(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037960
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】導電性ペースト組成物とその利用、及び導電性ペースト組成物に用いられる樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
H01B 1/24 20060101AFI20220303BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20220303BHJP
H01B 3/44 20060101ALI20220303BHJP
H01B 3/30 20060101ALI20220303BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20220303BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20220303BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220303BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220303BHJP
C08L 33/18 20060101ALI20220303BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
H01B1/24 A
H01B5/16
H01B3/44 A
H01B3/30 H
H01M8/10 101
H01M4/86 B
H01M4/62 Z
C08K3/04
C08L33/18
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142205
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】備前 亮介
(72)【発明者】
【氏名】山内 智大
(72)【発明者】
【氏名】青木 貴之
【テーマコード(参考)】
4J002
5G301
5G305
5G307
5H018
5H050
5H126
【Fターム(参考)】
4J002AA01X
4J002AC02W
4J002BD13W
4J002BD15W
4J002BG02W
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4J002HA07
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5G301DA42
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5H050FA17
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA05
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、分散安定性及び塗布性に優れる導電性ペースト組成物と、該導電性ペースト組成物を用いて得られる導電性膜組成物及びその用途を提供することである。
【解決手段】 高分子成分(A)と、樹脂粒子(B)と、導電性材料(C)と、液状媒体(D)とを含む、導電性ペースト組成物であって、前記粒子(B)が熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包される有機化合物とから構成される、導電性ペースト組成物。前記熱可塑性樹脂が、ニトリル系単量体を含む重合性成分の重合体であると、好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子成分(A)と、樹脂粒子(B)と、導電性材料(C)と、液状媒体(D)とを含む、導電性ペースト組成物であって、
前記粒子(B)が熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包される有機化合物とから構成される、導電性ペースト組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、ニトリル系単量体を含む重合性成分の重合体である、請求項1に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項3】
前記粒子(B)の内径(d1)と外径(d2)の比(d1/d2)が0.1以上0.999以下である、請求項1又は2に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項4】
前記有機化合物が気体状及び/又は液体状である、請求項1~3のいずれかに記載の導電性ペースト組成物。
【請求項5】
前記材料(C)がファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノ繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、及びグラフェンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれかに記載の導電性ペースト組成物。
【請求項6】
前記成分(A)が、アクリル系高分子、フッ素系高分子、ジエン系高分子、ビニル系高分子、及びセルロース系高分子から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~5のいずれかに記載の導電性ペースト組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の導電性ペースト組成物の乾燥物を含む、導電性膜組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の導電性膜組成物を含む、二次電池。
【請求項9】
請求項7に記載の導電性膜組成物及びその焼成物から選ばれる少なくとも1種を含む、燃料電池。
【請求項10】
導電性ペースト組成物に用いられる樹脂粒子であって、
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包される有機化合物とから構成される、樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト組成物とその利用、及び導電性ペースト組成物に用いられる樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子導電性を有する導電性材料を含有したペーストの開発がなされている。このような導電性ペーストは、たとえば、電池やキャパシタ等電子機器の電極材料、燃料電池の撥水層、燃料電池の拡散層、熱伝導材料、導電性インク、発光素子、配線材料、補強材料、黒色顔料等の各種用途において、多様な機能を有する材料として有望視されている。
たとえば、電子機器において、充電により繰り返し使用が可能である、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池等の二次電池が用いられている。二次電池は、携帯用電子機器やハイブリッド自動車、電気自動車などに用いるための電池として、急速に開発が進められている。
導電性ペーストは、導電性材料、溶媒を含有しており、塗布して乾燥することにより、各種用途に使用される。
特許文献1には、バインダー樹脂、導電性付与剤、有機溶剤を含む導電性組成物を、基材に塗工した後、乾燥させて導電膜を得る方法が開示されている。
特許文献2には、シリカ粒子を含有するエラストマー組成物と、導電性フィラーと、溶剤と、を含む導電性ペーストが開示されている。
特許文献3には、銀微粒子と、有機溶媒と、を含む導電性ペーストが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-12630号公報
【特許文献2】特開2018-174125号公報
【特許文献3】国際公開第2018/008270号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の導電性組成物や、特許文献2に記載の導電性ペースト、特許文献3に記載の導電性ペーストでは、ペーストの分散安定性、塗布性が不十分であることが確認された。
本発明の目的は、分散安定性及び塗布性に優れる導電性ペースト組成物と、該導電性ペースト組成物を用いて得られる導電性膜組成物及びその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、高分子成分と、特定の樹脂粒子と、導電性材料と、液状媒体とを含む、導電性ペースト組成物であれば、導電性ペーストの分散安定性及び塗布性に優れることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明の導電性ペースト組成物は、高分子成分(A)と、樹脂粒子(B)と、導電性材料(C)と、液状媒体(D)とを含む、導電性ペースト組成物であって、前記粒子(B)が熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包される有機化合物とから構成される。
【0007】
前記熱可塑性樹脂が、ニトリル系単量体を含む重合性成分の重合体であると、好ましい。
前記粒子(B)の内径(d1)と外径(d2)の比(d1/d2)が0.1以上0.999以下であると、好ましい。
前記有機化合物が気体状及び/又は液体状であると、好ましい。
前記材料(C)がファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノ繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、及びグラフェンから選ばれる少なくとも1種であると、好ましい。
前記成分(A)が、アクリル系高分子、フッ素系高分子、ジエン系高分子、ビニル系高分子、及びセルロース系高分子から選ばれる少なくとも1種であると、好ましい。
【0008】
本発明の導電性膜組成物は、上記導電性ペースト組成物の乾燥物を含む。
本発明の二次電池は、上記導電性膜組成物を含む。
本発明の燃料電池は、上記導電性膜組成物及びその焼成物から選ばれる少なくとも1種を含む。
本発明の樹脂粒子は、導電性ペースト組成物に用いられる樹脂粒子であって、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包される有機化合物とから構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性ペースト組成物は、導電性ペーストの分散安定性及び塗布性に優れる。
本発明の導電性膜組成物は、均一性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】樹脂粒子を乾式加熱膨張法で製造するための製造装置の発泡工程部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の導電性ペースト組成物は、高分子成分(A)と、樹脂粒子(B)と、導電性材料(C)と、液状媒体(D)とを含む。以下に、導電性ペースト組成物を構成する成分について詳しく説明する。
【0012】
〔高分子成分(A)〕
高分子成分(A)(以下、単に成分(A)ということがある)は、導電性ペースト組成物に含まれる成分の分散助剤、導電性ペースト組成物の塗布性向上剤として機能する。また、導電性ペースト組成物を乾燥させた際の導電性材料同士の結着剤や、後述する導電性膜組成物と基材との結着剤として機能しうる成分である。
【0013】
成分(A)としては、たとえば、アクリル系高分子;フッ化ビニリデン系高分子(PVDF)、フッ化エチレン-プロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等のフッ素系高分子;ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のビニル系高分子;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体等(SBR)のジエン系高分子;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子;スチレン-塩化ビニル共重合体、スチレン-酢酸ビニル共重合体等のスチレン系高分子;ウレタン系高分子;ジメチルポリシロキサン等のポリシロキサン系高分子;フェノール系高分子;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン等のオレフィン系高分子;ケトン系高分子;アミド系高分子;ポリフェニレンオキサイド系高分子;エポキシ系高分子;ポリエステル系高分子;ナイロン系高分子;天然ゴム;ポリペプチド;蛋白質等が挙げられ、1種又は、2種以上を併用してもよい。
成分(A)はアクリル系高分子、フッ素系高分子、ビニル系高分子、ジエン系高分子、及びセルロース系高分子から選ばれる少なくとも1種であると、導電性ペーストの分散安定性が向上するため、好ましい。
【0014】
