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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037857
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】マスク用補助スペーサー
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220302BHJP
   A62B 18/08 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007435
(22)【出願日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2020142148
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】512250382
【氏名又は名称】株式会社スターリングプロダクト
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】吉井 章人
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】衛生用のマスクの機能を大きく損なうことなく、着用者自らの呼気がマスクシートと顔面の間に滞留することを抑制することができると共にアロマなどの薬液による効果をもたらすマスク用補助スペーサーの提供を図る。
【解決手段】マスク用補助スペーサーは、マスクシートsの端縁uと使用者の顔面との間に配置される介在部を備え、介在部と使用者の顔面との間に通気用空間を形成する。介在部は、顔面対向部51と、延設部53,54とを備える。延設部の最端部65が、マスクシートの端縁uの外へ突出して通気用空間eを維持する。保液パッド71を取り付けたパッドケース72を装着することもできる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性と通気性を有するマスクシートを備えた衛生用のマスクと使用者の顔面との間に配置されるマスク用補助スペーサーにおいて、
マスクシートの端と使用者の顔面との間に配置される介在部を備え、前記介在部は、前記使用者の前記顔面と前記マスクシートとの間に前記マスクシートの外側へ開口する通気用空間を形成するように構成され、
前記介在部の少なくとも一部が、前記マスクシートの端縁を超えて前記マスクシートの外側へ突出する部分を備え、前記突出する部分によって前記通気用空間はマスクシートの外側まで伸びていることを特徴とするマスク用補助スペーサー。
【請求項2】
前記介在部は、前記顔面に接触する顔面接触部と、前記顔面接触部から前方に伸びて前記シートとの間に空間を保つ剛性を有するスペーサー部と、保液パッドを備え、
前記スペーサー部の少なくとも一部分が前記マスクシートに接触して、前記マスクシートと前記顔面との間に前記通気用空間を形成するように構成され、
前記保液パッドは、液体を保持すると共に前記通気用空間中に放散するものであることを特徴とする請求項1に記載のマスク用補助スペーサー。
【請求項3】
前記マスク用補助スペーサーを前記マスクシートに対して着脱可能に固定するよう構成された固定部を備え、
前記固定部は、基端部分から先端部分に向けて前記マスク内へ伸びる押さえ部分を備え、
前記マスクシートの端縁を超えて前記マスクシートの外側に前記基端部分が配置され、
前記基端部分が前記マスクシートの端縁に当接し、前記先端部分が前記スペーサー部に対して接近離反することにより、前記押さえ部分が前記マスクシートを表側から裏側へ弾性によって押し付けて、前記マスクシートを着脱可能に挟持するように構成され、
前記保液パッドは前記パッドケースに取り付けられ、前記パッドケースが前記介在部に着脱可能に取り付けられたことを特徴とする請求項2に記載のマスク用補助スペーサー。
【請求項4】
柔軟性と通気性を有するマスクシートを備えた衛生用のマスクと使用者の顔面との間に配置され、
前記マスクシートの端と使用者の顔面との間に配置される介在部を備え、前記介在部は、前記使用者の前記顔面と前記マスクシートとの間に通気用空間を形成するように構成されたマスク用補助スペーサーにおいて、
前記介在部は、前記顔面に接触する板状の顔面接触部と、前記顔面接触部から前方に伸びて前記シートとの間に空間を保つ剛性を有するスペーサー部と、保液パッドとを備え、
前記スペーサー部の少なくとも一部分が前記マスクシートに接触して、前記マスクシートと前記顔面との間に空間を形成するように構成され、
