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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037949
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】GSRセンサ素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/82 20060101AFI20220303BHJP
   G01R 33/02 20060101ALN20220303BHJP
【FI】
H01L29/82 Z
G01R33/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142183
(22)【出願日】2020-08-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】713000630
【氏名又は名称】マグネデザイン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 義信
(72)【発明者】
【氏名】菊池 栄喜
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 晋平
(72)【発明者】
【氏名】田辺 淳一
【テーマコード(参考)】
2G017
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AD44
5F092AA20
5F092AB01
5F092AC21
5F092AD26
5F092BE06
5F092EA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】GSRセンサのGSR特性を実現するGSRセンサ素子、アモルファス磁性ワイヤの張力熱処理方法およびGSRセンサ素子の製造方法を提供する。
【解決手段】GSRセンサ素子の製造方法は、磁性ワイヤを50kg/mm~100kg/mmの大きさの張力で引き出し、溝が形成されている基板21を把持・固定する基板ホルダー22のテーパ部221に塗布した粘着剤で磁性ワイヤの両端を仮固定して、磁性ワイヤに10kg/mm~60kg/mm程度の残存張力を保持し、感光性樹脂を基板全面に塗布した後、熱処理温度250℃~350℃の張力熱処理を実施して、磁性ワイヤを基板に固定すると同時に、磁性ワイヤの磁気特性を回復し、かつ、GSR特性を発現させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極配線基板上に、感磁体であるアモルファス磁性ワイヤとその周りに巻回した検出コイルおよびそれらの端部に外部の集積回路と連結するための4つの電極とを形成したGSRセンサ素子において、
前記電極配線基板上に設置された前記アモルファス磁性ワイヤは、張力を負荷して、250℃~350℃の温度で張力熱処理が施されていることを特徴とするGSRセンサ素子。
【請求項2】
基板上のアモルファス磁性ワイヤは、
(1)前記基板に整列させる際に負荷した張力を粘着剤で仮止めして張力を残存させ、
(2)前記アモルファス磁性ワイヤが整列配置された前記基板の全面に感光性樹脂が塗布され、
(3)250℃~350℃にて張力熱処理されること、
を特徴とする張力熱処理方法。
【請求項3】
(1)基板の溝に下部コイルを形成し、前記下部コイルは感光性樹脂で被覆し、
(2)前記溝に、弾性限界以上の張力が負荷されたアモルファス磁性ワイヤが整列し、
(3)前記基板を把持・固定する基板ホルダーの両端部にて、前記アモルファス磁性ワイヤは前記張力を残存させるために粘着剤で仮止めされ、
(4)前記アモルファス磁性ワイヤが整列配置された前記基板の全面に感光性樹脂を塗布し、
(5)前記アモルファス磁性ワイヤを250℃~350℃の張力熱処理を施し、前記アモルファス磁性ワイヤを固定し、
(6)前記基板上の前記アモルファス磁性ワイヤの上部に前記下部コイルと接続する上部コイルを形成し、
(7)前記アモルファス磁性ワイヤの両端部と、前記下部コイルおよび前記上部コイルからなる検出コイルの両端部と接続されている電極をそれぞれ形成し、
(8)前記アモルファス磁性ワイヤと前記検出コイルと前記電極とからなる素子の集合体を個片化することを特徴とするGSRセンサ素子の製造方法。










【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルファス磁性ワイヤを感磁体とするGSRセンサ素子にて、GSR特性を改善したGSRセンサ素子、基板に整列させたアモルファス磁性ワイヤの張力熱処理方法およびその張力熱処理方法を包含するGSRセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超高感度マイクロ磁気センサには、FGセンサ(特許文献1)、MIセンサ(特許文献2)およびGSRセンサ(特許文献3)が知られている。それらの磁気センサの素子の構造は、アモルファス磁性ワイヤを感磁体として、その周りにコイルを巻いて、ワイヤ内部に生じる磁化の変化を検出するタイプの磁気センサである。
【0003】
FGセンサ、MIセンサおよびGSRセンサを比較すると、適用されているパルス周波数は、FGセンサ、MIセンサおよびGSRセンサの順に、KHz帯、MHz帯、GHz帯と順次高周波化してきている。高周波の表皮効果(非特許文献1)のために、磁気センサの特性はアモルファス磁性ワイヤ(以下、磁性ワイヤまたはワイヤという。)の表面近傍の磁化特性に左右されるようになってきている。
【0004】
磁性ワイヤは、FGセンサにおいては500℃の高温で熱処理して、ワイヤの磁気特性、特に透磁率特性を改善して使用している。つまり、ワイヤの断面全体としての磁気特性を向上させている。
MIセンサにおいては、20kg/mmの張力を負荷して500℃の温度で張力熱処理(非特許文献2)を施して、磁気特性はやや低下するが、重要なワイヤのMI特性を改善して使用している。つまり、ワイヤの磁区構造を表面磁区とコア磁区の2相構造として、表面近傍に90度磁壁を使って磁化回転を容易にしてMI効果を実現している。
しかし、これらの熱処理方法をGSRセンサに適用した場合、ひねり応力が強く残存し、かつ良好なGSR特性を得ることができないことが分かった。つまりコイル出力特性は、外部磁界に対して正弦関数関係からずれを示してしまうことが分かった。
【0005】
ここで、本発明における素子の製造工程の概略を、図1~3を用いて説明する。
図1に示す磁性ワイヤ整列装置(特許文献4)を使って、ワイヤを巻き付けたボビンからワイヤを引出クランプで掴み、50~100kg/mm程度の一定張力で基板上部に引き出して、基板の左側で停止する。なお、基板には溝が形成され、溝内には検出コイルを構成する下部コイルが形成されて絶縁性レジストが薄く塗布されている。また、基板は台座(基板ホルダー)に把持・固定されている。
次に、まず台座をワイヤ引き出し線まで上昇させて、基板の溝との位置合わせを行った後、図2に示すように、さらに台座を上昇させて、台座のテーパ部のレジスト性接着剤に押し当てて仮止めする。ワイヤを台座の左側で切断してから、台座が下降し、次にワイヤ設置溝の幅だけ横方向に移動する。以上の動作を繰り返して、ワイヤを基板全面に整列させる。その後、装置から基板を台座ごと取り出して、張力熱処理を施し、GSR特性を付与すると同時にワイヤを固定する。続いて、台座から基板を取り出して、ワイヤに巻き付けるコイルを製作し、基板電極とコイル端子およびワイヤ端子を接続して、図3に示すようなウェハ状態の素子(素子の集合体)を製作する。最後に、基板から素子を切り出して(個片化という。)、GSRセンサ素子を製造する。
【0006】
GSR素子は、GHzパルスを通電するため、MIセンサなどに比べて表面の磁気特性に敏感である。MIセンサ素子ではワイヤの巻き癖による表面のひねり応力などの残留についてはほとんど無視しているが、GSR素子では無視できない。
【0007】
そこで、その製作工程において、ワイヤ内に残留する巻き癖とそれによって生じるひねり応力を解消するために、磁性ワイヤの弾性限界以上の一様な張力を負荷して、それを解消することにした。
ワイヤの引張試験を行った結果を図4に示す。引張の変位量と荷重について破断までの動きを破線で示し、比例限の直線は実線で示している。弾性限は4.0gから弾性限界の張力は、ワイヤ径を10μmとすると、40kg/mmであることが得られた。ワイヤを整列させる際に、50~100kg/mm程度の張力を負荷して、ワイヤを引き出して、ワイヤの巻き癖を解消することにした。
【0008】
しかし、弾性限界以上で引っ張った場合、ワイヤ内部に張力と永久歪みが残り磁気特性が大幅に低下する。そこで、基板に整列させたワイヤを、レジスト性接着剤で仮固定し、その後レジスト性接着剤をキュアしてワイヤを本固定する際の熱処理において、ワイヤの張力をある程度積極的に残存させて、その張力を活用して、張力熱処理をすれば、張力は解放され磁気特性が回復し、GSR特性が出現することを見出した。もっともGSR特性を安定的に発現するためには、ワイヤの磁気特性とGSR効果の背反現象を踏まえた、適切な張力熱処理方法の確立が求められることとなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平1-163686号公報