成分(A)としては、たとえば、KFポリマー(株式会社クレハ製、ポリフッ化ビニリデン樹脂)、カイナーシリーズ(アルケマ株式会社製、ポリフッ化ビニリデン樹脂)、ソレフシリーズ(ソルベイ株式会社製、ポリフッ化ビニリデン樹脂)、ポリフロンシリーズ(ダイキン工業株式会社製、ポリテトラフルオロエチレン)、テフロン(登録商標)シリーズ(三井デュポンフルオロケミカル株式会社、ポリテトラフルオロエチレン)、フルオンシリーズ(AGC株式会社製、ポリテトラフルオロエチレン)、アルマテックスシリーズ(三井化学株式会社製、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂)、ケミパールシリーズ(三井化学株式会社製、ポリオレフィン水性ディスパージョン)、ボンロンシリーズ(アクリルエマルション、三井化学株式会社)、オレスターシリーズ(三井化学株式会社製、ポリウレタン樹脂)、ユーバンシリーズ(三井化学株式会社製、アミノ樹脂)、エポキーシリーズ(三井化学株式会社製、エポキシ樹脂)、Nipolシリーズ(日本ゼオン株式会社製、スチレン-ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル-ブタジエン系ラテックス、アクリレート系ラテックス)、ザイクセンシリーズ(住友精化株式会社製、ポリオレフィン樹脂)、セポルジョンシリーズ(住友精化株式会社製、ナイロンエマルジョン、ポリエステルエマルジョン)、セポレックスシリーズ(住友精化株式会社製、ポリイソプレンラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス)、フローセンリーズ(住友精化株式会社製、ポリエチレン)、フローブレンリーズ(住友精化株式会社製、ポリプロピレン)、SBラテックス(JSR株式会社製、スチレン-ブタジエン系ラテックス)、アクリルエマルションAEシリーズ(株式会社イーテック製、アクリルエマルション)、ボンコートシリーズ(DIC株式会社製、アクリル系エマルジョン、アクリル-スチレン系エマルジョン)、ボンディックシリーズ(DIC株式会社製、ポリウレタンディスパージョン)、ラックスターシリーズ(DIC株式会社製、ブタジエン樹脂ラテックス)など市販されている高分子材料を使用してもよい。
また、成分(A)は撥水性を有するものであってもよい。成分(A)が撥水性を有すると、後述する導電性膜組成物は燃料電池に好適に用いることができる。
【0015】
〔樹脂粒子(B)〕
樹脂粒子(B)(以下、単に粒子(B)ということがある)は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包される有機化合物とから構成されるものである。熱可塑性樹脂は重合性成分を重合して得られる重合体である。
重合性成分は重合することによって、粒子(B)の外殻を形成する熱可塑性樹脂となる成分である。重合性成分は、ラジカル反応性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体成分を必須とし、ラジカル反応性炭素-炭素二重結合を2つ以上有する架橋剤を含むことがある成分である。単量体成分、架橋剤は共に付加反応が可能な成分であり、架橋剤は熱可塑性樹脂に橋架け構造を導入できる成分である。
【0016】
単量体成分としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン等のN-ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等が挙ることができる。上記単量体のうちジカル重合性単量体を1種又は2種以上を併用してもよい。アクリル酸又はメタクリル酸を合わせて(メタ)アクリル酸ということもあり、アクリレート又はメタクリレートを合わせて(メタ)アクリレートということもある。また、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを意味するものとする。
【0017】
重合性成分において、単量体成分としてニトリル系単量体を含むと、得られる樹脂粒子は耐溶剤性に優れ、また成分(A)との相溶性に優れるために好ましい。なかでも、耐熱性の点で、ニトリル系単量体はアクリロニトリル(AN)やメタクリロニトリル(MAN)を含むと、好ましい。
【0018】
ニトリル系単量体がアクリロニトリルを含む場合、その含有量は、ニトリル系単量体に対して、好ましくは5~90重量%である。アクリロニトリルの含有量が上記範囲であると、外殻を構成する熱可塑性樹脂の耐熱性の向上や耐溶剤性が向上する傾向がある。アクリロニトリルの含有量の上限は、さらに好ましくは80重量%、特に好ましくは70重量%である。一方、アクリロニトリルの含有量の下限は、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%である。
ニトリル系単量体がメタクリロニトリルを含む場合、その含有量は、ニトリル系単量体に対して、好ましくは5~90重量%である。メタクリロニトリルの含有量が上記範囲にあると、外殻のガスバリア性が向上する傾向がある。メタクリロニトリルの含有量の上限は、さらに好ましくは80重量%、特に好ましくは70重量%である。一方、メタクリロニトリルの含有量の下限は、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%である。
【0019】
ニトリル系単量体がアクリロニトリル(AN)及びメタクリロニトリル(MAN)を含む場合、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルの重量比(AN/MAN)は、特に限定はないが、好ましくは10/90以上90/10以下である。AN/MANが10/90未満であると、ガスバリア性が低下することがある。一方、AN/MANが90/10を超えると、外殻の柔軟性が低下することがある。AN/MANの上限は、より好ましくは80/20、さらに好ましくは70/30である。一方、AN/MANの下限は、より好ましくは20/80、さらに好ましくは30/70である。
【0020】
単量体成分がニトリル系単量体を含む場合、重合性成分に占めるニトリル系単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは15~100重量%である。ニトリル系単量体の重量割合が15重量%未満であると、得られる樹脂粒子の耐溶剤性が低くなることがある。ニトリル系単量体の重量割合の上限は、より好ましくは99.5重量%、さらに好ましくは99.0重量%、特に好ましくは98.0重量%、最も好ましくは94重量%である。一方、ニトリル系単量体の重量割合の下限は、より好ましくは30重量%、さらに好ましくは40重量%、特に好ましくは50重量%、最も好ましくは60重量%である。
【0021】
重合性成分が、単量体成分としてカルボキシル基含有単量体を含むと、得られる樹脂粒子は耐熱性や耐溶剤性に優れるために好ましい。なかでも、耐熱性の点で、アクリル酸や、メタクリル酸が好ましい。
【0022】
単量体成分がカルボキシル基含有単量体を含む場合、重合性成分に占めるカルボキシル基含有単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは10~80重量%である。カルボキシル基含有単量体が10重量%未満の場合、十分な耐溶剤性向上が得られないことがある。一方、カルボキシル基含有単量体の重量割合が80重量%超の場合、外殻の柔軟性が低下することがある。カルボキシル基含有単量体の重量割合の上限は、より好ましくは70重量%、さらに好ましくは60重量%、特に好ましくは50重量%、最も好ましくは45重量%である。カルボキシル基含有単量体の重量割合の下限は、より好ましくは15重量%、さらに好ましくは20重量%、特に好ましくは25重量%、最も好ましくは30重量%である。
【0023】
単量体成分がニトリル系単量体及びカルボキシル基含有単量体を含む場合、重合性成分に占めるカルボキシル基含有単量体及びニトリル系単量体の合計の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは25~100重量%、より好ましくは50~100重量%、さらに好ましくは70~100重量%、特に好ましくは80~100重量%、最も好ましくは90~100重量%である。
【0024】
また、単量体成分がニトリル系単量体及びカルボキシル基含有単量体を含む場合、カルボキシル基含有単量体及びニトリル系単量体の合計におけるカルボキシル基含有単量体の比率は、特に限定はないが、好ましくは10~90重量%である。カルボキシル基含有単量体の比率が10重量%未満であると耐熱性及び耐溶剤性の向上が不十分となることがある。また、カルボキシル基含有単量体の比率が90重量%超の場合は、外殻の柔軟性が低下することがある。カルボキシル基含有単量体の比率の上限は、より好ましくは70重量%、さらに好ましくは50重量%、特に好ましくは45重量%、最も好ましくは40重量%である。一方、カルボキシル基含有単量体の比率の下限は、より好ましくは15重量%、さらに好ましくは20重量%、特に好ましくは25重量%、最も好ましくは30重量%である。
【0025】
重合性成分において、単量体成分として塩化ビニリデン系単量体を含むと、ガスバリア性が向上する。また、重合性成分が(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び/又はスチレン系単量体を含むと成分(A)との相溶性をコントロールし易くなる。重合性成分が(メタ)アクリルアミド系単量体を含むと耐熱性が向上する。
重合性成分において、単量体成分として塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体及びスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む場合、重合性単量体に占めるその重量割合は、好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下、特に好ましくは30重量%以下である。80重量%以上含有すると耐熱性が低下することがある。
【0026】
重合性成分は、上述のとおり、架橋剤を含んでもよい。架橋剤を用いて重合することにより、得られる樹脂粒子のガスバリア性や耐溶剤性を向上させることができる。
架橋剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#700ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、EO変性ビスフェノールAジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ノナンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5ペンタンジオールジアクリレート、等のジ(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。上記架橋剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
架橋剤は重合性成分に含まれなくてもよいが、その含有量については特に限定はなく、重合性成分に占める架橋剤の重量割合は、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%、特に好ましくは2重量%、最も好ましくは1重量%である。一方、架橋剤の重量割合の下限は、好ましくは0重量%である。架橋剤の重量割合が6重量%超であると、外殻である熱可塑性樹脂の剛性が高くなりすぎることがある。
【0028】
粒子(B)は有機化合物を内包する。粒子(B)が有機化合物を内包することで、粒子(B)の内圧が上昇し、導電性ペースト組成物作成時に粒子(B)の破裂や潰れを抑制することにより、導電性ペースト組成物は分散安定性及び塗布性に優れるものになると考えられる。
有機化合物としては、たとえば、メタン、エタン、プロパン、(イソ)ブタン、(イソ)ペンタン、(イソ)ヘキサン、(イソ)ヘプタン、(イソ)オクタン、(イソ)ノナン、(イソ)デカン、(イソ)ウンデカン、(イソ)ドデカン、(イソ)トリデカン等の炭素数3~13の炭化水素;(イソ)ヘキサデカン、(イソ)エイコサン等の炭素数13超で20以下の炭化水素;プソイドクメン、石油エーテル、初留点150~260℃及び/又は蒸留範囲70~360℃であるノルマルパラフィンやイソパラフィン等の石油分留物等の炭化水素;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の炭素数1~12の炭化水素のハロゲン化物;メチルパーフルオロプロピルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、テトラフルオロエチルトリフルオロエチルエーテル等のハイドロフルオロエーテル;テトラフルオロエタン、トリフルオロエタン、ペンタフルオロプロパン、ヘプタフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロパン、デカフルオロペンタン、トリデカフルオロオクタン等のハイドロフルオロカーボン;テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル-n-プロピルシラン等の炭素数1~5のアルキル基を有するシラン類;アゾジカルボンアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等の熱分解してガスを生成する化合物等が挙げられ、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、有機化合物は直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。
【0029】
有機化合物は加熱することで気化するものでもよい。また、有機化合物は沸点を有するものであると、導電性ペーストを焼結する際に有機化合物が気化し、効率よく連泡を生じる点で好ましい。有機化合物が沸点を有する場合、その沸点については特に限定はないが、好ましくは-50~100℃である。有機化合物の沸点が-50℃以上であると効率的に有機化合物が粒子(B)に内包される傾向がある。一方、有機化合物の沸点が100℃以下であると粒子(B)の内圧が十分に保持できる傾向がある。有機化合物の沸点の上限は、より好ましくは70℃、さらに好ましくは60℃、特に好ましくは35℃である。一方、有機化合物の沸点の下限は、より好ましくは-30℃、さらに好ましくは-15℃である。
【0030】
