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特開2022-37906移動式プロテクタおよび移動式プロテクタの設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037906
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】移動式プロテクタおよび移動式プロテクタの設置方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/01 20060101AFI20220302BHJP
   E21D 11/40 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
E21D9/01
E21D11/40 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133420
(22)【出願日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2020142107
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301031392
【氏名又は名称】国立研究開発法人土木研究所
(71)【出願人】
【識別番号】593089046
【氏名又は名称】青木あすなろ建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】310005294
【氏名又は名称】北陸鋼産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】日下 敦
(72)【発明者】
【氏名】巽 義知
(72)【発明者】
【氏名】岩田 航司
(72)【発明者】
【氏名】高山 慎介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕之
(72)【発明者】
【氏名】廣松 直人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊男
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 一大
(72)【発明者】
【氏名】野村 和範
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155AA02
2D155BB02
2D155GB11
2D155LA17
(57)【要約】
【課題】プロテクタを移動するための手間が軽減される。
【解決手段】本発明の好適な態様に係る移動式プロテクタは、車両の通行を確保しつつ道路に関する工事を可能にするプロテクタであって、相互に対向する第1側壁部および第2側壁部と、当該2つの側壁部の上部を連結する上壁部とを含むフレーム部と、前記第1側壁部の下部に設置され、地面上で回転可能なタイヤと、前記第2側壁部の下部に設置され、レール上を走行可能な車輪とを具備し、前記タイヤの回転および前記車輪の走行により移動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の通行を確保しつつ道路に関する工事を可能にするプロテクタであって、
相互に対向する第1側壁部および第2側壁部と、当該2つの側壁部の上部を連結する上壁部とを含むフレーム部と、
前記第1側壁部の下部に設置され、地面上で回転可能なタイヤと、
前記第2側壁部の下部に設置され、レール上を走行可能な車輪とを具備し、
前記タイヤの回転および前記車輪の走行により移動する
移動式プロテクタ。
【請求項2】
前記第1側壁部と前記第2側壁部とに設置され、地面に当接する状態と、当該地面から離間する状態とをとる荷重受け装置を具備し、
当該移動式プロテクタが移動している状態では、前記荷重受け装置を前記地面から離間させ、
当該移動式プロテクタが停止している状態では、前記荷重受け装置を前記地面に当接させることで、前記タイヤおよび前記車輪にかかる負荷を軽減させる
請求項1の移動式プロテクタ。
【請求項3】
前記車輪の外周面は、幅方向における一方の周縁に位置する第1領域と、当該幅方向における他方の周縁に位置する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に位置する第3領域とを含み、
前記第1領域および前記第2領域は、前記第3領域からみて突出し、
前記車輪のうち前記第3領域が前記レールに当接する
請求項1または請求項2の移動式プロテクタ。
【請求項4】
逸走を防止するための安全装置を具備する
請求項1から請求項3の何れかの移動式プロテクタ。
【請求項5】
前記タイヤおよび前記車輪は電動式である
請求項1から請求項4の何れかの移動式プロテクタ。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかの複数の移動式プロテクタと、
前記複数の移動式プロテクタにおいて、相互に隣り合う2つの移動式プロテクタを前記各フレーム部により形成される空間が連結するように接続する接続機構とを具備し、
前記2つの移動式プロテクタが接続される接続部分を中心に屈曲可能である
プロテクタユニット。
【請求項7】
前記接続部分には、前記移動式プロテクタの内部への浸水を防ぐための開閉可能な蓋部材を具備する
請求項6のプロテクタユニット。
【請求項8】
請求項1から請求項5の何れかの移動式プロテクタを工事対象となる道路に設置する方法であって、
当該移動式プロテクタを前記道路の外部にあるヤードにおいて組み立てた後に、前記ヤードから移動させて当該移動式プロテクタを前記道路に設置し、
前記ヤードから前記道路まで移動させる際には、当該ヤードから前記道路にかけて設置されたレール上を前記車輪が走行する
移動式プロテクタの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の通行を確保しつつ道路に関する工事を可能にするプロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トンネルの築造後に交通量を増加させる拡幅工事にプロテクタが使用される。トンネル内の道路を覆うように設置されるプロテクタの内部において車両が通行可能である。一方で、プロテクタの外部において、各種の作業機器(例えば高所作業車または掘削機など)により工事が行われる。プロテクタは、工事に伴う落下物や飛来物から車両や道路を保護することも可能になる。
【0003】
また、プロテクタは、トンネルにおける拡幅工事以外にも、例えば、切土、斜面防護工事において車両を保護するために使用される。
【0004】
以上のようなプロテクタとしては、従来、工事の対象となるトンネルの全長にわたり固定して設置される固定式プロクテクタが使用された。しかし、固定式プロテクタは、トンネルの全長にわたり設置する必要があるため、手間がかかるばかりか、費用も高価になる。そこで、近年では、特許文献1から特許文献5の技術のように、トンネル内を移動可能な移動式プロテクタが使用される。移動式プロテクタでは、プロテクタをトンネルの全長にわたり設置する必要がなく、プロテクタの長さを短縮することが可能になる。したがって、移動式プロテクタでは、固定式プロテクタよりも、設置の手間もかからず費用も低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-28175号公報