【特許文献2】WO2003/071299公報
【特許文献3】特開2016-151413号公報
【特許文献4】特開2019-203763号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】毛利佳年雄著、「磁気センサ理工学」、p26、コロナ社(1998)
【非特許文献2】99 NAGOYA International Workshop on AMORPHOUS WIRES, FILMS & MICRO MAGNETIC SENSORS; S.Ueno, ”Cold drawn and tension annealed amorphous wires”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
GSRセンサ素子の製造工程において、ワイヤに軸方向に弾性限界以上の一様な張力を負荷し、円周方向に応力を負荷した場合、ワイヤの巻き癖に起因する表面に残留するひねり応力は低減できる。しかし、図5に示すように、応力負荷の場合はワイヤの透磁率が大幅に低下してしまう。また、応力を解放したとしても磁気特性は十分回復することはできない。
【0012】
さらに、応力を解放した状態(2kg/mm)で、300℃×1hrの熱処理をしても、図6に示すように、GSR特性を得ることはできない。GSR特性を実現するためには、ある程度の張力をワイヤに負荷した状態(40kg/mm)で、適切な熱処理を行うことが必要である、そこで、基板に整列したワイヤを接着剤で仮止めして、張力を負荷する張力熱処理を見出すことにした。
【0013】
また、磁気特性の回復に及ぼす張力と熱処理温度の影響を調査した。磁気特性とGSR特性を両立できる適切な張力熱処理条件を見出すことが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、基板に整列状態のワイヤの張力熱処理条件について、鋭意研究した。
基板に整列したワイヤに、張力を10kg/mm程度から70kg/mm程度残存させて、熱処理温度を200℃から400℃まで変化させて、GSR特性の発現の有無を確認した。なお、熱処理時間は1hrとした。その結果を表1に示す。
歪み率が低いほどGSR特性は、コイル電圧の磁界依存性が正弦関数となることによって確認できる。コイル電圧の磁界依存性の測定値を逆正弦関数で変換して、変換値と磁界との間にある直線的関係を調査した。その直線と測定値の回帰直線とからのずれをフルスケールに対する非直線性を、つまり歪み率と定義して、それが1%以下の場合は正弦関数的と評価して「〇」とし、1%を超える場合は正弦関数からの歪みが大きいとして「×」とした。
【0015】
【表1】
【0016】
張力熱処理における張力と熱処理温度の影響を調査した結果(表1)より、
先ず、張力が負荷されていない場合(張力0kg/mm)には、いずれの温度においてもGSR特性は発現しない。これは、十分な大きさを持つ表面磁区が形成されないためと考えられる。また、張力が負荷されていても、熱処理の加熱温度が200℃では、内部張力が解消されず、内部歪みが大きな状態のままになっており、滑らかなスピン回転が惹起されないため、GSR特性の歪率が大きくなると考えられる。一方400℃では、コア磁区の形成が進み、90度磁壁がワイヤ表面近くに接近し、MI効果が生じやすい磁区構造になってしまうため、GSR特性の歪率が大きくなると考えられる。
さらに、張力が70kg/mmの場合には、GSR特性は発現するが、透磁率が低下して十分な磁気センサ感度を得ることができず、好ましくない。
以上の結果から、GSR特性を実現できる張力熱処理条件としては、張力は10~60kg/mmで、熱処理温度は250~350℃での実施が望ましいことが得られた。
【0017】
次に、ワイヤに張力を負荷した状態で、熱処理温度を変えて、ワイヤの磁気特性(透磁率)の変化を調査した。その結果を図7に示す。ここで、張力は0~70kg/mm、熱処理温度は200~500℃にて熱処理時間は1hrとした。
【0018】
アモルファス磁性ワイヤの熱処理は、再結晶化温度550℃を考慮して500℃の温度で実施される。張力を負荷すればするほど、磁気特性は大幅に低下する。大きな張力を負荷した場合、500℃の温度域でも、再結晶化が進行し、磁気特性を大幅に低下させてしまうと考えられる。
300℃で熱処理すると、張力が大きくなるにつれて磁気特性が向上し、40kg/mm程度で最高値を示し、それ以上では磁気特性の低下が生じてくる。これは、張力の力を借りて、内部歪みの緩和が進行しやすくなったためと思われる、さらに弾性限界以上の40kg/mm以上では、原子の拡散が生じて再結晶に近い現象が進行しているためと考えられる。
350℃では、両方の中間的挙動を示している。そして、250℃では、最適張力が50kg/mm程度で最高値を示し、総じて300℃に近い挙動を示している。
他方、200℃では、50~100kg/mmの張力を負荷して低下した磁気特性の回復は見られなかった。温度が低すぎて、内部歪みの緩和が進まないためと思われる。
【0019】
以上の結果から、磁気特性としては、張力が10kg/mm程度の場合には350℃、張力が60kg/mm程度の場合には250℃と低めの温度を採用した方がよいことが分かる。
【0020】
ワイヤの熱処理温度は、温度が高い程、磁気特性、特に透磁率特性が向上し、センサの出力感度は向上するので、250℃以上が好ましいが、400℃ではGSR特性が低下する。また、基板上の電子回路を破損する危険が増大するので、350℃以下が好ましい。
【0021】
ワイヤの張力については、ワイヤを基板に整列させる際に、弾性限界上の張力で引き出して、ワイヤの巻き癖を解消して、ワイヤ表面のひねり応力を消失させる。その上で、ワイヤを接着剤、粘着性を有する接着剤で仮止めし、その後装置から取り出し基板全面に感光性樹脂を塗布して、熱処理をしてワイヤを基板に固定する。熱処理の際張力が大きい程、GSR特性、つまり良好な正弦関数関係が得られるので、10kg/mm以上が好ましい。しかし、70kg/mmでは磁気特性が低下してセンサ感度が小さくなるので、60kg/mm以下が好ましい。
【0022】
熱処理の仕方は、一般的には温度を一定に管理した炉内で行うことが好ましい。簡易的にはオーブンの上で行ってもよい。
【0023】
ワイヤを張力熱処理した後、基板のワイヤの周りに上部コイルを取り付けて下部コイルと一体化することによって検出コイルを形成し、また外部電子回路と接続する4個の電極、つまり電源用電極2個とコイル電圧取り出し用の電極2個、およびワイヤ端子、コイル端子との連結によりGSRセンサ素子の集合体からなる素子基板を完成させる。次いで、余分なワイヤを切断して、台座(基板ホルダー)から素子基板を取り出し、それを素子単位に切断して個片化し、GSRセンサ素子が得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、優れたGSR特性を有するGSRセンサ素子が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】磁性ワイヤ整列装置の構成を示す概念図にて、磁性ワイヤが一定の張力を負荷され、4個のチャックで固定されている状態を示す図である。
図2】磁性ワイヤが、粘着剤が塗布されている基板ホルダーのテーパ部に押し付けられて接着して固定されているとともに溝内に配置されている状態を示す図である。
図3】1枚の基板に作製したGSRセンサ素子の集合体とその単位素子の概念図である。
図4】アモルファス磁性ワイヤの引張試験結果と弾性限界を示す図である。
図5】張力負荷とそれを解放したときの磁性ワイヤの磁気特性の試験結果を示す図である。
図6】GSR特性に及ぼす張力の影響を示す図である。
図7】磁性ワイヤの磁気特性(透磁率)に及ぼす張力と熱処理温度の影響を示す図である。
図8】GSRセンサ素子の概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施形態は次の通りである。
第1の実施形態は、
電極配線基板上に、感磁体であるアモルファス磁性ワイヤとその周りに巻回した検出コイルおよびそれらの端部に外部の集積回路と連結するための4つの電極とを形成したGSRセンサ素子において、
前記電極配線基板上に設置された前記アモルファス磁性ワイヤは、張力を負荷して、250℃~350℃の張力熱処理がされていることを特徴とするGSRセンサ素子である。
【0027】
これにより、優れたGSR特性を有するGSRセンサ素子が可能となる。
張力がアモルファス磁性ワイヤに残存することによりGSR特性を発現し、かつその張力負荷状態は磁気特性の低下を引き起こしているにも関わらず張力熱処理がされることにより磁気特性の回復およびGSR特性の改善が可能となる。
【0028】
第2の実施形態は、
基板上のアモルファス磁性ワイヤは、
(1)前記基板に整列させる際に負荷した張力を粘着剤で仮止めして張力を残存させ、
(2)前記アモルファス磁性ワイヤが整列配置された前記基板の全面に感光性樹脂が塗布され、
(3)250℃~350℃にて熱処理されること、
を特徴とする張力熱処理方法である。
【0029】
この張力熱処理方法により、張力が負荷されているアモルファス磁性ワイヤにGSR特性を付与することができる。
【0030】