前記スペーサー部は、左右方向に間隔を置いて配置された板状の一対の立ち上がり部を備え、
前記立ち上がり部は、前記顔面接触部から前方に伸びるものであり、
前記一対の立ち上がり部の前端側に固定部が配置され、
前記固定部は、基端部分から先端部分に向けて前記マスクシート上へ伸びる押さえ部分を備え、
前記基端部分が前記一対の立ち上がり部に対して接続され、先端部分が前記スペーサー部に対して接近離反することにより、前記押さえ部分が前記マスクシートを表側から裏側へ弾性によって押し付けて、前記マスクシートを着脱可能に挟持するように構成され、
前記スペーサー部の少なくとも一部が、前記マスクシートの端縁を超えて前記マスクシートの外側へ突出する部分を備え、前記突出する部分によって前記呼吸用空間はマスクシートの外側まで伸びており、
前記保液パッドは、液体を保持すると共に前記呼吸用空間中に放散するものであることを特徴とするマスク用補助スペーサー。
【請求項5】
前記固定部の前記基端部分が前記一対の立ち上がり部に対して接続されている箇所は、前記一対の立ち上がり部の最端部よりも前記マスク内に近い位置であり、
前記保液パッドは前記パッドケースに取り付けられ、前記パッドケースが前記介在部に着脱可能に取り付けられたことを特徴とする請求項4に記載のマスク用補助スペーサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟で通気性のあるマスクシートを用いた衛生用等のマスクの装着時に用いるマスク用補助スペーサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルスの流行は2020年の夏においても終息せず、飛沫感染を主として防止する観点からの新型コロナウイルス流行対策として、夏の高温多湿下においても衛生用のマスクの着用を多くの人々が行っている。
この新型コロナウイルスの日本国内の死者数は、2020年7月末において1000人を超えている。
他方、高温時に増加する熱中症は、これによる年間の死亡者数については、2010年から2018年までの間、500人を下回った年がない。特に、2010年と2018年の両年にあっては、上記新型コロナウイルスによる死亡者数の約1.5倍である1500人を超える方々が、熱中症によって亡くなっている。
このような死亡者数の比較からしても明らかなように、新型コロナウイルスへの対策と熱中症への対策は、甲乙つけがたい重要性があると言える。
【0003】
ところが、衛生用のマスクは、その本来の機能から気密性が高く、着用者自らの呼気がマスクシートと顔面の間に滞留するため、マスク内に熱気が籠り、マスク着用時に熱く感じてしまうことを避けることができない。従って、夏季に衛生用のマスクを着用していると、熱中症のリスクが高まると言わざるを得ないが、この両立困難な二つの課題を解決するための有効で現実的な手段は、未だ示されていないのが現状である。
【0004】
先行技術文献についてみると、特許文献1は、防塵、防花粉といった衛生面での機能を有すると共に、熱中症対策も兼備した衛生マスクを提供することを課題とするもので、衛生マスクに保冷剤を収納するポケットを装備し、ポケットに冷却又は凍らせた保冷剤を入れて頬を冷却し、体温を下げるいわゆる熱中症対策も兼備させたクールマスクに係る発明を開示している。ところが、冷却又は凍らせた保冷剤を用意する必要があり、手軽に継続的に利用するという点については、課題を残すものである。
特許文献2は、マスクの機能を損なうことなく、市販されている口と鼻との両方を覆うタイプのマスクをそのまま利用して、化粧落ちや装着跡を気にすることなく使用でき、かつ呼吸や会話を円滑に行うことを目的として、マスクシートと顔面との間に介在させる補助スペーサーを開示するものである。ところが、この補助スペーサーは、使用者の鼻及び口の周囲を覆う環状をなしているものであって、その全体はマスクシートの内部にすっぽり収まった状態で装着されるものである。従って、着用者自らの呼気がマスクシートと顔面の間に滞留することを防止することができない。
特許文献3には、横方向部材をマスクの内部に保持フックによって取り付けて通気空間を設けるようにした補助スペーサーが開示されている。ところが横方向部材は、マスクシートの端縁を超えて外側へ突出する部分を備えておらず、通気用空間はマスクシートの内側で止まるものである。
その結果、マスクシートによって通気用空間が覆われてしまう可能性がある。例えばマスクをつけたまま話をすると、マスクは簡単に位置がずれしてしまうし、マスクシートの一部を手先で摘まんで動かしても、意図通りにマスクシートが動いてくれないし、場合によっては内側にマスクシートがカールしてしまう場合がある。このようなマスクの装着状態では、横方向部材の通気用空間に、マスクシートの端縁部が覆いかぶさってしまい、通気用空間を確保することができない。