【特許文献2】特開2002-250044号公報
【特許文献3】特開2003-278476号公報
【特許文献4】特開2004-92072号公報
【特許文献5】特開2006-57370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
具体的には、特許文献1から特許文献5の技術では、プロテクタの下部に車輪が設けられ、工事対象となる道路に車輪が移動可能なレールが設置される。そして、レール上を車輪が移動することで、プロテクタそのものが移動する。したがって、特許文献1から特許文献5の技術では、レール自体を設置する設置作業だけでなく、レールの設置作業の前に当該レールの敷設位置を定めるための測量作業等も必要になる。以上の通り、特許文献1から特許文献5の技術では、移動式プロテクタを移動するための手間が非常にかかるという問題があった。以上の事情を考慮して、本発明では、移動のための手間を軽減する移動式プロテクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の好適な態様に係る移動式プロテクタは、車両の通行を確保しつつ道路に関する工事を可能にするプロテクタであって、相互に対向する第1側壁部および第2側壁部と、当該2つの側壁部の上部を連結する上壁部とを含むフレーム部と、前記第1側壁部の下部に設置され、地面上で回転可能なタイヤと、前記第2側壁部の下部に設置され、レール上を走行可能な車輪とを具備し、前記タイヤの回転および前記車輪の走行により移動する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の移動式プロテクタによれば、移動のための手間を軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】移動式プロテクタの構成を例示する構成図(正面図)である。
図2】移動式プロテクタの構成を例示する構成図(側面図)である。
図3】移動式プロテクタの構成を例示する構成図(側面図)である。
図4】タイヤおよび車輪に着目した正面図である。
図5】車輪およびレールの拡大図である。
図6】移動式プロテクタが移動するときの説明図である。
図7】移動式プロテクタが停止するときの説明図である。
図8】比較例に係るプロテクタの構成図である。
図9】移動式プロテクタを設置する方法の説明図である。
図10】プロテクタユニットの上面図である。
図11】プロテクタユニットの側面図である。
図12図11におけるa-a線の断面図である。
図13図12におけるa-a線の断面図である。
図14】他の形態に係るプロテクタユニットの側面図である。
図15図14におけるa-a線の断面図である。
図16図14におけるb-b線の断面図である。
図17図14におけるc-c線の断面図である。
図18図15におけるa-a線の断面図である。
図19】蓋部材の側面図である。
図20】施工時における蓋部材の側面図である。
図21】移動時における蓋部材の側面図である。
図22】変形例に係る移動式プロテクタの側面図および正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<移動式プロテクタ>
図1は、本実施形態に係る移動式プロテクタ100の正面図(トンネルTの坑口側からみた図)である。本発明においてプロテクタとは、既設のトンネル内において道路を覆うように設置され、車両の通行を確保したまま、当該トンネルの工事(例えば拡幅工事)を可能にする装置である。本発明の移動式プロテクタ100は、トンネルT内を移動可能なプロテクタである。
【0011】
以下の説明では、移動式プロテクタ100の短手方向(幅方向)をx方向と表記し、移動式プロテクタ100の長手方向(長さ方向)をy方向と表記する。また、x方向とy方向とを含む平面に垂直な方向をz方向と表記する。すなわち、z方向は、移動式プロテクタ100の上下方向(高さ方向)である。なお、移動式プロテクタ100をトンネルT内に設置した状態では、x方向はトンネルT(道路)の幅方向に略平行であり、y方向はトンネルT(道路)の長さ方向に略平行であり、z方向はトンネルTの高さ方向に略平行であるとも換言できる。なお、z方向の正側は「上方側」の例示であり、z方向の負側は「下方側」の例示である。
【0012】
図2および図3は、移動式プロテクタ100の側面図である。図2はx方向の負側からみたときの側面図であり、図3はx方向の正側からみたときの側面図である。図1から図3に例示される通り、移動式プロテクタ100は、フレーム部10と複数のタイヤ20Aと複数の車輪20Bと複数の荷重受け装置40とを具備する。
【0013】
図1に例示される通り、フレーム部10は、道路を覆う部材であり、正面視において略門型に形成される。具体的には、フレーム部10は、第1側壁部11Aと第2側壁部11Bと上壁部13とを具備する。
【0014】
第1側壁部11Aおよび第2側壁部11Bは、正面視において、z方向に沿って延在する部分であり、x方向において相互に対向するように設置される。図1では、x方向の正側に第2側壁部11Bが位置し、x方向の負側に第1側壁部11Aが位置する場合を例示する。第1側壁部11Aにタイヤ20Aが設置され、第2側壁部11Bに車輪20Bが設置される。なお、以下の説明では、第1側壁部11Aと第2側壁部11Bとを区別する必要がないときは単に「側壁部11」と表記する。
【0015】
図2および図3に例示される通り、側壁部11は、例えば、下桁111と上桁112と支柱113と筋交い114とを含む。
【0016】
下桁111は、側面視において、z方向の負側(下方側)においてy方向に沿う長尺状の部分である。本実施形態に係る下桁111は、1つ以上の第1部分91と1つ以上の第2部分92とを含む。図2では、下桁111が、2つの第1部分91と1つの第2部分92とで構成される場合を例示する。第1部分91と第2部分92とが交互に設置される。具体的には、y方向に沿って、一方の第1部分91と他方の第1部分91との間に第2部分92が位置する。
【0017】
第2部分92は第1部分91よりもz方向の負側(すなわち下方側)に位置する。すなわち、第2部分92が第1部分91よりも地面W(道路の表面)に近い位置にある。なお、第1部分91が第2部分92よりも上桁112に近い位置にあるとも換言できる。第1部分91の長さ(y方向の大きさ)と第2部分92の長さとは任意であるが、図2では、第1部分91よりも第2部分92の長さが長い場合を例示する。
【0018】
上桁112は、z方向の正側(上方側)においてy方向に沿う長尺状の部分である。本実施形態では、1つの部材により上桁112が形成される。
【0019】
支柱113は、z方向に沿う長尺状の部分であり、下桁111と上桁112とを連結する。本実施形態では、複数(図2では5つ)の支柱113が所定の間隔で設けられる。図2では、各第1部分91における双方の端部(y方向の負側および正側の端部)と、第2部分92における双方の端部(y方向の負側および正側の端部)と、第2部分92の中央部分とに対応する位置に、それぞれ支柱113が設置される。なお、支柱113の個数は図2の例示に限定されない。
【0020】
