(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038151
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】圧電振動デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20220303BHJP
H03H 9/19 20060101ALI20220303BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20220303BHJP
H01L 23/08 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H03H9/19 D
H03H3/02 C
H01L23/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142485
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】大西 学
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108CC10
5J108CC11
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108GG03
5J108GG07
5J108GG18
5J108KK04
5J108MM03
(57)【要約】
【課題】安価な圧電振動デバイス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】両主面に第1,第2励振電極を有すると共に、第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2金属膜を有する圧電振動板と、この圧電振動板の第1,第2励振電極をそれぞれ覆うように、圧電振動板の両主面にそれぞれ接合される第1,第2封止部材とを備え、第1,第2封止部材の少なくとも一方の封止部材は、樹脂フィルムであり、この樹脂フィルムの断面形状において、圧電振動板に接合されている接合辺と該接合辺に対向する対向辺の一端同士を結ぶ仮想直線が、前記接合辺との間で成す角が、鋭角である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両主面の一方の主面に形成された第1励振電極及び前記両主面の他方の主面に形成された第2励振電極を有すると共に、前記第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2金属膜を有する圧電振動板と、
前記圧電振動板の前記第1,第2励振電極をそれぞれ覆うように、前記圧電振動板の前記両主面にそれぞれ接合される第1,第2封止部材とを備え、
前記第1,第2封止部材の少なくとも一方の封止部材は、樹脂フィルムであり、
前記樹脂フィルムの断面形状において、前記圧電振動板に接合されている接合辺と該接合辺に対向する対向辺の一端同士を結ぶ仮想直線が、前記接合辺との間で成す角が、鋭角である、
ことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記樹脂フィルムの断面形状が、前記接合辺を下底、前記対向辺を上底とする略台形状である、
請求項1に記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記樹脂フィルムは、感光性樹脂フィルムである、
請求項1または2に記載の圧電振動デバイス。
【請求項4】
前記圧電振動板は、前記両主面に前記第1,第2励振電極がそれぞれ形成された振動部と、前記振動部を囲む外枠部とを有し、前記振動部は、前記外枠部より薄肉であり、
前記樹脂フィルムは、その周端部が前記外枠部の両主面の少なくとも一方の主面に接合されている、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の圧電振動デバイス。
【請求項5】
前記圧電振動板が、水晶振動板であり、
前記樹脂フィルムの前記水晶振動板に接合される接合領域の一部は、前記水晶振動板の水晶の素地部分に接合している、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の圧電振動デバイス。
【請求項6】
両主面に第1,第2励振電極がそれぞれ形成された圧電振動板の複数が配列支持された圧電ウェハを準備する工程と、
前記圧電ウェハの両主面の少なくともいずれか一方の主面に、ネガ型の感光性樹脂フィルムを貼り付ける工程と、
前記圧電ウェハに貼り付けられた前記感光性樹脂フィルムを露光及び現像して、前記圧電ウェハの圧電振動板の前記第1,第2励振電極の少なくともいずれか一方の励振電極を覆うように、前記感光性樹脂フィルムをパターニングする工程と、
前記感光性樹脂フィルムがパターニングされた前記圧電ウェハの前記圧電振動板を個片化する工程とを備える、
ことを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記圧電ウェハを準備する前記工程における前記圧電振動板は、水晶振動板であり、
前記感光性樹脂フィルムを貼り付ける前記工程では、前記感光性樹脂フィルムの一部が、前記水晶振動板の水晶の素地部分に貼り付けられる、
請求項6に記載の圧電振動デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子等の圧電振動デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動デバイス、例えば、圧電振動子として、表面実装型の水晶振動子が広く用いられている。この表面実装型の水晶振動子は、例えば、特許文献1に記載されているように、セラミックからなる上面が開口した箱形のベース内の保持電極に、水晶振動片の両面の励振電極から導出された電極を、導電性接着剤によって固着することによって、水晶振動片をベース内に収納して搭載する。このようにして水晶振動片を搭載したベースの開口に、蓋体を接合して気密に封止するようにしている。また、ベースの外底面には、当該水晶振動子を表面実装するための実装端子が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような圧電振動子の多くは、セラミック製のベースに、金属製あるいはセラミック製の蓋体が接合されてパッケージが構成されているので、パッケージが高価となり、圧電振動子が高価なものとなっている。