さらに特許文献3の保持フックは、同文献の図11図14に示されているように、横方向部材をマスクシートの内側に配置した状態で、保持フックだけが上方に伸びるように設けられている。具体的には、横方向部材がマスクシートの内側に配置されているという状態を維持したまま、保持フックをマスクシートの端に引っ掛けるようにしたものである。したがって、横方向部材の一部が、マスクシートの外側まで出てしまうように位置ずれすると、保持フックが外れてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3227145号公報
【特許文献2】特開2015-019920号公報
【特許文献3】登録実用新案第3169177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、衛生用のマスクの機能を大きく損なうことなく、確実に通気用空間を確保し、着用者自らの呼気がマスクシートと顔面の間に滞留することを抑制することができるマスク用補助スペーサーの提供を図ることを課題とするものである。
また本発明は、マスクの装着時にアロマなどの香りを着用者が楽しむことができるようにしたり、着用者に水分を供給したりすることができるマスク用補助スペーサーの提供を図ることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、柔軟性と通気性を有するマスクシートを備えた衛生用のマスクと使用者の顔面との間に配置されるマスク用補助スペーサーを提供する。
本発明のマスク用補助スペーサーは、マスクシートの端と使用者の顔面との間に配置される介在部を備え、前記介在部は、前記使用者の前記顔面と前記マスクシートとの間に前記マスクシートの外側へ開口する通気用空間を形成するように構成されたことを特徴とする。
【0008】
本発明の実施の形態によれば、前記介在部は、前記顔面に接触する顔面接触部と、前記顔面接触部から前方に伸びて前記シートとの間に空間を保つ剛性を有するスペーサー部とを備え、前記スペーサー部の少なくとも一部分が前記マスクシートに接触して、前記マスクシートと前記顔面との間に空間を形成するように構成することができる。
また、前記マスク用補助スペーサーを前記マスクシートに対して着脱可能に固定するよう構成された固定部を備えたものとすることもできる。
また、前記スペーサー部は、左右方向に間隔を置いて配置された複数の立ち上げ部分を備え、前記立ち上げ部分は、前記顔面接触部から前方に伸びるものであり、その前端側に前記固定部が配置されたものとすることもできる。
前記固定部は、前記マスクシートを表側から裏側へ弾性によって押し付けて、前記マスクシートを着脱可能に挟持するように構成できる。
【0009】
また、前記スペーサー部から前記マスクシートの外側方向へ伸びる延設部を備えたものであっても構わない。
より具体的には、前記介在部は、前記顔面接触部を備えた顔面対向部と、前記顔面対向部から前記マスクシートの外側方向へ伸びる延設部を備え、前記延設部は、前記顔面対向部から下方へ延設され、前記マスクシートの端縁と前記使用者の顎との間に配置されることによって、前記マスクシートの端縁と前記顎との間に通気用空間を維持するように構成されたものであり、前記使用者の呼気が前記通気用空間から外部に排出されることを促すものとして実施することができる。
さらに、前記スペーサー部は、前記使用者の口を覆う位置に配置されて前記使用者の前記口と前記シートとの間に空間を保つ剛性を有し、且つ、前記シートを介した前記使用者の呼吸を維持する呼吸用開口を備えたものであり、
前記延設部は、前記スペーサー部の下部から前記顎よりも下方へ延設されたものとすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るマスク用補助スペーサーは、介在部が、マスクシートの端縁と前記顎との間に通気用空間を維持するものである。その結果、使用者の呼気が通気用空間から外部に排出されるため、使用者の呼気がマスクシート内に滞留することを抑制することができる。
しかも使用者の呼気は、マスクシートの端縁から開口した通気用空間から、主に使用者の顔の下方や後方へ向けて排出されるため、呼気や飛沫の前方への排出飛散を抑制することもできる。
