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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038097
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】地盤改良材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/02 20060101AFI20220303BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20220303BHJP
   B09B 3/20 20220101ALI20220303BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
C09K17/02 P
C09K17/06 P
B09B3/00 301M
B09B5/00 N ZAB
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142405
(22)【出願日】2020-08-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】519368585
【氏名又は名称】株式会社ダイセン
(74)【代理人】
【識別番号】100181582
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 直斗
(72)【発明者】
【氏名】清水 誠
(72)【発明者】
【氏名】松岡 実
【テーマコード(参考)】
4D004
4H026
【Fターム(参考)】
4D004AA36
4D004AB03
4D004AC04
4D004BA02
4D004CA34
4D004CC11
4D004CC20
4H026CA02
4H026CA06
4H026CB01
4H026CB03
4H026CB07
4H026CC02
(57)【要約】
【課題】焼却灰に含まれる有害物質を十分に不溶化し、かつ、効果的に強度を向上させることができる地盤改良材の製造方法を提供すること。
【解決手段】地盤改良材の製造方法は、焼却灰と、CaMg(CO、CaCO及びMgOのうち1種又は2種以上を含む不溶化材と、を撹拌して混合し、中間材を得る第1の工程と、中間材と、酸性硫酸塩を含む還元剤と、水と、を撹拌して混合し、造粒固化した地盤改良材を得る第2の工程と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良材の製造方法であって、
焼却灰と、CaMg(CO、CaCO及びMgOのうち1種又は2種以上を含む不溶化材と、を撹拌して混合し、中間材を得る第1の工程と、
前記中間材と、酸性硫酸塩を含む還元剤と、水と、を撹拌して混合し、造粒固化した地盤改良材を得る第2の工程と、を含む、地盤改良材の製造方法。
【請求項2】
前記第2の工程では、前記中間材と、前記還元剤と水とを混合した還元剤水溶液と、を撹拌して混合する、請求項1に記載の地盤改良材の製造方法。
【請求項3】
前記焼却灰は、木質系焼却灰である、請求項1又は2に記載の地盤改良材の製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程では、前記焼却灰と、前記不溶化材と、固化材と、を撹拌して混合する、請求項1~3のいずれか1項に記載の地盤改良材の製造方法。
【請求項5】
前記固化材は、不洗砂を含む、請求項4に記載の地盤改良材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の保全、環境型社会の構築等の観点から、産業廃棄物の削減や再資源化が強く求められている。例えば、一般ごみ、汚泥、石炭、草木等を焼却したときに発生する各種焼却灰を地盤改良材等として再資源化することが検討されている。
【0003】
