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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037844
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】画像形成装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20220302BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20220302BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20220302BHJP
   G03G 21/18 20060101ALI20220302BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
G03G15/08 343
G03G21/00 510
G03G21/14
G03G21/18 157
G03G21/18 175
G03G21/16 176
G03G21/16 133
G03G21/16 147
G03G15/08 330
G03G15/08 390A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171055
(22)【出願日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】P 2020141423
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】池上 悠介
(72)【発明者】
【氏名】坂口 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】春田 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】王 裕ブン
【テーマコード(参考)】
2H077
2H171
2H270
【Fターム(参考)】
2H077AA02
2H077AB03
2H077AD06
2H077BA03
2H077DA32
2H077DA64
2H077GA13
2H171FA02
2H171FA03
2H171FA04
2H171GA09
2H171GA38
2H171JA23
2H171JA29
2H171JA30
2H171JA34
2H171JA49
2H171JA50
2H171KA05
2H171LA06
2H171LA08
2H171LA18
2H171QA04
2H171QA08
2H171QA16
2H171QB02
2H171QB15
2H171QB17
2H171QB32
2H171QB46
2H171SA11
2H171SA12
2H171SA19
2H171SA20
2H171SA22
2H171SA26
2H171SA31
2H171TA08
2H270KA42
2H270LA53
2H270LA71
2H270LA87
2H270LD01
2H270MB09
2H270MB27
2H270MB38
2H270MC13
2H270MC31
2H270MD10
2H270MD12
2H270MF13
2H270MH03
2H270NB01
2H270NB10
2H270RA02
2H270RA10
2H270RA12
2H270RC13
2H270ZC03
(57)【要約】
【課題】新品のカートリッジが装着された場合に、カートリッジ内のトナーを効率良くほぐすことができるとともに、不必要にトナーを撹拌することを抑制する。
【解決手段】画像形成装置の制御部は、シートに画像を形成する場合、第1速度で第1モータを回転させてアジテータを回転させる。また、制御部は、電源がONにされた場合、または、カバーが開放位置から閉鎖位置に移動された場合に、複数のカートリッジに新品のカートリッジが含まれるか否かを判定する判定処理(S140)を実行し、新品のカートリッジが含まれる場合(S140,Yes)は、アジテータによりトナーを撹拌する初期撹拌処理(S150)を、第1速度よりも遅い第2速度で第1モータを回転させて実行し、新品のカートリッジが含まれない場合(S140,No)は、初期撹拌処理を実行しない。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する筐体と、
感光ドラムと、
前記開口を閉鎖する閉鎖位置と前記開口を開放する開放位置との間で移動可能なカバーと、
現像ローラと、トナーを収容する収容室と、トナーを撹拌するアジテータとを有し、前記開口を通して前記筐体に装着される複数のカートリッジと、
前記アジテータを回転させる第1モータと、
制御部と、を備える画像形成装置であって、
前記制御部は、
シートに画像を形成する場合、第1速度で前記第1モータを回転させて前記アジテータを回転させ、
電源がONにされた場合、または、前記カバーが前記開放位置から前記閉鎖位置に移動された場合に、
前記複数のカートリッジに新品のカートリッジが含まれるか否かを判定する判定処理を実行し、
新品のカートリッジが含まれる場合は、前記アジテータによりトナーを撹拌する初期撹拌処理を、前記第1速度よりも遅い第2速度で前記第1モータを回転させて実行し、
新品のカートリッジが含まれない場合は、前記初期撹拌処理を実行しないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記複数のカートリッジは、それぞれ、新品か否かを示す識別データを記録したメモリを有し、
前記制御部は、前記メモリから前記識別データを読み出すことにより、前記判定処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像ローラを、前記感光ドラムに接触する接触位置と、前記感光ドラムから離間した離間位置との間で移動させることが可能な離間機構をさらに備え、
前記制御部は、
電源がONにされた場合、または、前記カバーが前記開放位置から前記閉鎖位置に移動された場合に、
前記判定処理を実行する前に、前記複数のカートリッジの前記現像ローラを離間位置に位置させる初期離間処理を実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1モータの駆動力を前記離間機構に伝達する駆動伝達機構をさらに備え、
前記現像ローラは、前記第1モータにより駆動され、
前記駆動伝達機構は、前記第1モータが第1方向に回転する場合に、前記アジテータ、前記現像ローラおよび前記離間機構に駆動力を伝達可能であり、前記第1モータが前記第1方向とは反対の第2方向に回転する場合に、前記アジテータおよび前記現像ローラに駆動力を伝達せず、前記離間機構に駆動力を伝達可能に構成され、
前記制御部は、
前記初期離間処理において、前記第1モータを前記第2方向に回転させることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記感光ドラムを回転させる第2モータをさらに備え、
前記制御部は、
前記第2モータを停止させた状態で前記第1モータを回転させ、前記初期撹拌処理を実行することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
シートに形成されたトナー像を定着する回転体を有する定着器と、
前記回転体を回転させる第3モータをさらに備え、
前記制御部は、
前記第3モータを停止させた状態で前記第1モータを回転させ、前記初期撹拌処理を実行することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記感光ドラムに対向して配置されたベルトと、
シートに形成されたトナー像を定着する回転体を有する定着器と、
前記感光ドラムおよび前記ベルトを回転させる第2モータと、
前記回転体を回転させる第3モータとをさらに備え、
前記制御部は、
前記第2モータおよび前記第3モータを停止させた状態で前記第1モータを回転させ、前記初期撹拌処理を実行することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2モータおよび前記第3モータを停止させた状態で前記第1モータを回転させ、前記初期離間処理を実行することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
開口を有する筐体と、
感光ドラムと、
前記開口を閉鎖する閉鎖位置と前記開口を開放する開放位置との間で移動可能なカバーと、
現像ローラと、トナーを収容する収容室と、トナーを撹拌するアジテータとを有し、前記開口を通して前記筐体に装着される複数のカートリッジと、を備える画像形成装置の制御方法であって、
シートに画像を形成する場合、第3速度で前記アジテータを回転させ、
電源がONにされた場合、または、前記カバーが前記開放位置から前記閉鎖位置に移動された場合に、
前記複数のカートリッジに新品のカートリッジが含まれるか否かを判定する判定処理を実行し、
新品のカートリッジが含まれる場合は、前記アジテータを回転させてトナーを撹拌する初期撹拌処理を、前記第3速度よりも遅い第4速度で実行し、
