(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037820
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】無線通信端末、管理装置、管理装置への無線通信端末のアクセス方法、および、管理装置による、無線通信端末からのアクセス処理方法
(51)【国際特許分類】
H04M 3/00 20060101AFI20220302BHJP
H04W 28/08 20090101ALI20220302BHJP
【FI】
H04M3/00 B
H04W28/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142162
(22)【出願日】2020-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000134707
【氏名又は名称】株式会社ナカヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】馬場 佳宏
【テーマコード(参考)】
5K067
5K201
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE16
5K067GG06
5K201CB10
5K201CB16
5K201CC02
5K201CC03
5K201DA02
5K201EA07
5K201EC06
5K201EC08
5K201ED06
5K201FB06
(57)【要約】
【課題】管理装置のオーバロードおよびネットワークの輻輳を防止しつつ、待機時間の事前設定なしで、利用頻度の高い無線通信端末の要求を優先的に処理することができる技術を提供する。
【解決手段】無線IP電話端末1-1~1-3は、アクセスポイント4およびルータ5の停電等によるネットワーク障害から復旧して、自端末1がアクセスポイント4経由でルータ5に接続された場合に、それぞれ、自端末1の通信履歴に基づいて、自端末1の利用頻度に応じた待機時間を算出する。そして、算出された待機時間が経過するのを待ち、それから、自端末1を管理するSIPサーバ2にREGISTERメッセージを送信して、自端末1をSIPサーバ2に登録する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接続された管理装置により管理される無線通信端末であって、
自端末の通信履歴を記憶する通信履歴記憶手段と、
前記ネットワークに接続するネットワーク接続手段と、
前記ネットワーク接続手段により前記ネットワークに接続された場合に、前記通信履歴記憶手段に記憶されている通信履歴に基づいて、自端末の利用頻度に応じた待機時間を算出する待機時間算出手段と、
前記待機時間算出手段により算出された待機時間が経過するのを待って前記管理装置に要求を送信する要求送信手段と、を備える
ことを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信端末であって、
前記待機時間算出手段は、
前記通信履歴記憶手段に記憶されている通信履歴および前記自端末の固有情報に基づいて、前記自端末の利用頻度に応じた待機時間を算出する
ことを特徴とする無線通信端末。
【請求項3】
ネットワークを介して複数の無線通信端末を管理する管理装置であって、
前記無線通信端末から受信した要求を処理して、当該無線通信端末に応答を返信する要求処理手段と、
前記無線通信端末毎に、当該無線通信端末の通信履歴を記憶する通信履歴記憶手段と、
所定時間内に複数の前記無線通信端末から要求を受信した場合に、前記通信履歴記憶手段に記憶されている要求送信元各々の通信履歴に基づいて、当該要求送信元各々の利用頻度に応じた優先度を決定する優先度決定手段と、を備え、
前記要求処理手段は、
前記優先度決定手段により決定された優先度に従って、前記要求送信元各々の要求を処理する
ことを特徴とする管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の管理装置であって、
前記ネットワークの状態を監視するネットワーク監視手段をさらに有し、
前記優先度決定手段は、
前記ネットワーク監視手段により前記ネットワークが障害から復旧したことを検知されてから前記所定時間内に複数の前記無線通信端末から要求を受信した場合に、前記要求送信元各々の利用頻度に応じた優先度を決定する
