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特開2022-38153溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体の製造方法及び製造装置
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  • 特開-溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体の製造方法及び製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038153
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/60 20060101AFI20220303BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20220303BHJP
   B29C 44/44 20060101ALI20220303BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20220303BHJP
【FI】
B29C44/60
B29C44/00 G
B29C44/44
B29K105:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142489
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】591209361
【氏名又は名称】DAISEN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細澤 孝晃
(72)【発明者】
【氏名】古味 正一
【テーマコード(参考)】
4F214
【Fターム(参考)】
4F214AA03
4F214AA13
4F214AA29
4F214AB02
4F214AC01
4F214AG20
4F214AJ08
4F214AK01
4F214AR06
4F214UA21
4F214UB01
4F214UC22
4F214UE06
4F214UH06
4F214UQ20
(57)【要約】
【課題】溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体を、効率よく製造することができ、成形体の形状が変更された場合にも容易に対応することができる技術を提供する。
【解決手段】本発明の溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体の製造方法は、発泡樹脂成形を行う凹型10を、熱風を吹き付けるか、溶融金属浴に浸漬することにより樹脂の溶融温度以上に加熱し、凹型10の内面に接する表皮層を溶融させた発泡樹脂成形体を得ることを特徴とする。熱風温度は例えば600℃、溶融金属浴の温度は例えば300℃である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂成形を行う凹型を、熱風を吹き付けるか、溶融金属浴に浸漬することにより樹脂の溶融温度以上に加熱し、凹型の内面に接する表皮層を溶融させた発泡樹脂成形体を得ることを特徴とする溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
発泡樹脂成形体を成形するための凹型および凸型と、熱風または溶融金属浴により凹型を樹脂の溶融温度以上に加熱する加熱手段とを備えたことを特徴とする溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体の製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡樹脂成形体は、凹型と凸型により形成されたキャビティに発泡剤を含む原料ビーズを充填し、加熱して原料ビーズを発泡させる方法で製造されている。その加熱源としては、これまで専ら蒸気(水蒸気)が使用されてきた。
【0003】
近年、発泡樹脂成形体の表皮層にソリッド部(非発泡部)を形成したいとの要求があり、特許文献1には同一のキャビティ内に表皮層形成用樹脂と発泡層形成用樹脂を2段階に充填し、非発泡の表面層を備えた発泡樹脂成形体を製造する方法が開示されている。しかしこのような2種類の原料を順次充填する方法は原料コストが高くなるうえ、充填工程が複雑となり、成形コストが嵩むという問題があった。
【0004】
そこで本発明者等は、単一原料から成形された発泡樹脂成形体の表面層を加熱して溶融させ、非発泡のソリッド層を形成する方法を検討している。しかし、原料ビーズを発泡させるに必要な温度領域は70℃から160℃程度でよいのに対して、溶融のためにはそれよりも高温の160℃から300℃付近までの温度領域が必要であり、従来使用されていた水蒸気による加熱では効率よく溶融できないことが判明した。
【0005】
また、凹型にヒータを組み込んで加熱し、発泡樹脂成形体の表面層を溶融させることも検討したが、成形品の形状が異なる毎に別の金型を用いる必要があるため、多数の金型にヒータを組み込むことは製造コストの上昇を招くという問題があった。しかもヒータによる加熱は凹型の全体を均等に加熱することが難しく、特に成形品の形状が変更されると凹型の三次元形状も変化するため、最適なヒータ配置を決定することは容易でないことが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-46011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体を、効率よく製造することができ、成形体の形状が変更された場合にも容易に対応することができる溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体の製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明の溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体の製造方法は、発泡樹脂成形を行う凹型を、熱風を吹き付けるか、溶融金属浴に浸漬することにより樹脂の溶融温度以上に加熱し、凹型の内面に接する表皮層を溶融させた発泡樹脂成形体を得ることを特徴とするものである。
