(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038138
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】車両の後部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20220303BHJP
B60R 19/24 20060101ALI20220303BHJP
B60R 19/04 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
B62D25/20 K
B60R19/24 N
B60R19/24 R
B60R19/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142465
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】井口 正晴
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雄介
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB07
3D203BB24
3D203BB25
3D203CA26
3D203CA43
3D203DA22
(57)【要約】
【課題】後突によってバンパフェイシャからブラケットに力が伝わってもクロスメンバの変形を抑制できる車両後部構造を提供する。
【解決手段】車両の後部構造は、車両幅方向両側において車両前後方向に延びる一対のサイドメンバと、前記一対のサイドメンバより後方に配置され、車両幅方向に延在するバンパビームと、前記サイドメンバと前記バンパビームとの間に設けられるクラッシュボックスと、前記一対のサイドメンバの後端に車両幅方向に架け渡されたクロスメンバと、前記車両の外面を構成するバンパフェイシャと、を備える車両の後部構造であって、前記クロスメンバには、前記一対のサイドメンバの延在方向延長線上において前記クラッシュボックスの前端を前記クロスメンバに接合するバンパプレートが設けられ、前記バンパプレートに一端が固定され、前記バンパフェイシャに他端が固定されたブラケットが設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向両側において車両前後方向に延びる一対のサイドメンバと、
前記一対のサイドメンバより後方に配置され、車両幅方向に延在するバンパビームと、
前記サイドメンバと前記バンパビームとの間に設けられるクラッシュボックスと、
前記一対のサイドメンバの後端に車両幅方向に架け渡されたクロスメンバと、
前記車両の外面を構成するバンパフェイシャと、
を備える車両の後部構造であって、
前記クロスメンバには、前記一対のサイドメンバの延在方向延長線上において前記クラッシュボックスの前端を前記クロスメンバに接合するバンパプレートが設けられ、
前記バンパプレートに一端が固定され、前記バンパフェイシャに他端が固定されたブラケットが設けられる
車両の後部構造。
【請求項2】
前記バンパプレートは、エンドプレートを介して前記クロスメンバと取り付けられ、
前記バンパプレートは、前記エンドプレートから外側に延びる台座部を有し、該台座部に前記ブラケットが固定された、
請求項1に記載の車両の後部構造。
【請求項3】
前記台座部は、前記クロスメンバと離間して形成された、
請求項2に記載の車両の後部構造。
【請求項4】
前記台座部は、前記クラッシュボックスよりも車両幅方向内側に形成された、
請求項2又は3に記載の車両の後部構造。
【請求項5】
前記バンパプレートは、前記サイドメンバに締結部材によって締結された、
請求項1から4のいずれか一項に記載の車両の後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リアバンパーの下端部と車体後部構造との間に介在して、当該リアバンパーの下端部を当該車体後部構造に支持させるブラケットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示するブラケットでは、低速(例えば、15km/h以下)での後突によってもリアバンパー(バンパフェイシャ)からブラケットを介して車体後部構造(クロスメンバ)に力が伝わり車体後部構造(クロスメンバ)が変形する虞がある。車体後部構造(クロスメンバ)が変形するとリアバンパーを交換するだけで済まないので修理費が嵩む。