ことを特徴とする管理装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の管理装置であって、
前記優先度決定手段は、
前記要求送信元各々の通信履歴および固有情報に基づいて、当該要求送信元各々の利用頻度に応じた優先度を決定する
ことを特徴とする管理装置。
【請求項6】
管理装置への無線通信端末のアクセス方法であって、
前記管理装置は、
ネットワークを介して複数の前記無線通信端末を管理し、
前記無線通信端末は、
前記ネットワークに接続された場合に、自端末の通信履歴に基づいて、自端末の利用頻度に応じた待機時間を算出し、
当該算出された待機時間が経過するのを待って前記管理装置に要求を送信する
ことを特徴とする、管理装置への無線通信端末のアクセス方法。
【請求項7】
管理装置による、無線通信端末からのアクセス処理方法であって、
前記管理装置は、
所定時間内に複数の無線通信端末から要求を受信した場合に、要求送信元各々の通信履歴に基づいて、当該要送信元各々の利用頻度に応じた優先度を決定し、
当該決定された優先度に従って、前記要求送信元各々の要求を処理し、前記要求送信元各々に応答を返信する
ことを特徴とする、管理装置による、無線通信端末からのアクセス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介して複数の無線通信端末を管理する管理装置への無線通信端末のアクセス技術、および無線通信端末からの管理装置へのアクセス処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、停電からの復旧等において、複数の情報通信装置がこれらの情報通信装置を管理する管理装置に一斉にアクセスすることによりネットワークに輻輳が発生するのを防止することができる情報送受信システムが開示されている。
【0003】
この情報送受信システムにおいて、管理装置は、基地局毎に、基地局の登録処理能力に基づいて、この基地局が管轄する情報通信装置各々の待機時間を決定し、複数の情報通信装置各々に、情報通信装置毎に決定された待機時間を設定する。また、情報通信装置は、停電からの復旧等により管理装置に再接続する場合、自装置に設定された待機時間が経過するのを待ち、それから、自装置を管轄する基地局を介して管理装置に接続要求を送信する。これにより、停電からの復旧等において、複数の情報通信装置による管理装置へのアクセスタイミングを分散してネットワークの輻輳を防止し、ひいてはアクセス集中による管理装置のオーバロードを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の情報送受信システムは、実際に停電等が起きる前に、複数の情報通信装置各々の待機時間を決定して、これらの情報通信装置各々に、情報通信装置毎に決定された待機時間を設定しておかなければならない。このように、特許文献1に記載の情報送受信システムでは、待機時間の事前設定が必要である。
【0006】
また、特許文献1に記載の情報送受信システムでは、基地局毎に、基地局の登録処理能力に基づいて、この基地局が管轄する情報通信装置各々の待機時間を決定するので、情報通信装置各々の待機時間に、個々の情報通信装置の実際の使用状況が反映されない。このため、例えば、利用頻度が高く、直ちに使用再開したい情報通信装置であっても、登録処理能力の低い基地局の管轄下にあるならば、待機時間が長く設定されてしまい、ユーザは、使用再開までに長く待たされてしまう可能性がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、管理装置のオーバロードおよびネットワークの輻輳を防止しつつ、待機時間の事前設定なしで、利用頻度の高い無線通信端末の要求を優先的に処理することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様において、無線通信端末は、自端末を管理する管理装置に要求を送信する場合、自端末の通信履歴に基づいて、自端末の利用頻度に応じた待機時間を算出し、この待機時間が経過するのを待ち、それから、管理装置に要求を送信する。
【0009】
例えば、本発明の第一の態様は、
ネットワークを介して接続された管理装置により管理される無線通信端末であって、
自端末の通信履歴を記憶する通信履歴記憶手段と、
前記ネットワークに接続するネットワーク接続手段と、