従来、焼却灰を地盤改良材として再利用するために、焼却灰に含まれる重金属等の有害物質が溶出しないように不溶化すると共に、地盤改良材として必要な強度を確保するために焼却灰を造粒固化する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2013-233535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような、焼却灰を不溶化し、かつ造粒固化する技術は知られているものの、焼却灰の不溶化及び造粒固化を組み合わせ、その両方の効果を有効に発揮できる技術が十分に確立されているとは言えなかった。
【0006】
本発明は、焼却灰に含まれる有害物質を十分に不溶化し、かつ、効果的に強度を向上させることができる地盤改良材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様である地盤改良材の製造方法は、焼却灰と、CaMg(CO、CaCO及びMgOのうち1種又は2種以上を含む不溶化材と、を撹拌して混合し、中間材を得る第1の工程と、中間材と、酸性硫酸塩を含む還元剤と、水と、を撹拌して混合し、造粒固化した地盤改良材を得る第2の工程と、を含む。
【0008】
上記地盤改良材の製造方法において、第2の工程では、中間材と、還元剤と水とを混合した還元剤水溶液と、を撹拌して混合するようにしてもよい。
【0009】
また、焼却灰は、木質系焼却灰であってもよい。
【0010】
また、第1の工程では、焼却灰と、不溶化材と、固化材と、を撹拌して混合するようにしてもよい。
【0011】
また、固化材は、不洗砂を含んでいてもよい。
【0012】
上記地盤改良材の製造方法によれば、焼却灰に含まれる有害物質を十分に不溶化し、かつ、効果的に強度を向上させることができる地盤改良材を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の地盤改良材の製造方法は、焼却灰と、CaMg(CO、CaCO及びMgOのうち1種又は2種以上を含む不溶化材と、を撹拌して混合し、中間材を得る第1の工程と、中間材と、酸性硫酸塩を含む還元剤と、水と、を撹拌して混合し、造粒固化した地盤改良材を得る第2の工程と、を含む。
【0014】
第1の工程において、焼却灰と不溶化材とを撹拌して混合することにより、焼却灰に含まれる(残存している)水分と不溶化材とが反応し、不溶化材に含まれるカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)がイオンとして溶出する。溶出したカルシウムやマグネシウムのイオンは、焼却灰に含まれる有害物質である重金属等と反応し、水和物となって析出する。そのため、焼却灰に含まれる重金属等の有害物質を不溶化できる。
【0015】
次に、第2の工程において、中間材と還元剤と水とを撹拌して混合することにより、中間材に含まれる不溶化材と水とが反応し、不溶化材に含まれるカルシウムやマグネシウムがイオンとして溶出する。溶出したカルシウムやマグネシウムのイオンは、焼却灰に含まれる有害物質である重金属等と反応し、水和物となって析出する。そのため、焼却灰に含まれる重金属等の有害物質を不溶化できる。第2の工程では、第1の工程とは異なり、積極的な加水により、上述した水和反応が促進され、不溶化効果をさらに高めることができる。
【0016】
また、第2の工程において、還元剤に含まれる酸性硫酸塩が水と反応して水酸化する。そして、水酸化による電子イオンが浮遊して電位移動により、焼却灰に含まれる有害物質である重金属等が無害な重金属(溶出しにくい金属)等に変換される。さらに、硫酸塩が重金属等と結合し、不溶水和物を形成する。これにより、焼却灰に含まれる重金属等の有害物質を不溶化できる。
【0017】
また、上述したように、第1の工程と第2の工程との2段階による不溶化により、焼却灰に含まれる重金属等の有害物質の不溶化を効率良く行うことができる。すなわち、第1の工程において、一般的にアルカリ性を有する焼却灰に不溶化材を撹拌して混合することにより、アルカリ側において水和物形成による不溶化を行う。また、第2の工程において、酸性硫酸塩を含む還元剤を撹拌して混合することにより、PH調整をしてアルカリ側から中性域に移行した状態で、電位移動及び水和物形成による不溶化を行う。このような2段階による不溶化により、不溶化効果をより一層高めることができる。
