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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038264
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】上半身補助器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
A61F5/01 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142663
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】516279581
【氏名又は名称】株式会社ヒーリンクスジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100108604
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 義人
(72)【発明者】
【氏名】西 武胤
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BC02
4C098BC13
(57)【要約】
【課題】上半身補助器具が被験者に与える腹圧を大きくする。
【解決手段】上半身補助器具は、被験者の身体に巻き付けられる伸縮性を有する上半身用ベルト30を備えている。上半身用ベルト30は、被験者の腹の前で交差したような状態となる。上半身補助器具は、被験者の背中に位置する保持部材を備えており、保持部材には補助ベルト40が取付けられている。補助ベルト40の右端は、被験者の腹の前の左上がりの部分に、左端は、被験者の腹の前の右上がりの部分にそれぞれ着脱自在に接続される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の右の腰の外側から左の腰の外側までを、前記被験者の右の腰の外側から前記被験者の身体の前を通って前記被験者の腹の前の右折返し位置に至り、前記右折返し位置で折り返されてそこから前記被験者の右脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の左肩の上に至り、そこから前記被験者の身体の前側を通って前記被験者の左脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の右脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の前側を通って前記被験者の右肩の上に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の左脇の下に至り、そこから前記被験者の体の前側を通って前記被験者の腹の前の、前記右折返し位置と接続される左折返し位置に至り、前記左折返し位置で折り返されてそこから前記被験者の左の腰の外側に至る、という経路かその逆の経路である第1の経路で結ぶようになっているか、
又は、
被験者の右の腰の外側から左の腰の外側までを、前記被験者の右の腰の外側から前記被験者の身体の前を通って前記被験者の左脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の右肩の上に至り、そこから前記被験者の身体の前側を通って前記被験者の右脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の左脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の前側を通って前記被験者の左肩の上に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の右脇の下に至り、そこから前記被験者の体の前側を通って前記被験者の左の腰の外側に至る、という経路かその逆の経路である第2の経路で結ぶようになっている、
長尺のベルトと、
前記ベルトの使用時における両端にそれぞれ設けられた、使用時における前記ベルトの経路の形状を維持する端部固定部材と、
前記ベルトのうち、前記被験者の身体の後側で前記被験者の右脇の下と前記被験者の左肩の上とを結ぶ部分と、前記被験者の身体の後側で前記被験者の左脇の下と前記被験者の右脇の下とを結ぶ部分と、前記被験者の身体の後側で前記被験者の右肩の上と前記被験者の左脇の下とを結ぶ部分との相対的な位置関係を、前記ベルトの長さ方向の移動を許容した状態で固定するとともに、使用されていない状態の前記ベルトに、それを使用するときに前記被験者が右腕を通す右ループと、前記被験者が左腕を通す左ループと、を形成するための保持部材と、
を備えている上半身補助器具であって、
前記保持部材には、前記保持部材から左右に伸びる一連のベルトである補助ベルトが取り付けられており、
前記補助ベルトの右端は、前記ベルトのうちの、前記被験者の身体の前側で前記被験者の右の腰の外側と前記被験者の腹の前とを結ぶ部分のいずれかの位置と着脱自在に接続されるようになっているとともに、前記補助ベルトの左端は、前記ベルトのうちの、前記被験者の身体の前側で前記被験者の左の腰の外側と前記被験者の腹の前とを結ぶ部分のいずれかの位置と着脱自在に接続されるようになっている、
上半身補助器具。
【請求項2】
前記補助ベルトは、その長さ方向に沿ってスライドできるような状態で、前記保持部材に取付けられている、
請求項1記載の上半身補助器具。
【請求項3】
使用時における前記ベルトの両端にそれぞれ設けられた2つの前記端部固定部材は、互いに着脱自在に固定できるようになっている第1固定部材を備えている、
請求項1記載の上半身補助器具。
【請求項4】
使用時における前記ベルトの両端にそれぞれ設けられた2つの前記端部固定部材は、前記ベルトの長さ方向の中央よりの所定の範囲に対して固定することのできるようになっている、前記ベルトの両端にそれぞれ設けられた第2固定部材を備えている、
請求項1又は3記載の上半身補助器具。
【請求項5】
前記端部固定部材は、前記ベルトの両端にそれぞれ設けられた、前記ベルトの長さ方向の中央よりの所定の範囲に対して固定することのできるようになっている第2固定部材を備えているとともに、
前記第1固定部材は、前記ベルトの長さ方向に沿って移動可能として前記ベルトに取付けられている、
請求項3記載の上半身補助器具。
【請求項6】
前記保持部材は、
前記ベルトのうち前記被験者の右脇の下から前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の左肩の上に至る部分を通過させる第1孔と、
前記ベルトのうち前記被験者の左脇の下から前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の右脇の下に至る部分を通過させる第2孔と、
前記ベルトのうち前記被験者の右肩の上から前記被験者の身体の後側を通って被験者の左脇の下に至る部分を通過させる第3孔と、
を備えている、
請求項1記載の上半身補助器具。
【請求項7】
前記第1孔、前記第2孔、前記第3孔の少なくとも1つは複数の孔からなる、
請求項6記載の上半身補助器具。
【請求項8】
前記ベルトは、その長さ方向に伸縮性を備えている、
請求項1記載の上半身補助器具。
【請求項9】
前記補助ベルトは、その長さ方向に伸縮性を備えている、
請求項1記載の上半身補助器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の上半身の動きを補助し、或いは姿勢を改善させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人間は直立状態での二足歩行が可能であり、人間の身体はそれを行うに適切なように進化してきた。しかしながら、重力の存在する地球上で二足歩行を行うというのは、他の多くの哺乳動物等が四足歩行をしていることからも明らかなように本来的には不自然であり、それ故人間の身体には日常生活の中でも常に大きな負担がかかっている。
例えば、人間の上半身は、本来であれば骨盤の上に垂直に直立しているべきものであるが、実際のところ多くの場合、やや前傾している。猫背などと俗に言われるこの姿勢は、よく知られているように様々な弊害を引き起こす。
例えば、新陳代謝の悪化、肩こり、首のこり、頭痛、循環器系、呼吸器系、消化器系、婦人科系の疾患が生じやすくなる、自律神経疾患により精神的に不安定になり得る、といった弊害が、猫背による弊害として知られている。
【0003】