新品のカートリッジが含まれない場合は、前記初期撹拌処理を実行しないことを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項10】
前記感光ドラムに対向して配置されたベルトと、
シートに形成されたトナー像を定着する回転体を有する定着器と、をさらに備え、
シートに画像を形成する場合、前記感光ドラム、前記ベルトおよび前記アジテータを回転させ、
前記初期撹拌処理を実行する場合、前記感光ドラムおよび前記ベルトを回転させずに前記アジテータを回転させることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項11】
開口を有する筐体と、
感光ドラムと、
前記開口を閉鎖する閉鎖位置と前記開口を開放する開放位置との間で移動可能なカバーと、
現像ローラと、トナーを収容する収容室と、トナーを撹拌するアジテータとを有し、前記開口を通して前記筐体に装着される複数のカートリッジと、
前記アジテータを回転させる第1モータと、
前記現像ローラを、前記感光ドラムに接触する接触位置と、前記感光ドラムから離間した離間位置との間で移動させることが可能な離間機構と、
制御部と、を備える画像形成装置であって、
前記制御部は、
電源がONにされた場合、または、前記カバーが前記開放位置から前記閉鎖位置に移動された場合に、
前記第1モータを回転させて前記複数のカートリッジの前記現像ローラを前記離間位置に位置させる初期離間処理を実行し、
前記初期離間処理を実行した後に、前記複数のカートリッジに新品のカートリッジが含まれるか否かを判定する判定処理を実行し、
新品のカートリッジが含まれる場合は、前記アジテータによりトナーを撹拌する初期撹拌処理を、前記第1モータを回転させて実行し、
新品のカートリッジが含まれない場合は、前記初期撹拌処理を実行しないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
前記複数のカートリッジは、それぞれ、新品か否かを示す識別データを記録したメモリを有し、
前記制御部は、前記メモリから前記識別データを読み出すことにより、前記判定処理を実行することを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記第1モータの駆動力を前記離間機構に伝達する駆動伝達機構をさらに備え、
前記現像ローラは、前記第1モータにより駆動され、
前記駆動伝達機構は、前記第1モータが第1方向に回転する場合に、前記アジテータ、前記現像ローラおよび前記離間機構に駆動力を伝達可能であり、前記第1モータが前記第1方向とは反対の第2方向に回転する場合に、前記アジテータおよび前記現像ローラに駆動力を伝達せず、前記離間機構に駆動力を伝達可能に構成され、
前記制御部は、
前記初期離間処理において、前記第1モータを前記第2方向に回転させることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記感光ドラムを回転させる第2モータをさらに備え、
前記制御部は、
前記第2モータを停止させた状態で前記第1モータを回転させ、前記初期撹拌処理を実行することを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
シートに形成されたトナー像を定着する回転体を有する定着器と、
前記回転体を回転させる第3モータをさらに備え、
前記制御部は、
前記第3モータを停止させた状態で前記第1モータを回転させ、前記初期撹拌処理を実行することを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記感光ドラムに対向して配置されたベルトと、
シートに形成されたトナー像を定着する回転体を有する定着器と、
前記感光ドラムおよび前記ベルトを回転させる第2モータと、
前記回転体を回転させる第3モータとをさらに備え、
前記制御部は、
前記第2モータおよび前記第3モータを停止させた状態で前記第1モータを回転させ、前記初期撹拌処理を実行することを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、電源投入時や、カバー開閉時に、モータを所定時間回転させて、初期化動作が行われる。そして、新品のカートリッジが装着された場合には、モータを低速で回転させて初期化動作をする画像形成装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-186369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トナーは、長期保存されたり、輸送中に振動を受けることで、流動性が低下し、固まることがある。固まったトナーをほぐす場合には、トナーを撹拌するための負荷が大きいという問題がある。
一方で、新品ではないカートリッジは、トナーが固まっていないことが多く、撹拌すると、トナーが不必要に劣化するし、電力も無駄である。
そこで、本発明は、新品のカートリッジが装着された場合に、カートリッジ内のトナーを効率良くほぐすことができるとともに、不必要にトナーを撹拌することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した課題を解決するための画像形成装置は、開口を有する筐体と、感光ドラムと、開口を閉鎖する閉鎖位置と開口を開放する開放位置との間で移動可能なカバーと、現像ローラと、トナーを収容する収容室と、トナーを撹拌するアジテータとを有し、開口を通して筐体に装着される複数のカートリッジと、アジテータを回転させる第1モータと、制御部と、を備える。
制御部は、シートに画像を形成する場合、第1速度で第1モータを回転させてアジテータを回転させ、電源がONにされた場合、または、カバーが開放位置から閉鎖位置に移動された場合に、複数のカートリッジに新品のカートリッジが含まれるか否かを判定する判定処理を実行し、新品のカートリッジが含まれる場合は、アジテータによりトナーを撹拌する初期撹拌処理を、第1速度よりも遅い第2速度で第1モータを回転させて実行し、新品のカートリッジが含まれない場合は、初期撹拌処理を実行しない。
【0006】
このような構成によれば、新品のカートリッジが装着された場合には、画像形成時よりも遅い第2速度で第1モータを回転させて初期撹拌処理を実行するので、第1モータのトルクを大きくすることができ、トナーが固まっていたとしても、トナーをほぐしやすい。
また、新品でないカートリッジだけが装着された場合には、初期撹拌処理を実行しないので、不必要にトナーを撹拌することが抑制される。これにより、トナーの劣化を抑制し、無駄な電力消費も抑制することができる。
【0007】
複数のカートリッジは、それぞれ、新品か否かを示す識別データを記録したメモリを有していてもよい。この場合、制御部は、メモリから識別データを読み出すことにより、判定処理を実行することができる。
【0008】
このように、メモリから識別データを読み出して判定処理をすることで、判定処理において、第1モータを作動させる必要がない。
【0009】
前記画像形成装置は、現像ローラを、感光ドラムに接触する接触位置と、感光ドラムから離間した離間位置との間で移動させることが可能な離間機構をさらに備えていてもよい。この場合、制御部は、電源がONにされた場合、または、カバーが開放位置から閉鎖位置に移動された場合に、判定処理を実行する前に、第1モータを第1速度で回転させて複数のカートリッジの現像ローラを離間位置に位置させる初期離間処理を実行することが望ましい。
【0010】
このような構成によれば、現像ローラが離間位置にある状態で初期撹拌処理を実行することができるので、初期撹拌処理における第1モータの負荷を小さくすることができる。
また、カートリッジがメモリを有する場合には、現像ローラが離間位置にある状態で判定処理を実行するので、ユーザが正しくカートリッジを装着できていない場合でも、メモリから識別データを正しく読み取りやすい。
【0011】
前記した画像形成装置は、第1モータの駆動力を離間機構に伝達する駆動伝達機構をさらに備えることができる。現像ローラは、第1モータにより駆動され、駆動伝達機構は、第1モータが第1方向に回転する場合に、アジテータ、現像ローラおよび離間機構に駆動力を伝達可能であり、第1モータが第1方向とは反対の第2方向に回転する場合に、アジテータおよび現像ローラに駆動力を伝達せず、離間機構に駆動力を伝達可能に構成されていてもよい。そして、制御部は、初期離間処理において、第1モータを第2方向に回転させてもよい。
【0012】
このような構成によれば、初期離間処理において、アジテータおよび現像ローラが回転しないので、初期離間処理における第1モータの負荷を小さくし、また、トナーおよび現像ローラの劣化を抑制することができる。
【0013】
前記した画像形成装置は、感光ドラムを回転させる第2モータをさらに備えることができる。そして、制御部は、第2モータを停止させた状態で第1モータを回転させ、初期撹拌処理を実行してもよい。
【0014】
前記した画像形成装置は、シートに形成されたトナー像を定着する回転体を有する定着器と、回転体を回転させる第3モータをさらに備えることができる。そして、制御部は、第3モータを停止させた状態で第1モータを回転させ、初期撹拌処理を実行することができる。
【0015】
