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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038021
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】収穫物把持装置
(51)【国際特許分類】
   A01D 45/30 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
A01D45/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142303
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】519404090
【氏名又は名称】inaho株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸一
【テーマコード(参考)】
2B075
【Fターム(参考)】
2B075AA10
2B075AC20
2B075GA01
(57)【要約】
【課題】収穫対象の収穫物のみを把持する把持精度を高めるとともに、近接する他の収穫物の損傷を抑制することが可能な収穫物把持装置を提供する。
【解決手段】本開示による収穫物把持装置1は、対向する一対の把持部材11、12の間に収穫物Aを誘導する誘導姿勢あるいは収穫物Aを把持する把持姿勢と、収穫物Aを解放する解放姿勢と、の間で開閉可能であり、一対の把持部材11、12の少なくとも一方が揺動することにより開閉するように構成された把持部10と、把持部10を開閉させるための駆動力を付与する駆動部30と、駆動部30からの駆動力を把持部10に伝達する把持駆動伝達部40と、を備え、把持部10は、誘導姿勢において、開き方向の把持部材11、12の揺動が許容されるとともに、閉じ方向の把持部材11、12の揺動が把持駆動伝達部40によって抑制されることを特徴とする。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の把持部材の間に収穫物を誘導する誘導姿勢あるいは前記収穫物を把持する把持姿勢と、前記収穫物を解放する解放姿勢と、の間で開閉可能であり、前記一対の把持部材の少なくとも一方が揺動することにより開閉するように構成された把持部と、
前記把持部を開閉させるための駆動力を付与する駆動部と、
前記駆動部からの駆動力を前記把持部に伝達する把持駆動伝達部と、を備え、
前記把持部は、前記誘導姿勢において、開き方向の前記把持部材の揺動が許容されるとともに、閉じ方向の前記把持部材の揺動が前記把持駆動伝達部によって抑制されることを特徴とする収穫物把持装置。
【請求項2】
前記誘導姿勢において、揺動可能に構成された前記把持部材は、弾性部材によって閉じ方向に付勢されている、請求項1に記載の収穫物把持装置。
【請求項3】
前記誘導姿勢において、前記一対の把持部材の先端部は間隔を空けて配置されている、請求項1または2に記載の収穫物把持装置。
【請求項4】
少なくとも一方の前記把持部材の先端部には、従動コロが設けられている、請求項1~3の何れか一項に記載の収穫物把持装置。
【請求項5】
前記把持駆動伝達部は、前記把持部材に内側から当接して閉じ方向の揺動を抑制する係合凸部を有し、
前記係合凸部は、前記駆動部からの駆動力を利用して移動可能に構成されている、請求項1~4の何れか一項に記載の収穫物把持装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、収穫物把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスパラガス等の農作物を自動的に収穫するために、農作物を把持して切断する機能を備えた収穫装置が知られている。特許文献1には、所定の長さに成長したアスパラガスを把持する挟持手段と、把持したアスパラガスを切断する切断手段と、を備えたハンド装置が開示されている。このハンド装置の挟持手段は、収穫物を挟持するための2本の挟持部材と、2本の挟持部材を開いた状態で保持する保持部材とを備えている。そして、保持部材にアスパラガスが接触すると、保持部材の係止が解除されて、2本の挟持部材が閉じてアスパラガスを把持するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-178633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のハンド装置においては、収穫物を把持する前の初期状態において、2本の挟持部材が比較的大きく開いた状態で保持されている。そのため、収穫対象のアスパラガスを把持する際に、当該アスパラガスに近接する他のアスパラガスも誤って同時に挟み込んでしまったり、挟持部材が接触して他のアスパラガスを傷つけてしまったりする虞がある。