また、上述した前後方向の歪みだけでなく、例えば歩行する際に、人間の体は左右方向に振れるし、また、平面視した場合に回転する。かかる左右方向の振れや回転も、人間の身体に負担を与える。
【0004】
上半身の動きを補助し、或いは姿勢を改善させるための器具は多々提案されているが、それらのうちの殆どは、猫背を解消することにしかフォーカスしていない。
したがって、上半身の動きを補助し、或いは姿勢を改善させるための効果的な器具はほとんど存在しないというのが実際のところである。
【0005】
そのような現状に鑑み本願発明者は、上半身の動きを補助し、或いは姿勢を改善させるための効果的な器具を開発すべく研究を重ね、下記特許文献1に開示の上半身補助器具を開発するに至った。
かかる上半身補助器具は、被験者の上半身の周りに巻き付けられる(場合によっては、上半身のみならず被験者の下半身にまで巻き付けられる)ベルトを主な構成要素とするとともに、被験者の上半身に巻きつけられたベルトをその状態で被験者の身体に固定するための部材を構成要素とする。このような上半身補助器具は、上半身の動きを補助し、或いは姿勢を改善させる効果を十分に奏するものであり、既に市場に投入され一定の評価を得るに至っている。
【0006】
ところで、上述の如き上半身補助器具を構成するベルトは、被験者の上半身に複雑な経路で巻き付けられる。そして、その経路は、上半身補助器具が奏するべき効果がより高度になるに連れ、より複雑なものとなってきており、それに伴いベルトの長さはどんどん長くなってきている。例えば、最近の上半身補助器具を構成するベルトは、上半身補助器具を利用する被験者の体格にもよるが、その長さが200cmから400cmにも及ぶ。
そのような長尺のベルトを被験者の上半身に決まった経路で巻き付けるのは手間であり、上半身補助器具を用いる場合の被験者(被験者に上半身補助器具を装着させる補助者がいる場合には補助者)の負担が大きい。
そのような負担を解消するために、上述の国際出願に開示の上半身補助器具には、被験者が上半身補助器具を装着していない場合においても予定された経路に沿った状態となるようにベルト1の経路をある程度固定する保持手段2が取付けられている。この保持手段2は、被験者に装着されていないときにおける上半身補助器具のベルト1に、上半身補助器具を被験者が装着する場合に被験者が右腕を通すための右ループRLと、左腕を通すための左ループLLとを形成するようになっており、上半身補助器具を装着する被験者は、右腕を右ループRLに左腕を左ループLLにそれぞれ通すだけで、上半身補助器具の装着を途中まで一気に行うことができる(図19図20)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】PCT/JP2019/032607
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図20に示したような、ベルト1の両端付近が被験者の身体の前で交差するような上半身補助器具には、従前の上半身補助器具には無い効果が生じることを最新の研究によって本願発明者は見出した。
その効果は、腹の前で交差するベルトが、被験者の腹に所定の圧(腹圧)を継続的に加え続けることによって生じる効果である。具体的には、被験者に腹圧を与えると、その腹圧が深層筋を刺激することにより深層筋を活発にはたらかせることが可能となる。そして、それにより、個人差もあるが、被験者は、腰痛の防止、便秘の解消等の効果を得ることができることになる。これらの効果は、もはや被験者の上半身を補助するという所期の効果を超えたものであり、上半身補助器具の新たな用途を生み出すものであるといえる。
しかしながら、上述した如き腹圧を、より強く安定的に被験者の腹部に与えるのは難しい。ベルト1にはたらく張力をより強くすれば腹圧は強くなるものの、そうするとベルト1が腹部以外の場所において被験者の身体に与える力が大きくなり過ぎることにより、例えば、被験者の身体に過度の締付けを与える、或いは、被験者が身体を動かしにくくなるといった弊害を生じかねない。
【0009】
本願発明は、それら弊害がなく、上半身補助器具が被験者に大きな腹圧を与えられるようにすることをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するものとして本願発明者は以下の発明を提案する。
その発明は、被験者の右の腰の外側から左の腰の外側までを、前記被験者の右の腰の外側から前記被験者の身体の前を通って前記被験者の腹の前の右折返し位置に至り、前記右折返し位置で折り返されてそこから前記被験者の右脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の左肩の上に至り、そこから前記被験者の身体の前側を通って前記被験者の左脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の右脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の前側を通って前記被験者の右肩の上に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の左脇の下に至り、そこから前記被験者の体の前側を通って前記被験者の腹の前の、前記右折返し位置と接続される左折返し位置に至り、前記左折返し位置で折り返されてそこから前記被験者の左の腰の外側に至る、という経路かその逆の経路である第1の経路で結ぶようになっているか、又は、被験者の右の腰の外側から左の腰の外側までを、前記被験者の右の腰の外側から前記被験者の身体の前を通って前記被験者の左脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の右肩の上に至り、そこから前記被験者の身体の前側を通って前記被験者の右脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の左脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の前側を通って前記被験者の左肩の上に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の右脇の下に至り、そこから前記被験者の体の前側を通って前記被験者の左の腰の外側に至る、という経路かその逆の経路である第2の経路で結ぶようになっている、長尺のベルトと、前記ベルトの使用時における両端にそれぞれ設けられた、使用時における前記ベルトの経路の形状を維持する端部固定部材と、前記ベルトのうち、前記被験者の身体の後側で前記被験者の右脇の下と前記被験者の左肩の上とを結ぶ部分と、前記被験者の身体の後側で前記被験者の左脇の下と前記被験者の右脇の下とを結ぶ部分と、前記被験者の身体の後側で前記被験者の右肩の上と前記被験者の左脇の下とを結ぶ部分との相対的な位置関係を、前記ベルトの長さ方向の移動を許容した状態で固定するとともに、使用されていない状態の前記ベルトに、それを使用するときに前記被験者が右腕を通す右ループと、前記被験者が左腕を通す左ループと、を形成するための保持部材と、を備えている上半身補助器具である。
そして、本願発明における上半身補助器具の前記保持部材には、前記保持部材から左右に伸びる一連のベルトである補助ベルトが取り付けられており、前記補助ベルトの右端は、前記ベルトのうちの、前記被験者の身体の前側で前記被験者の右の腰の外側と前記被験者の腹の前とを結ぶ部分のいずれかの位置と着脱自在に接続されるようになっているとともに、前記補助ベルトの左端は、前記ベルトのうちの、前記被験者の身体の前側で前記被験者の左の腰の外側と前記被験者の腹の前とを結ぶ部分のいずれかの位置と着脱自在に接続されるようになっている。
【0011】
本願発明における上半身補助器具は、上述したように、ベルトと保持部材とを備えている。
ここで、本願発明による上半身補助器具は、保持部材を備えている。これは、「背景技術」の欄で説明した保持手段と同等のものである。保持部材は、「背景技術」の欄で説明した右ループと左ループとを形作る機能を有している。したがって、本願発明における上半身補助器具を装着しようとする被験者は、右ループに右腕を左ループに左腕をそれぞれ通すことで、上半身補助器具を途中まで一気に装着することができる。したがって、「背景技術」の欄で説明した上半身補助器具と同様に、本願の上半身補助器具もある程度着用が簡単になる。
また、本願発明による上半身補助器具におけるベルトは、「背景技術」の欄で説明した上半身補助器具におけるベルトと概ね同じような機能を有する。ただし、本願発明による上半身補助器具によるベルトは、上述したように、第1の経路と第2の経路という2通りの経路の一方を辿るようにして、被験者の身体に巻き付けられる。