【0005】
本発明は、上記のような点に鑑みて為されたものであって、安価な圧電振動デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0007】
(1)本発明に係る圧電振動デバイスは、両主面の一方の主面に形成された第1励振電極及び前記両主面の他方の主面に形成された第2励振電極を有すると共に、前記第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2金属膜を有する圧電振動板と、前記圧電振動板の前記第1,第2励振電極をそれぞれ覆うように、前記圧電振動板の前記両主面にそれぞれ接合される第1,第2封止部材とを備え、前記第1,第2封止部材の少なくとも一方の封止部材は、樹脂フィルムであり、前記樹脂フィルムの断面形状において、前記圧電振動板に接合されている接合辺と該接合辺に対向する対向辺の一端同士を結ぶ仮想直線が、前記接合辺との間で成す角が、鋭角である。
【0008】
本発明に係る圧電振動デバイスによれば、両主面に第1,第2励振電極が形成された圧電振動板の前記第1,第2励振電極を覆うように、第1,第2封止部材を接合して封止するので、従来のように、上面が開口した箱形のベース内に圧電振動片を収納搭載して封止する必要がなく、高価なベースが不要になる。
【0009】
また、第1,第2封止部材の少なくとも一方の封止部材を、樹脂フィルムで構成しているので、両封止部材を、金属製やセラミック製の蓋体で構成するのに比べて、コストを低減することができる。
【0010】
ここで、圧電振動板としての水晶振動板2の第1,第2励振電極25,26をそれぞれ覆うように、水晶振動板2の両主面に第1,第2封止部材として第1,第2樹脂フィルム3r,4rが接合された後述の
図5に示される水晶振動板1rを想定する。この水晶振動子1rは、第1,第2樹脂フィルム3r,4rの水晶振動板2に接合されている側の面である接合面の面積が、前記接合面とは反対側の面である第1,第2樹脂フィルム3r,4rの表面の面積に比べて小さく、接合面から表面に向かって面積が徐々に大きくなっている。この場合、
図5では、誇張して示しているが、第1,第2樹脂フィルム3r,4rの表面は、接合面よりも外方へ張出している。このように第1,第2樹脂フィルム3r,4rの表面が、接合面よりも広く、外方へ張出していると、表面の端縁には、その直下(水晶振動板2側)に接合面が存在しないために、熱収縮等によって、第1,第2樹脂フィルム3r,4rの外方から内方へ向かう応力Fが作用すると、外方へ張出している表面の端縁から剥離し易くなる。
【0011】
これに対して、本発明では、樹脂フィルムの断面形状において、圧電振動板に接合されている側の接合辺と、この接合辺に対向する表面側の対向辺との一端同士を結ぶ仮想直線が、接合辺と成す角が鋭角であるので、接合辺に比べて樹脂フィルムの表面側である対向辺の長さは短い。したがって、樹脂フィルムは、接合面の面積が表面の面積に比べて大きく、接合面側から表面側へ向かって徐々に面積が小さくなる。すなわち、樹脂フィルムの表面は、接合面よりも外方へ張出すことはなく、接合面の内方に収まっている。
【0012】
したがって、
図5のように樹脂フィルムの表面が、接合面よりも広く、外方へ張出している場合に比べて、熱収縮等による応力が、樹脂フィルムの外方から内方へ作用したときに、樹脂フィルムの表面の端縁から剥離するのを抑制することができる。
【0013】
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記樹脂フィルムの断面形状が、前記接合辺を下底、前記対向辺を上底とする略台形状である。
【0014】
この実施態様によれば、樹脂フィルムの断面形状が、接合面に対応する接合辺を下底、表面に対応する対向辺を上底とする略台形状であるので、樹脂フィルムの接合面の面積が、表面の面積に比べて広く、樹脂フィルムの表面は、接合面よりも外方へ張出すことなく、内方に収まっている。
【0015】
これによって、熱収縮等による応力が、樹脂フィルムの外方から内方へ作用したときに、樹脂フィルムが、その表面の端縁から剥離するのを抑制することができる。
【0016】
(3)本発明の一実施態様では、前記樹脂フィルムは、感光性樹脂フィルムである。
【0017】
この実施態様によれば、感光性樹脂フィルムを露光現像して不要部分を除去してパターニングを行うが、感光性樹脂フィルムの厚さ及び露光装置等の選択によって、樹脂フィルムの断面形状において、圧電振動板に接合されている接合辺と該接合辺に対向する対向辺の一端同士を結ぶ仮想直線が、前記接合辺との間で成す角が、鋭角となるように形成することができる。
【0018】
(4)本発明の他の実施態様では、前記圧電振動板は、前記両主面に前記第1,第2励振電極がそれぞれ形成された振動部と、前記振動部を囲む外枠部とを有し、前記振動部は、前記外枠部より薄肉であり、前記樹脂フィルムは、その周端部が前記外枠部の両主面の少なくとも一方の主面に接合されている。
【0019】
この実施態様によれば、封止部材である感光性樹脂フィルムは、薄肉の振動部を囲む厚肉の外枠部の主面に接合されるので、樹脂フィルムが、薄肉の振動部に接触することなく、該振動部の励振電極を封止することができる。
【0020】
(5)本発明の更に他の実施態様では、前記圧電振動板が、水晶振動板であり、前記樹脂フィルムの前記水晶振動板に接合される接合領域の一部は、前記水晶振動板の水晶の素地部分に接合している。
【0021】
樹脂フィルムを、水晶振動板上に形成された配線パターンを構成する金属膜に接合した場合には、樹脂フィルムを透過した水分によって金属膜が劣化する虞があるが、この実施態様によれば、樹脂フィルムの一部は、水晶振動板の水晶の素地部分に接合されるので、金属膜のような水分による劣化を抑制することができる。
【0022】
(6)本発明の圧電振動デバイスの製造方法は、両主面に第1,第2励振電極がそれぞれ形成された圧電振動板の複数が配列支持された圧電ウェハを準備する工程と、前記圧電ウェハの両主面の少なくともいずれか一方の主面に、ネガ型の感光性樹脂フィルムを貼り付ける工程と、前記圧電ウェハに貼り付けられた前記感光性樹脂フィルムを露光及び現像して、前記圧電ウェハの圧電振動板の前記第1,第2励振電極の少なくともいずれか一方の励振電極を覆うように、前記感光性樹脂フィルムをパターニングする工程と、前記感光性樹脂フィルムがパターニングされた前記圧電ウェハの前記圧電振動板を個片化する工程とを備える。