【0018】
また、第1の工程において焼却灰と不溶化材とを均一に混合することにより、第1の工程における不溶化を効率良く行うことができる。また、第2の工程において、第1の工程で事前に均一に混合した中間材に還元剤と水とを混合することにより、第2の工程における不溶化を効率良く行うことができる。これにより、2段階による不溶化を効率良く行うことができる。
【0019】
また、第2の工程において、不溶化材から溶出したカルシウムやマグネシウムのイオンは、還元剤に含まれる酸性硫酸塩から溶出した硫酸イオンと反応し、二水石膏やマグネシウム六水和物等の水和物となって析出する。そのため、焼却灰の含水率を低減させ、強度向上効果を有効に発揮することができる。
【0020】
また、第2の工程における加水により、焼却灰の粒子を結合して団粒化を促進することができる。これにより、焼却灰の造粒効果を高めることができると共に、焼却灰を固化して強度を向上させることができる。
【0021】
特に、粉粒状の焼却灰では、塑性限界付近で造粒する特性を持っている。そのため、第2の工程において加水しながら塑性限界付近で撹拌して混合することにより、毛管吸引作用を利用しながら、造粒効果を高めることができる。
【0022】
このような造粒工程において、加水直後の造粒初期段階では、局部的に塑性限界付近に達した部分が点在的に発生する。造粒中期段階になると、点在的に発生している単粒子が撹拌作用により単粒子周辺のまだ塑性限界に達していない粉体や単粒子と結合していく。造粒後期段階になると、単粒子から表面浸出した水分により、さらに別の単粒子と結合して造粒が促進される。
【0023】
また、第2の工程において混合する還元剤に含まれる酸性硫酸塩は、無機凝集剤としての効果を有すると考えられる。そのため、焼却灰の細粒分を電気的に凝集させて団粒化しやすくし、造粒固化効果を高めることができる。これにより、得られる土壌改良材は、土壌を締め固めやすくする効果を有するものとなる。
【0024】
上記地盤改良材の製造方法において、地盤改良材の原料となる焼却灰としては、例えば、ごみ焼却灰、ペーパースラッジ、石炭灰、木質焼却灰(草木灰)等を用いることができる。焼却灰に含まれる有害物質としては、例えば、ヒ素、六価クロム等の重金属等が挙げられる。
【0025】
第1の工程において混合する不溶化材は、焼却灰に含まれる重金属等の有害物質を不溶化(溶出しないように)するための材料であり、CaMg(CO、CaCO及びMgOのうち1種又は2種以上を含む。不溶化材としては、例えば、CaMg(CO、CaCO3、MgOを主成分とする焼成ドロマイト(半焼成ドロマイト:MgO・CaCO、軽焼ドロマイト:CaO・MgO等を含む)、CaMg(COを主成分とするドロマイト等のドロマイト系化合物、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化マグネシウム(MgO)等が挙げられる。不溶化材としては、上述した材料以外の各種不溶化材が含まれていてもよい。
【0026】
上述した不溶化材のうち、特にドロマイトを焼成してなる焼成ドロマイトは、ドロマイトを焼成したときに「CaMg(CO→MgO+CaCO+CO」で表される熱分解によって多くの細孔が形成される。そのため、焼却灰中に含まれる重金属等を細孔内に効率良く吸着させることができ、不溶化効果をより一層発揮することができる。
【0027】
第1の工程において、焼却灰に対する不溶化材の混合量は、焼却灰の種類等によって適宜調整することができるが、例えば、焼却灰を100質量%とした場合に、不溶化材を5~15質量%とすることができる。
【0028】
第2の工程において混合する還元剤は、高い還元作用により、焼却灰に含まれる重金属等の有害物質を不溶化(溶出しないように)する効果を発揮する材料であり、酸性硫酸塩を含む。酸性硫酸塩としては、例えば、硫酸第一鉄、硫酸アルミニウム等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。還元剤としては、上述した酸性硫酸塩以外の各種還元剤が含まれていてもよい。
【0029】
