(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037968
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】端末、データ構造、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20220303BHJP
G09B 29/10 20060101ALN20220303BHJP
G09B 29/00 20060101ALN20220303BHJP
【FI】
G01C21/34
G09B29/10 A
G09B29/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142215
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】597151563
【氏名又は名称】株式会社ゼンリン
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】畠中 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】相良 芳則
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
【Fターム(参考)】
2C032HB22
2C032HB25
2C032HC08
2F129AA02
2F129AA03
2F129AA04
2F129AA05
2F129AA08
2F129AA11
2F129AA14
2F129BB03
2F129CC12
2F129CC19
2F129CC23
2F129EE32
2F129EE52
2F129FF02
2F129FF11
2F129FF32
2F129HH02
2F129HH12
(57)【要約】
【課題】ユーザの移動経路を適切に匿名化すること。
【解決手段】一実施形態に係る端末はプロセッサを備える。プロセッサは、経路データを抽象化するためのルールを示す所与のルールデータに基づいて、ユーザの移動経路を示すオリジナル経路データを抽象化して抽象経路データを生成し、抽象経路データをサーバに向けて送信する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサが、
経路データを抽象化するためのルールを示す所与のルールデータに基づいて、ユーザの移動経路を示すオリジナル経路データを抽象化して抽象経路データを生成し、
前記抽象経路データをサーバに向けて送信する、
端末。
【請求項2】
前記プロセッサが、経路データベースへの前記抽象経路データの登録を前記サーバに実行させるために前記抽象経路データを前記サーバに向けて送信する、
請求項1に記載の端末。
【請求項3】
前記ルールデータが、第1交通結節点での移動手段の変更を第2交通結節点での移動手段の変更に変換するルールを示し、
前記プロセッサが、前記第1交通結節点での移動手段の変更を示す前記オリジナル経路データを前記ルールデータに基づいて抽象化して、前記第2交通結節点での移動手段の変更を示す前記抽象経路データを生成する、
請求項1または2に記載の端末。
【請求項4】
前記ルールデータが、交通結節点における移動時刻を所与の時間幅に変換するルールを示し、
前記プロセッサが、前記交通結節点での移動時刻を示す前記オリジナル経路データを前記ルールデータに基づいて抽象化して、前記交通結節点での移動時刻を前記時間幅によって示す前記抽象経路データを生成する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の端末。
【請求項5】
前記ルールデータが、所定のPOIの利用不可時間において該POIを抽象化するルールを示し、
前記プロセッサが、前記利用不可時間に前記所定のPOIを通る前記オリジナル経路データを前記ルールデータに基づいて抽象化して、該POIが抽象化された前記抽象経路データを生成する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の端末。
【請求項6】
経路データを抽象化するためのルールを示し、端末に記憶されるルールデータのデータ構造であって、
第1交通結節点での移動手段の変更を第2交通結節点での移動手段の変更に変換する第1ルールと、交通結節点における移動時刻を所与の時間幅に変換する第2ルールと、所定のPOIの利用不可時間において該POIを抽象化する第3ルールとのうちの少なくとも一つを示すルールデータのデータ構造。
【請求項7】
経路データを抽象化するためのルールを示す所与のルールデータに基づいて、ユーザの移動経路を示すオリジナル経路データを抽象化して抽象経路データを生成するステップと、
前記抽象経路データをサーバに向けて送信するステップと、
を端末に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面はコンピュータシステム、処理方法、プログラム、および/またはデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移動履歴情報で特定される経路の末端から近い経路上の匿名化地点を取得し、該経路の末端から該匿名化地点までの移動履歴情報を除外して移動履歴情報の匿名化処理を行う情報処理サーバが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一側面は、ユーザの移動経路を適切に匿名化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る端末はプロセッサを備える。プロセッサは、経路データを抽象化するためのルールを示す所与のルールデータに基づいて、ユーザの移動経路を示すオリジナル経路データを抽象化して抽象経路データを生成し、抽象経路データをサーバに向けて送信する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る情報管理システムの適用の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る情報管理システムで用いられるコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る情報管理システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図5】交通結節点を示す地図データの一例を示す図である。
【
図8】ルールデータを生成する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】ルールデータを生成する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】ルールデータを生成する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】経路データを抽象化する処理の一例を示すシーケンス図である。
【
図12】経路データの抽象化の具体例を示す図である。
【
図13】経路データの抽象化の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本開示での実施形態を詳細に説明する。図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0008】
[システムの概要]
実施形態に係る情報管理システム1は、ユーザの移動経路を示す経路データを管理するコンピュータシステムである。移動経路とは、現実世界における或る地点から別の地点までの移動に関する情報をいい、典型的には出発地から目的地までの移動に関する情報をいう。出発地とは、移動経路を検索するための始点として設定される場所をいい、目的地とはその検索のための終点として設定される場所をいう。出発地および目的地はいずれも経路検索の基準点となり得る場所である。一例では、移動経路は、出発地から目的地までの経路だけでなく、その経路の属性(以下では「経路属性」という)も示すことができる。経路属性とは、経路の性質、特徴、状況、あるいは、経路を移動するユーザの情報(年齢、性別、国籍、体調など)を表す任意の情報である。例えば、経路属性は、交通機関などの移動手段と、経路を移動する日時と、経路を移動するための所要時間または費用と、経路の状況(例えば交通情報)と、経路に関連する地物(すなわち地物情報)と、経路に関連する事業者(すなわち事業者情報)と、経路に関連するサービス情報(例えば広告情報、クーポン情報など)と、経路を移動するユーザに関する情報(年齢、性別、国籍、体温、心拍数、発汗量、血糖値、カロリー消費量など)と、経路を移動するユーザの目的情報(ビジネス、観光、買い物、健康、暇つぶしなど)とのうちの少なくとも一つを含んでもよい。経路データとは移動経路を示す電子データであり、典型的には緯度経度情報で表される時系列の点列座標であるが、これに限られない。経路データにおいて、リンクおよびノードから構成されるネットワークデータに点列座標を照合して得られるリンクIDおよびノードIDが用いられてもよい。経路データは、経路を移動する日時(時刻)を示すテキストデータを含んでもよい。時刻に関するテキストデータは、リンクIDおよびノードIDに関連付けられてもよい。ユーザとは自己の経路データを情報管理システム1に提供する人をいう。ユーザは個人でもよいし複数人から成るグループでもよい。