第1の経路は、被験者の右の腰の外側から左の腰の外側までを、前記被験者の右の腰の外側から前記被験者の身体の前を通って前記被験者の腹の前の右折返し位置に至り、前記右折返し位置で折り返されてそこから前記被験者の右脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の左肩の上に至り、そこから前記被験者の身体の前側を通って前記被験者の左脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の右脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の前側を通って前記被験者の右肩の上に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の左脇の下に至り、そこから前記被験者の体の前側を通って前記被験者の腹の前の、前記右折返し位置と接続される左折返し位置に至り、前記左折返し位置で折り返されてそこから前記被験者の左の腰の外側に至る、という経路かその逆の経路である。
第2の経路は、被験者の右の腰の外側から左の腰の外側までを、前記被験者の右の腰の外側から前記被験者の身体の前を通って前記被験者の左脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の右肩の上に至り、そこから前記被験者の身体の前側を通って前記被験者の右脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の左脇の下に至り、そこから前記被験者の身体の前側を通って前記被験者の左肩の上に至り、そこから前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の右脇の下に至り、そこから前記被験者の体の前側を通って前記被験者の左の腰の外側に至る、という経路かその逆の経路である。
第2の経路は、「背景技術」の欄で説明したのと同じ経路、つまり、図20で示したのと同じ経路である。したがって、第2の経路を辿るベルトは、被験者の身体の前で、より詳細には被験者の腹部の前で交差することになる。したがって、ベルトが第2の経路を辿る場合における上半身補助器具は、被験者の腹部に対して腹圧を与えることになり、腹圧に基づく、既に述べた効果を生じることになる。
他方、第1の経路は、第2の経路と一見すると同じ経路であるが、ベルトは被験者の腹の前で交差しない。「背景技術」の欄で述べた従来の上半身補助器具におけるベルトのうちの被験者の両脇の下から被験者の身体の前方に向かう部分は、被験者の身体の前側でX字状に交差している。つまり、従来の上半身補助器具では、左脇の下から出たベルトは、被験者の身体の前面を斜め下に進み被験者の右の腰の外側に向かう。また、右脇の下から出たベルトは、被験者の身体の前面を斜め下に進み被験者の左の腰の外側に向かう。これに対して、本願発明の上半身補助器具におけるベルトは、上述したベルトの交差する位置で、ベルトを折り返すこととしている。つまり、本願発明における上半身補助器具において第1の経路を辿るときにおけるベルトのうち、左脇の下から出たベルトは、被験者の身体の前面を斜め下に進み被験者の腹の前である左折返し位置で折り返されて、被験者の左の腰の外側に向かう。また、右脇の下から出たベルトは、被験者の身体の前面を斜め下に進み被験者の腹の前である右折返し位置で折り返されて、被験者の右の腰の外側に向かう。そして、ベルトは、右折返し位置と左折返し位置とで互いに接続される(例えば、ベルトの右折返し位置と左折返し位置にそれぞれ取付けられた、適当な部材(中間固定部材と称することとする。)により、着脱自在に接続される)。それにより、第1の経路をベルトが辿るときにおける本願発明におけるベルトにおける、従来の上半身補助器具におけるベルトが形作る身体の前側におけるX字状の交差は、ベルトの交差点で折り返された2つの横向きのV字を組合せたものに置き換えられる。このように第1の経路を辿るベルトは、実際に交差しないものの、交差を行ったのと同等の状態を作ることになる。言い換えれば、本願発明の上半身補助器具における第1の経路を辿るベルトは、第2の経路と同じ経路を、異なる道順で辿ることになる。
第1の経路を辿る場合におけるベルトも、外形的には、被験者の腹部の前であたかも交差したような状態となる。したがって、第1の経路を辿るベルトを含む上半身補助器具は、ベルトが第2の経路を辿る場合と同じく、腹圧に基づく、既に述べた効果を生じることになる。
上述のようにベルトは第1の経路と第2の経路の2通りの経路を取り得る。ベルトが第1の経路を辿るとき、ベルトが第2の経路を辿る場合に比して以下の効果を生じる。
上述したように、本願発明の上半身補助器具は、保持部材を備えるので、被験者がそれを装着するのが比較的容易である。しかしながら、被験者の背中に位置する保持部材から垂れ下がるベルトの両端部分を被験者が自らの身体に正しく巻き付けるのは比較的容易とはいえ簡単ではない。他方、第1の経路をベルトが辿る場合であれば、ベルトの右ループに右腕を左ループに左腕をそれぞれ通した被験者が、ベルトの左折返し位置と右折返し位置とを、例えば、左折返し位置と右折返し位置とにそれぞれ取付けられた中間固定部材を互いに着脱自在に固定するなどして接続することにより、身体の前面におけるX字状のベルトの交差をも一気に作ることができる。もちろん、ベルトのうち、互いに固定された左折返し位置及び右折返し位置より下の部分はそこから下に垂れ下がることになるが、その長さは従来に比べれば短いし、しかも垂れ下がったベルトが位置するのは被験者が目視可能な身体の前側なのであるから、被験者がベルトのその部分を扱うのは容易である。つまり、ベルトが第1の経路を辿る場合には、ベルトが第2の経路を辿る場合よりも上半身補助器具を被験者が装着するのが容易になる。
ベルトが第1の経路を辿る場合、左折返し位置と右折返し位置とはどのように着脱自在に接続或いは固定されるようになっていても構わない。その接続に、上述した中間固定部材を用いても良い。中間固定部材は例えば、サイドリリースバックルやフロントリリースバックルによって構成することができる。また、ベルクロ(商標)テープその他の面ファスナによって構成することも可能である。
【0012】
また、本願発明における上半身補助器具は、補助ベルトを備えている。
補助ベルトは、保持部材に取付けられ、保持部材から左右に延びるベルトであって、上述のベルトとは別のベルトである。
補助ベルトの右端は、ベルトのうちの、被験者の身体の前側で被験者の右の腰の外側と被験者の腹の前とを結ぶ部分のいずれかの位置と着脱自在に接続されるようになっている。他方、補助ベルトの左端は、ベルトのうちの、被験者の身体の前側で被験者の左の腰の外側と被験者の腹の前とを結ぶ部分のいずれかの位置と着脱自在に接続されるようになっている。なお、補助ベルトの両端とベルトとの着脱自在な接続は、どのような手段で行われても良い。例えば、ボタンとボタン穴、二本ホック、リングバネホック、アメリカンホックその他の金属ホック等、或いは面ファスナを用いて、補助ベルトとベルトの着脱自在な接続を行うことが可能となる。
ベルトが第1の経路を辿る場合でも、第2の経路を辿る場合でも、被験者の身体の前側で被験者の右の腰の外側と被験者の腹の前とを結ぶ部分も、また、被験者の身体の前側で被験者の左の腰の外側と被験者の腹の前とを結ぶ部分も存在する。補助ベルトの右端はそれらの前者の適当な位置に、補助ベルトの左端はそれらの後者の適当な位置に、それぞれ接続される。このとき、補助ベルトには、所定の張力が入るようにする。補助ベルトはそのような張力が入るような長さに設計されている。