例えば、酸性硫酸塩として硫酸第一鉄を用いた場合、第2の工程において、硫酸第一鉄が水と反応して水酸化硫酸鉄となる。そして、水酸化による電子イオンが浮遊して電位移動により、焼却灰に含まれる有害物質である重金属等が無害な重金属(溶出しにくい金属)等に変換される。さらに、硫酸及び鉄が重金属等と結合し、不溶水和物(水酸化硫酸鉄)を形成する。これにより、焼却灰に含まれる重金属等の有害物質を不溶化できる。
【0030】
上記地盤改良材の製造方法において、第2の工程では、中間材と、還元剤と水とを混合した還元剤「水溶液と、を混合して撹拌するようにしてもよい。この場合には、還元剤を水溶液として混合することにより、水分が効果的に補われ、不溶化材に基づく水和物形成による不溶化、かつ、酸性硫酸塩に基づく電位移動及び水和物形成による不溶化が促進される。そのため、不溶化反応時間を短縮したり、別途還元剤を混合する工程を省略したりすることができ、第2の工程における不溶化効果をより一層高めることができる。また、還元剤水溶液に含まれる水分が造粒固化にも効果的に利用されるため、強度向上をより一層図ることができる。
【0031】
第2の工程において、還元剤水溶液中の還元剤の割合は、適宜調整することができるが、例えば、還元剤水溶液を100質量%とした場合に、還元剤を1~10質量%(1~10%水溶液)、好ましくは5質量%(5%水溶液)とすることができる。
【0032】
第2の工程において、中間材に対する還元剤水溶液の混合量は、適宜調整することができるが、例えば、中間材を100質量%とした場合に、還元剤水溶液を10~30質量%とすることができる。
【0033】
また、焼却灰は、木質系焼却灰であってもよい。木質系焼却灰は、バイオマス発電等で草木を焼却したときに発生する草木灰等の焼却灰である。木質系焼却灰は、高アルカリ性を有する。そのため、第1の工程において、アルカリ側で水和物形成による不溶化を行い、第2の工程において、酸性硫酸塩によりPH調整をして中性域で電位移動及び水和物形成による不溶化を行うという2段階による不溶化効果をより有効に発揮することができる。
【0034】
また、木質系焼却灰は、水和反応の要素である酸化カルシウム(CaO)を十分に含んでいるため(例えば、25質量%前後)、造粒固化効果を有効に発揮することができる。また、木質系焼却灰は、一般的に粒子径が細かく、毛細粘着力が強くなる傾向があり、造粒固化効果を高めることができる。また、木質系焼却灰は、二酸化ケイ素(SiO)を十分に含んでいるため(例えば、30質量%前後)、造粒固化後の強度を十分に確保することができる。
【0035】
また、焼却灰として、バイオマス発電等で使用される草木等の焼却灰である木質系焼却灰を有効に利用し、地盤改良材を製造することにより、リサイクル(再資源化)を促進し、循環型社会に貢献できる。また、木質系焼却灰には、植物の生育に必要な元素であるカルシウム(Ca)や育成を助ける元素であるケイ素(Si)が多く含まれているため、木質系焼却灰を用いて製造した地盤改良材は、地盤の改良はもちろんのこと、植物の生育を促進し、緑化効果もある。
【0036】
また、第1の工程では、焼却灰と、不溶化材と、固化材と、を撹拌して混合するようにしてもよい。焼却灰に対し、不溶化材に加えて固化材を混合することにより、第2の工程において焼却灰の造粒を阻害することなく、固化を促進させることができる。すなわち、効率良く造粒固化でき、強度向上を図ることができる。
【0037】
第1の工程において、焼却灰に対する固化材の混合量は、適宜調整することができるが、例えば、焼却灰を100質量%とした場合に、固化材を1~40質量%とすることができる。
【0038】
また、固化材は、不洗砂を含んでいてもよい。焼却灰にも十分混合することができる不洗砂を用いることにより、第2の工程における造粒固化効果をさらに高め、強度向上をより一層図ることができる。なお、固化材としては、上述した不洗砂以外の各種固化材が含まれていてもよい。
【0039】
実施例:
以下、本発明を実施例により説明し、比較例と比較する。ここでは、各種の原材料及び製造方法によって地盤改良材の試験体を作製し、各試験体について不溶化試験及び固化試験を行った。
【0040】
(使用原材料)
[焼却灰]