【0023】
本発明に係る圧電振動デバイスの製造方法によれば、両主面に第1,第2励振電極がそれぞれ形成された圧電振動板の複数が配列支持された圧電ウェハに、感光性樹脂フィルムを貼り付け、感光性樹脂フィルムを露光及び現像して、圧電ウェハの圧電振動板の第1,第2励振電極の少なくともいずれか一方の励振電極を覆うようにパターニングするが、このパターニングの際に、感光性樹脂フィルムの厚さ及び露光装置等を選択して、樹脂フィルムの断面形状において、圧電振動板に接合されている接合辺と該接合辺に対向する対向辺の一端同士を結ぶ仮想直線が、接合辺との間で成す角が、鋭角となるように形成することができる。
【0024】
また、パターニングによって、圧電振動板に貼り付けられた感光性樹脂フィルムの不要部分を除去することができるので、例えば、レーザー光によって、樹脂フィルムの不要部分を切断除去する場合のように、樹脂フィルムと共に、圧電振動板の配線パターンを切断して、導通不良が生じるといったことがない。
【0025】
また、圧電ウェハに、感光性樹脂フィルムを貼り付ける工程では、圧電ウェハに対して、その全面を覆うように感光性樹脂フィルムを貼り付ければよく、位置合わせの必要がないので、効率的に貼り付けることができる。
【0026】
更に、圧電ウェハの両主面の少なくとも一方の主面に形成された励振電極を感光性樹脂フィルムによって覆うので、金属製やセラミック製の蓋体によって励振電極を覆う構成に比べて、コストを低減することができる。
【0027】
(7)本発明の他の実施態様では、前記圧電ウェハを準備する前記工程における前記圧電振動板は、水晶振動板であり、前記感光性樹脂フィルムを貼り付ける前記工程では、前記感光性樹脂フィルムの一部が、前記水晶振動板の水晶の素地部分に貼り付けられる。
【0028】
感光性樹脂フィルムを、水晶振動板に形成された配線パターンを構成する金属膜に貼り付けて露光現像した場合には、露光現像した感光性樹脂フィルムを透過した水分によって金属膜が劣化する虞があるが、この実施態様によれば、感光性樹脂フィルムの一部は、水晶振動板の水晶の素地部分に貼り付けられて露光現像されるので、金属膜に比べて水分による劣化を抑制することができる。また、感光性樹脂フィルムは、水晶の素地部分に貼り付けて露光現像した方が、金属膜に貼り付けて露光現像した場合に比べて、接合強度が向上する。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る圧電振動デバイスによれば、両主面に第1,第2励振電極が形成された圧電振動板の前記第1,第2励振電極を覆うように、第1,第2封止部材を接合して封止するので、従来のように、上面が開口した箱形のベース内に圧電振動片を収納搭載して封止する必要がなく、高価なベースが不要になる。
【0030】
また、第1,第2封止部材の少なくとも一方の封止部材を、樹脂フィルムで構成しているので、両封止部材を、金属製やセラミック製の蓋体で構成するのに比べて、コストを低減することができる。
【0031】
更に、樹脂フィルムの断面形状において、圧電振動板に接合されている側の接合辺と、この接合辺に対向する、すなわち、表面側の対向辺との一端同士を結ぶ仮想直線が、接合辺と成す角が鋭角であるので、接合辺に比べて表面側の対向辺の長さは短く、樹脂フィルムは、接合面の面積が表面の面積に比べて大きい。すなわち、樹脂フィルムの表面は、接合面よりも外方へ張出すことはなく、接合面の内方に収まっているので、樹脂フィルムの表面が、接合面よりも広く、外方へ張出している場合に比べて、熱収縮等による応力が、樹脂フィルムの外方から内方へ作用したときに、樹脂フィルムの表面の端縁から剥離するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係る水晶振動子の概略斜視図である。
【
図5】
図5は参考例としての水晶振動子の
図3に対応する概略断面図である。
【
図6】
図6は
図1の水晶振動子の製造工程を模式的に示す概略断面図である。
【
図7】
図7は
図1の水晶振動子の製造工程を模式的に示す概略断面図である。
【
図8】
図8は水晶ウェハの一例の概略平面図である。
【
図10】
図10は本発明の他の実施形態に係る水晶振動子の
図3に対応する概略断面図である。
【
図11】
図11は本発明の他の実施形態に係る水晶振動子を構成する水晶振動板の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この実施形態では、圧電振動デバイスとして水晶振動子に適用して説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係る水晶振動子の概略斜視図であり、
図2は、その概略平面図であり、
図3は、
図2のA-A線に沿う概略断面図であり、
図4は、その概略底面図である。なお、
図3及び後述の
図5~
図7では、説明の便宜上、金属膜や樹脂フィルムの厚みを誇張して示している。また、
図3,
図5では、樹脂フィルムの端面を誇張して示している。
【0035】
この実施形態の水晶振動子1は、ATカットの水晶振動板2と、この水晶振動板2の表裏の両主面の一方の主面側を覆って封止する第1封止部材としての、第1感光性樹脂フィルムを露光現像した第1樹脂フィルム3と、水晶振動板2の他方の主面側を覆って封止する第2封止部材としての、第2感光性樹脂フィルムを露光現像した第2樹脂フィルム4とを備えている。
【0036】
この水晶振動子1は、直方体状であって、平面視矩形である。この実施形態の水晶振動子1は、平面視で、例えば、1.2mm×1.0mmで、厚みは0.2mmであり、小型化及び低背化を図っている。
【0037】
なお、水晶振動子1のサイズは、上記に限定されるものではなく、これとは異なるサイズであっても適用可能である。
【0038】
次に、水晶振動子1を構成する水晶振動板2及び第1,第2樹脂フィルム3,4の各構成について説明する。
【0039】
この実施形態の水晶振動板2は、矩形の水晶板を水晶の結晶軸であるX軸の周りに35°15´回転させて加工したATカットの水晶板であり、回転した新たな軸をY´軸及びZ´軸という。ATカット水晶板では、その表裏の両主面が、XZ´平面である。
【0040】
このXZ´平面において、平面視矩形の水晶振動板2の短辺方向(
図2,
図4の上下方向)がX軸方向となり、水晶振動板2の長辺方向(
図2,