よって、本発明は、飛沫感染の予防と熱中症の予防との両立困難な課題に対する対策を講じるための有効で現実的な手段を提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)本発明の第1の実施の形態に係るマスク用補助スペーサーの使用状態の説明書、(B)同マスク用補助スペーサーを用いない場合のマスクの使用状態の説明書。
図2】同マスク用補助スペーサーの斜視図。
図3】同マスク用補助スペーサーを示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図、(E)は左側面図、(F)は背面図。
図4】(A)本発明の第2の実施の形態に係るマスク用補助スペーサーの使用状態の説明書、(B)同マスク用補助スペーサーを用いない場合のマスクの使用状態の説明書。
図5】(A)(B)はそれぞれ同マスク用補助スペーサーの斜視図。
図6】(A)(B)(C)はそれぞれ同マスク用補助スペーサーの使用状態の説明図。
図7】(A)は本発明の第3の実施の形態に係るマスク用補助スペーサーの分解斜視図、(B)は同マスク用補助スペーサーの組み立て組立過程を示す斜視図、(C)は同マスク用補助スペーサーの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(概要)
図1図3に示す第1の実施の形態に係るマスク用補助スペーサーは、柔軟性と通気性を有するマスクシートsを備えた衛生用のマスクと使用者の顔面fとの間に配置される介在部10を備えたものである。
この介在部10は、上部の顔面対向部11と、下部の延設部31を備えるものである。
一般にマスクは、マスクシートsの周囲と使用者の顔面fとの間には隙間を作らないようにすることが望ましいとされるため、使用者の呼気aは、図1(B)に示されるように、マスクシートsと顔面fの間で呼気aが滞留しがちとなり、寒冷時はともかく夏季などの高温時には、呼気aの熱気が鼻や口の周囲に止まり、顔面fの温度上昇を招いてしまう。
これに対して、マスク用補助スペーサーを用いた場合には、図1(A)に示されるように、マスクシートsのマスクシートの端縁uがマスク用補助スペーサーの延設部31の外面に接触した状態でマスクが着用されるため、使用者の呼気aを、介在部10と使用者の顔面fや顎cとの間に通気用空間eが下向きに確保される。その結果使用者の呼気aを、通気用空間eから外部へ略下向きに逃すことができ、使用者の顔面fの温度上昇を抑制することができるものである。
なお、マスクは市販されている物を適宜選択して用いることができ、マスクシートsには不織布製、織地や編地製、発泡ウレタン製など、飛沫や花粉の侵入を抑制することができると共に呼吸を確保することができる微細孔を備えると共に適当な柔軟性を備えたものを適宜選択して用いることができる。
なおこの第1の実施の形態に関する説明においては、原則として、使用者の顔面fに近い側を後方とし、使用者の顔面fから離れる側を前方として説明する。また、マスク用補助スペーサーはマスクシートの内側から外側へ使用者の呼気aを排出するものであるが、その流れ方向に対して略直交する方向を左右方向として説明する。また、その流れ方向の上流側(通気用空間eに対して遠い側)を上方向、下流側(通気用空間eに対して近い側)を下方向として説明する。
【0013】
(顔面対向部11について)
この実施の形態に係るマスク用補助スペーサーの介在部10は、マスクシートsと使用者の顔面fとの間に挿入された際に大きな変形を生じない程度の剛性を備えたもので、合成樹脂の成型品などで構成することができる。
顔面対向部11は、図2に示すように、左右の顔面接触部12と、両顔面接触部12の間に渡されたスペーサー部13とを備えている。
【0014】
(顔面接触部12について)
顔面接触部12は、図の上下方向に伸びる板状をなしており、使用者の口の左右の顔面fに対して面接触することにより、その応力が集中することを抑制して、装着感の低下を抑制する。装着感を高めるために、顔面接触部12の接触面をシリコン製などの弾性部材で構成しておくことも好ましい。
【0015】
(スペーサー部13について)
スペーサー部13は、口の周辺の顔面fとマスクシートsとの間に空間を確保すると共にマスクシートsからの外気を鼻や口に通すための呼吸用開口24を備えたものであればその形状や形態は様々なもの採用することができるが、この実施の形態では、以下の構成を有するものとして実施されている。
この実施の形態に係るスペーサー部13は、顔面接触部12の上部に接続支持された上フレーム14と、顔面接触部12の下部に接続支持された下フレーム17とを備えている。