原料となる焼却灰は、木質系焼却灰を用いた。木質系焼却灰は、バイオマス発電で使用された木質ペレット及びPKS(パーム椰子殻)の流動層ボイラー焼却灰である。
【0041】
[不溶化材]
不溶化材は、アルミナ系不溶化材とドロマイト系不溶化材の2種類を用いた。アルミナ系不溶化材としては、Alを主成分とする無機系複合物を用いた。ドロマイト系不溶化材としては、焼成ドロマイトであるCaO・MgO(軽焼ドロマイト)を主成分とする無機系複合物を用いた。なお、後述する表には、アルミナ系不溶化材を「アルミナ系」、ドロマイト系不溶化材を「ドロマイト系」と記載した。
【0042】
[固化材]
固化材は、不洗砂を用いた。
【0043】
[還元剤]
還元剤は、硫酸第一鉄を用いた。また、還元剤水溶液として混合する場合には、硫酸第一鉄5%水溶液を用いた。なお、硫酸第一鉄5%水溶液は、還元剤水溶液を100質量%とした場合に、還元剤が5質量%含まれている水溶液である。なお、後述する表には、還元剤と水とを別々で混合する場合は「粉末」、還元剤水溶液として混合する場合は「水溶液」と記載した。
【0044】
(不溶化試験)
原料となる焼却灰及び各試験体について、環境庁告示46号溶出試験により、産業廃棄物に含まれる有害物質である重金属等の溶出量を測定した。検査項目は、カドミウム、六価クロム、シアン、水銀、アルキル水銀、セレン、鉛、砒素、ふっ素、ほう素とした。なお、後述する表には、各検査項目の基準値(単位:mg/L)を示した。
【0045】
(試験例1)
比較例である試験体11と本発明の実施例である試験体12とを作製し、不溶化試験を行った。
【0046】
[試験体11]
混錬ミキサー(強制2軸型ミキサー)に、木質系焼却灰(焼却灰:原料A)、アルミナ系不溶化材(不溶化材)、不洗砂(固化材)、粉末状の硫酸第一鉄(還元剤)及び水を投入し、これらを撹拌・混合した。不溶化材の混合量は、焼却灰を100質量%とした場合に10質量%、固化材の混合量は、焼却灰を100質量%とした場合に5質量%とした。また、還元剤の混合量は、焼却灰を100質量%とした場合に0.25質量%、水の混合量は、焼却灰、不溶化材及び固化材の合計量を100質量%とした場合に20質量%とした。これにより、地盤改良材の試験体を得た。
【0047】
[試験体12]
混錬ミキサーに、木質系焼却灰(焼却灰:原料A)、ドロマイト系不溶化材(不溶化材)及び不洗砂(固化材)を投入し、これらを撹拌・混合した。不溶化材の混合量は、焼却灰を100質量%とした場合に10質量%、固化材の混合量は、焼却灰を100質量%とした場合に5質量%とした。これにより、中間材を得た(1次撹拌、第1の工程)。中間材は、半日以上養生した。
【0048】
次に、混錬ミキサーに、中間材、粉末状の硫酸第一鉄(還元剤)及び水を投入し、これらを撹拌・混合した。具体的には、中間材に硫酸第一鉄及び水を徐々に加えながら、撹拌・混合することにより、造粒固化を行った。還元剤の混合量は、焼却灰を100質量%とした場合に0.25質量%、水の混合量は、中間材を100質量%とした場合に20質量%とした。これにより、地盤改良材の試験体を得た(2次撹拌、第2の工程)。
【0049】
表1に不溶化試験の結果を示す。
試験体12は、ドロマイト系の不溶化材を用い、2段階(表には「2段」と記載)の混合(第1の工程、第2の工程)を行ったことにより、アルミナ系の不溶化材を用い、1回での混合であった試験体11よりも重金属等の不溶化効果が高い。具体的には、試験体12は、各種重金属等の不溶化効果を十分に有し、試験体11よりもふっ素、ほう素の溶出量が低く、不溶化効果が高い。これにより、不溶化材としてドロマイト系を用い、2段階での混合(第1の工程、第2の工程)が好ましいことがわかった。
【0050】
【表1】
【0051】
(試験例2)
比較例である試験体21と本発明の実施例である試験体22とを作製し、不溶化試験を行った。
【0052】
[試験体21]
混錬ミキサーに、木質系焼却灰(焼却灰:原料B)、ドロマイト系不溶化材(不溶化材)、不洗砂(固化材)、粉末状の硫酸第一鉄(還元剤)及び水を投入し、これらを撹拌・混合した。不溶化材、固化材、還元剤及び水の混合量は、上述の試験体11の作製と同様である。これにより、地盤改良材の試験体21を得た。