筋交い114は、相互に隣り合う2つの支柱113を連結する部材である。2つの筋交い114は、隣り合う2つの支柱113の間を対角線状に沿って連結する。なお、以上の説明では、下桁111と上桁112と支柱113と筋交い114とで側壁部11を形成する構成を例示したが、側壁部11の具体的な構成は、以上の例示に限定されない。
【0021】
図1に例示される通り、上壁部13は、正面視において、x方向に沿って延在する部分であり、2つの側壁部11の上部を連結する。なお、本発明において側壁部11の上部とは、側壁部11においてz方向の正側の端部に位置する部分である。例えば、上桁112や支柱113のz方向の正側(上方側)の端部や側壁部11の上部に相当する。
【0022】
図2に例示される通り、本実施形態の上壁部13は、複数の横梁131と架台132とを具備する。各横梁131は、x方向に沿った長尺状の部材であり、一方の側壁部11の上桁112から他方の側壁部11の上桁112にかけて形成される。y方向に沿って所定の間隔をあけて各横梁131が設置される。架台132は、複数の横梁131上にわたり設置される板状の部材である。
【0023】
本実施形態に係る移動式プロテクタ100は、上壁部13を工事用の装置や資材等を載置可能な作業台車としても利用可能である。したがって、移動式プロテクタ100とは別個の作業台車を設置する必要がないという利点もある。
【0024】
図1および図2に例示される通り、第1側壁部11Aに設置されるタイヤ20Aは、地面W(道路の表面)に当接した状態で回転可能である。例えば、移動式プロテクタ100の重量に耐え得るユニークタイヤ(ノーパンクタイヤ)がタイヤ20Aとして好適に利用される。なお、本発明に係るタイヤ20AはレールRを必要とすることなく走行可能である。
【0025】
本実施形態のタイヤ20Aは、第1側壁部11Aの第1部分91に設置される。具体的には、第1側壁部11Aにおける第1部分91の底面においてタイヤ20Aが設置される。なお、図2では、第1部分91毎に1つのタイヤ20Aが設置される構成を例示する。ただし、第1部分91に設置されるタイヤ20Aの個数は任意である。また、図1のように、並走するように2つのタイヤの組をタイヤ20Aとして利用してもよい。移動式プロテクタ100におけるタイヤ20Aの個数と車輪20Bの個数と、各側壁部11において設置される位置とは相違してもよい。
【0026】
一方で、図1および図3に例示される通り、第2側壁部11Bに設置される車輪20Bは、レールR上を走行可能である。レールRに当接した状態で回転することで車輪20Bが走行する。レールRおよび車輪20Bの形状については後述する。例えば、タイヤ20Aおよび車輪20Bは、電気が供給されることで回転するモーターにより駆動される電動式である。タイヤ20Aおよび車輪20Bは、y方向に沿って回転する。すなわち、タイヤ20Aおよび車輪20Bの回転軸がx方向に平行な軸である。なお、モーターは、例えば、複数のタイヤ20A(車輪20B)の各々について、タイヤ20A(車輪20B)の付近に設置される。ただし、モーターをタイヤ20A(車輪20B)毎に設けることは必須ではない。例えば、各側壁部11に設置される2つのタイヤ20A(車輪20B)のうちの一方についてモーターを設けてもよい。
【0027】
また、各モーターについて回転数を可変に設定する構成(すなわちインバータが搭載されたインバータ式モーター)も採用され得る。インバータ式モーターを搭載する構成では、発進および停止時に速度を微調整できるので、急発進や急停止が抑制できるため安全である。また、以上の構成では、例えば、一方の側壁部11と他方の側壁部11とについて設置されるモーターの回転数を相違させてもよい。なお、タイヤ20Aおよび車輪20Bの回転を制止するためのブレーキを移動式プロテクタ100に設けてもよい。
【0028】
なお、第1側壁部11Aの第2部分92の底面は、タイヤ20Aの下端よりも上方に位置し、第2側壁部11Bの第2部分92の底面は車輪20Bの下端よりも上方に位置する。
【0029】
図4はタイヤ20Aと車輪20Bの正面図である。図4に例示される通り、タイヤ20Aは第1側壁部11A(下桁111)の第1部分91に保持機構30Aにより設置され、車輪20Bは第2側壁部11B(下桁111)の第1部分91に保持機構30Bにより設置される。保持機構30Aと保持機構30Bとを区別する必要がない場合には単に保持機構30と表記する。
【0030】
各保持機構30は、軸受部31と支持部材32と保持部材33とを具備する。軸受部31は、回転を阻害しないようにタイヤ20A(または車輪20B)の回転軸Oを保持する部材である。例えば、軸受部31は、タイヤ20A(または車輪20B)を挟んで両側(x方向の正側および負側)から回転軸Oを保持する。
【0031】
支持部材32は、軸受部31を支持するための部材である。例えば、軸受部31におけるx方向の正側の部分と、軸受部31におけるx方向の負側の部分とを、タイヤ20A(または車輪20B)の上方を通り連結するように支持部材32が形成される。なお、タイヤ20A(または車輪20B)を駆動するためのモーターは、例えば支持部材32に設置してもよい。ただし、モーターを設置する場所は以上の例示に限定されない。例えば、下桁111(例えば第1部分91)にモーターを搭載してもよい。
【0032】
保持部材33は、z方向に沿った長尺状の部材である。保持部材33の一端(z方向の負側の端部)は、支持部材32に接続される。例えば、支持部材32のうちタイヤ20A(または車輪20B)の上方側に位置する部分に保持部材33の一端が接続される。一方で、保持部材33の他端(z方向の正側の端部)は、第1部分91に接続される。例えば、第1部分91に形成された貫通孔(z方向に沿った貫通孔)に挿入された状態で保持部材33の他端が当該第1部分91に接続される。なお、図4では、保持機構30Aと保持機構30Bとが構成が同じ場合を例示したが、保持機構30Aと保持機構30Bとの構成を相違させてもよい。タイヤ20Aと車輪20Bとが第1部分91に設置可能であれば各保持機構30の構成は任意である。
【0033】
なお、図4に例示される通り、第1側壁部11Aの第1部分91と第2側壁部11Bの第1部分91とは、z方向における底面の位置が相違してもよい。図4では、第1側壁部11Aの第1部分91の底面のほうが第2側壁部11Bの第1部分91の底面よりも下方側(z方向の負側)に位置する構成を例示する。また、図4に例示される通り、タイヤ20Aおよび車輪20Bの外側(フレーム部10の内部空間とは反対側)には、掘削土砂や水等がかからないよう開閉式のカバーSを取り付けてもよい。
【0034】
図5は、図4の車輪20BおよびレールRの拡大図である。図5に例示される通り、本実施形態に係る車輪20Bの外周面は、車輪20Bの幅方向において第1領域201と第2領域202と第3領域203とを含む。第1領域201は、幅方向における一方(x方向の正側)の周縁に位置し、第2領域202は、幅方向の他方(x方向の負側)の周縁に位置する。第3領域203は、第1領域201と第2領域202との間に位置する。第1領域201と第2領域202とは、第3領域203からみて突出する部分である。すなわち、第1領域201における外径と第2領域202における外径とは、第3領域203における外径よりも大きい。なお、第1領域201と第2領域202と第3領域203とは、車輪20Bの全周にわたり形成される。以上の説明から理解される通り、車輪20Bの形状はいわゆる両つば形である。車輪20Bを両つば形にすることで、片側がタイヤ20Aであっても移動式プロテクタ100がレールRから脱線しにくくなる。なお、つばの高さについては、移動式プロテクタ100が曲線状に移動する際に、タイヤ20A側からの押し圧がある場合を考慮して、通常より高くする構成も採用される。
