でも優れている。本発明の基本的考え方はSNC工法と命名され、15年間に亘る実証により安全性と安定性が確認されている。更に、処理後の物質が資源として利用範囲が広いことも実証済みである。
【0037】
SNC工法は、施設費が5分の1と安く、エネルギーは2分の1、二酸化炭素は10分の1、維持費も5分の1とすべての面で優れた工法である。実証実験は、東京都下の武蔵野市、三鷹市、二枚橋衛生組合、柳泉園組合、埼玉県の上尾市など11市の自治体の協力の下でおこなわれた。低温触媒還元処理であるSNC工法は、触媒を添加し、400℃以下の減酸素雰囲気下で還元処理をおこなう方法であり、経済産業大臣の「焼却灰再資源化処理プラント」の認定も受けている。SNC工法は、熱分解のみに頼ることなく、廃可燃性物質に含まれている金属元素を触媒として、減酸素雰囲気下で触媒による還元処理をおこなうため、400℃以下の低温であっても十分な化学反応を起こして金属を安定化させることが可能となる。これにより、廃可燃性物質に含まれる金属化合物は安定化され不溶化される。廃可燃性物質は、含有金属がこのように水に溶け出さない状態に安定化されてこそ、無害化されたと言える。重金属を含む異種金属の混合物であると言える廃可燃性物質を効率よく相互分解させ、重金属塩類を触媒として利用して金属塩を溶離し、結晶化させることにより安定化が達成される。この安定化処理にあたっては、金属類の不溶化を進めるために金属硫化物などの硫黄化合物を添加することが好ましい。
【0038】
廃可燃性物質の焼却灰は、極微量元素として含まれる30種以上の金属元素により、いわば混合物を形成した状態にあると言える。また、この焼却灰は有機物の含有元素が無機物(熱しゃく減量による)に変化したものであって、小さな粒子である原子、分子、イオンからなり、分子は原子で構成され、イオンはNa、Cl、NH 、NO のように原子又は原子団が電気を帯びたものである。全ての物質は粒子で構成され、かつエネルギーを持っており、このエネルギーが最小となったときに安定した状態となる。物質をつくっている粒子はいずれも原子が基本となっている。原子には電子が存在し、電子にはK殻、L殻、M殻など軌道があり、一番外側の軌道にある原子と原子の結合の役目を果たす最外殻電子の数によって原子の化学的性質は決まり、最外殻電子軌道に電子が一杯となったときに元素は安定となる。焼却灰中の金属も、結合に関与する最外殻電子軌道にある価電子を持っているので、他の原子と価電子をやり取りしたり共有したりすることで、最外殻電子軌道に電子が満たされた安定した電子配置になろうとする。金属原子は安定するために、結合された金属原子の間を自由に動き回る自由電子が結晶全体に広がることで結晶となるが、結晶の構造は1つには決まっておらず、原子が整然と並んだ構造にある結晶構造も可能である。しかし、簡単に全ての原子が整然と並ぶとは限らず、構造に不整合を生じさせることで反応性を高めることができる。
【0039】
これらの反応を触媒によってさらに促進するのがSNC理論である。触媒となる物質は、気体、液体、固体を問わず多種多様である。焼却灰中から精製する触媒は、金属触媒Fe、Ni等、半導体酸化物NiO、ZnO、MnO、Cr、V、TiO等、絶縁作酸化物Al、SiO、MgO等の超紛粒体がある。焼却灰の無害化は分子の組み換えであり、無尽蔵にある焼却灰を触媒として使用することで固定化の必要がなく、化学反応の後は触媒そのものを資源として利用できる。資源として利用するためには、有害性があってはならず、無害化して安全で安定した物質を成型することができる。処理工程に於いても、経済性が高く環境負荷の小さいものでなげればならない。
【0040】
参考として、焼却灰が金属類の混合物でミネラルであるように、地下資源の鉱物や土壌もミネラルの集合体である。ミネラルは地下資源として安定しているので公害の発生原因とはならない。焼却灰のミネラルも無害化してやることで安定化して公害原因とはならない。無害化とは、有害指定金属を取り除くことのみを意味するものではない。有害指定金属を地下資源と同じ化合物にすること、即ち金属によって硫黄化合物か燐化合物に化学変化すれば地下資源と同様に安定する。
安定資源は次のような資材として有効利用することができる。
(1)触媒として加工すれば、脱臭剤、脱色剤、浄化剤、脱水剤など。
(2)土壌改良材として
(3)肥料としてミネラルの補充
(4)セメント添加剤として
(5)合成ゼオライト
なお、本方法は添加剤としてミネラル元素が加味され、特許としても7本の周辺特許を持つものである。
【0041】