前記ネットワーク接続手段により前記ネットワークに接続された場合に、前記通信履歴記憶手段に記憶されている通信履歴に基づいて、自端末の利用頻度に応じた待機時間を算出する待機時間算出手段と、
前記待機時間算出手段により算出された待機時間が経過するのを待って前記管理装置に要求を送信する要求送信手段と、を備える。
【0010】
また、本発明の第二の態様において、管理装置は、複数の無線通信端末から要求を受信した場合、これら無線通信端末各々の通信履歴に基づいて、これら無線通信端末各々の利用頻度に応じた優先度を決定して、決定した優先度に従って、これら無線通信端末の要求を処理する。
【0011】
例えば、本発明の第二の態様は、
ネットワークを介して複数の無線通信端末を管理する管理装置であって、
前記無線通信端末から受信した要求を処理して、当該無線通信端末に応答を返信する要求処理手段と、
前記無線通信端末毎に、当該無線通信端末の通信履歴を記憶する通信履歴記憶手段と、
所定時間内に複数の前記無線通信端末から要求を受信した場合に、前記通信履歴記憶手段に記憶されている要求送信元各々の通信履歴に基づいて、当該要求送信元各々の利用頻度に応じた優先度を決定する優先度決定手段と、を備え、
前記要求処理手段は、
前記優先度決定手段により決定された優先度に従って、前記要求送信元各々の要求を処理する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第一の態様によれば、無線通信端末は、自端末の利用頻度に応じて決定された待機時間が経過するのを待って管理装置に要求を送信するので、ネットワーク障害からの復旧時に、複数の無線通信端末からの要求が集中してネットワークが輻輳するのを防止できるとともに、要求の集中による管理装置のオーバロードを防止することができる。また、無線通信端末がネットワーク接続時に待機時間を算出するので、待機時間の事前設定が不要である。さらに、無線通信端末の利用頻度に応じて待機時間を算出するので、利用頻度の高い無線通信端末の要求を優先的に処理することができる。
【0013】
また、本発明の第二の態様によれば、管理装置は、複数の無線通信端末から要求を受信した場合に、無線通信端末の利用頻度に応じて優先度を決定し、決定した優先度に従って無線通信端末の要求を処理するので、複数の無線通信端末からの要求の集中による管理装置のオーバロードを防止できるとともに、管理装置から無線通信端末に送信される応答によってネットワークが輻輳するのを防止できる。さらに、無線通信端末の利用頻度に応じて優先度を決定するので、利用頻度の高い無線通信端末の要求を優先的に処理することができる。
【0014】
したがって、本発明によれば、管理装置のオーバロードおよびネットワークの輻輳を防止しつつ、待機時間の事前設定なしで、利用頻度の高い無線通信端末の要求を優先的に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施の形態に係る無線IP電話システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施の形態に係る無線IP電話システムにおける、停電等によるネットワーク障害からの復旧時の動作を説明するためのシーケンス図である。
【
図3】
図3は、無線IP電話端末1の概略機能構成図である。
【
図4】
図4は、無線IP電話端末1による、SIPサーバ2への登録要求処理を説明するためのフロー図である。
【
図5】
図5は、本発明の第二実施の形態に係る無線IP電話システムにおける、停電等によるネットワーク障害からの復旧時の動作を説明するためのシーケンス図である。
【
図6】
図6は、SIPサーバ2Aの概略機能構成図である。
【
図7】
図7は、SIPサーバ2Aによる無線IP電話端末1Aの登録処理を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
[第一実施の形態]
図1は、本実施の形態に係る無線IP電話システムの概略構成図である。
【0018】
図示するように、本実施の形態に係る無線IP電話システムは、アクセスポイント4-1、4-2(以下、単にアクセスポイント4とも呼ぶ)およびルータ5を介してWAN(Wide Area Network)3に接続された複数の無線IP(Internet Protocol)電話端末1-1~1-3(以下、単に無線IP電話端末1とも呼ぶ)と、WAN3に接続され、無線IP電話端末1-1~1-3を管理して、これらにIP電話サービスを提供するSIP(Session Initiation Protocol)サーバ2と、を備えている。なお、ここでは、SIPサーバ2がWAN3に接続されているが、SIPサーバ2はルータ5に接続されていてもよい。