【0035】
車輪20Bが走行するレールRは、例えば第1レール部R1と第2レール部R2とで構成される。第1レール部R1は、地面Wに当接する部分である。第1レール部R1は、第1部材r1と第2部材r2とを含む。正面視においてx方向に沿う板状の部分が第1部材r1である。第1部材r1の幅(x方向の大きさ)は、車輪20Bの幅(x方向の大きさ)よりも大きい。第2部材r2は、第1部材r1からz方向の正側に向かって突出する部分である。第1部材r1おけるx方向の正側の端部と負側の端部とにそれぞれ第2部材r2が形成される。すなわち、第1レール部R1は、正面視において中央部分が窪んでいる形状(凹状)である。
【0036】
第2レール部R2は、車輪20Bが直接的に当接する部分である。第2レール部R2は、第1レール部R1の表面のうち2つの第2部材r2の間において設置される。第2レール部R2は、第3部材r3と第4部材r4と第5部材r5とを含む。第3部材r3は、z方向に沿った部分である。第4部材r4および第5部材r5は、x方向に沿った部分である。第4部材r4は、第3部材r3におけるz方向の負側の端部に接続される。そして、第4部材r4が第1レール部R1(第1部材r1)の表面に当接するように、第2レール部R2が第1レール部R1に設置される。
【0037】
第5部材r5は、第3部材r3におけるz方向の正側の端部に接続される。そして、第5部材r5が車輪20Bの第3領域203に当接するように、車輪20BがレールRに載置される。そして、第3領域203がレールRに当接した状態で回転することで、車輪20BがレールR上を走行可能になる。
【0038】
なお、図4に例示される通り、タイヤ20Aの下端Q1(地面Wに当接する部分)と、レールRの第1レール部R1の下端Q2(地面Wに接触する部分)とは、高さ(z方向における位置)が同じになるように、タイヤ20AとレールRとが設置される。したがって、本実施形態の移動式プロテクタ100は、タイヤ20Aが地面W上を回転し、地面Wに設置されたレールR上を車輪20Bが走行することで移動可能になる。
【0039】
ここで、例えば、トンネルT内の道路を当該トンネルTの軸方向に沿って複数の区間(第1区間、第2区間、第3区間、…)にわけて順次に工事をする場合を想定する。すなわち、第1区間の工事が終わると、第1区間の隣に位置する第2区間の工事に移る。第1区間を工事する際には、移動式プロテクタ100は第1区間において停止させる。そして、第1区間の工事が終わると、移動式プロテクタ100を第2区間に移動させる。そして、第2区間に移動した後に停止させて、当該第2区間の工事が開始される。全ての区間の工事が完了するまで、以上のように、移動式プロテクタ100の移動と停止とを繰り返す。
【0040】
荷重受け装置40は、移動式プロテクタ100の停止中に、タイヤ20Aおよび車輪20Bにかかる荷重を分散させるための装置である。タイヤ20Aおよび車輪20Bにかかる荷重とは、例えば、移動式プロテクタ100の重量や、当該移動式プロテクタ100に載置される資材や機材の重量による荷重である。
【0041】
図2および図3に例示される通り、荷重受け装置40は、側壁部11の下部に設置される。各側壁部11に複数の荷重受け装置40が設置される。第1側壁部11Aにおいてはタイヤ20Aに接触しない位置に荷重受け装置40が設置される。第2側壁部11Bにおいては車輪20BおよびレールRに接触しない位置に荷重受け装置40が設置される。側壁部11の下部とは、側壁部11においてz方向の負側の端部に位置する部分である。例えば、支柱113のz方向の負側(下方側)の端部や下桁111が側壁部11の下部に相当する。本実施形態では、支柱113のz方向の負側の端部に荷重受け装置40を設置する構成を例示する。具体的には、支柱113の側面(例えばフレーム部10の内部空間とは反対側の表面)に荷重受け装置40が設置される。
【0042】
具体的には、荷重受け装置40は、地面Wから離間する状態(以下「離間状態」という)と、地面Wに当接する状態(以下「当接状態」という)とをとる。図6は、荷重受け装置40が離間状態にある移動式プロテクタ100の側面図であり、図7は、荷重受け装置40が当接状態にある移動式プロテクタ100の側面図である。なお、図6および図7では、タイヤ20Aが設置される第1側壁部11Aの側面図を図示するが、車輪20Bが設置される第2側壁部11Bについてもタイヤ20Aが車輪20Bに置換されるだけでその他の構成は図6および図7と同様である。
【0043】
移動式プロテクタ100を移動させる場合には、図6に例示される通り、荷重受け装置40を離間状態にする。すなわち、荷重受け装置40が機能しない状態にある。したがって、タイヤ20Aは地面W上で回転し、車輪20BはレールR上を走行可能な状態になる。すなわち、移動式プロテクタ100が移動可能な状態になる。
【0044】
一方で、移動式プロテクタ100を停止する場合には、図7に例示される通り、荷重受け装置40を当接状態にする。そして、地面Wに当接した荷重受け装置40により移動式プロテクタ100が支持される。すなわち、荷重受け装置40が機能する状態にある。したがって、荷重に対する反力が荷重受け装置40で発生する。タイヤ20Aが地面Wに当接し、車輪20BがレールRに当接する状態で、荷重受け装置40も地面Wに当接する。その結果、タイヤ20Aおよび車輪20Bにかかる荷重が荷重受け装置40により軽減される。荷重受け装置40が地面Wに当接することで移動式プロテクタ100が固定されている状態であるとも換言できる。なお、当接状態では、第2側壁部11B側の荷重受け装置40は、レールRに接触しないように当該レールRからみてフレーム部10の内部空間とは反対側の地面Wに当接する。
【0045】
本実施形態の荷重受け装置40は、例えば、z方向において伸縮可能な装置である。すなわち、荷重受け装置40におけるz方向の長さが可変である。荷重受け装置40は、離間状態にする場合(すなわち移動式プロテクタ100を移動させる場合)には収縮させて、当接状態にする場合(すなわち移動式プロテクタ100を停止させる場合)には伸長させる。なお、荷重受け装置40は、離間状態と当接状態とのそれぞれについて、z方向における長さを保持することが可能である。荷重受け装置40は、離間状態と当接状態とでz方向における長さを保持することが可能な装置であれば、具体的な構成は任意である。
【0046】
以上の説明から理解される通り、移動式プロテクタ100を停止させる場合には、荷重受け装置40を当接状態にすることで、タイヤ20Aおよび車輪20Bにかかる負荷を軽減させることが可能である。
【0047】
なお、荷重受け装置40を設置する位置は以上の例示に限定されない。タイヤ20Aと、車輪20BおよびレールRとに接触しなければ荷重受け装置40を設置する位置は任意である。例えば、下桁111のうち、第1部分91および第2部分92の何れか一方または双方に荷重受け装置40を設置してもよい。また、第1側壁部11Aと第2側壁部11Bとで荷重受け装置40を設置する位置および個数を相違させてもよい。