かかる補助ベルトの存在により、第1の経路を辿るベルトのうち、互いに接続された左折返し位置及び右折返し位置よりも若干下方の部分、又は第2の経路を辿るベルトのうち、被験者の身体の前側で交差する位置よりも若干下方の部分が、被験者の身体の背中に位置する保持部材に向けて引っ張られることになる。これにより、被験者の腹部にかかる圧力が大きくなるため、腹圧を大きくすることが可能となり、また、腹部の両側部にも補助ベルト自体が腹圧を与えることになる。しかも、補助ベルトは、本願発明におけるベルトとは別の部材であるので、例えば、補助ベルトとベルトにかかる張力を異なるものとすることができる。したがって、本願発明によれば、腹圧を大きくすることが可能であるだけでなく、その効果を得るために、本願発明の上半身補助器具の主たる効果、つまり、ベルトによって生じる効果を損なうおそれが小さい。腹圧を大きくするには、ユーザが上半身補助器具を着用したときにおいて、補助ベルトにかかる張力が、ベルトにかかる張力よりも大きい方が一般的に好ましい。補助ベルトとベルトにかかる張力を異なるようにするには、例えば、両者の伸縮性を異なるものにするとか、或いは両者の伸縮性が仮に同じであっても補助ベルトの長さを適宜の長さに設計しておく(もちろん、補助ベルトの長さを短くした方が、補助ベルトの両端をベルトに固定したときに補助ベルトは強く張ることになるので、上半身補助器具の使用時において補助ベルトにはたらく張力が大きくなる。)ことが可能である。補助ベルトの長さを上半身補助器具の使用時に調節することができるような部材を更に、補助ベルトに設けておくことも可能である。補助ベルトの長さの調節は例えば、バックル状のアジャスタ等の公知或いは周知技術を用いれば、簡単に実現可能である。
また、補助ベルトは、以下のような副次的な効果も生じる。補助ベルトは、上述のように、第1の経路を辿るベルトのうち、互いに接続された左折返し位置及び右折返し位置よりも若干下方の部分、又は第2の経路を辿るベルトのうち、被験者の身体の前側で交差する位置よりも若干下方の部分を、被験者の身体の背中に位置する保持部材に向けて引っ張る。これは、逆にいうと、被験者の背中に位置する保持部材が下に向けて引っ張られるということである。これにより、被験者の両肩には、保持部材に接続された右ループ及び左ループを介して、後方に向けて下向きの力が大きくはたらくことを意味する。それにより、この上半身補助器具によれば、被験者の背筋が伸びる効果が強調されることになる。
【0013】
本願発明による上半身補助器具は、例えば20分以上、或いは例えば日常生活の中での2、3時間程度装着し続けることができる。例えば、軽作業を行う被験者がこの上半身補助器具を着用することも好適である。
それにより、ベルトによって生じる効果、即ち、歩行を行うときに被験者の体が左右に振れるのと回転するのを防止できるようになるので、被験者が例えば歩行時においても姿勢の良い状態をより良く保てるようになり、また歩行が楽になるという効果に加えて、被験者に対して腹圧をかけることにより生じる上述した効果を、被験者は得ることができることになる。
なお、本願の上半身補助器具は、後述するように、その両端が被験者の下半身にまで及び、被験者の下半身まで補助する場合もあるが、その場合でも被験者の上半身を補助することには変わりないので、そのような場合まで含めて、上半身補助器具と称することとする。
【0014】
本願発明の上半身補助器具におけるベルトの使用時における両端には端部固定部材が設けられている。端部固定部材は、使用時、より詳細には上半身補助器具の使用時における前記ベルトの経路の形状を維持するためのものである。
ここで「使用時におけるベルトの両端」とは、上半身補助器具が被験者に装着される場合におけるベルトの両端という意味である。後述するように、必ずしもそうなっている必要はないが、本願発明の上半身補助器具におけるベルトの両端付近は、主にベルトの長さを調節する目的で、任意の長さだけ折り返される場合がある。ベルトの長さ方向で考えた場合に、折り返される位置は変わり得るが、ベルトが折り返されている場合においては、その折り返された位置が、使用時におけるベルトの端部に相当することになる。他方、ベルトの端部が折り返されない場合には、ベルトの長さ方向の両端が、使用時におけるベルトの両端に該当することになる。ベルトが、その両端付近で折り返して使用されることを意図していない場合等、ベルトにおけるベルトの両端の位置がベルトの長さ方向において不変である場合には、「使用時におけるベルトの両端」は、ベルトの長さ方向の両端に常に一致することになる。
ベルトの経路の形状を維持するには、ベルトにテンションが入った状態で、ベルトの両端の相対的な位置を被験者の身体に対して固定することが考えられる。例えば、ベルトの両端を、被験者の身体に直接、或いは被験者が着用している衣服に対して固定するとか、ベルトを固定するための所定の部材、例えばサポーターのような被験者の身体に取付可能な布等でできた部材に対して固定することにより、ベルトの経路の形状を維持することが可能となる。
他方、ベルトの経路の形状を維持するには、ベルトの両端を互いに接続することも可能である。例えば、使用時における前記ベルトの両端にそれぞれ設けられた2つの前記端部固定部材は、互いに着脱自在に固定できるようになっている第1固定部材を備えていてもよい。第1固定部材同士を互いに固定した状態で、ベルトに例えばテンションが入るようになっているのであれば、被験者の身体を所定の経路で取り囲んだベルトは、その状態で被験者の身体に対して押し付けられる(或いは、ベルトが被験者の身体を圧迫する乃至締め付ける)ことになるので、ベルトの経路の形状は維持されることになる。
第1固定部材は例えば、サイドリリースバックルやフロントリリースバックルによって構成することができる。また、ベルクロ(商標)テープその他の面ファスナによって構成することも可能である。
【0015】
他方、本願発明における上半身補助器具において、使用時における前記ベルトの両端にそれぞれ設けられた2つの前記端部固定部材は、前記ベルトの長さ方向の中央よりの所定の範囲に対して固定することのできるようになっている、前記ベルトの両端にそれぞれ設けられた第2固定部材を備えていてもよい。
このような第2固定部材は2通りに機能させることができる。
まず第1に、ベルトの端部付近の適当な位置でベルトを折り返して、第2固定部材をベルトの長さ方向の中央よりの任意の箇所に固定することにより、ベルトの当該端部側の長さを調節することができる。もちろん、ベルトの他端側の端部側の長さも調節することが可能である。
第2に、ベルトの端部をベルトの他の部分に固定することにより、使用時におけるベルトの経路の形状を維持することに役立てることができる。
第2固定部材は、このような2つの役割の少なくとも一方を担わせることができる。第2固定部材が端部固定部材に存在する場合、第1固定部材が端部固定部材に存在しなくても良く、また、第1固定部材が端部固定部材に存在する場合、第2固定部材が端部固定部材に存在しなくても良い。第2固定部材は例えば、ベルクロ(商標)テープその他の面ファスナによって構成することが可能である。ボタンとボタン穴、二本ホック、リングバネホック、アメリカンホックその他の金属ホック等により第2固定部材を構成することも可能である。
他方、第1固定部材と第2固定部材との双方が端部固定部材に含まれている場合もあり得る。端部固定部材に上述の如き第1固定部材が存在し、且つ前記端部固定部材が、前記ベルトの両端にそれぞれ設けられた、前記ベルトの長さ方向の中央よりの所定の範囲に対して固定することのできるようになっている第2固定部材を備えている場合、前記第1固定部材は、前記ベルトの長さ方向に沿って移動可能として前記ベルトに取付けられていてもよい。この場合、第2固定部材によって、上述したようにして、ベルトの長さを調節することが可能となる。そして、折り返されることによって端部付近で二重となったベルトの端部(折り返された部分)に第1固定部材を移動させることによって、「使用時におけるベルトの両端」に第1固定部材を位置させることが可能となる。
【0016】
本願発明における上半身補助器具は、上述したように、保持部材を備えている。保持部材は、ベルトのうち被験者の右脇の下から被験者の身体の後側を通って被験者の左肩の上に至る部分と、ベルトのうち被験者の左脇の下から被験者の身体の後側を通って被験者の右脇の下に至る部分と、ベルトのうち被験者の右肩の上から被験者の身体の後側を通って被験者の左脇の下に至る部分という、ベルトの3つの部分の相対的な位置関係を、ベルトの長さ方向の移動を許容した状態で固定するためのものである。また、保持部材は、上半身補助器具が使用されていない状態のベルトに、上半身補助器具を使用するときに被験者が右腕を通す右ループと、被験者が左腕を通す左ループとを形成する機能も兼ね備えている。
これが可能な限り、保持部材の構成は自由である。
保持部材は、前記ベルトのうち前記被験者の右脇の下から前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の左肩の上に至る部分を通過させる第1孔と、前記ベルトのうち前記被験者の左脇の下から前記被験者の身体の後側を通って前記被験者の右脇の下に至る部分を通過させる第2孔と、前記ベルトのうち前記被験者の右肩の上から前記被験者の身体の後側を通って被験者の左脇の下に至る部分を通過させる第3孔と、を備えていてもよい。
