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特開2022-37907移動式プロテクタ、移動式プロテクタの移動方法、移動式プロテクタの設置方法、プロテクタユニット、および、プロテクタユニットの移動方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037907
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】移動式プロテクタ、移動式プロテクタの移動方法、移動式プロテクタの設置方法、プロテクタユニット、および、プロテクタユニットの移動方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/01 20060101AFI20220302BHJP
   E21D 11/40 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
E21D9/01
E21D11/40 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133431
(22)【出願日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2020142127
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301031392
【氏名又は名称】国立研究開発法人土木研究所
(71)【出願人】
【識別番号】593089046
【氏名又は名称】青木あすなろ建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】310005294
【氏名又は名称】北陸鋼産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】日下 敦
(72)【発明者】
【氏名】巽 義知
(72)【発明者】
【氏名】高山 慎介
(72)【発明者】
【氏名】岩田 航司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕之
(72)【発明者】
【氏名】廣松 直人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊男
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 一大
(72)【発明者】
【氏名】野村 和範
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155AA02
2D155BB02
2D155GB11
2D155LA17
(57)【要約】
【課題】プロテクタを移動するための手間が軽減される。
【解決手段】本発明の好適な態様に係る移動式プロテクタは、車両の通行を確保しつつ道路に関する工事を可能にするプロテクタであって、相互に対向する2つの側壁部と、当該2つの側壁部の上部を連結する上壁部とを含むフレーム部と、当該プロテクタの高さ方向において、第1位置と当該第1位置よりも上方側にある第2位置との間で移動するタイヤとを具備し、地面を移動可能な移動状態と、当該地面において固定される固定状態とをとり、前記移動状態においては、前記タイヤは、前記第1位置にあることで地面に当接し、前記第2部分は、地面から離間し、前記固定状態においては、前記タイヤは、前記第2位置にあることで地面から離間し、前記第2部分は、地面に当接する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の通行を確保しつつ道路に関する工事を可能にするプロテクタであって、
相互に対向する2つの側壁部と、当該2つの側壁部の上部を連結する上壁部とを含むフレーム部と、
当該プロテクタの高さ方向において、第1位置と当該第1位置よりも上方側にある第2位置との間で移動するタイヤとを具備し、
前記各側壁部の下部は、前記タイヤが設置される第1部分と、当該第1部分よりも下方側にある第2部分とを含み、
前記タイヤが第1位置にある場合には、当該タイヤにおける下端部は前記第2部分における下端部よりも下方側にあり、
前記タイヤが第2位置にある場合には、当該タイヤにおける下端部は前記第2部分における下端部よりも上方側にあり、
当該プロテクタは、地面を移動可能な移動状態と、当該地面において固定される固定状態とをとり、
前記移動状態においては、
前記タイヤは、前記第1位置にあることで地面に当接し、
前記第2部分は、地面から離間し、
前記固定状態においては、
前記タイヤは、前記第2位置にあることで地面から離間し、
前記第2部分は、地面に当接する
移動式プロテクタ。
【請求項2】
前記タイヤを前記第1位置と前記第2位置とに保持し、第1部材と第2部材とを含む保持機構を具備し、
前記第1部材は、前記高さ方向に沿った長尺状の部材であり、一端側に前記タイヤが接続され、他端側が前記第1部分に形成される設置孔に挿入され、
前記第1部材には、前記高さ方向における相異なる位置おいて、当該高さ方向に交差する方向に沿って貫通する第1貫通孔および第2貫通孔が形成され、
前記第1貫通孔は、前記第2貫通孔よりも前記上方側に形成され、
前記第2部材は、前記高さ方向に交差する方向に沿った長尺状の部材であり、
前記タイヤは、
前記第1貫通孔に前記第2部材が挿入されることで前記第1位置に保持され、
前記第2貫通孔に前記第2部材が挿入されることで前記第2位置に保持される
請求項1の移動式プロテクタ。
【請求項3】
前記タイヤは電動式である
請求項1または請求項2の何れかの移動式プロテクタ。
【請求項4】
前記フレーム部は、長尺状であり、
前記タイヤは、
前記高さ方向に沿った軸を中心として回転することで、
前記フレーム部の長手方向と、前記フレーム部の短手方向とに進行方向を変更することが可能である
請求項1から請求項3の何れかの移動式プロテクタ。
【請求項5】
前記フレーム部は、昇降装置により前記高さ方向に移動可能であり、
当該プロテクタが前記固定状態にある場合において、前記昇降装置により前記フレーム部を上方側に移動させて前記第2部分を地面から離間させた後に、前記タイヤが前記第2位置から前記第1位置に移動可能になり、
当該プロテクタが前記移動状態にある場合において、前記昇降装置により前記フレーム部を上方側に移動させて前記タイヤを地面から離間させた後に、前記タイヤが前記第1位置から前記第2位置に移動可能になる
請求項1から請求項4の何れかの移動式プロテクタ。
【請求項6】
前記昇降装置を前記第1部分に具備する
請求項5の移動式プロテクタ。
【請求項7】
請求項5または請求項6の移動式プロテクタを移動する方法であって、
当該移動式プロテクタが前記固定状態にある場合に、前記昇降装置により前記フレーム部を上方側に移動させて、前記第2部分を地面から離間させる第1工程と、
前記第2位置から前記第1位置に前記タイヤを移動し、当該タイヤを地面に当接させることで、当該移動式プロテクタを前記移動状態にする第2工程と、
前記タイヤを進行方向に沿って回転させることで前記移動式プロテクタを移動させる第3工程と、
前記昇降装置により前記フレーム部を上方側に移動させて前記タイヤを地面から離間させた状態で、前記第1位置から前記第2位置に前記タイヤを移動させる第4工程と、
前記昇降装置により前記フレーム部を下方側に移動し、地面に当接させることで、当該移動式プロテクタを前記固定状態にする第5工程とを
含む移動式プロテクタの移動方法。
【請求項8】
前記第1工程と前記第2工程との間に、前記タイヤの進行方向を変更する工程を含む 請求項7の移動式プロテクタの移動方法。
【請求項9】
請求項1から請求項6の何れかの複数の移動式プロテクタと、
前記複数の移動式プロテクタにおいて、相互に隣り合う2つの移動式プロテクタを前記各フレーム部により形成される空間が連結するように接続する接続機構とを具備し、
前記2つの移動式プロテクタが接続される接続部分を中心に屈曲可能である
プロテクタユニット。
【請求項10】
前記接続部分には、前記移動式プロテクタの内部への浸水を防ぐための開閉可能な蓋部材を具備する
請求項9のプロテクタユニット。
【請求項11】
請求項9または請求項10のプロテクタユニットを所望の地点まで移動させる方法であって、
測量と、当該プロテクタユニットの長手方向および短手方向の少なくとも一方への移動とにより前記地点まで移動させる
プロテクタユニットの移動方法。
【請求項12】
請求項1から請求項6の何れかの移動式プロテクタを工事対象となる道路に設置する方法であって、
当該移動式プロテクタを前記道路の外部にあるヤードにおいて組み立てた後に、前記ヤードから移動させて当該移動式プロテクタを前記道路に設置する