【0048】
図8には、本発明と比較する比較例に係る移動式プロテクタを図示する。図8に例示される通り、比較例は、移動式プロテクタの双方の側壁部にレール上を走行する車輪20Bを設ける構成である。すなわち、比較例では、移動式プロテクタを移動させる際に、2本のレールが必要になる。したがって、比較例では、レール自体を設置する設置作業だけでなく、レールの設置作業の前に当該レールの敷設位置を定めるための測量作業等が、2本のレールについて必要になる。それに対して、本実施形態の移動式プロテクタ100は、2つの側壁部11のうちの一方には車輪20Bが設置されるが、他方にはレールを不要とするタイヤ20Aが設置される。すなわち、本実施形態によれば、レール自体を設置する設置作業と、レールの設置作業の前に当該レールの敷設位置を定めるための測量作業等を、1本のレールについてのみ行えばよい。ひいては、比較例と比較して、移動式プロテクタ100を移動させるための手間が軽減される。
【0049】
ここで、第1側壁部11Aと第2側壁部11Bとの双方においてタイヤを設置する構成を想定する。以上の構成では、レールを設置する手間はかからないが、レールに沿って移動式プロテクタが移動することがないため、移動式プロテクタの現在地を確認しつつ目的地まで誘導する必要がある。一方で、本実施形態に係る移動式プロテクタ100によれば、車輪20Bはレールに沿って走行し、タイヤ20Aは車輪の走行に追従するように移動する。すなわち、レールに沿って移動式プロテクタ100が移動するので、移動式プロテクタ100を誘導する手間がかからないという利点がある。
【0050】
なお、本発明において、荷重受け装置40は必須ではない。例えば、タイヤ20Aおよび車輪20Bに係る荷重が少ない場合や、タイヤ20Aおよび車輪20B(レールR)が荷重に耐え得る材質で形成される場合には荷重受け装置40を設けなくもてよい。
【0051】
<移動式プロテクタの設置方法>
図9は、移動式プロテクタを工事対象となる道路に設置する方法(以下「設置方法」という)を説明する説明図である。本実施形態では、トンネル内の道路を工事対象の道路として例示し、当該道路のうちトンネルの坑口付近の位置に設置する場合の設置方法を例示する。
【0052】
まず、移動式プロテクタをトンネル坑外(すなわち工事対象となる道路の外部)にあるヤード内で組み立てる。この際は、全面通行が可能である。移動式プロテクタをヤード内で組み立てた後は、以下の(1)から(3)の手順でトンネルの坑口付近に移動される。
【0053】
(1)第2側壁部11Bに設置された車輪を走行させるためのレールを敷設する。レールは、ヤードから道路にかけて坑口付近まで敷設される。なお、レールは、道路の中央付近に敷設することがないように、道路端付近に沿って敷設される。したがって、片側交互通行でレールを敷設することが可能である。
(2)全線通行止めにした状態で、移動式プロテクタをヤードから坑口付近まで移動する。車輪がレール上に載置され、タイヤが地面に当接した状態で、車輪およびタイヤを回転させて、移動式プロテクタを坑口付近まで移動させる。
(3)片側交互通行にし、全線通行止めを解除する。
【0054】
ここで、比較例に係る移動式プロテクタ(2つの側壁部の双方に車輪が設置される構成)をトンネルの坑口付近に設置する場合を説明する。まず、トンネル外部のヤード内で組み立てた後、道路を全面通行止めにして、2本のレールをヤードから坑口付近まで敷設する。2本のレールを敷設する場合、全面通行止めにする必要がある。そして、移動式プロテクタを坑口付近まで移動させた後に、ヤードから坑口付近まで敷設されたレールを撤去するまで全面通行止めを解除することはできない。すなわち、比較例では、移動式プロテクタを坑口付近に設置するためにレールRの敷設および撤去が2本のレールにつき必要なばかりか、全面通行止めをする期間が長いという問題があった。
【0055】
それに対して、本発明に係る移動式プロテクタによれば、敷設および撤去する作業を1本のレールについて行えばよく、レールを敷設する際も全面通行止めすることなく片側交互通行が可能になる。すなわち、移動式プロテクタを坑口付近まで移動させる手間を軽減し、全面通行止めの期間も短くすることが可能である。
【0056】
<プロテクタユニット>
複数の移動式プロテクタ100が相互に接続されたプロテクタユニットUについて説明する。図10は、本実施形態に係るプロテクタユニットUを上方からみた場合の上面図である。図10は、相互に隣り合う2つの移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとが接続されたプロテクタユニットUを例示する。本実施形態では、進行方向において、移動式プロテクタ100bが先導であり、移動式プロテクタ100aが後続する場合を例示する。ただし、移動式プロテクタ100aが先導であり、移動式プロテクタ100bが後続する構成でもよい。
【0057】
移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとは、各フレーム部10により形成される空間が連結するように接続される。プロテクタユニットUは、移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとが接続される部分(以下「接続部分」という)Nを中心に屈曲可能である。そして、プロテクタユニットUは屈曲した状態で所望の方向に進行可能である。したがって、図10に例示するように、線形が曲線状であるトンネルTに沿うように、プロテクタユニットUが移動できる。
【0058】
図11は、接続部分Nにおける側面図(移動式プロテクタ100の外部からみたときの側面図)である。なお、図11では、便宜的に支柱113aおよび支柱113bの内部における構造を図示する。図12は、図11におけるa-a線の断面図である。図13は、図12におけるa-a線の断面図である。なお、図12には、平面視おいて移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとがなす角度θを模式的に図示する。なお、プロテクタユニットUが直線状にある場合は角度θが180度であり、プロテクタユニットUが屈曲している場合は角度θが180度以外の角度である。なお、図12ではプロテクタユニットUが屈曲している場合を例示するが、図13では、便宜的に角度θが180度である場合の断面図を図示する。
【0059】
本実施形態の接続機構50は、ターンバックル51とピン部材52とピンガイド53と具備する。ターンバックル51は、移動式プロテクタ100aの下桁111aにおける外側の表面と、移動式プロテクタ100bの下桁111bにおける外側の表面とを接続する部材である。下桁111における外側の表面とは、フレーム部10の内部空間とは反対側の表面である。下桁111aと下桁111bとの双方にわたり延在する長尺状のターンバックル51が利用される。
【0060】