この場合、第1孔、第2孔、第3孔は、「孔」という文言を便宜上用いているが、それらのうちの少なくとも1つは、「孔」ではなく、切り欠きであっても良い。つまり、「第1孔」は、「第1の孔又は切り欠き」と書くのが本当は正確なのであるが、第2孔、第3孔まで含めてそのように記載すると余りに冗長となるので、本願の明細書では、「第1の孔又は切り欠き」という意味で「第1孔」という文言を用いる。「第2孔」、「第3孔」も同様である。なお、孔の縁の一部が切れることにより孔が文言上は切り欠きと呼ぶべきものになっていても、切り欠きを通過するベルトがその経路を切り欠きによって規制されることは、ベルトを通すのが切り欠きであろうが孔であろうが変わりない。
保持部材が第1孔、第2孔、第3孔を備える場合、前記第1孔、前記第2孔、前記第3孔の少なくとも1つは複数の孔からなっていても構わない。もちろん、第1孔、第2孔、第3孔の複数、例えばすべてが複数の孔からなっていても構わない。第1孔が複数の孔で構成される場合、複数の孔の少なくとも1つが切り欠きであっても良いのは上述した場合と同様である。第2孔が複数の孔からなる場合、第3孔が複数の孔からなる場合も同様である。
第1孔及び第2孔、第2孔及び第3孔、第3孔及び第1孔のうちの少なくとも1つが、互いに連通した孔とされていてもよい。また、第1孔が複数の孔からなり、且つ第2孔が複数の孔からなる場合には、第1孔を構成する複数の孔の一つと第2孔を構成する複数の孔の一つとが互いに連通した孔となっていても良い。第2孔が複数の孔からなり、且つ第3孔が複数の孔からなる場合、及び第3孔が複数の孔からなり、且つ第1孔が複数の孔からなる場合も同様である。
【0017】
前記ベルトは、その長さ方向に伸縮性を備えていても良い。それによれば、上半身補助器具は、被験者の身体に良くフィットすることになるし、また、被験者の上半身を補助する効果をよく発揮する。
本願において、「伸縮性がある」という場合には、ベルトの所定の位置における幅方向の全長を30cmの間隔を空けてそれぞれ固定し、その状態で、支持された部分のベルトの中央に2kg重の荷重を下方向にかけた場合において、その伸び率(((伸びた後の長さ-元の長さ)/元の長さ)×100(%))が10%以上であることを意味するものとする。
同様に、補助ベルトもその長さ方向に伸縮性を備えていても良い。それにより、本願発明における上半身補助器具が被験者に与える腹圧を適度なものとすることが可能となる。この場合の伸縮性の定義は、上に同じである。なお、補助ベルトの伸縮性は、ベルトの伸縮性と同じであっても良いし、そうでなくても良い。上述したように、腹圧を大きくするには、ユーザが上半身補助器具を着用したときにおいて、補助ベルトにかかる張力が、ベルトにかかる張力よりも大きい方が一般的に好ましいが、補助ベルトの伸縮性を小さくすることにより補助ベルトにかかる張力を大きくすることが可能となる。
【0018】
前記補助ベルトは、その長さ方向に沿ってスライドできるような状態で、前記保持部材に取付けられていてもよい。つまり、保持部材に取付けられる補助ベルトは、保持部材に対して完全には固定されていない状態で保持部材に取付けることができる。
それにより、補助ベルトの保持部材の右側の部分と左側の部分に入る張力が等しくなり、被験者の身体の左右のバランスが良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態における上半身補助器具に含まれる上半身用ベルトの背面側から見た状態を示す斜視図。
図2図1に示した上半身補助器具の保持部材の周辺を拡大した、背面側から見た状態を示す斜視図。
図3図1に示した上半身補助器具が、右ループに被験者の右腕を、左ループに被験者の左腕を通すことによって被験者の上半身に装着された場合における正面図。
図4図1に示した上半身補助器具が、右ループに被験者の右腕を、左ループに被験者の左腕を通すことによって被験者の上半身に装着された場合における上半身用ベルトが辿る経路を説明するための図。
図5】(A)正面側から見た保持部材を示す図、(B)正面側から見た保持部材及び簡略化された上半身用ベルトを示す図。
図6】他の例による保持部材の斜視図。
図7】(A)背面側から見た他の例による保持部材及び上半身用ベルトを示す図、(B)正面側から見た他の例による保持部材及び上半身用ベルトを示す図。
図8】第1の使用方法により第1実施形態の上半身補助器具を被験者が装着する方法を説明するための正面図。
図9】第1の使用方法により第1実施形態の上半身補助器具を装着した使用状態を示す正面図。
図10】第1の使用方法により第1実施形態の上半身補助器具を装着した使用状態を示す左前側からの斜視図。
図11】第1の使用方法により第1実施形態の上半身補助器具を装着した使用状態を示す背面図。
図12】第2の使用方法により第1実施形態の上半身補助器具を被験者が装着する方法を説明するための正面図。
図13】第3の使用方法により第1実施形態の上半身補助器具を被験者が装着する方法を説明するための正面図。
図14】変形例の上半身補助器具を被験者が装着する方法を説明するための正面図。
図15】第1実施形態の上半身補助器具の第1右バックル、第1左バックル付近の拡大斜視図。
図16図1に示した上半身補助器具に含まれる補助布の(A)正面図と、(B)側面図。
図17】第2実施形態の上半身補助器具を第2の使用方法で被験者が装着する方法を説明するための正面図。
図18】第2の使用方法により第2実施形態の上半身補助器具を装着した使用状態を示す正面図。
図19】従来技術における上半身補助器具の背面図。
図20】従来技術における上半身補助器具の使用状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい第1、第2実施形態とその変形例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各実施形態、及びその変形例において共通する対象には共通する符号を付すものとし、共通する説明は場合により省略するものとする。
【0021】
≪第1実施形態≫
第1実施形態による上半身補助器具は、被験者が胸を張った姿勢の良い状態を保てるようにし、また、被験者の体が左右に振れるのを防止できるようにするためのものである。また、この実施形態による上半身補助器具は、被験者に腹圧を与える機能を有しており、更には、後述するように、被験者の両脇の下の筋肉を引き上げる機能をも有している。
この実施形態による上半身補助器具は後述するように、幾つか(3つ)の使用方法がある。3つの使用方法(それらのそれぞれを、「上半身補助器具の第1の使用方法」、「上半身補助器具の第2の使用方法」、「上半身補助器具の第3の使用方法」と称する。)では、後述するように、その両端付近におけるベルトの経路が異なる。それにより、各使用方法による上半身補助器具が奏する効果は、それぞれ異なるものとなる。
第1実施形態では、その使用方法の別によらず、本願発明の上半身補助器具におけるベルトに相当する上半身用ベルト30は、第1の経路を辿った状態で被験者の身体に装着されることになる。
【0022】
この上半身補助器具は、図1図2に示したように上半身用ベルト30と、補助ベルト40と、保持部材50とを含んでいる。図1は上半身補助器具の背面図、図2は上半身補助器具の後述する保持部材50周辺の拡大背面図である。
この実施形態における上半身用ベルト30は、1本物の帯状体である。上半身用ベルト30は、かなり細長い矩形形状であり、その幅は、これには限られないが、長さ方向のすべての部分で同一である。上半身用ベルト30の長さは、追って説明するような上半身用ベルトの使用方法に対応できる程度の長さとするのが好ましい。また、後述するように上半身用ベルト30は、その長さを調節できるようになっている。
上半身補助器具が用いられる場合において必要とされる上半身用ベルト30の長さは、上半身補助器具が、「上半身補助器具の第2の使用方法」で使用される場合に最も短く、「上半身補助器具の第3の使用方法」で使用される場合に最も長く、そして、「上半身補助器具の第1の使用方法」で使用される場合に必要となる長さはそれら2つの長さの間となる。
したがって、上半身補助器具が「上半身補助器具の第3の使用方法」で使用されることが予定されているのであれば、上半身用ベルト30に必要となる長さは長くなる。また、上半身用ベルト30の長さが、上半身補助器具を「上半身補助器具の第3の使用方法」で使用できるだけの長さを備えているのであれば、上半身用ベルト30の長さを短く調節する機能を上半身用ベルト30に与えることにより、その上半身補助器具は、「上半身補助器具の第1の使用方法」と「上半身補助器具の第2の使用方法」でも使用することができる。
