(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037980
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】金型交換装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/30 20060101AFI20220303BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20220303BHJP
B22D 17/22 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
B29C33/30
B29C45/17
B22D17/22 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142232
(22)【出願日】2020-08-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】518270023
【氏名又は名称】ニチエツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 高志
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AM18
4F202CA11
4F202CB01
4F202CR01
4F202CR06
4F206AM15
4F206JA07
4F206JL05
4F206JQ06
4F206JQ90
4F206JT04
(57)【要約】
【課題】射出成形機の周囲の占有スペースを抑えつつ、成形機に対する金型の積み下ろし作業を簡便に実施できる金型交換装置を提供する。
【解決手段】金型交換装置100は、上部に第1ステージST1及び第2ステージST2が設けられた、射出成形機1に対して移動可能な本体21と、本体21に設置され、金型15を保持する金型保持部57を昇降させる金型昇降機構23と、金型昇降機構23を第1ステージST1または第2ステージST2の位置に移動させるスライド機構25と、を備える。本体21は、上下方向に貫通し、且つ第1ステージST1及び第2ステージST2の並び方向に沿って連続する貫通孔49を有する。金型昇降機構23は、貫通孔49を通じて金型保持部57を本体21の上部から出没させて金型15を昇降自在に支持する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機に併設され、前記成形機へ搬入及び搬出する金型が載置される金型交換装置であって、
上部に前記金型を載置する複数のステージが設けられ、前記成形機に対して移動可能な本体と、
前記本体に設置され、前記金型を保持する金型保持部を昇降させる金型昇降機構と、
前記金型昇降機構を前記の複数のステージの位置に移動させるスライド機構と、
を備え、
前記本体は、上下方向に貫通し、且つ前記の複数のステージの並び方向に沿って連続する貫通孔を有し、
前記金型昇降機構は、前記貫通孔を通じて前記金型保持部を前記本体の上部から出没させて前記金型を昇降自在にし、
複数の前記ステージのうち前記金型が載置された移動元のステージで前記金型保持部によって前記金型を持ち上げたまま、前記スライド機構を動作させ、前記金型の下方に移動先のステージが配置される位置へスライドさせた後、前記金型保持部を下降させて、持ち上げた前記金型を前記移動先のステージに載置する、
ことを特徴とする金型交換装置。
【請求項2】
前記ステージは、前記ステージから前記成形機に向かう方向に沿って前記金型を搬送する複数のローラを備える請求項1に記載の金型交換装置。
【請求項3】
前記本体は、車輪及び浮上ユニットの少なくとも一方を備えて移動可能に支持される請求項1または請求項2に記載の金型交換装置。
【請求項4】
前記スライド機構は、前記金型昇降機構をスライドさせるスライド駆動部を備える請求項1~3のいずれか一項に記載に金型交換装置。
【請求項5】
前記本体を前記ステージの並び方向に移動させる駆動部を備える請求項1~4のいずれか一項に記載の金型交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機の金型交換時に用いる金型交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、射出成形においても多品種少量生産の需要が高まっており、射出成形機に使用する金型の交換頻度は増加する傾向にある。射出成形機に使用される金型は数十kgから数十tonにおよぶ重量物であることから、金型交換時における金型の移動操作や、金型を所定位置に高精度に固定する操作が作業者の大きな負担となっている。そのため、交換前後の金型を載置する複数のステージを有した金型交換装置を成形機に併設させ、成形機から金型交換装置の一方のステージに金型を取り出した後、金型交換装置を型開き方向と平行にスライドさせ、他方のステージから成形機に金型を供給する方法が採用されている。