移動式プロテクタの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の通行を確保しつつ道路に関する工事を可能にするプロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トンネルの築造後に交通量を増加させる拡幅工事にプロテクタが使用される。トンネル内の道路を覆うように設置されるプロテクタの内部において車両が通行可能である。一方で、プロテクタの外部において、各種の作業機器(例えば高所作業車または掘削機など)により工事が行われる。プロテクタは、工事に伴う落下物や飛来物から車両や道路を保護することも可能になる。
【0003】
また、プロテクタは、トンネルにおける拡幅工事以外にも、例えば、切土、斜面防護工事において車両を保護するために使用される。
【0004】
以上のようなプロテクタとしては、従来、工事の対象となるトンネルの全長にわたり固定して設置される固定式プロクテクタが使用された。しかし、固定式プロテクタは、トンネルの全長にわたり設置する必要があるため、手間がかかるばかりか、費用も高価になる。そこで、近年では、特許文献1から特許文献5の技術のように、トンネル内を移動可能な移動式プロテクタが使用される。移動式プロテクタでは、プロテクタをトンネルの全長にわたり設置する必要がなく、プロテクタの長さを短縮することが可能になる。したがって、移動式プロテクタでは、固定式プロテクタよりも、設置の手間もかからず費用も低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-28175号公報
【特許文献2】特開2002-250044号公報
【特許文献3】特開2003-278476号公報
【特許文献4】特開2004-92072号公報
【特許文献5】特開2006-57370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
具体的には、特許文献1から特許文献5の技術では、プロテクタの下部に車輪が設けられ、工事対象となる道路に車輪が移動可能なレールが設置される。そして、レール上を車輪が移動することで、プロテクタそのものが移動する。したがって、特許文献1から特許文献5の技術では、レール自体を設置する設置作業だけでなく、レールの設置作業の前に当該レールの敷設位置を定めるための測量作業等も必要になる。以上の通り、特許文献1から特許文献5の技術では、移動式プロテクタを移動するための手間が非常にかかるという問題があった。以上の事情を考慮して、本発明では、移動のための手間を軽減する移動式プロテクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の好適な態様に係る移動式プロテクタは、車両の通行を確保しつつ道路に関する工事を可能にするプロテクタであって、相互に対向する2つの側壁部と、当該2つの側壁部の上部を連結する上壁部とを含むフレーム部と、当該プロテクタの高さ方向において、第1位置と当該第1位置よりも上方側にある第2位置との間で移動するタイヤとを具備し、前記各側壁部の下部は、前記タイヤが設置される第1部分と、当該第1部分よりも下方側にある第2部分とを含み、前記タイヤが第1位置にある場合には、当該タイヤにおける下端部は前記第2部分における下端部よりも下方側にあり、前記タイヤが第2位置にある場合には、当該タイヤにおける下端部は前記第2部分における下端部よりも上方側にあり、当該プロテクタは、地面を移動可能な移動状態と、地面において固定される固定状態とをとり、前記移動状態においては、前記タイヤは、前記第1位置にあることで地面に当接し、前記第2部分は、地面から離間し、前記固定状態においては、前記タイヤは、前記第2位置にあることで地面から離間し、前記第2部分は、地面に当接する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の移動式プロテクタによれば、移動のための手間を軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】移動式プロテクタの構成を例示する構成図(正面図)である。
図2】移動式プロテクタの構成を例示する構成図(側面図)である。
図3】タイヤが第1位置にある場合の側面図である。
図4】タイヤが第2位置にある場合の側面図である。
図5】タイヤ付近の正面図である。
図6】移動式プロテクタの構成を例示する構成図(正面図)である。
図7図6におけるタイヤ付近の側面図である。
図8】移動式プロテクタを移動させる方法の説明図である。
図9】進行方向を変更する工程の説明図である。
図10】比較例に係るプロテクタの構成図である。
図11】移動式プロテクタを設置する方法の説明図である。
図12】プロテクタユニットの上面図である。
図13】プロテクタユニットの側面図である。
図14図13におけるa-a線の断面図である。
図15図14におけるa-a線の断面図である。
図16】他の形態に係るプロテクタユニットの側面図である。
図17図16におけるa-a線の断面図である。
図18図16におけるb-b線の断面図である。
図19図16におけるc-c線の断面図である。
図20図17におけるa-a線の断面図である。
図21】蓋部材の側面図である。
図22】施工時における蓋部材の側面図である。
図23】移動時における蓋部材の側面図である。
図24】プロテクタユニットの移動手順の説明図である。
図25】プロテクタユニットの移動手順の説明図である。
図26】変形例に係る昇降装置の構成図である。
図27】変形例に係る移動式プロテクタを固定状態から移動状態に遷移させる方法の説明図である。
図28】変形例に係る移動式プロテクタを固定状態から移動状態に遷移させる方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<移動式プロテクタ>
本実施形態に係る移動式プロテクタ100を説明する。本発明においてプロテクタとは、既設のトンネル内において道路を覆うように設置され、車両の通行を確保したまま、当該トンネルの工事(例えば拡幅工事)を可能にする装置である。本発明の移動式プロテクタ100は、地面を移動可能なプロテクタである。
【0011】
図1および図2は、本実施形態に係る移動式プロテクタ100の構成図である。図1は正面図(トンネルTの坑口側からみた図)であり、図2は側面図(トンネルTの側面側からみた図)である。移動式プロテクタ100は、トンネルTが延在する方向に沿うように長尺状に形成される。なお、移動式プロテクタ100は、計画上必要とする長さ分の台数を接続するが、図2では、2つの移動式プロテクタ100が接続された状態を図示する。
【0012】
以下の説明では、移動式プロテクタ100の短手方向(幅方向)をx方向と表記し、移動式プロテクタ100の長手方向(長さ方向)をy方向と表記する。また、x方向とy方向とを含む平面に垂直な方向をz方向と表記する。すなわち、z方向は、移動式プロテクタ100の上下方向(高さ方向)である。なお、移動式プロテクタ100をトンネルT内に設置した状態では、x方向はトンネルT(道路)の幅方向に略平行であり、y方向はトンネルT(道路)の長さ方向に略平行であり、z方向はトンネルTの高さ方向に略平行であるとも換言できる。なお、z方向の正側は「上方側」の例示であり、z方向の負側は「下方側」の例示である。
【0013】
図1および図2に例示される通り、移動式プロテクタ100は、フレーム部10と複数のタイヤ20と保持機構30と昇降装置40とを具備する。フレーム部10は、道路を覆う部材であり、正面視において略門型に形成される。具体的には、フレーム部10は、2つの側壁部11と上壁部13とを具備する。
【0014】
図1に例示される通り、2つの側壁部11は、正面視において、z方向に沿って延在する部分であり、x方向において相互に対向するように設置される。
【0015】
図2に例示される通り、各側壁部11は、例えば、下桁111(「側壁部の下部」の例示)と、上桁112(「側壁部の上部」の例示)と、支柱113と、筋交い114とを含む。
【0016】
下桁111は、側面視において、z方向の負側(下方側)においてy方向に沿う長尺状の部分である。本実施形態に係る下桁111は、1つ以上の第1部分91と1つ以上の第2部分92とを含む。図2では、下桁111が、2つの第1部分91と1つの第2部分92とで構成される場合を例示する。ただし、第1部分91と第2部分92との個数は任意である。第1部分91と第2部分92とが交互に設置される。具体的には、y方向に沿って、一方の第1部分91と他方の第1部分91との間に第2部分92が位置する。
【0017】
第2部分92は第1部分91よりもz方向の負側(すなわち下方側)に位置する。すなわち、第2部分92が第1部分91よりも地面W(道路の表面)に近い位置にある。なお、第1部分91が第2部分92よりも上桁112に近い位置にあるとも換言できる。第1部分91の長さ(y方向の大きさ)と第2部分92の長さとは任意であるが、図2では、第1部分91よりも第2部分92の長さが長い場合を例示する。