この実施形態における上半身用ベルト30は、上半身補助器具が「上半身補助器具の第3の使用方法」でも使用されることが予定されているので、それを装着する被験者の体格にもよるが、その長さはこれには限られないが、300cm~400cmとされている。
また、これには限られないが、この実施形態の上半身用ベルト30は、この実施形態における「上半身補助器具の第1の使用方法」と「上半身補助器具の第2の使用方法」とで使用可能なように、その長さを、「上半身補助器具の第3の使用方法」で使用するときの長さよりも短く調節できるようになっている。もっとも上半身用ベルト30に長さを調節できる機能を与えることは必須ではない。たとえば、上半身補助器具が、「上半身補助器具の第1の使用方法」、「上半身補助器具の第2の使用方法」、「上半身補助器具の第3の使用方法」のいずれかの使用方法でしか使用されないことが前提となっているのであれば、上半身用ベルト30の長さは、その使用方法に対応した長さにその長さが固定されていても構わないし、或いはそれぞれの使用方法に対応した長さ範囲の中でのみ長さの調節を行えるようになっていても構わない。
これには限られないが、上半身補助器具が「上半身補助器具の第1の使用方法」で使用されるときに必要とされる上半身用ベルト30の長さは一般的に、上半身補助器具が「上半身補助器具の第3の使用方法」で使用されるときの上半身用ベルト30の長さよりも10cm~40cm程度短くなる。また、上半身補助器具が「上半身補助器具の第2の使用方法」で使用されるときに必要とされる上半身用ベルト30の長さは一般的に、「上半身補助器具の第1の使用方法」で使用されるときの上半身用ベルト30の長さよりも更に、60cm~100cm程度短くなる。
【0023】
また、上半身用ベルト30の幅は、3cm~10cm程度とするのが好ましい。この幅が3cm以下になると上半身補助器具を装着した被験者が痛みを感じることがあり、またこの幅が10cm以上となると被験者が歩行その他の動作を行いにくくなることがあるからである。この実施形態における上半身用ベルト30の幅は、これには限られないが4cm程度である。
上半身用ベルト30は、その長さ方向に伸縮性を有しており、これには限られないがこの実施形態では、布、より詳細には伸びる性質を持つ編布でできている。なお、補助ベルト40の場合もそうであるが、上半身用ベルト30において「伸縮性がある」というのは、上半身用ベルト30の所定の位置における幅方向の全長を30cmの間隔を空けてそれぞれ固定し、その状態で、支持された部分の上半身用ベルト30の中央に2kg重の荷重を下方向にかけた場合において、その伸び率(((伸びた後の長さ-元の長さ)/元の長さ)×100(%))が10%以上であることを意味する。これには限られないが、この実施形態における上半身用ベルト30の伸縮性は、上述した測定方法で測定した場合のその伸び率が30~50%程度、好ましくは40%±5%程度とされている。
【0024】
上半身用ベルト30の両端或いは両端付近の少なくとも一方の面には、面ファスナ31が設けられている。面ファスナ31は基本的に、上半身用ベルト30の長さを調節する役割を担う。面ファスナ31は例えば、ベルクロ(商標)テープによって構成することができる。
面ファスナ31は、上半身用ベルト30の少なくとも、後述するようにして上半身用ベルト30の長さを調節するときにおいて必要な範囲において、上半身用ベルト30の面ファスナ31が設けられている側の面に着脱自在な固定を行えるようになっている。これには限られないが、この実施形態では、面ファスナ31は、上半身用ベルト30の面ファスナ31が設けられている側の面であれば上半身用ベルト30の長さ方向のどこにでも着脱自在に固定できるようになっている。
面ファスナ31の上半身用ベルト30への取付け方法には、公知、或いは周知の方法を採用することができ、例えば縫製によってこれをなすことができる。なお、この実施形態における面ファスナ31は、上半身用ベルト30のどこにでも着脱自在な固定をなせるようになっているが、上半身用ベルト30のうち面ファスナ31が固定されることが予定された部分に、面ファスナ31と固定が可能な他の面ファスナを配しておき、上半身用ベルト30のうち他の面ファスナが存在する部分にのみ面ファスナ31を固定できるようにすることも可能である。更にいえば、上半身用ベルト30の適宜の位置に対する上半身用ベルト30の端部或いはその付近の着脱自在な固定は必ずしも面ファスナ31によらなければならないという理由はなく、例えば、公知或いは周知技術、具体的には、ボタンとボタン穴、二本ホック、リングバネホック、アメリカンホックその他の金属ホック等によって上述の着脱自在な固定を実現することも可能である。
【0025】
上半身用ベルト30が「上半身補助器具の第1の使用方法」又は「上半身補助器具の第2の使用方法」で使用されるとき、上半身用ベルト30は、その一端から例えば数十cm程度の適当な位置で折り返される。そして、折り返された上半身用ベルト30の一端側に設けられた面ファスナ31は、上半身用ベルト30の折り返された一端側の部分が上半身用ベルト30の折り返されていない部分と重なるようにした状態で、上半身用ベルト30の長さ方向の中央寄りの部分に固定される。上半身用ベルト30の他端側でも同様である。それにより、上半身用ベルト30は、その両端付近のそれぞれで長さ調節が可能となっており、ひいてはその全体の長さを調節できるようになっている。もちろん、上半身用ベルト30の長さの調節の方法はこれには限られず、公知或いは周知の方法を長さの調節のために採用することも可能である。
図1において、上半身用ベルト30のうち、保持部材50から右下に伸びている部分である右部分30Rは、そのような長さ調節が行われた後の状態を示している。第2右バックル20R(後述)の部分で折り返された上半身用ベルト30の先端に取付けられた面ファスナ31は、上半身用ベルト30の面ファスナ31と対向する面のうち、折り返された上半身用ベルト30の長さに相当する分だけ折り返された部分から離れたところに固定されている。当然、右部分30Rにおいて折り返される上半身用ベルト30の長さが長ければ、右部分30Rの長さは短くなり、上半身用ベルト30の全長は短くなる。
他方、図1において、上半身用ベルト30のうち、保持部材50から左下に伸びている部分である左部分30Lは、長さ調節が終わっていない状態である。上半身用ベルト30は折り返されてはいるが、面ファスナ31がまだ、上半身用ベルト30の適宜の位置に固定されていない。右部分30Rと同様に面ファスナ31を固定すると、左部分30Lの長さも元より短く調節されることになる。
特段の事情が無い限り、上半身用ベルトにおける右部分30Rと、左部分30Lとにおいて折り返される上半身用ベルト30の長さは同じにし、それにより右部分30Rと左部分30Lとの長さを同じにする。
【0026】
面ファスナ31は、「上半身補助器具の第3の使用方法」で上半身補助器具が用いられる場合においては、上半身用ベルト30の長さの調節には用いられない。その場合においても面ファスナ31はある役割を担っているが、その場合において面ファスナ31が担う役割については後述することとする。その役割を果たす場合においても、面ファスナ31が持つ、上半身用ベルト30の面ファスナ31が取付けられている側の面の所定の位置に固定可能であるという性質が利用される。
【0027】
上半身用ベルト30の右部分30Rと、左部分30Lとにはそれぞれ、第1右バックル10Rと、第1左バックル10Lとが設けられている。図1では、第1右バックル10Rは右部分30Rの中程に、第1左バックル10Lは左部分30Lの中程にそれぞれ設けられているが、第1右バックル10Rは右部分30Rに対して右部分30Rの長さ方向に移動可能であり、第1左バックル10Lは左部分30Lに対して左部分30Lの長さ方向に移動可能であるから、図1に示された第1右バックル10Rの右部分30Rに対する位置と、左部分30Lに対する第1左バックル10Lの位置とは、いずれも例示である。なお、第1右バックル10Rと、第1左バックル10Lが上半身用ベルト30の長さ方向に移動可能になっているということは、必須ではない。
第1右バックル10Rは、第1右バックル本体11Rと、第1右係合部材12Rとを備えている。第1右バックル本体11Rはバックルであり、上半身用ベルト30の右部分30Rを通過させている。第1右バックル本体11Rは上半身用ベルト30に対して移動可能であり、また、上半身用ベルト30の右部分30Rにおける任意の位置に位置決めして固定することができるようになっている。任意のベルトに対してベルトの長さ方向に移動可能で、且つ任意の位置に位置決めして固定することのできるバックルは公知或いは周知であるから、第1右バックル本体11Rにはそのような公知或いは周知のバックルを応用すれば良い。