上フレーム14は、顔面接触部12の上部から前方に伸びる左右のサイド部分15と、左右のサイド部分15の間に渡されたフロント部分16とを備えている。下フレーム17は、顔面接触部12の下部から前方に伸びる左右のサイド部分18と、左右のサイド部分18の間に渡されたフロント部分19とを備えている。なおこの実施の形態では、上フレーム14のサイド部分15に比べて下フレーム17のサイド部分18の方が長いため、平面視において上フレーム14よりも下フレーム17の方が前方へ突出している。
上フレーム14と下フレーム17との間には左右の中央フレーム20が略縦方向に渡されている。中央フレーム20は上フレーム14のフロント部分16から前方へ伸びる上部分21と、上部分21の前端と下フレーム17のフロント部分19とを結ぶ縦部分22を備えている。
また、左右の中央フレーム20は、左右の縦部分22間に渡されたフロントバー部分23を備えており、これによって、マスクが顔面に接近してしまうことを確実に抑制して空間を作ることができると共に、全体の強度を高めることができる。
以上、スペーサー部13の各部の間には何も存在せず、楽に呼吸をすることができる程度に充分に開口した呼吸用開口24となっている。
上記のようにこのマスク用補助スペーサーのスペーサー部13は細い棒状のフレームを組み合わせて構成されているため、呼吸用開口24は大きな開口となっているが、フレームの構造は様々に変更して実施しても構わないし、パンチングシートや比較的目の粗いメッシュなど、比較的小さな開口を多数備えたものでスペーサー部13を構成しても構わない。
【0016】
(延設部31について)
顔面対向部11から下方には延設部31が配置されている。この延設部31は、望ましくは使用者の顎cよりも下方に伸びることで、マスクシートの端縁uよりも外側へ突出している。これによって、マスクシートの端縁uが、通気用空間eを塞いでしまったり、使用者の顔面fや顎cに密着したりすることを防止して、延設部31と使用者の顎cを含む顔面fとの間に通気用空間eを形成するものである。
具体的には、延設部31は、上述の下フレーム17のフロント部分19から下方に伸びるフロント部分32と、下フレーム17の左右のサイド部分18から下方に伸びる左右のサイド部分33とを備えたものである。延設部31は、フロント部分32だけを備えるものであっても構わないが、サイド部分33を備えることによってフロント部分32の変形を抑制することができる。特に、マスクシートの端縁uにはゴムが通されているものもあり、ゴムの張力などによってフロント部分32が顔面に近づくように変形してしまう恐れがあるが、左右のサイド部分33を設けることによってフロント部分32の変形を抑制することができる。なお、この実施の形態では延設部31を開口部の無い板状として実施したが、スペーサー部13と同様に細い棒状のフレームなどで構成することにより、開口を備えたものとして実施しても構わない。
【0017】
(使用方法)
この実施の形態に係るマスク用補助スペーサーは、使用者の顔面fとマスクシートsとの間に挟まれた状態で、マスクのゴム紐などの弾性によって保持される。この装着状態で、顔面接触部12が使用者の口の両側の顔面fに接触した状態となり、マスク用補助スペーサーの介在部10のほぼ全体がマスクシートsによって覆われ、延設部31の下端付近のみがマスクシートの端縁uから外側へ突出している状態となる。なお、マスクシートの端縁uの位置決めのために、延設部31の下端付近に凹凸やスリットなどの係止部(図示せず)を設けて実施しても構わない。
このマスク用補助スペーサーを装着することによって、使用者の鼻孔や口の周辺とマスクシートsとの間に十分な空間を作ることができる。
より詳しくは、スペーサー部13の上フレーム14及び中央フレーム20が前方に膨らんでいることによって、マスクシートsの顔面fへの密着を抑制すると共に、そこにできる空間が鼻から排出された呼気aをスムーズに排出するための空間になる。また、スペーサー部13の呼吸用開口24によって十分な開口面積が確保されているため、マスクシートsを介した呼吸を円滑に行うことができる。
【0018】
さらに延設部31によって、使用者の顎cを含む顔面fとの間に、マスクシートの端縁uを超えて下方に開口する通気用空間eが常に確保されるため、下方向へのスムーズな呼気の排出と排熱を実現することができる。
これによって、マスクシートs及び呼吸用開口24から、新鮮な空気をマスクシートsの内部に取り入れることができると共に、顔面の温度を下げ、熱中症対策を施すことが可能になる。また、延設部31はマスクシートの端縁uから下方へ突出しており、通気用空間eはマスクシートの端縁uから下方の外側へ伸びて開口しているため、使用者の呼気aが前方へ流れることを抑制することができる。さらに、延設部31を板状とすることによって、飛沫の拡散防止効果を高めることができる。