【0018】
上桁112は、z方向の正側(上方側)においてy方向に沿う長尺状の部分である。本実施形態では、1つの部材により上桁112が形成される。
【0019】
支柱113は、z方向に沿う長尺状の部分であり、下桁111と上桁112とを連結する。本実施形態では、複数(図2では5つ)の支柱113が所定の間隔で設けられる。図2では、各第1部分91における双方の端部(y方向の負側および正側の端部)と、第2部分92における双方の端部(y方向の負側および正側の端部)と、第2部分92の中央部分とに対応する位置に、それぞれ支柱113が設置される。なお、支柱113の個数は図2の例示に限定されない。
【0020】
筋交い114は、相互に隣り合う2つの支柱113を連結する部材である。2つの筋交い114は、隣り合う2つの支柱113の間を対角線状に沿って連結する。なお、以上の説明では、下桁111と上桁112と支柱113と筋交い114とで側壁部11を形成する構成を例示したが、側壁部11の具体的な構成は、以上の例示に限定されない。
【0021】
図1に例示される通り、上壁部13は、正面視において、x方向に沿って延在する部分であり、2つの側壁部11の上桁112を連結する。
【0022】
図2に例示される通り、本実施形態の上壁部13は、複数の横梁131と架台132とを具備する。各横梁131は、x方向に沿った長尺状の部材であり、一方の側壁部11の上桁112から他方の側壁部11の上桁112にかけて形成される。y方向に沿って所定の間隔をあけて各横梁131が設置される。架台132は、複数の横梁131上にわたり設置される板状の部材である。
【0023】
タイヤ20は、地面W(道路の表面)に当接した状態で回転することで、移動式プロテクタ100を移動可能にする移動機構である。例えば、移動式プロテクタ100の重量に耐え得るユニークタイヤ(ノーパンクタイヤ)がタイヤ20として好適に利用される。例えば、タイヤ20は、電気が供給されることで回転するモーターにより駆動される電動式である。本発明に係るタイヤ20はレールを必要とすることなく走行可能である。モーターは、例えば、複数のタイヤ20の各々について、タイヤ20の付近に設置される。ただし、モーターをタイヤ20毎に設けることは必須ではない。例えば、各側壁部11に設置される2つのタイヤ20のうちの一方についてモーターを設けてもよい。
【0024】
また、各モーターについて回転数を可変に設定する構成(すなわちインバータが搭載されたインバータ式モーター)も採用され得る。インバータ式モーターを搭載する構成では、発進および停止時に速度を微調整できるので、急発進や急停止が抑制できるため安全である。また、以上の構成では、例えば、一方の側壁部11と他方の側壁部11とについて設置されるモーターの回転数を相違させてもよい。なお、タイヤ20の回転を制止するためのブレーキを移動式プロテクタ100に設けてもよい。
【0025】
本実施形態のタイヤ20は、側壁部11の第1部分91に設置される。具体的には、側壁部11における第1部分91の底面において道路に対向するようにタイヤ20が設置される。なお、図2では、第1部分91毎に1つのタイヤ20が設置される構成を例示する。ただし、第1部分91に設置されるタイヤ20の個数は任意である。
【0026】
具体的には、タイヤ20は、z方向(プロテクタの高さ方向)において移動可能である。具体的には、タイヤ20は、z方向における第1位置と第2位置(第1位置よりも上方側にある位置)との間で移動する。図3は、タイヤ20が第1位置にある場合の側面図であり、図4は、タイヤ20が第2位置にある場合の側面図である。図3および図4には、タイヤ20の下端部Qa(z方向の負側の端部)と、側壁部11における第2部分92の下端部Qb(z方向の負側の端部)とが図示されている。
【0027】
タイヤ20が第1位置にある場合には、当該タイヤ20における下端部Qaは第2部分92における下端部Qbよりも下方側(z方向の負側)にある。一方で、タイヤ20が第2位置にある場合には、当該タイヤ20における下端部Qaは第2部分92における下端部Qbよりも上方側(z方向の正側)にある。なお、第1位置は第2位置よりも第1部分91に近い位置であるとも換言できる。
【0028】
保持機構30は、タイヤ20を第1位置と第2位置とに保持するための機構である。図5は、y方向からみたときのタイヤ20付近の正面図である。具体的には、保持機構30は、第1部材31と第2部材32とを具備する。
【0029】
第1部材31は、z方向に沿った長尺状の部材である。例えば、第1部材31の断面形状は円形である。第1部材31の一端(z方向の負側の端部)には、タイヤ20が接続される。なお、タイヤ20の回転を阻害することなく接続することが可能であれば、第1部材31の一端にタイヤ20を接続する方法は任意である。例えば、図5では、タイヤ20の回転軸Oを保持する保持部材Jを介して、第1部材31の一端がタイヤ20に間接的に接続される構成を例示する。なお、タイヤ20を駆動するためのモーターは、例えば保持部材Jに設置してもよい。ただし、モーターを設置する場所は以上の例示に限定されない。例えば、下桁111(例えば第1部分91)にモーターを搭載してもよい。
【0030】
一方で、第1部材31の他端(z方向の正側の端部)は、第1部分91に形成された設置孔Mに挿入される。設置孔Mは、第1部分91をz方向に沿って貫通する貫通孔である。第1部材31は、設置孔Mに挿入された状態で、z方向に移動可能である。
【0031】
具体的には、第1部材31には、z方向の相異なる位置に、第2部材32が挿入される第1貫通孔と第2貫通孔とが形成される。第1貫通孔および第2貫通孔は、z方向に交差する方向(図5ではx方向)に沿って第1部材31を貫通する。第1貫通孔は、タイヤ20の第1位置に対応する貫通孔であり、第2貫通孔は、タイヤ20の第2位置に対応する貫通孔である。第1貫通孔は、第2貫通孔よりもz方向の正側(上方側)に形成される。第1貫通孔よりもタイヤ20側に近い位置に第2貫通孔が形成されるとも換言できる。なお、第1貫通孔の個数および第2貫通孔の個数は任意である。
【0032】
第2部材32は、z方向に交差する方向(図5ではx方向)に沿った長尺状の部材である。例えば、第2部材32の断面形状は円形である。具体的には、第2部材32は、第1部材31が設置孔Mに挿入された状態で、第1貫通孔または第2貫通孔の何れかに挿入される。貫通孔に挿入された状態で、第2部材32の両端が貫通孔(第1貫通孔,第2貫通孔)の外部に突出するように、十分な長さで第2部材32が形成される。貫通孔に挿入された状態の第2部材32は第1部分91よりも下方側に位置する。そして、貫通孔に挿入された状態の第2部材32の両端に第1部分91の底面が当接する。図3に例示される通り、第1貫通孔に第2部材32が挿入されると、タイヤ20が第1位置に保持される。一方で、図4に例示される通り、第2貫通孔に第2部材32が挿入されると、タイヤ20が第2位置に保持される。
【0033】
以上の説明から理解される通り、保持機構30は、タイヤ20を第1位置または第2位置に保持した状態で、当該タイヤ20を側壁部11の第1部分91に固定するための機構である。なお、図5に例示するように、タイヤ20の側面において、タイヤ20を保護するためのカバーSを取り付けてもよい。
【0034】
本実施形態におけるタイヤ20は、進行方向を変更することが可能である。例えば、タイヤ20は、z方向に平行な軸Pを中心として回転することで(すなわちタイヤ20の向きを変えることで)、タイヤ20の進行方向を変えることが可能である。例えば、y方向(フレーム部10の長手方向)と、x方向(フレーム部10の短手方向)とに進行方向を切り替えることが可能である。例えば、タイヤ20は第1部材31に進行方向が変更できるように着脱可能に接続される。
【0035】
なお、x方向に沿って移動式プロテクタ100を移動させる場合は、移動装置(例えばウィンチ)により牽引することで移動式プロテクタ100を移動させる。例えば、進行方向の前方にアンカーを設置し、当該アンカーに接続された移動装置により移動式プロテクタ100を牽引する。ただし、移動装置を使用することは必須ではない。
【0036】
図1は、移動式プロテクタ100がy方向に沿って進行可能な場合を図示した。図1に例示される通り、タイヤ20の向きがy方向と平行である。一方で、図6は、x方向に沿って進行可能な状態の移動式プロテクタ100の構成図であり、図7は、図6におけるタイヤ20付近の側面図である。図6および図7に例示される通り、タイヤ20の向きがx方向に平行である。なお、本発明において、タイヤ20の進行方向はx方向とy方向とには限定されない。
【0037】