磁性ワイヤ整列装置において、検出コイルを構成する下部コイルとその下部コイルを被覆している絶縁性レジストか配置されている溝を有する基板の上部に、弾性限界以上の50~100kg/mm程度の一定張力で引き出された磁性ワイヤが引き出され、溝内に整列されるとともに基板の両端部と粘着剤で仮止めされる。
仮止めは、磁性ワイヤと基板との瞬時の接着と強い接着力を発揮できるならば、粘着剤に限らず瞬間接着剤などでもよい。また、次の張力熱処理の際に磁性ワイヤに10~60kg/mm程度の残存張力が可能であればよい。これにより、GSR特性の発現が可能となる。
【0031】
次に、磁性ワイヤを溝内に固定するために、磁性ワイヤが整列配置されている基板の全面に感光性樹脂を塗布する。感光性樹脂は、絶縁性と熱硬化性を有する樹脂が好ましい。磁性ワイヤの上部に形成する上部コイルとの絶縁性が必要であり、また仮止めにより磁性ワイヤに残存している張力を引続く工程にて残存させるために早期の本固定を可能とする熱硬化性が必要である。
【0032】
アモルファス磁性ワイヤの熱処理温度は、GSR特性を発現のためには、250℃以上必要である。他方、350℃を超えるとGSR特性が低下するので好ましくない。
また、アモルファス磁性ワイヤの透磁率特性の向上のために250℃以上が好ましい。一方高温になるとGSR特性が低下し、場合によっては基板上の電子回路の破損を伴うので350℃以下が好ましい。
なお、アモルファス磁性ワイヤの熱処理時間は、1hrとしている。レジスト性接着剤の熱硬化特性により熱処理時間は左右される。さらに、アモルファス磁性ワイヤの熱処理温度・熱処理時間も、一定温度・一定時間のみでなく複数の温度域・時間域の組合せでも可能である。
【0033】
本実施形態は、磁性ワイヤに張力を残存させた状態で張力熱処理を行うことを特徴とすることから磁性ワイヤの仮止めの位置は必ずしも基板上の両端部に限らない。例えば、特許文献4に記載の基板が把持・固定されているテーパ付きの基板ホルダーの両端部に磁性ワイヤを粘着剤で仮止めしてもよい。
また、粘着剤の塗布の一例として、粘着性テープを貼付してもよい。
【0034】
第3の実施形態は、
(1)基板の溝に下部コイルを形成し、前記下部コイルは感光性樹脂で被覆し、
(2)前記溝に、弾性限界以上の張力が負荷されたアモルファス磁性ワイヤが整列し、
(3)前記基板を把持・固定する基板ホルダーの両端部にて、前記アモルファス磁性ワイヤは前記張力を残存するために粘着剤で仮止めされ、
(4)前記アモルファス磁性ワイヤが整列配置された前記基板の全面に感光性樹脂を塗布し、
(5)前記アモルファス磁性ワイヤを250℃~350℃の張力熱処理を施し、ワイヤを基板に固定し、
(6)前記基板上の前記アモルファス磁性ワイヤの上部に前記下部コイルと接続する上部コイルを形成し、
(7)前記アモルファス磁性ワイヤの両端部および前記下部コイルと前記上部コイルとからなる検出コイルの両端部と接続されている電極をそれぞれ形成し、
(8)前記アモルファス磁性ワイヤと前記検出コイルと前記電極とからなる素子の集合体を個片化することを特徴とするGSRセンサ素子の製造方法である。
【0035】
これにより、GSR特性の優れたGSRセンサ素子の製造が可能となる。
以下、各製造工程について、図1~3を用いて説明する。
工程(1)は、基板にアモルファス磁性ワイヤ(以下、ワイヤまたは磁性ワイヤという。)を整列させるための前工程である。
所定の大きさの基板の全面に、予めワイヤを整列するための多数の溝を加工し、それらの溝に下部コイルを形成する。下部コイルは感光性樹脂を塗布して被覆する。この基板を下部コイル付基板という。
次工程の磁性ワイヤ整列装置(図1)を使って下部コイル付基板にワイヤを整列するために、下部コイル付基板を基板固定台22にセットする。このセットに先立って、ワイヤの整列方向にテーパ部を有する基板ホルダー23に下部コイル付基板を把持・固定する。したがって、基板固定台22には下部コイル付基板(以下、基板21という。)を把持・固定した基板ホルダー22がセットされる。
【0036】
工程(2)は、下部コイルが形成されている溝に、弾性限界以上の張力が負荷されているワイヤを整列する工程である。すなわち、図1に示す磁性ワイヤ整列装置を用いて、下部コイルが形成されている基板21の溝に磁性ワイヤ61を整列する工程である。
【0037】
工程(3)は、基板を把持・固定する基板ホルダーの両端部にて、磁性ワイヤの張力を残存させるために磁性ワイヤを粘着剤で仮止めする工程である。
前の工程からの一連の動作であって、所定の張力を負荷した磁性ワイヤを溝に整列させた後にその張力を残存させるために磁性ワイヤを仮止めする工程である。
【0038】
図1において、磁性ワイヤ60を巻き付けたワイヤボビン11から磁性ワイヤ60を引き出しチャック15で掴み、図4に示す磁性ワイヤの弾性限界以上の張力、すなわち50~100kg/mm程度の一定張力で基板21の上部に引き出して、基板固定台23の右側で停止する。同時に、固定チャック14、切断チャック(41a、41b)により、磁性ワイヤ60は掴まれる。
これにより、磁性ワイヤ60には50~100kg/mm程度の張力が負荷される。
【0039】
先ず、基板固定台23をワイヤ引き出し線まで上昇させて、磁性ワイヤ60を基準線にして基板21の溝との位置合わせを行なう。その後、図2に示すように、さらに基板固定台23を上昇させ、基板ホルダー22のテーパ部221の粘着剤に押し当てて仮止めする。
次に、磁性ワイヤ60を基板ホルダー22の左側(切断チャック41a、41bの中間位置)で切断してから、切断チャック41bおよび引き出しチャック15は磁性ワイヤ60を解放し、基板固定台23を下降し、次の磁性ワイヤ60を整列させるに一定の幅だけ横方向に移動する。以上の動作を繰り返して基板21の全面に磁性ワイヤ60を整列させる。
【0040】
これにより、磁性ワイヤに負荷されていた50~100kg/mm程度の張力は、上記のチャックから解放されて低下されるが、磁性ワイヤ60はテーパ部221に押し当てられた粘着剤の粘着力でもって上記張力が残存することになる。粘着剤の種類による粘着力の強弱、粘着剤の塗布されている面積、テーパ部の傾きなどにより10~60kg/mm2程度に制御することが好ましい。
一方、この状態におけるワイヤの磁気特性は、図5に示すように大きく低下したままである。
【0041】
工程(4)は、アモルファス磁性ワイヤおよび基板に感光性樹脂を塗布する工程である。
工程(5)は、先に感光性樹脂を塗布したアモルファス磁性ワイヤを250℃~350℃の張力熱処理を行う工程である。
【0042】
磁性ワイヤ整列装置1から、残存張力が保持されている磁性ワイヤ60が整列している基板21を基板ホルダー22ごと取り出して、磁性ワイヤ60が整列配置されている基板21の全面に感光性樹脂、例えば絶縁性と熱硬化性を有する感光性樹脂を塗布する。
次いで、熱処理を行う。熱処理温度は250℃~350℃にて、熱処理時間は1hr程度でよい。
この張力熱処理により、図6に示すようにGSR特性を発現させることが可能となる。と同時に、磁性ワイヤ60を基板21に固定する。
【0043】
工程(6)は、基板上のアモルファス磁性ワイヤの上部に下部コイルと接続する上部コイルを形成する工程である。
工程(7)は、アモルファス磁性ワイヤの両端部および下部コイルと上部コイルとからなる検出コイルの両端部と接続されている電極をそれぞれ形成する工程である。
【0044】
張力熱処理後、基板21と基板ホルダー22を一体的に連結している磁性ワイヤ60を基板21の両側で切断し、基板ホルダー22から基板21を取り出す。
検出コイルを構成する下部コイルが形成され、感磁体の磁性ワイヤが整列されている基板21に、
下部コイルに接続する上部コイルを形成して検出コイルを完成させ、外部の電子回路と接続する4個の電極、すなわち検出コイル用の電極2個と磁性ワイヤ用の電極2個を形成した単位素子を基板の全面に作製する(図3)。
なお、基板21に塗布された感光性樹脂は、上部コイルや電極を形成するにあたって不要な場合は取り除いてもよい。あるいは、予め感光性樹脂の塗布を省略してもよい。
【0045】
工程(8)は、基板と感磁体であるアモルファス磁性ワイヤとその周りに巻回する検出コイルおよび4個の電極からなる素子の集合体を個片化する工程である。
【0046】
以上からなる最後の工程は、図3に示すように所定のサイズの基板上に整列配置されたアモルファス磁性ワイヤ、その周りに形成された検出コイルおよび外部の電子回路と接続するための4個電極からなる単位素子の集合体を切り出し、GSRセンサ素子として完成させる。
【0047】
なお、(7)の工程における電極を作製する工程は、(1)の工程の下部コイルを作製するとき、または作製後でもよい。
【0048】
上記工程により作製したGSRセンサ素子の特性について評価した。
先ず、GSR特性は、GSR回路に取付けて評価した。その結果は、表1に示すように、GSR特性は正弦関数特性を示し、それらの歪みの程度は1%以下であった。また、ヒステリシスもないことが確認できた。
【0049】
同時に、ワイヤの磁気特性はBH特性評価装置で評価した。その結果は、図7に示すような透磁率2000から3000程度の優れた磁気特性が得られた。センサ感度は、ワイヤ長さ0.45mm、コイル巻き数66回のGSRセンサ素子の場合、80mV/Gあった。これは、同じワイヤ長さのMIセンサと比べると、40倍程度も高い感度であった。
【実施例0050】
次に実施例について説明する。