【0019】
図2は、第一実施の形態に係る無線IP電話システムにおける、停電等によるネットワーク障害からの復旧時の動作を説明するためのシーケンス図である。
【0020】
停電等によりアクセスポイント4およびルータ5に障害が発生し(S100)、アクセスポイント4経由での無線IP電話端末1-1~1-3とルータ5との接続が切断されたものとする(S101~S103)。その後、アクセスポイント4およびルータ5が障害から復旧すると(S104)、無線IP電話端末1-1~1-3は、それぞれ、最寄りのアクセスポイント4を介してルータ5に接続する(S105~S107)。
【0021】
つぎに、無線IP電話端末1-1~1-3は、それぞれ、自端末1の通信履歴およびMAC(Media Access Control)アドレスに基づいて、自端末1の利用頻度に応じた、SIPサーバ2へのREGISTERメッセージ送信の待機時間を算出する(S108~S110)。そして、算出された待機時間が経過するのを待つ。
【0022】
つぎに、無線IP電話端末1-1~1-3は、それぞれ、待機時間の経過によりタイムアウトすると(S111、S114、S117)、SIPサーバ2にREGISTERメッセージを送信する(S112、S115、S118)。これを受けて、SIPサーバ2は、無線IP電話端末1-1~1-3を登録して収容するとともに、無線IP電話端末1-1~1-3に200OKメッセージを返信する(S113、S116、S119)。
【0023】
つぎに、本実施の形態に係る無線IP電話システムを構成する無線IP電話端末1の詳細を説明する。なお、SIPサーバ2は、既存のSIPサーバと同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0024】
図3は、無線IP電話端末1の概略機能構成図である。
【0025】
図示するように、無線IP電話端末1は、無線通信部10と、ネットワーク接続部11と、マンマシンインターフェース部12と、IP電話機能部13と、通信履歴記憶部14と、待機時間算出部15と、待機時間記憶部16と、登録要求部17と、を有する。
【0026】
無線通信部10は、最寄りのアクセスポイント4に無線接続するためのインターフェースである。
【0027】
ネットワーク接続部11は、無線通信部10により無線接続されたアクセスポイント4を介してルータ5に接続するためのインターフェースである。
【0028】
マンマシンインターフェース部12は、ユーザに情報を提示したり、ユーザから情報の入力を受け付けたり、ユーザが電話したりするためのインターフェースであり、例えば、操作キー、タッチパッド等の入力装置と、液晶ディスプレイ等の表示装置と、ハンドセット等の音声入出力装置と、を有している。
【0029】
IP電話機能部13は、IP電話端末として機能するために必要な処理を実施する。具体的には、SIPに従い、SIPサーバ2と呼制御メッセージを送受信することにより、SIPサーバ2に自端末1を登録したり、通話相手との通話路を確立・解放したりする。また、RTP(Realtime Transport Protocol)に従い、確立中の通話路を介して通話相手と音声通話を実施する。
【0030】
通信履歴記憶部14は、自端末1の送信履歴および着信応答履歴を含む通信履歴を記憶する。
【0031】
待機時間算出部15は、ネットワーク接続部11によるルータ5との接続時に、通信履歴記憶部14に記憶されている通信履歴および自端末1のMACアドレスに基づいて、自端末1の利用頻度に応じた待機時間を算出する。
【0032】
例えば、自端末1の通信履歴から過去所定時間(例えば1時間)内における自端末1の通信回数(例えば、送信回数および着信応答回数の総数)を特定し、この通信回数の逆数に所定の時間係数を乗算する。それから、この乗算結果を、自端末1のMACアドレスから算出される補正係数で補正して、自端末1の利用頻度に応じた待機時間を算出する。
【0033】
待機時間記憶部16は、待機時間算出部15により算出された待機時間を記憶する。
【0034】