前記した画像形成装置は、感光ドラムに対向して配置されたベルトと、シートに形成されたトナー像を定着する回転体を有する定着器と、感光ドラムおよびベルトを回転させる第2モータと、回転体を回転させる第3モータとをさらに備えることができる。そして、制御部は、第2モータおよび第3モータを停止させた状態で第1モータを回転させ、初期撹拌処理を実行することができる。
【0016】
また、この場合に、制御部は、第2モータおよび第3モータを停止させた状態で第1モータを回転させ、初期離間処理を実行してもよい。
【0017】
前記した課題を解決する本発明の画像形成装置の制御方法は、開口を有する筐体と、感光ドラムと、開口を閉鎖する閉鎖位置と開口を開放する開放位置との間で移動可能なカバーと、現像ローラと、トナーを収容する収容室と、トナーを撹拌するアジテータとを有し、開口を通して筐体に装着される複数のカートリッジと、を備える画像形成装置の制御方法である。この制御方法は、シートに画像を形成する場合、第3速度でアジテータを回転させ、電源がONにされた場合、または、カバーが開放位置から閉鎖位置に移動された場合に、複数のカートリッジに新品のカートリッジが含まれるか否かを判定する判定処理を実行し、新品のカートリッジが含まれる場合は、アジテータを回転させてトナーを撹拌する初期撹拌処理を、第3速度よりも遅い第4速度で実行し、新品のカートリッジが含まれない場合は、初期撹拌処理を実行しない。
【0018】
このような制御方法によれば、新品のカートリッジが装着された場合には、電源がONにされた場合、または、カバーが開放位置から閉鎖位置に移動された場合に、画像形成時よりも遅い第4速度でアジテータを回転させて初期撹拌処理を実行するので、トナーが固まっていたとしても、トナーをほぐしやすい。また、新品でないカートリッジだけが装着された場合には、初期撹拌処理を実行しないので、不必要にトナーを撹拌することが抑制される。これにより、トナーの劣化を抑制し、無駄な電力消費も抑制することができる。
【0019】
前記した制御方法において、画像形成装置は、感光ドラムに対向して配置されたベルトと、シートに形成されたトナー像を定着する回転体を有する定着器と、をさらに備え、シートに画像を形成する場合、感光ドラム、ベルトおよびアジテータを回転させ、初期撹拌処理を実行する場合、感光ドラムおよびベルトを回転させずにアジテータを回転させることができる。
【0020】
前記した課題を解決する本発明の画像形成装置は、開口を有する筐体と、感光ドラムと、開口を閉鎖する閉鎖位置と開口を開放する開放位置との間で移動可能なカバーと、現像ローラと、トナーを収容する収容室と、トナーを撹拌するアジテータとを有し、開口を通して筐体に装着される複数のカートリッジと、アジテータを回転させる第1モータと、現像ローラを、感光ドラムに接触する接触位置と、感光ドラムから離間した離間位置との間で移動させることが可能な離間機構と、制御部と、を備える。
制御部は、電源がONにされた場合、または、カバーが開放位置から閉鎖位置に移動された場合に、第1モータを回転させて複数のカートリッジの現像ローラを離間位置に位置させる初期離間処理を実行し、初期離間処理を実行した後に、複数のカートリッジに新品のカートリッジが含まれるか否かを判定する判定処理を実行し、新品のカートリッジが含まれる場合は、アジテータによりトナーを撹拌する初期撹拌処理を、第1モータを回転させて実行し、新品のカートリッジが含まれない場合は、初期撹拌処理を実行しない。
【0021】
このような構成によれば、新品のカートリッジが装着された場合には、初期離間処理を実行した後に判定処理を実行し、新品のカートリッジが含まれる場合に、初期撹拌処理を実行する。このため、初期撹拌処理において、現像ローラが離間位置に位置するので、第1モータの負荷を小さくすることができ、トナーが固まっていたとしても、トナーをほぐしやすい。また、新品でないカートリッジだけが装着された場合には、初期撹拌処理を実行しないので、不必要にトナーを撹拌することが抑制される。これにより、トナーの劣化を抑制し、無駄な電力消費も抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、新品のカートリッジが装着された場合には、第1モータのトルクを大きくし、または、第1モータの負荷を小さくすることで、トナーが固まっていたとしても、トナーをほぐしやすい。また、新品でないカートリッジだけ装着された場合には、初期撹拌処理を実行しないので、不必要にトナーを撹拌することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
図2】ドロワ、カムおよびカムフォロワの斜視図である。
図3】現像カートリッジの斜視図(a)と、側面図(b)である。
図4】スライド部材を説明する、現像カートリッジの周辺を上から見た模式図であり、カムフォロワが待機位置に位置するとき(a)と突出位置に位置するとき(b)を示す。
図5】各モータで各部材を動かす機構のつながりを説明する図である。
図6】イエロー、マゼンタおよびシアンのカムを第1面側から見た斜視図(a)と、第2面側から見た斜視図(b)である。
図7】クラッチをサンギヤ側から見た分解斜視図(a)と、キャリア側から見た分解斜視図(b)である。
図8】レバーの分解斜視図(a)と、第1レバーが回転規制部により回転が規制されている状態を示す図(b)と、第1レバーが第2レバーに対して揺動した状態を示す図(c)である。
図9】カムが正回転して現像ローラが接触位置にあるときのカム、カムフォロワおよびリリース部材を示す斜視図(a)と、側面図(b)である。
図10】カムが正回転して現像ローラが離間位置にあるときのカム、カムフォロワおよびリリース部材を示す斜視図(a)と、側面図(b)である。
図11】カム、カムフォロワおよびリリース部材を示す側面図であり、カムが逆回転して現像ローラが離間位置に位置し、第1レバーが揺動位置にある状態を示す図(a)と、(a)の状態からカムが正回転して停止した状態を示す図(b)である。
図12】電源ON時またはカバーを閉じたときの制御部の処理を示すフローチャートである。
図13】メモリ読取処理のフローチャートである。
図14】電源ON時の各部の動作を説明するタイミングチャートであり、新品の現像カートリッジが装着された場合を示す。
図15】電源ON時の各部の動作を説明するタイミングチャートであり、新品でない現像カートリッジだけが装着された場合を示す。
図16】電源ON時の各部の動作を説明するタイミングチャートであり、新品の現像カートリッジが装着された場合の変形例を示す。
図17】電源ON時の各部の動作を説明するタイミングチャートであり、新品でない現像カートリッジだけが装着された場合の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すように、実施形態に係る画像形成装置1は、カラープリンタであり、筐体10と、カバー11と、シート供給部20と、画像形成部30と、制御部2とを主に備えている。なお、本明細書において、便宜上、前後等の方向は、シートトレイ21が引き出される図1の左を前として説明する。すなわち、図1の左側を前、右側を後、上下をそのまま上下とし、図1の紙面手前側を右、紙面奥側を左とする。
【0025】
筐体10は、前側に、開口10Aを有する。カバー11は、実線で示した開口10Aを閉鎖する閉鎖位置と、仮想線で示した開口10Aを開放する開放位置との間で移動可能である。筐体10には、図示しないカバー11の開閉状態を検出するカバーセンサが設けられており、制御部2は、カバーセンサの信号に基づいて、カバー11の開閉状態を判定することが可能である。
【0026】
シート供給部20は、筐体10内の下部に設けられ、シートSを収容するシートトレイ21と、シートトレイ21からシートSを画像形成部30に供給する供給機構22とを備えている。シートトレイ21は筐体10から図1の左側に引き出して取り外し可能に構成されている。供給機構22は、筐体10内の前部に設けられ、給紙ローラ23と、分離ローラ24と、分離パッド25と、レジストレーションローラ27とを備えている。本明細書のシートSは、画像形成装置1が画像を形成することができる媒体であって、普通紙、封筒、葉書、薄紙、厚紙、光沢紙、樹脂シート、シール等を含む。
【0027】
シート供給部20では、シートトレイ21内のシートSが給紙ローラ23により送り出された後、分離ローラ24と分離パッド25との間でシートSが1枚ずつに分離される。
その後、シートSは、回転が停止した状態のレジストレーションローラ27によって先端位置が規制された後、レジストレーションローラ27が回転することで画像形成部30に供給される。
【0028】
画像形成部30は、露光装置40と、複数の感光ドラム50を有するドロワ90(図2参照)と、複数のカートリッジの一例としての複数の現像カートリッジ60と、搬送装置70と、定着器80とを備えている。
【0029】
露光装置40は、図示しないレーザダイオード、偏向器、レンズおよびミラーを有している。露光装置40は、複数の感光ドラム50を露光する複数のレーザ光を発して、感光ドラム50の表面を走査するように構成されている。
【0030】
感光ドラム50は、イエローに対応した感光ドラム50Yと、マゼンタに対応した感光ドラム50Mと、シアンに対応した感光ドラム50Cと、ブラックに対応した感光ドラム50Kとを含む。なお、本明細書および図面において、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色に対応して設けられている部材には、色を区別して示す場合に、それぞれ、Y,M,C,Kを付して示す。