図4の左右方向)がZ´軸方向となる。水晶振動板2の長辺方向(Z´軸方向)は、平面視矩形の水晶振動板2の二組の対向辺の内の一方の組の対向辺に沿う方向であり、水晶振動板2の短辺方向(X軸方向)は、前記方向に直交する方向である。
【0041】
この水晶振動板2は、平面視が略矩形の振動部21と、この振動部21の周囲を、貫通部22を挟んで取り囲む外枠部23と、振動部21と外枠部23とを連結する連結部24とを備えている。振動部21、外枠部23及び連結部24は、一体的に形成されている。振動部21及び連結部24は、外枠部23に比べて薄く形成されている。すなわち、振動部21は、外枠部23に比べて薄肉である。この薄肉の振動部21を覆うように、第1,第2樹脂フィルム3,4の周端部を、外枠部23に接合することによって、内部空間が形成されて封止される。
【0042】
この実施形態では、平面視が略矩形の振動部21を、その一つの角部に設けた一箇所の連結部24によって外枠部23に連結しているので、2箇所以上で連結する構成に比べて、振動部21に作用する応力を低減することができる。
【0043】
また、この実施形態では、連結部24は、外枠部23の内周のうちX軸方向に沿う一辺から突出し、かつ、Z´軸方向に沿って形成されている。水晶振動板2のZ´軸方向の両端部に形成された第1,第2金属膜27,28は、実装端子として使用され、半田等によって回路基板等に直接接合される。このため、水晶振動子の長辺方向(Z´軸方向)に収縮応力が働き、当該応力が振動部に伝搬することにより水晶振動子の発振周波数が変化し易くなることが考えられる。
【0044】
これに対して、この実施形態では、前記収縮応力に沿う方向に連結部24が形成されているため、当該収縮応力が振動部21に伝搬するのを抑制することができる。その結果、水晶振動子1を回路基板に実装した際の発振周波数の変化を抑制することができる。
【0045】
なお、振動部21と外枠部23との間の貫通部22を省略し、薄肉の振動部21を囲むように外枠部23を、振動部21に連設してもよい。
【0046】
振動部21の表裏の両主面には、一対の第1,第2励振電極25,26がそれぞれ形成されている。平面視矩形の水晶振動板2の長辺方向の両端部の外枠部23には、第1,第2励振電極25,26にそれぞれ電気的に接続された第1,第2金属膜27,28が、水晶振動板2の短辺方向に沿ってそれぞれ形成されている。
【0047】
このように第1,第2金属膜27,28は、水晶振動板2の長辺方向の両端部に、振動部21を挟んで形成されている。この実施形態では、各金属膜27,28は、上記のように、当該水晶振動子1を回路基板等に実装するための実装端子として使用される。
【0048】
両主面の一方の主面では、
図2に示されるように、第1金属膜27は、後述の矩形環状の第1封止パターン201に連設され、他方の主面では、
図4に示されるように、第2金属膜28は、後述の矩形環状の第2封止パターン202に連設されている。
【0049】
水晶振動板2の両主面の第1金属膜27同士、及び、第2金属膜28同士はそれぞれ電気的に接続されている。この実施形態では、両主面の第1金属膜27同士及び第2金属膜28同士は、水晶振動板2の対向する長辺側の側面を引き回された引き回し電極でそれぞれ電気的に接続されると共に、水晶振動板2の対向する短辺側の側面を引き回された引き回し電極でそれぞれ電気的に接続されている。
【0050】
なお、両主面の第1金属膜27同士及び第2金属膜28同士は、両主面を貫通する貫通電極を介して電気的に接続されるようにしてもよく、あるいは、側面の引き回し電極を介して電気的に接続されると共に、貫通電極を介して電気的に接続されるようにしてもよい。
【0051】
水晶振動板2の表面側には、
図2に示されるように、第1樹脂フィルム3が接合される第1封止パターン201が、略矩形の振動部21を取り囲むように矩形環状に形成されている。この第1封止パターン201は、第1金属膜27に連なる接続部201aと、この接続部201aの両端部から水晶振動板2の長辺方向(Z´軸方向)に沿ってそれぞれ延出する第1延出部201b,201bと、水晶振動板2の短辺方向(X軸方向)に沿って延出して前記各第1延出部201b,201bの延出端を接続する第2延出部201cとを備えている。第2延出部201cは、第1励振電極25から引出された第1引出し電極203に接続されている。したがって、第1金属膜27は、第1引出し電極203及び第1封止パターン201を介して第1励振電極25に電気的に接続されている。水晶振動板2の短辺方向に沿って延出する第2延出部201cと第2金属膜28との間には、電極が形成されていない無電極領域が設けられて、第1封止パターン201と第2金属膜28との絶縁が図られている。
【0052】
水晶振動板2の裏面側には、
図4に示されるように、第2樹脂フィルム4が接合される第2封止パターン202が、略矩形の振動部21を取り囲むように矩形環状に形成されている。この第2封止パターン202は、第2金属膜28に連なる接続部202aと、この接続部202aの両端部から水晶振動板2の長辺方向に沿ってそれぞれ延出する第1延出部202b,202bと、水晶振動板2の短辺方向に沿って延出して、前記各第1延出部202b,202bの延出端を接続する第2延出部202cとを備えている。接続部202aは、第2励振電極26から引出された第2引出し電極204に接続されている。したがって、第2金属膜28は、第2引出し電極204及び第2封止パターン202の接続部202aを介して第2励振電極26に電気的に接続されている。水晶振動板2の短辺方向に沿って延出する第2延出部202cと第1金属膜27との間には、電極が形成されていない無電極領域が設けられて、第2封止パターン202と第1金属膜27との絶縁が図られている。
【0053】
図2に示されるように、第1封止パターン201の、水晶振動板2の長辺方向に沿ってそれぞれ延出する第1延出部201b,201bの幅は、前記長辺方向に沿って延びる外枠部23の幅より狭く、第1延出部201b,201bの幅方向(
図2の上下方向)の両側には、電極が形成されていない無電極領域が設けられている。
【0054】
この第1延出部201b,201bの両側の無電極領域の内、外側の無電極領域は、第1金属膜27まで延びていると共に、第2金属膜28と第2延出部201cとの間の無電極領域に連なっている。これによって、第1封止パターン201の接続部201a、第1延出部201b,201b、及び、第2延出部201cの外側は、略等しい幅の無電極領域によって囲まれている。この無電極領域は、水晶振動板2の短辺方向に沿って延びる接続部201aの一端の外側から一方の第1延出部201bに沿って延出し、その延出端から第2延出部201cに沿って延出し、その延出端から他方の第1延出部201bに沿って接続部201aの他端の外側まで延出している。