【0005】
そこで、本開示は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、収穫対象の収穫物のみを把持する把持精度を高めるとともに、近接する他の収穫物の損傷を抑制することが可能な収穫物把持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、対向する一対の把持部材の間に収穫物を誘導する誘導姿勢あるいは前記収穫物を把持する把持姿勢と、前記収穫物を解放する解放姿勢と、の間で開閉可能であり、前記一対の把持部材の少なくとも一方が揺動することにより開閉するように構成された把持部と、
前記把持部を開閉させるための駆動力を付与する駆動部と、
前記駆動部からの駆動力を前記把持部に伝達する把持駆動伝達部と、を備え、
前記把持部は、前記誘導姿勢において、開き方向の前記把持部材の揺動が許容されるとともに、閉じ方向の前記把持部材の揺動が前記把持駆動伝達部によって抑制されることを特徴とする収穫物把持装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、収穫対象の収穫物のみを把持する把持精度を高めるとともに、近接する他の収穫物の損傷を抑制することが可能な収穫物把持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る収穫物把持装置の構成例を示す平面図である。
図2】同実施形態に係る収穫物把持装置の一部を断面で示す斜視図である。
図3】同実施形態に係る収穫物把持装置の底面図である。
図4】同実施形態に係る収穫物把持装置を用いて収穫物を把持する過程の様子を示す平面図である。
図5】同実施形態に係る収穫物把持装置を用いて収穫物を把持した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0010】
図1は、本実施形態の収穫物把持装置1の平面図であり、図2は一部を断面で示す斜視図であり、図3は底面図である。収穫物把持装置1は、農作物等の収穫物を自動的に収穫するための自動収穫装置の一部を構成する。
【0011】
自動収穫装置としては、例えば、収穫物把持装置1に加えて、圃場等を走行可能なクローラまたはタイヤ等を備えた走行装置と、収穫対象となる農作物(収穫物)を選定する際に撮像するカメラ等の撮像装置と、収穫物把持装置1を収穫対象に向けて移動させる可動アームと、を備える。可動アームは、基端側が自動収穫装置の走行装置に連結され、先端側に収穫物把持装置1が設けられている。また、可動アームは、任意の方向に揺動、回転可能な関節部を有する構成とすることができる。可動アームによって、収穫物把持装置1は前後方向、左右方向、上下方向の3次元の移動が可能となる。また、自動収穫装置は、例えば、GPS衛星から送信された信号に基づいて自動収穫装置の位置を検出するGPSセンサと、自動収穫装置が実行する各処理に必要な情報を記録する記録装置と、携帯端末及び農作業管理サーバと各種情報を送受信する通信装置と、自動収穫装置が予め定められた経路に沿って移動するように制御する駆動装置と、上記各構成要素と接続された中央処理装置等を備えていてもよい。なお上記各構成要素は、それぞれが単一の構成要素であってもよいし、複数の構成要素を含む構成要素であってもよい。自動収穫装置は、所定の通信ネットワークを介して相互に通信可能に接続されたスマートフォン等の各種の情報処理端末、及び農作業管理サーバ等によって、制御するようにしてもよい。
【0012】
図1、2に示すように、収穫物把持装置1は、把持部10と、把持部10を開閉させるための駆動力を付与する駆動部30と、駆動部30からの駆動力を把持部10に伝達する把持駆動伝達部40とを備える。また、収穫物把持装置1は、把持部10等を支持するベース部60を備える。また、図3に示すように、収穫物把持装置1は、把持部10で把持した農作物を切断するためのカッター部50を備える。
【0013】
把持部10は、対向する一対の把持部材11、12と、ストッパー部15とを有する。
【0014】
把持部10は、把持部材11、12の少なくとも一方が揺動することにより開閉する。本例では、一対の把持部材11、12の両方が、揺動中心としての揺動軸部16、17を支点に揺動可能に構成されているが、何れか一方のみが揺動可能であってもよい。その場合、揺動不可能に構成された一方の把持部材に、他方の把持部材が揺動して接近、離間することにより把持部が開閉することとなる。