[実施例1]
はじめに、GSRセンサ素子について図8を用いて説明する。
GSRセンサ素子100は、電極配線基板(基板という。)101の上に、感磁体であるアモルファス磁性ワイヤ(以下、磁性ワイヤという。)102とその周りに巻回した検出コイル103およびそれらの端部に外部の集積回路と連結するための4つの電極(104、105)から構成され、特に磁性ワイヤ102は40kg/mm程度の張力残存状態で300℃の低温にて張力熱処理がされている。
【0051】
基板101の大きさは、長さは0.450mm、幅は0.300mm、厚さは0.250mmである。その基板上の磁性ワイヤ102は、FeCo系のガラス被覆付きのアモルファスワイヤで、直径(金属体)は10μmにて急冷凝固したままで、その透磁率は3000を有しており、長さは0.450mmである。
【0052】
検出コイル103は、下部コイルと上部コイルとからなっており、コイル巻き数は66回、コイルピッチは5.5μm、コイル内径は18μmである。
磁性ワイヤ102の両端には引き出し線を介して電極104を有し、また検出コイル103の両端には引き出し線を介して電極105を有している。
【0053】
このGSRセンサ素子100をASIC上に配置し、両者の電気的接続をしてGSRセンサを作製し、性能を評価した。
GSRセンサの大きさは、長さ1.2mm×幅1.2mm×厚み1.5mmである。
GSRセンサの性能は、良好な正弦関数特性を示し、直線性は0.5%であった。センサ感度は80mV/G、ヒステリシスは検知できなかった。磁性ワイヤの透磁率は2300であった。
【0054】
[実施例2]
次に、GSRセンサ素子の製造方法、およびアモルファス磁性ワイヤ(以下、磁性ワイヤという。)の熱処理方法について、図1~3および図8を用いて説明する。
まず、実施例で用いた基板、磁性ワイヤは次の通りである。
基板の大きさは、長さは20.0mm、幅は20.0mm、厚さは0.250mmにて、基板上面に長さ方向に深さは8μm、幅は16μmの溝が全面に加工されている。溝の間隔(素子の幅)は、0.300mmである。
【0055】
磁性ワイヤは、FeCo系のガラス被覆付きのアモルファスワイヤで、直径(金属体)は10μmにて急冷凝固したままで、その透磁率は3000を有しており、その磁性ワイヤ60はワイヤボビン11に巻き付けてある。
【0056】
まず、基板に加工されている溝に下部コイルを形成する。下部コイルとは、磁性ワイヤ102の周りに巻回する検出コイル103を構成し、磁性ワイヤ102の下部に形成されているコイル片をいう。下部コイルの幅は2.5μm、その間隔は3.0μmである。
下部コイルを溝に形成した後、その下部コイルは感光性樹脂を塗布して被覆する。この下部コイルを形成した基板21をワイヤの整列方向にテーパ部221を有する基板ホルダー22に把持・固定する。テーパ部221には長さ10mmの両面粘着テープが貼り付けられている。
次工程の磁性ワイヤ整列装置(図1)を使って基板21の溝に磁性ワイヤを整列するために、基板21を把持・固定している基板ホルダー22を基板固定台23にセットする。
【0057】
次に、図1に示す磁性ワイヤ整列装置を用いて、下部コイルが形成されている溝に、弾性限界以上の張力76kg/mmが負荷されている磁性ワイヤを整列する。
磁性ワイヤの溝への整列は、ワイヤ供給装置部10から、張力76kg/mmが負荷されている磁性ワイヤ60を引き出しチャック15で基板ホルダー22の右側まで引き出す。同時にこの張力下の磁性ワイヤ60は、引き出しチャック15、切断チャック(41a、41b)および固定チャック14で固定する。
磁性ワイヤ60を基準線として、基板がセットされている基板固定台23を基板固定台送り装置32により昇降、横送りおよび回転させて、基板21の溝とをマイクロスコープ31で観察しながら一致させる。
【0058】
磁性ワイヤ60と基板21の溝が±1μm以下の精度で一致した後、基板固定台送り装置32により基板固定台23を上昇させ、図2に示すように、張力76kg/mmが負荷されている磁性ワイヤ60は基板ホルダー22のテーパ部221の粘着テープに押圧されて仮止めされる。
【0059】
次に、磁性ワイヤ60を基板ホルダー22の左側(切断チャック41a、41bの中間位置)で切断してから、切断チャック41bおよび引き出しチャック15は磁性ワイヤ60を解放し、基板固定台23を下降し、次の磁性ワイヤ60を整列させるに一定の幅だけ横方向に移動する。以上の動作を繰り返して基板21の全面に磁性ワイヤ60を整列させる。
【0060】
これにより、磁性ワイヤに負荷されていた76kg/mmの張力は、上記のチャックから解放されて低下されるが、磁性ワイヤ60はテーパ部221に押し当てられた粘着剤の粘着力でもって上記張力が残存することになる。強力な粘着強度を有する粘着テープにより、磁性ワイヤ60には40kg/mm程度の張力が残存している。
一方、この状態におけるワイヤの磁気特性は、透磁率600程度と大きく低下している。
【0061】
次の工程は、磁性ワイヤ60が整列配置されている基板21の全面に接着性レジストを塗布し、磁性ワイヤを300℃の張力熱処理を行う工程である。と同時に、磁性ワイヤを基板上の固定する工程である。
磁性ワイヤ整列装置1から、残存張力が保持されている磁性ワイヤ60を整列している基板21を基板ホルダー22ごと取り出して、磁性ワイヤ60の全面および基板21の全面に絶縁性と熱硬化性を有する接着性レジストを塗布する。
次いで、ホットプレート上で、温度は300℃、時間は1hrで熱処理を行なう。
この張力熱処理により、透磁率2800と優れた磁気特性が得られた。また、磁性ワイヤを基板上の固定することができた。
【0062】
次は、張力熱処理が行われた磁性ワイヤ60の上部に下部コイルと接続する上部コイルを形成し、そして磁性ワイヤの両端部および下部コイルと上部コイルとからなる検出コイルの両端部と接続されている電極をそれぞれ形成する工程である。
【0063】
張力熱処理後、基板21と基板ホルダー22を一体的に連結している磁性ワイヤ60を基板21の両側で切断し、基板ホルダー22から基板21を取り出す。
基板21には、検出コイルを構成する下部コイルが形成され、張力熱処理が施された感磁体の磁性ワイヤが整列されている。下部コイルに接続する上部コイルを形成して検出コイルを完成させる。なお、下部コイルの幅およびその間隔は上部コイルと同じである。
外部の電子回路と接続する4個の電極、すなわち検出コイル用の電極2個と磁性ワイヤ用の電極2個を形成した単位素子を基板の全面に作製する(図3)。
なお、基板21に塗布された感光性樹脂は、上部コイルや電極を形成するにあたって不要なため、予め取り除いた。
【0064】
最後は、基板と感磁体であるアモルファス磁性ワイヤとその周りに巻回する検出コイルおよび4個の電極からなる素子の集合体を個片化する工程である。
【0065】
図3に示すように所定のサイズの基板上に整列配置されたアモルファス磁性ワイヤ、その周りに形成された検出コイルおよび外部の電子回路と接続するための4個の電極からなる単位素子の集合体を切り出し、図8のGSRセンサ素子として完成させる。
【0066】
GSRセンサ素子100を構成する磁性ワイヤ102の特性は、BH特性評価装置で評価した結果、図7に示す透磁率2800の優れた磁気特性を得ることができた。
また、GSRセンサ素子をGSRセンサ回路に取り付けてGSR特性を評価した。その結果は、図6に示すように、正弦関数特性を得ることができた。また、歪みは0.8%と小さく、良好な結果である。ヒステリシスは無いことが確認した。
【産業上の利用可能性】
【0067】
アモルファス磁性ワイヤに張力を残存させた状態で基板上に整列させ、それを250℃~350℃の低温で張力熱処理を行なうことにより得られるGSRセンサ素子は、優れたGSRセンサを実現することができ、医療分野、自動車分野に広く普及することが期待できる。
【符号の説明】
【0068】
1:磁性ワイヤ整列装置
10:ワイヤ供給装置部
11:ワイヤボビン、12a:ワイヤ送り出しモータ、13a:ワイヤ張力負荷装置、13b:張力測定装置、14:固定チャック、15:引き出しチャック
20:ワイヤ整列装置部
21:基板、22:基板ホルダー、221:テーパ部、23:基板固定台
30:ワイヤ位置決め装置部
31:マイクロスコープ、32:基板固定台送り装置、321:昇降、322:横送り、323:回転
40:切断装置部
41a:切断チャック、41b:切断チャック、42:切断機
50:制御装置部
60:磁性ワイヤ
61:検出コイル、62:電極(ワイヤ電極、コイル電極)、63:素子(単位素子)、64:素子の集合体



































図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-02-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極配線基板と、
前記電極配線基板に、10kg/mm ~60kg/mm の張力で貼り付けた状態で250℃~350℃の張力熱処理を施し、歪み率1%以下のGSR特性を有する感磁体であるアモルファス磁性ワイヤと、
前記アモルファス磁性ワイヤの周りに巻回した検出コイルと、
前記アモルファス磁性ワイヤの端部および前記検出コイルの端部に外部の集積回路と連結するための4つの電極と、
