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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038263
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/00 20220101AFI20220303BHJP
   F24H 1/28 20220101ALI20220303BHJP
【FI】
F24H9/00 C
F24H1/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142662
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】390002886
【氏名又は名称】株式会社長府製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】西田 幸生
【テーマコード(参考)】
3L036
【Fターム(参考)】
3L036AA21
(57)【要約】
【課題】切り起こし片と管の内壁の間に設けられる隙間の面積が低減された給湯装置を提供する。
【解決手段】管12内に、燃焼ガスの進行を遅くするバッフル板13が設けられた給湯装置10において、バッフル板13は、長手方向が管12の軸心方向に沿った板状ベース29と、基端側が板状ベース29に連結され、それぞれ先端側が板状ベース29の一面側に突出した複数の第1の切り起こし片30と、基端側が板状ベース29に連結され、それぞれ先端側が板状ベース29の他面側に突出した複数の第2の切り起こし片31とを備え、第1、第2の切り起こし片30、31は板状ベース29の長手方向に交互に配され、管12は、第1の切り起こし片30に向かって内側に窪んだ第1の凹部34、35と第2の切り起こし片31に向かって内側に窪んだ第2の凹部36、37とが形成されて、管12の断面が円形の一部を内側に窪ませた形状となっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼部で発生した燃焼ガスが流入する管内に、該管内の燃焼ガスの進行を遅くするバッフル板が設けられた給湯装置において、
前記バッフル板は、長手方向が前記管の軸心方向に沿った板状ベースと、基端側が前記板状ベースに連結され、それぞれ先端側が該板状ベースの一面側に突出した複数の第1の切り起こし片と、基端側が前記板状ベースに連結され、それぞれ先端側が該板状ベースの他面側に突出した複数の第2の切り起こし片とを備え、前記第1、第2の切り起こし片は前記板状ベースの長手方向に交互に配され、
前記管は、前記第1の切り起こし片に向かって内側に窪んだ第1の凹部と前記第2の切り起こし片に向かって内側に窪んだ第2の凹部とが形成されて、該管の断面が円形の一部を内側に窪ませた形状となっていることを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
請求項1記載の給湯装置において、前記第1、第2の凹部はそれぞれ、前記管の軸心方向に沿った溝であることを特徴とする給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を燃焼して生じた燃焼ガスにより水を加熱して湯とし、外部に供給する給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料の燃焼により発生した燃焼ガスを管に通して管外の水を加熱する給湯装置は、図6(A)、(B)に示すように、管100内にバッフル板101が設けられ、管100内の燃焼ガスの進行を遅くして燃焼ガスの熱を管に効率的に伝えるようにしている(特許文献1、2参照)。長尺の金属板を加工してなるバッフル板101は、板状ベース102と、板状ベース102に基端側が連結され、先端側がそれぞれ突出した半円状の複数の切り起こし片103、104を備えている。
【0003】
板状ベース102の長手方向に、先端側が板状ベース102の一面側に突出した切り起こし片103、及び、先端側が板状ベース102の他面側に突出した切り起こし片104が交互に設けられている。板状ベース102には、切り起こし片103の形成によって貫通孔105が形成され、切り起こし片104の形成によって貫通孔106が形成されている。
【0004】
この設計により、管100内の燃焼ガスは、切り起こし片103で進行が制限され、その起こし片103の上流側の貫通孔106を通って、板状ベース102の一面側から他面側に移動し、次に、切り起こし片104で進行が制限され、その切り起こし片104の上流側の貫通孔105を通って、板状ベース102の他面側から一面側に移動するというように、蛇行しながら管100内を進む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平05-25250号公報