【0015】
把持部10は、一対の把持部材11、12の間に収穫物を誘導する誘導姿勢あるいは収穫物を一対の把持部材11、12で把持する把持姿勢(閉じた姿勢)と、収穫物を解放する解放姿勢(開いた姿勢)と、の間で開閉可能に構成されている。なお図1、2、3は、誘導姿勢の把持部10を示している。
【0016】
それぞれの把持部材11、12は、基端側に揺動軸部16、17を有し、先端側が自由端となっている。一対の揺動軸部16、17の軸線方向は、互いに平行になっている。一対の把持部材11、12はそれぞれ、把持駆動伝達部40と共にベース部60に連結され、ベース部60によって支持されている。ベース部60は、板状の支持プレート61を有し、支持プレート61にはカバー部材62が取り付けられている。
【0017】
一対の把持部材11、12は、アスパラガス等の略鉛直方向に延びる農産物の茎部分を左右両側から挟み込むことにより、当該農産物(収穫物)を把持することができる。なお、一対の把持部材11、12は、収穫物の形態に応じて、上下方向から挟み込むことができるように上下に開閉するように設けてもよい。また、収穫物に応じて開閉方向が変更できるように、ベース部60に対して把持部10が回転可能であってもよい。
【0018】
一対の把持部材11、12の内側には、収穫物を把持するための把持空間S1が形成される。把持空間S1は、把持部材11、12の基端側に形成される。把持空間S1を把持部材11、12の先端側ではなく基端側に形成することで、収穫物を把持する力を高め易くなる。
【0019】
把持部材11、12の内側面には、把持空間S1に位置する収穫物の滑りを抑制するための滑り止め部18が設けられていることが好ましい。滑り止め部18は、摩擦抵抗が大きく柔軟なゴム製の部材等を接着すること等により形成することができる。このような滑り止め部18を設けることより、把持した収穫物の脱落をより確実に抑制することができる。
【0020】
本例の各把持部材11、12の先端部には、従動コロ19が設けられている。従動コロ19は、把持部材11、12の先端部に設けられた回転軸を中心として、自由に回転可能に構成されている。収穫物を把持する際に、収穫物が従動コロ19の外周面に接触すると、従動コロ19が把持部材11、12の基端側に向けて回転する。これにより、一対の把持部材11、12の間に、スムーズに収穫物を誘導することができ、また、把持部材11、12の先端部(従動コロ19)が収穫物に接触しても当該収穫物が損傷し難くなる。
【0021】
また、本例の従動コロ19の外周面は、軸線方向における中央部が膨出するように湾曲している。このような構成により、収穫物に対する従動コロ19の接触面積が小さくなり、より収穫物が損傷し難くなる。
【0022】
収穫物を一対の把持部材11、12の間に誘導する際には、誘導姿勢の把持部材11、12の先端側から基端側に向けて収穫物を誘導し、収穫物が所定の位置(把持空間S1)に移動するまで、把持部10を前進させる。そして、収穫物が把持空間S1に配置された状態で、駆動部30からの駆動力を付与することにより、一対の把持部材11、12を閉じ方向に付勢して揺動させ、把持姿勢において収穫物を把持する。
【0023】
収穫物把持装置1は、揺動可能な把持部材11、12を閉じ方向に付勢する弾性部材を備える。本例では、一対の把持部材11、12をそれぞれ付勢する弾性部材としてのねじりコイルバネ20を有する。誘導姿勢において、揺動可能に構成された把持部材11、12は、弾性部材によって閉じ方向に付勢されている。本例では、ねじりコイルバネ20の一端部が、把持部材11、12の外側面に当接し、把持部材11、12を内側に向けて押圧する。ねじりコイルバネ20の他端部は、板状部材42、43の第2係合凸部46、47に係合している。
【0024】
このように、把持部材11、12を弾性部材で閉じ方向に付勢することによって、収穫物を誘導する際に、把持部10が必要以上に大きく開くことを抑制することができる。これにより、対象とする収穫物のみを一対の把持部材11、12の間により誘導し易くなる。
【0025】