【0031】
現像カートリッジ60は、各感光ドラム50にトナーを供給する現像ローラ61を有している。具体的には、各現像カートリッジ60Y,60M,60C,60Kは、Y,M,C,Kの各色の感光ドラム50Y,50M,50C,50Kに対応して、現像ローラ61Y,61M,61C,61Kを有している。
【0032】
複数の現像カートリッジ60は、それぞれ、トナーを収容する収容室を有するケース63と、収容室に収容されたトナーを撹拌するアジテータ67とを有する。各現像カートリッジ60の現像ローラ61とアジテータ67とは、図示しないギヤによって連結されており、現像ローラ61が回転する場合には、アジテータ67も同時に回転するようになっている。
また、各現像カートリッジ60は、前側の一側壁に、メモリ68を有する。メモリ68は、現像カートリッジ60が新品か否かを示す識別データが記録されている。
【0033】
現像ローラ61Y、現像ローラ61M、現像ローラ61Cおよび現像ローラ61Kは、シートSの移動方向の上流側から下流側に向かってこの順に配置されている。
【0034】
各現像カートリッジ60は、図1に実線で示した、現像ローラ61が対応する感光ドラム50に接触する接触位置と、図1に仮想線で示した、現像ローラ61が対応する感光ドラム50から離間する離間位置との間で移動可能である。
【0035】
図2に示すように、感光ドラム50は、ドロワ90に回転可能に支持されている。また、ドロワ90は、各現像カートリッジ60を着脱可能に支持する。ドロワ90は、筐体10のカバー11(図1参照)を開くことで形成される開口10Aを通って、筐体10に対して着脱可能である。ドロワ90は、感光ドラム50の軸方向に離れて配置された、一対のサイドフレーム91と、一対のサイドフレーム91の前部同士を連結する連結フレーム92と、一対のサイドフレーム91の後部同士を連結する連結フレーム93とを備える。
一対のサイドフレーム91は、右側のサイドフレーム91Rと、左側のサイドフレーム91Lとを含む。ドロワ90には、各感光ドラム50に対向して配置された、感光ドラム50を帯電させるための帯電器52(図1参照)が設けられている。
【0036】
詳細な構造の図示は省略するが、一対のサイドフレーム91は、感光ドラム50の端部を支持する。また、一方のサイドフレーム91、ここでは、左側のサイドフレーム91Lは、第2開口91Aを有する。第2開口91Aは、サイドフレーム91Lの上縁に、下方に凹む切欠として形成されている。これにより、第2開口91Aは、サイドフレーム91Lを左右に貫通しており、後述するカムフォロワ170が入ることが可能になっている。
また、図示は省略するが、ドロワ90は、各現像カートリッジ60のメモリ68の接点と接触する第1中継接点を有するとともに、本体の制御部2と電気的に接続された第2中継接点を有する。第1中継接点と第2中継接点は、配線により接続されている。これにより、各メモリ68は、第1中継接点と第2中継接点を介して制御部2と通信可能となっている。
【0037】
画像形成装置1は、各現像ローラ61を、複数の感光ドラム50のうち対応する感光ドラム50に接触する接触位置と、当該感光ドラム50から離間した離間位置との間で移動させる離間機構を有する。離間機構は、Y,M,C,Kのそれぞれに対応して設けられている。
【0038】
具体的に、各離間機構は、現像ローラ61の回転軸線61X(図1参照)と平行な軸周りに回転するカム150(150Y,150M,150C,150K)と、支持軸179と、カムフォロワ170と、を有する。
カム150は、現像ローラ61の回転軸線方向(以下、単に「回転軸線方向」という。
)に突出する第1カム部152を有する。
【0039】
支持軸179は、左右に長く延びるシャフトである。支持軸179は、筐体10の図示しないサイドフレームに設けられている。
【0040】
カムフォロワ170は、支持軸179と係合し、支持軸179の軸方向に沿ってスライド移動可能であるとともに、支持軸179の軸周りに回動可能である。カムフォロワ170は、第1カム部152と接触可能な接触部172を有する。
具体的に、カムフォロワ170は、カム150が回転するにつれて第1カム部152に案内されて、図4(b)に示す、現像ローラ61を離間位置に位置させる突出位置と、図4(a)に示す、現像ローラ61を接触位置に位置させる待機位置との間でスライド移動可能である。
【0041】
カムフォロワ170は、突出位置にある場合は、第2開口91Aに入って現像カートリッジ60を押圧し現像ローラ61を離間位置に位置させ、待機位置にある場合は、第2開口91Aから抜けて現像ローラ61を接触位置に位置させる。
【0042】
図2に戻り、カム150と、カムフォロワ170とは、各現像カートリッジ60に対応して設けられている。カム150およびカムフォロワ170は、左側のサイドフレーム91Lの左右方向外側に配置されている。カム150およびカムフォロワ170の詳細な構造については後述する。
【0043】
ドロワ90は、サイドフレーム91R,91Lの上部に、後述するスライド部材64に当接する被当接部94が設けられている。被当接部94は、例えば、感光ドラム50の軸方向と平行な第1方向と、感光ドラム50が並ぶ第2方向との両方に直交する第3方向(上下方向)に沿った軸回りに回転可能なローラからなる。
【0044】
また、ドロワ90は、各現像カートリッジ60に対応して設けられた、押圧部材95を備えている。押圧部材95は、各現像カートリッジ60ごとに、感光ドラム50の軸方向の両端部に設けられている。押圧部材95は、バネ95A(図4(a),(b)参照)により後方へ向けて付勢されており、ドロワ90に現像カートリッジ60が装着されると、現像カートリッジ60の突起63Dを押圧して、現像ローラ61を対応する感光ドラム50に接触させるようになっている。
【0045】
図3(a),(b)に示すように、現像カートリッジ60は、前記したケース63と、スライド部材64と、カップリング65を有する。
カップリング65は、後述するカップリング軸119と係合して、カップリング軸119から回転駆動力が入力される。
【0046】
スライド部材64は、ケース63に対して回転軸線方向にスライド移動可能な部材である。スライド部材64は、カムフォロワ170に押圧されることで回転軸線方向にスライド移動可能である。
【0047】
図4(a),(b)に示すように、スライド部材64は、シャフト191と、第1当接部材192と、第2当接部材193とを備える。第1当接部材192は、シャフト191の一端に固定され、第2当接部材193は、シャフト191の他端に固定されている。
【0048】
シャフト191は、ケース63に形成された、回転軸線方向に延びる孔に貫通して配置され、ケース63にスライド移動可能に支持されている。
【0049】
第1当接部材192は、回転軸線方向における端面である押圧面192Aと、回転軸線方向に対して傾斜した斜面192Bとを有する。
押圧面192Aは、カムフォロワ170により押圧される面である。
斜面192Bは、スライド部材64がカムフォロワ170により回転軸線方向に押圧された場合に、ドロワ90の被当接部94に当接して、現像カートリッジ60をシートSの移動方向に平行な方向へ向けて付勢し、現像カートリッジ60を移動させる(図4(b)参照)。斜面192Bは、シャフト191の一端から他端に向かうにつれて、第2方向における感光ドラム50から対応する現像ローラ61に向かう方向(前方)に位置するように傾斜している。
【0050】
第2当接部材193は、第1当接部材192の斜面192Bと同様に傾斜した斜面193Bを有している。斜面193Bもスライド部材64がカムフォロワ170により回転軸線方向に押圧された場合に、ドロワ90の被当接部94に当接して、現像カートリッジ60をシートSの移動方向に平行な方向へ向けて付勢し、現像カートリッジ60を移動させる(図4(b)参照)。
【0051】
第1当接部材192とケース63の間には、スライド部材64を回転軸線方向の一方、ここでは、左側に向けて付勢するバネ194が配置されている。バネ194は、圧縮コイルバネであり、コイル内にシャフト191が通るようにシャフト191の外側に配置されている。
【0052】
図1に戻り、搬送装置70は、シートトレイ21と感光ドラム50との間に設けられている。搬送装置70は、駆動ローラ71と、従動ローラ72と、無端状のベルトからなる、ベルトの一例としての搬送ベルト73と、4つの転写ローラ74とを備えている。搬送ベルト73は、駆動ローラ71と従動ローラ72との間に張設され、外側の面が各感光ドラム50に対向して配置されている。各転写ローラ74は、各感光ドラム50との間で搬送ベルト73を挟持するように搬送ベルト73の内側に配置されている。搬送装置70は、上側の外周面にシートSを載せた状態で搬送ベルト73を移動させることでシートSを搬送し、このときに、複数の感光ドラム50のトナー像をシートSに転写する。
【0053】
また、搬送ベルト73の下側には、搬送ベルト73の表面をクリーニングするベルトクリーナー75が設けられている。ベルトクリーナー75は、ケース75Aと、クリーニングローラ75Bとを有する。クリーニングローラ75Bは、搬送ベルト73の表面に接触しており、搬送ベルト73の表面からトナーなどの異物を除去する。クリーニングローラ75Bで除去された異物は、ケース75A内に蓄積される。