【0055】
第1封止パターン201の接続部201aの幅方向の内側には、無電極領域が形成されており、この無電極領域は、第1延出部201b,201bの内側の無電極領域に連なっている。第2延出部201cの幅方向の内側には、連結部24の第1引出し電極203を除いて無電極領域が形成されており、この無電極領域は、第1延出部201b,201bの内側の無電極領域に連なっている。これによって、第1封止パターン201の接続部201a、第1延出部201b,201b、及び、第2延出部201cの幅方向の内側は、連結部24の第1引出し電極203を除いて平面視で矩形環状の無電極領域となっている。
【0056】
図4に示されるように、第2封止パターン202の、水晶振動板2の長辺方向に沿ってそれぞれ延出する第1延出部202b,202bの幅は、前記長辺方向に沿って延びる外枠部23の幅より狭く、第1延出部202b,202bの幅方向(
図4の上下方向)の両側には、電極が形成されていない無電極領域が設けられている。
【0057】
この第1延出部202b,202bの両側の無電極領域の内、外側の無電極領域は、第2金属膜28まで延びていると共に、第1金属膜27と第2延出部202cとの間の無電極領域に連なっている。これによって、第2封止パターン202の接続部202a、第1延出部202b,202b、及び、第2延出部202cの外側は、略等しい幅の無電極領域によって囲まれている。この無電極領域は、水晶振動板2の短辺方向に沿って延びる接続部202aの一端の外側から一方の第1延出部202bに沿って延出し、その延出端から第2延出部202cに沿って延出し、その延出端から他方の第1延出部202bに沿って接続部202aの他端の外側まで延出している。
【0058】
第2封止パターン202の接続部202aの幅方向の内側には、連結部24の第2引出し電極204を除いて無電極領域が形成されており、この無電極領域は、第1延出部202b,202bの内側の無電極領域に連なっている。第2延出部202cの幅方向の内側には、無電極領域が形成されており、この無電極領域は、第1延出部202b,202bの内側の無電極領域に連なっている。これによって、第2封止パターン202の接続部202a、第1延出部202b,202b、及び、第2延出部202cの幅方向の内側は、連結部24の第2引出し電極204を除いて平面視で矩形環状の無電極領域となっている。
【0059】
上記のように第1,第2封止パターン201,202の第1延出部201b,201b;202b,202bを、外枠部23の幅よりも狭くし、第1延出部201b,201b;202b,202bの幅方向の両側には、無電極領域を設けていると共に、接続部201a,202a及び第2延出部201c,202cの幅方向の内側には、無電極領域を設けている。前記無電極領域は、スパッタリング時に外枠部23の側面に回り込んだ第1,第2封止パターン201,202を、フォトリソグラフィー技術によりパターニングし、これをメタルエッチングで除去することによって形成される。これにより、第1,第2封止パターン201,202が、外枠部23の側面に回り込むことによる短絡を防止することができる。
【0060】
上記のように、両主面の第1金属膜27同士及び第2金属膜28同士は、電気的にそれぞれ接続されているので、当該水晶振動子1を、第1,第2金属膜27,28を第1,第2実装端子として回路基板等に実装する際に、表裏の両主面のいずれの面でも実装することができる。
【0061】
水晶振動板2の表裏面にそれぞれ接合されて、水晶振動板2の振動部21を封止する第1,第2樹脂フィルム3,4は、矩形のフィルムである。この矩形の第1,第2樹脂フィルム3,4は、水晶振動板2の長手方向の両端部の第1,第2金属膜27,28を除く矩形の領域を覆うサイズであり、振動部21及びその周囲の前記矩形の領域を覆うように水晶振動板2の外枠部23に接合されている。
【0062】
この実施形態では、第1,第2樹脂フィルム3,4は、感光性樹脂フィルム、例えば、感光性ポリイミドフィルムを後述のように露光現像してパターニングにし、硬化させたものである。
【0063】
露光現像されて硬化された感光性ポリイミドフィルムは、300℃以上の耐熱性を有するので、当該水晶振動子1を実装するための半田リフロー処理の際に第1,第2樹脂フィルム3,4が変形等することがない。
【0064】
この実施形態の第1,第2樹脂フィルム3,4は、透明であるが、半透明あるいは不透明であってもよい。
【0065】
この実施形態では、第1,第2樹脂フィルム3,4の厚さは、かなり厚く、例えば、約40μmである。
【0066】
このように厚さの厚い樹脂フィルムを、光照射された部分が残るネガ型の感光性樹脂フィルムを用いて、平行光を照射する露光装置、例えば、プロジェクション方式の露光装置で平行光を照射すると、樹脂フィルムの表面側は、十分に露光されるのに対して、厚み方向に進むにつれて、露光量が少なくなる。
【0067】
このため、光照射された部分が残るネガ型の感光性樹脂フィルムでは、露光が多い表面側は樹脂フィルムが十分に残るのに対して、厚み方向に進むにつれて、露光量が減少するために、樹脂フィルムが残る量が少なくなる。
【0068】
図5は、光照射された部分が残るネガ型の感光性樹脂フィルムを用いて、平行光を照射して露光し、現像、硬化させた第1,第2樹脂フィルム3r,4rを有する参考例の水晶振動子1rの
図3に対応する概略断面図である。
【0069】
この
図5に示されるように、露光量が多い表面側は第1,第2樹脂フィルム3r,4rが十分に残るのに対して、厚み方向に進むにつれて、露光量が減少し、第1,第2樹脂フィルム3r,4rが残る量が少なくなっている。すなわち、第1,第2樹脂フィルム3r,4rは、表面の面積が、水晶振動子2に接合される側の面である接合面の面積に比べて大きく、接合面側から表面側へ向かって徐々に面積が大きくなる。このため、第1,第2樹脂フィルム3r,4rの表面は、接合面よりも外方へ張出している。
【0070】
このように第1,第2樹脂フィルム3r,4rの表面が、接合面よりも広く、外方へ張出していると、表面の端縁には、その直下(水晶振動板2側)に接合面が存在しないために、熱収縮等によって、第1,第2樹脂フィルム3r,4rの外方から内方へ向かう応力Fが作用すると、外方へ張出している表面の端縁から剥離し易くなる。