【0009】
移動手段とは、移動するための方法をいう。移動手段は移動体に限定されず、移動体を用いない方法も含む概念である。移動手段は公共交通機関でもよいし、ユーザが自分で操作する移動体でもよい。移動手段は、地上または地下の移動体でもよいし、空中の移動体でもよいし、水上または水中の移動体でもよい。移動手段の例として徒歩、自転車、バイク、自家用車、バス、タクシー、在来線、高速鉄道、航空機、ドローン、およびフェリーが挙げられるが、当然ながら移動手段はこれらに限定されるものではない。
【0010】
公共交通機関とは、運行する経路および時刻が決まっており、且つ不特定の一般の人々が共同で利用する交通機関をいう。公共交通機関の例として鉄道(モノレール等を含む)、路面電車、路線バス、航空機、フェリーなどが挙げられるが、公共交通機関はこれらに限定されない。タクシーは公共交通機関ではない。
【0011】
経路データによって示される移動経路の種類は限定されない。経路データは、候補として検索された移動経路、ユーザにより選択された移動経路、またはユーザにより実際に利用された移動経路を示してもよい。本開示では、候補として検索された移動経路を「候補経路」といい、1以上の候補経路の中からユーザにより選択された移動経路を「計画経路」といい、ユーザにより実際に利用された移動経路を「実績経路」という。一の移動経路が候補経路、計画経路、および実績経路のうちの2以上に該当することがあり得る。
【0012】
地物とは、地上に存在する任意の有体物または無体物である。地物は自然物でも人工物でもよい。例えば、地物は、山地、農地、住宅地、更地、河川、湖、海、観光地、道路、鉄道、建物、公園、塔、信号機、踏切、横断歩道、歩道橋、浮標などを含み得る。無体物である地物の例として、任意の目的で設定された区域(例えば、撮影禁止区域、一時的な進入禁止区域など)、イベントが開催される区域、集合場所、撮影スポットなどが挙げられる。当然ながら、地物の種類はこれらに限定されない。
【0013】
情報管理システム1によって管理される1以上のユーザの経路データは任意の目的のために利用され得る。例えば、経路データは、「サービスとしての移動」(Mobility as a Service(MaaS))、都市計画、交通計画、環境対策、防災対策、防犯対策、需要予測、マーケティング、人流解析などの、人々の生活または地球環境の維持もしくは改善に役立つ様々な目的のために利用されてよい。経路データは任意の事業者および他のユーザによって利用され得る。事業者の例として、鉄道、ロープウェー、バス、タクシー、飛行機、ドローン、船舶などの各種の交通機関の事業者と、自動車、自転車などの各種の移動手段のレンタル事業者と、配車サービスの事業者と、ショッピング、レストラン、駐車場などの各種施設を運営する事業者と、広告、クーポンなどの各種情報を提供する事業者と、決済事業者と、国または自治体の各種の組織とが挙げられる。事業者には、個人事業主も含まれ得る。
【0014】
しかし、経路データはユーザの個人情報を含むかまたは示す可能性がある。ここで、個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができる情報をいう。個人を識別可能な経路データが事業者に利用可能であると、事業者がその経路データに基づいて、特定の個人の行動のような個人情報を把握する可能性がある。情報管理システム1は、ユーザから提供される経路データによってそのユーザが特定されない一方で、ユーザの移動に関するビックデータとして、人々の生活または地球環境の維持もしくは改善に役立つ様々な目的のために利用され得る程度の具体性は残すように(すなわち、その経路データからユーザの個人情報が特定されないが、データとしての分析利用価値は残すように)、その経路データを抽象化する。そして、情報管理システム1は経路データを抽象化するためのルールを示し、抽象化された経路データを所定のデータベースに格納し、複数の事業者または他のユーザ間でその経路データを共有させる。「経路データを抽象化する」とは、経路データが有する具体的な情報要素の一部を切り捨てて、より概念的な意味を示すように該経路データを定義し直す処理をいう。端的に言うと、「経路データを抽象化する」とは、経路データが有する情報要素または意味を意図的に曖昧にする処理をいう。抽象化された経路データから個人を特定することはできないが、データとしての分析利用価値は経路データに残される。経路データの抽象化は、特定の個人を識別できないように、ユーザの用に供する経路データを変換する処理であるので、「経路データの匿名化」ということもできる。本開示では、抽象化されようとする経路データを「オリジナル経路データ」ともいい、抽象化された経路データを「抽象経路データ」ともいう。また、オリジナル経路データによって示される移動経路を「オリジナル移動経路」ともいい、抽象経路データによって示される移動経路を「抽象移動経路」ともいう。このため、オリジナル経路データが、リンクIDおよびノードIDと通過時刻とが関連付けられた電子データである場合には、通過時刻のみが抽象化(すなわち、時間的な抽象化)された抽象経路データが生成される場合もある。あるいは、リンクIDおよびノードIDのみが抽象化(すなわち、空間的な抽象化)されてもよいし、時間的抽象化および空間的抽象化の双方が為されてもよい。
【0015】
一例では、情報管理システム1は、様々な目的で用いられ得る経路データを統括的に制御または管理するプラットフォームとしての役割を果たし得る。これに関連して、情報管理システム1の管理者または運営者はプラットフォーマであり得る。一例では、情報管理システム1は任意の事業者または他のユーザに抽象経路データを提供することができる。事業者はその抽象経路データに基づいて任意の事業を実施してよい。抽象経路データは複数の事業者または他のユーザによって共有され得る。
【0016】
[システムの構成]
図1は情報管理システム1の適用の一例を示す図である。一例では、情報管理システム1はプラットフォーマサーバ10および1以上のユーザ端末20を備える。プラットフォーマサーバ10および個々のユーザ端末20は通信ネットワークNWを介して互いにデータを送受信することができる。プラットフォーマサーバ10は通信ネットワークNWを介してデータベース群30にアクセスしてデータを読み取ったり書き込んだりすることができる。データベース群30に記憶されたデータの少なくとも一部は、通信ネットワークNWを介して1以上の事業者サーバ40によってアクセスされ得る。
【0017】
プラットフォーマサーバ10は経路データを収集するコンピュータである。プラットフォーマサーバ10として機能するコンピュータは限定されない。一例では、プラットフォーマサーバ10は業務用サーバなどの大型のコンピュータによって構成される。プラットフォーマサーバ10は一つまたは複数のコンピュータにより構成され得る。複数のコンピュータが用いられる場合には、通信ネットワークを介してこれらのコンピュータが互いに接続されることで論理的に一つのプラットフォーマサーバ10が構成される。
【0018】
ユーザ端末20はユーザによって操作されるコンピュータである。一例では、ユーザ端末20は、後述する抽象経路データベース33にアクセスして、整備済みの他のユーザの抽象経路データを取得することができる。本実施形態では、本発明の一側面に係る端末をユーザ端末20に適用する。ユーザ端末20は固定端末でもよいし携帯端末でもよい。ユーザ端末20の例として、携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、およびパーソナルコンピュータなどのデバイスが挙げられる。しかし、ユーザ端末20の種類はこれらに限定されない。ユーザ端末20は、一つの筐体から構成されるデバイスでもよいし、複数のデバイスによって構成されてもよい。例えば、ユーザ端末20はウェアラブル端末とスマートフォンとの組合せでもよい。この場合には、ウェアラブル端末がユーザの移動経路を示すオリジナル経路データを取得し、そのデータをスマートフォンに送信する。スマートフォンはそのオリジナル経路データから抽象経路データを生成し、プラットフォーマサーバ10にその抽象経路データを送信する。情報管理システム1にアクセスするユーザ端末20の台数は限定されない。