図11から図13に例示される通り、下桁111aは、z方向に沿った第1軸部511を中心に回動可能なようにターンバックル51の一端に接続される。同様に、下桁111bは、z方向に沿った第2軸部512を中心に回動可能なようにターンバックル51の他端に接続される。すなわち、移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとは接続機構50を中心に相互に回動可能になる。その結果、角度θが変化することで、プロテクタユニットUが屈曲した状態をとることが可能になる。ターンバックル51は、所望の長さに変更することが可能である。ターンバックル51の長さに応じて、支柱113aと支柱113bとの間隔を調整することができる。
【0061】
なお、ターンバックル51を設置する位置は下桁111に限定されない。例えば、2つの移動式プロテクタ100の支柱113、上桁112または横梁131を接続するようなターンバックル51を設けてもよい。
【0062】
ピン部材52とピンガイド53とは、角度θを変化させるための部材である。そして、角度θは、所定の範囲(以下「屈曲範囲」という)内で変化し得る。屈曲範囲が大きいほど、角度θが180度から離れた角度をとることが可能になる。すなわち、移動式プロテクタ100aおよび移動式プロテクタ100bの一方が他方に対して大きく屈曲することが可能になる。
【0063】
接続機構50の屈曲範囲の値については、例えば、トンネルの平面線形に応じて敷設する複数のレールRの接続部分における前後のレールRの角度から求める。使用するレールRの種類は、通常、直線レールと曲線レールとがあるが、主に直線レールを使用する。ただし、急曲線の場合には、短い直線レールを使用する場合もあり、曲線レールを使用する場合もある。屈曲範囲については、敷設されたレールRに移動式プロテクタ100が載った場合に先導の移動式プロテクタ100aと後続の移動式プロテクタ100bがなす角度を、そのトンネルの平面計画線の最小半径を基に求める。その際には、プロテクタユニットUが曲がることができる屈曲範囲の値を安全率を考慮して決定する。そして、その屈曲範囲の値を満足することが可能な接続機構50を採用する。
【0064】
ピン部材52は、ピン状の部材である。例えば、図11に例示される通り、移動式プロテクタ100aの複数の支柱113のy方向の正側の端部に位置する支柱113aと、移動式プロテクタ100bの複数の支柱113のうちy方向の負側の端部に位置する支柱113bとを接続するための2つのピン部材52が設けられる。ただし、ピン部材52を設ける位置および個数は任意である。なお、ピン部材52は、実際にはプロテクタユニットUの外側から確認できないが、図11では便宜的に図示されている。
【0065】
ピンガイド53は、ピン部材52毎に設けられ、当該ピン部材52の移動をガイドするための空間(以下「ガイド空間」という)が形成された部材である。図12に例示される通り、ピン部材52の一端521側は、支柱113bにおいて支柱113aと対向する位置に固定される。例えば、ピン部材52の一端521側は、支柱113bのウェブ部330bに設けられた貫通孔に挿通された状態で当該支柱113bに固定される。なお、支柱113bにはピン部材52を支持するためのブラケットが設けられる。角度θは、平面視においてピン部材52と支柱113aとがなす角度であるとも換言できる。
【0066】
例えば、ピン部材52に形成された貫通孔I(例えばx方向に沿った貫通孔)に挿入された固定部材を介して、当該ピン部材52が支柱113bに固定される。なお、本実施形態では、支柱113bに固定されるピン部材52の軸方向の位置が可変である。図15に例示される通り、例えば、ピン部材52の軸方向(y方向)における相異なる複数の位置に貫通孔Iが形成される。したがって、複数の貫通孔Iのうち固定部材を挿入する位置に応じて、支柱113bに固定されるピン部材52の軸方向の位置を変更することが可能になる。
【0067】
一方、ピンガイド53は、支柱113aにおいて支柱113bに固定されたピン部材52の他端522に対応する位置に設置される。具体的には、支柱113aのウェブ部330aのうち移動式プロテクタ100b側の面に設けられる。ピンガイド53のガイド空間に、ピン部材52の他端522が水平面内で移動可能な状態で挿入される。具体的には、ピン部材52の他端522はガイド空間において水平面内でスライドが可能である。他端522がガイド空間内において水平面内でスライドすることで、プロテクタユニットUが接続部分Nを中心として屈曲する。
【0068】
ピン部材52の他端522側がガイド空間内に挿入される量(以下「挿入量」という)に応じて、屈曲範囲は変化し得る。具体的には、挿入量が大きいほど(ピン部材52の他端522側がガイド空間に深く挿入されるほど)、屈曲範囲は小さくなる。一方で、挿入量が小さいほど(ピン部材52の他端522側がガイド空間に対して浅く挿入されるほど)、屈曲範囲は大きくなる。なお、挿入量が大きい場合は、他端522がガイド空間の入り口から離れた位置でスライドし、挿入量が小さい場合は、他端522がガイド空間の入り口付近でスライドする。
【0069】
挿入量は、ターンバックル51の長さに応じて変更可能である。ターンバックル51の長さが長いほど(すなわち移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの間隔が大きいほど)、挿入量が小さくなる。すなわち、屈曲範囲が大きくなる。一方で、ターンバックル51の長さが短いほど(すなわち移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの間隔が小さいほど)、挿入量が大きくなる。すなわち、屈曲範囲が小さくなる。
【0070】
また、挿入量は、支柱113bに固定されるピン部材52の軸方向の位置に応じて変更可能である。具体的には、ピン部材52を一端521に近い位置で支柱113bに固定するほど、挿入量が大きくなる。すなわち、屈曲範囲が小さくなる。一方で、ピン部材52を一端521から遠い位置で支柱113bに固定するほど、挿入量が小さくなる。すなわち、屈曲範囲が大きくなる。上述した通り、支柱113bに固定されるピン部材52の軸方向の位置は、複数の貫通孔Iのうち固定部材を挿入する貫通孔Iに応じて変更可能である。なお、ターンバックル51の長さと、ピン部材52の一端521側を固定する位置とは、作業者が適宜に変更し得る。
【0071】
移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの位置調整は、以下の手順で行う。
(1)移動式プロテクタ100bのウェブ部330bに設けられた貫通孔に移動式プロテクタ100aとは反対側からピン部材52を打ち込み固定することで、移動式プロテクタ100aの高さと移動式プロテクタ100bの高さとが揃うように調整する。具体的には、
ピンガイド53のガイド空間内に他端522が挿通されるように、ピン部材52がウェブ部330bの貫通孔に打ち込まれる。
(2)調整された方の移動式プロテクタ100の下部(下桁111と地面との間)に調整ライナー材を入れる。
(3)双方の移動式プロテクタ100に連結用のターンバックル51を取り付け、位置調整を行う。
【0072】
また、移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの連結を解除する場合には、必要に応じて、貫通孔Iに挿入された固定部材を抜き、ピン部材52を取り外す。
【0073】