【0071】
この実施形態では、
図3に示されるように、第1,第2樹脂フィルム3,4の断面形状は、水晶振動板2に接合されている側の接合辺3s1,4s1とこの接合辺3s1,4s1に対向する表面側の対向辺3s2,4s2の一端同士を結ぶ仮想直線VLが、前記接合辺3s1,4s1との間で成す角θが、鋭角である。この例では、仮想直線VLは、実際に接合辺3s1,4s1と対向辺3s2,4s2の一端同士を結ぶ線に略一致している。
【0072】
上記のように、水晶振動板2に接合されている側の接合辺3s1,4s1と、この接合辺3s1,4s1に対向する表面側の対向辺3s2,4s2との一端同士を結ぶ仮想直線VLが、接合辺3s1,4s1と成す角θが鋭角であるので、接合辺3s1,4s1に比べて対向辺3s2,4s2の長さは短い。したがって、第1,第2樹脂フィルム3,4は、接合面の面積が表面の面積に比べて大きく、接合面側から表面側へ向かって徐々に面積が小さくなる。すなわち、第1,第2樹脂フィルム3,4の表面は、接合面よりも外方へ張出すことはなく、接合面の内方に収まっている。
【0073】
これによって、
図5に示されるように、第1,第2樹脂フィルム3r,4rの表面が、接合面よりも広く、外方へ張出している場合に比べて、熱収縮等による応力Fが、第1,第2樹脂フィルム3,4の外方から内方へ作用したときに、第1,第2樹脂フィルム3,4の表面の端縁から剥離するのを抑制することができる。
【0074】
この実施形態では、第1,第2樹脂フィルム3,4の断面形状は、接合辺3s1,4s1と、対向辺3s2,4s2とが略平行であり、接合辺3s1,4s1を下底とし、対向辺3s2,4s2を上底とする略台形状である。
【0075】
この実施形態では、第1,第2樹脂フィルム3,4の厚さは、上記のように約40μmであるが、この厚さは、20μm以上100μm以下であるのが好ましい。厚さが20μm未満では、第1,第2樹脂フィルム3,4の表面が、接合面よりも外方へ張出すことがあり、逆に厚さが100μmを超えると、厚過ぎて露光が不完全になる。
【0076】
水晶振動板2の第1,第2励振電極25,26、第1,第2金属膜27,28,第1,第2封止パターン201,202、及び、第1,第2引出し電極203,204は、例えば、TiまたはCrからなる下地層上に、例えば、Auが積層され、更に、例えば、Ti、CrまたはNiが積層形成されて構成されている。
【0077】
この実施形態では、下地層はTiであり、その上に、Au、Tiが積層形成されている。このように最上層がTiであることによって、Auが最上層である場合に比べて、感光性ポリイミドフィルムとの接合強度が向上する。
【0078】
矩形の第1,第2樹脂フィルム3,4が接合される矩形環状の第1,第2封止パターン201,202の上層は、上記のように、Ti、CrまたはNi(またはこれらの酸化物)から構成されるので、Au等に比べて、第1,第2樹脂フィルム3,4との接合強度を高めることができる。
【0079】
次に、この実施形態の水晶振動子1の製造方法について説明する。
【0080】
図6及び
図7は、水晶振動子1を製造する工程を模式的に示す概略断面図である。
【0081】
先ず、
図6(a)に示される加工前の水晶板(ATカット水晶板)5に対して、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、例えば、ウェットエッチングを行って、
図6(b)に示すように、複数の水晶振動板部分2a及びそれらを支持するフレーム部(図示せず)等の各部分の外形を形成し、更に、水晶振動板部分2aに、外枠部分23a及び外枠部分23aよりも薄肉の振動部分21a等の各部の外形を形成する。すなわち、外形及び振動部の加工工程を実施する。
【0082】
次に、
図6(c)に示すように、スパッタリング技術または蒸着技術、及び、フォトリソグラフィー技術によって、水晶振動板部分2aの所定の位置に、第1,第2励振電極25a,26a及び第1,第2金属膜27a,28a等を形成する、電極形成工程を実施する。
【0083】
このようにして両主面に第1,第2励振電極25a,26aが形成されると共に、第1,第2金属膜27a,28aが形成された水晶振動板部分2aの複数がマトリックス状に配列支持された水晶ウェハ5aを準備する。
【0084】
図8は、
図6(c)の水晶ウェハ5aの一例を示す概略平面図であり、
図9は、その一部を拡大して示す概略平面図である。
【0085】
水晶ウェハ5aは、第1,第2励振電極25a,26aが形成された振動部分21a及び第1,第2金属膜27a,28a等が形成された複数の水晶振動板部分2aが、マトリックス状に配列されて連結部8を介してフレーム部9に支持されて構成されている。各水晶振動板部分2aの周囲は、前記連結部8を除いて貫通部15となっている。
【0086】
次に、水晶ウェハ5aの両主面の全面に、
図6(d)に示すように、ネガ型の感光性ポリイミドフィルム3a,4aを貼り付ける、すなわち、ラミネートする。この水晶ウェハ5aに対する感光性ポリイミドフィルム3a,4aのラミネートは、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行われる。このラミネートは、不活性ガス雰囲気中に限らず、大気中や減圧雰囲気中で行ってもよい。
【0087】
この実施形態では、ラミネートは、例えば、ロール状にそれぞれ巻回されている感光性ポリイミドフィルム3a,4aをそれぞれ引出し、引出された各感光性ポリイミドフィルム3a,4a間に、上記
図8に示される水晶ウェハ5aを挟むようにして加熱ローラで加圧し、水晶ウェハ5aの両主面の全面にネガ型の感光性ポリイミドフィルム3a,4aをそれぞれ貼り付ける。このように感光性ポリイミドフィルム3a,4aは、水晶ウェハ5aの全面に貼り付ければよいので、位置合わせをする必要がなく、効率的にラミネートすることができる。なお、ラミネートは、ロール式に限らず、枚葉式であってもよい。
【0088】
次に、
図7(e)に示すように、フォトマスク11を介して水晶ウェハ5aの両主面に貼り付けられたネガ型の感光性ポリイミドフィルム3a,4aをそれぞれ露光する。この露光は、平行光ではなく、拡散光を照射する露光装置、例えば、プロキシミティ方式の露光装置を用いて露光する。
【0089】
この露光では、第1,第2励振電極25a,26aが形成された振動部分21a及びその周囲の矩形の領域が露光部分となり、前記矩形の領域以外の、第1,第2金属膜27,28を含む領域が、未露光部分となるように露光する。