【0054】
定着器80は、感光ドラム50および搬送装置70の後方に設けられている。定着器80は、回転体の一例としての加熱ローラ81と、加熱ローラ81に対向して配置された加圧ローラ82とを有している。加熱ローラ81は、内部に加熱ローラ81を加熱するためのヒータ81A(本実施形態ではハロゲンランプ)が設けられている。加熱ローラ81は、ヒータ81Aの出力を制御することで温度を制御することができる。また、図5に示すように、定着器80は、ニップ圧調整機構85とを備えている。ニップ圧調整機構85は、アーム86と、ニップ圧調整カム87とを有している。図5に示すように、加圧ローラ82は、揺動可能なアーム86に支持されている。ニップ圧調整カム87は、回転することで、アーム86を揺動させ、加熱ローラ81と加圧ローラ82の軸間距離を変更させる。これにより、加熱ローラ81と加圧ローラ82のニップ圧を調整することが可能となっている。
【0055】
図1に戻り、定着器80の上方には搬送ローラ15が設けられ、搬送ローラ15の上方には排出ローラ16が設けられている。
【0056】
このように構成される画像形成部30では、まず、各感光ドラム50の表面が、帯電器52により一様に帯電された後、露光装置40から照射される光により露光される。これにより、各感光ドラム50上に画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0057】
また、ケース63内のトナーは現像ローラ61の表面に担持され、現像ローラ61が感光ドラム50に対向して接触するときに、感光ドラム50上に形成された静電潜像に供給される。これにより、感光ドラム50上でトナー像が形成される。
【0058】
次に、搬送ベルト73上に供給されたシートSが各感光ドラム50と各転写ローラ74との間を通過することで、各感光ドラム50上に形成されたトナー像がシートS上に転写される。そして、シートSが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、シートS上に転写されたトナー像がシートSに熱定着される。
【0059】
定着器80から排出されたシートSは、搬送ローラ15および排出ローラ16によって筐体10の上面の排紙トレイ13に蓄積される。
【0060】
ここで、図5を参照して、各モータによって、現像ローラ61、アジテータ67、カム150を含む離間機構、感光ドラム50、定着器80を動かす機構の概略について説明する。
画像形成装置1は、第1モータ3Dと、第2モータ3Pと、第3モータ3Fと、駆動伝達機構100と、を備えている。
第1モータ3Dは、現像ローラ61、アジテータ67、離間機構の一部であるカム150、定着器80のニップ圧調整機構85を駆動する。第1モータ3Dは、第1方向と、第1方向とは逆の第2方向へ回転が可能であり、制御部2により回転方向および回転速度が制御される。第1方向は、画像形成をする場合の回転方向であり、本明細書では、第1モータ3Dが第1方向に回転する場合を「正回転」ともいう。第2方向は、電源がONにされた場合、または、カバー11が開放位置から閉鎖位置に移動された場合に、現像ローラ61を離間位置に移動させる場合の例外的な回転方向であり、本明細書では、第1モータ3Dが第2方向に回転する場合を「逆回転」ともいう。
第2モータ3Pは、複数の感光ドラム50、搬送装置70の搬送ベルト73を回転させ、また供給機構22に駆動力を伝達するモータである。
第3モータ3Fは、定着器80の加熱ローラ81を回転させるモータである。
【0061】
駆動伝達機構100は、第1モータ3Dの駆動力をカム150Y,150M,150Cに伝達可能な第1ギヤ列100Aと、第1モータ3Dの駆動力をKカム150Kに伝達可能な第2ギヤ列100Kと、第1モータ3Dの駆動力を現像ローラ61に伝達可能な第3ギヤ列100Dとを有している。カム150Y、カム150Mおよびカム150Cは、ギヤを介して機械的に接続されており、第1モータ3Dの駆動力が伝達されることで同時に回転駆動するように設けられている。
【0062】
第1ギヤ列100Aは、YMCクラッチ140Aを有している。YMCクラッチ140Aは、電磁クラッチであり、第1モータ3Dの駆動力をカム150Y,150M,150Cに伝達する伝達状態と、カム150Y,150M,150Cに伝達しない切断状態とを切り替える。また、第2ギヤ列100Kは、Kクラッチ140Kを有している。Kクラッチ140Kは、電磁クラッチであり、第1モータ3Dの駆動力をKカム150Kに伝達する伝達状態と、Kカム150Kに伝達しない切断状態とを切り替える。なお、図5においては、カム150を模式的に示している。また、以下では、クラッチ140A,140Kを伝達状態とする場合をONと呼び、切断状態とする場合をOFFと呼ぶことがある。
【0063】
第3ギヤ列100Dは、複数の現像ローラ61のそれぞれに1つずつ対応して設けられた複数のメカニカルクラッチ120を有している。メカニカルクラッチ120は、詳細を後述するように、接触位置にある現像ローラ61に第1モータ3Dからの駆動力を伝達し、離間位置にある現像ローラ61に第1モータ3Dからの駆動力を伝達しないように構成されている。
【0064】
また、画像形成装置1は、第1モータ3Dの駆動力をニップ圧調整カム87に伝達可能な第4ギヤ列200を有している。第4ギア列200は、ニップ圧調整クラッチ220を有している。ニップ圧調整クラッチ220は電磁クラッチであり、第1モータ3Dの駆動力をニップ圧調整カム87に伝達する伝達状態と、ニップ圧調整カム87に伝達しない切断状態とを切り替える。なお、図5においては、ニップ圧調整クラッチ220を模式的に示している。
【0065】
図6(a),(b)に示すように、カム150は、円板部151と、ギヤ部150Gと、第1カム部152と、第2カム部153と、位相検出壁154とを有する。カム150は、回転することにより、対応する現像ローラ61を接触位置と離間位置との間で移動させる部材である。
【0066】
円板部151は、略円板形状を有し、筐体10に回転可能に支持されている。
ギヤ部150Gは、円板部151の外周に形成されている。
第1カム部152は、現像ローラ61を動かすための端面カムであり、円板部151の一方の面である第1面151Aから回転軸線方向に突出している。第1カム部152は、カム150の回転軸線を中心とする円周方向に延びる形状を有している。第1カム部152は、回転軸線方向における端面にカム面152Fを有する。
カム面152Fは、第1保持面F1と、第2保持面F2と、第1案内面F3と、第2案内面F4とを有する。
第1保持面F1は、カムフォロワ170を待機位置に保持する。
第2保持面F2は、カムフォロワ170を突出位置に保持する。
第1案内面F3は、第1保持面F1と第2保持面F2を繋ぐ、第1保持面F1に対して傾斜した面である。
第2案内面F4は、第2保持面F2と第1保持面F1を繋ぐ、第1保持面F1に対して傾斜した面である。
なお、図9から図11において、第1カム部152に付したドットハッチは、第2保持面F2を表す。
【0067】
第2カム部153は、レバー160と協働してメカニカルクラッチ120を操作してメカニカルクラッチ120の伝達・切断を切り換える部分である。第2カム部153は、円板部151の他方の面である第2面151Bから回転軸線方向に突出する板カムである。
第2カム部153は、円板部151の側面のうち、第1カム部152が配置された側面とは反対側の側面から突出している。第2カム部153は、回転軸線方向から見て円弧状に延びている。第2カム部153は、円板部151と一体に形成されている。このため、第2カム部153は、第1カム部152とともに回転する。
【0068】
位相検出壁154は、離間センサ4(図9(b)参照)の発光素子が発する光を遮る、カム150の回転軸線を中心とする円周方向に延びる壁である。位相検出壁154は、第1カム部152よりも回転中心に近い位置において、円板部151の第1面151Aから軸方向に突出している。つまり、位相検出壁154は、円板部151の側面のうち、第1カム部152が配置された側面と同じ側面から突出している。位相検出壁154は、第1カム部152の内周面152Sよりも内側に配置されている。位相検出壁154は、カム150の回転方向の位相を示すための、第1スリット154Aと第2スリット154Bとを有する。第1スリット154Aは、現像ローラ61が離間位置にあるときに離間センサ4の発光素子が発する光を通過させる。第2スリット154Bは、現像ローラ61が接触位置にあるときに離間センサ4の発光素子が発する光を透過させる。第2スリット154Bは、第1スリット154Aと円周方向の大きさが異なる。具体的には、第2スリット154Bの円周方向の大きさは、第1スリット154Aの円周方向の大きさよりも大きい。
【0069】
筐体10には、ブラックとシアンに対応して、離間センサ4が設けられている。
離間センサ4は、カム150C,150Kの位相を検知可能な位相センサである。離間センサ4は、発光素子と受光素子を有するフォトインタラプタからなる。離間センサ4は、発光素子と受光素子の間に第1スリット154Aまたは第2スリット154Bが位置して、発光素子が発した光を受光素子が受光したときにON信号を制御部2に出力し、発光素子と受光素子の間に位相検出壁154が入って発光素子が発した光を遮り、受光素子が光を受光しないときにOFF信号を制御部2に出力する。