有機化合物は、炭素数5以下の炭化水素を含むと、粒子(B)の耐圧性を向上させることができるため好ましい。一方、有機化合物が炭素数6以上の炭化水素を含むと、粒子(B)における有機化合物の保持性を向上させることができる。炭素数5以下の炭化水素としてはイソブタン、イソペンタンが好ましい。一方、炭素数6以上の炭化水素としては、イソヘキサン、イソオクタンが好ましい。
【0031】
粒子(B)に内包される有機化合物は、液体状、固体状、気体状のいずれでもよく、分散性の点で、液体状及び/又は気体状であると好ましく、液体状又は気体状であるとより好ましい。
【0032】
粒子(B)における有機化合物の内包率は、粒子(B)の重量に対する粒子(B)に内包された有機化合物の重量の百分率で定義される。
有機化合物の内包率は、特に限定されないが、粒子(B)の重量に対して、好ましくは0.2~50重量%である。有機化合物の内包率が上記範囲であると、粒子(B)は高い耐圧性を有することができる。有機化合物の内包率の上限は、より好ましくは40重量%、さらに好ましくは35重量%、特に好ましくは30重量%である。一方、有機化合物の内包率の下限は、より好ましくは0.8重量%、さらに好ましくは1.2重量%、特に好ましくは1.5重量%である。なお、粒子(B)における有機化合物の内包率は、実施例で測定される方法によるものである。
【0033】
粒子(B)の体積平均粒子径(D50)(以下、単に平均粒子径ということもある)は、特に限定はないが、好ましくは0.50~100μmである。粒子(B)の平均粒子径が上記範囲であると、ペースト組成物における粒子(B)の分散性が向上する傾向がある。粒子(B)の体積平均粒子径の上限は、より好ましくは50μm、さらに好ましくは30μm、特に好ましくは15μm、最も好ましくは10μmである。一方、粒子(B)の体積平均粒子径の下限は、より好ましくは1.0μm、さらに好ましくは1.5μm、特に好ましくは2.0μmである。なお、粒子(B)の体積平均粒子径(D50)は、実施例で測定される方法によるものである。
【0034】
粒子(B)の粒度分布の変動係数(Cv)は、特に限定はないが、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下、特に好ましくは30%以下である。一方、粒子(B)の粒度分布の変動係数(Cv)下限は、好ましくは3.0%以上である。粒子(B)の粒度分布の変動係数(Cv)が50%超であると、導電性ペースト組成物の塗布性が低下することがある。
粒子(B)の粒度分布の変動係数(Cv)は、以下に示す計算式(1)及び(2)で算出される。
【0035】
【数1】
(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、x
iはi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
【0036】
粒子(B)の内径(d1)と外径(d2)の比(d1/d2)は、特に限定はないが、好ましくは0.1~0.999である。粒子(B)のd1/d2が0.1未満であると、導電性ペーストの分散安定性が低下することがある。一方、粒子(B)のd1/d2が0.999超であると導電性ペーストの分散安定性が低下することがある。また、耐圧性が低くなり、導電性ペースト組成物や導電性膜組成物の製造時に潰れてしまうこともある。d1/d2の上限は、より好ましくは0.995、さらに好ましくは0.990、特に好ましくは0.985、最も好ましくは0.980である。一方、d1/d2の下限は、より好ましくは0.35、さらに好ましくは0.50、特に好ましくは0.70、最も好ましくは0.75である。なお、粒子(B)のd1/d2は、実施例で測定される方法によるものである。
【0037】
粒子(B)の真比重は、特に限定はないが、好ましくは0.0020~1.8である。粒子(B)の比重が、上記範囲外であると導電性ペーストの分散安定性が低下することがある。粒子(B)の真比重の上限は、より好ましくは1.1、さらに好ましくは0.7、特に好ましくは0.4、最も好ましくは0.2である。粒子(B)の真比重の下限は、より好ましくは0.0060、さらに好ましくは0.010、特に好ましくは0.012、最も好ましくは0.015である。なお、粒子(B)の真比重は、実施例で測定される方法によるものである。
【0038】
粒子(B)は微粒子を含んでいてもよい。粒子(B)が微粒子を含むと、粒子(B)の分散性を向上させることができる。粒子(B)が微粒子を含む場合、微粒子は樹脂粒子の表面に付着していてもよく、樹脂粒子の外殻である熱可塑性樹脂の内部にあってもよい。微粒子が樹脂粒子の表面に付着した状態は、樹脂粒子の外殻の外表面に微粒子が吸着した状態でもよく、樹脂粒子の外殻の外表面にめり込み、固定された状態であってもよく、その両方の状態であってもよい。
【0039】
微粒子としては、無機物、有機物のいずれの素材であってもよい。微粒子の形状としては、球状、針状や板状等が挙げられる。
微粒子を構成する無機物としては、たとえば、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、タルク、ベントナイト、アルミナシリケート、パイロフィライト、モンモリロナイト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラスフレーク、窒化ホウ素、炭化珪素、シリカ、アルミナ、雲母、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ハイドロサルタイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、セラミックビーズ、ガラスビーズ、水晶ビーズ、ガラスマイクロバルーン等が挙げられる。また、後述する導電性材料(C)の粒状物であってもよい。
【0040】
微粒子を構成する有機物としては、たとえば、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレンワックス、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、硬化ひまし油、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。また、前述した高分子成分(A)の粒状物であってもよい。
微粒子を構成する無機物や有機物は、シランカップリング剤、パラフィンワックス、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物、脂肪酸エステル等の表面処理剤で処理されていてもよく、未処理のものでもよい。
【0041】
微粒子の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.001~30μm、より好ましくは0.005~25μm、さらに好ましくは0.01~20μmである。ここでいう微粒子の平均粒子径とは、レーザー回折法により測定された微粒子の粒子径である。
微粒子の平均粒子径と樹脂粒子の平均粒子径との比率(微粒子の平均粒子径/樹脂中空粒子の平均粒子径)は、樹脂粒子表面への微粒子の付着性の点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.05以下である。
【0042】
粒子(B)が微粒子を含む場合、粒子(B)に占める微粒子の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~95重量%、より好ましくは20~90重量%、さらに好ましくは40~85重量%、特に好ましくは60~80重量%である。微粒子の重量割合が5重量%未満であると、粒子(B)のハンドリング性が低下することがある。一方、微粒子の重量割合が95重量%であると、分散性が低下することがある。
【0043】
粒子(B)は
図1に示すような、熱可塑性樹脂からなる外殻(シェル)16と、それに内包される有機化合物(コア)17とから構成されるコア-シェル構造を有するものであってもよい。また、粒子(B)は加熱することで(樹脂粒子全体が)膨張する熱膨張性微小球であってもよい。樹脂中空粒子は、熱膨張性微小球の膨張体であると、本願効果を奏する点で好ましい。
粒子(B)が熱膨張性微小球を含む場合、熱膨張性微小球の膨張開始温度(Ts)は、特に限定はないが、好ましくは70~250℃である。熱膨張性微小球のTsが上記範囲外であると、充分な膨張倍率が得られないことがある。熱膨張性微小球の膨張開始温度の上限は、より好ましくは200℃、さらに好ましくは180℃、特に好ましくは165℃、最も好ましくは150℃である。一方、熱膨張性微小球の膨張開始温度の下限は、より好ましくは85℃、さらに好ましくは100℃、特に好ましくは110℃、最も好ましくは115℃である。なお、熱膨張性微小球の膨張開始温度(Ts)は、実施例で測定される方法によるものである。
【0044】
粒子(B)が熱膨張性微小球を含む場合、熱膨張性微小球の最大膨張温度(Tmax)は、特に限定はないが、好ましくは100~300℃である。熱膨張性微小球のTmaxが上記範囲外であると、充分な膨張倍率が得られないことがある。熱膨張性微小球のTmaxの上限は、より好ましくは250℃、さらに好ましくは200℃、特に好ましくは180℃、最も好ましくは170℃である。一方、熱膨張性微小球のTmaxの下限は、より好ましくは85℃、さらに好ましくは100℃、特に好ましくは110℃、最も好ましくは115℃である。なお、熱膨張性微小球の最大膨張温度(Tmax)は、実施例で測定される方法によるものである。
【0045】
粒子(B)が熱膨張性微小球を含む場合、熱膨張性微小球の膨張倍率は、特に限定はないが、好ましくは10倍以上、より好ましくは20倍以上、さらに好ましくは30倍以上、特に好ましくは40倍以上、最も好ましくは50倍以上である。また、熱膨張性微小球の最大膨張倍率の上限は、好ましくは300倍である。
【0046】
〔樹脂粒子(B)の製造方法〕
樹脂粒子(B)の製造方法としては、たとえば、以下の1)、2)の方法が挙げられる。
1)重合性成分と有機化合物を含む油性混合物を水性分散媒中に分散させた懸濁液を調整し、重合性成分を重合させ、樹脂粒子(樹脂粒子(B))を製造する方法。
2)1)の方法で得られた樹脂粒子を加熱膨張させて、樹脂粒子(B)を製造する方法。
以下に、上記の樹脂粒子(B)の製造方法の詳細を示す。
【0047】
樹脂粒子(樹脂粒子(B))の製造方法として、上述のように重合性成分と有機化合物を含む油性混合物を水性分散媒中に分散させた懸濁液を調整し、重合性成分を重合する方法が挙げられる。本発明においてこの方法は、熱膨張性微小球の製造方法でもある。
【0048】
油性混合物は重合開始剤を含んでもよい。重合開始剤としては、特に限定はないが、過酸化物やアゾ化合物等が挙げられる。
過酸化物としては、たとえば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジベンジルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール;クメンハイドロパーキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステル等が挙げられる。
【0049】
アゾ化合物としては、たとえば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等が挙げられる。
【0050】
重合開始剤の配合量については、重合性成分100重量部に対して、特に限定はないが、0.05~10重量部が好ましく、0.1~8重量部がより好ましく、0.2~5重量部がさらに好ましい。重合開始剤の配合量が0.05重量部未満の場合、重合反応が十分に行われず、結果として樹脂粒子の強度が低下することがある。一方、重合開始剤の配合量が10重量部超の場合、重合体の重合度を大きくできず、結果として樹脂粒子の強度が低下することがある。上記の重合開始剤は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0051】
水性分散媒は、油性混合物を分散させるイオン交換水等の水を主成分とする媒体であり、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、アセトン等の親水性有機性の溶媒をさらに含有してもよい。本発明における親水性とは、水に任意に混和できる状態であることを意味する。水性分散媒の使用量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、100~1000重量部の水性分散媒を使用するのが好ましい。
【0052】
水性分散媒は、電解質をさらに含有してもよい。電解質としては、たとえば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらの電解質は、1種又は2種以上を併用してもよい。電解質の含有量については、特に限定はないが、水性分散媒100重量部に対して0~50重量部含有するのが好ましい。
【0053】
水性分散媒は、カルボン酸(塩)基及びホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基が置換したアルキル基が窒素原子と結合した構造を有するポリアルキレンイミン類、水酸基、カルボン酸(塩)基及びホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1-置換化合物類、重クロム酸カリウム、亜硝酸アルカリ金属塩、金属(III)ハロゲン化物、ホウ酸、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類及び水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有してもよい。なお、本発明における水溶性とは、水100gあたり1g以上溶解する状態であることを意味する。
【0054】