を有することを特徴とするGSRセンサ素子。
【請求項2】
請求項1のGSRセンサ素子に使用される前記電極配線基板に整列したアモルファス磁性ワイヤの張力熱処理方法において、
(1)前記電極配線基板に前記アモルファス磁性ワイヤを整列させる際に負荷した張力は、粘着剤による仮止めで前記アモルファス磁性ワイヤ内に残存され、
(2)前記アモルファス磁性ワイヤが整列配置された前記電極配線基板の全面に感光性樹脂を塗布して、
(3)前記アモルファス磁性ワイヤは、250℃~350℃にて張力熱処理が施されることにより前記電極配線基板上に固定されると同時に歪み率1%以下のGSR特性が付与されることを特徴とする張力熱処理方法。
【請求項3】
請求項1のGSRセンサ素子の製造方法において、
(1)前記電極配線基板の溝に下部コイルを形成し、前記下部コイル感光性樹脂で被覆し、
(2)前記溝に、弾性限界以上の張力が負荷された前記アモルファス磁性ワイヤ整列し、
(3)前記電極配線基板を把持・固定する基板ホルダーの両端部にて、前記アモルファス磁性ワイヤは前記張力を残存させるために粘着剤で仮止めされ、
(4)前記アモルファス磁性ワイヤが整列配置された前記電極配線基板の全面に感光性樹脂を塗布し、
(5)前記アモルファス磁性ワイヤ250℃~350℃の張力熱処理を施して前記アモルファス磁性ワイヤを固定し、
(6)前記電極配線基板上の前記アモルファス磁性ワイヤの上部に前記下部コイルと接続する上部コイルを形成し、
(7)前記アモルファス磁性ワイヤの両端部および前記下部コイルと前記上部コイルとからなる検出コイルの両端部接続されている電極をそれぞれ形成し、
(8)前記アモルファス磁性ワイヤと前記検出コイルと前記電極とからなる素子の集合体を個片化することを特徴とするGSRセンサ素子の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
本発明の実施形態は次の通りである。
第1の実施形態は、
電極配線基板と、
前記電極配線基板に、10kg/mm ~60kg/mm の張力で貼り付けた状態で250℃~350℃の張力熱処理を施し、歪み率1%以下のGSR特性を有する感磁体であるアモルファス磁性ワイヤと、
前記アモルファス磁性ワイヤの周りに巻回した検出コイルと、
前記アモルファス磁性ワイヤの端部および前記検出コイルの端部に外部の集積回路と連結するための4つの電極と、
を有することを特徴とするGSRセンサ素子。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
これにより、優れたGSR特性を有するGSRセンサ素子が可能となる。
張力がアモルファス磁性ワイヤに残存することによりGSR特性を発現し、かつその張力残存状態は磁気特性の低下を引き起こしているにも関わらず250℃~350℃の張力熱処理がされることにより磁気特性の回復ないし更なる改善が可能となる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
第2の実施形態は、
請求項1のGSRセンサ素子に使用される前記電極配線基板に整列したアモルファス磁性ワイヤの張力熱処理方法において、
(1)前記電極配線基板に前記アモルファス磁性ワイヤを整列させる際に負荷した張力は、粘着剤による仮止めで前記アモルファス磁性ワイヤ内に残存され、
(2)前記アモルファス磁性ワイヤが整列配置された前記電極配線基板の全面に感光性樹脂を塗布して、
(3)前記アモルファス磁性ワイヤは、250℃~350℃にて張力熱処理が施されることにより前記電極配線基板上に固定されると同時に歪み率1%以下のGSR特性が付与されることを特徴とする張力熱処理方法。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
磁性ワイヤ整列装置において、検出コイルを構成する下部コイルとその下部コイルを被覆している感光性樹脂からなる溝を有する基板の上部に、弾性限界以上の50~100kg/mm程度の一定張力で磁性ワイヤが引き出され、溝内に整列されるとともに基板の両端部と粘着剤で仮止めされる。
仮止めは、磁性ワイヤと基板と瞬時の接着と強い接着力発揮できるならば、粘着剤に限らず瞬間接着剤でもよい。また、次の張力熱処理の際に磁性ワイヤに10~60kg/mm程度の残存張力が可能であればよい。これにより、GSR特性の発現が可能となる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
アモルファス磁性ワイヤの熱処理温度は、GSR特性を発現するためには、250℃以上が必要である。他方、350℃を超えるとGSR特性が低下するので好ましくない。
また、アモルファス磁性ワイヤの透磁率特性向上のために250℃以上が好ましい。一方高温になるとGSR特性が低下し、場合によっては基板上の電子回路の破損を伴うので350℃以下が好ましい。
なお、アモルファス磁性ワイヤの熱処理時間は、1hrとしている。感光性樹脂の熱硬化特性により熱処理時間は左右される。さらに、アモルファス磁性ワイヤの熱処理温度・熱処理時間も、一定温度・一定時間のみでなく複数の温度域・時間域の組合せでも可能である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
第3の実施形態は、
請求項1のGSRセンサ素子の製造方法において、
(1)前記電極配線基板の溝に下部コイルを形成し、前記下部コイル感光性樹脂で被覆し、
(2)前記溝に、弾性限界以上の張力が負荷された前記アモルファス磁性ワイヤ整列し、
(3)前記電極配線基板を把持・固定する基板ホルダーの両端部にて、前記アモルファス磁性ワイヤは前記張力を残存させるために粘着剤で仮止めされ、
(4)前記アモルファス磁性ワイヤが整列配置された前記電極配線基板の全面に感光性樹脂を塗布し、
(5)前記アモルファス磁性ワイヤ250℃~350℃の張力熱処理を施して前記アモルファス磁性ワイヤを固定し、
(6)前記電極配線基板上の前記アモルファス磁性ワイヤの上部に前記下部コイルと接続する上部コイルを形成し、
(7)前記アモルファス磁性ワイヤの両端部および前記下部コイルと前記上部コイルとからなる検出コイルの両端部接続されている電極をそれぞれ形成し、
(8)前記アモルファス磁性ワイヤと前記検出コイルと前記電極とからなる素子の集合体を個片化することを特徴とするGSRセンサ素子の製造方法。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
このGSRセンサ素子100をASIC上に配置し、両者の電気的接続をしてGSRセンサを作製し、性能を評価した。
GSRセンサの大きさは、長さ1.2mm×幅1.2mm×厚み1.5mmである。
GSRセンサの性能は、良好な正弦関数特性を示し、歪み率は0.5%であった。センサ感度は80mV/G、ヒステリシスは検知できなかった。磁性ワイヤの透磁率は2300であった。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
次の工程は、磁性ワイヤ60が整列配置されている基板21の全面に感光性樹脂を塗布し、磁性ワイヤを300℃の張力熱処理を行う工程である。と同時に、磁性ワイヤを基板上に固定する工程である。
磁性ワイヤ整列装置1から、残存張力が保持されている磁性ワイヤ60を整列している基板21を基板ホルダー22ごと取り出して、磁性ワイヤ60の全面および基板21の全面に絶縁性と熱硬化性を有する感光性樹脂を塗布する。
次いで、ホットプレート上で、温度は300℃、時間は1hrで熱処理を行なう。
この低温張力熱処理により、透磁率2800と優れた磁気特性が得られた。また、磁性ワイヤを基板上の固定することができた。


【手続補正書】
【提出日】2021-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極配線基板と、
歪み率1%以下のGSR特性を有する感磁体であるアモルファス磁性ワイヤと、
前記アモルファス磁性ワイヤの周りに巻回した検出コイルと、
前記アモルファス磁性ワイヤの端部および前記検出コイルの端部に外部の集積回路と連結するための4つの電極とを備えるGSRセンサ素子において、
(1)前記電極配線基板の溝に下部コイルを形成し、前記下部コイルを感光性樹脂で被覆し、
(2)前記溝に、弾性限界以上の張力が負荷された前記アモルファス磁性ワイヤを整列し、
(3)前記電極配線基板を把持・固定する基板ホルダーの両端部にて、前記アモルファス磁性ワイヤは前記張力を残存させるために粘着剤で仮止めされ、
(4)前記アモルファス磁性ワイヤが整列配置された前記電極配線基板の全面に感光性樹脂を塗布し、
(5)前記アモルファス磁性ワイヤに250℃~350℃の張力熱処理を施して前記アモルファス磁性ワイヤを固定し、
(6)前記電極配線基板上の前記アモルファス磁性ワイヤの上部に前記下部コイルと接続する上部コイルを形成し、
(7)前記アモルファス磁性ワイヤの両端部および前記下部コイルと前記上部コイルとからなる検出コイルの両端部に接続されている電極をそれぞれ形成し、