そして、登録要求部17は、待機時間記憶部16に記憶されている待機時間が更新されると、この更新された待機時間が経過するのを待って、SIPサーバ2への登録をIP電話機能部13に要求する。これを受けて、IP電話機能部13は、ネットワーク接続部11および無線通信部10を介してSIPサーバ2にREGISTERメッセージを送信して、SIPサーバ2に自端末1を登録する。
【0035】
なお、
図3に示す無線IP電話端末1の機能構成は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積ロジックICによりハード的に実現されるものでもよいし、あるいはDSP(Digital Signal Processor)等の計算機によりソフトウエア的に実現されるものでもよい。または、CPU、メモリ、フラッシュメモリ等の補助記憶装置、および無線LAN(Local Area Network)アダプタ等の無線インターフェースを備えたスマートフォン、携帯電話機、タブレットPC(Personal Computer)等の携帯情報端末において、CPUが所定のプログラムを補助記憶装置からメモリ上にロードして実行することで実現されるものでもよい。
【0036】
図4は、無線IP電話端末1によるSIPサーバ2への登録要求処理を説明するためのフロー図である。このフローは、アクセスポイント4およびルータ5の停電等によりネットワーク障害が発生して、無線IP電話端末1とルータ5との接続が切断されることにより開始される。
【0037】
まず、待機時間算出部15は、アクセスポイント4およびルータ5が障害から復旧して、ネットワーク接続部11によりルータ5に再接続されるのを待つ(S200)。そして、ルータ5に再接続されたならば(S200でYES)、通信履歴記憶部14に記憶されている通信履歴および自端末1のMACアドレスに基づいて、自端末1の利用頻度に応じた待機時間を算出し、この待機時間を待機時間記憶部16に登録(更新)する(S201)。
【0038】
つぎに、登録要求部17は、待機時間記憶部16に待機時間が登録(更新)されてからの経過時間が、この待機時間を超えたことによりタイムアウトすると(S202でYES)、IP電話機能部13に、SIPサーバ2への自端末1の登録を要求する。これを受けて、IP電話機能部13は、ネットワーク接続部11および無線通信部10を介してSIPサーバ2にREGISTERメッセージを送信して、SIPサーバ2から200OKメッセージを受信することにより、自端末1をSIPサーバ2に登録(再登録)する(S203)。SIPサーバ2は、無線IP電話端末1を登録することにより、この無線IP電話端末1に対するIP電話サービスの提供を開始(再開)する。
【0039】
以上、本発明の第一実施の形態を説明した。
【0040】
本実施の形態によれば、無線IP電話端末1は、アクセスポイント4およびルータ5の停電等によるネットワーク障害からの復旧時に、自端末1の利用頻度に応じて決定された待機時間が経過するのを待ってSIPサーバ2にREGISTERメッセージを送信する。このため、複数の無線IP電話端末1からのアクセスが集中してネットワークが輻輳するのを防止できるとともに、アクセスの集中によるSIPサーバ2のオーバロードを防止することができる。また、無線IP電話端末1がルータ5との接続時に待機時間を算出するので、待機時間の事前設定が不要である。さらに、ネットワーク障害からの復旧時に対応する過去の時間帯における無線IP電話端末1の利用頻度に応じて待機時間を算出するので、ネットワーク障害からの復旧時において利用頻度が高いと推測される無線IP電話端末1を優先的にSIPサーバ2に登録することができる。
【0041】
したがって、本実施の形態によれば、SIPサーバ2のオーバロードおよびネットワークの輻輳を防止しつつ、待機時間の事前設定なしで、利用頻度の高い無線IP電話端末1をSIPサーバ2に優先的に登録することができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、無線IP電話端末1は、自端末1の過去所定時間内における通信回数の逆数に所定の時間係数を乗算し、この乗算結果を、自端末1のMACアドレスから算出される補正係数で補正して、自端末1の利用頻度に応じた待機時間を算出するので、過去所定時間内における通信回数が等しい無線IP電話端末1が複数ある場合でも、個々の無線IP電話端末1が、それぞれに固有のMACアドレスによって、互いに異なる待機時間を算出する。このため、複数の無線IP電話端末1からのアクセスが集中してネットワークが輻輳するのをより効果的に防止することができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、無線IP電話端末1の通信履歴およびそのMACアドレスに基づいて、利用頻度に応じた待機時間を決定している。しかし、本発明はこれに限定されない。無線IP電話端末1の通信履歴およびその固有情報に基づいて、利用頻度に応じた待機時間を決定するものであればよい。例えば、無線IP電話端末1の固有情報として、IPアドレス、電話番号等を用いてもよいし、あるいは、乱数を用いてもよい。