【0009】
また上記の課題を解決するためになされた本発明の溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体の製造装置は、発泡樹脂成形体を成形するための凹型および凸型と、溶融金属浴又は熱風により凹型を樹脂の溶融温度以上に加熱するための加熱手段とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法及び製造装置によれば、発泡樹脂成形体を成形するための凹型を溶融金属浴に浸漬するか、熱風を吹き付けることにより樹脂の溶融温度以上に加熱し、凹型の内面に接する表面層を溶融させる。これらの加熱手段を用いることにより、凹型を160℃から300℃付近までの高温領域まで急速に昇温させることができ、溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体を、効率よく製造することができる。また、これらの加熱手段により凹型の外表面の広い範囲から受熱させることができ、凹型全体を均等に加熱できるうえ、凹型の三次元形状が変化しても支障なく加熱することができる。このため成形体の形状が変更された場合にも容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態における原料充填工程を示す説明図である。
図2】表皮層の溶融工程を示す説明図である。
図3】発泡工程を示す説明図である。
図4】冷却工程を示す説明図である。
図5】第2の実施形態における原料充填工程を示す説明図である。
図6】表皮層の溶融工程を示す説明図である。
図7】発泡工程を示す説明図である。
図8】冷却工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を説明するが、先ず図1を参照しつつ、第1の実施形態の装置構成を説明する。第1の実施形態は、加熱手段として熱風を用いたものである。
【0013】
図1において、10は下型である凹型、11は上型である凸型である。この実施形態ではこれらの金型の材質はアルミニウム合金であるが、耐熱性に優れた鉄、その他の金属を用いることもできる。凹型10は固定プレート12に支持されている。凸型11の上方には昇降する移動プレート13と裏板14があり、裏板14の下面にはマスターフレーム15が固定されている。図示されるように、凸型11の上端はこのマスターフレーム15に固定されており、移動プレート13によって凹型10に対して昇降可能となっている。
【0014】
凸型11の上部チャンバー16には、マスターフレーム15を貫通する用役流路17を通じて、蒸気、冷却水、冷却空気等を供給することができ、また真空引きや排水を行うこともできるようになっている。この点は従来の発泡樹脂成型機と同様である。また、凸型11の成形面を貫通して離型ピン18と原料ビーズの充填器19が設けられているが、これも従来の発泡樹脂成型機と同様である。この構造により、凸型11の加熱は用役流路17を通じて供給される蒸気によって行われ、冷却は用役流路17を通じて供給される冷却水、冷却空気等によって行われる。凹型10と凸型11とによって成形用のキャビティが形成され、その内部に原料ビーズの充填器19を通じて原料ビーズが充填される。
【0015】
凹型10の下方には加熱手段である加熱槽20が設けられている。この加熱槽20は、断熱材21で囲まれたボックスの内部に、通電発熱体22と、ファン23と、位置決め用の受台24を配置したものである。通電発熱体22により加熱された空気はファン23によって熱風となる。その温度は例えば600℃である。しかし外部の熱風発生炉で発生させた熱風を加熱槽20に導くことも可能である。
【0016】
30は冷却槽であり、その内部には冷却水31が供給されている。冷却水31はポンプ32によって供給され、40℃程度の低温に維持されている。33は冷却槽30の内部に設けられた位置決め用の受台である。
【0017】
次に上記の装置を用いた溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体の製造方法を説明する。先ず図1に示されるように凹型10と凸型11との間に形成されたキャビティに充填器19から原料ビーズを充填する。次に図2に示すように加熱槽20を凹型10に向けて上昇させ、熱風により凹型10を急速に昇温させる。熱風の漏洩を最小限とするため、加熱槽20の上端はできるだけ凹型10に接近させることが好ましい。これと並行させて移動プレート13及び凸型11を下降させ、キャビティ内の原料ビーズを凸型11により凹型10の底部の内面に押圧する。凹型10は原料ビーズの溶融温度以上に加熱されているので、原料ビーズの凹型10の内面に接する部分が溶融して表皮層が形成される。熱風は凹型10の全面を均等に急速加熱することができるうえ、凹型10のサイズや形状が変化した場合にも均一加熱ができる利点がある。
【0018】
その後、必要に応じて移動プレート13及び凸型11を図3の位置まで上昇させ、凸型11の上部チャンバー16に用役流路17を通じて蒸気を供給して凸型11を加熱し、キャビティ内の残部の原料ビーズを発泡させる。この結果、溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体が成形される。この実施形態では、原料ビーズを発泡させる前に凹型10の底部の内面に押圧して溶融させたが、原料ビーズを発泡させた後に発泡樹脂成形体を凹型10の底部の内面に押圧して溶融させることも可能である。また、必要とされる発泡層の厚みが薄い場合には、凸型11を図2の位置から上昇させることなく、発泡させてもよい。