水性分散媒中に含まれる水溶性化合物の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001~1.0重量部、より好ましくは0.0001~0.5重量部、さらに好ましくは0.0003~0.1重量部、特に好ましくは0.001~0.05重量部である。
【0055】
水性分散媒は、電解質や水溶性化合物以外に、分散安定剤や分散安定補助剤を含有していてもよい。
分散安定剤としては、特に限定はないが、たとえば、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカ、アルミナゾル、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの分散安定剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。分散安定剤の配合量は、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.05~100重量部、より好ましくは0.2~70重量部である。
分散安定補助剤としては、特に限定はないが、たとえば、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。これらの分散安定補助剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0056】
水性分散媒は、たとえば、水(イオン交換水)に、必要に応じて、電解質、水溶性化合物、分散安定剤、分散安定補助剤等を配合して調製される。重合時の水性分散媒のpHは、水溶性化合物、分散安定剤、分散安定補助剤の種類によって適宜決められる。
重合工程では、水酸化ナトリウムや、水酸化ナトリウム及び塩化亜鉛の存在下で重合を行ってもよい。
【0057】
上記の樹脂粒子(樹脂粒子(B))の製造方法においては、所定粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒中に懸濁分散させる。
油性混合物を懸濁分散させる方法としては、たとえば、ホモミキサー(たとえば、プライミクス社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(たとえば、株式会社ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜懸濁法、超音波分散法等の一般的な分散方法が挙げられる。
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散媒に分散された分散液を加熱することにより、懸濁重合を開始する。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、たとえば、単量体の浮上や重合後の樹脂粒子の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
【0058】
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30℃以上90℃以下、より好ましくは40℃以上88℃以下で制御されるのが好ましい。反応温度を保持する時間は、1~20時間程度が好ましい。重合初期圧力については特に限定はないが、ゲージ圧で好ましくは0~5MPa、より好ましくは0.2~3MPaである。
【0059】
得られたスラリーを遠心分離機、加圧プレス機、真空脱水機等により濾過し、含水した湿粉が得られる。湿粉の含水率は、特に限定はないが、好ましくは10~50重量%、より好ましくは15~45重量%、さらに好ましくは20~40重量%である。得られた湿粉を、棚型乾燥機、間接加熱乾燥機、流動乾燥機、真空乾燥機、振動乾燥機、気流乾燥機等により乾燥し、乾燥粉体が得られる。得られた乾燥粉体の含水率は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、1重量%以下の順で好ましい。
イオン性物質の含有量を低減させる目的で、得られた湿粉又は乾燥粉体を水洗及び/又は再分散後に再濾過し、乾燥させても構わない。また、スラリーを噴霧乾燥機、流動乾燥機等により乾燥し、乾燥粉体を得てもよい。
【0060】
また、樹脂粒子(B)の製造方法は上述のとおり、上記方法にて得られた熱膨張性微小球を加熱膨張させる方法も挙げることができる。本発明においてこの方法は、樹脂中空粒子の製造方法でもある。樹脂粒子の加熱膨張の方法としては、特に限定はないが、乾式加熱膨張法、湿式加熱膨張法等のいずれでもよい。
乾式加熱膨張法としては、特開2006-213930号公報に記載されている方法、特に内部噴射方法等が挙げられる。また、別の乾式加熱膨張法としては、特開2006-96963号公報に記載の方法等が挙げられる。湿式加熱膨張法としては、特開昭62-201231号公報に記載の方法等が挙げられる。
【0061】
樹脂粒子(B)が上述の微粒子を含む場合、その製造方法としては、たとえば、樹脂粒子と微粒子とを混合し(混合工程)、得られた混合物を樹脂粒子の外殻である熱可塑性樹脂の軟化点超の温度に加熱して、樹脂粒子を膨張させるとともに、微粒子を樹脂粒子の外殻の外表面に付着させる(付着工程)方法が挙げられる。
【0062】
混合工程に用いられる装置としては、特に限定はなく、容器と攪拌羽根といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。また、一般的な揺動又は攪拌を行える粉体混合機を使用してもよい。粉体混合機としては、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動攪拌又は攪拌を行える粉体混合機が挙げられる。また、近年、攪拌装置を組み合わせたことにより効率のよい多機能な粉体混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)及びハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)等を使用してもよい。
【0063】
付着工程は、前記混合工程で得られた、熱膨張性微小球と微粒子充填剤とを含む混合物を、熱膨張性微小球の外殻を構成する熱可塑性樹脂の軟化点超の温度に加熱する工程である。付着工程では、熱膨張性微小球を膨張させるとともに、外殻の外表面に微粒子充填剤を付着させる。
【0064】
加熱は、一般的な接触伝熱型又は直接加熱型の混合式乾燥装置を用いて行えばよい。混合式乾燥装置の機能については、特に限定はないが、温度調節可能で原料を分散混合する能力や、場合により乾燥を早めるための減圧装置や冷却装置を備えたものが好ましい。加熱に使用する装置としては、特に限定はなく、たとえば、レーディゲミキサー(株式会社マツボー製)、ソリッドエアー(株式会社ホソカワミクロン)等が挙げられる。
加熱の温度条件については、特に限定はないが、樹脂粒子の最適膨張温度とするのが良く、好ましくは60~400℃、より好ましくは70~300℃、さらに好ましくは80~250℃である。
【0065】
〔導電性材料(C)〕
導電性材料(C)は、導電性を有する成分である。導電性材料(C)としては、たとえば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛;グラフェン;活性炭;コークス;カーボンナノ繊維、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ等のカーボンナノチューブ;銀、銅、錫、亜鉛、酸化亜鉛、ニッケル、マンガン等の金属微粒子;酸化インジウムスズなどの複合金属微粒子等が挙げられ、1種又は2種以上併用してもよい。
上記導電性材料(C)のなかでも、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノ繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、及びグラフェンから選ばれる少なくとも1種であると、導電性ペーストの分散性、塗布性に優れ、導電性能をより向上させることができるため好ましい。
【0066】
導電性材料(C)の平均粒子径は特に限定はないが、好ましくは5~200nm、より好ましくは20~80nmである。導電性炭素粒子の平均粒子径は、たとえば、粒子径分布測定装置(LA-920、株式会社堀場製作所製)等により測定できる。
【0067】
〔液状媒体(D)〕
液状媒体(D)は、高分子成分(A)、樹脂粒子(B)、導電性材料(C)を分散できる液状物であれば、特に限定はない。
液状媒体としては、たとえば、水;イソヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン等のアルカン;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;N-メチルピロリドン;クロロホルム;ジメチルホルムアミド;アセトニトリル;ジメチルスルホキシド;ジメチルアセトアミド等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
液状媒体(D)が沸点を有する場合、特に限定はないが、液状媒体(D)の沸点は好ましくは30~200℃、より好ましくは50~170℃、さらに好ましくは70~150℃、特に好ましくは80~130℃である。
【0068】
〔その他成分〕
本発明の導電性ペースト組成物は、本願効果を阻害しない範囲で、上記成分以外のその他成分を含んでもよい。その他成分としては、特に限定はないが、たとえば、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、粘度調整剤等が挙げられる。
界面活性剤としては、特に限定はなく、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
消泡剤としては、たとえば、ポリシロキサン系消泡剤、鉱物油系消泡剤、シリカ微粉末系消泡剤等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
pH調整剤としては、たとえば、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、グルコン酸等の有機酸;塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸等の無機酸;アルカリ(土類)金属の水酸化物;アンモニア;炭酸塩;ヒドロキシエタンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロトリ(メチルホスホン酸)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸等の有機リン酸系化合物;エチレンジアミン四酢酸、ニトリロトリ酢酸等のアミノカルボン酸系化合物;アミン化合物等が挙げられ、必要に応じて、1種又は2種以上を併用してもよい。
粘度調整剤としては、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、ゼラチン、コーンスターチ、アルギン酸等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0069】
〔導電性ペースト組成物、その製造方法〕
本発明の導電性ペースト組成物は、上記の高分子成分(A)、樹脂粒子(B)、導電性材料(C)、及び液状媒体(D)を含むものであり、分散安定性及び塗布性に優れる。本発明の導電性ペースト組成物は、のり状のものである。
【0070】
本発明の導電性ペースト組成物の25℃における粘度は、特に限定はないが、好ましくは1000~200000mPa・sである。導電性ペースト組成物の25℃における粘度が上記範囲であると、導電性ペースト組成物の分散安定性が向上する傾向がある。導電性ペースト組成物の25℃における粘度の上限は、より好ましくは150000mPa・s、さらに好ましくは100000mPa・s、特に好ましくは80000mPa・s、最も好ましくは50000mPa・sである。一方、導電性ペースト組成物の25℃における粘度の下限は、より好ましくは2000mPa・s、さらに好ましくは5000mPa・s、特に好ましくは8000mPa・s、最も好ましくは10000mPa・sである。なお、導電性ペースト組成物の粘度は、たとえば、25℃雰囲気下でB型粘度計(BL型、東京計器株式会社製)を用いて測定できる。
【0071】
本発明の導電性ペースト組成物における粒子(B)の含有量は、特に限定はないが、成分(A)100重量部に対して、好ましくは0.5~30重量部である。粒子(B)の含有量が0.5重量部未満であると、導電性ペースト組成物の分散安定性が低下することがある。一方、粒子(B)の含有量が30重量部超であると、導電性ペースト組成物の塗布性が低下することがある。粒子(B)の含有量の上限は、より好ましくは20重量部、さらに好ましくは15重量部、特に好ましくは10重量部である。一方、粒子(B)の含有量の下限は、より好ましくは1重量部、さらに好ましくは2重量部、特に好ましくは3重量部である。
【0072】
本発明の導電性ペースト組成物における導電性材料(C)の含有量は、特に限定はないが、成分(A)100重量部に対して、好ましくは30~500重量部である。導電性材料(C)の含有量が30重量部未満であると、導電性能が不足することがある。一方、導電性材料(C)の含有量が500重量部超であると、分散安定性が低下することがある。導電性材料(C)の含有量の上限は、より好ましくは400重量部、さらに好ましくは300重量部、特に好ましくは200重量部、最も好ましくは100重量部である。一方、導電性材料(C)の含有量の下限は、より好ましくは40重量部、さらに好ましくは50重量部、特に好ましくは60重量部、最も好ましくは70重量部である。
【0073】