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、低速での後突によってバンパフェイシャからブラケットに力が伝わってもクロスメンバの変形を抑制できる車両後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る車両の後部構造は、車両幅方向両側において車両前後方向に延びる一対のサイドメンバと、前記一対のサイドメンバより後方に配置され、車両幅方向に延在するバンパビームと、前記サイドメンバと前記バンパビームとの間に設けられるクラッシュボックスと、前記一対のサイドメンバの後端に車両幅方向に架け渡されたクロスメンバと、前記車両の外面を構成するバンパフェイシャと、を備える車両の後部構造であって、前記クロスメンバには、前記一対のサイドメンバの延在方向延長線上において前記クラッシュボックスの前端を前記クロスメンバに接合するバンパプレートが設けられ、前記バンパプレートに一端が固定され、前記バンパフェイシャに他端が固定されたブラケットが設けられる。
【0007】
上記の構成によれば、ブラケットは、バンパプレートに一端が固定され、バンパフェイシャに他端が固定されたので、低速での後突によりバンパフェイシャからブラケットに力が伝わってもその力にバンパプレートが対抗する。これにより、低速での後突によってバンパフェイシャからブラケットに力が伝わってもクロスメンバの変形を抑制できる。
【0008】
本発明の実施形態では、上記の構成において、前記バンパプレートは、エンドプレートを介して前記クロスメンバと取り付けられ、前記バンパプレートは、前記エンドプレートから外側に延びる台座部を有し、該台座部に前記ブラケットが固定される。
【0009】
上記の構成によれば、バンパプレートは、エンドプレートから外側に延びる台座部を有し、該台座部にブラケットが固定されるので、ブラケットからバンパプレートを通りエンドプレートに伝わる力を抑制できる。
【0010】
本発明の実施形態では、上記の構成において、前記台座部は、前記クロスメンバと離間して形成される。
【0011】
上記の構成によれば、台座部は、クロスメンバと離間して形成されるので、ブラケットから台座部に伝達された力はクロスメンバに伝わり難く、軽衝突時におけるクロスメンバの変形を抑制できる。
【0012】
本発明の実施形態では、上記の構成において、前記台座部は、前記クラッシュボックスよりも車両幅方向内側に形成される。
【0013】
上記の構成によれば、台座部は、クラッシュボックスよりも車両幅方向内側に形成されるので、車両幅方向外側斜め後方から後突された時のブラケットの変形量を少なくできる。
【0014】
本発明の実施形態では、上記の構成において、前記バンパプレートは、前記サイドメンバに締結部材によって締結される。
【0015】
上記の構成によれば、バンパプレート、クラッシュボックス又はブラケットが損傷しても、サイドメンバからバンパプレートを取り外すことにより、バンパプレート、クラッシュボックス又はブラケットを交換修理できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施形態によれば、低速での後突によってバンパフェイシャからブラケットに力が伝わってもクロスメンバの変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の後部構造の構成を概略的に示す側面図である。
【
図2】
図1に示した車両の後部構造の構成を概略的に示す下面図である。
【
図3】
図1に示した車両の後部構造の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図4】
図3に示した車両の後部構造の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【
図5-1】後突前の車両の後部構造の構成を概略的に示す側面図である。
【
図5-2】後突後の車両の後部構造の構成を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る車両の後部構造1の構成を概略的に示す側面図であり、
図2は、
図1に示した車両の後部構造1の構成を概略的に示す下面図である。また、
図3は、
図1に示した車両の後部構造1の構成を概略的に示す斜視図であり、
図4は、
図3に示した車両の後部構造1の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【0020】
図1及び
図2に示すように、本発明の実施形態に係る車両の後部構造1は、車体フレーム2とバンパビーム組立体3とを備えている。
【0021】