【0019】
(第2の実施の形態)
図4図6に示す第2の実施の形態に係るマスク用補助スペーサーも、先の実施の形態と同様、柔軟性と通気性を有するマスクシートsに装着される。マスク用補助スペーサーも、その装着状態で、衛生用のマスクと使用者の顔面fとの間に配置される介在部50を備えたものである。
この介在部10は、先の例とは異なり延設部31を備えておらず、言うなれば顔面対向部のみで構成されているものであるが、先の例と同様に延設部31を設けても構わない。
この例でも図4(B)に示すマスク用補助スペーサーを用いない場合の使用者の呼気はマスクシートsと顔面fの間で滞留しがちとなるが、マスク用補助スペーサーを用いた場合には、図4(A)に示されるように、介在部50によってマスクシートsと使用者の顔面fとの間に通気用空間eが確保される。その結果使用者の呼気aを、通気用空間eから外部へ逃すことができ、使用者の顔面fの温度上昇を抑制することができるものである。
【0020】
(介在部50について)
この実施の形態に係るマスク用補助スペーサーの介在部50は、マスクシートsと使用者の顔面fとの間に挿入された際に大きな変形を生じない程度の剛性を備えたもので、合成樹脂の成型品などで構成することができる。
介在部50は、図5に示すように、顔面接触部51とスペーサー部52とを備え、スペーサー部52は顔面接触部51の左右両側から前方へ延びる左立ち上がり部53と右立ち上がり部54を備えており、断面略コ字状をなす。
【0021】
(顔面接触部51について)
顔面接触部51は、平板状をなしており、使用者の顔面fに対して面接触することにより、その応力が集中することを抑制して、装着感の低下を抑制する。装着感を高めるために、顔面接触部51の接触面をシリコン製などの弾性部材で構成しておくことも好ましい。
【0022】
(スペーサー部52について)
スペーサー部52としては、1つでも構わないが、この例のように左立ち上がり部53と右立ち上がり部54の複数設ける方が形状の安定性を得やすい点で有利である。
左立ち上がり部53及び右立ち上がり部54は、板状としているが、先の例のように細棒状や細板状によるフレーム体でも構わないし、多孔質板等でも構わない。
また、左立ち上がり部53及び右立ち上がり部54の端部に他の板状部を渡して、顔面接触部51を含めた全体として筒状のものとしても構わない。
【0023】
(固定部61について)
固定部61は、マスクシートsを表側から裏側へ弾性によって押し付けて、着脱可能に挟持するもので、この例では、板状をなしており、基端部分62がスペーサー部52(左立ち上がり部53及び右立ち上がり部54)に対して接続箇所64で接続されている。この接続部分の弾性変形や、バネ等の付勢部材によって、先端部分63がスペーサー部52に対して接近離反し、スペーサー部52と固定部61との間に挿入されたマスクシートsを挟みつけて固定する。接続箇所64は、立ち上がり部の最端部65よりもマスク内に近い位置であり、マスクシートsを深く差し込んでも、マスクシートsは基端部分62の接続箇所64を超えることがない。従って、固定部61によってマスクシートsに取り付けられた状態で、スペーサー部52は、その一部分が、マスクシートsの端縁uを超えてマスクシートsの外側へ突出している。この外側へ突出する部分(立ち上がり部の最端部65)によって通気用空間eはマスクシートsの外側まで伸びているものである。
なお、基端部分62の端に摘み部分を設けて実施しても構わないし、挿入を容易になすために先端部分63の端に反りを設けるなどしても構わない。なお、第1の実施の形態に係るマスク用補助スペーサーにおいても、固定部61と同様な固定部を設けても構わない。
【0024】
(使用方法)
この実施の形態に係るマスク用補助スペーサーは、マスクシートsの端に着脱可能に固定され、使用者の顔面fとマスクシートsとの間に配置される。この装着状態で、マスクシートsの端縁に図4(A)に示す通気用空間eが形成される。
図6の各図に示すように、このマスク用補助スペーサーはマスクシートsの端縁の様々な位置に取り付けることができ、鼻や口から排出された呼気aをスムーズに通気用空間eから排出することができる。
また、複数のマスク用補助スペーサーを並べて配置し、両者間の空間をも通気用空間eとしても構わない。
【0025】
(第3の実施の形態)
図7に示す第3の実施の形態に係るマスク用補助スペーサーは、先の第2の実施の形態を一部変更したものであり、第2の実施の形態と異なる部分を中心に説明するが、異なる部分の一部分について第2の実施の形態に適用することができるし、第2の実施の形態の一部分について、この第3の実施の形態に適用することもできる。