図2から図4に示される昇降装置40は、z方向(高さ方向)にフレーム部10を移動可能にする装置である。例えば、油圧ジャッキおよびスクリュー式ジャッキ等の各種のジャッキが昇降装置40として利用される。特に、スクリュー式ジャッキのうちジャーナルジャッキが昇降装置40として好適である。例えば、各側壁部11の第1部分91に昇降装置40が設置される。具体的には、昇降装置40は、下桁111における各第1部分91の底面においてタイヤ20の回転を阻害しない位置に設置される。本実施形態では、図2に例示される通り、側壁部11の下桁111におけるy方向の正側と負側の端部にそれぞれ昇降装置40が位置する。ただし、昇降装置40の個数や設置場所は任意である。なお、昇降装置40は、タイヤ20を第2位置にする場合に使用される。昇降装置40を使用する場合の詳細は後述する。
【0038】
ここで、本発明に係る移動式プロテクタ100は、地面Wを移動可能な状態(以下「移動状態」という)と、地面Wに固定された状態(以下「固定状態」という)とをとる。ここで、例えば、トンネルT内の道路を当該トンネルTの軸方向に沿って複数の区間(第1区間、第2区間、第3区間、…)にわけて順次に工事をする場合を想定する。すなわち、第1区間の工事が終わると、第1区間の隣に位置する第2区間の工事に移る。第1区間を工事する際には、移動式プロテクタ100は第1区間に固定状態で設置される。そして、第1区間の工事が終わると、移動式プロテクタ100は、固定状態から移動状態に切り替えられ、第2区間に移動する。そして、第2区間に移動した後に固定状態に切り替えられると、当該第2区間の工事が開始される。全ての区間の工事が完了するまで、以上のように、移動状態と固定状態とが切り替えられる。
【0039】
図3は、プロテクタが移動状態にある場合であり、図4は、プロテクタが固定状態にある場合が図示されている。図3の移動状態では、タイヤ20は第1位置にあることで地面Wに当接し、第2部分92は地面Wから離間する。すなわち、移動状態では、第2部分92が道路に固定されず、かつ、タイヤ20が地面W上で回転可能な状態にある。
【0040】
一方で、図4の固定状態では、第2部分92は地面Wに当接し、タイヤ20は第2位置にあることで地面Wから離間する。すなわち、固定状態では、第2部分92が道路に固定されていて、かつ、タイヤ20が機能しない状態にある。
【0041】
<移動式プロテクタ100の移動方法>
図8は、固定状態にある移動式プロテクタ100を移動させる方法(以下「移動方法」という)について説明する説明図である。本実施形態に係る移動方法は、工程Aから工程Fを含む。工程A、工程B、工程C、工程D、工程Eおよび工程Fがこの順番で実行される。
【0042】
まず、工程Aでは、地面Wに当接した状態の第2部分92を地面Wから離間させる。昇降装置40によりフレーム部10をz方向の正側(上方側)に移動させて、第2部分92を地面Wから離間させる。具体的には、昇降装置40を地面Wに当接させた状態でジャッキアップすることで、フレームを上方側に移動させる。
【0043】
次に、工程Bでは、第2位置にあるタイヤ20を第1位置に移動させることで、タイヤ20を地面Wに当接させる。具体的には、第1部材31の第2貫通孔から第2部材32を抜去し、第1部材31をz方向の負側(下方側)に移動させた後に、第2部材32を第1貫通孔に挿入する。したがって、タイヤ20が第1位置に移動し、図3に示すように、タイヤ20の下端部Qaが第2部分92の下端部Qbよりも下方側にある状態になる。
【0044】
工程Cでは、昇降装置40を地面Wから離間させる。したがって、タイヤ20のみが地面Wに当接している状態になる。すなわち、移動式プロテクタ100が移動可能な移動状態になる。そして、工程Dでは、タイヤ20を進行方向に沿って回転させることで、移動式プロテクタ100を移動させる。本実施形態では、Y方向に沿ってタイヤ20を回転させる。
【0045】
工程Dにより所望の位置まで移動式プロテクタ100を移動させた後は、工程Eにおいてタイヤ20を第1位置から第2位置に移動させる。まず、昇降装置40によりフレーム部10をz方向の正側(上方側)に移動させて、タイヤ20を地面Wから離間させる。次に、タイヤ20を第1位置から第2位置に移動させる。具体的には、第1部材31の第1貫通孔から第2部材32を抜去し、第1部材31をz方向の正側(上方側)に移動させた後に、第2部材32を第2貫通孔に挿入する。したがって、タイヤ20が第2位置に移動し、図4に示すように、タイヤ20の下端部Qaが第2部分92の下端部Qbよりも上方側にある状態になる。
【0046】
工程Fでは、昇降装置40によりフレーム部10を下方側に移動して地面Wに当接させる。具体的には、昇降装置40を地面Wに当接させた状態でジャッキダウンすることで、フレームを下方側に移動させる。すなわち、工程Fにより、移動式プロテクタ100が地面Wに固定された固定状態になる。
【0047】
以上の説明から理解される通り、移動式プロテクタ100が固定状態にある場合において、昇降装置40によりフレーム部10を上方側に移動させて第2部分92を地面Wから離間させた後に、タイヤ20が第2位置から第1位置に移動可能になる。また、移動式プロテクタ100が移動状態にある場合において、昇降装置40によりフレーム部10を上方に移動させてタイヤ20を地面Wから離間させた後に、タイヤ20が第1位置から第2位置に移動可能になる。
【0048】
なお、本実施形態では、移動式プロテクタ100に搭載される4つの昇降装置40は、2つの側壁部11においてy方向の負側に位置する2つの昇降装置40と、y方向の正側に位置する2つの昇降装置40とに区分される。例えば、y方向の一方側に位置する2つの昇降装置40をジャッキアップさせた後に、y方向の他方側に位置する2つの昇降装置40をジャッキアップさせる。ジャッキダウンについても同様である。
【0049】
上述した通り、タイヤ20の進行方向をy方向(長手方向)からx方向(短手方向)に切り替えることが可能である。進行方向をy方向からx方向に変更する場合には、図8の工程Aと工程Bとの間に、図9の工程Gを実行する。工程Gは、タイヤ20の進行方向を変更する工程である。具体的には、工程Aの後に、工程Gにおいて第1部材31に接続されるタイヤ20の向きをy方向からx方向に変更する。そして、工程Gの後に、工程Bにおいて、タイヤ20を第2位置から第1位置に移動させることで、タイヤ20を地面Wに当接させる。次に、工程Cにおいて昇降装置40を地面Wから離間させると、移動式プロテクタ100をx方向に移動できる移動状態になる。
【0050】
そして、工程Dにおいてx方向における所望の位置まで移動装置により移動式プロテクタ100を移動させた後は、工程Eと工程Fとが実行されて固定状態になる。なお、工程Eの後にタイヤ20の向きをy方向に変更してから工程Fが実行される。すなわち、タイヤ20の向きがy方向にある状態で固定状態にされる。
【0051】
なお、工程Aは「第1工程」の例示であり、工程Bおよび工程Cは「第2工程」の例示であり、工程Dは「第3工程」の例示であり、工程Eは「第4工程」の例示であり、工程Fは「第5工程」の例示である。
【0052】
図10には、本発明と比較する比較例に係る移動式プロテクタを図示する。図10に例示される通り、比較例は、レール上を走行する車輪を移動式プロテクタに設ける構成である。比較例では、レール自体を設置する設置作業だけでなく、レールの設置作業の前に当該レールの敷設位置を定めるための測量作業等も必要になる。すなわち、移動式プロテクタを移動するための手間がかかる。それに対して、本実施形態の移動式プロテクタ100は、レールを不要とするタイヤ20の回転により移動が可能になる。したがって、本実施形態によれば、レール自体を設置する設置作業だけでなく、レールの設置作業の前に当該レールの敷設位置を定めるための測量作業等が不要になる。ひいては、移動式プロテクタ100を移動させるための手間が軽減される。
【0053】
本実施形態では、タイヤ20の位置を第1位置と第2位置とで切り替えることで、移動状態と固定状態とを簡便に切り替えることができる。なお、固定状態では、タイヤ20が道路の表面から離間した状態で第2部分92が道路の表面に当接するから、タイヤ20に負荷をかけることなく工事が可能になる。
【0054】
また、本実施形態に係る移動式プロテクタ100は、上壁部13を工事用の装置や資材等を載置可能な作業台車としても利用可能である。すなわち、本発明に係る移動式プロテクタ100は作業台車としても併用できる。したがって、移動式プロテクタ100とは別個の作業台車を設置する必要がないという利点もある。
【0055】
<移動式プロテクタの設置方法>
図11は、移動式プロテクタ100を工事対象となる道路に設置する方法(以下「設置方法」という)を説明する説明図である。本実施形態では、トンネル内の道路を工事対象の道路として例示し、当該道路のうちトンネルの坑口付近の位置に設置する場合の設置方法を例示する。
【0056】
以下の(1)から(3)の手順で移動式プロテクタ100が設置される。
(1)移動式プロテクタ100をトンネル坑外(すなわち工事対象となる道路の外部)にあるヤード内で組み立てる。この際は、全面通行が可能である。