第1右係合部材12Rは、後述する第1左係合部材との着脱自在な固定をなすためのものであり、それが可能な限り、公知或いは周知の部材とすることができる。第1右係合部材12Rは、第1右バックル本体11Rに固定されており、第1右バックル本体11Rとともに上半身用ベルト30の右部分30Rに沿って移動可能とされている。第1右係合部材12Rは、第1左係合部材との関係でその構造が決定されるが、例えば、面ファスナによってこれを構成することができ、或いは、サイドリリースバックルやフロントリリースバックルによってこれを構成することができる。サイドリリースバックルの例は、株式会社ニフコが製造、販売するサイドリリースバックル(品番SR、TSR H、YSR等)、フロントリリースバックルの例は、同社が製造、販売するフロントリリースバックル(品番FR、MFR等)である。例示したサイドリリースバックル、及びフロントリリースバックルはいずれも樹脂製であるが、金属製であっても構わない。第1右係合部材12Rは、第1右バックル本体11Rに対して角度を変化させられるようにするのが好ましい。これには限られないが、この実施形態では、布製或いは革製の接続片18によって、両者は角度を可変にできるようにして接続されている(図15の拡大図参照)。
第1左バックル10Lは、第1右バックル10Rと概ね同じ構造となっている。第1左バックル10Lは、第1左バックル本体11Lと、第1左係合部材12Lとにより構成されている。両者の角度を可変にすべきなのは、第1右バックル10Rの場合と同じである。第1左バックル本体11Lは、第1右バックル本体11Rと同様に構成されており、上半身用ベルト30の左部分30Lに対して、上半身用ベルト30の長さ方向の任意の位置に位置決め可能として取り付けられている。第1左係合部材12Lは、第1右係合部材12Rと着脱自在な固定(この実施形態では係合)を行えるようになっている。
第1右係合部材12Rと、第1左係合部材12Lとは、これには限られないが、この実施形態では、一組のサイドリリースバックルである。それらの一方がオス、他方がメスの関係となっており、詳しい説明は省略するが、それらを互いに係合させると両者は、メスに相当する第1右係合部材12R又は第1左係合部材12Lの側面に設けられたボタンを押さない限り、両者の係合が維持されるようになっている。ボタンを押せば第1右係合部材12Rと第1左係合部材12Lの係合は解かれる。
【0028】
上半身用ベルト30の右部分30Rと、左部分30Lの両先端にはそれぞれ、第2右バックル20Rと、第2左バックル20Lとが設けられている。これらの構成は概ね第1右バックル10R及び第1左バックル10Lと同じである。第1右バックル10R及び第1左バックル10Lと同じく、第2右バックル20Rと、第2左バックル20Lは、上半身用ベルト30に沿って移動することができるようになっている。したがって、図1において示された第2右バックル20Rの右部分30Rにおける位置と、第2左バックル20Lの左部分30Lにおける位置とは、第1右バックル10R及び第1左バックル10Lの場合と同じく単なる例示である。なお、第2右バックル20Rと、第2左バックル20Lが上半身用ベルト30の長さ方向に移動可能になっているということは、必須ではない。
第2右バックル20Rは、第2右バックル本体21Rと、第2右係合部材22Rとを備えている。第2右バックル本体21Rはバックルであり、上半身用ベルト30の右部分30Rの所定の位置に取付けられている。第2右バックル本体21Rは第1右バックル本体11Rと同じものとすることができ、この実施形態ではそうされている。
第2右係合部材22Rは、後述する第2左係合部材との着脱自在な固定をなすためのものであり、それが可能な限り、公知或いは周知の部材とすることができる。第2右係合部材22Rは、第2右バックル本体21Rに固定されている。両者の角度を可変とすべきは上述した通りである。
第2左バックル20Lは、第2左バックル本体21Lと、第2左係合部材22Lとにより構成されている。第2左バックル本体21Lは、第2右バックル本体21Rと同様に構成されており、上半身用ベルト30の左部分30Lの適当な位置に取付けられている。第2左係合部材22Lは、第2右係合部材22Rと着脱自在な固定(この実施形態では係合)を行えるようになっており、第2左バックル本体21Lに固定されている。両者の角度を可変とすべきは上述した通りである。
第2右係合部材22R、及び第2左係合部材22Lは、これには限られないがこの実施形態では、第1右係合部材12R、及び第1左係合部材12Lと同じく、一組のサイドリリースバックルにより構成することができる。これには限られないが、この実施形態では、第2右係合部材22R、及び第2左係合部材22Lと、第1右係合部材12R、及び第1左係合部材12Lとは、同じサイドリリースバックルにより構成されている。
【0029】
この実施形態では、上半身補助器具に含まれる上半身用ベルト30は、上半身補助器具の使用時において、図3の状態で体に巻き付いた状態となるように、予め形作られている。この形は、後述する保持部材によって維持されるようになっている。
【0030】
図3は、被験者を前方から見た図である。上半身用ベルト30のうち破線で示された部分は、被験者の身体の背面側に位置することを示している。なお、図3では、図の簡単のため、補助ベルト40の記載は省略している。
図3において上半身用ベルト30がどのような経路を辿っているのかを、図4を参照して説明する。もっとも、上半身用ベルト30は、図4に示した順番で被験者の身体に巻き付けられるのではなく、被験者が、上半身用ベルト30における後述する右ループRLに右腕を、左ループLLに左腕を通した状態で既に、上半身用ベルト30は、図3乃至図4(d)に示した状態となる。
なお、図4では、後述する保持部材の図示を省略している。また、上半身用ベルト30の右部分30Rと左部分30Lはともに、それらの先端側の一定範囲の図示を省略している。
【0031】
図4で示した例では、上半身用ベルト30の始点は、上半身用ベルト30の右部分30Rの途中である。上半身用ベルト30の先端側(上半身用ベルト30の始点から遠い側)は右部分30Rから図4では図示を省略の保持部材を通り、被験者の身体の後側で、被験者の左側の肩の上にまで至り、被験者の左肩越しに、被験者の身体の後方から前方に移動させられる(図4(a))。
次いで、上半身用ベルト30の先端側は、同(b)に示したように、被験者の左脇の下を通して被験者の身体の後側に移動し、その先端側を略水平に引っ張ることにより、被験者の身体の後側で被験者の右側の脇の下にまで至る。
次いで、上半身用ベルト30の先端側は、同(c)に示したように、被験者の右脇の下を通して被験者の身体の前側に引き出され、そのまま被験者の身体の前側を通って、被験者の右の肩の上に至る。
次いで、上半身用ベルト30の先端側は、同(d)に示したように、被験者の右の肩越しに被験者の身体の後側に移動し、更に被験者の身体の後側で、図示を省略の保持部材を通る。上半身用ベルト30における保持部材から先の部分が左部分30Lである。
【0032】
上半身補助器具における上半身用ベルト30は、このように、いわば絡まりあったともいえるような複雑な形状、或いは経路を形作っている。このような複雑な形状を上半身用ベルト30に与えるのにはもちろん意味がある。ただし、上半身用ベルト30をそのまま使用し、適当に丸めて保管したりすると、上半身用ベルト30は解くのに困難が生じる程に絡まりあったりして不便を生じるおそれがある。つまり、上半身用ベルト30は、せっかく作った上述の上半身用ベルト30の形状、或いは経路をそのままの状態で維持できるようにするのが好ましい。
つまり、上半身用ベルト30には、その形状を維持する機能が付加されるのが好ましい。この機能をこの実施形態では、保持部材という1つの部品で達成することとしている。
【0033】
この実施形態における保持部材50は、特にこの形状に限られるわけではないが、図1図3に示されたように、全体として、概ね亀の甲羅のような形状をしている。
保持部材50は、必ずしもこの限りではないが、この実施形態では布によって構成されている。必ずしもこの限りではないが、保持部材50を構成する布はこの実施形態では3枚である。3枚の布が重ね合わされ互いに固定されることにより、この実施形態の保持部材50は構成されている。3枚の布は、後述するように背面布、保持布、及び補助布である。