把持部10は、誘導姿勢において、開き方向の把持部材11、12の揺動が許容されるとともに、閉じ方向の揺動が把持駆動伝達部40によって抑制される。本例では、一対の把持部材11、12がともに、開き方向の揺動が許容されるとともに、閉じ方向の揺動が把持駆動伝達部40(の係合凸部44、45)によって抑制される。本例では直径が一対の把持部材11、12の先端部の間隔Dよりも大きい収穫物を一対の把持部材11、12の間に誘導する際には、収穫物が一対の把持部材11、12を内側から押し広げるように進入することにより、一対の把持部材11、12が(駆動部30からの駆動力によらずに)開き方向に揺動する。なお、一対の把持部材11、12は弾性部材によって閉じ方向に付勢されているため、必要以上に開く(外側に揺動する)ことがない。よって、本例の把持部10によれば、最小限の開き量で収穫物を把持空間S1に向けて誘導することができる。
【0026】
駆動部30は、把持部10を開閉させるための駆動力を付与する。本例の駆動部30は、1つのサーボモータで構成することができるが、駆動力を付与可能であれば、これに限られるものではない。例えば、それぞれの把持部材11、12に対応する一対のモータ等で駆動部30を構成してもよい。本例では、サーボモータの回転方向が変更可能、回転トルクが調整可能に構成されている。そのため、駆動部30から出力される出力方向及び駆動力の大きさ等は適宜調整可能であり、把持部10の把持力、把持部材11、12の揺動方向(開き方向又は閉じ方向)等を調整することができる。このような駆動部30の制御、出力調整は、例えば中央処理装置によって行うことができる。
【0027】
把持駆動伝達部40は、駆動部30と把持部10との間に設けられており、駆動部30からの駆動力を把持部10に伝達する。本例の把持駆動伝達部40は、複数の歯車41(図3参照)及び歯車41に連結された板状部材42、43を有する。本例では、1つのサーボモータの駆動力が、一対の把持部材11、12のそれぞれに同時に伝達されるように、複数の歯車41及び一対の板状部材42、43が設けられている。一対の板状部材42、43は、一対の把持部材11、12に対応している。各板状部材42、43は、対応する把持部材11、12の揺動軸部16、17と軸線が一致する軸部を中心に揺動可能に構成されている。駆動部30からの駆動力を受けて板状部材42、43が回転すると、当該板状部材42、43に同軸配置されたねじりコイルバネ20を介して間接的に、または直接的に、回転方向の力が把持部材11、12に伝達される。本例では、閉じ方向の力は、ねじりコイルバネ20を介して間接的に板状部材42、43から把持部材11、12に伝達される。また、開き方向には直接的に、板状部材42、43の係合凸部44、45から把持部材11、12に力が伝達される。
【0028】
把持駆動伝達部40は、誘導姿勢において、把持部材11、12の閉じ方向の揺動を抑制する揺動抑制部を有する。本例の揺動抑制部は、板状部材42、43に設けられた係合凸部44、45で構成されている。係合凸部44、45はそれぞれ、対応する把持部材11、12に内側から係合して把持部材11、12の閉じ方向の揺動を抑制する。本例では、駆動部30からの駆動力を利用して板状部材42、43を回転(軸部を中心とした揺動)させることにより、係合凸部44、45の位置を変更することができる。
【0029】
本例では、一対の把持部材11、12にそれぞれ対応する一対の板状部材42、43を有し、それぞれの板状部材42、43に、各把持部材11、12の閉じ方向の揺動を抑制する係合凸部44、45が設けられている。このように、揺動抑制部で把持部材11、12の閉じ方向の揺動角度を規制することで、誘導姿勢において一対の把持部材11、12を適度に開いておくことができる。これにより、収穫物を一対の把持部材11、12の間に誘導し易くなる。
【0030】
ここで、本例では、それぞれの板状部材42、43は、駆動部30からの駆動力によって回転可能に構成されている。また、一対の把持部材11、12はそれぞれ、対応する板状部材42、43の回転に応じて回転することができる。
【0031】
本例では、サーボモータからの駆動力が複数の歯車41及び板状部材42、43を介して把持部材11、12に伝達され、把持部材11、12が揺動することで、把持部10が開閉する。
【0032】
図5に示す把持姿勢においては、少なくとも収穫物Aが脱落しない程度の把持力が付与される。具体的に、一対の把持部材11、12が内側に、つまり互いに接近する方向(閉じ方向)に向けて、(駆動部30からの駆動力によって)付勢される。
【0033】
以下に、図4図5を参照しつつ、本実施形態の収穫物把持装置1を用いて収穫物Aを収穫する際の、把持部10の動作について説明する。収穫物Aとしては、圃場の土の表面から上方に向けて延びるアスパラガスとすることができるが、これに限られるものではない。
【0034】
先ず、カメラで撮像された画像等に基づいて、収穫対象の農作物を選定する。そして、図4に示すように収穫物把持装置1を誘導姿勢とした状態で、可動アームを制御し、対象の収穫物Aに収穫物把持装置1の把持部10を近づけていく。そして、対象の収穫物Aが一対の把持部材11、12の間に誘導されるように、把持部10をさらに移動(前進)させる。