図2に示すように、車体フレーム2は、車両の骨格を構成する車体部材であり、本発明の実施形態に係る車両の後部構造1では、一対のサイドメンバ21,21、クロスメンバ22、及びエンドプレート23を含んで構成される。
【0022】
図3及び
図4に示すように、一対のサイドメンバ21,21は、車両幅方向両側において車両前後方向に沿って延びる部材である。一対のサイドメンバ21,21の上にはフロアパネル24が架け渡されて固定される。サイドメンバ21は、例えば、上面が開口した溝型の部材であって、開口端の両側に外側に延びるフランジ21aを有する。サイドメンバ21は、例えば、一様な厚みの鋼板をプレス加工することにより構成される。
【0023】
クロスメンバ22は、一対のサイドメンバ21,21の後端に車両幅方向に掛け渡される部材である。クロスメンバ22は、例えば、車両の後端形状に沿って形成される。クロスメンバ22は、例えば、平面視において車両中央が車両後方に突出するように湾曲形成され、車両の側断面において剛性が高まるように屈曲形成される。クロスメンバ22は、例えば、一様な厚みの鋼板をプレス加工することにより構成される。
【0024】
エンドプレート23は、一対のサイドメンバ21,21の延在方向延長線上においてそれぞれクロスメンバ22と重ね合わせて接合される部材である。エンドプレート23は、例えば、野球のホームベース状であって、剛性が高まるように、両側の垂直縁部、外側の傾斜縁部、及び、下側の水平縁部に後方に突出するリブ23aが設けられる。エンドプレート23は、例えば、一様な厚みの鋼板をプレス加工することにより構成される。
【0025】
バンパビーム組立体3は、上述した車体フレーム2(サイドメンバ21,21)に締結部材6によって締結される。例えば、後述するバンパプレート32が、サイドメンバ21に締結部材6によって締結される。締結部材6は、例えば、ボルト61とナット62、ネジとネジ穴の組み合わせであるが、これに限られるものではない。このように、バンパビーム組立体3が車体フレーム2に締結部材によって締結されることで、バンパビーム組立体3が損傷した場合にバンパビーム組立体3を交換することで修理することができる。
【0026】
バンパビーム組立体3は、衝撃を緩和する緩衝装置であり、本発明の実施形態に係るバンパビーム組立体3では、一対のクラッシュボックス31,31、バンパプレート32、及びバンパビーム33を含んで構成される。
【0027】
一対のクラッシュボックス31,31は、一対のサイドメンバ21,21とバンパビーム33との間に設けられる。一対のクラッシュボックス31,31は、例えば、一対のサイドメンバ21,21の延在方向延長線上に設けられる。クラッシュボックス31は、サイドメンバ21の延在方向に潰れることで後突時に衝撃を緩和する部材である。クラッシュボックス31は、例えば、断面が矩形であって、車両後方から車両前方に向けて断面が小さくなるように設けられている。クラッシュボックス31は、例えば、一様な厚みの鋼板をプレス加工することにより構成される。
【0028】
上述したクロスメンバ22には、一対のサイドメンバ21,21の延在方向延長線上においてクラッシュボックス31の前端をクロスメンバ22に接合するバンパプレート32が設けられる。バンパプレート32は、クラッシュボックス31の前端に設けられ、エンドプレート23に接合される。バンパプレート32は、例えば、一辺(上辺)と該一辺と対向する一辺(下辺)が水平方向に延びる上辺側に偏った六角形で構成される。バンパプレート32には、車体フレーム2にバンパビーム組立体3を締結するための貫通穴32aが設けられ、その貫通穴32aのまわりにその他の部分よりも低くなる座32bが設けられている。また、バンパプレート32は、エンドプレート23から下方外側に延びる台座部32cを有する。台座部32cは、例えば、クラッシュボックス31よりも車両幅方向内側に形成され、クロスメンバ22の後端面から離隔して形成される。そして、該台座部32cに後述するブラケット5の基端部5aが溶接によって接合(固定)される。
【0029】
また、上述したように、例えば、バンパプレート32が上辺側に偏った六角形で構成される場合に、貫通穴32aは、六つの頂部のうち、下辺内側を除いた五つの頂部に設けられ、下辺内側となる頂部から上述した台座部32cが下方外側に延びる。バンパプレート32は、例えば、一様な厚みの鋼板をプレス加工することにより構成される。
【0030】