【0053】
[試験体22]
混錬ミキサーに、木質系焼却灰(焼却灰:原料B)、ドロマイト系不溶化材(不溶化材)及び不洗砂(固化材)を投入し、これらを撹拌・混合した。不溶化材及び固化材の混合量は、上述の試験体12の作製と同様とした。これにより、中間材を得た(1次撹拌、第1の工程)。中間材は、半日以上養生した。
【0054】
次に、混錬ミキサーに、中間材、粉末状の硫酸第一鉄(還元剤)及び水を投入し、これらを撹拌・混合した。具体的には、中間材に粉末状の硫酸第一鉄及び水を徐々に加えながら、撹拌・混合することにより、造粒固化を行った。還元剤及び水の混合量は、上述の試験体12の作製と同様とした。これにより、地盤改良材の試験体22を得た(2次撹拌、第2の工程)。
【0055】
表2に不溶化試験の結果を示す。
試験体22は、2段階の混合(第1の工程、第2の工程)を行ったことにより、1回での混合であった試験体21よりも重金属等の不溶化効果が高い。具体的には、試験体22は、各種重金属等の不溶化効果を十分に有し、試験体21よりもセレン、ふっ素、ほう素の溶出量が低く、不溶化効果が高い。これにより、2段階での混合(第1の工程、第2の工程)が好ましいことがわかった。
【0056】
【表2】
【0057】
(試験例3)
比較例である試験体31と本発明の実施例である試験体32とを作製し、不溶化試験を行った。
【0058】
[試験体31]
混錬ミキサーに、木質系焼却灰(焼却灰:原料C)、ドロマイト系不溶化材(不溶化材)、不洗砂(固化材)、硫酸第一鉄5%水溶液(還元剤水溶液)を投入し、これらを撹拌・混合した。不溶化材及び固化材の混合量は、上述の試験体11の作製と同様である。また、還元剤水溶液の混合量は、焼却灰、不溶化材及び固化材の合計量を100質量%とした場合に20質量%とした。これにより、地盤改良材の試験体31を得た。
【0059】
[試験体32]
混錬ミキサーに、木質系焼却灰(焼却灰:原料C)、ドロマイト系不溶化材(不溶化材)及び不洗砂(固化材)を投入し、これらを撹拌・混合した。不溶化材及び固化材の混合量は、上述の試験体12の作製と同様とした。これにより、中間材を得た(1次撹拌、第1の工程)。中間材は、半日以上養生した。
【0060】
次に、混錬ミキサーに、中間材及び硫酸第一鉄5%水溶液(還元剤水溶液)を投入し、これらを撹拌・混合した。具体的には、中間材に硫酸第一鉄5%水溶液を徐々に加えながら、撹拌・混合することにより、造粒固化を行った。還元剤水溶液の混合量は、中間材を100質量%とした場合に20質量%とした。これにより、地盤改良材の試験体32を得た(2次撹拌、第2の工程)。
【0061】
表3に不溶化試験の結果を示す。
試験体32は、2段階の混合(第1の工程、第2の工程)を行ったことにより、1回での混合であった試験体31よりも重金属等の不溶化効果が高い。具体的には、試験体32は、各種重金属等の不溶化効果を十分に有し、試験体31よりもカドミウム、セレン、ふっ素、ほう素の溶出量が低く、不溶化効果が高い。これにより、2段階での混合(第1の工程、第2の工程)が好ましいことがわかった。
【0062】
【表3】
【0063】
(試験例4)
本発明の実施例である試験体41及び試験体42を作製し、不溶化試験を行った。
【0064】
[試験体41]
混錬ミキサーに、木質系焼却灰(焼却灰:原料D)、ドロマイト系不溶化材(不溶化材)及び不洗砂(固化材)を投入し、これらを撹拌・混合した。不溶化材及び固化材の混合量は、上述の試験体12の作製と同様とした。これにより、中間材を得た(1次撹拌、第1の工程)。中間材は、半日以上養生した。
【0065】
次に、混錬ミキサーに、中間材、粉末状の硫酸第一鉄(還元剤)及び水を投入し、これらを撹拌・混合した。具体的には、中間材に粉末状の硫酸第一鉄及び水を徐々に加えながら、撹拌・混合することにより、造粒固化を行った。還元剤及び水の混合量は、上述の試験体12の作製と同様とした。これにより、地盤改良材の試験体41を得た(2次撹拌、第2の工程)。
【0066】
[試験体42]