このような金型交換装置を大別すると、金型交換装置の下部にキャスター等が設置されて金型交換装置全体がスライドするものと、ステージの下部に台座等が設置され、台座に対してステージのみがスライドするもの等が存在する。金型交換装置による金型の移動は、自動又は手動で行われており、金型交換作業を簡易にするための構造の例が、例えば、特許文献1や特許文献2において開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-14110号公報
【特許文献2】実開昭58-125629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2に開示された従来の技術では、次の成形に使用する金型を、成形機の側面に設けられた2つのステージのどちらにも載置することが可能であり、成形機から取り出された金型は、次に使用する金型が載置されたステージとは別のステージに移動させられる。
【0005】
しかし、金型交換装置において、交換前の金型を載置するステージと、成形機から取り出した交換後の金型を載置するステージとの位置が異なると、金型を搬入出する際の作業性を低下させ、工場設備やレイアウトの変更が必要となる場合がある。例えば、金型交換装置への金型の積み下ろしを床上操作式クレーンなどのクレーンを使って行う場合、金型の上方にクレーンのフックが入るスペースを確保する必要があるが、成形機に付帯される取り出しロボット等と干渉する場合があった。
【0006】
このような干渉を解決するには、金型交換装置やステージが大きくスライドできるようにすることも考えられるが、装置が大型化する問題があった。
【0007】
また、金型交換装置への金型の積み下ろしをフォークリフトやハンドフォークリフトなどのリフト、又はクレーン等を使用する場合には、成形機に取り付ける金型が載置されるステージと、成形機から取り外した金型が載置されるステージとが異なるため、金型交換装置の異なる方向から各ステージにアクセスする必要が生じる。そのため、積み下ろしの都度、金型交換装置の一方の側からその反対側にリフトを移動させることになり、作業が繁雑となってしまう。また、リフトやクレーンを複数台使用することも考えられるが、そのための設備コストが増大する。
【0008】
さらに、多くの成形工場では、複数台の成形機が並列に設置され、しかも、成形機周辺には、材料乾燥装置や金型温度調整装置などの付帯設備が設置される。また、取り出した部品の二次加工や検査、箱詰め等を行う作業スペースも成形機周辺に設置される。このように、成形機の周囲のスペースには余裕がなく、上記したリフトやクレーンを金型交換装置の反対側に移動させることは難しい場合が多い。仮に可能であったとしても、作業性の低下は避けられない。
【0009】
そこで本発明は、射出成形機の周囲の占有スペースを抑えつつ、成形機に対する金型の積み下ろし作業を簡便に実施できる金型交換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は下記の構成からなる。
成形機に併設され、前記成形機へ搬入及び搬出する金型が載置される金型交換装置であって、
上部に前記金型を載置する複数のステージが設けられ、前記成形機に対して移動可能な本体と、
前記本体に設置され、前記金型を保持する金型保持部を昇降させる金型昇降機構と、
前記金型昇降機構を前記の複数のステージの位置に移動させるスライド機構と、
を備え、
前記本体は、上下方向に貫通し、且つ前記の複数のステージの並び方向に沿って連続する貫通孔を有し、
前記金型昇降機構は、前記貫通孔を通じて前記金型保持部を前記本体の上部から出没させて前記金型を昇降自在にし、