【0019】
データベース群30は、情報管理システム1において用いられるデータを記憶するデータベースの集合である。一例では、データベース群30は地図データベース31、サンプル経路データベース32、および抽象経路データベース33を含む。それぞれのデータベースは情報管理システム1の一部として構築されてもよいし、情報管理システム1とは別のコンピュータシステムに設けられてもよい。地図データベース31は、地図を構成する地図要素を示す地図データを永続的に記憶する非一時的な記憶媒体または記憶装置である。サンプル経路データベース32は、オリジナル経路データを抽象化するためのルールを生成するために用いられるサンプル経路データを永続的に記憶する非一時的な記憶媒体または記憶装置である。抽象経路データベース33は抽象経路データを永続的に記憶する非一時的な記憶媒体または記憶装置である。
【0020】
事業者サーバ40は事業者によって管理または運用されるコンピュータである。一例では、事業者サーバ40は抽象経路データベース33にアクセスして抽象経路データを取得することができる。事業者サーバ40として機能するコンピュータは限定されない。例えば、事業者サーバ40は業務用サーバなどの大型のコンピュータによって構成されてもよいし、パーソナルコンピュータによって構成されてもよい。情報管理システム1にアクセスする事業者サーバ40の台数は限定されない。
【0021】
一例では、情報管理システム1では、ユーザ端末20がオリジナル経路データを抽象化して抽象経路データを生成する。言い換えると、ユーザ端末20はオリジナル経路データを抽象経路データに変換する。ユーザ端末20はその抽象経路データをプラットフォーマサーバ10に向けて送信する。送信のタイミングは、典型的にはユーザが目的地に到着した後であるが、目的地に到着する前でもよい。移動経路の種類が候補経路または計画経路である場合には、送信のタイミングはユーザが出発地から移動を開始する前でもよい。移動経路の種類が実績経路である場合でも、ユーザ端末20は、目的地に到着する途中までの実績経路をそのタイミングで送信してもよい。一例では、プラットフォーマサーバ10はその抽象経路データを抽象経路データベース33に登録する。したがって、ユーザ端末20は抽象経路データをプラットフォーマサーバ10に向けて送信して、抽象経路データベース33への該抽象経路データの登録をプラットフォーマサーバ10に実行させてもよい。ユーザ端末20はオリジナル経路データを、ユーザの意思に基づく場合を除き、基本的にはプラットフォーマサーバ10に向けて送信しないので、プラットフォーマサーバ10はオリジナル経路データにアクセスすることができない。したがって、プラットフォーマサーバ10、事業者サーバ40、および他のユーザ端末20は、抽象経路データを利用することはできるが、オリジナル経路データを参照および利用することはできない。このような仕組みによって、プラットフォーマサーバ10および事業者サーバ40の運用者、あるいはユーザ端末20を使用する他ユーザは、ユーザの個人情報を経路データから把握することができない。ユーザの意思に基づく場合には、ユーザ端末20はオリジナル経路データをプラットフォーマサーバ10に向けて送信してもよい。この場合、プラットフォーマサーバ10および事業者サーバ40の運用者、またはユーザ端末20を使用する他ユーザは、ユーザの個人情報を経路データから把握し、抽象経路データの場合と比較して有用なデータ分析を行うことができる。この場合、オリジナル経路データを提供したユーザに対して、事業者サーバ40の運用者からプラットフォーマサーバ10を介して一定の経済的メリットが還元されてもよい。
【0022】
図2は、情報管理システム1で用いられるコンピュータ110のハードウェア構成の一例を示す図である。例えば、コンピュータ110は制御回路100を有する。一例では、制御回路100は、一つまたは複数のプロセッサ101と、メモリ102と、ストレージ103と、通信ポート104と、入出力ポート105とを有する。プロセッサ101はオペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを実行する。ストレージ103はハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、または取り出し可能な媒体(例えば、磁気ディスク、光ディスクなど)の記憶媒体で構成され、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを記憶する。メモリ102は、ストレージ103からロードされたプログラム、またはプロセッサ101による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ101は、メモリ102と協働してプログラムを実行することで、個々の機能モジュールとして機能する。通信ポート104は、プロセッサ101からの指令に従って、通信ネットワークNWを介して他の装置との間でデータ通信を行う。入出力ポート105は、プロセッサ101からの指令に従って、キーボード、マウス、モニタ、タッチパネルなどの入出力装置(ユーザインタフェース)との間で電気信号の入出力を実行する。
【0023】
搭載されるハードウェアモジュールはコンピュータの種類によって異なり得る。例えば、プラットフォーマサーバ10に搭載されるCPU、メモリ、ネットワークカードなどのモジュールはユーザ端末20のものよりも高性能であり得る。プラットフォーマサーバ10の入力装置としては一般にキーボードおよびマウスが用いられ、出力装置としてはモニタが用いられる。ユーザ端末20がパーソナルコンピュータである場合には、入力装置としては一般にキーボードおよびマウスが用いられ、出力装置としてはモニタが用いられる。ユーザ端末20が携帯端末である場合には、一般にはタッチパネルが入出力装置として用いられる。
【0024】
図3は情報管理システム1の機能構成の一例を示す図である。より具体的には、
図3はプラットフォーマサーバ10およびユーザ端末20の機能構成の一例を示す。
【0025】
プラットフォーマサーバ10は機能モジュールとして検索部11、ルールデータベース12、ルール管理部13、および登録部14を備える。検索部11はユーザ端末20からの要求に応答して移動経路を検索する機能モジュールである。ルールデータベース12は経路データを抽象化するためのルールデータのマスタを永続的に記憶する機能モジュール(記憶領域)である。ルール管理部13はそのマスタを管理する機能モジュールである。登録部14は抽象経路データを抽象経路データベース33に登録する機能モジュールである。
【0026】
ユーザ端末20は機能モジュールとして経路取得部21、ルール記憶領域22、ルール更新部23、抽象化部24、および送信部25を備える。経路取得部21は経路検索機能28または経路追跡機能29からオリジナル経路データを取得する機能モジュールである。経路検索機能28はプラットフォーマサーバ10の検索部11と連携して、ユーザにより設定された検索条件に合致する移動経路(すなわち、候補経路)の情報をユーザ端末20上に表示する。経路追跡機能29はユーザ端末20の現在位置の履歴を実績経路として取得する。一例では、経路追跡機能29は全地球測位システム(GPS)機能を利用する。ルール記憶領域22はルールデータのマスタの少なくとも一部のコピーを永続的に記憶する機能モジュール(記憶領域)である。ルール更新部23はそのコピーをマスタと整合させる機能モジュールである。抽象化部24はオリジナル経路データを抽象化して抽象経路データを生成する機能モジュールである。送信部25は抽象経路データをプラットフォーマサーバ10に向けて送信する機能モジュールである。
【0027】
[地図データ]
地図データは例えば経路検索のために用いられる。地図データのデータ構造は限定されない。地図データにより示される地図要素の種類および表現方法は限定されず、任意の方針で設計されてよい。地図要素の例としてノードおよびリンクが挙げられる。ノードとは、経路を特徴づける位置をいい、より具体的には、移動体の移動方法(例えば方向、速度など)を変えることができる位置、または該移動方法が変わる位置をいう(例えば、駅、バス停、駐車場等の乗り換え地点、交差点など)。リンクとは、経路を示すために設定される仮想的な線のことをいい、隣接するノード間を結ぶ。リンクの形状は直線でも曲線でもよく、あるいは、直線と曲線との組合せでもよい。地上においては、リンクの形状は道路または軌道の形状に依存し得る。ノードおよびリンクが設定される位置は限定されず、例えば、ノードおよびリンクは地上、地下、空中、水上、または水中に設定され得る。二つのノードを結ぶリンクが複数個存在してもよい。例えば、二つのノードが鉄道に関するリンクと道路に関するリンクとの双方によって結ばれる場合があり得る。