本発明の導電性ペースト組成物における成分(A)100重量部に対する液状媒体(D)の含有量は、特に限定はないが、成分(A)100重量部に対して、好ましくは10~2000重量部である。液状媒体(D)の含有量が上記範囲外であると、分散安定性及び塗布性が低下することがある。液状媒体(D)の含有量の上限は、より好ましくは1750重量部、さらに好ましくは1500重量部、特に好ましくは1250重量部、最も好ましくは1000重量部である。一方、液状媒体(D)の含有量の下限は、より好ましくは30重量部、さらに好ましくは50重量部、特に好ましくは70重量部、最も好ましくは100重量部である。
【0074】
本発明の導電性ペースト組成物の25℃における表面張力は、特に限定はないが、好ましくは10~50mN/mである。導電性ペースト組成物の表面張力が上記範囲であると、導電性ペースト組成物の塗布性が向上する傾向がある。導電性ペースト組成物の表面張力の上限は、より好ましくは45mN/m、さらに好ましくは43mN/m、特に好ましくは40mN/mである。一方、導電性ペースト組成物の表面張力の下限は、より好ましくは15mN/m、さらに好ましくは17mN/m、特に好ましくは20mN/mである。導電性ペースト組成物の25℃における表面張力は、自動表面張力計(CBVP-Z、協和界面科学株式会社製)を用い、プレート法により測定できる。
【0075】
本発明の導電性ペースト組成物を基材に塗布して使用する場合、基材との接触角は好ましくは90~150°、より好ましくは100~140°である。基材との接触角が上記範囲内であると、導電性ペースト組成物をより均一に塗布できる傾向がある。導電性ペースト組成物と基材との接触角は、自動接触角測定器(OCA20、英弘精機株式会社製)を用い、1マイクロリットル程度の導電性ペースト組成物の液滴を基材表面に滴下し、30秒後の接触角を測定することにより求められる。
導電性ペースト組成物を塗布する基材としては、塗布したものの用途にもよるが、後述するものが挙げられる。
【0076】
本発明の導電性ペースト組成物は、蓄電デバイスの部材を製造する際に使用することができる。導電性ペーストが使用できる蓄電デバイスとしては、たとえば、キャパシタ、二次電池、燃料電池等が挙げられる。なかでも、二次電池、燃料電池に好適に使用できる。二次電池に使用される場合は、たとえば、その電極を製造する際に使用できる。また、燃料電池に使用される場合は、たとえば、撥水部材を製造する際に使用できる。
【0077】
導電性ペースト組成物がキャパシタや二次電池を製造する際に使用され、特に電極(正極及び/又は負極)を製造する際に使用される場合、上記成分以外に正極活物質又は負極活物質を含んでもよい。
正極活物質としては、たとえば、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO4)、ピロリン酸鉄(Li2FeP2O7)、コバルト酸リチウム複合酸化物(LiCoO2)、スピネル型マンガン酸リチウムコバルト酸リチウム複合酸化物(LiMn2O4)、マンガン酸リチウム複合酸化物(LiMnO2)、ニッケル酸リチウム複合酸化物(LiNiO2)、ニオブ酸リチウム複合酸化物(LiNbO2)、鉄酸リチウム複合酸化物(LiFeO2)、マグネシウム酸リチウム複合酸化物(LiMgO2)、カルシウム酸リチウム複合酸化物(LiCaO2)、銅酸リチウム複合酸化物(LiCuO2)、亜鉛酸リチウム複合酸化物(LiZnO2)、モリブテン酸リチウム複合酸化物(LiMoO2)、タンタル酸リチウム複合酸化物(LiTaO2)、タングステン酸リチウム複合酸化物(LiWO2)、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン複合酸化物(LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)、酸化マンガンニッケル(LiNi0.5Mn1.5O4)、酸化マンガン(MnO2)、リチウム過剰系ニッケル-コバルト-マンガン複合酸化物、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、バナジウム系酸化物、硫黄系酸化物、シリケート系酸化物等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0078】
導電性ペースト組成物が正極活物質を含む場合、その含有量は特に限定はないが、導電性材料(C)100重量部に対して、好ましくは100~2000重量部、より好ましくは500~1600重量部、特に好ましくは800~1200重量部である。
【0079】
負極活物質としては、たとえば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料;シリコン系;SiO、SnO、SnO2、CuO、Li4Ti5O12等の金属酸化物系;Si-Al、Al-Zn、Si-Mg、Al-Ge、Si-Ge、Si-Ag、Zn-Sn、Ge-Ag、Ge-Sn、Ge-Sb、Ag-Sn、Ag-Ge、Sn-Sb等の合金;リン酸スズガラス系等があげられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
導電性ペースト組成物が負極活物質を含む場合、その含有量は特に限定はないが、導電性材料(C)100重量部に対して、好ましくは100~2000重量部、より好ましくは500~1600重量部、特に好ましくは800~1200重量部である。
【0080】
本発明の導電性ペースト組成物について、その製造方法としては特に限定はなく、上記の高分子成分(A)、樹脂粒子(B)、導電性材料(C)、及び液状媒体(D)と、必要に応じて、その他の成分や電極用活物質等を混合する方法等が挙げられる。
混合については、特に限定はなく、容器と攪拌翼といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。攪拌翼としては、特に限定はないが、マックスブレンド翼、トルネード翼、フルゾーン翼等が挙げられる。また、一般的な揺動又は攪拌を行える混合機を使用してもよい。混合機としては、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等が挙げられる。混合機が挙げられる。また、攪拌装置を組み合わせたことにより効率のよい多機能な混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)及びハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)、フィルミクス(プライミクス株式会社)、ジェットペースタ(日本スピンドル製造株式会社)、KRCニーダ(株式会社栗本鐵工所製)、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー、株式会社写真化学)等を使用してもよい。その他にも、たとえば、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、振動ロッドミル、振動ボールミル、円盤型ミル、ジェットミル、サイクロンミル等の粉砕機を用いてもよく、超音波乳化機、連続式二軸混練機、高圧乳化機やマイクロリアクター等を使用してもよい。
【0081】
〔導電性膜組成物、及びその製造方法〕
本発明の導電性膜組成物は、上述の導電性ペースト組成物の乾燥物を含むものであり、均一性に優れる。導電性膜組成物は、導電性ペースト組成物の乾燥物を含む単層構造のものでもよく、導電性ペースト組成物の乾燥物を含む層を有する多層構造のものでもよい。
【0082】
本発明の導電性膜組成物の比重は、特に限定はないが、好ましくは0.2~6.5である。導電性膜組成物の比重が上記範囲外であると、十分な導電性が確保できないことがあり、また、機械的強度も低下することがある。導電性膜組成物の比重の上限は、より好ましくは5.5、さらに好ましくは4.5、特に好ましくは3.5、最も好ましくは2.5である。一方、導電性膜組成物の比重の下限は、より好ましくは0.25、さらに好ましくは0.5、特に好ましくは0.75、最も好ましくは1.0である。なお、導電性膜組成物の比重は、実施例で測定される方法によるものである。
【0083】
本発明の導電性膜組成物の水に対する接触角は、特に限定はないが、好ましくは100°~170°、より好ましくは110°~165°、さらに好ましくは120°~165°、特に好ましくは130°~160°である。
【0084】
本発明の導電性膜組成物の厚みは、特に限定はないが、好ましくは5~200μm、より好ましくは10~180μm、さらに好ましくは20~150μm、特に好ましくは30~120μm、最も好ましくは10~100μmである。導電性膜組成物の厚みが上記範囲外であると、導電性が十分な確保できないことがあり、また、柔軟性も低下することがある。
【0085】
本発明の導電性膜組成物がその内部に空隙を有する場合、導電性膜組成物の体積全体に占める空隙の割合は、特に限定はないが、好ましくは5~70%、より好ましくは5~50%、さらに好ましくは10~40%、特に好ましくは10~30%である。
【0086】
本発明の導電性膜組成物は、蓄電デバイスの部材を製造する際に使用することができる。導電性膜組成物が使用できる蓄電デバイスとしては、たとえば、キャパシタ、二次電池、燃料電池等が挙げられる。なかでも、二次電池、燃料電池に好適に使用できる。二次電池に使用される場合は、たとえば、その電極を製造する際に使用できる。また、燃料電池に使用される場合は、たとえば、撥水部位を製造する際に使用できる。
【0087】
本発明の導電性膜組成物について、その製造方法としては、たとえば、基材に上述の導電性ペースト組成物を塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。
導電性膜組成物の製造時に使用される基材としては、導電性膜組成物の使用用途によって、適宜選択することができる。導電性膜組成物が二次電池に含まれる場合、基材としては、たとえば、C、Ti、Cr、Mo、Ru、Rh、Ta、W、Os、Ir、Pt、Au、Al、Ni等の導電性物質、これら導電性物質の二種類以上を含有する合金(たとえば、ステンレス鋼)を挙げることができ、その形状としては、たとえば、箔状基材、三次元基材、貫通基材、多孔質基材、パンチング基材、エッチング基材、穴あき基材等が挙げられる。上記基材は、二次電池の電極用集電体として機能するものであると好ましい。
【0088】
導電性膜組成物が燃料電池に含まれる場合、基材としては多孔質であると好ましい。多孔質の基材(以下、単に多孔質基材ということがある)としては、たとえば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布(カーボンフェルト)等の炭素系多孔質基材が挙げられる。また、多孔質基材は、フッ素系樹脂等で撥水処理が施されたものであってもよい。
多孔質基材の厚みは、特に限定はないが、好ましくは50~1000μm、より好ましくは80~600μm、特に好ましくは100~400μmである。
【0089】
上記の基材以外にも、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン基材;ポリカーボネート基材;ポリエチレンテレフタレート;ポリ乳酸等のポリエステル基材;ポリスチレン基材;AS樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリアミド基材;ポリ塩化ビニル基材;ポリ塩化ビニリデンの各種基材;セロハン基材;紙基材等の高分子基材が挙げられる。
【0090】
導電性ペースト組成物を基材に塗布する方法としては、特に限定はないが、均一にコーティングできる方法であればよく、たとえば、キャピラリーコート法、スピンコート法、スリットダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、バーコーター法、グラビアコーター法、ダイコーター法や、ドクターブレード等のブレード、ワイヤーバー、スキージ等の器具を基材の表面に接触させ、当該表面に一定の圧力をかけながら、余分なペースト組成物を掻き取る方法等が挙げられる。
特に導電性膜組成物が燃料電池に含まれる場合、上記導電性ペースト組成物を使用することで、多孔質基材の内部に導電性ペースト組成物が実質的に浸透しないようになり、基材内部の空隙の閉塞を防ぐことができるため、好ましい。
【0091】
基材として多孔質基材を用いる場合、多孔質基材は予め撥水処理が施されたものであることが好ましい。これにより、さらにガス拡散層の撥水性を向上させることができる。また、本発明の撥水層を導電性多孔質基材の表面上に設ける際に、より確実に当該基材表面上に形成させることができる。
【0092】
導電性ペースト組成物の乾燥物を製造する際の乾燥温度としては、特に限定はないが、好ましくは50~200℃、より好ましくは80~150℃、さらに好ましくは、100~130℃である。
また、導電性ペースト組成物の乾燥物を製造する際の乾燥温度としては、特に限定はなく、乾燥温度等に応じて適宜決定でき、好ましくは5~60分、より好ましくは10~30分である。
導電性ペースト組成物の乾燥物を製造する方法としては、たとえば、温風乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線照射乾燥、電子線照射乾燥等の方法が挙げられる。
【0093】
〔二次電池〕
本発明の二次電池は、上述の導電性膜組成物を含むものであり、電極及び電解液を少なくとも含み、セパレータを含んでもよいものである。導電性膜組成物が電極(正極及び/又は負極)に含まれると、電極中において使用原料が均一に分散した状態となり、好ましい。
【0094】
本発明の二次電池に含まれる電解液は電解質と溶媒とを混合し、溶媒に電解質を溶解させたものである。
電解質としては、たとえば、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C4F9SO3Li、CF3SOOLi、(CF3CO)2NLi、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)2NLi等が挙げられる。