(8)前記アモルファス磁性ワイヤと前記検出コイルと前記電極とからなる素子の集合体を個片化することを特徴とするGSRセンサ素子の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルファス磁性ワイヤを感磁体とするGSRセンサ素子にて、GSR特性を改善したGSRセンサ素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超高感度マイクロ磁気センサには、FGセンサ(特許文献1)、MIセンサ(特許文献2)およびGSRセンサ(特許文献3)が知られている。それらの磁気センサの素子の構造は、アモルファス磁性ワイヤを感磁体として、その周りにコイルを巻いて、ワイヤ内部に生じる磁化の変化を検出するタイプの磁気センサである。
【0003】
FGセンサ、MIセンサおよびGSRセンサを比較すると、適用されているパルス周波数は、FGセンサ、MIセンサおよびGSRセンサの順に、KHz帯、MHz帯、GHz帯と順次高周波化してきている。高周波の表皮効果(非特許文献1)のために、磁気センサの特性はアモルファス磁性ワイヤ(以下、磁性ワイヤまたはワイヤという。)の表面近傍の磁化特性に左右されるようになってきている。
【0004】
磁性ワイヤは、FGセンサにおいては500℃の高温で熱処理して、ワイヤの磁気特性、特に透磁率特性を改善して使用している。つまり、ワイヤの断面全体としての磁気特性を向上させている。
MIセンサにおいては、20kg/mmの張力を負荷して500℃の温度で張力熱処理(非特許文献2)を施して、磁気特性はやや低下するが、重要なワイヤのMI特性を改善して使用している。つまり、ワイヤの磁区構造を表面磁区とコア磁区の2相構造として、表面近傍に90度磁壁を使って磁化回転を容易にしてMI効果を実現している。
しかし、これらの熱処理方法をGSRセンサに適用した場合、ひねり応力が強く残存し、かつ良好なGSR特性を得ることができないことが分かった。つまりコイル出力特性は、外部磁界に対して正弦関数関係からずれを示してしまうことが分かった。
【0005】
ここで、本発明における素子の製造工程の概略を、図1~3を用いて説明する。
図1に示す磁性ワイヤ整列装置(特許文献4)を使って、ワイヤを巻き付けたボビンからワイヤを引出クランプで掴み、50~100kg/mm程度の一定張力で基板上部に引き出して、基板の左側で停止する。なお、基板には溝が形成され、溝内には検出コイルを構成する下部コイルが形成されて絶縁性レジストが薄く塗布されている。また、基板は台座(基板ホルダー)に把持・固定されている。
次に、まず台座をワイヤ引き出し線まで上昇させて、基板の溝との位置合わせを行った後、図2に示すように、さらに台座を上昇させて、台座のテーパ部の接着剤に押し当てて仮止めする。ワイヤを台座の左側で切断してから、台座が下降し、次にワイヤ設置溝の幅だけ横方向に移動する。以上の動作を繰り返して、ワイヤを基板全面に整列させる。その後、装置から基板を台座ごと取り出して、低温張力処理を施す。続いて、台座から基板を取り出して、ワイヤに巻き付けるコイルを製作し、基板電極とコイル端子およびワイヤ端子を接続して、図3に示すようなウェハ状態の素子(素子の集合体)を製作する。最後に、基板から素子を切り出して(個片化という。)、GSRセンサ素子を製造する。
【0006】
GSR素子は、GHzパルスを通電するため、MIセンサなどに比べて表面の磁気特性に敏感である。MIセンサ素子ではワイヤの巻き癖による表面のひねり応力などの残留についてはほとんど無視しているが、GSR素子では無視できない。
【0007】
そこで、その製作工程において、ワイヤ内に残留する巻き癖とそれによって生じるひねり応力を解消するために、磁性ワイヤの弾性限界以上の一様な張力を負荷して、それを解消することにした。
ワイヤの引張試験を行った結果を図4に示す。引張の変位量と荷重について破断までの動きを破線で示し、比例限の直線は実線で示している。弾性限は4.0gから弾性限界の張力は、40kg/mmであることが得られた。ワイヤを整列させる際に、50~100kg/mm程度の張力を負荷して、ワイヤを引き出して、ワイヤの巻き癖を解消することにした。
【0008】
しかし、弾性限界以上で引っ張った場合、ワイヤ内部に張力が残り磁気特性が大幅に低下する。そこで、基板に整列させたワイヤを、接着剤で仮固定し、その後接着剤をキュアしてワイヤを本固定する際の熱処理において、ワイヤの張力をある程度積極的に残存させて、その張力を活用して、低温の張力熱処理をすれば、張力は解放され磁気特性が回復し、GSR特性が出現することを見出した。もっともGSR特性を安定的に発現するためには、ワイヤの磁気特性とGSR効果の背反現象を踏まえた、適切な張力熱処理方法の確立が求められることとなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平1-163686号公報
【特許文献2】WO2003/071299公報
【特許文献3】特開2016-151413号公報
【特許文献4】特開2019-203763号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】毛利佳年雄著、「磁気センサ理工学」、p26、コロナ社(1998)
【非特許文献2】99 NAGOYA International Workshop on AMORPHOUS WIRES, FILMS & MICRO MAGNETIC SENSORS; S.Ueno, ”Cold drawn and tension annealed amorphous wires”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
GSR素子の製造工程において、ワイヤに軸方向に弾性限界以上の一様な張力を負荷し、円周方向応力を負荷した場合、ワイヤの巻き癖に起因する表面に残留するひねり応力は低減できる。しかし、図5に示すように、応力負荷の場合はワイヤの透磁率が大幅に低下してしまう。また応力を開放したとしても磁気特性は十分回復することはできない。
【0012】
さらに、応力を解放した状態(2kg/mm)で、300℃×1hrの熱処理をしても、図6に示すように、GSR特性を得ることはできない。GSR特性を実現するためには、ある程度の張力をワイヤに負荷した状態(40kg/mm)で、適切な熱処理を行うことが必要である、そこで、基板に整列したワイヤを接着剤で仮止めして、張力を負荷する張力熱処理を見出すことにした。
【0013】
また、磁気特性の回復に及ぼす張力と熱処理温度の影響を調査した。磁気特性とGSR特性を両立できる適切な張力熱処理条件を見出すことが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、基板に整列状態のワイヤの張力熱処理条件について、鋭意研究した。
基板に整列したワイヤに、張力を10kg/mm程度から70kg/mm程度残存させて、熱処理温度を200℃から400℃まで変化させて、GSR特性の発現の有無を確認した。なお、熱処理時間は1hrとした。その結果を表1に示す。
歪み率が低いほどGSR特性が発現することから、歪み率2%以下の場合は「〇」とし、1%を超える場合は「×」とした。
【0015】
【表1】
【0016】
張力熱処理における張力と熱処理の影響を調査した結果(表1)より、
先ず、張力が負荷されていない場合(張力0kg/mm2)には、GSR特性は発現しない。これは、十分な大きさを持つ表面磁区が形成されないためと考えられる。また、張力が負荷されていても、熱処理の加熱温度が200℃では、内部張力が解消されず、内部歪みの大きな状態のままになっているものと考えられる。一方400℃では、コア磁区の形成が進み、90度磁壁がワイヤ表面近くに接近し、MI効果が生じやすい磁区構造になってしまうものと思われる。
さらに、張力が70kg/mmの場合には、GSR特性は発現するが、透磁率が低下して十分な磁気センサ感度を得ることができず、好ましくない。
以上の結果から、GSR特性を実現できる張力熱処理条件としては、張力は10~60kg/mmで、熱処理温度は250~350℃での実施が望ましいことが得られた。
【0017】
次に、ワイヤに張力を負荷した状態で、熱処理温度を変えて、ワイヤの磁気特性(透磁率)の変化を調査した。その結果を図7に示す。ここで、張力は0~70kg/mm、熱処理温度は200~500℃にて熱処理時間は1hrとした。
【0018】
アモルファス磁性ワイヤの熱処理は、再結晶化温度550℃を考慮して500℃の温度で実施される。張力を負荷すればするほど、磁気特性は大幅に低下する。大きな張力を負荷した場合、500℃の温度域でも、再結晶化が進行し、磁気特性を大幅に低下させてしまうと考えられる。
300℃で熱処理すると、張力が大きくなるにつれて磁気特性が向上し、40kg/mm程度で最高値を示し、それ以上では磁気特性の低下が生じてくる。これは、張力の力を借りて、内部歪みの緩和が進行しやすくなったためと思われる、さらに弾性限界以上の40kg/mm以上では、原子の拡散が生じて再結晶に近い現象が進行しているためと考えられる。
350℃では、両方の中間的挙動を示している。そして、250℃では、最適張力が50kg/mm程度で最高値を示し、総じて300℃に近い挙動を示している。
他方、200℃では、50~100kg/mmの張力を負荷して低下した磁気特性の回復は見られなかった。温度が低すぎて、内部歪みの緩和が進まないためと思われる。
【0019】
以上の結果から、磁気特性としては、張力が10kg/mm程度の場合には350℃、張力が60kg/mm程度の場合には250℃と低めの温度を採用した方がよいことが分かる。
【0020】