安定化により廃可燃性物質に含まれる反応性物質を安定固化することで、重金属の溶出を防止する効果が生ずることとなる。そして、廃可燃性物質を原料として製造した本発明の廃棄物再生材料も、廃可燃性物質由来の重金属を含有する異種金属の混合物といえるものである。
【0042】
原料とする廃可燃性物質は、加熱処理に先立つ前処理として、乾燥した後に選別処理をおこない、更に粉砕により微粉末状とすることが好ましい。乾燥は公知のどのような方法によってもよいが、後述する加熱処理時に遠赤外線触媒還元装置から排出される排ガスを利用することがエネルギー効率の面で望ましい。選別処理は、例えば、磁石等により磁着させることで原料となる廃可燃性物質に含まれている粗大金属を取り除き、更に振動篩等を用いてガラス類やその他の粗大不純物を選別し除去する。尚、ここで選別されたガラス類は粉砕機等により細かく粉砕して、篩を通した廃可燃性物質に混合して次工程の処理にまわすこともできる。
【0043】
廃可燃性物質の粉砕は、インパクトミル等の公知の粉砕機等によりおこなうことができる。廃可燃性物質を微粉末化することによって、廃可燃性物質に含まれる金属化合物の表面積が大きくなり、触媒活性が大となって、添加するチタンの酸化物との反応性、ならびに、焼廃可燃性物質の重金属類を含む異種金属化合物の混合物間あるいは添加するチタンの酸化物との相互分解・反応が良好となる。廃可燃性物質の粉砕は、好ましくは100~300メッシュ、さらに好ましくは100~200メッシュの微粒子に粉砕処理することが好ましい。特に、廃プラスチックが含まれる場合には、100~150メッシュの微粒子に粉砕処理することが好ましい。廃プラスチックは、触媒と電磁波の相乗効果で自燃しても熱量により溶け合って固まってしまう。結晶を崩すには触媒のみでは困難であり、結晶が分解されて分子の移動があって自燃状態となり、炭素の結合が切れることによって分子が分解する。このため、廃プラスチックが含まれる場合には、より微細に粉砕処理することが好ましいといえる。粉砕工程は、廃可燃性物質を微粒子に粉砕処理する粉砕処理装置を還元焼却炉の前に設けることが好適である。
【0044】
粉砕処理時には、Pt、Pd、Ti等の金属触媒を微量添加することが好ましく、また添加剤として硫黄などの含硫化合物(硫黄単体を含む)を、処理全体量の0.1%程度混合することが好ましい。また、触媒としては、本発明の製造方法により一般ゴミの焼却灰を原料として製造された廃棄物再生材料を、触媒として加えることもできる。その場合には、上記の金属触媒と共に、本発明の廃棄物再生材料をそれぞれ微量添加することが好ましい。触媒は金属分子を活性のある金属原子にして、化学反応を熱源にたよらず促進する力をもっており、また含硫化化合物の添加により重金属の不溶化が促進されることとなる。 廃可燃性物質と金属触媒との配合割合は、廃可燃性物質100重量部に対して金属触媒を1.0~30重量部加えるのが好ましく、より好ましくは5.0~20重量部を配合するのが好適である。なお、触媒は粒子が細かいため、製造された廃棄物再生材料を篩にかけることで回収し再利用することも可能である。
【0045】
更に、粉砕された廃可燃性物質にはチタンもしくはクロムの酸化物を添加することが好ましい。チタンの酸化物としては、例えば、酸化チタン、チタン酸塩またはチタン複合酸化物としてチタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉄、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸アルミニウム、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、チタンを含む複合酸化物などを、クロム酸化物として酸化クロム等を挙げることができる。また、チタン鉱石と称されている、イルメナイト、ゲイキ石、バイロファン石などの粉砕物を特別な処理を施すことなく用いることができる。 廃可燃性物質に対して、上記チタンの酸化物をチタンとして0.0001~0.05重量%、好適には0.005~0.05重量%、さらに好適には0.001~0.01重量%添加混合して加熱処理することにより、廃可燃性物質に含有される金属化合物間との反応が生起される。
【0046】
微粉砕化され、各種の添加剤が混合された廃可燃性物質は、内壁がセラミック加工された遠赤外線触媒還元処理装置内へ、装置上部より投入される。遠赤外線触媒還元処理装置へ投入された廃可燃性物質は、酸化反応を極力小さくして金属酸化物を金属状態に近づけると同時に共存する金属類間の反応を促進するために、減酸素還元雰囲気下で加熱される。減酸素還元雰囲気下とすることで、金属もしくは非金属元素の酸化物の混合体であるが故に、場合によっては毒性物質の発生もあり得る廃可燃性物質の酸化反応を抑え、廃可燃性物質中に含まれる有害物質の除去または無害化をおこなうことができる。 減酸素還元雰囲気は、遠赤外線触媒還元処理装置を外気から遮断可能な構造とすることや、装置内に窒素(N2)ガスを送ることで減酸素雰囲気とし、触媒を存在させることで作ることができる。