(2)全線通行止めにした状態で、ヤードから移動させて移動式プロテクタ100をトンネルの坑口付近に設置する。なお、移動式プロテクの移動方法は、上述した通りである。
(3)片側交互通行にし、全線通行止めを解除する。
【0057】
ここで、比較例に係る移動式プロテクタ(両側壁部にレール上を移動可能とする車輪が設置される構成)をトンネルの坑口付近に設置する場合を説明する。まず、トンネル外部のヤード内で組み立てた後、道路を全面通行止めにしてレールをヤードから坑口付近まで敷設する。そして、クレーン等を用いてレールの上に載置した移動式プロテクタを移動させてトンネル入口付近に設置する。比較例では、移動式プロテクタを設置した後にレールを撤去するまで全面通行止めを解除することはできない。すなわち、比較例では、移動式プロテクタを坑口付近に設置するためにレールの敷設および撤去が必要なばかりか、全面通行止めをする期間が長いという問題があった。それに対して、本発明に係る移動式プロテクタ100によれば、レールの敷設および撤去が不要であり、さらには全面通行止めをする期間が短くすることが可能である。
【0058】
<プロテクタユニット>
複数の移動式プロテクタ100が相互に接続されたプロテクタユニットUについて説明する。図12は、本実施形態に係るプロテクタユニットUを上方からみた場合の上面図である。図12では、相互に隣り合う2つの移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとが接続されたプロテクタユニットUを例示する。本実施形態では、進行方向において、移動式プロテクタ100bが先導であり、移動式プロテクタ100aが後続する場合を例示する。ただし、移動式プロテクタ100aが先導であり、移動式プロテクタ100bが後続する構成でもよい。
【0059】
移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとは、各フレーム部10により形成される空間が連結するように接続される。プロテクタユニットUは、移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとが接続される部分(以下「接続部分」という)Nを中心に屈曲可能である。そして、プロテクタユニットUは屈曲した状態で所望の方向に進行可能である。したがって、図12に例示するように、線形が曲線状であるトンネルTに沿うように、プロテクタユニットUが移動できる。
【0060】
プロテクタユニットUは、移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとを接続する複数の接続機構50を具備する。2つの移動式プロテクタ100(100a,100b)におけるx方向の正側の側壁部11を接続する接続機構50と、2つの移動式プロテクタ100(100a,100b)におけるx方向の負側の側壁部11を接続する接続機構50とが設置される。
【0061】
図13は、接続部分Nにおける側面図(移動式プロテクタ100の外部からみたときの側面図)である。なお、図13では、便宜的に支柱113aおよび支柱113bの内部における構造を図示する。図14は、図13におけるa-a線の断面図である。図15は、図14におけるa-a線の断面図である。なお、図14には、平面視において移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとがなす角度θを模式的に図示する。なお、プロテクタユニットUが直線状にある場合は角度θが180度であり、プロテクタユニットUが屈曲している場合は角度θが180度以外の角度である。なお、図14ではプロテクタユニットUが屈曲している場合を例示するが、図15では、便宜的に角度θが180度である場合の断面図を図示する。
【0062】
本実施形態の接続機構50は、ターンバックル51とピン部材52とピンガイド53と具備する。ターンバックル51は、移動式プロテクタ100aの下桁111aにおける外側の表面と、移動式プロテクタ100bの下桁111bにおける外側の表面とを接続する部材である。下桁111における外側の表面とは、フレーム部10の内部空間とは反対側の表面である。下桁111aと下桁111bとの双方にわたり延在する長尺状のターンバックル51が利用される。
【0063】
図13から図15に例示される通り、下桁111aは、z方向に沿った第1軸部511を中心に回動可能なようにターンバックル51の一端に接続される。同様に、下桁111bは、z方向に沿った第2軸部512を中心に回動可能なようにターンバックル51の他端に接続される。すなわち、移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとは接続機構50を中心に相互に回動可能になる。その結果、角度θが変化することで、プロテクタユニットUが屈曲した状態をとることが可能になる。ターンバックル51は、所望の長さに変更することが可能である。ターンバックル51の長さに応じて、下桁111aと下桁111bとの間隔を調整することができる。
【0064】
なお、ターンバックル51を設置する位置は下桁111に限定されない。例えば、2つの移動式プロテクタ100の支柱113、上桁112または横梁131を接続するようなターンバックル51を設けてもよい。
【0065】
ピン部材52とピンガイド53とは、角度θを変化させるための部材である。そして、角度θは、所定の範囲(以下「屈曲範囲」という)内で変化し得る。屈曲範囲が大きいほど、角度θが180度から離れた角度をとることが可能になる。すなわち、移動式プロテクタ100aおよび移動式プロテクタ100bの一方が他方に対して大きく屈曲することが可能になる。
【0066】
ピン部材52は、ピン状の部材である。例えば、図13に例示される通り、移動式プロテクタ100aの複数の支柱113のy方向の正側の端部に位置する支柱113aと、移動式プロテクタ100bの複数の支柱113のうちy方向の負側の端部に位置する支柱113bとを接続するための2つのピン部材52が設けられる。ただし、ピン部材52を設ける位置および個数は任意である。なお、ピン部材52は、実際にはプロテクタユニットUの外側から確認できないが、図13では便宜的に図示されている。
【0067】
ピンガイド53は、ピン部材52毎に設けられ、当該ピン部材52の移動をガイドするための空間(以下「ガイド空間」という)が形成された部材である。図14に例示される通り、ピン部材52の一端521側は、支柱113bにおいて支柱113aと対向する位置に固定される。例えば、ピン部材52の一端521側は、支柱113bのウェブ部330bに設けられた貫通孔に挿通された状態で当該支柱113bに固定される。なお、支柱113bにはピン部材52を支持するためのブラケットが設けられる。角度θは、平面視においてピン部材52と支柱113aとがなす角度であるとも換言できる。
【0068】
例えば、ピン部材52に形成された貫通孔I(例えばx方向に沿った貫通孔)に挿入された棒状の固定部材を介して、当該ピン部材52が支柱113bに固定される。なお、本実施形態では、支柱113bに固定されるピン部材52の軸方向の位置が可変である。図15に例示される通り、例えば、ピン部材52の軸方向(y方向)における相異なる複数の位置に貫通孔Iが形成される。したがって、複数の貫通孔Iのうち固定部材を挿入する位置に応じて、支柱113bに固定されるピン部材52の軸方向の位置を変更することが可能になる。
【0069】
一方、ピンガイド53は、支柱113aにおいて支柱113bに固定されたピン部材52の他端522に対応する位置に設置される。具体的には、支柱113aのウェブ部330aのうち移動式プロテクタ100b側の面に設けられる。ピンガイド53のガイド空間に、ピン部材52の他端522が水平面内で移動可能な状態で挿入される。具体的には、ピン部材52の他端522はガイド空間において水平面内でスライドが可能である。他端522がガイド空間内において水平面内でスライドすることで、プロテクタユニットUが接続部分Nを中心として屈曲する。
【0070】
ピン部材52の他端522側がガイド空間内に挿入される量(以下「挿入量」という)に応じて、屈曲範囲は変化し得る。具体的には、挿入量が大きいほど(ピン部材52の他端522側がガイド空間に深く挿入されるほど)、屈曲範囲は小さくなる。一方で、挿入量が小さいほど(ピン部材52の他端522側がガイド空間に対して浅く挿入されるほど)、屈曲範囲は大きくなる。なお、挿入量が大きい場合は、他端522がガイド空間の入り口から離れた位置でスライドし、挿入量が小さい場合は、他端522がガイド空間の入り口付近でスライドする。
【0071】