【0095】
電解液に使用する溶媒としては、電解質を溶解できるものであれば特に限定はないが、たとえば、水、有機溶媒等が挙げられる。
有機溶媒としては、たとえば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等のカーボネート類;γ―ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物類等が用いられ、またこれらの混合液を使用してもよい。中でも、誘電率が高く、広い電位流域で化学的安定であるのでカーボネート類が好ましい。
【0096】
本発明の二次電池は、セパレータを含んでもよい。セパレータは、蓄電デバイスにおいて、正極と負極の間の短絡を防ぐために用いられるものである。
セパレータとしては、特に限定はないが、たとえば、微多孔膜フィルム状のセパレータや、不織布状のセパレータ等が挙げられる。また、セパレータの片面もしくは両面が、絶縁性を有する無機酸化物フィラーを含む無機酸化物、ポリフッ化ビニリデン樹脂やポリアラミド樹脂等でコーティングされたものでもよい。
【0097】
セパレータの組成を構成する樹脂としては、特に限定はないが、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;ポリスチレン系樹脂;メタクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリフェニレンサルファイド系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。
【0098】
本発明の二次電池の形状としては、特に限定はないが、たとえば、コイン型、円筒型、角型、シート型等が挙げられる。
二次電池の外装材料は、特に限定はないが、例えば、金属ケース、モールド樹脂、アルミラミネートフィルム等が挙げられる。
本発明の二次電池の種類としては、特に限定はなく、リチウムイオン電池、リチウムイオン全固体電池、リチウムイオンポリマー電池等のリチウムイオン二次電池;ナトリウムイオン電池、ナトリウムイオン全固体電池、ナトリウムイオンポリマー電池等のナトリウムイオン二次電池;カリウムイオン電池、カリウムイオン全固体電池、カリウムイオンポリマー電池等のカリウムイオン二次電池;ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のアルカリ二次電池;ナトリウム硫黄電池;レドックスフロー電池;空気電池等が挙げられる。
【0099】
本発明の二次電池は、様々な電気機器(電気を使用する乗り物を含む)の電源として利用することができる。
電気機器としては、例えば、電子端末とその周辺機器、家電機器、移動輸送機器、定置用蓄電機器、産業用機器等が挙げられる。
【0100】
〔燃料電池〕
本発明の燃料電池は、上述の導電性膜組成物及び/又はその焼成物含むものであり、
図2に示すように電解質膜(1)、アノード触媒層(2)、カソード触媒層(3)、拡散層(4、5)、及び集電層(6、7)を少なくとも有する。以下に燃料電池を構成する成分について説明する。
【0101】
燃料電池が有する電解質膜は、特に限定はないが、多孔質基体にプロトン伝導性有機物質を含む複合膜が好ましい。
プロトン伝導性有機物質としては、たとえば、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等のスルホン化プラスチック系電解質;スルホアルキル化ポリエーテルエーテルケトン、スルホアルキル化ポリエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリスルホン、スルホアルキル化ポリスルフィド、スルホアルキル化ポリフェニレン等のスルホアルキル化プラスチック系電解質;フルオロビニル化合物とテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン又はパーフルオロアルキルビニルエーテル等のパーフルオロレフィンとの共重合体等のフッ素系電解質材料等のプロトン伝導性ポリマーが挙げられる。
プロトン伝導性ポリマーは上記の他にも、デュポン社製のナフィオン112、ナフィオン117やダウ・ケミカル社製のDOW膜等のパーフルオロカーボンスルフォン酸樹脂等の含フッ素高分子を骨格とするイオン交換樹脂を使用してもよい。上記プロトン伝導性ポリマーは1種又は2種以上を併用してもよい
【0102】
プロトン伝導性有機物質は、プロトン伝導性ポリマーの他にプロトン伝導性を有するモノマーを使用してもよい。
プロトン伝導性モノマーとしては、たとえば、トリフルオロメタンスルホン;テトラフルオロエタンジスルホン酸等のフッ素化スルホン酸の誘導体;(HO)2OP(CF2)PO(OH)2、(HO)2OP(CF2)2PO(OH)2等のフッ素化二リン酸の誘導体;(CF3SO2CH2SO2CF2CF2)2、CF3SO2NHSO2C4F9等のフッ素化スルホニル酸の誘導体等が挙げられる。
【0103】
多孔質基体としては、有機多孔質基体と無機多孔質基体がある。
有機多孔質基体としての材料としては、たとえば、ポリフルオロカーボン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ脂環式オレフィン、ポリオキシメチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾール、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリパラアミド、ポリメタアミド、ポリイミド、フェノール樹脂等の高分子にイオン導電性を付与した材料が挙げられる。有機多孔質基体として好ましい材料はポリイミドである。
【0104】
ポリフルオロカーボンにイオン導電性を付与した高分子としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシビニルエーテル等パーフルオロレフィンの単独又は共重合体のスルホン化物等が挙げられる。
パーフルオロレフィンの単独又は共重合体のスルホン化物としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン-パーフルオロプロピルビニルエーテル(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン-パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール、ポリパーフルオロブテニルビニルエーテル等のスルホン化物等が挙げられる。
【0105】
有機多孔質基体を使用する場合、使用するプロトン伝導性有機物質と有機多孔質基体は同系統の材料であると、両材料の相溶性や接着性の点で好ましい。
ポリパーフルオロカーボンスルホン酸系プロトン伝導性有機物質に対しては、たとえば、PTFE、FEP又はPFAなどのパーフルオロカーボン重合体のスルホン化物等が好ましい。芳香族炭化水素系プロトン伝導性有機物質に対しては、たとえば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィッド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾール、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール、ポリベンズイミダゾールのスルホン化物等が好ましい。
【0106】
無機多孔質基体としての材料としては、たとえば、シリカ(SiO2);酸化ジルコニウム(ZrO2);酸化ホウ素(B2O3);チタニア(TiO2);アルミナ(Al2O3);Ti、Al、B及びZrの水酸化物等が挙げられる。上記無機多孔質基体の材料は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0107】
次に、燃料電池が有するアノード触媒層、カソード触媒層について説明する。触媒層は、電極反応の反応場となる層であり、主成分は、触媒金属又は触媒金属担持カーボンと高分子電解質である。十分な出力が得られると共に経時安定性に優れた燃料電池を得るには、燃料電池用電極において燃料及び反応ガスの拡散性が向上し、また、触媒と電解質膜との界面に燃料及び反応ガスが十分に供給され、また、電極反応により生成した水や二酸化炭素の拡散性が向上し、速やかに反応系外に排出されることが重要である。
【0108】
触媒金属としては公知のものを用いることができ、たとえば、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、金、銀、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マガジン、バナジウム、又はこれらの多元合金が挙げられる。上記触媒金属のなかでも、白金及び白金合金が好ましい。また、これらの金属触媒をカーボン粒子に担持させた金属触媒担持カーボン粒子を使用してもよい。
【0109】
金属触媒を担持させるカーボン粒子としては、たとえば、活性炭、カーボンブラック、グラファイトとそれらの混合物が挙げられる。
カーボンブラックとしては、たとえば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等が挙げられ、デンカ株式会社製のDENKABLACK(商標登録)、キャボット社製Valcan XC-72やBLACKPEARLS 2000、HM Royal社製のKetjenBlack EC300J等の市販のものを使用してもよい。
又、カーボン粒子は親水化処理をしたものを用いてもよく、特に、カルボキシル化合物で処理してカルボキシル化したもの、又はスルホン化合物で処理してスルホン化したものが好ましい。
【0110】
触媒層用の電解質材料としては、電解質膜に用いられるようなイオン導電性を有する高分子導電性電解質であれば特に限定は無く、たとえば、フッ素系電解質材料、部分フッ素系電解質材料、炭化水素系電解質材料等が挙げられる。
【0111】
触媒層を形成するための触媒塗料組成物は、触媒金属又は触媒金属担持カーボン、高分子導電性電解質、及び有機溶媒-水の混合液を配合して、超音波分散機等を用いて均一に分散させた液状物であると好ましい。
触媒塗料組成物に使用できる有機溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類;アセトン;メチルエチルケトン;ジメチルホルムアミド;ジメチルイミダゾリジノン;ジメチルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;N-メチルピロリドン;プロピレンカーボネート;酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル類;芳香族系溶媒;ハロゲン系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種又は2種以上併用してもよい。
【0112】
燃料電池が有する拡散層は、アノード触媒層及びカソード触媒層への燃料及び酸素の供給、反応により生成する水及び二酸化炭素の排出、ならびに発生した電子を集電層へ受け渡す機能を有する層である。拡散層は、多孔質かつ電子伝導性を有する材料が用いられる。
拡散層の主成分としては、活性炭、カーボンブラック、グラファイト等のカーボン粒子;ポリアクリロニトリルからの焼成体;ピッチからの焼成体;黒鉛及び膨張黒鉛等の炭素材;ナノカーボン材料;ステンレススチール;モリブデン、チタン等の導電性物質;撥水部材;上記のプロトン伝導性ポリマー等である。プロトン伝導性ポリマーは他の材料同士の接着剤(バインダー)として機能してもよい。
【0113】
拡散層に用いる基材としては、電気抵抗が低く、集電を行えるものであれば特に限定はなく、導電性無機物質を主とするものが挙げられる。
導電性無機物質としては、たとえば、ポリアクリロニトリルからの焼成体;ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛等の炭素材;ナノカーボン材料;ステンレススチール;モリブデン;チタン等が挙げられる。
導電性無機物質の形態は、特に限定はないが、繊維状、粒子状が挙げられ、ガス透過性の点から繊維状であると好ましく、特に炭素繊維が好ましい。繊維状の導電性無機物質を用いた拡散層の基材の形態としては、織布、不織布が挙げられ、いずれの構造でもよい。
【0114】
織布は、特に限定はないが、平織、斜文織、朱子織、紋織、綴織等のものを用いることができる。また、不織布は、特に限定はないが、抄紙法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、ウォータージェットパンチ法、メルトブロー法によるもの等を使用することができる。また、編物であってもよい。
拡散層の基材は、たとえば、東レ株式会社製のカーボンペーパーTGPシリーズやSOシリーズ等の市販のものを使用してもよい。
【0115】
導電性物質として炭素繊維を用いた場合、基材としては耐炎化紡績糸を用いた平織物を炭化あるいは黒鉛化した織布、耐炎化糸をニードルパンチ法やウォータージェットパンチ法等による不織布加工した後に炭化あるいは黒鉛化した不織布、耐炎化糸又は炭化糸又は黒鉛化糸を用いた抄紙法によるマット不織布等が挙げられる。なかでも、薄く強度のある点で不織布が好ましい。
拡散層に用いる基材に炭素繊維からなる無機導電性物質を使用する場合、炭素繊維としてはポリアクリロニトリル系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等が挙げられる。なかでも、ポリアクリロニトリル系炭素繊維が好ましい。さらに、拡散層に用いる基材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液等を使用して、撥水化処理を行ってもよい。
【0116】