【0028】
一例では、地図データは、複数のノードを示すノードデータと、複数のリンクを示すリンクデータとを含んで構成される。
【0029】
一例では、ノードデータはデータ項目としてノードID、座標、およびノード属性を含む。ノードIDは個々のノードを一意に特定する識別子である。座標はノードの2次元または3次元の地理的位置を示す値である。座標の設定方法は限定されず、例えば、座標は緯度および経度を用いて表現されてもよいし、他の任意の座標系に従って設定されてもよい。ノード属性とは、ノードの性質、特徴、または状況を表す任意の情報である。例えば、ノード属性は、ノードに関連する地物に関する地物情報を含んでもよいし、ノードに関連する事業者に関する事業者情報を含んでもよい。
【0030】
一例では、リンクデータはデータ項目としてリンクID、第1ノードID、第2ノードID、およびリンク属性を含む。リンクIDは個々のリンクを一意に特定する識別子である。第1ノードIDおよび第2ノードIDはいずれも、リンクの端に位置するノードを特定するノードIDである。リンク属性とは、リンクの性質、特徴、または状況を表す任意の情報である。例えば、リンク属性は、交通機関などの移動手段と、リンクを移動するための所要時間または費用と、リンクの状況(例えば交通情報)と、リンクに関連する地物(すなわち地物情報)と、リンクに関連する事業者(すなわち事業者情報)と、リンクに関連するサービス情報(例えば広告情報、クーポン情報など)のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0031】
一例では、地図データは、交通結節点および交通施設を示すデータをさらに含んで構成される。この場合には、ノード属性は交通結節点または交通施設に関する情報を含んでもよい。
【0032】
交通結節点とは移動手段の変更が実施される場所(要するに、移動手段が変わる場所)をいう。より具体的には、交通結節点は、複数の同種あるいは異種の移動手段の接続が行われる場所をいう。交通結節点は複数の交通施設を含む。
【0033】
「移動手段の変更」とは或る移動手段から別の移動手段に変えることをいう。移動手段が限定されないことに対応して、移動手段の変更も限定されない。或る移動手段から別の移動手段への乗換は、移動手段の変更の一例である。移動手段の変更の例として、タクシーから在来線への乗換、或る路線(鉄道路線、バス路線など)から別の路線(鉄道路線、バス路線など)への乗換、自家用車から徒歩への変更、徒歩から在来線への変更などが挙げられる。
【0034】
交通施設とは、移動手段を変更するためにユーザに利用される施設をいう。交通施設は、交通結節点を構成する要素として情報管理システム1により処理される。交通施設はノードの一種であり得る。交通施設の例として、駅、バス停、タクシー乗り場、港、空港、レンタカーの営業所、レンタサイクルのサイクルポート、駐車場、および駐輪場が挙げられるが、交通施設はこれらに限定されない。一つの交通施設が複数の交通結節点と関連付けられてもよい。したがって、交通結節点および交通施設は多対多の関係(言い換えるとM:Nの関係)にある。それぞれの交通結節点では、該交通結節点を代表する一つの交通施設が設定される。本開示ではその代表の交通施設を「代表施設」という。また、本開示では、それぞれの交通結節点において代表施設以外の交通施設を「構成施設」という。
【0035】
代表施設は任意の手法によって設定されてよい。例えば、代表施設は、交通結節点または特定の区域の中で最も中心的な役割を果たす施設、最も利用者が多い交通施設、あるいはランドマークの役割を持つ交通施設でもよい。
【0036】
構成施設も任意の方針で設定されてよい。或る交通施設を構成施設としていずれかの交通結節点に所属させる場合には、その交通施設にいちばん近い代表施設が特定され、その交通施設が、該特定された代表施設と同じ交通結節点に構成施設として追加されてもよい。あるいは、異なる交通手段を利用するユーザの利用実績または地形上の関係に基づいて、交通施設をどの交通結節点に所属させるかが決定されてもよい(例えば、或る交通施設を、川向いにある代表施設に所属させないように構成施設が決定されてもよい)。
【0037】
図4および
図5を参照しながら、交通結節点および交通施設を示す地図データについて説明する。
図4は交通結節点の一例を示す図である。
図5は交通結節点を示す地図データの一例を示す図であり、
図4に対応する。
【0038】
図4は、地下鉄210、在来線220、道路ネットワーク230、および道路ネットワーク240を含む地
図200を模式的に示す。地
図200において、白丸は交通施設を表し、破線は交通結節点を表す。
図4ではハブHaおよびHbという2個の交通結節点を例示するが、地
図200内においてさらなる交通結節点が存在し得ることに留意されたい。この例において、ハブHaは地下鉄のA駅と、在来線のA駅と、バス停Bxとにより構成される。人々はハブHaで、地下鉄、在来線、およびバスの間で乗換をしたり、地下鉄、在来線、またはバスを降りて徒歩で移動したりするなどの様々な方法で移動手段を変更することができる。ハブHbは在来線のB駅とバス停Byとにより構成される。人々はハブHbで、在来線とバスとの間で乗換をしたり、駅まで歩いて来て在来線またはバスに乗ったりするなどの様々な方法で移動手段を変更することができる。
【0039】
図5はハブHaおよびHbに関する地図データ310を示す。この地図データ310は交通結節点テーブル311、交通施設テーブル312、および乗換テーブル313を含む。
【0040】
交通結節点テーブル311は、交通結節点に関する情報を示す交通結節点データを記憶するデータテーブルである。一例では、交通結節点データの各レコードは、個々の交通結節点を一意に特定する交通結節点IDと、交通結節点の名称(交通結節点名)とを含む。
【0041】
交通施設テーブル312は、交通施設に関する情報を示す交通施設データを記憶するデータテーブルである。一例では、交通施設データの各レコードは、個々の交通施設を一意に特定する交通施設IDと、交通施設の名称(施設名)と、交通施設に対応する交通結節点IDと、代表フラグとを含む。代表フラグは、交通施設が代表施設および構成施設のどちらであるかを示す情報であり、二値で示される。一例では、代表フラグは代表施設を示す「1」と構成施設を示す「0」とのいずれかである。
図5の例は、在来線のA駅がハブHaの代表施設であり、B駅がハブHbの代表施設であることを示す。
【0042】
乗換テーブル313は、交通結節点での乗換に関する情報を示す乗換データを記憶するデータテーブルである。一例では、乗換データの各レコードは、個々の乗換方法を一意に特定する乗換IDと、乗換に用いられる二つの交通施設のID(第1交通施設IDおよび第2交通施設ID)と、移動コストとを含む。移動コストは移動に掛かる負荷であり、例えば移動時間で表される。
図5の例は、ハブHaでは在来線、地下鉄、およびバスの間で任意に乗換ができ、ハブHbでは在来線とバスとの間で乗換ができることを示す。
【0043】
交通施設テーブル312は交通結節点IDによって交通結節点テーブル311と関連付けられ、この関係によって、交通結節点に属する交通施設を特定することができる。乗換テーブル313は二つの交通施設IDによって交通施設テーブル312と関連付けられ、この関係によって、交通結節点で可能な乗換方法を特定することができる。
【0044】
交通結節点および交通施設を示すデータ構造は
図5の例に限定されない。例えば、交通結節点テーブル311、交通施設テーブル312、および乗換テーブル313は他のデータ項目をさらに含んでもよい。交通結節点テーブル311、交通施設テーブル312、および乗換テーブル313は任意の方針で正規化または非正規化されてもよい。
【0045】
地図データの個々のデータ項目は静的に設定されてもよいし動的に設定されてもよい。「静的に設定される」とは、値が予め設定され、人手の介入がない限りはその設定が変更されないことをいう。一方、「動的に設定される」とは、値が任意の事象に応じて人手の介入無しに変更され得ることをいう。動的な設定は、所与のデータ項目を制御するプログラムが所定のコンピュータ上で実行されることで実現される。動的な設定は情報管理システム1により実行されてもよいし、別のコンピュータシステムにより実行されてもよい。
【0046】
[経路データ]