複数の前記ステージのうち前記金型が載置された移動元のステージで前記金型保持部によって前記金型を持ち上げたまま、前記スライド機構を動作させ、前記金型の下方に移動先のステージが配置される位置へスライドさせた後、前記金型保持部を下降させて、持ち上げた前記金型を前記移動先のステージに載置する、ことを特徴とする金型交換装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、成形機の周囲の占有スペースを抑えつつ、成形機への金型の積み下ろし作業を簡便に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、射出成形機、及び射出成形機に併設された金型交換装置の概略平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す金型交換装置と、射出成形機の型締め機構とを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、金型交換装置と、固定板と可動板に挟まれた金型とを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、金型交換装置のスライド機構による金型昇降機構のスライド動作を(A),(B)で示す説明図である。
【
図6】
図6は、金型交換装置の金型昇降機構の昇降動作を(A),(B)で示す説明図である。
【
図7】
図7は、金型交換装置を用いた金型交換作業を(A)~(C)に段階的に示す説明図である。
【
図8】
図8は、金型交換装置を用いた金型交換作業を(A)~(C)に段階的に示す説明図である。
【
図9】
図9は、複数台の射出成形機が設置された工場の設備レイアウトを説明する概略平面図である。
【
図10】
図10は、射出成形機、金型交換装置、及び射出成形機と金型交換装置との間に配置された中間台を示す概略平面図である。
【
図11】
図11は、金型交換装置の本体の下部に設けられた浮上ユニットを説明する設置箇所の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係る金型交換装置は、射出成形機、プレス機、ダイカスト機等、金型を使用して材料に各種の加工を施す成形機において、金型を交換する際に使用される。ここでは一例として、金型交換装置を射出成形機に適用して金型を交換する場合を説明するが、本発明はこれに限らない。
【0014】
図1は、射出成形機、及び射出成形機に併設された金型交換装置の概略平面図である。
射出成形機1は、一軸方向に延びる成形機基台3と、型締め機構5と、射出シリンダ6とを備える。型締め機構5は、一対の固定板7A,7Bと、一対の固定板7A,7Bを連結するタイバー8と、タイバー8に沿って移動自在に支持される可動板9と、可動板9を移動させる型締め装置10とを有する。型締め装置10は、可動板9を固定板7Bに向けて移動させる型締め動作と、可動板9を固定板7Aに向けて移動させる型開き動作とを行う。射出シリンダ6は、成形用の樹脂を固定板7Bの側から後述する金型のキャビティ内に供給する。そして、金型交換装置100は、射出成形機1の長手方向に直交する片脇側に併設される。
【0015】
ここで、
図1の紙面に直交する方向をZ方向、射出成形機1の長手方向をX方向、X方向とZ方向に直交する射出成形機1の幅方向をY方向という。
【0016】
射出成形機1には、固定板7Bと可動板9との間の金型固定空間Sに、その側方に併設された金型交換装置100から交換用の金型15が供給される。また、射出成形機1から取り出された金型15が金型交換装置100に排出される。
【0017】
金型15は、固定型15Aと可動型15Bから構成される。固定型15Aは固定板7Bに固定され、可動型15Bは可動板9に固定される。型締め装置10は、可動板9を固定板7Bへ向けて移動させ、可動型15Bを固定型15Aに押圧して金型15を型締めする。射出シリンダ6は、型締めされた金型15のキャビティに成形用の樹脂を射出する。金型15のキャビティに樹脂が射出された後、型締め機構5は、可動板9を固定板7A側に引き戻す。これにより、金型15の固定型15Aと可動型15Bとが開かれて成形品が取り出される。
【0018】
図2は、
図1に示す金型交換装置100と、射出成形機1の型締め機構5を含む一部分とを示す斜視図である。
図3は、金型交換装置100と、固定板7Bと可動板9に挟まれた金型15とを示す斜視図である。
図4は、金型交換装置の平面図である。なお、
図3の金型交換装置100は、内部の機構を説明するために、外側を覆うパネルを取り外した状態で示している。
【0019】
図2に示すように、金型交換装置100は、型締め機構5に併設されて、金型の受け渡しが可能になっている。