【0044】
また、本実施の形態では、無線IP電話端末1-1~1-3がSIPサーバ2に送信するREGISTERメッセージの送信タイミングを分散させて、利用頻度の高い無線IP電話端末1をSIPサーバ2に優先的に登録する場合を例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明は、複数の無線通信端末が、ネットワークを介してこれらの無線通信端末を管理する管理装置に要求を送信するタイミングを分散させて、利用頻度の高い無線通信端末の要求を管理装置に優先的に処理させる場合に広く適用可能である。
【0045】
[第二実施の形態]
本実施の形態に係る無線IP電話システムが、
図1に示す第一実施の形態に係る無線IP電話システムと異なる点は、無線IP電話端末1-1~1-3に代えて無線IP電話端末1A-1~1A-3(以下、単に無線IP電話端末1Aとも呼ぶ)を用いた点、およびSIPサーバ2に代えてSIPサーバ2Aを用いた点である。その他の構成は、
図1に示す第一実施の形態に係る無線IP電話システムと同様である。
【0046】
図5は、本形態に係る無線IP電話システムにおける、停電等によるネットワーク障害からの復旧時の動作を説明するためのシーケンス図である。
【0047】
停電等によりアクセスポイント4およびルータ5に障害が発生し(S300)、アクセスポイント4経由での無線IP電話端末1A-1~1A-3とルータ5との接続が切断されたものとする(S301~S303)。その後、アクセスポイント4およびルータ5が障害から復旧すると(S304)、無線IP電話端末1A-1~1A-3は、それぞれ、最寄りのアクセスポイント4を介してルータ5に接続し(S305~S307)、SIPサーバ2AにREGISTERメッセージを送信する(S308~S310)。
【0048】
SIPサーバ2Aは、所定時間内(例えば数秒以内)に複数の無線IP電話端末1A-1~1A-3からREGISTERメッセージを受信すると、これらの無線IP電話端末1A-1~1A-3それぞれについて、通信履歴およびそのMACアドレスに基づいて、その利用頻度に応じた、登録処理の優先度を決定する(S311)。
【0049】
それから、SIPサーバ2Aは、REGISTERメッセージの送信元である無線IP電話端末1A-1~1A-3について、決定された優先度に従ってREGISTERメッセージを処理することにより、これらの無線IP電話端末1A-1~1A-3を登録して収容するとともに(S312)、これらの無線IP電話端末1A-1~1A-3に200OKメッセージを送信する(S313~S315)。
【0050】
つぎに、本実施の形態に係る無線IP電話システムを構成するSIPサーバ2Aの詳細を説明する。なお、無線IP電話端末1Aは、スマートフォン、携帯電話機、タブレットPC等の既存の無線IP電話端末と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0051】
【0052】
図示するように、SIPサーバ2Aは、ネットワーク接続部20と、収容端末情報記憶部21と、通信履歴記憶部22と、登録サーバ機能部23と、SIPサーバ機能部24と、優先順位決定部25と、を有する。
【0053】
ネットワーク接続部20は、WAN3に接続するためのインターフェースである。
【0054】
収容端末情報記憶部21は、自サーバ2Aが収容中である無線IP電話端末1Aの電話番号、MACアドレス、IPアドレス等を含む端末情報を記憶する。
【0055】
通信履歴記憶部22は、無線IP電話端末1A毎に、この無線IP電話端末1Aの送信履歴および着信応答履歴を含む通信履歴を記憶する。
【0056】