経路データのデータ構造は限定されない。例えば、経路データは複数のノードIDおよび複数のリンクIDによって表現されてもよい。より具体的には、経路データは、交通施設または交通結節点に対応するノードのノードIDと、そのノード間(すなわち交通施設間または交通結節点間)を結ぶリンクのリンクIDとによって表現されてもよい。上述したように移動経路は経路属性を示すことができるので、経路データはその経路属性に対応するデータ項目を含み得る。例えば、経路データは、経路上での移動に関する日時(本開示ではこれを「移動日時」という)を示してもよい。移動日時の例として、個々のノードでの出発日時、通過日時、乗換日時、または到着日時が挙げられる.しかし、移動日時の種類はこれらに限定されない。移動日時は、候補経路および計画経路では予定の日時を示し、実績経路では実際の日時を示す。別の例では、経路データは移動経路における交通費の見込額または実額を示してもよい。この交通費は交通手段ごとに示されてもよいし、移動経路の全体における総額として示されてもよい。
【0047】
サンプル経路データは経路データの一種である。サンプル経路データは、ルールデータのマスタを生成するために用いられる経路データである。サンプル経路データは抽象化されていない経路データであり、この点でオリジナル経路データと同様である。一例では、ルールデータを作成するための実験への参加者の同意の下に、該参加者のユーザ端末から提供される経路データがサンプル経路データとして収集されて、そのサンプル経路データがサンプル経路データベース32に格納される。サンプル経路データベース32に格納されるサンプル経路データの個々のレコードは、一つの移動経路またはひとまとまりの移動経路群を特定する識別子である経路IDを含む。
【0048】
抽象経路データも経路データの一種である。抽象経路データの少なくとも一部は、抽象化された複数のノードに対応するノードIDと、抽象化された複数のリンクに対応するリンクIDとによって表現される可能性がある。別の例では、抽象経路データは抽象化された移動日時を表す可能性がある。抽象経路データベース33に格納される抽象経路データの個々のレコードも経路IDを含む。
【0049】
サンプル経路データおよび抽象経路データの双方について、経路IDの設定方法は限定されない。例えば、一つの候補経路、一つの計画経路、または一つの実績経路に対して一つの経路IDが設定されてもよい。あるいは、ひとまとまりの移動経路群(例えば、1回の検索処理で抽出された複数の移動経路の集合)に対して一つの経路IDが設定されてもよい。
【0050】
[ルールデータ]
ルールデータのデータ構造は限定されない。一例では、ルールデータは、移動経路を構成する情報要素を抽象化するためのルールを示す。情報要素の例として、ノード、リンク、交通結節点、交通施設、移動日時、およびこれらのうちの任意の2以上の組合せが挙げられる。しかし、情報要素はこれらに限定されない。ルールデータの表現方法は限定されない。例えば、ルールデータは対応表、数式、テキスト、アルゴリズムなどの任意の手法によってプラットフォーマサーバ10およびユーザ端末20内に実装されてよい。
【0051】
ルールの内容は何ら限定されず、任意の方針に基づいて用意されてよい。一例では、ルールデータは、第1交通結節点での移動手段の変更を第2交通結節点での移動手段の変更に変換するルールを示してもよい。以下ではこのルールを「第1ルール」ともいう。第1ルールの目的は次の通りである。第1交通結節点で移動手段を変更する人数が少ないと、その変更を含む移動経路が個人の特定につながる可能性がある。第1ルールでは、第1交通結節点に相対的に近く且つ移動手段を変更する人数が多い第2交通結節点を利用して、第1交通結節点に関する情報要素を第2交通結節点に関する情報要素に変換する。端的に言うと、第1ルールでは、第1交通結節点を第2交通結節点に従属させて、第1交通結節点に関する情報要素を第2交通結節点に関する情報要素に丸める。この抽象化によって、第1交通結節点の利用と第2交通結節点の利用との区別がつかなくなる。したがって、実際に第1交通結節点を利用したユーザと、第1交通結節点を利用しようとするユーザとを抽象経路データから特定することはできない。
【0052】
図6は第1ルールに基づいてオリジナル経路データを抽象化する一例を示す図である。この例では、第1ルールは「交通結節点Hyでの移動手段の変更を、地理的に近隣の交通結節点Hxでの移動手段の変更に変換する」というルールRaである。このルールRaに基づいてオリジナル移動経路401が抽象移動経路402に変換される。オリジナル移動経路401では、ユーザUaは目的地に向かう途中で、交通結節点Hy(より具体的には、交通結節点Hy内の駅)で電車を降りて或る経由地に行く。その後、ユーザUaは交通結節点Hy(より具体的には、その駅)に戻って再び電車に乗って目的地へと向かう。ルールRaによって、交通結節点Hyでの移動手段の変更(降車および再乗車)が、交通結節点Hxでの移動手段の変更(降車および再乗車、または乗換もしくは徒歩への変更)に変換されて、抽象移動経路402が生成される。抽象移動経路402を示す抽象経路データからユーザUaを特定することはできない。しかし、この抽象移動経路402では近隣の交通結節点への地理的な変換が行われただけである。したがって、ユーザの移動に関するビックデータとして、人々の生活または地球環境の維持もしくは改善に役立つ様々な目的のために利用され得る程度の具体性は残される。
【0053】
別の例では、ルールデータは、交通結節点における移動時刻を所与の時間幅に変換するルールを示してもよい。以下ではこのルールを「第2ルール」ともいう。「交通結節点における移動時刻」は、交通結節点内の一つの交通施設における一つの移動時刻のみでもよいし、交通結節点内の複数の交通施設における複数の移動時刻の集合でもよい。第2ルールの目的は次の通りである。特定の時間幅において通行者が少ない場所では、その時間幅にその場所を通るユーザが特定される可能性がある。第2ルールでは、特定の時刻を、二つの時点の間の範囲である時間幅に丸める。この抽象化によって、その時間幅において交通結節点を移動する複数のユーザのそれぞれを残りのユーザと区別することができなくなる。しかし、第2ルールでは、ピンポイントの時刻が所定の時間幅に変換されるだけである。したがって、ユーザの移動に関するビックデータとして、人々の生活または地球環境の維持もしくは改善に役立つ様々な目的のために利用され得る程度の具体性は残される。
【0054】
図7は第2ルールに基づいてオリジナル経路データを抽象化する一例を示す図である。この例では、第2ルールは「交通結節点Hpにおける移動時刻が午前9時から午前11時の間である場合に、その移動時刻を“9am-11am”に変換する」というルールRbである。このルールRbに基づいてオリジナル移動経路411が抽象移動経路412に変換される。交通結節点Hpは二つの交通施設Fq,Frを含む。オリジナル移動経路411では、ユーザUbは別の場所から交通施設Fqに午前9時50分に到着し、交通施設Frに徒歩で移動して、午前10時に交通施設Frから目的地へと出発する。ルールRbによって、移動時刻の一種であるその出発時刻および到着時刻が“9am-11am”という2時間の時間幅に丸められて、抽象移動経路412が生成される。抽象移動経路412を示す抽象経路データからユーザUbを特定することはできない。
【0055】
図7は、交通結節点における個々の交通施設での移動時刻を、該交通結節点での時間幅に丸める例を示す。しかし、移動時刻を丸める手法(移動時刻を抽象化する手法)はこれに限定されない。例えば、交通結節点の一部の交通施設に限って移動時刻が丸められてもよい。あるいは、交通結節点のそれぞれの交通施設での移動時刻が該交通施設での時間幅に丸められてもよい。
図7の場合であれば、交通施設Fqの到着時刻と交通施設Frの出発時刻との双方が“9am-11am”に丸められてもよいし、その二つの時刻のいずれか一方のみが“9am-11am”に丸められてもよい。
【0056】
別の例では、ルールデータは、所定のPOI(Point of Interest)の利用不可時間において該POIを抽象化するルールを示してもよい。以下ではこのルールを「第3ルール」ともいい、この第3ルールにより示されるPOIを「対象POI」ともいう。POIとは地図上の特定の地点のことをいう。個人宅、公共施設、交通施設などの任意の地点がPOIになり得る。対象POIとして設定される地点は限定されない。例えば、対象POIは不特定の人が利用可能な施設であってもよい。利用不可時間とは対象POIを利用することができない時間幅をいう。利用不可時間の長さは限定されず、例えば時間帯、日付、曜日などの任意の長さであってよい。利用不可時間の例として、対象POIの営業時間ではない時間帯と、対象POIの利用が想定されていない時間帯とが挙げられる。しかし、利用不可時間はこれらに限定されない。対象POIを抽象化する手法は限定されない。その抽象化は、オリジナル移動経路からの対象POIの削除でもよいし、対象POIを市町村名などの地域名に変換する処理でもよい。オリジナル移動データによって示される対象POIの移動時刻が該対象POIの利用可能時間内である場合には、その対象POIは抽象化されない。一方、その移動時刻が対象POIの利用不可時間内である場合には、その対象POIは抽象化される。すなわち、第3ルールは、対象POIの利用不可時間に限って該対象POIを抽象化することを示す。第3ルールが適用された結果の一つの態様として、該対象PОIを目的地とする経路は、該対象POI近傍の交通結節点を目的地とする経路に書き換えられる。