挿入量は、ターンバックル51の長さに応じて変更可能である。ターンバックル51の長さが長いほど(すなわち移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの間隔が大きいほど)、挿入量が小さくなる。すなわち、屈曲範囲が大きくなる。一方で、ターンバックル51の長さが短いほど(すなわち移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの間隔が小さいほど)、挿入量が大きくなる。すなわち、屈曲範囲が小さくなる。
【0072】
また、挿入量は、支柱113bに固定されるピン部材52の軸方向の位置に応じて変更可能である。具体的には、ピン部材52を一端521に近い位置で支柱113bに固定するほど、挿入量が大きくなる。すなわち、屈曲範囲が小さくなる。一方で、ピン部材52を一端521から遠い位置で支柱113bに固定するほど、挿入量が小さくなる。すなわち、屈曲範囲が大きくなる。上述した通り、支柱113bに固定されるピン部材52の軸方向の位置は、複数の貫通孔Iのうち固定部材を挿入する貫通孔Iに応じて変更可能である。なお、ターンバックル51の長さと、ピン部材52の一端521側を固定する位置とは、作業者が適宜に変更し得る。
【0073】
移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの位置調整は、以下の手順で行う。
(1)移動式プロテクタ100bのウェブ部330bに設けられた貫通孔に移動式プロテクタ100aとは反対側からピン部材52を打ち込み固定することで、移動式プロテクタ100aの高さと移動式プロテクタ100bの高さとが揃うように調整する。具体的には、
ピンガイド53のガイド空間内に他端522が挿通されるように、ピン部材52がウェブ部330bの貫通孔に打ち込まれる。
(2)調整された方の移動式プロテクタ100の下部(下桁111と地面との間)に調整ライナー材を入れる。
(3)双方の移動式プロテクタ100に連結用のターンバックル51を取り付け、位置調整を行う。
【0074】
また、移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの連結を解除する場合には、必要に応じて、貫通孔Iに挿入された固定部材を抜き、ピン部材52を取り外す。
【0075】
本実施形態では、支柱113bにピン部材52を固定し、支柱113aにピンガイド53を設ける構成を例示したが、プロテクタユニットUが屈曲した状態で所望の方向に進行可能であれば、支柱113aにピン部材52を固定し、支柱113bにピンガイド53を設けてもよい。
【0076】
以下、接続機構50の他の形態に係る構成を例示する。
【0077】
図16は、図13に対応するプロテクタユニットUの側面図であり、図17は、図16のa-a線の断面図であり、図18は、図16のb-b線の断面図であり、図19は、図16のc-c線の断面図である。図20は、図17におけるa-a線の断面図である。なお、図17ではプロテクタユニットUが屈曲している場合を例示するが、図20では、便宜的に角度θが180度である場合の断面図を図示する。
【0078】
図16から図20における接続機構50では、上述のピン部材52に代えて打ち抜きピン57を具備し、ピンガイド53が省略される構成を例示する。打ち抜きピン57は、ピン状の部材である。
【0079】
図17図18および図20に例示される通り、支柱113bが挿通される円形のピン用穴Q2が設けられる。具体的には、支柱113bのウェブ部330bに取り付けられた補強当て板592と当該ウェブ部330bとの双方を貫通するようにピン用穴Q2が設けられる。打ち抜きピン57は、移動式プロテクタ100aとは反対側からピン用穴Q2に打ち込まれて固定される。
【0080】
図17図19および図20に例示される通り、支柱113aには、ピン用穴Q2に打ち込まれた状態の打ち抜きピン57の他端571が挿通される長円形(水平方向に長尺な円形)のピン用穴Q1が設けられる。具体的には、支柱113aのウェブ部330aに取り付けられた補強当て板591と当該ウェブ部330aとの双方を貫通するようにピン用穴Q1が設けられる。打ち抜きピン57の他端571は、ピン用穴Q1に挿通された状態で水平面内において移動可能である。
【0081】
打ち抜きピン57とピン用穴Q1とは、屈曲範囲を所望の範囲内にするための部材であるとも換言できる。屈曲範囲が大きいほど、角度θが180度から離れた角度をとることが可能になる。すなわち、移動式プロテクタ100aおよび移動式プロテクタ100bの一方が他方に対して大きく屈曲することが可能になる。
【0082】
ピン用穴Q1が打ち抜きピン57の移動をガイドするためのガイド空間となり、打ち抜きピン57が水平面内で移動可能なように挿入される。具体的には、打ち抜きピン57の他端571はガイド空間において水平面内でスライドが可能である。他端571がガイド空間内において水平面内でスライドすることで、プロテクタユニットUが接続部分Nを中心として屈曲する。
【0083】
以上の説明から理解される通り、上述のピン部材52が貫通孔Iに挿入された棒状の固定部材を介して支柱113bに固定されたのに対して、打ち抜きピン57はピン用穴Q2に打ち込むことで支柱113bに固定される。
【0084】
移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの位置調整は、以下の手順で行う。
(1)移動式プロテクタ100aとは反対側から支柱113bのピン用穴Q2に打ち抜きピン57を打ち込むことで、移動式プロテクタ100aの高さと移動式プロテクタ100bの高さとが揃うように調整する。具体的には、移動式プロテクタ100aのピン用穴Q1に他端571が挿通されるように、打ち抜きピン57をピン用穴Q2に打ち込む。
(2)調整された方の移動式プロテクタ100の下部(下桁111と地面との間)に調整ライナー材を入れる。
(3)双方の移動式プロテクタ100に連結用のターンバックル51を取り付け、位置調整を行う。
【0085】
また、移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの連結を解除する場合には、必要に応じて、打ち込まれた打ち抜きピン57を移動式プロテクタ100a側から打ち抜くことで取り外す。
【0086】
なお、図17から図20では、支柱113bに打ち抜きピン57を固定し、支柱113aにガイド空間を設ける構成を例示したが、プロテクタユニットUが屈曲した状態で所望の方向に進行可能であれば、支柱113aに打ち抜きピン57を固定し、支柱113bにガイド空間を設けてもよい。
【0087】
以上の説明では、プロテクタユニットUが屈曲可能なように移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとを接続する接続機構50を例示したが、接続機構50の具体的な構成は以上の例示には限定されない。接続機構50の具体的な構成は、移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとを進行可能なように接続することが可能であれば、任意である。
【0088】
ただし、プロテクタユニットUを曲線状にも移動可能にする観点からは、プロテクタユニットUを屈曲可能なように移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとを接続する構成が好適である。
【0089】
図21は、プロテクタユニットUにおいて接続部分Nの上方側に設置される蓋部材70の側面図である。蓋部材70は、移動式プロテクタ100の内部への浸水を防ぐための(止水するための)開閉可能な板状の部材である。移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの隙間を塞ぐことが可能な十分な大きさの蓋部材70を形成する。例えば、移動式プロテクタ100aの架台132に蝶番71を用いて設置される。蝶番71を中心に回転されることで、蓋部材70が開閉可能になる。
【0090】
図22に例示される通り、施工時には、蓋部材70を閉じて移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの隙間が露出しない状態にする。したがって、例えば、トンネル坑内から落下する水が移動式プロテクタ100の内部に浸入することを蓋部材70により阻止することができる。一方で、図23に例示される通り、プロテクタユニットUの移動時には、蓋部材70を開けて移動式プロテクタ100aと移動式プロテクタ100bとの移動が阻害されないようにする。
【0091】
なお、止水性能を向上させるため、移動式プロテクタ100aの架台132と移動式プロテクタ100bの架台132との間に、2つの円柱ゴムホース73と当該2つの間に位置する内部蓋部材75とを設けてもよい。一方の円柱ゴムホース73は移動式プロテクタ100aの架台132の縁に沿って設けられ、他方の円柱ゴムホース73は移動式プロテクタ100bの架台132の縁に沿って設けられる。