図3に示すように、金型交換装置100は、本体21と、金型昇降機構23と、スライド機構25とを備える。本体21は、内部空間を有する箱型であって、平面視で長尺の矩形状に形成されている。本体21の長手方向と、射出成形機1の長手方向(X方向であり型開き方向でもある)とは互いに平行であり、本体21の底部を構成する台座部31には、4つの車輪27が取り付けられている。また、床面には射出成形機1の長手方向であるX方向に沿ってレール29が敷設されている。レール29は、本体21の台座部31に設けられた車輪27のうち、射出成形機1側の車輪27又は図示されていないガイド機構が当接することで、本体21のY方向への移動を規制する。これにより、金型交換装置100は、射出成形機1との干渉を防止しつつ、射出成形機1に対して、その長手方向であるX方向に沿って移動可能となっている。また、本体21の台座部31には図示しないロック機構が設けられており、レール29又は床面に対して本体21が位置決めされることで、金型交換装置100を規定の位置に固定できる。
【0020】
金型交換装置100の移動動作は、手動であってもよいが、例えば、駆動モータ等の駆動部を設け、この駆動部によって金型交換装置100を移動させてもよい。このとき、レール29は歯切りされたラックとし、台座部31に歯車を有する駆動装置を設けることで金型の載置位置の自動制御が可能となり、金型交換のオートメーション化に寄与できる。
【0021】
本体21の上部には、金型15が載置される複数のステージが設けられる。本構成の本体21は、第1ステージST1と第2ステージST2を有しているが、3つ以上のステージを有していてもよい。
【0022】
第1ステージST1と第2ステージST2のそれぞれには、本体21の移動方向(X方向)に直交するY方向に沿って、所定の間隔をあけて複数のローラ45が配置される。各ローラ45は、それぞれ回転自在に支持されており、ローラ周面の少なくとも一部が本体21の上面よりも更に上方へ突出している。
【0023】
これにより、第1ステージST1及び第2ステージST2に載置される金型15は、金型15の下側がローラ45に支持され、ローラ45の配列方向(Y方向)に沿って軽荷重でスライド可能となる。つまり、各ローラ45は、第1ステージST1と第2ステージST2とのそれぞれから射出成形機1に向かう方向に沿って、金型15を円滑に移動させる案内路を形成する。そして、ローラ45が第1ステージST1と第2ステージST2とにそれぞれ個別に設けられることで、それぞれのステージで、金型15を個別に移動できる。
【0024】
ローラ45は、単に回転可能な支持形態である他に、サーボモータやACモータ等のスライド駆動部によって回転駆動が可能な支持形態であってもよい。その場合、金型15を射出成形機1へ移動する動作と、射出成形機1から排出する動作を自在に制御できる。
【0025】
本体21の上面側には、移動方向(X方向)に沿って複数の溝部47(本構成では一対の溝部)が形成される。これら溝部47の底部には、それぞれ上下方向に貫通する貫通孔49が形成されている。各貫通孔49は、本体21が移動するX方向に沿って、第1ステージST1及び第2ステージST2の領域に連続して形成される。
【0026】
溝部47は、リフトを使って金型交換をする際、リフトのフォーク部が入り込むスペースとなる。そのため、本体21の上部には溝部47を設けることが望ましいが、溝部47を設けなくてもよい。
【0027】
図3に示すように、金型昇降機構23は、固定側の駆動部51と、可動側の昇降部53とを有する。駆動部51は、本体21の台座部31の上面に設置される。スライド機構25は、台座部31と駆動部51との間に設けられた一対のガイドレール55と、スライド駆動部(図示略)とを有している。一対のガイドレール55は、台座部31の上面におけるX方向に沿って設けられており、これにより、金型昇降機構23は、本体21の台座部31の上面において、X方向へ移動可能とされている。スライド駆動部は、金型昇降機構23をX方向へスライド駆動させる。このスライド駆動部は、油圧式、空圧式、電動式アクチュエータで構成できるほか、手動で動かすことも可能である。
【0028】
図5は、金型交換装置100のスライド機構25による金型昇降機構23のスライド動作を(A),(B)で示す説明図である。
図6は、金型交換装置100の金型昇降機構23の昇降動作を(A),(B)で示す説明図である。
【0029】
金型昇降機構23は、スライド機構25によって第1ステージST1または第2ステージST2の位置に移動される。これにより、金型昇降機構23は、第1ステージST1または第2ステージST2の下方位置に配置される。例えば、
図5の(A)に示すように、第2ステージST2に金型昇降機構23が配置された状態において、スライド機構25が作動すると、
図5の(B)に示すように、スライド機構25によって金型昇降機構23が第1ステージST1へ向かってスライドされる。また、
図5の(B)に示すように、第1ステージST1に金型昇降機構23が配置された状態において、スライド機構25が作動すると、