ワイヤの熱処理温度は、温度が高い程、磁気特性、特に透磁率特性が向上し、センサの出力感度は向上するので、250℃以上が好ましいが、400℃ではGSR特性が低下する。また基板上の電子回路を破損する危険が増大するので、350℃以下が好ましい。
【0021】
ワイヤの張力については、ワイヤを基板に整列させる際に、弾性限界上の張力で引き出して、ワイヤの巻き癖を解消して、ワイヤ表面のひねり応力を消失させる。その上で、ワイヤを粘着剤で仮止めし、その後装置から取り出し基板全面に感光性樹脂を塗布して、熱処理をして基板に固定する。
熱処理の際張力が大きい程、GSR特性、つまり良好な正弦関数関係が得られるので、10kg/mm以上が好ましいが、70kg/mmでは磁気特性が低下してセンサ感度が小さくなるので、60kg/mm以下がは好ましい。
【0022】
熱処理の仕方は、一般的には温度を一定に管理した炉内で行うことが好ましい。簡易的にはオーブンの上で行ってもよい。
【0023】
ワイヤを張力熱処理した後、基板のワイヤの周りに上部コイルを取り付けて下部コイルと一体化することによって検出コイルを形成し、また外部電子回路と接続する4個の電極、つまり電源用電極2個とコイル電圧取り出し用の電極2個、およびワイヤ端子、コイル端子との連結によりGSRセンサ素子の集合体からなる素子基板を完成させる。次いで、余分なワイヤを切断して、台座(基板ホルダー)から素子基板を取り出し、それを素子単位に切断して個片化し、GSRセンサ素子が得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、優れたGSR特性を有するGSRセンサ素子が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】磁性ワイヤ整列装置の構成を示す概念図で、磁性ワイヤが一定の張力を負荷され、4個のチャックで固定されている状態を示す。
図2】磁性ワイヤが、粘着剤が塗布されている基板ホルダーのテーパ部に押し付けられて接着して固定されているとともに溝内に配置されている状態を示す。
図3】1枚の基板に作製したGSRセンサ素子の集合体とその単位素子の概念図である。
図4】アモルファス磁性ワイヤの引張試験結果と弾性限界を示す。
図5】張力負荷とそれを解放したときの磁性ワイヤの磁気特性の試験結果を示す。
図6】GSR特性に及ぼす張力の影響を示す。
図7】磁性ワイヤの磁気特性(透磁率)に及ぼす張力と熱処理温度の影響を示す。
図8】GSRセンサ素子の概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施形態は
電極配線基板と、
歪み率1%以下のGSR特性を有する感磁体であるアモルファス磁性ワイヤと、
前記アモルファス磁性ワイヤの周りに巻回した検出コイルと、
前記アモルファス磁性ワイヤの端部および前記検出コイルの端部に外部の集積回路と連結するための4つの電極とを備えるGSRセンサ素子において、
(1)前記電極配線基板の溝に下部コイルを形成し、前記下部コイルを感光性樹脂で被覆し、
(2)前記溝に、弾性限界以上の張力が負荷された前記アモルファス磁性ワイヤを整列し、
(3)前記電極配線基板を把持・固定する基板ホルダーの両端部にて、前記アモルファス磁性ワイヤは前記張力を残存させるために粘着剤で仮止めされ、
(4)前記アモルファス磁性ワイヤが整列配置された前記電極配線基板の全面に感光性樹脂を塗布し、
(5)前記アモルファス磁性ワイヤに250℃~350℃の張力熱処理を施して前記アモルファス磁性ワイヤを固定し、
(6)前記電極配線基板上の前記アモルファス磁性ワイヤの上部に前記下部コイルと接続する上部コイルを形成し、
(7)前記アモルファス磁性ワイヤの両端部および前記下部コイルと前記上部コイルとからなる検出コイルの両端部に接続されている電極をそれぞれ形成し、
(8)前記アモルファス磁性ワイヤと前記検出コイルと前記電極とからなる素子の集合体を個片化することを特徴とするGSRセンサ素子の製造方法。
【0027】
これにより、GSR特性の優れたGSRセンサ素子の製造が可能となる。
以下、各製造工程について、図1~3を用いて説明する。
工程(1)は、基板にアモルファス磁性ワイヤ(以下、ワイヤまたは磁性ワイヤという。)を整列させるための前工程である。
所定の大きさの基板の全面に、予めワイヤを整列するための多数の溝を加工し、それらの溝に下部コイルを形成する。下部コイルは感光性樹脂を塗布して被覆する。この基板を下部コイル付基板という。
次工程の磁性ワイヤ整列装置(図1)を使って下部コイル付基板にワイヤを整列するために、下部コイル付基板を基板固定台22にセットする。このセットに先立って、ワイヤの整列方向にテーパ部を有する基板ホルダー23に下部コイル付基板を把持・固定する。したがって、基板固定台22には下部コイル付基板(以下、基板21という。)を把持・固定した基板ホルダー22がセットされる。
【0028】
工程(2)は、下部コイルが形成されている溝に、弾性限界以上の張力が負荷されているワイヤを整列する工程である。すなわち、図1に示す磁性ワイヤ整列装置を用いて、下部コイルが形成されている基板21の溝に磁性ワイヤ61を整列する工程である。
【0029】
工程(3)は、基板を把持・固定する基板ホルダーの両端部にて、磁性ワイヤの張力を残存させるために磁性ワイヤを粘着剤で仮止めする工程である。
前の工程からの一連の動作であって、所定の張力を負荷した磁性ワイヤを溝に整列させた後にその張力を残存させるための磁性ワイヤを仮止めする工程である。
【0030】
図1において、磁性ワイヤ60を巻き付けたワイヤボビン11から磁性ワイヤ60を引き出しチャック15で掴み、図4に示す磁性ワイヤの弾性限界以上の張力、すなわち50~100kg/mm程度の一定張力で基板21の上部に引き出して、基板固定台23の右側で停止する。同時に、固定チャック14、切断チャック(41a、41b)により、磁性ワイヤ60は掴まれる。
これにより、磁性ワイヤ60には50~100kg/mm程度の張力が負荷される。
【0031】
先ず、基板固定台23をワイヤ引き出し線まで上昇させて、磁性ワイヤ60を基準線にして基板21の溝との位置合わせを行なう。その後、図2に示すように、さらに基板固定台23を上昇させ、基板ホルダー22のテーパ部221の粘着剤に押し当てて仮止めする。
次に、磁性ワイヤ60を基板ホルダー22の左側(切断チャック41a、41bの中間位置)で切断してから、切断チャック41bおよび引き出しチャック15は磁性ワイヤ60を解放し、基板固定台23を下降し、次の磁性ワイヤ60を整列させるに一定の幅だけ横方向に移動する。以上の動作を繰り返して基板21の全面に磁性ワイヤ60を整列させる。
【0032】
これにより、磁性ワイヤに負荷されていた50~100kg/mm程度の張力は、上記のチャックから解放されて低下されるが、磁性ワイヤ60はテーパ部221に押し当てられた粘着剤の粘着力でもって上記張力が残存することになる。粘着剤の種類による粘着力の強弱、テーパ部の傾きなどにより10~60kg/mm程度に制御することが好ましい。
一方、この状態におけるワイヤの磁気特性は、図5に示すように大きく低下したままである。
【0033】
工程(4)は、アモルファス磁性ワイヤおよび基板に感光性樹脂を塗布する工程である。
工程(5)は、先に感光性樹脂を塗布したアモルファス磁性ワイヤを250℃~350℃の張力熱処理を行う工程である。
【0034】
磁性ワイヤ整列装置1から、残存張力が保持されている磁性ワイヤ60が整列している基板22を基板ホルダー22ごと取り出して、磁性ワイヤ60が整列配置している全面に感光性樹脂、例えば絶縁性と熱硬化性を有する感光性樹脂を塗布する。
次いで、熱処理を行う。熱処理温度は250℃~350℃にて、熱処理時間は1hr程度でよい。
この低温張力熱処理により、図6に示すようにGSR特性を発現させることが可能となる。と同時に、磁性ワイヤ60を基板21に固定する。
【0035】
工程(6)は、基板上のアモルファス磁性ワイヤの上部に下部コイルと接続する上部コイルを形成する工程である。
工程(7)は、アモルファス磁性ワイヤの両端部および下部コイルと上部コイルとからなる検出コイルの両端部と接続されている電極をそれぞれ形成する工程である。
【0036】
張力熱処理後、基板21と基板ホルダー22を一体的に連結している磁性ワイヤ60を基板21の両側で切断し、基板ホルダー22から基板21を取り出す。
検出コイルを構成する下部コイルが形成され、感磁体の磁性ワイヤが整列されている基板21に、
下部コイルに接続する上部コイルを形成して検出コイルを完成させ、外部の電子回路と接続する4個の電極、すなわち検出コイル用の電極2個と磁性ワイヤ用の電極2個を形成した単位素子を基板の全面に作製する(図3)。
なお、基板21に塗布された感光性樹脂は、上部コイルや電極を形成するにあたって不要な場合は取り除いてもよい。あるいは、予め感光性樹脂の塗布を省略してもよい。
【0037】
工程(8)は、基板と感磁体であるアモルファス磁性ワイヤとその周りに巻回する検出コイルおよび4個の電極からなる素子の集合体を個片化する工程である。
【0038】
以上からなる最後の工程は、図3に示すように所定のサイズの基板上に整列配置されたアモルファス磁性ワイヤ、その周りに形成された検出コイルおよび外部の電子回路と接続するための4個の電極からなる単位素子の集合体を切り出し、GSRセンサ素子として完成させる。
【0039】