【0047】
本発明に用いる遠赤外線触媒還元処理装置は、公知の焼却灰処理施設の焼却炉の内壁をセラミック加工を施したものを使用することも可能である。例えば、特開2001-942号公報や特開2000-24625号公報に開示されている焼却灰の無害化・再資源化のための処理装置は、処理物を還元雰囲気中で加熱処理するための加熱装置を有し、本発明の遠赤外線触媒還元処理装置と主要な処理装置については共通する。したがって、開示されている焼却灰処理装置を基本構造として本発明に用いる遠赤外線触媒還元処理装置を構築することも可能である。
【0048】
以上の工程により製造された本発明の廃棄物再生材料は、上述のように、触媒、脱臭剤、脱水剤、固化剤、土壌改良剤、耐火煉瓦の原料等、幅広く種々の用途に使用することができる。たとえば、触媒としては、上述の本発明の製造方法の工程で説明したように、本発明の遠赤外線触媒還元装置での加熱処理に先立ち処理対象物に添加する触媒として用いることができる。また、特開平9-309749号公報において開示した、セメントの資材として使用できるセメント系特殊固化剤として同公報に開示した方法で使用することも可能である。更に、特開2011-031183号公報に開示したアスベスト無害化処理物を原料とした耐火煉瓦におけるアスベスト無害化処理物の代替として耐火煉瓦の原料とすることもできる。その他、特開2010-247042号公報に開示された脱臭剤、特開2010-248331号公報に開示された土壌改良材として、これら公報に開示された方法と同様の方法にて同様に使用することが可能である。
【0049】
また、有害な重金属により汚染された汚染土壌の処理に用いることもできる。有害土壌100部に対して、本発明の廃棄物再生材料を30~40部加えてよく混合した後に乾燥させる。これにより、雨水等の影響によって汚染土壌から有害な重金属が溶出することを防止することが可能となる。
【0050】
以下、実施例に基づいて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例0051】
<廃棄物再生材料の製造>
まず最初に、本実施例における廃棄物再生材料の製造工程の概要を述べる。一般都市ゴミの焼却灰、廃プラスチックが混入した一般ゴミを、受入れピットに入れて良く撹拌混合した。その後、粉砕機により100~150メッシュに粉砕した。粉砕時に、金属触媒としてPt粉末と本発明の廃棄物再生材料を微量加え、添加剤として硫黄を処理量の約0.1%となるように加えた。ここで加えた本発明の廃棄物再生材料は、一般都市ゴミの焼却灰少量を原料として本処理と同一処理を準備的におこなうことで、予め製造しておいた廃棄物再生材料を用いたものである。当該準備処理時に加えた触媒は、金属触媒Pt粉末のみであるが、入手可能であれば、本処理と同様に触媒として金属触媒と本発明の廃棄物再生材料の両方を添加して製造した廃棄物再生材料を用いることが好ましい。更に、酸化チタンを0.03重量%加え、粉砕をおこないながらよく撹拌混合した。そして、混合したものを乾燥機を用いて水分6%まで乾燥させた後、本発明の遠赤外線触媒還元装置を通して以下の条件で加熱処理をおこなうことで、本発明の廃棄物再生材料を得た。
【0052】
本実施例に用いた廃棄物再生材料の製造プラントの全体を示す平面図を図8に示した。
便宜上、当該プラントを遠赤外線触媒還元プラントPと呼ぶ。当該プラントにておこなった処理工程を以下に具体的に述べる。原料とした一般都市ゴミの焼却灰および廃プラスチックが混入した一般ゴミは、まず受入れピット101に入れられて、撹拌混合された。各工程間はコンベア102で結ばれている。混合された原料の焼却灰および一般ゴミは、次に磁選破砕機103に送られて、磁力により粗大な鉄分が除外されて破砕処理された。尚、この工程に先立って、振動篩によって粗大物を除去する工程を設けてもよい。原料は次に乾燥機104に送られて一次乾燥され、破砕機105により二次破砕された。その後、貯留タンク106に原料が送られて撹拌された。この撹拌時に上述の添加剤や触媒を添加した。次に、二次乾燥機108に送られ、水分6%まで乾燥された。原料を水分6%程度まで乾燥させることで、次工程の加熱処理において赤外線が水分に邪魔されることを防止することができる。二次乾燥機108は、次の工程である遠赤外線触媒還元装置1と接続されており、加熱処理時に遠赤外線触媒還元装置1から排出される排ガスが引き込まれる設計となっている。これにより、排ガスの熱を乾燥に利用できるのでエネルギー効率がよく環境への負荷を軽減できる。また、二次乾燥機108には排ガス処理装置107が接続されており、有害なガスが外に出ないよう設計されている。