図5の(A)に示すように、スライド機構25によって金型昇降機構23が第2ステージST2へ向かってスライドされる。
【0030】
金型昇降機構23は、第1ステージST1と第2ステージST2のそれぞれの位置において、昇降部53を昇降動作させる。
図6の(A)及び(B)に示すように、金型昇降機構23は、昇降部53が駆動部51に支持され、上下方向の移動が可能になっている。また、昇降部53には、その上部に、一対の板材からなる金型保持部57が一体に形成されている。一対の金型保持部57は、上方へ向かって延び、本体21の上部に形成された溝部47の底部の貫通孔49に挿通される。
【0031】
金型保持部57が一体に設けられた昇降部53は、駆動部51によって昇降駆動される。この駆動部51としては、例えば、油圧シリンダ、空圧シリンダ、直動式の電動アクチュエータあるいはトグル機構等が用いられる。
【0032】
駆動部51の駆動によって昇降部53を下降させると、金型保持部57が下方に引き込まれ、
図6の(A)に示すように、金型保持部57の上端が本体21の上部のローラ45よりも下方に配置される。また、駆動部51による駆動によって昇降部53を上昇させると、金型昇降機構23が上方へ押し上げられ、
図6の(B)に示すように、金型保持部57の上端が本体21の上部のローラ45よりも上方に突出する。これにより、
図6の(A)に示す状態では、金型15がローラ45によって支持され、
図6の(B)に示す状態では、金型15がローラ45から離れて金型保持部57に支持される。
【0033】
<金型交換装置による金型交換動作>
次に、射出成形機1の金型交換作業の一例の手順を説明する。ここでは、射出成形機1に装着されている交換前の金型15を金型M1、次工程用の他の金型15を金型M2として区別する。
図7及び
図8は、金型交換装置100を用いた金型交換作業を(A)~(C)に段階的に示す説明図である。
【0034】
(金型搬入工程)
図7の(A)に示すように、射出成形機1は、金型M1によって成形を行っている。このとき、次工程用の金型M2を金型交換装置100の搬出入側から金型交換装置100に搬送して(矢印A方向)、金型交換装置100の第1ステージST1に載置する。この金型M2の搬入は、例えば、床上操作式クレーンなどのクレーンや、フォークリフトやハンドリフトなどのリフトを利用できる。このときの金型交換装置100は、第2ステージST2が射出成形機の型締め機構5の金型固定空間Sの側方に配置され、金型昇降機構23の昇降部53が下げられた状態になっている(
図6の(A)参照)。
【0035】
(金型取出し工程)
図7の(B)に示すように、射出成形機1の型締め機構5の固定板7Bと可動板9B(
図1参照)から取り外した金型M1を、射出成形機1の型締め機構5の金型固定空間Sから、その側方の金型交換装置100へ向けて移動させる(矢印B方向)。そして、射出成形機1から取り出した金型M1を金型交換装置100の第2ステージST2に載置する。このとき、金型M1は、第2ステージST2に設けられたローラ45が回転することで、軽荷重で円滑に第2ステージST2へスライドされる。
【0036】
(金型取付け工程)
図7の(C)に示すように、金型M1,M2を載置させた金型交換装置100を、レール29に沿って搬出入側と反対側へ移動させる(矢印C方向)。これにより、第1ステージST1の金型M2を、移動前に第2ステージST2が配置されていた金型固定空間Sの側方の位置に配置させる。
【0037】
図8の(A)に示すように、第1ステージST1に載置された金型M2を、金型交換装置100から射出成形機1の型締め機構5の金型固定空間Sへ向けて移動させる(矢印D方向)。そして、金型M2を射出成形機1の型締め機構5の金型固定空間Sに移動させて、前述した固定板7B及び可動板9(
図1参照)に取り付ける。このとき、金型M2は、第1ステージST1に設けられたローラ45が回転することで、軽荷重で円滑に射出成形機1へスライドされる。
【0038】
(金型搬出準備工程)
図8の(B)に示すように、第2ステージST2に金型M1が載置された金型交換装置100を、レール29に沿って搬出入側に移動させる(矢印E方向)。これにより、第2ステージST2に載置された金型M1を、スライド前に第1ステージST1が配置されていた金型固定空間Sの側方の位置に配置させる。
【0039】
以上の金型搬入工程、金型取り出し工程、金型取付け工程、金型搬出準備工程においては、金型昇降機構23の昇降部53及び金型保持部57は、
図6の(A)に示すように、金型保持部57が本体21の上面から突出しない下降位置に配置されている。
【0040】
次に、金型交換装置100は、