バンパビーム33は、一対のサイドメンバ21,21より後方に配置され、車両幅方向に延在する部材である。バンパビーム33は、例えば、クラッシュボックス31の後端部に架け渡される。バンパビーム33は、後突時にクラッシュボックス31とともに衝撃を緩和する部材である。バンパビーム33は、例えば、車両側断面において剛性が高まるように屈曲形成される。バンパビーム33は、例えば、一様な厚みの鋼板を折り曲げ加工することにより構成される。
【0031】
また、本発明の実施形態に係る車両の後部構造1は、上述した車体フレーム2及びバンパビーム組立体3のほかに、バンパフェイシャ4及びブラケット5を備えている。
【0032】
バンパフェイシャ4は、車両の外面を構成する部材である。バンパフェイシャ4は、例えば、バンパビーム組立体3の外側を包囲する。バンパフェイシャ4は、デザイン性、空力特性を高める部材であり、車体とリアバンパーとが一体化するように形成される。バンパフェイシャ4は、例えば、剛性樹脂で構成される。
【0033】
ブラケット5は、バンパフェイシャ4をバンパビーム組立体3に取り付けるための部材であり、本発明の実施形態に係る車両の後部構造1では、一端がバンパプレート32に固定され、他端がバンパフェイシャ4に固定される。ブラケット5は、例えば、バンパプレート32に沿って延びる基端部5aと、バンパフェイシャ4に沿って延びる先端部5bと、基端部5aと先端部5bを繋ぐ腕部5cと、を有する。そして、基端部5a、腕部5c及び先端部5bの両側縁部にリブ5dが設けられ、腕部5cにビード5eが設けられている。ブラケット5は、例えば、一様な厚みの鋼板をプレス加工することにより構成される。
【0034】
図5-1は、後突前の車両の後部構造1の構成を概略的に示す側面図であり、
図5-2は、後突後の車両の後部構造1の構成を概略的に示す側面図である。
【0035】
図5-1に示すように、車両後方から他車両等の障害物が迫り、車両が後突されると、
図5-2に示すように、バンパフェイシャ4、バンパビーム33の順に力が伝わり、クラッシュボックス31がサイドメンバ21の延在方向に潰れる。これにより、バンパフェイシャ4、バンパビーム33の順に伝わった力(衝撃力)は緩和される。また、車両が後突されると、バンパフェイシャ4、ブラケット5、バンパプレート32の順にも力が伝わるが、この力にバンパプレート32が対抗するので、バンパフェイシャ4及びブラケット5において力が緩和され、車体フレーム2に力が伝わるのを抑制する。
【0036】
上述した本発明の実施形態に係る車両の後部構造1によれば、ブラケット5は、バンパプレート32に一端が固定され、バンパフェイシャ4に他端が固定されたので、低速(例えば、15km/h以下)での後突によってバンパフェイシャ4からブラケット5に力が伝わってもその力にバンパプレート32が対抗する。これにより、低速での後突によってバンパフェイシャ4からブラケット5に力が伝わってもクロスメンバ22の変形を抑制できる。
【0037】
また、バンパプレート32は、エンドプレート23から外側に延びる台座部32cを有し、該台座部32cにブラケット5が固定されるので、ブラケット5からバンパプレート32を通りエンドプレートに伝わる力を抑制できる。
【0038】
また、台座部32cは、クロスメンバ22と離間して形成されるので、ブラケット5から台座部32cに伝達された力はクロスメンバ22に伝わり難く、軽衝突時におけるクロスメンバ22の変形を抑制できる。
【0039】
また、台座部32cは、クラッシュボックス31よりも車両幅方向内側に形成されるので、車両幅方向外側斜め後方から後突された時のブラケットの変形量を少なくできる。
【0040】
また、バンパビーム組立体3は車体フレーム2に締結部材によって締結されるので、バンパビーム組立体3が損傷してもバンパビーム組立体3を交換することで修理できる。
【0041】
例えば、バンパプレート32は、サイドメンバ21に締結部材6によって締結されるので、バンパプレート32、クラッシュボックス31又はブラケット5が損傷しても、サイドメンバ21からバンパプレート32を取り外すことにより、バンパプレート32、クラッシュボックス31又はブラケット5を交換修理できる。
【0042】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0043】
1 車両の後部構造
2 車体フレーム
21 サイドメンバ
21a フランジ
22 クロスメンバ
23 エンドプレート
23a リブ
24 フロアパネル
3 バンパビーム組立体
31 クラッシュボックス
32 バンパプレート
32a 貫通穴
32b 座
32c 台座部
33 バンパビーム
4 バンパフェイシャ
5 ブラケット
5a 基端部
5b 先端部
5c 腕部
5d リブ
5e ビード
6 締結部材
61 ボルト
62 ナット