燃料電池に含まれる上述の導電性膜組成物及び/又はその焼成物は、拡散層に含まれると好ましい。導電性膜組成物及び/又はその焼成物が拡散層に含まれることで撥水層の空隙率を高めることができる。また、導電性膜組成物及び/又はその焼成物は上述の触媒層と隣接していると好ましく、特に接触していると好ましい。
さらに、上述の導電性膜組成物及び/又はその焼成物は撥水部材として機能すると、燃料電池の発電時に水素と酸素との電気化学反応によって生成される生成水を効果的に排出し、フラッディングをより抑制することができると考えられ、好ましい。
【0117】
導電性膜組成物及び/又はその焼成物が拡散層に含まれる場合、上述の多孔質基材を含むと好ましく、特に導電性膜組成物及び/又はその焼成物が多孔質基材と接着した態様であると好ましい。また、導電性膜組成物及び/又はその焼成物の態様としては、導電性膜組成物又はその焼成物を含む態様であると好ましく、導電性組成物の焼成物を含む態様であるとより好ましい。
【0118】
導電性膜組成物及び/又はその焼成物が拡散層に含まれる場合、たとえば、上述の導電性ペーストを拡散層の少なくとも片側に塗工し、乾燥させ、更には焼成することで導電性膜組成物及び/又はその焼成物を含む拡散層を製造することができる。
拡散層が導電性膜組成物の焼成物を含む場合、導電性膜組成物の焼成温度としては、特に限定はないが、好ましくは200~400℃、より好ましくは250~360℃である。
また、導電性膜組成物の焼成時間としては、焼成温度等に応じて適宜決定でき、特に限定はないが、好ましくは10~180分、より好ましくは30~150分である。
【0119】
燃料電池が有する集電層は、アノード触媒層又は拡散層からの電子を集める電極の役割をするものであり、導電性物質を使用する。集電層に用いる導電性物質としては、たとえば、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、金、銀、銅及びこれらの化合物又は合金;導電性炭素材料等を使用することができる。
集電層に用いる導電性物質においては、導電性物質を含む導電性ペースト又は導電性接着剤の塗布、スパッタリング、蒸着、メッキ、溶射等の方法で、燃料電池のセパレータに取り付けることができる。また、集電層をセパレータに取り付ける際、セパレータの内面に部分的にマスキングすることができ、集電層をパターン状にセパレータに形成することで、セパレータに燃料流路や空気流路を作製することもできる。
【0120】
燃料電池は、電解質膜と電極とを接合して電解質膜-電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を有していてもよい。MEAを製造する方法としては、たとえば、触媒層を形成する際に用いる触媒塗料組成物を電解質層に直接塗設する方法、拡散層に用いる基材に触媒層を塗設したものと電解質膜をホットプレスにより接合する方法、支持体に触媒層を塗設した後に電解質層や拡散層に転写する方法等が挙げられる。
【0121】
転写する方法によりMEAを製造する場合、転写基材としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のシート、表面をフッ素やシリコーン系の離型剤処理したガラス板や金属板等を使用することができ、さらに、接合性を高めるため、ホットプレス処理を施してもよい。
塗設する方法によりMEAを製造する場合、たとえば、ロッドコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スライドコーター、スプレーコーター、スピンコーター、ディップコーター、ロールコーター等のコーターを用いる方法;刷毛塗り等の方法が挙げられる。
集電層は拡散層の外側に設ける方法としては、たとえば、拡散層に集電層を形成できる導電性ペーストを直接塗工する方法、拡散層に導電性基材をホットプレスにより接合する方法等が挙げられる。
【0122】
上述の様に製造したMEAの外側に、燃料流路と酸化剤流路を形成する溝が形成された燃料配流板(セパレータ)と、酸化剤配流板(セパレータ)とを配したものを単セルとし、この単セルを複数個、冷却板等を介して積層することにより、燃料電池を得ることができる。また、セパレータの内側を導電性とすることにより、セパレータに集電層に機能を持たせることも出来る。
燃料電池に使用できる燃料としては、たとえば、水素ガス、メタノール、エタノール、1-プロパノール、ジメチルエーテル、アンモニア等が挙げられる。
【実施例0123】
以下の実施例および比較例で本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、断りのない限り、「%」とは「重量%」を意味し、「部」とは「重量部」を意味するものである。また、以下の製造例、実施例及び比較例では、次に示す要領で物性を測定し、さらに性能を評価した。
【0124】
[樹脂粒子(B)の有機化合物の内包率の測定]
まず、乾燥後の樹脂粒子(B)の含水率CW(%)を、カールフィッシャー水分計(MKA-510N型、京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。
次いで、乾燥後の樹脂粒子(B)1.0gを直径80mm、深さ15mmのステンレス製蒸発皿に入れ、その重量W1(g)を測定した。アセトニトリルを30ml加え均一に分散させ、2時間室温で放置した後、110℃で2時間乾燥後の重量W2(g)を測定した。発泡剤の内包率CR(重量%)は、下記の計算式(3)により算出した。
CR=((W1-W2)/1.0)×100-CW (3)
【0125】
[樹脂粒子(B)の体積平均粒子径(D50)の測定]
マイクロトラック粒度分布計(型式9320-HRA 日機装株式会社製)を使用し、体積基準測定によるD50値を体積平均粒子径とした。
【0126】
[樹脂粒子(B)の真比重の測定]
樹脂粒子(B)の真比重(Dc)は、以下の測定方法で測定した。
まず、真比重は環境温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下においてイソプロピルアルコールを用いた液浸法(アルキメデス法)により測定した。
具体的には、容量100ccのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WB1)を秤量した。秤量したメスフラスコにイソプロピルアルコールをメニスカスまで正確に満たした後、イソプロピルアルコール100ccの充満されたメスフラスコの重量(WB2)を秤量した。また、容量100ccのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WS1)を秤量した。秤量したメスフラスコに約50ccの樹脂粒子を充填し、樹脂粒子の充填されたメスフラスコの重量(WS2)を秤量した。そして、粒子の充填されたメスフラスコに、イソプロピルアルコールを気泡が入らないようにメニスカスまで正確に満たした後の重量(WS3)を秤量した。そして、得られたWB1、WB2、WS1、WS2およびWS3を下記の計算式(4)に導入して、樹脂粒子(B)の真比重(Dc)を算出した。
Dc={(WS2-WS1)×(WB2-WB1)/100}/{(WB2-WB1)-(WS3-WS2)} (4)
【0127】
[樹脂粒子(B)の外殻を構成する熱可塑性樹脂の真比重の測定]
樹脂粒子(B)の外殻を構成する熱可塑性樹脂(以下、単に外殻樹脂ということがある)の真比重(Dp)の測定は、樹脂粒子(B)10gをN,N-ジメチルホルムアミド200mlに分散させた後に超音波分散機30分間で処理し、室温で24時間浸漬した後、120℃で5時間真空加熱乾燥し、外殻樹脂を単離した。得られた外殻樹脂の真比重Dpを、上記樹脂粒子(B)の真比重の測定方法と同様にして測定した。
【0128】
[樹脂粒子(B)の外殻の厚みの算出]
樹脂粒子(B)の外殻の厚み<t>を下記の計算式(5)により算出した。
<t>=<x>/2〔1-{1-Dc(1-G/100)/Dp}1/3〕 (5)
<x>:樹脂粒子(B)の平均粒子径(μm)
Dc:樹脂粒子(B)の真比重(g/cc)
Dp:外殻を構成する熱可塑性樹脂の真比重(g/cc)
CR:樹脂粒子(B)の有機化合物の内包率(重量%)
【0129】
[樹脂粒子(B)の内径(d1)と外径(d2)との比(d1/d2)の算出]
樹脂粒子(B)の内径(d1)と外径(d2)との比(d1/d2)を下記の計算式(6)~(8)により算出した。
d1=<x>-2<t> (6)
d2=<x> (7)
d1/d2=(<x>-2<t>)/<x>=1-2<t>/<x> (8)
【0130】
[樹脂粒子(B)の膨張開始温度(Ts)および最大膨張温度(Tmax)の測定]
測定装置としてDMA(DMA Q800型、TA instruments社製)を使用した。樹脂粒子(B)0.5mgを直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、樹脂粒子(B)層の上部にアルミ蓋(5.6mm、厚み0.1mm)をのせて試料を準備した。その試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態でサンプル高さを測定した。加圧0.01Nの力を加えた状態で、20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定した。正方向への変位開始温度を膨張開始温度(Ts)とし最大変位量を示した時の温度を最大膨張温度(Tmax)とした。
【0131】
<製造例1>
イオン交換水450gに、アジピン酸-ジエタノールアミン縮合物2.5g、コロイダルシリカ分散液(有効濃度20%)140g、およびエチレンジアミン四酢酸・4Na塩0.1gを添加し、pHを2.5~3.5に調整して水性分散媒を調製した。
これとは別に、アクリロニトリル124g、メタクリロニトリル60g、およびメタクリル酸メチル12g、トリエチレングリコールジアクリレート4g、イソブタン25g、イソペンタン25g、及びジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(純度70%)3部gを混合して油性混合物を調製した。
水性分散媒と油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサー(TKホモミキサー、プライミクス株式会社製)により回転数12000rpmで油性混合物の液滴サイズが目標とする樹脂粒子サイズとなるまで分散させ、懸濁液を調製した。
この懸濁液を窒素置換した容量1.5リットルの加圧反応容器へ仕込み、0.5MPaに加圧し、80rpmで攪拌しつつ重合温度60℃で15時間反応した。重合後、生成物を濾過、乾燥し、樹脂粒子B-1を得た。得られた樹脂粒子B-1の物性を表1に示す。
【0132】
<製造例2~3>
製造例2~3では、製造例1において、表1に示すように反応条件をそれぞれ変更する以外は、製造例1と同様にして、樹脂粒子B-2~B-3を得た。得られたそれぞれの樹脂粒子の物性を表1に示す。
【0133】
<製造例4>
イオン交換水450gに塩化ナトリウム130gを溶解させ、アジピン酸-ジエタノールアミン縮合物2g、コロイダルシリカ分散液(有効濃度20%)110g、およびエチレンジアミン四酢酸・4Na塩0.1gを添加し、pHを2.5~3.5に調整して水性分散媒を調製した。
これとは別に、アクリロニトリル144g、メタクリロニトリル54g、トリエチレングリコールジアクリレート2g、イソブタン10g、およびイソペンタン40g、アゾイソブチロニトリル3gを混合して油性混合物を調製した。
水性分散媒と油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサー(TKホモミキサー、プライミクス株式会社製、)により回転数12000rpmで油性混合物の液滴サイズが目標とする樹脂粒子サイズとなるまで分散させ、懸濁液を調製した。
この懸濁液を窒素置換した容量1.5リットルの加圧反応容器へ仕込み、0.5MPaに加圧し、80rpmで攪拌しつつ重合温度60℃で15時間反応した。重合後、生成物を濾過、乾燥し、樹脂粒子B-4を得た。得られた樹脂粒子B-4の物性を表1に示す。
【0134】
<製造例5~6>
製造例5~6では、製造例4において、表1に示すように反応条件をそれぞれ変更する以外は、製造例4と同様にして、樹脂粒子B-5~B-6を得た。得られたそれぞれの樹脂粒子の物性を表1に示す。
【0135】
<製造例7>
製造例1で得られた樹脂粒子B-1を5重量%含有する水分散液(スラリー)を調製した。特開昭62-201231号公報記載の湿式加熱膨張法に従い、このスラリーをスラリー導入管から発泡管(直径16mm、容積120ml、SUS304TP製)に5L/minの流量を示すように送り込み、さらに水蒸気(温度:145℃、圧力:0.3MPa)を蒸気導入管より供給し、スラリーと混合して、湿式加熱膨張した。なお、混合後のスラリー温度(発泡温度)を120℃に調節した。
得られた発泡粒子を含むスラリーを発泡管突出部から流出させ、冷却水(水温15℃)と混合して、50~60℃に冷却した。冷却したスラリー液を濾過、乾燥し、樹脂粒子B-7を得た。得られた樹脂粒子B-7の物性を表2に示す。
【0136】
<製造例8>
製造例7に記載の湿式加熱膨張法において、樹脂粒子B-1を製造例2で得られた樹脂粒子B-2に変更し、発泡温度を125℃に変更する以外は同様にして、樹脂粒子B-8を得た。得られた樹脂粒子B-8の物性を表2に示す。
【0137】
<製造例9>
製造例1で得られた樹脂粒子B-1を用いて、乾式加熱膨張法により樹脂粒子B-9を製造した。乾式加熱膨張法としては、特開2006-213930号公報に記載されている内部噴射方法を採用した。具体的には、
図3に示す発泡工程部を備えた製造装置を用いて、以下の手順で樹脂粒子B-1を加熱膨張させて、樹脂粒子B-9を製造した。
【0138】
(発泡工程部の説明)