【特許文献2】特開2017-172884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来、管100は、図6(B)に示すように、円形断面であり、切り起こし片103、104と管100の内壁の間には、燃焼ガスの進行を制限できない隙間が存在していた。その結果、バッフル板101による管100内の燃焼ガスの進行を遅らせるのには限界があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、切り起こし片と管の内壁の間に設けられる隙間を小さくした給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る給湯装置は、燃焼部で発生した燃焼ガスが流入する管内に、該管内の燃焼ガスの進行を遅くするバッフル板が設けられた給湯装置において、前記バッフル板は、長手方向が前記管の軸心方向に沿った板状ベースと、基端側が前記板状ベースに連結され、それぞれ先端側が該板状ベースの一面側に突出した複数の第1の切り起こし片と、基端側が前記板状ベースに連結され、それぞれ先端側が該板状ベースの他面側に突出した複数の第2の切り起こし片とを備え、前記第1、第2の切り起こし片は前記板状ベースの長手方向に交互に配され、前記管は、前記第1の切り起こし片に向かって内側に窪んだ第1の凹部と前記第2の切り起こし片に向かって内側に窪んだ第2の凹部とが形成されて、該管の断面が円形の一部を内側に窪ませた形状となっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る給湯装置は、管が、第1の切り起こし片に向かって内側に窪んだ第1の凹部と第2の切り起こし片に向かって内側に窪んだ第2の凹部とによって、管の断面が円形の一部を内側に窪ませた形状となっているので、第1の切り起こし片と管の内壁の間に設けられる隙間及び第2の切り起こし片と管の内壁の間に設けられる隙間を小さくして、バッフル板による燃焼ガスの進行の制限を安定的に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る給湯装置の説明図である。
図2】同給湯装置のバッフル板の説明図である。
図3】同給湯装置の管及びバッフル板の説明図である。
図4】同給湯装置の管及びバッフル板の説明図である。
図5】同給湯装置の管内の燃焼ガスの流れを示す説明図である。
図6】(A)、(B)はそれぞれ、従来の給湯装置の管及びバッフル板の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図3に示すように、本発明の一実施の形態に係る給湯装置10は、燃焼部11で発生した燃焼ガスが流入する管12内に、管12内の燃焼ガスの進行を遅くするバッフル板13が設けられている。以下、詳細に説明する。
【0011】
給湯装置10は、図1に示すように、燃料(例えば、灯油)を燃焼させるバーナ14が取り付けられた中空の燃焼部11と、燃焼部11に連結された複数の管12を具備する熱交換器15と、各管12を通過した燃焼ガスを外部に排出する排気機構16を備えている。排気機構16、熱交換器15及び燃焼部11は、上から順に設けられている。各管12は鉛直に配され、上端部が天井板21を貫通している。燃焼部11の下方には耐火材(例えば、セラミックファイバ)によって形成された断熱層18と、断熱層18の上側に配されたステンレス鋼からなる金属板19とが設けられている。
【0012】
熱交換器15は、複数の管12に加え、複数の管12を内側に収めた状態で鉛直に配された筒状の側壁体20、排気機構16の直下に配された天井板21、及び、天井板21と燃焼部11の間に配された水平板22を有している。円形の水平板22は外周部が側壁体20に接触し、各管12は水平板22を貫通している。熱交換器15において、側壁体20及び天井板21によって覆われた空間は、水平板22によって、水平板22の下側の1次熱交換領域23と水平板22の上側の2次熱交換領域24とに分割されている。
側壁体20には、2次熱交換領域24に水を供給する給水管25、2次熱交換領域24と1次熱交換領域23を連通する接続管26、及び、2次熱交換領域24内の湯を送り出す出湯管27が固定されている。
【0013】
バーナ14による燃料の燃焼によって燃焼部11内で発生した燃焼ガスは、各管12の下端部から各管12内に流入し、各管12内を上昇して管12の上端部から排気機構16内に進み、排気機構16から外部に排出される。給水管25から2次熱交換領域24に流入する水は、各管12の2次熱交換領域24に配された部位から与えられる燃焼ガスの熱で加熱された後に、接続管26を経由して、1次熱交換領域23に流入し、各管12の1次熱交換領域23に配された部位から与えられる燃焼ガスの熱によって加熱され、1次熱交換領域23から出湯管27に出る。
【0014】
このように、熱交換器15を1次熱交換領域23及び2次熱交換領域24に分けることによって、給水管25から2次熱交換領域24に流入した水に、燃焼ガスの熱を効率的に与えることができる。
また、各管12の内側には、図2図5に示すように、管12内の燃焼ガスの上昇速度を低減するバッフル板13が設けられている。
【0015】
各バッフル板13は、長手方向が管12の軸心に沿った板状ベース29と、基端側が板状ベース29に連結され、それぞれ先端側が板状ベース29の一面側に突出した複数の切り起こし片30(第1の切り起こし片の一例)と、基端側が板状ベース29に連結され、それぞれ先端側が板状ベース29の他面側に突出した複数の切り起こし片31(第2の切り起こし片の一例)とを備えている。切り起こし片30、31は板状ベース29の長手方向(鉛直方向)に交互に配されている。