【0090】
また、この露光では、拡散光が、フォトマスク11を介してネガ型の感光性ポリイミドフィルム3a,4aに照射されるので、拡散光の広がりによって、感光性ポリイミドフィルム3a,4aの厚み方向に進むにつれて、露光量が多くなる。
【0091】
このため、光照射された部分(露光部分)が残るネガ型の感光性ポリイミドフィルム3a,4aでは、厚み方向に進むにつれて、感光性ポリイミドフィルム3a,4aの残る量が多くなる。
【0092】
その後、現像を行って未露光部分を現像液に溶解除去し、
図7(f)に示すように、各水晶振動板部分2aの第1,第2励振電極25a,26aが形成されている振動部分21a及びその周囲の矩形の領域を覆う露光部分のみを残すと共に、上記のように断面形状が略台形状となるように樹脂フィルム3,4をパターニングする。
【0093】
更に、300℃程度で加熱して樹脂フィルム3,4を熱硬化させ、
図7(g)に示すように、水晶ウェハ5から各水晶振動板部分2aを折り取って個片化する。
【0094】
以上のようにして、
図1に示される水晶振動子1が複数得られる。
【0095】
本実施形態によれば、上記
図3に示されるように、水晶振動板2に接合されている側の接合辺3s1,4s1と、この接合辺3s1,4s1に対向する表面側の対向辺3s2,4s2との一端同士を結ぶ仮想直線VLが、接合辺3s1,4s1と成す角θが鋭角であるので、第1,第2樹脂フィルム3,4は、その接合面の面積が表面の面積に比べて大きく、第1,第2樹脂フィルム3,4の表面は、接合面よりも外方へ張出すことはなく、接合面の内方に収まっている。
【0096】
これによって、上記
図5に示されるように、第1,第2樹脂フィルム3r,4rの表面が、接合面よりも広く、外方へ張出している場合に比べて、熱収縮等による応力Fが、第1,第2樹脂フィルム3,4の外方から内方へ作用したときに、第1,第2樹脂フィルム3,4の表面の端縁から剥離するのを抑制することができる。
【0097】
また、本実施形態では、第1,第2樹脂フィルム3,4は、感光性樹脂フィルムを露光現像した樹脂フィルムであるので、水晶振動板2に貼り付けた感光性樹脂フィルムを、露光現像して不要部分を除去するようにパターニングすることができる。このようにフォトリソグラフィー技術によって、水晶振動板2に貼り付けられた感光性樹脂フィルムの不要部分を除去できるので、例えば、レーザー光によって、水晶振動板に接合した樹脂フィルムの不要部分を切断除去する場合のように、樹脂フィルムと共に、水晶振動板2の配線パターンを切断して、導通不良が生じるといったことがない。
【0098】
更に、本実施形態によれば、水晶振動板2の表裏の両主面に、第1,第2樹脂フィルム3,4を接合して水晶振動子1を構成するので、セラミック等の絶縁材料からなる上面が開口した箱形のベースに、圧電振動片を収納搭載し、前記開口に蓋体を接合して、気密に封止する従来例のように、高価なベースや蓋体が不要となり、圧電振動片をベースに搭載する必要もない。
【0099】
これによって、水晶振動子1のコストを低減することができ、水晶振動子1を、安価に提供することができる。
【0100】
また、上面が開口した箱形のベースに、圧電振動片を収納搭載して蓋体で封止する従来例に比べて、薄型化(低背化)を図ることができる。
【0101】
本実施形態の水晶振動子1では、第1,第2樹脂フィルム3,4によって振動部21を封止しているので、ベースに金属製やセラミック製の蓋体を接合して気密に封止する従来例に比べて気密性が劣り、水晶振動子1の共振周波数の経年変化が生じ易い。
【0102】
しかし、例えば、近距離無線通信用途のうちBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)等では、周波数偏差等の規格が比較的緩やかであるので、かかる用途では、樹脂フィルムで封止した安価な水晶振動子1を使用することが可能である。
【0103】
上記実施形態では、接合辺3s1,4s1と対向辺3s2,4s2の一端同士を結ぶ実際の線は、仮想直線VLに略一致しているが、本発明の他の実施形態として、例えば、
図10に示す水晶振動子1
1のように、実際に接合辺3
1s1,4
1s1と対向辺3
1s2,4
1s2の一端同士を結ぶ線は、仮想直線VLに比べて内方へ湾曲した曲線状であってもよいし、あるいは、外方へ湾曲した曲線状であってもよい。
【0104】
上記実施形態では、水晶振動板2の両主面の一方の主面には、
図2に示すように、第1封止パターン201が、略矩形の振動部21を取り囲むように矩形環状に形成され、水晶振動板2の両主面の他方の主面には、
図4に示すように、第2封止パターン202が、略矩形の振動部21を取り囲むように矩形環状に形成されたが、矩形環状の第1,第2封止パターン201,202を省略してもよい。
【0105】
図11及び
図12は、第1,第2封止パターン201,202を省略した水晶振動板2
1の概略平面図及び概略底面図である。
【0106】
この水晶振動板2
1では、第1金属膜27は、
図11に示されるように、引き回し電極209及び第1引出し電極203を介して第1励振電極25に電気的に接続されている。
【0107】
第2金属膜28は、
図12に示されるように、第2引出し電極204が延長されて第2励振電極26に電気的に接続されている。
【0108】
その他の構成は、上記実施形態と同様である。
【0109】
この実施形態では、矩形環状の第1,第2封止パターン201,202を省略しているので、感光性ポリイミドフィルム3a,4aは、その大部分が水晶振動板21の水晶の素地部分14に貼り付けられて、露光現像、及び、硬化されことになる。
【0110】
感光性ポリイミドフィルム3a,4aの大部分を、金属膜からなる第1,第2封止パターン201,202に貼り付けて、露光現像、及び、硬化する上記実施形態では、第1,第2樹脂フィルム3,4を透過した水分が、金属膜からなる第1,第2封止パターン201,202を劣化させて第1,第2樹脂フィルム3,4との密着力が低下する虞がある。
【0111】
これに対して、感光性ポリイミドフィルム3a,4aを、水晶振動板21の水晶の素地部分14に貼り付けて、露光現像、及び、硬化させる本実施形態によれば、金属膜のような水分による劣化を抑制することができる。また、感光性ポリイミドフィルム3a,4aは、水晶の素地部分14に貼り付けて露光現像した方が、金属膜からなる第1,第2封止パターン201,202に貼り付けて露光現像した場合に比べて、接合強度が向上する。