本実施形態では、支柱113bにピン部材52を固定し、支柱113aにピンガイド53を設ける構成を例示したが、プロテクタユニットUが屈曲した状態で所望の方向に進行可能であれば、支柱113aにピン部材52を固定し、支柱113bにピンガイド53を設けてもよい。
【0074】
以下、接続機構50の他の形態に係る構成を例示する。
【0075】
図14は、図11に対応するプロテクタユニットUの側面図であり、図15は、図14のa-a線の断面図であり、図16は、図14のb-b線の断面図であり、図17は、図14のc-c線の断面図である。図18は、図15におけるa-a線の断面図である。なお、図15ではプロテクタユニットUが屈曲している場合を例示するが、図18では、便宜的に角度θが180度である場合の断面図を図示する。
【0076】
図14から図18における接続機構50では、上述のピン部材52に代えて打ち抜きピン57を具備し、ピンガイド53が省略される構成を例示する。打ち抜きピン57は、ピン状の部材である。
【0077】
図15図16および図18に例示される通り、支柱113bが挿通される円形のピン用穴Q2が設けられる。具体的には、支柱113bのウェブ部330bに取り付けられた補強当て板592と当該ウェブ部330bとの双方を貫通するようにピン用穴Q2が設けられる。打ち抜きピン57は、移動式プロテクタ100aとは反対側からピン用穴Q2に打ち込まれて固定される。
【0078】
図15図17および図18に例示される通り、支柱113aには、ピン用穴Q2に打ち込まれた状態の打ち抜きピン57の他端571が挿通される長円形(水平方向に長尺な円形)のピン用穴Q1が設けられる。具体的には、支柱113aのウェブ部330aに取り付けられた補強当て板591と当該ウェブ部330aとの双方を貫通するようにピン用穴Q1が設けられる。打ち抜きピン57の他端571は、ピン用穴Q1に挿通された状態で水平面内において移動可能である。
【0079】
打ち抜きピン57とピン用穴Q1とは、屈曲範囲を所望の範囲内にするための部材であるとも換言できる。屈曲範囲が大きいほど、角度θが180度から離れた角度をとることが可能になる。すなわち、移動式プロテクタ100aおよび移動式プロテクタ100bの一方が他方に対して大きく屈曲することが可能になる。
【0080】
ピン用穴Q1が打ち抜きピン57の移動をガイドするためのガイド空間となり、打ち抜きピン57が水平面内で移動可能なように挿入される。具体的には、打ち抜きピン57の他端571はガイド空間において水平面内でスライドが可能である。他端571がガイド空間内において水平面内でスライドすることで、プロテクタユニットUが接続部分Nを中心として屈曲する。
【0081】
以上の説明から理解される通り、上述のピン部材52が貫通孔Iに挿入された棒状の固定部材を介して支柱113bに固定されたのに対して、打ち抜きピン57はピン用穴Q2に打ち込むことで支柱113bに固定される。
【0082】
移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの位置調整は、以下の手順で行う。
(1)移動式プロテクタ100aとは反対側から支柱113bのピン用穴Q2に打ち抜きピン57を打ち込むことで、移動式プロテクタ100aの高さと移動式プロテクタ100bの高さとが揃うように調整する。具体的には、移動式プロテクタ100aのピン用穴Q1に他端571が挿通されるように、打ち抜きピン57をピン用穴Q2に打ち込む。
(2)調整された方の移動式プロテクタ100の下部(下桁111と地面との間)に調整ライナー材を入れる。
(3)双方の移動式プロテクタ100に連結用のターンバックル51を取り付け、位置調整を行う。
【0083】
また、移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの連結を解除する場合には、必要に応じて、打ち込まれた打ち抜きピン57を移動式プロテクタ100a側から打ち抜くことで取り外す。
【0084】
なお、図15から図18では、支柱113bに打ち抜きピン57を固定し、支柱113aにガイド空間を設ける構成を例示したが、プロテクタユニットUが屈曲した状態で所望の方向に進行可能であれば、支柱113aに打ち抜きピン57を固定し、支柱113bにガイド空間を設けてもよい。
【0085】
以上の説明では、プロテクタユニットUが屈曲可能なように移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとを接続する接続機構50を例示したが、接続機構50の具体的な構成は以上の例示には限定されない。接続機構50の具体的な構成は、移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとを進行可能なように接続することが可能であれば、任意である。
【0086】
ただし、プロテクタユニットUを曲線状にも移動可能にする観点からは、プロテクタユニットUを屈曲可能なように移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとを接続する構成が好適である。
【0087】
図19は、プロテクタユニットUにおいて接続部分Nの上方側に設置される蓋部材70の側面図である。蓋部材70は、移動式プロテクタ100の内部への浸水を防ぐための(止水するための)開閉可能な板状の部材である。移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの隙間を塞ぐことが可能な十分な大きさ蓋部材70を形成する。例えば、移動式プロテクタ100aの架台132に蝶番71を用いて設置される。蝶番71を中心に回転されることで、蓋部材70が開閉可能になる。
【0088】
図20に例示される通り、施工時には、蓋部材70を閉じて移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの隙間が露出しない状態にする。したがって、例えば、トンネル坑内から落下する水が移動式プロテクタ100の内部に浸入することを蓋部材70により阻止することができる。一方で、図21に例示される通り、プロテクタユニットUの移動時には、蓋部材70を開けて移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの移動が阻害されないようにする。
【0089】
なお、止水性能を向上させるため、移動式プロテクタ100aの架台132と移動式プロテクタ100bの架台132との間に、2つの円柱ゴムホース73と当該2つの間に位置する内部蓋部材75とを設けてもよい。一方の円柱ゴムホース73は移動式プロテクタ100aの架台132の縁に沿って設けられ、他方の円柱ゴムホース73は移動式プロテクタ100bの架台132の縁に沿って設けられる。
【0090】
以上の説明から理解される通り、本実施形態に係るプロテクタユニットUは、接続部分Nを中心に屈曲可能であるから、トンネルTの線形が曲線状である場合でもトンネルT内に沿って進行することが可能になる。
【0091】
また、図12に示すように、側壁部11(支柱113)の接続部分Nにおいてターンバックル51とは反対側の表面に、接続部分Nを保護するためのカバー55を設けてもよい。
【0092】