【0070】
前記した第1スリット154Aおよび第2スリット154Bは、それぞれ、現像ローラ61が離間位置にある場合および接触位置にある場合に離間センサ4の発光素子が発する光が通過する。このため、離間センサ4は、各現像ローラ61が離間位置にあり、発光素子が発する光が第1スリット154Aを通って受光素子で受光した場合に、ON信号を制御部2に出力する。また、離間センサ4は、各現像ローラ61が接触位置にあり、発光素子が発する光が第2スリット154Bを通って受光素子で受光した場合に、ON信号を制御部2に出力する。
【0071】
本実施形態においては、便宜上、離間センサ4の受光素子が光を受光する場合をONと呼び、受光しない場合をOFFと呼ぶ。ON信号を出力する場合とOFF信号を出力する場合は、どちらの電圧が高くても構わない。
【0072】
次に、メカニカルクラッチ120の構成とその機能について説明する。
図7(a),(b)に示すように、メカニカルクラッチ120は、遊星歯車機構を有してなる。メカニカルクラッチ120は、第1モータ3Dからの駆動力を現像ローラ61に伝達する伝達状態と、第1モータ3Dからの駆動力を現像ローラ61に伝達しない切断状態とで切替可能に構成されている。具体的に、メカニカルクラッチ120は、一つの軸を中心に回転可能な要素であるサンギヤ121、リングギヤ122およびキャリア123と、キャリア123に支持されるプラネタリギヤ124とを備えて構成されている。
【0073】
サンギヤ121は、ギヤ部121Aと一体に回転する円板部121Bと、円板部121Bの外周に設けられた複数の爪部121Cとを有する。爪部121Cは、尖った先端を有し、この尖った先端が周方向において、一方の回転方向に傾いている。
リングギヤ122は、内周面に設けられたインナーギヤ122Aと、外周面に設けられた入力ギヤ122Bとを有する。
【0074】
キャリア123は、プラネタリギヤ124を回転可能に支持する4つの軸部123Aを有する。また、キャリア123は、外周面に出力ギヤ123Bが設けられている。
【0075】
プラネタリギヤ124は、4つ設けられ、それぞれ、キャリア123の軸部123Aに回転可能に支持されている。プラネタリギヤ124は、サンギヤ121のギヤ部121Aに噛み合っているとともにリングギヤ122のインナーギヤ122Aに噛み合っている。
【0076】
メカニカルクラッチ120は、入力ギヤ122Bが第1モータ3Dからの駆動力を受けて回転する、図示しないアイドルギヤと噛み合い、出力ギヤ123Bが、図9(a),(b)に示すカップリングギヤ117と噛み合っている。カップリングギヤ117には、カップリング軸119が同軸に連結され、カップリングギヤ117が回転すると、カップリング軸119が一体に回転するようになっている。
【0077】
図7に戻り、メカニカルクラッチ120の作用を説明すると、サンギヤ121が回転しないように止められた状態では、入力ギヤ122Bに入力された駆動力を出力ギヤ123Bに伝達できる伝達状態となる。
一方、サンギヤ121が回転できる状態では、入力ギヤ122Bに入力された駆動力を出力ギヤ123Bに伝達できない切断状態となる。
メカニカルクラッチ120が切断状態かつ出力ギヤ123Bに負荷が掛かっている状態で入力ギヤ122Bに駆動力が入力された場合は、出力ギヤ123Bは回転せず、サンギヤ121が空転する。
【0078】
図9(a)に示すように、駆動伝達機構100は、第2カム部153に案内されて揺動するレバー160をさらに備える。レバー160は、筐体10に固定された支持軸102Aに揺動可能に支持されている。なお、レバー160は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応して設けられている。
レバー160は、カム150と協働することにより、遊星歯車機構の要素であるサンギヤ121、リングギヤ122およびキャリア123のうちの1つの要素であるサンギヤ121に係合してサンギヤ121が回転しないように規制し、メカニカルクラッチ120を伝達状態とし、サンギヤ121から離脱してメカニカルクラッチ120を切断状態とする機能を有する。レバー160は、カム150が正回転する場合には、メカニカルクラッチ120を伝達状態と切断状態とに切り替え、カム150が逆回転する場合には、メカニカルクラッチ120を切断状態に維持する。
【0079】
具体的に、図8(a)に示すように、レバー160は、第1レバー161と、第2レバー162と、第2バネ163とを有する。
第1レバー161は、支持軸102Aの中心軸である揺動軸X2の周りで揺動可能であり、第2カム部153に接触可能である。第1レバー161は、支持軸102Aに嵌合する孔161Bを有する回転支持部161Aと、回転支持部161Aから延びる第1アーム161Cと、回転支持部161Aから第1アーム161Cとは反対側に突出した突起161Dとを有する。
【0080】
第2レバー162は、揺動軸X2の周りで揺動可能である。第2レバー162は、メカニカルクラッチ120の1つの要素であるサンギヤ121に係合可能である。第2レバー162は、第1レバー161と組み合わされ、図8(b)、(c)に示すように、第1レバー161に対しても、揺動軸X2周りで相対的に揺動可能である。逆に言えば、第1レバー161は、第2レバー162に対して揺動軸X2周りで揺動可能なように第2レバー162に組み合わされている。図8(c)のように、第1レバー161が第2バネ163の付勢力に抗して第2レバー162に対して揺動した位置を「揺動位置」とする。
【0081】
第2レバー162は、支持軸102Aに嵌合する孔162Bを有する回転支持部162Aと、回転支持部162Aから延びる第2アーム162Cと、回転規制部162Dと、バネ掛け部162Eとを有する。回転規制部162Dは、第2アーム162Cから揺動軸X2が延びる方向に突出している。回転規制部162Dは、図8(b)に示すように、突起161Dが接触することによって、第2レバー162の第1レバー161に対する一方向の回転を規制する。
【0082】
第2バネ163は、トーションバネであり、第1レバー161を、第2レバー162に対して、突起161Dが回転規制部162Dに当接する方向に向けて付勢している。別の言い方をすれば、第2バネ163は、第2レバー162に設けられた回転規制部162Dが第1レバー161の突起161Dに接触することにより第1レバー161が第2レバー162に対して回転しないように付勢する。
【0083】
レバー160は、第1レバー161と第2レバー162が組み合わされた状態において、第2アーム162Cの先端が、サンギヤ121の円板部121Bの外周面に向けて延びている。そして、図9(b)に示すように、バネ掛け部162Eには、第3バネ169の一端が引っ掛けられている。第3バネ169は、引っ張りバネであり、第3バネ169の他端は、筐体10の図示しないバネ掛け部に引っ掛けられている。これにより、第3バネ169は、第2レバー162を図9(b)における時計回りに付勢している。すなわち、第3バネ169は、第2レバー162の第2アーム162Cを遊星歯車機構の1つの要素であるサンギヤ121(円板部121B)の外周面に向けて揺動させる方向に付勢する。
第2アーム162Cは、サンギヤ121の外周面の爪部121Cに係合することでサンギヤ121の回転を規制することが可能である。
【0084】
レバー160は、第1アーム161Cの先端部が、第2カム部153の外周面と接触可能である。レバー160は、図9(a),(b)に示すような、第1レバー161の先端部が第2カム部153から離間し、第2レバー162がメカニカルクラッチ120の爪部121Cに係合してメカニカルクラッチ120を伝達状態とする伝達位置と、図10(a),(b)に示すような、第1レバー161の先端部が第2カム部153と接触して押し動かされることで、第2レバー162の先端部が遊星歯車機構の1つの要素であるサンギヤ121の爪部121Cから離脱してメカニカルクラッチ120を切断状態とする非伝達位置とに移動可能である。
【0085】
レバー160が図9(a),(b)のような伝達位置にあり、YMCクラッチ140AやKクラッチ140KがONとなっている状態では、第1モータ3Dが第1方向に回転する場合、駆動伝達機構100は、アジテータ67、現像ローラ61および離間機構に駆動力を伝達可能である。このとき、カム150は図9(b)の時計回りに回転する。
【0086】
レバー160が図9(a),(b)のような伝達位置にあり、YMCクラッチ140AやKクラッチ140KがOFFとなっている状態では、第1モータ3Dが第1方向に回転する場合、駆動伝達機構100は、アジテータ67および現像ローラ61に駆動力を伝達可能であり、離間機構に駆動力を伝達しない。
【0087】
レバー160が図10(a),(b)のような非伝達位置にあり、YMCクラッチ140AやKクラッチ140KがONとなっている状態では、第1モータ3Dが第1方向に回転する場合、駆動伝達機構100は、アジテータ67および現像ローラ61に駆動力を伝達せず、離間機構に駆動力を伝達可能である。このとき、カム150は図10(b)の時計回りに回転し、サンギヤ121は、反時計回りに回転する。そして、カム150が回転するにつれて、レバー160は図10(a),(b)の非伝達位置から図11(b)の伝達位置へ移動する。