【0057】
別の例では、ルールデータは移動経路から必ず削除するPOIをルールとして示してもよい。以下ではこのルールを「第4ルール」ともいう。例えば、個人宅などのような、出入りする人を特定可能な地点が、必ず削除されるPOIとして規定されてもよい。
【0058】
[システムでの処理手順]
(ルールデータの生成)
図8~
図10を参照しながら、ルールデータのマスタを生成する処理について説明する。
図8~
図10はいずれも、その処理の一例を示すフローチャートである。「ルールデータのマスタの生成」は、該マスタの新規作成および更新を含む概念である。
【0059】
図8は、或る一つの交通結節点を示すサンプル経路データに基づいてルールデータのマスタを生成する一例を処理フローS1として示す。処理フローS1は複数の交通結節点のそれぞれについて実行され得る。そのため、ルールデータは交通結節点毎に生成され、結果的には交通結節点、すなわち地域毎に異なるルールが生成される。
【0060】
ステップS11では、ルール管理部13がサンプル経路データベース32にアクセスして、その交通結節点での移動を示すサンプル経路データの1以上のレコードを取得する。「交通結節点の通過を示すサンプル経路データ」とは、交通結節点を含む移動経路を示すサンプル経路データであり、より具体的には、交通結節点を出発地、経由地、または目的地として示すサンプル経路データである。
【0061】
ステップS12では、ルール管理部13が、その交通結節点での移動パターンから特定の個人を識別できるか否かを判定する。ルール管理部13は取得された1以上のレコードを参照して、交通結節点での移動経路の集合を移動パターンとして認識する。そして、ルール管理部13は、その移動パターンにおいて他の移動経路と重ならない移動経路が少なくとも一つ存在する場合に、特定の個人を識別可能であると判定する。
【0062】
特定の個人を識別可能である移動経路が存在する場合には(ステップS13においてYES)、処理はステップS14に進む。ステップS14では、ルール管理部13が、その交通結節点を他の交通結節点に変換するルール(具体的には第1ルール)を設定する。ルール管理部13はその第1ルールを示すレコードを生成して、該レコードをルールデータベース12に格納する。この処理によってルールデータが新規に登録されるかまたは更新される。この際に設定される第1ルールの一例は上記のルールRaである。「他の交通結節点」の選択方法は限定されない。例えば、「他の交通結節点」は、変換前の交通結節点の近くに位置し且つ通行量が該変換前の交通結節点よりも多い交通結節点であってもよい。
【0063】
一方、特定の個人を識別可能である移動経路が存在しない場合には(ステップS13においてNO)、ルール管理部13はその交通結節点についてルールを設定することなく、該交通結節点についての処理を終了する。
【0064】
図9は、或る一つの交通結節点でのサンプル経路データに基づいてルールデータのマスタを生成する別の例を処理フローS2として示す。処理フローS2も複数の交通結節点のそれぞれについて実行され得る。そのため、ルールデータは交通結節点毎に生成され、結果的には交通結節点、すなわち地域毎に異なるルールが生成される。
【0065】
ステップS21では、ルール管理部13がサンプル経路データベース32にアクセスして、交通結節点での移動を示すサンプル経路データの1以上のレコードを取得する。
【0066】
ステップS22では、ルール管理部13が、その交通結節点での移動パターンから特定の時刻における特定の個人を識別できるか否かを判定する。ルール管理部13は取得された1以上のレコードを参照して、交通結節点での移動経路の集合を移動パターンとして認識する。そして、ルール管理部13は、その移動パターンにおいて特定の時刻において他の移動経路と重ならない移動経路が少なくとも一つ存在する場合に、該時刻において特定の個人を識別可能であると判定する。言い換えると、ルール管理部13は、特定の個人を識別可能な移動時刻が存在するか否かを判定する。
【0067】
特定の個人を識別可能な移動時刻が存在する場合には(ステップS23においてYES)、処理はステップS24に進む。ステップS24では、ルール管理部13が、その移動時刻を所定の時間幅に変換するルール(具体的には第2ルール)を設定する。ルール管理部13はその第2ルールを示すレコードを生成して、該レコードをルールデータベース12に格納する。この処理によってルールデータが新規に登録されるかまたは更新される。この際に設定される第2ルールの一例は上記のルールRbである。一例では、ルール管理部13は特定された移動時刻と他の移動時刻とを含むように(すなわち、少なくとも二つの移動時刻を含むように)時間幅を設定する。時間幅の長さは限定されず、例えば、10分、30分、1時間、2時間、12時間、1日(24時間)などでもよい。
【0068】
一方、特定の個人を識別可能な移動時刻が存在しない場合には(ステップS23においてNO)、ルール管理部13はその交通結節点についてルールを設定することなく、該交通結節点についての処理を終了する。
【0069】
処理フローS2は一つの交通結節点についての処理を示すが、ルール管理部13は個々の交通施設について処理フローS2を実行してもよい。
【0070】
図10は、或る一つの対象POIについてルールデータのマスタを生成する一例を処理フローS3として示す。処理フローS3は複数の対象POIのそれぞれについて実行され得る。
【0071】
ステップS31では、ルール管理部13が処理対象であるPOIの利用可能時間を取得する。POIの利用可能時間は任意のデータによって示され得る。例えば、その利用可能時間は地図データによって示されてもよいし、アクセス可能な任意の情報源(例えば、施設のウェブサイト、施設情報を管理するデータベースなど)から取得可能であってもよい。ルール管理部13は任意のデータにアクセスして対象POIの利用可能時間を取得してよい。
【0072】
ステップS32では、ルール管理部13が利用不可時間(利用可能時間ではない時間)においてPOIを抽象化するためのルール(具体的には第3ルール)を設定する。ルール管理部13はその第3ルールを示すレコードを生成して、該レコードをルールデータベース12に格納する。この処理によってルールデータが新規に登録されるかまたは更新される。
【0073】
処理フローS1~S3によって例示されるように、ルールデータはルール管理部13によって統括的に管理される。ルール管理部13は任意のタイミングでルールデータを生成して、ルールデータの最新のマスタをルールデータベース12に格納する。ユーザ端末20のルール更新部23は任意のタイミングでその最新のマスタの少なくとも一部のコピーをプラットフォーマサーバ10からダウンロードし、そのコピーをルール記憶領域22に格納する。具体的なルールは、地理的な場所によって異なる一方で、ユーザの現在地またはユーザが関心を持つ地域以外では、必ずしも必要ではない。そのため、ルール更新部23は、ユーザの現在地等を含む所定範囲の地域に関するルールのみダウンロードし、ユーザが移動した場合には、その移動に応じた地域のルールをダウンロードしてもよい。この処理により、ユーザ端末20の処理負荷を軽減することができる。ルールデータをダウンロードする方法は限定されず、任意の方針に基づいて設計されてよい。例えば、ルール管理部13が、ルールデータが更新されたことを示す通知をユーザ端末20に向けて送信し、この送信を契機にそのダウンロードが実行されてもよい。具体的には、ルール更新部23がその通知に応答して、自動的にまたはユーザ入力に基づいてプラットフォーマサーバ10に最新のルールデータを要求する。ルール管理部13はその要求に応答して、ルールデータベース12から最新のマスタの少なくとも一部のコピーを読み出し、そのコピーをユーザ端末20に向けて送信する。ルール更新部23はそのコピーをルール記憶領域22に格納する。
【0074】
(経路データの抽象化)
図11を参照しながら、経路データを抽象化する処理について説明する。
図11はその処理の一例を処理フローS4として示すシーケンス図である。
【0075】
ステップS41では、ユーザ端末20の経路取得部21がオリジナル経路データを取得する。例えば、経路取得部21は経路検索機能28または経路追跡機能29からオリジナル経路データを取得してもよい。
【0076】