図3に示すとおり、発泡工程部は、出口に分散ノズル(11)を備え且つ中央部に配置された気体導入管(番号表記せず)と、分散ノズル(11)の下流部に設置された衝突板(12)と、気体導入管の周囲に間隔を空けて配置された過熱防止筒(10)と、過熱防止筒(10)の周囲に間隔を空けて配置された熱風ノズル(8)とを備える。この発泡工程部において、気体導入管内の矢印方向に熱膨張性樹脂粒子を含む気体流体(13)が流されており、気体導入管と過熱防止筒(10)との間に形成された空間には、熱膨張性樹脂粒子の分散性の向上及び気体導入管と衝突板の過熱防止のための気体流(14)が矢印方向に流されており、さらに、過熱防止筒(10)と熱風ノズル(8)との間に形成された空間には、熱膨張のための熱風流が矢印方向に流されている。ここで、熱風流(15)と気体流体(13)と気体流(14)とは、通常、同一方向の流れである。過熱防止筒(10)の内部には、冷却のために、冷媒流(9)が矢印方向に流されている。
【0139】
(製造装置の操作)
噴射工程では、熱膨張性樹脂粒子を含む気体流体(13)を、出口に分散ノズル(11)を備え且つ熱風流(15)の内側に設置された気体導入管に流し、気体流体(13)を前記分散ノズル(11)から噴射させる。
分散工程では、気体流体(13)を分散ノズル(11)の下流部に設置された衝突板(12)に衝突させ、熱膨張性樹脂粒子が熱風流(15)中に万遍なく分散するように操作される。ここで、分散ノズル(11)から出た気体流体(13)は、気体流(14)とともに衝突板(12)に向かって誘導され、これと衝突する。
膨張工程では、分散した熱膨張性樹脂粒子を熱風流(15)中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる。その後、得られた樹脂粒子を冷却部分に通過させる等して回収する。
【0140】
(膨張条件及び結果)
製造例9で得られた樹脂粒子B-9では、
図3に示す製造装置を用い、膨張条件として、原料供給量0.8kg/min、原料分散気体量0.35m3/min、熱風流量9.0m3/min、熱風温度250℃に設定し、樹脂粒子B-9を得た。得られた樹脂粒子B-9の物性を表2に示す。
【0141】
<製造例10~13>
製造例3で得られた樹脂粒子B-3では熱風処理温度250℃、製造例4で得られた樹脂粒子B-4では熱風処理温度280℃、製造例5で得られた樹脂粒子B-5では熱風処理温度300℃、製造例6で得られた樹脂粒子B-6では熱風処理温度310℃に設定し、それぞれ膨張済みの樹脂粒子B-10~B-13を得た。得られたそれぞれの樹脂粒子の物性を表2に示す。
【0142】
【0143】
【0144】
<比較例1>
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、ダイキン工業株式会社製)125重量部、ファーネスブラック(Vulcan xc-72、平均分子量1000~3000、算術平均粒子径:20~80nm、Cabot社製)100重量部、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル(エマルゲンMS-110、花王株式会社製)25重量部、水500重量部を混合して、導電性ペースト組成物を作成した。作成した導電性ペースト組成物の性能を後述する方法により測定、評価した。その結果を表3に示す。
【0145】
<実施例1>
比較例1に記載の導電性ペースト組成物に、樹脂粒子B-1を10重量部添加、均一混合し、導電性ペースト組成物を作成した。作成した導電性ペースト組成物の性能を比較例1と同様の方法で測定、評価した。その結果を表3に示す。
【0146】
<実施例2~15>
実施例2~15では、実施例1において、表3に示すように樹脂粒子とその添加量をそれぞれ変更する以外は実施例1と同様にして、導電性ペースト組成物をそれぞれ作成した。作成したそれぞれの導電性ペースト組成物の性能を比較例1と同様の方法で測定、評価した。その結果を表3に示す。
【0147】
<比較例2>
実施例1において、表3に示すように樹脂粒子B-1の代わりに、JSR-SX8(ポリスチレン-アクリロニトリル共重合系粒子、平均粒子径0.4μm、d1/d2が0.66、JSR株式会社製)を10重量部添加した以外は、同様にして導電性ペースト組成物を作成した。作成した導電性ペースト組成物の性能を比較例1と同様の方法で測定、評価した。その結果を表3に示す。
【0148】
[導電性ペースト組成物の分散安定性の評価]
作成した導電性ペースト組成物を100mlの遠沈管にとって室温で24時間静置した後の沈降物及び浮上物の重量を測定し、導電性ペースト組成物の不揮発分100重量%に対する沈降物と浮上物の合計量の重量比(重量%)を算出した。分散性安定性の評価は、算出した重量比の値より、以下の評価基準により行った。なお、導電性ペースト組成物の不揮発分は、100℃で導電性ペースト組成物を加熱し、恒量となった時の残留物とした。
◎:沈降物と浮上物の合計量の重量比が10重量%未満で、分散安定性に優れる。
○:沈降物と浮上物の合計量の重量比が10重量%以上20重量%未満で、分散安定性にやや優れる。
△:沈降物と浮上物の合計量の重量比が20重量%以上30重量%未満で、分散安定性にやや劣る。
×:沈降物と浮上物の合計量の重量比が30重量%以上で、分散安定性に劣る。
【0149】
[導電性ペースト組成物の塗布性の評価]
作成した導電性ペースト組成物を多孔質基材に塗布して、大気雰囲気中95℃で20分乾燥した後、大気雰囲気中300℃で2時間焼成し、導電性ペースト組成物の焼成物で被覆された多孔質基材を得た。得られた多孔質基材表面における導電性ペースト組成物の焼成物の被覆面積を測定し、導電性ペースト組成物の塗布性の評価を以下の基準により行った。
なお、多孔質基材は、カーボンペーパー(TGP-H-120、東レ株式会社製)をポリテトラフルオロエチレン水分散液(ポリフロンPTFED-210C、固形分60%、ダイキン工業株式会社製)に5分間浸漬後、大気雰囲気中95℃で30分乾燥させ、次いで大気雰囲気中350℃で30分焼成を行うことにより撥水処理を施したものを使用した。また、以下、この多孔質基材を単に多孔質基材Aということがある。
○:被覆面積が95%以上であり、被膜のひび割れなく、塗布性に優れる。
×:被覆面積が95%未満であり、被膜にひび割れが発生し、塗布性に劣る。
【0150】
[導電性ペースト組成物の表面張力の測定]
作成した導電性ペースト組成物の表面張力を、自動表面張力計(CBVP-Z、協和界面科学株式会社製)と上記多孔質基材Aを用い、ペースト組成物の温度を25℃に調節し、プレート法を用いることにより測定した。
【0151】
[導電性ペースト組成物の基材との接触角の測定]
自動接触角測定器(OCA20、英弘精機株式会社製)を用い、1マイクロリットル程度の作成した導電性ペースト組成物の液滴を上記多孔質基材Aの表面に滴下し、滴下30秒後の接触角を測定した。
【0152】
【0153】
<導電性膜組成物の製造>
実施例1~15および比較例1~2で作成した導電性ペースト組成物をPTFEシートに塗布して、大気雰囲気中95℃で10分乾燥し、次いで200℃で10分乾燥した後、PTFEシートから剥離して、厚み1mmの導電性膜組成物をそれぞれ製造した。製造した導電性膜組成物の性能を後述する方法により測定、評価した。その結果を表4に示す。
【0154】
[導電性膜組成物の均一性の評価]
製造した導電性膜組成物の厚みを任意の10箇所で測定し、導電性膜組成物の均一性の評価を以下の基準により行った。
○:厚みの最大値もしくは最小値の、平均値からのズレが5%以下
×:厚みの最大値もしくは最小値の、平均値からのズレが5%以上
【0155】
[導電性膜組成物の水との接触角の測定]
自動接触角測定器(OCA20、英弘精機株式会社製)を用い、1マイクロリットル程度の水滴を製造した導電性膜組成物表面に滴下し、滴下30秒後の接触角を測定した。
【0156】
[導電性膜組成物の比重の測定]
製造した導電性膜組成物を適当な大きさに裁断し、裁断したものを上記樹脂粒子(B)の真比重の測定方法と同様にして測定して、導電性膜組成物の真比重Dmとした。
【0157】
[導電性膜組成物の空隙率の算出]
製造した導電性膜組成物を任意の大きさに裁断し、試験片を作製した。この試験片の重量(WA)を秤量した。秤量したWAと導電性組成物Dmから、以下に示す計算式(9)より試験片の真の体積(V)を算出した。さらに、試験片の外見寸法から求められる見かけの体積(VA)と、試験片の真の体積(V)から、以下に示す計算式(10)より導電性膜組成物の空隙率(S)を算出した。
V=WA/Dm (9)
S=(1-V/VA)×100 (10)
【0158】
【0159】
<燃料電池の製造>
実施例1~15及び比較例1~2の各導電性ペースト組成物を用いて、以下の方法にて燃料電池を製造した。製造した燃料電池の性能を後述の方法にて測定、評価した。その結果を表5、6に示す。
【0160】
(触媒塗料組成物の作成)
白金触媒担持炭素粒子(TEC10E50E、田中貴金属工業株式会社製)4g、高分子導電性電解質溶液(DE-520、ナフィオン5wt%溶液、デュポン社製)40g、蒸留水12g、n-ブタノール20g及びt-ブタノール20gを配合し、分散機にて攪拌混合することにより、アノード触媒層形成用のアノード触媒塗料組成物及びカソード触媒層形成用のカソード触媒塗料組成物を作成した。
【0161】
(集電層用塗料組成物の作成)
ケッチェンブラックEC(ライオン株式会社製)、テフロン(登録商標)分散液PTFE31-J(三井デュポンフロロケミカル社製)、ナフィオン117溶液(デュポン社製)を固形分重量比でそれぞれ80:10:10の混合物を作製し、これに水および2-プロパノールを加え、超音波で均一に分散し、集電層用塗料組成物を作成した。
【0162】
(電解質膜の作成)
平均粒子径500nmのスチレン/ジビニルベンゼンポリマー粒子と、1次粒径50nmのコロイダルシリカを体積比で50:50の割合で界面活性剤を含む水中にて高速ホモジナイザーを用いて攪拌、分散させた。その後、アドバンテック社製の減圧吸引濾過器を用いて孔径0.025μmのメンブレンフィルタで濾過を行った。濾紙上の得られた試料を乾燥した後、1000℃の恒温箱に入れ焼成し、無機多孔質基体を作成した。
これとは別に、イソプロピルアルコール:水=4:1中にモノマーとして2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸と架橋剤としてN,N’-メチレンビスアクリルアミドと重合開始剤としてAIBN(N,N’-アゾビスイソバレロニトリル)を重量比で100:20:1となるよう混合した。得られた混合液を低真空下で作成した無機多孔質基体に注入した。常圧に戻した後、混合液が注入された無機多孔質基体をゆっくり加熱し80℃で2時間保温し、電解質膜を作成した。作成した電解質膜の膜厚は150μmであった。
【0163】
(拡散層の製造)
実施例1~15及び比較例1~2の各導電性ペースト組成物を多孔質基材Aに焼結後の厚みが40μmとなるよう塗布して、大気雰囲気中95℃で20分乾燥した後、大気雰囲気中300℃で2時間焼成し、拡散層として導電性ペースト組成物の焼成物で被覆された多孔質基材Aを作製した。
【0164】
(電解質膜-触媒層積層体の作成)
作成したアノード塗料組成物及びカソード塗料組成物を、それぞれアプリケーターを用いて転写基材(材質:ポリエチレンテレフタラートフィルム)上に塗工し、95℃で30分程度乾燥させることにより触媒層を形成させて、アノード触媒層形成用転写シート及びカソード触媒層形成用転写シートを作成した。なお、触媒層の塗工量は、アノード触媒層、カソード触媒層共に白金担持量が0.45mg/cm2程度となるようにした。
次に、作成したアノード触媒層形成用転写シート及びカソード触媒層形成用転写シートを用いて、作成した無機多孔質基体からなる複合膜各面に、熱プレスを行った後、転写基材のみを剥がすことにより、電解質膜-触媒層積層体を作成した。
【0165】
(燃料電池の製造)
作成した電解質膜-触媒層積層体の両面に、実施例1~15及び比較例1~2の各導電性ペースト組成物を用いて製造した拡散層を、ペースト焼成物が触媒層(アノード触媒層又はカソード触媒層)に接触するように、積層させることにより、電解質膜-電極接合体(MEA)をそれぞれ作成した。
また、厚さ3mmのアクリル製セパレータの内部に、集電層用塗料組成物を乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗設して集電層を形成し、集電層付きアクリル製セパレータを作成した。
上記の電解質膜-電極接合体の拡散層と集電層付きアクリル製セパレータの集電層が電気的に接続するように、電解質膜-電極接合体をセパレータにはめ込み固定して燃料電池セルをそれぞれ製造した。
【0166】
[燃料電池の電池性能評価]
製造した燃料電池の電池性能評価を、以下の条件により行った。なお、負荷電流を1.25~25Aまで変動させた時のセル電圧値の測定を行い、ガス拡散の影響がより顕著である1000mA/cm2で測定を行った。
セル温度:80℃
加湿温度:カソード80℃、アノード70℃
ガス利用率:カソード40%、アノード70%
【0167】
【0168】
【0169】
上記製造例、実施例及び比較例にて使用した原料の詳細を表7に示す。
【0170】
【0171】
表1~4からわかるように、実施例に記載の導電性ペースト組成物は高分子成分(A)と、樹脂粒子(B)と、導電性材料(C)と、液状媒体(D)とを含む、導電性ペースト組成物であり、樹脂粒子(B)が熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包される有機化合物とから構成されるものであるため、分散安定性及び塗布性に優れ、また、その導電性ペースト組成物の乾燥物である導電性膜組成物も均一性に優れる。一方、樹脂粒子(B)を含まない比較例1の導電性ペースト組成物や有機化合物が内包されていない樹脂粒子を含む比較例2の導電性ペースト組成物は、分散安定性、塗布性に劣り、また、その導電性ペースト組成物の乾燥物である導電性膜組成物も均一性に劣る。