【0092】
以上の説明から理解される通り、本実施形態に係るプロテクタユニットUは、接続部分Nを中心に屈曲可能であるから、トンネルTの線形が曲線状である場合でもトンネルT内に沿って進行することが可能になる。
【0093】
また、図14に示すように、側壁部11(支柱113)の接続部分Nにおいてターンバックル51とは反対側の表面に、接続部分Nを保護するためのカバー55を設けてもよい。
【0094】
プロテクタユニットUが具備する移動式プロテクタ100の個数は任意である。また、プロテクタユニットUにおいて屈曲しない構成も本発明に係るプロテクタユニットUに包含される。プロテクタユニットUを構成する各移動式プロテクタ100を上述した移動方法で移動させることで、当該プロテクタユニットUを移動させることが可能である。
【0095】
<プロテクタユニットUの移動方法>
図24は、プロテクタユニットUを目標となる地点(以下「設置目標点」という)に移動させる際の移動方法を説明する説明図である。図24には、設置目標点(「所望の地点」の例示)であるA点、B点、C点およびD点が図示されている。A点、B点、C点およびD点は、平面視でみたときにプロテクタユニットUの4つの頂点(角部)が位置する地点である。A点およびB点は長手方向の前方側の頂点に対応する地点であり、C点およびD点は長手方向の後方側の頂点に対応する地点である。A点およびC点は短手方向(横方向)の一方側の頂点に対応する地点であり、B点およびD点は短手方向の他方側の頂点に対応する地点である。
【0096】
以下の(1)から(4)の手順でプロテクタユニットUが移動される。
(1)道路内におけるA点~D点に印をつける。具体的には、既知点である測量機の位置と、同様に既知点である基準点とを利用して三角測量を行い、事前に設定してあるA点~D点に対応する位置に印をつける。
(2)プロテクタユニットUをA点およびB点に向かい長手方向に沿って移動させる。具体的には、プロテクタユニットUにおいて長手方向(進行方向)の前方側の2つの頂点がA点およびB点に移動するように、当該プロテクタユニットUを移動する。
(3)プロテクタユニットUをB点およびD点(またはA点およびC点)に向かい短手方向に沿って移動させる。具体的には、プロテクタユニットUにおいて短手方向(進行方向)の前方側の2つの頂点がB点およびD点に移動するように、当該プロテクタユニットUを移動する。例えば、図24のように、プロテクタユニットUがA’点、B’点、C’点およびD’点(A点、B点、C点およびD点から短手方向の位置がずれている地点)にあるような場合には(3)を実行する。
(4)プロテクタユニットUの頂部がA点~D点に位置するまで、(2)および(3)を繰り返し実行する。そして、プロテクタユニットUの頂部がA点~D点に位置することを最終的に確認したら、移動を完了する。
【0097】
図25は、プロテクタユニットUの他の態様に係る移動方法を説明する説明図である。図25の移動方法では、プロテクタユニットUに複数のプリズムターゲットを設置する。例えば、プロテクタユニットUの4つの頂部にそれぞれプリズムターゲットが設置される。また、坑内側にプリズムターゲットを視準するためのトータルステーション(自動追尾式測距測角儀)も設置する。図25では、トータルステーションがプリズムターゲットを自動的に視準して自動追尾することが可能である。なお、図25の方法では、道路内においてA点~D点に印をつけることは不要である。
【0098】
図25では、以下の(1)から(3)の手順でプロテクタユニットUが移動される。
(1)プロテクタユニットUをA点およびB点に向かい長手方向に沿って移動させる。この際に、プロテクタユニットUのプリズムターゲットをトータルステーションで視準しながら設置目標点に向い誘導する。具体的には、プロテクタユニットUにおいて長手方向(進行方向)の前方側の2つの頂点に設置された2つのプリズムターゲットがA点およびB点に移動するように、当該プロテクタユニットUを誘導する。
(2)プロテクタユニットUをB点およびD点(またはA点およびC点)に向かい短手方向に沿って移動させる。(1)と同様に、プロテクタユニットUのプリズムターゲットをトータルステーションで視準しながら設置目標点に向い誘導する。具体的には、プロテクタユニットUにおいて短手方向(進行方向)の前方側の2つの頂点に設置された2つのプリズムターゲットがB点およびD点に移動するように、当該プロテクタユニットUを誘導する。例えば、図25のように、プロテクタユニットUがA’点、B’点、C’点およびD’点(A点、B点、C点およびD点から短手方向の位置がずれている地点)にあるような場合には(2)を実行する。
(3)プロテクタユニットUの頂部がA~D点に位置するまで、(1)および(2)を繰り返し実行する。そして、プロテクタユニットUの頂部がA~D点に位置することを最終的に確認したら、移動を完了する。
【0099】
以上の説明から理解される通り、プロテクタユニットUは、測量で設置目標点を定めた後に、長手方向および短手方向の少なくとも一方に沿って移動させることで、当該設置目標点に移動させることができる。
【0100】
<変形例>
以上に例示した形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を適宜に併合することも可能である。
【0101】
(1)前述の形態では、側壁部11の第1部分91の底面に昇降装置40が設置される構成を例示したが、昇降装置40が設置される場所は以上の例示に限定されない。例えば、図26に例示される通り、側壁部11の側面(x方向の正側または負側の表面)に昇降装置40を設置してもよい。例えば、第1部分91と上桁112とを接続するための支柱113の側面に昇降装置40が設置される。なお、下桁111の側面に昇降装置40を設置してもよい。以上の説明から理解される通り、昇降装置40は、側壁部11のうち第2部分92以外の任意の位置に設置される。
【0102】
(2)前述の形態では、移動式プロテクタ100が昇降装置40を具備する構成を例示したが、移動式プロテクタ100とは別個の昇降装置40を利用してもよい。また、フレーム部10を上方に移動させてタイヤ20を第2位置に移動させることができれば、フレーム部10を移動させる装置は昇降装置40に限定されない。
【0103】
(3)前述の形態において、移動式プロテクタ100の横を通行する車両が操作を誤った場合に、安全性を考慮して、移動式プロテクタ100に衝突するのを防ぐための防護機構を設けてもよい。防護機構は、例えば、y方向に沿って延在する長尺状の部材(例えばガードレール)であり、図1図2の側壁部11(例えば支柱113や下桁111)の側面またはタイヤ20の側面に設置される。なお、図1および図2では、防護機構の図示は省略する。防護機構を設ける位置は、車両が通過する位置に応じて適宜に変更される。例えば、側壁部11(またはタイヤ20)におけるX方向の正側および負側の双方の側面に設置される場合や、何れか一方の側面にのみ設置される場合が想定される。
【0104】
(4)前述の形態では、先導の移動式プロテクタ100aのタイヤ20と後続の移動式プロテクタ100bのタイヤ20とに、曲線状の線形において容易に追従できるような機構を搭載してもよい。例えば、図5において、タイヤ20が第1部材31(軸P)を中心として平面的に自在に回転できるような(すなわちタイヤ20の進行方向をx-y平面内において360°回転できるような)回転機構を設けてもよい。なお、図5では、回転機構の図示は省略する。回転機構は、例えば、第1部材31に対してタイヤ20を平面的に回転可能にする軸状の部材を含み、第1部材31のうち第2部材32と保持部材Jとの間の位置に設けられる。なお、回機機構にピン等を挿入してタイヤ20を下桁111に平行に固定できるようにしてもよい。回転機構を設けるタイヤ20は、先導の移動式プロテクタ100aと後続の移動式プロテクタ100bの双方か、先導の移動式プロテクタ100aが好適である。移動式プロテクタ100が予定通りの位置に移動できなかった場合には、回転機構を用いて短手方向へ移動させることで、移動式プロテクタを予定位置に移動することもできる。
【0105】
(5)前述の形態では、第1部材31と第2部材32とで構成される保持機構30を例示したが、保持機構30の構成は以上の例示に限定されない。例えば、第1部分91にもx方向に沿った貫通孔を形成し、第1部分91の貫通孔と第1部材31の貫通孔との双方に第2部材32が挿入されることで、タイヤ20を第1位置または第2位置に保持する構成を採用してもよい。また、第1位置に対応する複数の第1貫通孔と、第2位置に対応する複数の第2貫通孔を形成してもよい。以上の構成では、各貫通孔の個数と同等の個数の第2部材32が使用される。以上の説明から理解される通り、タイヤ20を第1位置と第2位置とに保持することが可能であれば、保持機構30の具体的な構成は任意である。
【0106】