【0019】
その後、加熱槽21を降下させ、図4に示すように冷却槽30を水平移動したうえで凹型10に向けて上昇させ、凹型10を冷却水31に浸漬する。また凸型11の上部チャンバー16に用役流路17を通じて冷却水や冷却空気を供給し、凸型11を冷却する。これらの冷却によって溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体の形状を安定させ、その後に凸型11を上昇させて型開きし、凹型10から成形体を取り出す。発泡樹脂成形体が凸型11に付着している場合には、離型ピン18により剥離させることができる。この取り出し工程は従来と同様である。
【0020】
次に本発明の第2の実施形態を説明する。第2の実施形態は、加熱手段として溶融金属浴を用いたものである。
【0021】
図5に示すように、第2の実施形態では凹型10の下方に加熱手段である溶融金属浴40が設けられている。溶融金属の種類は、融点が低く人体に有害な蒸気が発生しないものとする必要がある。この実施形態では融点が232℃の錫が用いられているが、合金化して融点を更に低下させた錫合金を用いてもよい。水銀や鉛なども低融点金属であるが、人体に有害であるため好ましくない。
【0022】
溶融金属浴40は加熱槽41に設けられたシーズヒータ42又はIHヒータにより300℃程度に加熱されている。43は撹拌手段であり、溶融金属浴40を均一温度に維持している。44は加熱槽21の内部に設けられた受台である。
【0023】
第2の実施形態の冷却槽50には、冷却オイル51が収納されている。冷却オイル51は例えばシリコーンオイルであり、冷却装置52により40℃程度に維持されている。53は受台である。
【0024】
次に上記の装置を用いた溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体の製造方法を説明する。先ず図5に示されるように凹型10と凸型11との間に形成されたキャビティに充填器19から原料ビーズを充填する。次に図6に示すように加熱槽41を上昇させて凹型10を300℃程度に加熱された溶融金属浴40に浸漬するとともに、移動プレート13及び凸型11を下降させて原料ビーズを凹型10の底部の内面に押圧する。凹型10は溶融金属浴40に浸漬されることによって原料ビーズの溶融温度以上に急速に昇温し、原料ビーズの凹型10の内面に接する部分が溶融して表皮層が形成される。
【0025】
その後、必要に応じて移動プレート13及び凸型11を図7の位置まで上昇させ、凸型11の上部チャンバー16に用役流路17を通じて、蒸気を供給して凸型11を加熱し、キャビティ内の残部の原料ビーズを発泡させる。この結果、溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体が成形される。
【0026】
その後、加熱槽41を降下させたうえで、図8に示すように冷却槽50を凹型10に向けて上昇させ、凹型10を冷却オイル51に浸漬する。また凸型11の上部チャンバー16に用役流路17を通じて冷却水や冷却空気を供給し、凸型11を冷却する。これらの冷却によって溶融した表皮層を持つ発泡樹脂成形体の形状を安定させ、その後に凸型11を上昇させて型開きし、凹型10から成形体を取り出す。発泡樹脂成形体が凸型11に付着している場合には、離型ピン18により剥離させることができる。
【0027】
上記した各実施形態では、加熱槽20、41と冷却槽30、50を水平移動させたうえ、凹型10にむけて交互に上昇させた。しかし加熱槽20、41と冷却槽30、50を水平移動させず、凹型10と凸型11を移動させることもできる。この場合には、溶融・発泡を行うステーションと、冷却、取出しを行うステーションが別となる。さらに、加熱槽20、41と冷却槽30、50を昇降させず、凹型10と凸型11を下降させるようにしてもよい。
【0028】
以上に説明したように、本発明では熱風を吹き付けるか、溶融金属浴に浸漬することによって凹型10を原料ビーズの溶融温度以上の高温域まで加熱し、凹型10の内面に接する表皮層を溶融させた発泡樹脂成形体を得ている。これにより単一の原料から表皮層を溶融させた発泡樹脂成形体を製造することができる。またこれらの加熱手段は凹型10のサイズや形状が変化してもその前面を均一に加熱することができる。さらに、従来用いられて来た水蒸気とは異なり、熱風や溶融金属浴は容易に高温に設定できるので、短時間で凹型10を昇温することができ、サイクルタイムを短縮することができるなど、多くの利点がある。
【0029】
なお、樹脂の溶融温度はその種類によって異なり、例えばポリスチレンでは150℃、ポリオレフィンでは180℃、ポリアミドでは240~270℃である。必要な加熱温度は樹脂の種類によって適宜設定されるべきことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
10 凹型
11 凸型
12 固定プレート
13 移動プレート
14 裏板
15 マスターフレーム
16 上部チャンバー
17 用役流路
18 離型ピン
19 充填器
20 加熱槽
21 断熱材
22 通電発熱体
23 ファン
24 受台
30 冷却槽
31 冷却水
32 ポンプ
33 受台
40 溶融金属浴
41 加熱槽
42 シーズヒータ
43 撹拌手段
44 受台
50 冷却槽
51 冷却オイル
52 冷却装置
53 受台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8