【0112】
上記各実施形態では、水晶振動板2,21の第1,第2金属膜27,28は、上記のように当該水晶振動子1を、回路基板等に実装するための実装端子としての機能を有している。本発明の他の実施形態として、第1,第2実装端子を、第1,第2金属膜27,28とは別に形成し、第1,第2金属膜27,28を、第1,第2実装端子と第1,第2励振電極25,26とを電気的に接続する接続電極として機能させてもよい。
【0113】
このように第1,第2金属膜27,28を、第1,第2実装端子と第1,第2励振電極25,26とを電気的に接続する接続電極として機能させた実施形態を
図13及び
図14に示す。
【0114】
この
図13及び
図14は、上記
図1及び
図3にそれぞれ対応する水晶振動子1
2の概略斜視図及び概略断面図である。なお、
図14では、金属膜の形成領域を明確にするために金属膜を誇張して示し、また、樹脂フィルムの端面を誇張して示している。
【0115】
この実施形態の水晶振動子12の外形サイズは、上記各実施形態の水晶振動子1の外形サイズと同じである。
【0116】
この実施形態の水晶振動子12の水晶振動板22は、上記各実施形態と同様に、第1,第2励振電極252,262が形成された振動部212と、この振動部212の周囲を、貫通部222を挟んで取り囲む外枠部232と、振動部212と外枠部232とを連結する連結部242とを備えている。
【0117】
この実施形態では、第1,第2樹脂フィルム32,42は、水晶振動板22の第1,第2励振電極252,262が形成された振動部212及びその周囲の矩形の領域だけではなく、水晶振動板22の両主面の全面をそれぞれ覆うように接合されている。すなわち、第1,第2樹脂フィルム32,42のサイズは、上記各実施形態の第1,第2樹脂フィルム3,4;31,41のサイズに比べて大きく、水晶振動板22と同じサイズである。
【0118】
したがって、
図14に示すように、水晶振動板2
2に形成されている第1,第2金属膜27
2,28
2の内、両主面に形成されている部分は、第1,第2樹脂フィルム3
2,4
2で覆われている。
【0119】
この実施形態では、両主面の全面に第1,第2樹脂フィルム32,42がそれぞれ接合された水晶振動板22の長辺方向の両端部に、第1,第2樹脂フィルム32,42及び水晶振動板22の外表面の略全面を覆うように導電性ペーストを塗布して熱硬化させて第1,第2実装端子17,18を形成している。
【0120】
第1金属膜272は、上記各実施形態と同様に、水晶振動板22の長辺方向の両端部の一方の端部の、対向する長辺側の各側面及び対向する短辺側の一方の側面に亘って形成されている。第1実装端子17は、この第1金属膜272上に形成されているので、第1実装端子17は、第1金属膜272に電気的に接続される。第1金属膜272は、上記各実施形態と同様に、第1励振電極252に電気的に接続されているので、この第1金属膜272は、第1励振電極252と第1実装端子17とを電気的に接続する接続電極として機能する。
【0121】
同様に、第2金属膜282は、水晶振動板22の長辺方向の両端部の他方の端部の、対向する長辺側の各側面及び対向する短辺側の他方の側面に亘って形成されている。第2実装端子18は、この第2金属膜282上に形成されているので、第2実装端子18は、第2金属膜282に電気的に接続される。第2金属膜282は、第2励振電極262に電気的に接続されているので、この第2金属膜282は、第2励振電極262と第2実装端子18とを電気的に接続する接続電極として機能する。
【0122】
この実施形態では、第1,第2実装端子17,18を、水晶振動板2
2に接合された第1,第2樹脂フィルム3
2,4
2の外表面に形成するので、上記各実施形態のような、水晶振動板2,2
1に形成された第1,第2金属膜27,28を第1,第2実装端子とする構成に比べて、
図3及び
図14に示されるように、水晶振動板2
2に形成する第1,第2金属膜27
2,28
2のサイズを小さくすることができ、その分、第1,第2金属膜27
2,28
2に挟まれた振動部21
2のサイズを大きくすることができる。
【0123】
これによって、水晶振動子11自体のサイズを大きくすることなく、振動部212を、水晶振動板22の長辺方向に沿って長くして振動特性を向上させることができると共に、当該水晶振動子12の実装に必要な第1,第2実装端子17,18の接合領域を確保することができる。
【0124】
上記各実施形態では、連結部24,241,242は平面視が略矩形の振動部21,212の一つの角部に一箇所、設けられていたが、連結部24,241,242の形成位置や形成数はこの限りではない。さらに連結部24,241,242の幅は一定でなくてもよい。
【0125】
また、貫通部を有することなく、振動部を薄く、その周辺部を厚くした逆メサ型の水晶振動板に適用してもよい。
【0126】
上記各実施形態では、水晶振動板2,21,22の両主面に、第1,第2樹脂フィルム3,4;31,41;32,42をそれぞれ接合して、振動部21,212を封止したが、水晶振動板2,21,22の一方の主面のみに樹脂フィルムを接合し、他方の主面には、従来の蓋体を接合して振動部21,212を封止してもよい。
【0127】
上記実施形態では、ネガ型の感光性樹脂フィルムを使用して、拡散光を照射する露光装置によって露光したが、本発明の他の実施形態として、ポジ型の感光性樹脂フィルムを使用して、平行光を照射する露光装置によって露光してもよい。
【0128】
水晶振動板は、平面視略矩形であればよく、上記のような平面視矩形に限らず、例えば、水晶振動板の角部を面取りした形状、あるいは、水晶振動板の周縁部を厚み方向に切欠き、切欠き部に電極が被着されてなるキャスタレーション等が形成された形状であってもよい。
【0129】
本発明は、水晶振動子等の圧電振動子に限らず、圧電発振器等の他の圧電振動デバイスに適用してもよい。
【符号の説明】
【0130】
1,11,12 水晶振動子
2,21,22 水晶振動板
3,31,32 第1樹脂フィルム
4,41,42 第2樹脂フィルム
5 水晶板
5a 水晶ウェハ
17 第1実装端子
18 第2実装端子
21,212 振動部
22,222 貫通部
23,232 外枠部
24,242 連結部
25,252 第1励振電極
26,262 第2励振電極
27,272 第1金属膜
28,282 第2金属膜
201 第1封止パターン
202 第2封止パターン