図6の(B)に示すように、金型昇降機構23の駆動部51の駆動によって、昇降部53及び金型保持部57を上昇させる。金型昇降機構23の駆動部51の駆動によって、昇降部53及び金型保持部57を上昇させると、金型保持部57が本体21上のローラ45よりも更に上方へ突出する。この動作により、第2ステージST2に載置された金型M1が金型保持部57の上端部で持ち上げられ、金型M1の底部がローラ45から離隔される。
【0041】
次に、
図8の(C)に示すように、スライド機構25を作動させて金型昇降機構23を搬出入側へスライドさせる(矢印F方向)。このとき、金型M1は金型保持部57によって持ち上げられ、第2ステージST2のローラ45から離隔しているため、射出成形機1に対する本体21の位置を維持させたまま、金型M1だけが搬出入側へスライドされる。その結果、金型M1は、第1ステージST1の直上位置に配置される。
【0042】
この状態において、金型昇降機構23の駆動部51を駆動させて昇降部53及び金型保持部57を下降させると、金型保持部57の上端が本体21の上部の溝部47内に引き込まれ、金型保持部57の上端がローラ45よりも下方に配置される。これにより、金型保持部57によって持ち上げられていた金型M1が、第1ステージST1のローラ45に支持される。つまり、金型M1が第1ステージST1に載置される。
【0043】
その後、搬出入側の第1ステージST1に配置された金型M1を、前述したリフトによって取り上げて所定の位置へ搬出する。このとき、金型M1の搬出位置は、前述した金型搬入工程で金型M2を載置した搬入位置と同じ第1ステージST1となる。
【0044】
このように、金型交換装置100への金型M1、M2の積み下ろしをリフトで行う場合に、金型M1、M2の載置位置を同一のステージ、つまり、常に一定の固定位置で行える。よって、金型交換装置100の異なる方向からアクセスする必要はなく、積み下ろしの都度、金型交換装置100の一方の側からその反対側にリフトを移動させる必要もない。
【0045】
また、射出成形機1の金型固定空間Sと、金型交換装置100との間で金型M1,M2を移動させる案内路は、第1ステージST1と第2ステージST2の双方に接続されるため、金型M1,M2がいずれのステージに載置されていても、円滑な移動が行える。
【0046】
なお、金型を載置するステージを3つ以上設けた場合には、任意のステージを、金型の積み下ろしを行うステージとして取り決めできる。また、他のステージは、使用予定の金型をストックするバッファとして機能させることで、他の場所からの金型の搬送を省略して、金型交換作業をより効率化できる。さらに、工場設備や周囲環境に応じて、金型の積み下ろしを行うステージを適宜に変更することもでき、利便性を高められる。
【0047】
以上のように、本構成の金型交換装置100は、複数のステージのうち金型15が載置された移動元のステージで金型昇降機構23の金型保持部57によって金型15を持ち上げ、スライド機構25によって金型昇降機構23をスライドさせて移動先のステージの上方へ金型15を配置され、その後、金型保持部57を下降させて、持ち上げた金型15を移動先ステージに載置する機能を有している。このように、各ステージ間で金型15を自在に移動させることができるので、金型15の積み下ろしを、特定のステージのみで行うことができ、射出成形機1に対する金型15の積み下ろし作業が煩雑にならない。
【0048】
また、本構成の金型交換装置100は、金型15の型締め方向(X方向)に直交する方向(Y方向)の片側にだけ、金型の受け渡しを行う金型交換装置100を配置するだけで済む。そのため、金型交換装置100の占有スペースが抑えられ、スペース効率の高い設備配置を実現できる。
【0049】
図9は複数台の射出成形機1が設置された工場の設備レイアウトを説明する概略平面図である。
複数台の射出成形機1が設置された工場では、一般に、材料供給や製品搬出等の生産性やスペース効率の観点から、各射出成形機1の長手方向を互いに平行にして設置する場合が多い。このように射出成形機1を並設した場合であっても、本構成の金型交換装置100を用いれば、射出成形機1の一方の側部にのみ配置するだけで済むため、占有スペースを抑えたレイアウトを実現できる。
【0050】
また、本構成の金型交換装置100によれば、第1ステージST1及び第2ステージST2に、回転可能な複数のローラ45が設けられている。このため、射出成形機1との間で金型15を軽荷重で円滑に移動でき、射出成形機1の金型15の交換作業を簡単に行える。
【0051】