なお、工程(7)における電極を作製する工程は、工程(1)の下部コイルを作製するとき、または作製後でもよい。
【0040】
上記工程により作製したGSRセンサ素子の特性について評価した。
先ず、GSR特性は、GSR回路に取付けて評価した。その結果は、表1に示すように、GSR特性は正弦関数特性を示し、それらの歪みの程度は1%であった。また、ヒステリシスもないことが確認できた。
【0041】
同時に、ワイヤの磁気特性はBH特性評価装置で評価した。その結果は、図7に示すような透磁率2000から3000程度の優れた磁気特性が得られた。センサ感度は、ワイヤ長さ0.45mm、コイル巻き数66回のGSRセンサ素子の場合、80mV/Gあった。これは、同じワイヤ長さのMIセンサと比べると、40倍程度も高い感度であった。
【実施例0042】
次に実施例について説明する。
[実施例1]
はじめに、GSRセンサ素子について図8を用いて説明する。
GSRセンサ素子100は、電極配線基板(基板という。)101の上に、感磁体であるアモルファス磁性ワイヤ(以下、磁性ワイヤという。)102とその周りに巻回した検出コイル103およびそれらの端部に外部の集積回路と連結するための4つの電極(104、105)から構成され、特に磁性ワイヤ102は40kg/mm程度の張力残存状態で300℃の低温にて張力熱処理がされている。
【0043】
基板101の大きさは、長さは0.450mm、幅は0.300mm、厚さは0.250mmである。その基板上の磁性ワイヤ102は、FeCo系のガラス被覆付きのアモルファスワイヤで、直径(金属体)は10μmにて急冷凝固したままで、その透磁率は3000を有しており、長さは0.450mmである。
【0044】
検出コイル103は、下部コイルと上部コイルとからなっており、コイル巻き数は66回、コイルピッチは5.5μm、コイル内径は18μmである。
磁性ワイヤ102の両端には引き出し線を介して電極104を有し、また検出コイル103の両端には引き出し線を介して電極105を有している。
【0045】
このGSRセンサ素子100をASIC上に配置し、両者の電気的接続をしてGSRセンサを作製し、性能を評価した。
GSRセンサの大きさは、長さ1.2mm×幅1.2mm×厚み1.5mmである。
GSRセンサの性能は、良好な正弦関数特性を示し、歪み率は0.5%であった。センサ感度は80mV/G、ヒステリシスは検知できなかった。磁性ワイヤの透磁率は2300であった。
【0046】
[実施例2]
次に、GSRセンサ素子の製造方法、およびアモルファス磁性ワイヤ(以下、磁性ワイヤという。)の熱処理方法について、図1~3および8を用いて説明する。
まず、実施例で用いた基板、磁性ワイヤは次の通りである。
基板の大きさは、長さは20.0mm、幅は20.0mm、厚さは0.250mmにて、基板上面に長さ方向に深さは8μm、幅は16μmの溝が全面に加工されている。溝の間隔(素子の幅)は、0.300mmである。
【0047】
磁性ワイヤは、FeCo系のガラス被覆付きのアモルファスワイヤで、直径(金属体)は10μmにて急冷凝固したままで、その透磁率は3000を有しており、その磁性ワイヤ60はワイヤボビン11に巻き付けてある。
【0048】
まず、基板に加工されている溝に下部コイルを形成する。下部コイルとは、磁性ワイヤ102の周りに巻回する検出コイル103を構成し、磁性ワイヤ102の下部に形成されているコイル片をいう。下部コイルの幅は2.5μm、その間隔は3.0μmである。
下部コイルを溝に形成した後、その下部コイルは感光性樹脂を塗布して被覆する。この下部コイルを形成した基板21をワイヤの整列方向にテーパ部221を有する基板ホルダー22に把持・固定する。テーパ部221には長さ10mmの両面粘着テープが貼り付けられている。
次工程の磁性ワイヤ整列装置(図1)を使って基板21の溝に磁性ワイヤを整列するために、基板21を基板固定台23にセットする。
【0049】
次に、図1に示す磁性ワイヤ整列装置を用いて、下部コイルが形成されている溝に、弾性限界以上の張力76kg/mmが負荷されている磁性ワイヤを整列する。
磁性ワイヤの溝への整列は、ワイヤ供給装置部10から、張力76kg/mmが負荷されている磁性ワイヤ60を引き出しチャック15で基板ホルダー22の右側まで引き出す。同時にこの張力下の磁性ワイヤ60は、引き出しチャック15、切断チャック(41a、41b)および固定チャック14で固定されている。
磁性ワイヤ60を基準線として、基板が固定されている基板固定台23を基板固定台送り装置32により昇降、横送りおよび回転させて、基板21の溝とをマイクロスコープ31で観察しながら一致させる。
【0050】
磁性ワイヤ60と基板21の溝が±1μm以下の精度で一致した後、基板固定台送り装置32により基板固定台23を上昇させ、図2に示すように、張力76kg/mmが負荷されている磁性ワイヤ60は基板ホルダー22のテーパ部221の粘着テープに押圧されて仮止めされる。
【0051】
次に、磁性ワイヤ60を基板ホルダー22の左側(切断チャック41a、41bの中間位置)で切断してから、切断チャック41bおよび引き出しチャック15は磁性ワイヤ60を解放し、基板固定台23を下降し、次の磁性ワイヤ60を整列させるに一定の幅だけ横方向に移動する。以上の動作を繰り返して基板21の全面に磁性ワイヤ60を整列させる。
【0052】
これにより、磁性ワイヤに負荷されていた76kg/mmの張力は、上記のチャックから解放されて低下されるが、磁性ワイヤ60はテーパ部221に押し当てられた粘着剤の粘着力でもって上記張力が残存することになる。強力な粘着強度を有する粘着テープにより、磁性ワイヤ60には40kg/mm程度の張力が残存している。
一方、この状態におけるワイヤの磁気特性は、透磁率600程度と大きく低下している。
【0053】
次の工程は、磁性ワイヤ60が整列配置されている基板21の全面に感光性樹脂を塗布し、磁性ワイヤを250℃~350℃の張力熱処理を行う工程である。と同時に、磁性ワイヤを基板上の固定する工程である。
磁性ワイヤ整列装置1から、残存張力が保持されている磁性ワイヤ60を整列している基板21を基板ホルダー22ごと取り出して、磁性ワイヤ60の全面および基板21の全面に絶縁性と熱硬化性を有する感光性樹脂を塗布する。
次いで、ホットプレート上で、温度は300℃、時間は1hrで熱処理を行なう。
この低温張力熱処理により、透磁率2800と優れた磁気特性が得られた。また、磁性ワイヤを基板上に固定することができた。
【0054】
次は、張力熱処理が行われた磁性ワイヤ60の上部に下部コイルと接続する上部コイルを形成し、そして磁性ワイヤの両端部および下部コイルと上部コイルとからなる検出コイルの両端部と接続されている電極をそれぞれ形成する工程である。
【0055】
張力熱処理後、基板21と基板ホルダー22を一体的に連結している磁性ワイヤ60を基板22の両側で切断し、基板ホルダー22から基板21を取り出す。
基板21には、検出コイルを構成する下部コイルが形成され、感磁体の磁性ワイヤが整列されている。下部コイルに接続する上部コイルを形成して検出コイルを完成させる。なお、下部コイルの幅およびその間隔は上部コイルと同じである。
外部の電子回路と接続する4個の電極、すなわち検出コイル用の電極2個と磁性ワイヤ用の電極2個を形成した単位素子を基板の全面に作製する(図3)。
なお、基板21に塗布された感光性樹脂は、上部コイルや電極を形成するにあたって不要なため、予め取り除いた。
【0056】
最後は、基板と感磁体であるアモルファス磁性ワイヤとその周りに巻回する検出コイルおよび4個の電極からなる素子の集合体を個片化する工程である。
【0057】
図3に示すように所定のサイズの基板上に整列配置されたアモルファス磁性ワイヤ、その周りに形成された検出コイルおよび外部の電子回路と接続するための4個の電極からなる単位素子の集合体を切り出し、図8のGSRセンサ素子として完成させる。
【0058】
GSRセンサ素子100を構成する磁性ワイヤ102の特性は、BH特性評価装置で評価した結果、図7に示す透磁率2800の優れた磁気特性を得ることができた。
また、GSRセンサ素子をGSRセンサ回路に取り付けてGSR特性を評価した。その結果は、図6に示すように、正弦関数特性を得ることができた。また、歪みは0.8%と小さく、良好な結果である。ヒステリシスは無いことが確認した。
【産業上の利用可能性】
【0059】
アモルファス磁性ワイヤに張力を残存させた状態で基板上に整列させ、それを250℃~350℃の低温で張力熱処理を行なうことにより得られるGSRセンサ素子は、優れたGSRセンサを実現することができ、医療分野、自動車分野に広く普及することが期待できる。
【符号の説明】
【0060】
1:磁性ワイヤ整列装置
10:ワイヤ供給装置部
11:ワイヤボビン、12a:ワイヤ送り出しモータ、13a:ワイヤ張力負荷装置、13b:張力測定装置、14:固定チャック、15:引き出しチャック
20:ワイヤ整列装置部
21:基板、22:基板ホルダー、221:テーパ部、23:基板固定台
30:ワイヤ位置決め装置部
31:マイクロスコープ、32:基板固定台送り装置、321:昇降、322:横送り、323:回転
40:切断装置部
41a:切断チャック、41b:切断チャック、42:切断機
50:制御装置部
60:磁性ワイヤ
61:検出コイル、62:電極(ワイヤ電極、コイル電極)、63:素子(単位素子)、64:素子の集合体