【0035】
このように収穫物Aが一対の把持部材11、12の間に誘導される過程において、一対の把持部材11、12の一方又は両方は、収穫物Aの太さ(直径)に応じて、必要な分だけ開き方向に揺動する。なお、収穫物Aの直径が一対の把持部材11、12の先端部の間隔Dよりも小さい場合には、一対の把持部材11、12は開き方向に揺動しなくてもよい。収穫物Aは、一対の把持部材11、12の先端から進入し、導入空間S2を通過して把持空間S1へと移動する(誘導される)。この過程で、収穫物Aが従動コロ19に接触すると、収穫物Aの動きに合わせて従動コロ19が回転する。また、ストッパー部15に接触することで、収穫物Aは把持空間S1の適切な位置で停止される。つまり、ストッパー部15は、収穫物Aが一対の把持部材11、12の基端側に移動し過ぎることを抑制する。これにより、対象の収穫物A以外の農作物(収穫物B)が把持空間S1に進入することをより確実に抑制することができる。
【0036】
図5に示すように、収穫物Aが把持空間S1まで到達した状態で、把持部10を閉じて把持姿勢にする。把持姿勢における一対の把持部材11、12の間隔は、収穫物の太さに応じて異なる。つまり、収穫物が細い場合には一対の把持部材11、12の間隔は小さく、太い場合には一対の把持部材11、12の間隔は大きくなる。誘導姿勢から把持姿勢に移行する際には、駆動部30から把持駆動伝達部40を介して伝達される駆動力を利用して、一対の把持部材11、12を閉じ方向に揺動させる。この時、収穫物Aの直径が大きい場合、収穫物Aの被把持部が硬い場合などにおいては、誘導姿勢から把持姿勢に移行する際に一対の把持部材11、12が閉じ方向に揺動しないことがあってもよい。その場合であっても、駆動部30からの駆動力によって所定の閉じ方向の力(把持力)が一対の把持部材11、12に付加される。このように、把持姿勢とすることで、収穫物Aが把持部10によってしっかりと把持され、把持空間S1から下方に脱落したり、一対の把持部材11、12の先端側に抜け出してしまったりすることを防ぐことができる。
【0037】
上記のように、対象の収穫物Aを把持した状態(把持姿勢)で、カッター部50を動作させて、収穫物Aを切断する。本例のカッター部50は、図3に示すように、一対の把持部材11、12の下方に位置しており、ハサミように左右一対の刃部材51、52で収穫物Aを両側から挟み込んで切断するものであるが、これに限られるものではない。例えば、収穫対象の農作物が、枝等から下方に垂れ下がる果実等である場合、カッター部50は把持部10の上方に位置することが好ましい。カッター部50は、把持部10で把持した収穫物Aを切断可能であればよく、例えば、1本の刃部材のみで構成されていてもよい。また、本例のカッター部50は、把持部10を開閉させる駆動部30からの駆動力を利用して動作するように構成されているが、これに限られず、カッター部50を駆動するためのモータ等の駆動部を別に有していてもよい。
【0038】
カッター部50を用いて収穫物Aを切断した後、可動アームを使って収穫した収穫物Aを所定の位置まで移動させる。この時、把持部10は把持姿勢であり、所定の位置まで把持部10を移動させてから、把持部10を把持姿勢から開放姿勢に移行する。把持部10が把持姿勢から開放姿勢に移行する際には、駆動部30から把持駆動伝達部40を介して伝達される駆動力を用いて、一対の把持部材11、12を開き方向に揺動させる。把持部10が解放姿勢となることで、収穫物Aは把持部10から開放されて、所定の容器等に収容される。このようにして、所定の農作物を収穫することができる。
【0039】
上述の通り、本実施形態の収穫物把持装置1は、対向する一対の把持部材11、12の間に収穫物Aを誘導する誘導姿勢あるいは収穫物Aを把持する把持姿勢と、収穫物Aを解放する解放姿勢と、の間で開閉可能であり、一対の把持部材11、12の少なくとも一方が揺動することにより開閉するように構成された把持部10と、把持部10を開閉させるための駆動力を付与する駆動部30と、駆動部30からの駆動力を把持部10に伝達する把持駆動伝達部と、を備え、把持部10は、誘導姿勢において、開き方向の把持部材11、12の揺動が許容されるとともに、閉じ方向の揺動が把持駆動伝達部40によって抑制されるように構成されている。
【0040】