【0053】
乾燥された原料は、遠赤外線触媒還元装置1に送られ、後述する処理条件で加熱処理がおこなわれた。遠赤外線触媒還元装置1は、図1~7に示した装置を使用した。遠赤外線触媒還元装置1に投入された原料は、焼却炉での加熱処理を経ることで本発明の廃棄物再生材料となり、遠赤外線触媒還元装置1の下部ホッパー3より排出された。排出された廃棄物再生材料は水冷コンベア109により粗熱を取りながら製品貯留槽110に送られ貯蔵された。そして、適宜必要に応じて排出口111から取出されて製品とされる。本プラントの外周の大きさは、概ね35m×20mである。
【0054】
遠赤外線触媒還元装置1は、焼却炉部分が一辺概ね2mの立方体形状であり、焼却炉部分の内壁はセラミック貼付加工を施してある。更に、炉内の耐火煉瓦部分の表面および煉瓦間に金属触媒として微量のPt粉末を存在させた。加熱処理は、粉砕済みの原料を遠赤外線触媒還元装置の上部より焼却炉内に投入し、250~400℃に維持された炉内で120分加熱することによりおこなった。サーモセンサーにより炉内温度が250℃まで下がったことが感知されたときに、外部に設けられた加熱装置22が稼働して炉内温度400℃まで加熱した。この繰り返しにより、炉内温度は250~400℃に維持された。ここで、遠赤外線触媒還元装置1の焼却炉内壁がセラミック加工されている副次的効果として、セラミックから射出される遠赤外線の効果により炉内が冷め難いという効果がある。本実施例の一辺概ね2mの立方体状の焼却炉の場合で、一旦400℃まで上がった炉内は、2時間以上も250℃以上を維持できるため、灯油や電気等の加熱エネルギーの削減効果も認められた。また、加熱処理時は、遠赤外線触媒還元装置1の開閉扉7を閉じて焼却炉2内を外気と遮断された密閉空間とすることで、低酸素還元雰囲気とした。以上の製造工程により、本発明の廃棄物再生材料を得た。
【0055】
<汚染土壌の安定化試験>
得られた本発明の廃棄物再生材料を使用して、有害金属を含む汚染土壌の安定化試験をおこなった。本発明の廃棄物再生材料30gに対して、試料とする汚染土壌100gを加えてよく混合した。出来上がった混合物を自然乾燥により含有水分量が40%程度となるまで乾燥させることで処理済み土壌とした。
【0056】
<溶出試験>
処理済み土壌に対して重金属の溶出試験をおこなった。試験は、一般財団法人・沖縄県環境科学センターに分析を依頼し、その結果を表1に示す。溶出試験は、アルキル水銀、水銀、カドミウム、鉛、六価クロム、砒素、セレン、1、4-ジオキサンについておこなった。各項目の分析方法は、表1の下部に示された通りである。この試験の結果、アルキル水銀は検出されず、他の金属についても基準値を大幅に下回る値であった。以上の結果より、本発明の製造方法により作成された廃棄物再生材料を、汚染土壌に混合させることで、有害金属の溶出を抑えて安全に安定的保管が可能になることが確認された。
【0057】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、通常は廃棄される都市ゴミ等の焼却灰、廃プラスチックが混入している都市ゴミ等の廃可燃性物質から、様々な用途に利用できる廃棄物再生材料を製造できるものである。本発明によれば、焼却・埋立処理されていた廃可燃性物質を、比較的低温・短時間で廃棄物再生材料へリサイクルできるばかりでなく、製造された廃棄物再生材料を用いることで有害金属等を含有する土壌汚染の安定化にも有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 遠赤外線触媒還元装置
1a 鋼鉄
1b 耐熱材
1c 耐熱キャスター
1d 耐熱煉瓦
2 焼却炉
21 加熱槽
22 加熱装置部
23 焼却灰投入口
24 排気口
25 遠赤外還元処理灰出口
26 熱風出口
27 鋼鉄板
3 下部ホッパー
31 処理済み灰取出し口
4 スタンドベルトコンベアー
5 ロータリーバルブ
6 加熱装置
7 開閉扉
P 遠赤外線触媒還元プラント
101 受入れピット
102 コンベア
103 磁選破砕機
104 乾燥機
105 破砕機
106 貯留タンク
107 排ガス処理装置
108 二次乾燥機
109 水冷コンベア
110 製品貯留槽
111 排出口
図1
図2
図3
図4
図5