【0088】
レバー160が図10(a),(b)のような非伝達位置にあり、YMCクラッチ140AやKクラッチ140KがOFFとなっている状態では、第1モータ3Dが第1方向に回転する場合、駆動伝達機構100は、アジテータ67、現像ローラ61および離間機構に駆動力を伝達しない。このとき、カム150は図10(b)とは異なり停止し、サンギヤ121は図10(b)の反時計回りに回転する。そして、YMCクラッチ140AやKクラッチ140KがONになるまで、この状態のままとなる。
【0089】
また、レバー160は、第2レバー162が遊星歯車機構の1つの要素であるサンギヤ121の爪部121Cに接触している状態で、第1モータ3Dが第2方向に回転し、第1レバー161が第2カム部153に押されると、図11(a)に示すように、第1レバー161が第2バネ163の付勢力に抗して第2レバー162に対して相対的に揺動し、揺動位置に位置する。このように、第1レバー161が第2レバー162に対して相対的に揺動できることにより、第1モータ3Dを第2方向に回転させたときにレバー160に無理な力が掛からないようになっている。
【0090】
また、第1モータ3Dが第2方向に回転し、第2レバー162の先端が爪部121Cに接触している状態では、サンギヤ121が図の時計回りに回転する。このとき、爪部121Cの傾斜している面が第2レバー162の先端に当たるので、サンギヤ121の回転により爪部121Cが第2レバー162を径方向に押し退ける。このため、サンギヤ121は、第2レバー162をはじきながら時計回りに回転する。このようにして、第2レバー162は、サンギヤ121の回転を止めないので、メカニカルクラッチ120は切断状態となる。つまり、第1モータ3Dが第2方向に回転する場合には、メカニカルクラッチ120が切断状態となることで、現像ローラ61およびアジテータ67は回転しない。
【0091】
すなわち、YMCクラッチ140AやKクラッチ140KがONとなっている状態では、第1モータ3Dが第2方向に回転する場合に、駆動伝達機構100は、アジテータ67および現像ローラ61に駆動力を伝達せず、離間機構に駆動力を伝達可能である。
なお、YMCクラッチ140AやKクラッチ140KがOFFとなっている状態では、第1モータ3Dが第2方向に回転する場合に、駆動伝達機構100は、アジテータ67、現像ローラ61および離間機構に駆動力を伝達しない。
【0092】
次に、制御部2による制御方法について説明する。
制御部2は、画像形成装置1の全体の動作を制御する装置である。制御部2は、CPU、ROM、RAM、入出力部等を有し、予め記憶されたプログラムを実行することで各処理を実行する。
【0093】
本実施形態において、制御部2は、離間センサ4からの信号に基づいて、YMCクラッチ140AおよびKクラッチ140Kを制御し、現像ローラ61の感光ドラム50に対する接触・離間を制御する。
【0094】
制御部2は、シートSに画像を形成する場合、第1速度で第1モータ3Dを回転させてアジテータ67を第3速度で回転させ、画像形成処理を実行する。また、制御部2は、画像形成処理において、感光ドラム50、搬送ベルト73、加熱ローラ81および加圧ローラ82を回転させる。
【0095】
また、制御部2は、電源がONにされた場合、または、カバー11が開放位置から閉鎖位置に移動された場合に、第1モータ3Dを第1速度で回転させて複数の現像カートリッジ60の現像ローラ61を離間位置に位置させる初期離間処理を実行し、その後、複数の現像カートリッジ60に新品の現像カートリッジ60が含まれるか否かを判定する判定処理を実行する。すなわち、制御部2は、判定処理の前に初期離間処理を実行する。
【0096】
制御部2は、初期離間処理において、第1モータ3Dを第2方向に回転させる。また、制御部2は、初期離間処理を実行する場合に、第2モータ3Pおよび第3モータ3Fを停止させた状態で第1モータ3Dを回転させる。
【0097】
また、制御部2は、判定処理を、メモリ68から、そのメモリ68が付いている現像カートリッジ60が新品であるか否かを示す識別データを読み出すことで実行する。
【0098】
制御部2は、判定処理の結果、新品の現像カートリッジ60が含まれる場合は、アジテータ67によりトナーを撹拌する初期撹拌処理を、第1速度よりも遅い第2速度で第1モータ3Dを回転させて実行する。制御部2は、初期撹拌処理を、第1モータ3Dを第1方向に回転させて実行する。制御部2は、初期撹拌処理において、感光ドラム50および搬送ベルト73を回転させずに、アジテータ67を第3速度よりも遅い第4速度で回転させる。なお、第1速度は、第1モータ3Dの最大の速度であり、「全速」ともいう。第2速度は、第1速度の半分の速度であり、「半速」ともいう。第2モータ3Pおよび第3モータ3Fも、最大の速度で回転する場合に、「全速」という。
【0099】
制御部2は、初期撹拌処理を実行する場合、第2モータ3Pおよび第3モータ3Fを停止させた状態で第1モータ3Dを回転させる。
【0100】
一方、制御部2は、新品の現像カートリッジ60が含まれない場合は、初期撹拌処理を実行しない。制御部2は、新品の現像カートリッジ60が含まれない場合は、初期撹拌処理を実行せずに、次の処理、例えば、搬送ベルト73のクリーニング処理や、定着器80の初期化等を実行する。
【0101】
以上のような制御部2を実現する、制御部2の具体的な処理の一例について、図12および図13を参照して説明する。なお、図においては、現像カートリッジ60を省略して「カートリッジ」と記載する。
【0102】
図12に示すように,制御部2は、電源がONとなったか、またはカバー11が閉じられたと判定した場合(S110,Yes)、ステップS120以下の初期動作を実行する。初期動作を実行する場合、制御部2は、第1モータ3Dを、第2方向に、第1速度で回転させ、初期離間処理を実行する(S120)。これにより、各現像ローラ61は、離間位置に位置する。
【0103】
そして、制御部2は、初期離間処理の後、メモリ読取処理(S200)を実行する。
図13に示すように、メモリ読取処理(S200)において、制御部2は、まず、カートリッジIDを示す変数Nを1とし、新品の現像カートリッジ60の数を示す変数Fを0として初期化する(S210)。
【0104】
そして、制御部2は、N番目の現像カートリッジ60のメモリ68から識別データを読み取り(S220)、読み取った識別データが新品を示すか否かを判定する(S230)。制御部2は、識別データが新品を示していたと判定した場合(S230,Yes)、変数Fをインクリメントし(S240)、N番目の現像カートリッジ60のメモリ68の識別データを、旧品を示すデータに書き換える(S250)。
【0105】
制御部2は、ステップS250の後、または、ステップS230において、識別データが新品を示していないと判定した場合(No)、変数Nをインクリメントする(S260)。
制御部2は、変数Nが4より大きいか否か(全カートリッジのメモリ読取が終了したか)判定し(S270)、大きくないと判定した場合(No)、ステップS220に戻って処理を繰り返す。一方、制御部2は、変数Nが4より大きいと判定した場合(Yes)、メモリ読取処理(S200)を終了する。
【0106】
図12に戻り、メモリ読取処理(S200)の後、制御部2は、変数Fが0より大きいか(未使用カートリッジがあるか)判定し(S140)、変数Fが0より大きいと判定した場合(Yes)、第1モータ3Dを第1方向に、第2速度で回転させて、初期撹拌処理を実行する(S150)。その後、制御部2は、第1モータ3D、第2モータ3Pおよび第3モータ3Fを全速(それぞれのモータの最大速度)で回転させ、搬送ベルト73のクリーニングと、定着器80の初期化を実行する(S160)。そして、制御部2は、所定の濃度および色のパッチパターンを搬送ベルト73上に現像し、図示しないセンサでこのパッチパターンを読み取って、現像バイアスの補正、ガンマの補正、色ずれの補正を実行し(S170)、初期動作を終了する。
【0107】
制御部2は、ステップS140において、変数Fが0より大きくないと判定した場合(No)、初期撹拌処理(S150)を実行せずに、第1モータ3D、第2モータ3Pおよび第3モータ3Fを全速(それぞれのモータの最大速度)で回転させ、搬送ベルト73のクリーニングと、定着器80の初期化を実行し(S180)、初期動作を終了する。
【0108】
以上のような処理による、画像形成装置1の初期動作の一例について、図14図15を参照して説明する。ここでは、Y,M,Cの現像カートリッジ60(YMCクラッチ140A)に関する動作について説明するが、Kの現像カートリッジ60についても同様である。
【0109】
図14は、装着された複数の現像カートリッジ60に新品の現像カートリッジ60が含まれる場合の初期動作である。