【0026】
(固定部)
この第3の実施の固定部61は板状をなしており、介在部50(顔面接触部51及びスペーサー部52)と一体成型されている。具体的には固定部61の基端部分62が、左立ち上がり部53及び右立ち上がり部54の基端側と連続した状態で一体に形成されており、先端側に向けて開放されたスリット66が、固定部61と左立ち上がり部53及び右立ち上がり部54との間に形成されている。基端部分62が左立ち上がり部53及び右立ち上がり部54へ接続されている箇所(言い換えればスリット66の最も奥)は、立ち上がり部の最端部65よりもマスク内に近い箇所に位置する。
この固定部61は弾性変形することによってマスクシートsをスリット66へ差し入れることができ、左立ち上がり部53及び右立ち上がり部54との間でマスクシートsを挟み付けることができる。この装着状態でも、立ち上がり部の最端部65はマスクシートの端縁uよりも外側に突出している。
【0027】
(保液パッド)
この実施の形態では、保液パッド71を着脱可能に取り付けることができる。
保液パッド71は、アロマ成分を有する液体や、水などの薬液を吸収して保持する。
ことができると共に徐々に放散することができる不織布や多孔質体のシート状体から構成することができる。
【0028】
(パッドケース)
保液パッド71は、介在部50の適宜箇所に貼り付けなどで固定しても構わないが、この例ではパッドケース72に着脱可能に取り付け、このパッドケース72を介在部50に着脱可能に取り付けるようにしている。
具体的には、パッドケース72は板状の本体73と、本体73の基端側に立ち上げられた摘み部74と、本体73の両サイドに設けられたサイド部75と、それぞれの本体73の内側に突出した突起76とを備える。突起76と本体73との間にはわずかな隙間があり、保液パッド71を本体73の先端側から差し込んで、突起76で係止する。
保液パッド71にはあらかじめ薬液を保持させておいても構わないし、パッドケース72にセットした状態で薬液を滴下するなどしても構わない。
保液パッド71をセットしたパッドケース72を、介在部50の基端側の開口から、顔面接触部51に沿って差し込む。左立ち上がり部53及び右立ち上がり部54には、その先端寄りに係止部78が設けられており、本体73より突出したスライド部77の先端と係合して、パッドケース72を介在部50の内部に着脱可能に取り付けることができる。
【0029】
(使用状態)
このパッドケース72を介在部50に取り付けたマスク用補助スペーサーを、他の実施例と同様にマスクシートsに取り付けることによって、通気用空間を確保することができると共に、放散された薬液成分や水分が、マスク内に供給されて、その香りを楽しんだり水分による保湿効果を得たりすることができるなど、保液パッド71に保持された液体による効果を発揮させることができる。
【0030】
(結び)
このように、マスクシートの端縁uと顔面fの間にマスク用補助スペーサーを挿入することによって、使用者の呼気a及び熱気をマスクシートの端から外部へスムーズに排出することができるため、気温が高い時期にマスクをしても使用者の顔面fの温度上昇を抑えることができ、熱中症の発生を緩和することができる。また、マスクを装着していることによって生じるいわゆるマスク頭痛の原因として、マスク内に溜まった使用者自身の呼気を繰り返し吸うことによる吸気内の二酸化炭素濃度の上昇が挙げられているが、呼気をマスクの外に排出することでマスク頭痛の発生を抑制することもできる。
また。保液パッド71に保持された液体による効果を発揮させることができる。
【符号の説明】
【0031】
s マスクシート
u マスクシートの端縁
a 呼気
f 顔面
c 顎
e 通気用空間
10 介在部
11 顔面対向部
12 顔面接触部
13 スペーサー部
14 上フレーム
15 サイド部分
16 フロント部分
17 下フレーム
18 サイド部分
19 フロント部分
20 中央フレーム
21 上部分
22 縦部分
23 フロントバー部分
24 呼吸用開口
31 延設部
32 フロント部分
33 サイド部分
50 介在部
51 顔面接触部
52 スペーサー部
53 左立ち上がり部
54 右立ち上がり部
61 固定部
62 基端部分
63 先端部分
64 接続箇所
65 立ち上がり部の最端部
66 スリット
71 保液パッド
72 パッドケース
73 本体
74 摘み部
75 サイド部
76 突起
77 スライド部
78 係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7