(6)前述の形態において、トンネルの拡幅工事をする際に移動式プロテクタ100を使用する場面を想定したが、移動式プロテクタ100を使用する場面は以上の例示に限定されない。例えば、切土、斜面防護工事等において車両の通行を確保するために移動式プロテクタ100を使用してもよい。以上の説明から理解される通り、本発明に係る移動式プロテクタ100は、車両の通行を確保しつつ道路に関する工事を可能にするために使用される。道路に関する工事は、例えば、トンネル内の道路の拡幅工事や、切土、斜面防護工事等である。ただし、道路に関する工事は以上の例示に限定されない。
【0107】
(7)前述の形態において、第1部分91と第2部分92とを含む下桁111を例示したが、下桁111の構成は以上の例示に限定されない。例えば、第1部分91と第2部分92とは異なる部分を下桁111が含んでもよい。また、第1部分91および第2部分92の位置や個数も任意である。例えば、2つの第2部分92の間に第1部分91が位置する構成でもよい。
【0108】
また、本発明において側壁部11の下部とは、側壁部11においてz方向の負側の端部に位置する部分である。例えば、支柱113のz方向の負側(下方側)の端部や下桁111が側壁部11の下部に相当する。実施形態では、下桁111を側壁部11の下部として例示した。側壁部11の下部における第1部分91とはタイヤ20が設置される部分であり、第2部分92とは第1部分91よりも下方側にあり固定状態の際に地面に当接する部分である。例えば、支柱113のz方向の負側の端部が第2部分92になる構成も採用され得る。同様に、側壁部11の上部とは、側壁部11においてz方向の正側の端部に位置する部分である。実施形態では、上桁112を側壁部11の上部として例示したが、支柱113のz方向の正側(上方側)の端部が側壁部11の上部である構成も採用される。
【0109】
(8)前述の形態では、電動式のタイヤ20により移動式プロテクタ100を移動する構成を例示したが、移動式プロテクタ100を移動させる方法(すなわちタイヤ20を回転させる方法)は任意である。例えば、移動式プロテクタ100をウィンチで牽引することで移動させてもよい。具体的には、移動式プロテクタ100の進行方向の前方にアンカーを設置し、当該アンカーにウィンチを接続する。そして、アンカーに接続されたウィンチで移動式プロテクタ100を牽引する。なお、移動式プロテクタ100をウィンチで牽引する際は、フレーム部10が歪むことを防止するために、双方の側壁部11を連結する棒状の部材を設けてもよい。例えば、双方の側壁部11におけるタイヤ20の付近(例えば第1部分91)を接続する。
【0110】
また、移動式プロテクタ100を進行方向の逆側から押圧する押圧装置(例えば油圧ジャッキ)により移動式プロテクタ100を移動させてもよい。押圧装置により押圧された移動式プロテクタ100は進行方向に沿って移動する。ウィンチや押圧装置により移動式プロテクタ100を移動させる方法は、モーターを設置するスペースが側壁部11にない場合に好適である。また、ウィンチや押圧装置を使用する構成は、モーターを使用する構成と比較して、費用を低減できるという利点もある。
【0111】
さらに、プロテクタユニットUを移動させる場合には、進行方向にバックホウ等の重機を位置させ、先導の移動式プロテクタ100aの先頭部にワイヤーを繋ぎ、後続の移動式プロテクタ100bとともに一緒に牽引して移動させてもよい。また、移動する重量を軽減するため、以下の手順でプロテクタユニットUを移動させてもよい。まず、接続機構50による接続を一旦解除して、先導の移動式プロテクタ100aと後続の移動式プロテクタ100bとを切り離し、個別に重機による牽引を可能にする。次に、先導の移動式プロテクタ100aを前方に移動させた後、後続の移動式プロテクタ100bも前方に移動させることで、先導の移動式プロテクタ100aの後部まで移動させる。そして、接続機構50を再度接続して、先導の移動式プロテクタ100aと後続の移動式プロテクタ100bを一体化させる。ただし、重機により牽引させる方法は移動式プロテクタ100の進行方向のスペースが十分に確保できる場合に限られる。以上の説明から理解される通り、タイヤ20を回転させる方法(すなわち移動式プロテクタ100を移動させる方法)は任意である。
【0112】
(9)図27は、変形例に係る移動式プロテクタ100を固定状態から移動状態に遷移させる方法を説明する説明図である。なお、図27は、進行方向が移動式プロテクタ100の長手方向(y方向)である場合の説明図である。
【0113】
図27では、タイヤ20の第1位置に対応する第1貫通孔が2個あり、タイヤ20の第2位置に対応する第2貫通孔が2個ある構成を例示する。したがって、2つの第2部材32により第1部材31を固定する。なお、2個の第1貫通孔は、下桁111の第1部分91を挟んで上方側(z方向の正側)と下方側(z方向の負側)に位置するように形成される。第2貫通孔も同様に、下桁111の第1部分91を挟んで上方側と下方側に位置するように形成される。2つの第1貫通孔のうち下方側に位置する第1貫通孔は、2つの第2貫通孔のうち下方側に位置する第2貫通孔よりも、第1部材31において下方側に形成される。2つの第2貫通孔のうち上方側に位置する第2貫通孔は、2つの第2貫通孔のうち上方側に位置する第2貫通孔よりも、第1部材31において上方側に形成される。
【0114】
まず、工程a1では、固定状態において第2位置にあるタイヤ20の直下に、タイヤ20を地面側から支持するためのスペーサ80を置く。次に、工程a2では、2個の第2貫通孔から第2部材32を抜去した後に、昇降装置40によりフレーム部10を上方側に移動させる。そして、工程a3では、昇降装置40によりフレーム部10を上方側に移動させた状態を維持したまま、2個の第1貫通孔のうち第1部分91からみて上方側に位置する第1貫通孔に第2部材32を挿入する。そして、スペーサ80を外す。
【0115】
工程a4では、昇降装置40によりフレーム部10を下方側に移動させる。工程a5では、2個の第1貫通孔のうち第1部分91からみて下方側に位置する第1貫通孔に第2部材32を挿入する。すなわち、タイヤ20が第1位置に保持される。工程a6では、昇降装置40を地面から離間させる。すなわち、移動式プロテクタ100が移動状態になる。
【0116】
なお、工程a3では、第1部分91からみて上方側に位置する第1貫通孔に第2部材32を挿入することなく、スペーサ80を外す作業だけを行ってもよい。以上の場合には、工程a6において2個の第1貫通孔に第2部材32が挿入される。
【0117】
図28は、進行方向が短手方向(x方向)の移動式プロテクタ100を固定状態から移動状態に遷移させる方法の説明図である。工程b1では、第2位置にあるタイヤ20の直下にスペーサ80を置く。そして、2個の第2貫通孔から第2部材32を抜去する。工程b2では、昇降装置40によりフレーム部10を上方側に移動させた状態を維持したまま、2個の第1貫通孔のうち第1部分91からみて上方側に位置する第1貫通孔に第2部材32を挿入する。そして、スペーサ80を外す。
【0118】
工程b3では、昇降装置40によりフレーム部10を下方側に移動させる。そして、2個の第2貫通孔のうち第1部分91からみて下方側に位置する第1貫通孔に第2部材32を挿入する。すなわち、タイヤ20が第1位置に保持される。工程b4では、昇降装置40を地面から離間させる。すなわち、移動式プロテクタ100が移動状態になる。
【0119】
なお、進行方向が長手方向(y方向)である場合と短手方向(x方向)である場合とで、第1貫通孔および第2貫通孔の向きを相違させてもよい。例えば、進行方向が長手方向である場合には、タイヤの回転軸に交差(例えば直交)する方向に沿って第1貫通孔および第2貫通孔を形成し、進行方向が短手方向である場合には、タイヤの回転軸に平行な方向に沿って第1貫通孔および第2貫通孔を形成してもよい。
【符号の説明】
【0120】
10 :フレーム部
11 :側壁部
13 :上壁部
20 :タイヤ
30 :保持機構
31 :第1部材
32 :第2部材
40 :昇降装置
50 :接続機構
51 :ターンバックル
52 :ピン部材
53 :ピンガイド
55 :カバー
57 :打ち抜きピン
591 :補強当て板
592 :補強当て板
70 :蓋部材
71 :蝶番
73 :円柱ゴムホース
75 :内部蓋部材
80 :スペーサ
91 :第1部分
92 :第2部分
100 :移動式プロテクタ
111 :下桁
112 :上桁
113 :支柱
330 :ウェブ部
131 :横梁
132 :架台
511 :第1軸部
512 :第2軸部
N :接続部分
U :プロテクタユニット
Q1 :ピン用穴
Q2 :ピン用穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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