なお、本構成の金型交換装置100は、設定スペースに余裕があれば、一台の射出成形機1の側面側にそれぞれ配置することもできる。その場合、両脇側から金型交換に用いる金型の供給と排出が可能となり、金型交換作業をより効率化できる。
【0052】
さらに、金型交換装置100から射出成形機1の金型固定空間Sまでの距離が大きい場合は、金型交換装置100と射出成形機1との間に、金型を受け渡しする中間台を設置してもよい。
【0053】
図10は、射出成形機1、金型交換装置100、及び射出成形機1と金型交換装置100との間に配置された中間台61を示す概略平面図である。
中間台61は、その上部に複数本のローラ62が一方向に沿って配置される。各ローラ62は、金型15を射出成形機1と金型交換装置100との間で円滑にスライドさせる。
【0054】
この設置例によれば、例えば、射出成形機1と金型交換装置100との間に材料乾燥装置や金型温度調整装置などの付帯設備を設置するスペースが必要な場合であっても、中間台61を設けることにより、金型を、付帯設備を跨いで簡単に移動させることができる。よって、射出成形機1への金型15の交換作業を効率よく行える。
【0055】
また、この設置例では、金型交換装置100の射出成形機1側の反対側に、金型交換装置100上の金型15を射出成形機1へ向けて押し出すプッシャースタンド63を設けている。この構成によれば、射出成形機1への金型15の移動作業をより簡単にかつ短時間で行える。
【0056】
さらに、金型交換装置100の本体21の台座部31に複数の浮上ユニットを設け、これらの浮上ユニットによって金型交換装置100を移動可能に構成してもよい。
【0057】
図11は、金型交換装置100の本体21の下部に設けられた浮上ユニット71を説明する設置箇所の断面図である。
本体21の台座部31に浮上ユニット71を備えた金型交換装置100では、
図11の(A)に示すように、床面FL上に設置された状態で浮上ユニット71にエアーが供給されると、
図11の(B)に示すように、浮上ユニット71が下方へ膨出して床面FLとの間に薄い空気層を形成する。これにより、金型交換装置100は、床面FLから浮上して移動可能となる。このように、浮上ユニット71を設ければ、工場内において、金型交換装置100を所望の位置へ簡単に移動でき、他の射出成形機1への設置が容易になる。なお、浮上ユニット71は、車輪27に代えて設けてもよく、また、車輪27と併用してもよい。
【0058】
そして、金型交換装置100は、第1ステージST1及び第2ステージST2を含む本体21の一部が着脱可能であってもよい。その場合、第1ステージST1及び第2ステージST2に金型15を載置させ、この第1ステージST1及び第2ステージST2を含む本体21の一部を工場内で搬送できる。これによれば、金型15の搬送形態の自由度が高められ、適宜な治具と組み合わせて搬送することで、搬送効率を向上できる。
【0059】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0060】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 成形機に併設され、前記成形機へ搬入及び搬出する金型が載置される金型交換装置であって、
上部に前記金型を載置する複数のステージが設けられ、前記成形機に対して移動可能な本体と、
前記本体に設置され、前記金型を保持する金型保持部を昇降させる金型昇降機構と、
前記金型昇降機構を前記の複数のステージの位置に移動させるスライド機構と、
を備え、
前記本体は、上下方向に貫通し、且つ前記の複数のステージの並び方向に沿って連続する貫通孔を有し、
前記金型昇降機構は、前記貫通孔を通じて前記金型保持部を前記本体の上部から出没させて前記金型を昇降自在にし、
複数の前記ステージのうち前記金型が載置された移動元のステージで前記金型保持部によって前記金型を持ち上げたまま、前記スライド機構を動作させ、前記金型の下方に移動先のステージが配置される位置へスライドさせた後、前記金型保持部を下降させて、持ち上げた前記金型を前記移動先のステージに載置する、ことを特徴とする金型交換装置。
この金型交換装置によれば、一方のステージに載置された金型を他方のステージに移動できるため、金型の積み下ろし位置を任意の位置で実施できる。これにより、金型の積み下ろし作業が煩雑にならない。また、金型交換装置を成形機の片側に配置するだけで済むため、成形機の周囲の占有スペースを抑えられる。
【0061】
(2) 前記ステージは、前記ステージから前記成形機に向かう方向に沿って前記金型を搬送する複数のローラを備える(1)に記載の金型交換装置。
この金型交換装置によれば、ローラによって金型を成形機との間で軽荷重で円滑に移動でき、金型の交換作業が簡単になる。