プロテクタユニットUが具備する移動式プロテクタ100の個数は任意である。また、プロテクタユニットUにおいて屈曲しない構成も本発明に係るプロテクタユニットUに包含される。プロテクタユニットUを構成する各移動式プロテクタ100を上述した移動方法で移動させることで、当該プロテクタユニットUを移動させることが可能である。
【0093】
<変形例>
以上に例示した形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を適宜に併合することも可能である。
【0094】
(1)図22は、変形例に係る移動式プロテクタ100の構成図である。図22に例示する通り、変形例に係る移動式プロテクタ100は、移動式プロテクタ100の横を通行する車両が操作を誤った場合に移動式プロテクタ100に衝突するのを防ぐためのガードレールと、移動式プロテクタ100の走行時の追突衝撃緩和装置と逸走防止ストッパーを含む安全装置を具備する。ガードレールは、例えば、y方向に沿って延在する長尺状の部材であり、側壁部11(例えば支柱113や下桁111)の側面またはタイヤ20の側面に設置される。ガードレールを設ける位置は、車両が通過する位置に応じて適宜に変更される。例えば、側壁部11(またはタイヤ20)におけるX方向の正側および負側の双方の側面に設置される場合や、何れか一方の側面にのみ設置される場合が想定される。
【0095】
追突衝撃緩和装置は、仮に移動式プロテクタ100が逸走して追突した場合に、追突の衝撃を塑性変形して緩衝するための部材である。例えば、追突衝撃緩和装置は、側壁部11におけるy方向の端部(図22では支柱113)における表面に設置される。安全装置は、トンネルの縦断勾配が大きく、特に縦断勾配が3%以上となるような場合に必要になる。
【0096】
また、図22に示すように、移動式プロテクタ100が逸走した場合のストッパーとして逸走防止ストッパーを設置してもよい。逸走防止ストッパーは、レールRのうち移動式プロテクタが位置する前方および後方(すなわち移動式プロテクタからみてy方向の負側および正側)に設置する。なお、移動式プロテクタの移動に伴い、逸走防止ストッパーの場所は適宜盛替え変更する。
【0097】
一方、移動式プロテクタ100の停止時は、荷重受け装置40を地面に当接して移動式プロテクタ100を支持しているので、移動式プロテクタ100がレール上に停止しているが、縦断勾配による作動力など想定外の力が作用しても停止時に移動式プロテクタ100が移動しないように、移動式プロテクタ100にレールクランプ(図示略)を備えレールを把持してもよい。レールクランプを設置する位置は、先導の移動式プロテクタ100aの前方と後続の移動式プロテクタ100bの後方が望ましく、安全のため縦断勾配に関係なく設置する。
【0098】
(2)前述の各形態では、下桁111が第1部分91と第2部分92とを含む構成を例示したが、下桁111の構成は任意である。下桁111が第1部分91と第2部分92とは異なる部分を含んでもよいし、側壁部11のy方向の負側の端部から正側の端部にかけて高さ方向(z方向)の位置が一定である下桁111を採用してもよい。
【0099】
(3)前述の形態において、トンネルの拡幅工事をする際に移動式プロテクタ100を使用する場面を想定したが、移動式プロテクタ100を使用する場面は以上の例示に限定されない。例えば、切土、斜面防護工事等において車両の通行を確保するために移動式プロテクタ100を使用してもよい。以上の説明から理解される通り、本発明に係る移動式プロテクタ100は、車両の通行を確保しつつ道路に関する工事を可能にするために使用される。道路に関する工事は、例えば、トンネル内の道路の拡幅工事や、切土、斜面防護工事等である。ただし、道路に関する工事は以上の例示に限定されない。
【0100】
(4)前述の形態では、電動式のタイヤ20により移動式プロテクタ100を移動する構成を例示したが、移動式プロテクタ100を移動させる方法(すなわちタイヤ20を回転させる方法)は任意である。例えば、移動式プロテクタ100をウィンチで牽引することで移動させてもよい。具体的には、移動式プロテクタ100の進行方向の前方にアンカーを設置し、当該アンカーにウィンチを接続する。そして、アンカーに接続されたウィンチで移動式プロテクタ100を牽引する。なお、移動式プロテクタ100をウィンチで牽引する際は、フレーム部10が歪むことを防止するために、双方の側壁部11を連結する棒状の部材を設けてもよい。例えば、双方の側壁部11におけるタイヤ20の付近(例えば第1部分91)を接続する。
【0101】
また、移動式プロテクタ100を進行方向の逆側から押圧する押圧装置(例えば油圧ジャッキ)により移動式プロテクタ100を移動させてもよい。押圧装置により押圧された移動式プロテクタ100は進行方向に沿って移動する。ウィンチや押圧装置により移動式プロテクタ100を移動させる方法は、モーターを設置するスペースが側壁部11にない場合に好適である。また、ウィンチや押圧装置を使用する構成は、モーターを使用する構成と比較して、費用を低減できるという利点もある。
【0102】
さらに、プロテクタユニットUを移動させる場合には、進行方向にバックホウ等の重機を位置させ、先導の移動式プロテクタ100aの先頭部にワイヤーを繋ぎ、後続の移動式プロテクタ100bとともに一緒に牽引して移動させてもよい。また、移動する重量を軽減するため、以下の手順でプロテクタユニットUを移動させてもよい。まず、接続機構50による接続を一旦解除して、先導の移動式プロテクタ100aと後続の移動式プロテクタ100bとを切り離し、個別に重機による牽引を可能にする。次に、先導の移動式プロテクタ100aを前方に移動させた後、後続の移動式プロテクタ100bも前方に移動させることで、先導の移動式プロテクタ100aの後部まで移動させる。そして、接続機構50を再度接続して、先導の移動式プロテクタ100aと後続の移動式プロテクタ100bを一体化させる。ただし、重機により牽引させる方法は移動式プロテクタ100の進行方向のスペースが十分に確保できる場合に限られる。以上の説明から理解される通り、タイヤ20を回転させる方法(すなわち移動式プロテクタ100を移動させる方法)は任意である。
【符号の説明】
【0103】
1 :側壁部
10 :フレーム部
11 :側壁部
11A :第1側壁部
11B :第2側壁部
13 :上壁部
20A :タイヤ
20B :車輪
30 :保持機構
31 :軸受部
32 :支持部材
33 :保持部材
40 :荷重受け装置
50 :接続機構
51 :ターンバックル
52 :ピン部材
53 :ピンガイド
55 :カバー
57 :打ち抜きピン
591 :補強当て板
592 :補強当て板
70 :蓋部材
71 :蝶番
73 :円柱ゴムホース
75 :内部蓋部材
91 :第1部分
92 :第2部分
100 :移動式プロテクタ
111 :下桁
112 :上桁
113 :支柱
330 :ウェブ部
131 :横梁
132 :架台
201 :第1領域
202 :第2領域
203 :第3領域
511 :第1軸部
512 :第2軸部
N :接続部分
O :回転軸
R :レール
R1 :第1レール部
R2 :第2レール部
S :カバー
U :プロテクタユニット
Q1 :ピン用穴
Q2 :ピン用穴
r1 :第1部材
r2 :第2部材
r3 :第3部材
r4 :第4部材
r5 :第5部材
図1
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図22