本実施形態の収穫物把持装置1にあっては、誘導姿勢において開き方向の把持部材11、12の揺動が許容されているため、収穫物Aを把持する際に、対象の収穫物Aに応じた適度な開き量で、一対の把持部材11、12の間に収穫物Aを誘導することができる。また、一対の把持部材11、12を必要以上に大きく開いておく必要がないので、収穫対象以外の農作物Bに接触する可能性を低減させることができる。したがって、本実施形態の収穫物把持装置1によれば、収穫対象の収穫物Aのみを把持する把持精度を高めるとともに、近接する他の収穫物Bの損傷を抑制することが可能となる。
【0041】
また、本実施形態の収穫物把持装置1にあっては、誘導姿勢において、揺動可能に構成された把持部材11、12は、弾性部材によって閉じ方向に付勢されている。このような構成により、必要以上に把持部10が開くことを抑制することができるため、収穫対象の収穫物Aのみを把持する把持精度をさらに高めることができ、近接する他の収穫物Bの損傷を抑制する効果も高めることができる。
【0042】
また、本実施形態の収穫物把持装置1にあっては、誘導姿勢において、一対の把持部材11、12の先端部は、間隔Dを空けて配置されている。このような構成により、一対の把持部材11、12の間に収穫物Aを誘導し易くなる。間隔Dは、収穫物Aの1本の直径と同等か、当該直径よりも僅かに小さくなる程度に設定することが好ましい。例えば、収穫物Aがアスパラガスである場合の間隔Dは、5mm以上、15mm以下であることが好ましい。これによれば、収穫対象の1本のアスパラガスのみを、より確実に把持空間S1に誘導することができる。
【0043】
また、本実施形態の収穫物把持装置1にあっては、把持部材11、12の先端部に従動コロ19が設けられている。このような構成により、一対の把持部材11、12の間にスムーズに収穫物Aを誘導することができ、また、収穫物Aの損傷抑制効果をより高めることができる。よって、少なくとも一方の把持部材11、12の先端部には、従動コロ19が設けられていることが好ましく、本例のように両方の把持部材11、12に従動コロ19が設けられていることがより望ましい。
【0044】
また、本実施形態の収穫物把持装置1にあっては、把持駆動伝達部40が、把持部材11、12に内側から当接して閉じ方向の揺動を抑制する係合凸部44、45を有し、係合凸部44、45は、駆動部30からの駆動力を利用して移動可能に構成されている。このように、把持駆動伝達部40に係合凸部44、45を設け、その位置を移動可能とすることで、誘導姿勢における把持部材11、12の位置を容易に変更することができる。これにより、収穫物Aの太さ等に応じて、把持部材11、12の先端部の間隔Dを容易に調整することが可能となる。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0046】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0047】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(項目1)
対向する一対の把持部材の間に収穫物を誘導する誘導姿勢あるいは前記収穫物を把持する把持姿勢と、前記収穫物を解放する解放姿勢と、の間で開閉可能であり、前記一対の把持部材の少なくとも一方が揺動することにより開閉するように構成された把持部と、
前記把持部を開閉させるための駆動力を付与する駆動部と、
前記駆動部からの駆動力を前記把持部に伝達する把持駆動伝達部と、を備え、
前記把持部は、前記誘導姿勢において、開き方向の前記把持部材の揺動が許容されるとともに、閉じ方向の前記把持部材の揺動が前記把持駆動伝達部によって抑制されることを特徴とする収穫物把持装置。
(項目2)
前記誘導姿勢において、揺動可能に構成された前記把持部材は、弾性部材によって閉じ方向に付勢されている、項目1に記載の収穫物把持装置。
(項目3)
前記誘導姿勢において、前記一対の把持部材の先端部は間隔を空けて配置されている、項目1または2に記載の収穫物把持装置。
(項目4)
少なくとも一方の前記把持部材の先端部には、従動コロが設けられている、項目1~3の何れか一項に記載の収穫物把持装置。
(項目5)
前記把持駆動伝達部は、前記把持部材に内側から当接して閉じ方向の揺動を抑制する係合凸部を有し、
前記係合凸部は、前記駆動部からの駆動力を利用して移動可能に構成されている、項目1~4の何れか一項に記載の収穫物把持装置。
【符号の説明】
【0048】
1:収穫物把持装置
10:把持部
11、12:把持部材
16、17:揺動軸部(揺動中心)
19:従動コロ
20:ねじりコイルバネ(弾性部材)
30:駆動部
40:把持駆動伝達部
50:カッター部
60:ベース部
S1:把持空間
S2:導入空間
A:収穫物
図1
図2
図3
図4
図5