混錬ミキサーに、木質系焼却灰(焼却灰:原料D)、ドロマイト系不溶化材(不溶化材)及び不洗砂(固化材)を投入し、これらを撹拌・混合した。不溶化材及び固化材の混合量は、上述の試験体32の作製と同様とした。これにより、中間材を得た(1次撹拌、第1の工程)。中間材は、半日以上養生した。
【0067】
次に、混錬ミキサーに、中間材及び硫酸第一鉄5%水溶液(還元剤水溶液)を投入し、これらを撹拌・混合した。具体的には、中間材に硫酸第一鉄5%水溶液を徐々に加えながら、撹拌・混合することにより、造粒固化を行った。還元剤水溶液の混合量は、上述の試験体32の作製と同様とした。これにより、地盤改良材の試験体42を得た(2次撹拌、第2の工程)。
【0068】
表4に不溶化試験の結果を示す。
試験体42は、第2の工程において還元剤及び水を予め混合した還元剤水溶液として添加したことにより、第2の工程において還元剤及び水をそれぞれ別々に添加した試験体41よりも重金属等の不溶化効果がより高い。具体的には、試験体41は、各種重金属等の不溶化効果を十分に有するが、試験体42は、試験体41よりもカドミウム、ふっ素、ほう素の溶出量がさらに低く、不溶化効果がより高い。これにより、第2の工程において還元剤及び水を予め混合した還元剤水溶液として添加することが好ましいことがわかった。
【0069】
【表4】
【0070】
(試験例5)
さらに、比較例である試験体51と本発明の実施例である試験体52とを作製し、固化試験を行った。試験体51は、上述の試験体31と同様の方法で作製した。また、試験体52は、上述の試験体32と同様の方法で作製した。
【0071】
固化試験は、試験体をJIS A 1210:2009「突固めによる土の締固め試験方法」に規定される10cmモールドに3層に分けて充填し、20℃で材齢7日まで密封養生した後、JIS A 1228「締固めた土のコーン指数試験方法」に準拠して材齢7日のコーン指数を測定した。コーン指数は、国土交通省の「発生土利用基準について」の土質区分基準の第3種建設発生土に規定される400kN/m以上であるものを合格とした。
【0072】
コーン指数は、試験体51が1451kN/m、試験体52が1815kN/mであった。試験体52は、2段階の混合(第1の工程、第2の工程)を行ったことにより、1回での混合であった試験体51よりも強度が高いことがわかった。試験体52は、2段階の混合(第1の工程、第2の工程)とすることで、化学反応が進み、エントリガンの形成により造粒しやすくなり、併せて強度も増していることがわかった。
【0073】
本発明は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。例えば、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。

【手続補正書】
【提出日】2021-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良材の製造方法であって、
焼却灰と、CaMg(CO、CaCO及びMgOのうち1種又は2種以上を含む不溶化材と、を撹拌して混合し、中間材を得る第1の工程と、
前記中間材と、酸性硫酸塩を含む還元剤とを混合した還元剤水溶液と、を撹拌して混合し、造粒固化した地盤改良材を得る第2の工程と、を含む、地盤改良材の製造方法。
【請求項2】
前記焼却灰は、木質系焼却灰である、請求項に記載の地盤改良材の製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程では、前記焼却灰と、前記不溶化材と、不洗砂と、を撹拌して混合する、請求項1又は2に記載の地盤改良材の製造方法
【手続補正書】
【提出日】2021-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良材の製造方法であって、
焼却灰と、CaMg(CO、CaCO及びMgOのうち1種又は2種以上を含む不溶化材と、を撹拌して混合し、中間材を得る第1の工程と、
前記中間材と還元剤である硫酸第一鉄と水とを混合した還元剤水溶液と、を撹拌して混合し、前記還元剤水溶液に含まれる水分により造粒固化した地盤改良材を得る第2の工程と、を含む、地盤改良材の製造方法。
【請求項2】
前記焼却灰は、木質系焼却灰である、請求項1に記載の地盤改良材の製造方法