登録サーバ機能部23は、SIPの登録サーバとして機能するために必要な処理を実施する。例えば、RGISTERメッセージを受信すると、このREGISTERメッセージの送信元である無線IP電話端末1Aの端末情報を収容端末情報記憶部21に登録して、この無線IP電話端末1Aに200OKメッセージを返信する。また、収容端末情報記憶部21に端末情報が登録されている無線IP電話端末1A各々から定期的に送られてくるKEEP ALIVEメッセージに基づいて、これらの無線IP電話端末1Aの生存確認を行う。そして、生存確認に失敗した(KEEP ALIVEメッセージが送られてこない)無線IP電話端末1Aの端末情報を収容端末情報記憶部21から削除する。
【0057】
SIPサーバ機能部24は、SIPサーバ(但し、登録サーバを除く)として機能するために必要な処理を実施する。例えば、SIPに従い、収容端末情報記憶部21に端末情報が記憶されている収容中の無線IP電話端末1Aと呼制御メッセージを送受信することにより、この無線IP電話端末1Aと通話相手との間に通話路を確立・解放する。
【0058】
そして、優先順位決定部25は、所定時間内(例えば数秒以内)に受信したREGISTERメッセージの送信元の無線IP電話端末1A各々について、通信履歴記憶部22に記憶されている通信履歴および収容端末情報記憶部21に記憶されているMACアドレスに基づいて、利用頻度に応じた優先度を決定する。
【0059】
例えば、所定時間内に受信したREGISTERメッセージの送信元である無線IP電話端末1A各々について、過去所定時間(例えば1時間)内における通信回数(送信回数および着信応答回数の総数等)を、MACアドレスから算出される補正係数で補正する。そして、補正された通信回数の大きい順番に優先度を決定する。
【0060】
なお、
図6に示すSIPサーバ2Aの機能構成は、ASIC、FPGAなどの集積ロジックICによりハード的に実現されるものでもよいし、あるいはDSP等の計算機によりソフトウエア的に実現されるものでもよい。または、CPU、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置、およびNIC(Network Interface Card)等の通信インターフェースを備えたPC等において、CPUが所定のプログラムを補助記憶装置からメモリ上にロードして実行することで実現されるものでもよい。
【0061】
図7は、SIPサーバ2Aによる無線IP電話端末1Aの登録処理を説明するためのフロー図である。
【0062】
まず、登録サーバ機能部23は、タイマによる時間計測を開始して(S400)、タイマの計測値が所定値を超えることによりタイムアウトするまでの間(S403でNO)、ネットワーク接続部20を介して無線IP電話端末1AからREGISTERメッセージが送られてくるのを待つ(S401)。そして、無線IP電話端末1AからのREGISTERメッセージを受信したならば(S401でYES)、このREGISTERメッセージを送信元の無線IP電話端末1Aの端末情報に紐付けて処理待ちリストに登録する(S402)。
【0063】
その後、登録サーバ機能部23は、タイマの計測値が所定値を超えることによりタイムアウトすると(S403でYES)、処理待ちリストに登録されているREGISTERメッセージが単数であるならば(S404でNO)、このREGISTERメッセージに紐付けられている端末情報を収容端末情報記憶部21に登録する登録処理を実施する(S405)。それから、タイマをリセットして(S408)、S400に戻る。
【0064】
一方、登録サーバ機能部23は、処理待ちリストに登録されているREGISTERメッセージが複数であるならば(S404でYES)、これらのREGISTERメッセージに紐付けられているすべての端末情報を優先順位決定部25に渡す。そして、優先順位決定部25は、登録サーバ機能部23から受け取った端末情報により特定される無線IP電話端末1A各々について、通信履歴記憶部22に記憶されている通信履歴および収容端末情報記憶部21に記憶されているMACアドレスに基づいて、利用頻度に応じた優先度を決定する(S406)。これを受けて、登録サーバ機能部23は、優先順位決定部25により決定された優先順位に従った順番で、処理待ちリストに登録されているREGISTERメッセージに紐付けられている端末情報を収容端末情報記憶部21に登録する登録処理を実施する(S407)。それから、タイマをリセットして(S408)、S400に戻る。
【0065】
以上、本発明の第二実施の形態を説明した。
【0066】