【0062】
(3) 前記本体は、車輪及び浮上ユニットの少なくとも一方を備えて移動可能に支持される(1)または(2)に記載の金型交換装置。
この金型交換装置によれば、本体を移動させることにより、成形機における金型の搬出入位置にいずれかのステージを選択的に容易に配置させることができる。これにより、成形機に対する金型の積み下ろし作業の効率を向上させることができる。また、工場内において、金型交換装置を所望の位置へ簡単に移動でき、他の成形機への設置が容易になる。
【0063】
(4) 前記スライド機構は、前記金型昇降機構をスライドさせるスライド駆動部を備える(1)~(3)のいずれか一つに記載に金型交換装置。
この金型交換装置によれば、金型の載置位置の自動制御が可能となり、金型交換のオートメーション化に寄与できる。
【0064】
(5) 前記本体を前記ステージの並び方向に移動させる駆動部を備える(1)~(4)のいずれか一つに記載の金型交換装置。
この金型交換装置によれば、金型交換装置の位置の自動制御が可能となり、金型交換のオートメーション化に寄与できる。
【符号の説明】
【0065】
1 射出成形機(成形機)
15,M1,M2 金型
15A 固定型
15B 可動型
21 本体
23 金型昇降機構
25 スライド機構
27 車輪
45 ローラ
49 貫通孔
57 金型保持部
71 浮上ユニット
100 金型交換装置
ST1 第1ステージ(ステージ)
ST2 第2ステージ(ステージ)
【手続補正書】
【提出日】2020-11-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機に併設され、前記成形機へ搬入及び搬出する金型が載置される金型交換装置であって、
上部に前記金型を載置する複数のステージが設けられ、且ついずれかの前記ステージが前記成形機の型締め機構の側方に配置されて、前記型締め機構から前記金型の受け渡しが行えるように前記成形機に対して移動可能な本体と、
前記本体に設置され、前記金型を保持する金型保持部を昇降させる金型昇降機構と、
前記金型昇降機構を前記ステージが設けられた位置に移動させるスライド機構と、
を備え、
前記本体は、上下方向に貫通し、且つ複数の前記ステージの並び方向に沿って連続する貫通孔を有し、
前記金型昇降機構は、前記貫通孔を通じて前記金型保持部を前記本体の上部から出没させて前記金型を昇降自在にし、
複数の前記ステージのうち前記金型が載置された移動元のステージで前記金型保持部によって前記金型を持ち上げたまま、前記スライド機構を動作させ、前記金型の下方に移動先のステージが配置される位置へスライドさせた後、前記金型保持部を下降させて、持ち上げた前記金型を前記移動先のステージに載置する、
ことを特徴とする金型交換装置。
【請求項2】
前記ステージは、前記ステージから前記成形機に向かう方向に沿って前記金型を搬送する複数のローラを備える請求項1に記載の金型交換装置。
【請求項3】
前記本体は、車輪及び浮上ユニットの少なくとも一方を備えて移動可能に支持される請求項1または請求項2に記載の金型交換装置。
【請求項4】
前記スライド機構は、前記金型昇降機構をスライドさせるスライド駆動部を備える請求項1~3のいずれか一項に記載に金型交換装置。
【請求項5】
前記本体を前記ステージの並び方向に移動させる駆動部を備える請求項1~4のいずれか一項に記載の金型交換装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明は下記の構成からなる。
成形機に併設され、前記成形機へ搬入及び搬出する金型が載置される金型交換装置であって、
上部に前記金型を載置する複数のステージが設けられ、且ついずれかの前記ステージが前記成形機の型締め機構の側方に配置されて、前記型締め機構から前記金型の受け渡しが行えるように前記成形機に対して移動可能な本体と、
前記本体に設置され、前記金型を保持する金型保持部を昇降させる金型昇降機構と、
前記金型昇降機構を前記ステージが設けられた位置に移動させるスライド機構と、
を備え、
前記本体は、上下方向に貫通し、且つ複数の前記ステージの並び方向に沿って連続する貫通孔を有し、
前記金型昇降機構は、前記貫通孔を通じて前記金型保持部を前記本体の上部から出没させて前記金型を昇降自在にし、
複数の前記ステージのうち前記金型が載置された移動元のステージで前記金型保持部によって前記金型を持ち上げたまま、前記スライド機構を動作させ、前記金型の下方に移動先のステージが配置される位置へスライドさせた後、前記金型保持部を下降させて、持ち上げた前記金型を前記移動先のステージに載置する、ことを特徴とする金型交換装置。