経路取得部21は、候補経路または計画経路を示すオリジナル経路データを経路検索機能28から取得してもよい。経路検索機能28は所定のユーザ操作に応答して検索条件をプラットフォーマサーバ10に向けて送信する。検索条件は出発地および目的地に加えて、出発日時および到着日時のうちの少なくとも一つ、少なくとも一つの経由地、利用する交通手段、変更経路の条件などのデータ項目を含んでもよい。プラットフォーマサーバ10では、検索部11が地図データベース31を参照して、その検索要求を満たす1以上の移動経路を検索し、検索結果をユーザ端末20に向けて送信する。一例では、経路検索機能28はその検索結果を受信および表示し、これによりユーザはその検索結果を視認することができる。経路取得部21は、検索結果で示される1以上の移動経路の少なくとも一つを示すデータをオリジナル経路データとして取得する。
【0077】
経路取得部21は、実績経路を示すオリジナル経路データを経路追跡機能29から取得してもよい。経路追跡機能29は所定のユーザ操作に応答してユーザ端末20の現在位置の履歴を実績経路として取得することができる。経路取得部21はその実績経路を示すデータをオリジナル経路データとして取得する。
【0078】
ステップS42では、ユーザ端末20の抽象化部24がオリジナル経路データを抽象化して抽象経路データを生成する。抽象化部24は1以上のオリジナル経路データのそれぞれを次のように抽象化する。すなわち、抽象化部24はそのオリジナル経路データとルール記憶領域22内のルールデータとを参照して、抽象化または削除すべき情報要素(例えば、交通結節点、交通施設、POIなど)がオリジナル移動経路上に存在するか否かを判定する。そのような情報要素が1以上存在する場合には、抽象化部24は該1以上の情報要素のそれぞれをルールデータに基づいて抽象化して、抽象経路データを生成する。或る一つのオリジナル経路データについて、抽象化または削除すべき情報要素が存在しない場合には、抽象化部24はオリジナル経路データをそのまま抽象経路データとして処理してよい。
【0079】
一例では、抽象化部24はオリジナル移動経路における移動手段の利用料である交通費を算出し、その交通費の情報(単に金額を示す情報)をそのまま残しつつオリジナル経路データを抽象化し、その交通費と対応した抽象経路データを生成してもよい。この場合、交通費はオリジナル経路データに基づいて算出されるため、金額の正確性が担保される。複数の移動手段が利用される場合、交通費は移動手段毎に算出されてもよい。抽象化部24は、算出された交通費の情報を、テキスト、音声などの任意の手法によってユーザに向けて出力し、ユーザに認識させてもよい。出力された交通費の情報を不信に思うユーザ操作に応じて、抽象化部24は交通費を再計算してもよい。
【0080】
抽象化部24はオリジナル経路データを抽象化したことを示す通知をテキスト、音声などの任意の手法によってユーザに向けて出力してもよい。この通知は、処理されたオリジナル経路データ(すなわちオリジナル移動経路)と、抽象経路データ(すなわち抽象移動経路)との少なくとも一方を示してもよい。この通知によって、移動経路が抽象化された事実、抽象化の前または後の移動経路の詳細などの情報をユーザに伝えることができる。抽象化部24は、抽象移動経路および交通費をプラットフォーマサーバ10に送信する際に、ユーザによる明確な意思を確認してもよい。
【0081】
ステップS43では、ユーザ端末20の送信部25が抽象経路データをプラットフォーマサーバ10に向けて送信する。プラットフォーマサーバ10では登録部14が抽象経路データを受信する。
【0082】
ステップS44では、登録部14がその抽象経路データを抽象経路データベース33に登録する。登録部14は、新たな経路IDを生成してその経路IDを抽象経路データに関連付けた上で、その抽象経路データを抽象経路データベース33に格納する。登録された抽象経路データは様々な目的のために様々な事業者または他のユーザによって利用され得る。
【0083】
処理フローS4において、ユーザ端末20はオリジナル経路データを送信することなく抽象経路データをプラットフォーマサーバ10に向けて送信する。したがって、プラットフォーマサーバ10はオリジナル経路データを取得せず、データベース群30はオリジナル経路データを記憶しない。この結果、オリジナル経路データがサーバ側で参照される状況は生じない。サーバ側にはオリジナル経路データに代えて抽象経路データが提供され、オリジナル経路データはユーザ端末20から外には出ないので、ユーザの移動経路が適切に匿名化される。また、ユーザ端末20は、算出された交通費の情報をプラットフォーマサーバ10に向けて送信する。そのため、プラットフォーマサーバ10はユーザに課金するべき交通費を正確に把握することが可能となり、例えば、交通事業者に代わって、交通費の決済を実行できる。ユーザ端末20は、抽象経路データまたは交通費の情報をプラットフォーマサーバ10に向けて送信する際に、ユーザの明確な意思を確認してもよい。
【0084】
[経路データの抽象化の例]
図12は経路データの抽象化に関する一つの具体例を示す図である。この例では、ユーザ端末20はユーザUcのオリジナル移動経路421を抽象化して抽象移動経路422を生成する。オリジナル移動経路421の出発地はユーザUcの自宅であり、目的地は施設Fyである。ユーザUcはまずは自宅から駅Siまで徒歩で行き、駅SiからハブHjの駅Sjまで列車で移動する。ユーザUcは駅Sjで降車して知人の住宅に立ち寄り、その後、駅Sjに戻って再び列車に乗り、駅Smまで移動する。ユーザUcは駅Smから徒歩で施設Fyに行く。駅Siでの出発時刻が午前7時であり、駅Sjでの到着時刻および出発時刻がそれぞれ午前8時、午前9時30分であり、駅Smでの到着時刻が午前10時であり、施設Fyでの到着時刻が午前10時10分であるとする。前提として、ハブHjは第1ルールによってハブHkに従属する。
【0085】
一例では、抽象化部24はオリジナル移動経路421を示すオリジナル経路データを次のように抽象化する。抽象化部24は第4ルールに基づいて自宅をオリジナル移動経路421から削除し、これにより自宅から駅Siまでの区間を削除する。さらに、抽象化部24は、ハブHjでの移動手段の変更をハブHkでの移動手段の変更に変換する第1ルールに基づいて、駅Sjでの降車および再乗車を、ハブHk(または、ハブHkの駅Sk)での降車および再乗車に変換する。加えて、抽象化部24は第4ルールに基づいて知人の住宅をオリジナル移動経路421から削除し、これにより駅Sj(あるいは、ハブHkまたは駅Sk)と該住宅との間の区間を削除する。
【0086】
これらの抽象化によって抽象移動経路422が生成される。抽象移動経路422の出発地は、ユーザUcの自宅ではなく駅Siである。加えて、抽象移動経路422は、ユーザがハブHjの駅Sjではなく、ハブHkまたは駅Skでいったん列車を降りたことを示す。知人の住宅は抽象移動経路422上に現われない。抽象移動経路422はユーザUcに特有の行動を示さないので、オリジナル移動経路421の匿名化が実現される。
【0087】
図13は経路データの抽象化に関する別の具体例を示す図である。この例では、ユーザ端末20はユーザUdのオリジナル移動経路431を抽象化して抽象移動経路432を生成する。オリジナル移動経路431の出発地はユーザUdの自宅であり、目的地は施設Fzである。ユーザUdはまずは自宅からバス停Beまで徒歩で行き、バス停BeからハブHsのバス停Btまでバスで移動する。ユーザUdはバス停Btで降車してハブHsの別のバス停Buに徒歩で移動し、バス停Buからバス停Bfまで別のバスで移動する。すなわち、ユーザUdはハブHsでバスを乗り換える。ユーザUdはバス停Bfから徒歩で施設Fzに行く。バス停Beでの出発時刻が午前9時20分であり、バス停Btでの到着時刻が午前9時55分であり、バス停Buでの出発時刻が午前10時10分であり、バス停Bfでの到着時刻が午前10時30分であり、施設Fzでの到着時刻が午前10時35分であるとする。施設Fzはその時刻では利用不可であるとする。
【0088】
一例では、抽象化部24はオリジナル移動経路431を示すオリジナル経路データを次のように抽象化する。抽象化部24は第4ルールに基づいて自宅をオリジナル移動経路431から削除し、これにより自宅からバス停Beまでの区間を削除する。さらに、抽象化部24は、ハブHsにおける移動時刻を所与の時間幅に変換する第2ルールに基づいて、バス停Btでの到着時刻とバス停Buでの出発時刻とを、ハブHsでの通過の時間幅に変換する。加えて、抽象化部24は、施設Fzの利用不可時間において該施設Fzを抽象化する第3ルールに基づいて、施設Fzをオリジナル移動経路431から削除し、これにより、バス停Bfから施設Fzまでの区間を削除する。
【0089】
これらの抽象化によって抽象移動経路432が生成される。抽象移動経路432の出発地は、ユーザUdの自宅ではなくバス停Beであり、目的地は施設Fzではなくバス停Bfである。加えて、抽象移動経路432は、ユーザがハブHsを午前9時から午前11時の間に通過することを示す。抽象移動経路432はユーザUdに特有の行動を示さないので、オリジナル移動経路431の匿名化が実現される。