本発明の第二の態様によれば、SIPサーバ2Aは、所定時間内に複数の無線IP電話端末1AからREGISTERメッセージを受信した場合に、これら無線IP電話端末1Aの利用頻度に応じて優先度を決定し、決定した優先度に従って登録処理を実施するので、複数の無線IP電話端末1AからのREGISTERメッセージの集中によるSIPサーバ2Aのオーバロードを防止できるとともに、REGISTERメッセージに対する200OKメッセージによってネットワークが輻輳するのを防止できる。さらに、無線IP電話端末1Aの利用頻度に応じて優先度を決定するので、利用頻度の高い無線IP電話端末1Aを優先的にSIPサーバ2Aに登録することができる。
【0067】
したがって、本実施の形態によれば、SIPサーバ2Aのオーバロードおよびネットワークの輻輳を防止しつつ、待機時間の事前設定なしで、ネットワーク障害からの復旧時において利用頻度が高いと推測される無線IP電話端末1AをSIPサーバ2Aに優先的に登録することができる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、SIPサーバ2Aは、所定時間内に受信したREGISTERメッセージの送信元である無線IP電話端末1A各々について、過去所定時間内における通信回数を、MACアドレスから算出される補正係数で補正し、補正された通信回数の大きい順番に優先度を決定するので、過去所定時間内における通信回数が等しい無線IP電話端末1Aが複数ある場合でも、個々の無線IP電話端末1Aに固有のMACアドレスによって互いに異なる優先順位が決定されるので、REGISTERメッセージの集中によるSIPサーバ2Aのオーバロードをより効果的に防止することができる。
【0069】
なお、本実施の形態において、無線IP電話端末1AをWAN3に接続するネットワーク機器として、予め登録されているアクセスポイント4およびルータ5にPINGメッセージを送信し、そのACKメッセージを受信することにより疎通確認を行うなどして、アクセスポイント4およびルータ5の、WAN3への接続状態を監視する接続監視部を、SIPサーバ2Aに設けてもよい。そして、例えば、停電等によりアクセスポイント4およびルータ5に障害が発生し、これにより、アクセスポイント4およびルータ5の、WAN3への接続が切断され、その後、アクセスポイント4およびルータ5が障害から復旧し、アクセスポイント4およびルータ5の、WAN3への接続が接続監視部によって確認された場合に、
図7に示す登録処理を実施することとし、それ以外の場合は、REGISTERメッセージを受信順に処理して、REGISTERメッセージの送信元である無線IP電話端末1Aの端末情報を収容端末情報記憶部21に登録してもよい。
【0070】
また、本実施の形態では、無線IP電話端末1Aの通信履歴およびそのMACアドレスに基づいて、利用頻度に応じた優先順位を決定している。しかし、本発明はこれに限定されない。無線IP電話端末1Aの通信履歴およびその固有情報に基づいて、利用頻度に応じた優先順位を決定するものであればよい。例えば、無線IP電話端末1Aの固有情報として、IPアドレス、電話番号等を用いてもよいし、あるいは、乱数を用いてもよい。
【0071】
また、本実施の形態では、SIPサーバ2Aが、無線IP電話端末1A-1~1A-3から受信したREGISTERメッセージの処理を分散させ、利用頻度の高い無線IP電話端末1をSIPサーバ2に優先的に登録する場合を例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明は、ネットワークを介して複数の無線通信端末を管理する管理装置が、これらの無線通信端末から受信した要求の処理を分散させ、利用頻度の高い無線通信端末の要求を優先的に処理する場合に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1、1-1~1-3、1A、1A-1~1A-3:無線IP電話端末
2、2A:SIPサーバ 3:WAN
4、4-1、4-2:アクセスポイント 5:ルータ
10:無線通信部 11:ネットワーク接続部
12:マンマシンインターフェース部 13:IP電話機能部
14:通信履歴記憶部 15:待機時間算出部
16:待機時間記憶部 17:登録要求部
20:ネットワーク接続部 21:収容端末情報記憶部
22:通信履歴記憶部 23:登録サーバ機能部
24:SIPサーバ機能部 25:優先順位決定部