カバー11が閉鎖位置に位置した後、または、電源がONにされた後、制御部2は、第1モータ3Dを第1速度で逆回転させ、同時に定着器80のヒータ81AをONにして予熱を開始し(t2)、YMCクラッチ140AをONにする(t3)。これにより、カム150は逆回転する。カム150の逆回転において、第2スリット154Bが離間センサ4により検出されて、長いON信号が出力される(時刻t6~t7)。さらにカム150が逆回転すると、図11(a)に示すように、接触部172は、第2保持面F2に位置し、スライド軸部171が突出位置に位置することで、現像ローラ61は離間位置に位置する(t8)。そして、第1スリット154Aが離間センサ4を通り過ぎることで、離間センサ4の信号が、ONになり(t9)、その後OFFになる(t10)。そして、レバー160の第1レバー161は、第2カム部153に当たる。このとき、第2レバー162は、サンギヤ121に当たったままであるので動くことができず、その代わりに、第1レバー161が第2バネ163の付勢力に抗して揺動し、揺動位置となる。さらに、制御部2は、離間センサ4がOFF(t10)になってから所定時間T1が経過したときに、YMCクラッチ140AをOFFにし(t11)、第1モータ3Dを停止させる(t12)。
【0110】
その後、制御部2は、第1モータ3Dを第1速度で正回転させ(t13)、YMCクラッチ140AをONにする(t14)ことで、カム150を少し正回転させる。そして、制御部2は、カム150が所定角度、正回転した後、第1スリット154Aが離間センサ4に到達して離間センサ4がONとなってから所定時間T2が経過したときに、YMCクラッチ140AをOFFにする(t15)。そして、制御部2は、第1モータ3Dを停止する(t16)。このとき、図11(b)に示すように、接触部172は、第2保持面F2に位置し、スライド軸部171が突出位置に位置することで、現像ローラ61は離間位置に位置する。また、レバー160は、第2レバー162がサンギヤ121の爪部121Cに係合し、第1レバー161の先端部が第2カム部153から右側へ離れた状態となっている。これにより、初期離間処理が終了する。初期離間処理においては、第1モータ3Dを逆回転させた後、カム150の位相の調整のために、第1モータ3Dを少し正回転させるが、ここでの正回転の量はごく僅かであることと、第2レバー162がサンギヤ121の爪部121Cに係合するまでにはサンギヤ121がある程度回転する必要があるので、ここでの第1モータ3Dの正回転によっては、アジテータ67は、全く回転しないか、ほんの僅かしか回転しない。
【0111】
初期離間処理の後、制御部2は、定着器80のヒータ81AをOFFにして予熱を中断し(t20)、YMCクラッチ140AをOFFにしたまま、第1モータ3Dを第2速度で正回転させ(t20~t21)て初期撹拌処理を実行する。初期撹拌処理において、第2モータ3Pおよび第3モータ3Fは停止させたままである。これにより、アジテータ67は、画像形成する場合の第3速度よりも遅い第4速度で回転し、収容室内のトナーを撹拌する。第1モータ3Dは、第2速度で回転するので、大きなトルクによってアジテータ67を回転させることができる。このため、新品の現像カートリッジ60内のトナーが固まっていたとしても、アジテータ67でほぐして撹拌することができる。
【0112】
所定時間(例えば30秒間)、初期撹拌処理を実行した後、制御部2は、定着器80のヒータ81AをONにして予熱を再開し(t21)、第1速度で第1モータ3Dを正回転させ(t30~t31)、その後、第1速度で第1モータ3Dを逆回転させて(t34~t35)、定着器80のニップ圧調整機構85を作動させ、加圧ローラ82を加熱ローラ81から離す動作と元に戻すように近づける動作を実行する。
制御部2は、時刻t30において、第1モータ3Dを正回転させ始めるのにあわせて、第2モータ3Pと第3モータ3Fを全速で回転させる(t30~t33)。これにより、搬送ベルト73のクリーニングが行われ、また、定着器80のヒータ81AがONの状態で加熱ローラ81および加圧ローラ82が回転する。定着器80のヒータ81AがONの状態で加熱ローラ81および加圧ローラ82を回転させることで、加熱ローラ81および加圧ローラ82の表面の温度が一様に整えられる。また、加熱ローラ81および加圧ローラ82が互いに接触していたことにより加圧ローラ82に生じていた凹みやしわなどのクセ(ニップ痕)を取ることができる。
この後、図示は省略するが、パッチパターンを使った補正の処理をして初期動作を終了する。
【0113】
一方、装着された複数の現像カートリッジ60に新品の現像カートリッジ60が含まれない場合、図15に示すように、時刻t2~t16の初期離間処理の後、初期撹拌処理(図14のt20~t21)を実行することなく、定着器80の初期化と搬送ベルト73のクリーニングを実行する(t30~t35)。これにより、トナーを不必要に撹拌させることなく、速やかに初期動作を完了させることができる。
【0114】
以上に説明したように、本実施形態の画像形成装置1によれば、新品の現像カートリッジ60が装着された場合には、画像形成時よりも遅い第2速度で第1モータ3Dを回転させ、アジテータ67を画像形成時よりも遅い第4速度で回転させて初期撹拌処理を実行するので、第1モータ3Dのトルクを大きくすることができ、トナーが固まっていたとしても、トナーをほぐしやすい。また、新品でない現像カートリッジ60だけが装着された場合には、初期撹拌処理を実行しないので、不必要にトナーを撹拌することが抑制される。
これにより、トナーの劣化を抑制し、無駄な電力消費も抑制することができる。
【0115】
そして、制御部2は、メモリ68から識別データを読み出して判定処理をするので、判定処理において、第1モータ3Dを作動させる必要がなく、不必要にトナーを撹拌することが抑制される。
【0116】
また、制御部2は、現像ローラ61が離間位置にある状態で初期撹拌処理を実行するので、初期撹拌処理における第1モータ3Dの負荷を小さくすることができる。また、現像ローラ61が離間位置にある状態で判定処理を実行するので、ユーザが正しく現像カートリッジ60を装着できていない場合でも、現像カートリッジ60を離間位置に動かす動作によって現像カートリッジ60を正しくしてメモリ68の接点とドロワ90の接点との接続を確実にし、メモリ68から識別データを正しく読み取りやすい。
【0117】
また、制御部2は、初期離間処理において、アジテータ67および現像ローラ61を回転させないので、初期離間処理における第1モータ3Dの負荷を小さくし、また、トナーおよび現像ローラ61の劣化を抑制することができる。
【0118】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することが可能である。
【0119】
例えば、前記実施形態においては、初期離間処理において、第1モータ3Dを第2方向に回転させたが、駆動伝達機構の構造等によっては、第1方向に回転させても構わない。
また、初期離間処理を行わずに、初期撹拌処理を実行してもよい。
【0120】
また、前記実施形態においては、初期撹拌処理が完了した後に定着器80の初期化を行っていたが、定着器80のニップ圧調整機構85を第1モータ3Dとは別のモータで駆動する場合には、初期撹拌処理と同時に定着器80の初期化を行っても構わない。
搬送ベルト73のクリーニングも、初期撹拌処理と同時に行ってもよい。
【0121】
また、前記実施形態においては、図14図15にしめすように、初期離間処理において、第1モータ3Dを第1速度で逆回転(t2-t12)させた後、第1速度で正回転(t13-t16)させたが、図16図17にしめすように、第1モータ3Dを第1速度で逆回転(t2-t12)させた後、第2速度で正回転(t13-t16)させてもよい。
【0122】
また、前記実施形態においては、図14図15にしめすように、初期撹拌処理を実行した後、定着器80のニップ圧調整機構85を作動させ、加圧ローラ82を加熱ローラ81から離す動作と元に戻すように近づける動作を実行させる場合に、第1モータ3Dを第1速度で正回転させ(t30~t31)、その後、第1モータ3Dを第1速度で逆回転させた(t34~t35)が、図16図17にしめすように、第1モータ3Dを第2速度で正回転させ(t30~t31)、その後、第1モータ3Dを第2速度で逆回転させて(t34~t35)、定着器80のニップ圧調整機構85を作動させてもよい。
【0123】
また、前記実施形態においては、ベルトの一例として搬送ベルト73を示したが、ベルトは、中間転写ベルトであってもよい。
【0124】
前記実施形態においては、カートリッジの一例として現像カートリッジ60を示したが、カートリッジは、感光ドラムを有するプロセスカートリッジであってもよい。
【0125】
前記実施形態においては、回転体の一例として加熱ローラ81を示したが、回転体は、無端ベルトであってもよい。
【0126】
また、前記実施形態においては、4色のトナーを用いてカラー画像を印刷する画像形成装置1を例示したが、画像形成装置は、3色や5色のトナーを用いてカラー画像を印刷する装置であってもよい。
【0127】
また、画像形成装置は、複合機やコピー機であってもよい。
【0128】
さらに、前記した実施形態および変形例で説明した各要素は、適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0129】
1 画像形成装置
2 制御部
3D 第1モータ
3P 第2モータ
3F 第3モータ
10 筐体
10A 開口
11 カバー
50 感光ドラム
60 現像カートリッジ
61 現像ローラ
67 アジテータ
68 メモリ
73 搬送ベルト
100 駆動伝達機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17