【0016】
板状ベース29には、図2図3に示すように、各切り起こし片30の形成によって半円状の貫通孔32が設けられ、各切り起こし片31の形成によって半円状の貫通孔33が設けられている。このように設計されたバッフル板13によって、管12内の板状ベース片29の一面側の領域に存する燃焼ガスの大半は、図5に示すように、切り起こし片30によって上昇が妨げられ、当該切り起こし片30の下側の貫通孔33を通って、板状ベース片29の他面側の領域に進み、切り起こし片31によって上昇が妨げられ、当該切り起こし片31の下側の貫通孔32を通って、板状ベース片29の一面側の領域に戻るという移動を繰り返し、蛇行しながら管12内を上昇する。
【0017】
板状ベース29は図示しない螺子部材等によって管12に固定されている。板状ベース29は、幅方向両端が管12の内壁に接していてもよいし、接していなくてもよい。
各切り起こし片30、31は、図2図4に示すように、半円状であり、幅方向の長さは基端側に比べ先端側が短い。板状ベース29は、図4に示すように、各切り起こし片30、31の最も幅方向に長い基端側より幅方向に長い。なお、各切り起こし片30、31は、管12の内壁に接していてもよいし、接していなくてもよい。また、各切り起こし片30、31は半円状以外の形状、例えば、三角形状や、四角形状であってもよい。
【0018】
管12には、図2図4に示すように、切り起こし片30の幅方向一側近傍に、切り起こし片30に向かって管12の内側に窪んだ溝(第1の凹部の一例)34が形成され、切り起こし片30の幅方向他側近傍に、切り起こし片30に向かって管12の内側に窪んだ溝(第1の凹部の一例)35が形成され、切り起こし片31の幅方向一側近傍に、切り起こし片31に向かって管12の内側に窪んだ溝(第2の凹部の一例)36が形成され、切り起こし片31の幅方向他側近傍に、切り起こし片31に向かって管12の内側に窪んだ溝(第2の凹部の一例)37が形成されている。
【0019】
溝34、35、36、37は、管12の上端部及び下端部、並びに、水平板22を貫通している部分を除いた領域に設けられ(即ち、溝34は水平板22を貫通している部分の上方及び下方にそれぞれ設けられ、この点、溝35、36、37についても同様である)、各溝34、35、36、37は管12の軸心方向(長手方向)に沿っている。
管12は、図4に示すように、溝34、35、36、37によって、溝34、35、36、37が形成された領域(第1の切り起こし片30又は第2の切り起こし片31が設けられている領域に対応する領域)の断面が円形の一部(本実施の形態では4箇所)を内側に窪ませた形状となっている。
【0020】
本実施の形態において、管12の溝34、35、36、37が形成された領域は、溝34、35、36、37によって、切り起こし片30と管12の内壁との間の隙間及び切り起こし片31と管12の内壁との間の隙間の合計の大きさ(面積)が、溝34、35、36、37(即ち、第1、第2の凹部)が無い断面円形の管(例えば、図6(A)、(B)に記載された管100)の内壁と第1、第2の切り起こし片との間の隙間の合計の大きさ(面積)の75%以下(好ましくは70%以下、更に好ましくは65%以下)となっている。
【0021】
切り起こし片30と管12の内壁との間の隙間及び切り起こし片31と管12の内壁との間の隙間を小さくすることによって、当該隙間を通過する燃焼ガスの量を低減し、燃焼ガスから1次熱交換領域23内の湯及び2次熱交換領域24内の湯水(湯又は水を意味する)に与えられる熱量を増大(即ち、燃焼ガスと1次熱交換領域23内の湯及び2次熱交換領域24内の湯水との熱交換効率を向上)させている。ここで、溝が無い場合に比べて管の断面を小さくする溝が形成されていれば、たとえその溝が小さくても、燃焼ガスがバッフル板の貫通孔を通過する量が増え、1次熱交換領域内の湯及び2次熱交換領域内の湯水との熱交換効率が向上するのは言うまでもない。
【0022】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、第1、第2の凹部は管の軸心方向に沿った溝である必要は無い。例えば、第1の凹部は第1の切り起こし片が設けられた位置にのみ存在する窪みであってもよく、第2の凹部は第2の切り起こし片が設けられた位置にのみ存在する窪みであってもよい。
また、管には、第1の切り起こし片の幅方向一側近傍及び幅方向他側近傍のいずれか一方のみに第1の凹部を設けてもよく、第2の切り起こし片の幅方向一側近傍及び幅方向他側近傍のいずれか一方のみに第2の凹部を設けてもよい。
更に、熱交換器の空間は水平板等によって分割されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0023】
10:給湯装置、11:燃焼部、12:管、13:バッフル板、14:バーナ、15:熱交換器、16:排気機構、18:断熱層、19:金属板、20:側壁体、21:天井板、22:水平板、23:1次熱交換領域、24:2次熱交換領域、25:給水管、26:接続管、27:出湯管、29:板状ベース、30、31:切り起こし片、32、33:貫通孔、34、35、36、37:溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6