【0090】
[プログラム]
コンピュータ110をプラットフォーマサーバ10として機能させるためのプログラムは、コンピュータ110を検索部11、ルールデータベース12、ルール管理部13、および登録部14として機能させるためのプログラムコードを含む。コンピュータ110をユーザ端末20として機能させるためのプログラムは、コンピュータ110を経路取得部21、ルール記憶領域22、ルール更新部23、抽象化部24、および送信部25として機能させるためのプログラムコードを含む。それぞれのプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの非一時的な記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、それぞれのプログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。提供されたプログラムはストレージ103に記憶される。プロセッサ101がメモリ102と協働してそのプログラムを実行することで、対応する機能モジュールが実現する。
【0091】
[効果]
以上説明したように、本開示の一側面に係る端末はプロセッサを備える。プロセッサは、経路データを抽象化するためのルールを示す所与のルールデータに基づいて、ユーザの移動経路を示すオリジナル経路データを抽象化して抽象経路データを生成し、抽象経路データをサーバに向けて送信する。
【0092】
本開示の一側面に係るプログラムは、経路データを抽象化するためのルールを示す所与のルールデータに基づいて、ユーザの移動経路を示すオリジナル経路データを抽象化して抽象経路データを生成するステップと、抽象経路データをサーバに向けて送信するステップとを端末に実行させる。
【0093】
このような側面においては、オリジナル経路データが端末で抽象化されて、抽象経路データがサーバに向けて送信される。端末からサーバに経路データが送られる時点で、その経路データは既に抽象化されているので、サーバ側ではその経路データから個人を特定することができない。したがって、ユーザの移動経路を適切に匿名化することができる。
【0094】
他の側面に係る端末では、プロセッサが、経路データベースへの抽象経路データの登録をサーバに実行させるために抽象経路データをサーバに向けて送信する。この仕組みにより、ユーザの個人情報が特定されないように経路データをデータベースに蓄積することができる。
【0095】
他の側面に係る端末では、ルールデータが、第1交通結節点での移動手段の変更を第2交通結節点での移動手段の変更に変換するルールを示してもよい。プロセッサは、第1交通結節点での移動手段の変更を示すオリジナル経路データをルールデータに基づいて抽象化して、第2交通結節点での移動手段の変更を示す抽象経路データを生成してもよい。この仕組みによって、ユーザの移動経路を構成する第1交通結節点の情報が第2交通結節点の情報に丸められる。第1交通結節点の情報が抽象経路データからは識別不能になるので、ユーザの移動経路を適切に匿名化することができる。
【0096】
他の側面に係る端末では、ルールデータが、交通結節点における移動時刻を所与の時間幅に変換するルールを示してもよい。プロセッサは、交通結節点での移動時刻を示すオリジナル経路データをルールデータに基づいて抽象化して、交通結節点での移動時刻を時間幅によって示す抽象経路データを生成してもよい。この仕組みによって、交通結節点における移動時刻(すなわち、特定の一時点)が時間幅(すなわち、二つの時点の間の範囲)に丸められる。特定の時刻が抽象経路データからは識別不能になるので、ユーザの移動経路を適切に匿名化することができる。
【0097】
他の側面に係る端末では、ルールデータが、所定のPOIの利用不可時間において該POIを抽象化するルールを示してもよい。プロセッサは、利用不可時間に所定のPOIを通るオリジナル経路データをルールデータに基づいて抽象化して、該POIが抽象化された抽象経路データを生成してもよい。この仕組みによって、POIへの立ち寄りに関する情報が該POIの利用時間に基づいて抽象化されるので、ユーザの移動経路を適切に匿名化することができる。
【0098】
本開示の一側面に係るデータ構造は、経路データを抽象化するためのルールを示し、端末に記憶されるルールデータのデータ構造である。このデータ構造は、第1交通結節点での移動手段の変更を第2交通結節点での移動手段の変更に変換する第1ルールと、交通結節点における移動時刻を所与の時間幅に変換する第2ルールと、所定のPOIの利用不可時間において該POIを抽象化する第3ルールとのうちの少なくとも一つを示す。これらの三つのルールをいずれかを用いることでユーザの移動経路を適切に匿名化することができる。
【0099】
[変形例]
以上、本開示をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0100】
上記実施形態では、ユーザ端末20が、抽象経路データベース33への抽象経路データの登録をプラットフォーマサーバ10に実行させるために該抽象経路データを該プラットフォーマサーバ10に向けて送信する。しかし、抽象経路データをサーバに向けて送信する目的はこれに限定されない。端末はサーバに他の処理を実行させるために抽象経路データを該サーバに向けて送信してもよい。
【0101】
上記実施形態ではデータベース群30を示すが、各データベースのコピーがプラットフォーマおよび複数の事業者のそれぞれに配置されてもよい。この場合には、プラットフォーマおよび複数の事業者の間でデータベースの同期が実行され、これにより各種のデータの整合性が保証される。抽象経路データを記憶するシステムにおいて、ブロックチェーン技術ないし分散型台帳技術が適用されてもよい。
【0102】
本開示において、第1コンピュータが第2コンピュータ“に向けて”データまたは情報を送信するとは、第1コンピュータが、直接に、または少なくとも一つの通信装置を介して(すなわち間接的に)、第2コンピュータにデータまたは情報を送信することを意味する。
【0103】
本開示において、「少なくとも一つのプロセッサが、第1の処理を実行し、第2の処理を実行し、…第nの処理を実行する。」との表現、またはこれに対応する表現は、第1の処理から第nの処理までのn個の処理の実行主体(すなわちプロセッサ)が途中で変わる場合を含む概念を示す。すなわち、この表現は、n個の処理のすべてが同じプロセッサで実行される場合と、n個の処理においてプロセッサが任意の方針で変わる場合との双方を含む概念を示す。
【0104】
コンピュータシステム内で二つの数値の大小関係を比較する際には、「以上」および「よりも大きい」という二つの基準のどちらを用いてもよく、「以下」および「未満」の二つの基準のうちのどちらを用いてもよい。このような基準の選択は、二つの数値の大小関係を比較する処理についての技術的意義を変更するものではない。
【0105】
少なくとも一つのプロセッサにより実行される方法の処理手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、上述したステップ(処理)の一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正または削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
【0106】
以上の実施形態の全部または一部に記載された態様は、移動経路に関する制御、処理速度の向上、処理精度の向上、使い勝手の向上、データを利用した機能の向上または適切な機能の提供その他の機能向上または適切な機能の提供、データおよび/またはプログラムの容量の削減、装置および/またはシステムの小型化等の適切なデータ、プログラム、記録媒体、装置および/またはシステムの提供、並びにデータ、プログラム、装置またはシステムの制作・製造コストの削減、制作・製造の容易化、制作・製造時間の短縮等のデータ、プログラム、記録媒体、装置および/またはシステムの制作・製造の適切化のいずれか一つの課題を解決する。
【符号の説明】
【0107】
1…情報管理システム、10…プラットフォーマサーバ、11…検索部、12…ルールデータベース、13…ルール管理部、14…登録部、20…ユーザ端末、21…経路取得部、22…ルール記憶領域、23…ルール更新部、24…抽象化部、25…送信部、28…経路検索機能、29…経路追跡機能、30…データベース群、31…地図データベース、32…サンプル経路データベース、33…抽象経路データベース、40…事業者サーバ、401,411,421,431…オリジナル移動経路、402、412,422,432…抽象移動経路。