図1、2に現れている、概ね亀の甲羅状の形状の布が背面布50Aである。背面布50Aの、図2で破線で記載され、また、図3で網掛けされた矩形で記載された範囲の背面布50Aの裏側(図2における奥側)の面に、保持布50Bが固定されている。保持布50Bの例えば四隅のみが背面布50Aに固定されている。保持布50Bと背面布50Aの固定の方法はどのように行っても良いが、例えば、接着或いは縫製によりこれを行うことができる。
保持布50Bの構成を、図5(A)に示す。これには限られないが、この実施形態における保持部材50における保持布50Bは矩形である。図5(A)、(B)ともに保持布50Bを正面(図2における奥側方向)から見た図である。
保持布50Bは、それを貫通する3つの孔51、52、53を設けた、極めて簡単な構成を採用している。3つの孔51、52、53はこれには限られないがいずれも細長く構成されている。孔51、52、53のうち、孔51は、他の孔52、53よりも相対的に上方に位置しており、上半身補助器具が直立した状態の被験者に装着された状態で水平となるようになっている。他方、孔52、53は、孔51に対して相対的に下にあり、且つそれらは下に向かうに連れて保持部材50の或いは保持布50Bの外側から内側に近づくように、孔51に対して斜めに配されている。
各孔51、52、53の幅は、上半身用ベルト30の厚さよりも大きくされている。孔51の長さは、孔52、53の長さよりも相対的に短くされている。孔52、53の長さは同じである。各孔51、52、53の長さは、少なくとも上半身用ベルト30の幅よりも大きくされている。つまり、孔51、52、53は、その中を、上半身用ベルト30が折り曲がることなく通過することができるように構成されている。更に言えば、これには限られないが、この実施形態における孔51、52、53は、その中を、上半身用ベルト30の異なる部位が折り曲がることなく2回通過できるように構成されている。
【0034】
各孔51、52、53を上半身用ベルト30がどのように通過するのかを、図2図3図5(B)を用いて説明する。上半身用ベルト30は、上半身用ベルト30のうち保持部材50の裏側に隠れている部分が破線で描かれ、それ以外の部分が実線で描かれている。
孔51を、上半身用ベルト30のうち、右部分30Rから被験者の身体の後側を通って被験者の左肩の上に至る部分の途中の部分と、被験者の右肩の上から被験者の身体の後側を通って左部分30Lへ至る部分の途中の部分とが通過するようになっている。
孔51の左下に位置する孔52を、上半身用ベルト30のうち、右部分30Rから被験者の身体の後側を通って被験者の左肩の上に至る部分の途中の部分と、被験者の左脇の下から被験者の身体の後側を通って被験者の右脇の下に至る部分の途中の部分とが通過するようになっている。
孔51の右下に位置する孔53を、上半身用ベルト30のうち、被験者の右肩の上から被験者の身体の後側を通って左部分30Lへ至る部分の途中の部分と、上半身用ベルトの被験者の左脇の下から被験者の身体の後側を通って被験者の右脇の下に至る部分の途中の部分とが通過するようになっている。
つまり、上半身用ベルト30のうち、右部分30Rから被験者の身体の後側を通って被験者の左肩の上に至る部分は、上に位置する孔51とその左下の孔52とを通る。これにより、孔51と、孔52との組合せにより、上半身用ベルト30のうち、右部分30Rから被験者の身体の後側を通って被験者の左肩の上に至る部分はその経路を規定される。より詳細には、上半身用ベルト30の当該部分が当接している孔51の右端と、孔52の上端によって、上半身用ベルト30の右部分30Rから被験者の身体の後側を通って被験者の左肩の上に至る部分はその経路を規定されることになる。
上半身用ベルト30のうち、被験者の右肩の上から被験者の身体の後側を通って左部分30Lへ至る部分は、上に位置する孔51とその右下の孔53とを通る。これにより、孔51と、孔53との組合せにより、上半身用ベルト30のうち、被験者の右肩の上から被験者の身体の後側を通って左部分30Lへ至る部分はその経路を規定される。より詳細には、上半身用ベルト30の当該部分が当接している孔51の左端と、孔53の上端によって、上半身用ベルト30の被験者の右肩の上から被験者の身体の後側を通って左部分30Lへ至る部分はその経路を規定されることになる。
上半身用ベルト30のうち、被験者の左脇の下から被験者の身体の後側を通って被験者の右脇の下に至る部分は、左右に並ぶ孔52と孔53とを通る。これにより、孔52と、孔53との組合せにより、上半身用ベルト30のうち、被験者の左脇の下から被験者の身体の後側を通って被験者の右脇の下に至る部分はその経路を規定される。より詳細には、上半身用ベルト30の当該部分が当接している孔52の下端と、孔53の下端によって、上半身用ベルト30の被験者の左脇の下から被験者の身体の後側を通って被験者の右脇の下に至る部分はその経路を規定されることになる。
このようにして、上半身用ベルト30のうちの、右部分30Rから被験者の身体の後側を通って被験者の左肩の上に至る部分と、被験者の右肩の上から被験者の身体の後側を通って左部分30Lへ至る部分との経路が規定されるので、上半身用ベルト30のうちの、右部分30Rから被験者の身体の後側を通って被験者の左肩の上に至る部分と、被験者の右肩の上から被験者の身体の後側を通って左部分30Lへ至る部分とが形成する交点の位置が保持部材50によって規定される。また、上半身用ベルト30のうちの、被験者の左脇の下から被験者の身体の後側を通って被験者の右脇の下に至る部分である、水平な部分の高さも保持部材50によって規定されることになる。
これにより、上半身用ベルト30が作る上述の交点から、上半身用ベルト30の被験者の背中側における水平な部分(結果的に、この水平な部分はその水平方向の中央が上方に引き上げられるので、中央が高くなり、水平ではなくなる場合がある。)までの距離が、保持部材50によって規定されることになる。この実施形態では、この距離D2(図5(B)参照)は、7cm以内、より具体的には6cm程度に保たれるようにされている。上述した3つの孔51、52、53の長さ、幅、及び互いの位置関係と、上半身用ベルト30の幅との関係を適切に調節することにより、上述の距離D2を7cm以内に保つことが可能となる。
もっとも距離D2は7cmよりも大きくすることも可能であり、上半身用ベルト30の被験者の背中側における水平な部分を文字通り水平な一直線状とすることも可能である。
【0035】
この実施形態における保持部材50は、上半身用ベルト30に対して取付けられたままとされる。上半身用ベルト30と保持部材50との相対的な位置関係は、図5(B)に示された通りであり、或いは図1図3に示された位置関係である。換言すれば、保持部材50は、上半身補助器具が使用されているときも、使用されずに例えば所定の保管場所で保管されているときでも、上半身用ベルト30の図1図3、及び図5(B)に示した位置に取付けられたままであり、不使用時においても上半身用ベルト30から取外されることがない。
【0036】
保持布50Bのうち、図5(A)、(B)において一点鎖線で示された範囲に、補助布50Cが取付けられている。補助布50Cを図16に示す。
図16(A)が正面図、同(B)が側面図である。
補助布50Cは、補助ベルト40を支持する、或いは保持部材50に取付けるための布である。補助布50Cは、これには限られないが矩形形状である。補助布50Cは、保持布50Bの一方の面、これには限られないが、この実施形態では、保持部材50Bの背面(図1において手前側の面)に固定されている。保持布50Cは、背面布50Aに固定されていても良い。補助布50Cは、上半身用ベルト30と干渉しないように、例えば、その四隅が保持布50Bに固定されている。補助布50Cと保持布50Bとの固定はどのようにして行っても良いが、縫製、接着等の公知或いは周知技術により、かかる固定をなすことができる。
補助布50Cには、これも布でできたループ片50C1が取付けられている。ループ片50C1の補助布50Cへの取付け方は、公知或いは周知技術によることができ、例えば、縫製、接着等によりそれをなすことができる。
ループ片50C1は細い、これには限られないが矩形の布であり、その長さ方向の両端を補助布50Cに例えば縫製によって固定することによって、補助布50Cとの協働により孔50C2を形成するためのものである。この孔50C2は、補助ベルト40を通過させるためのものであり、孔50C2を通過させることにより、補助ベルト40は、補助布50Cに対して、ひいては保持部材50に対して取付けられることになる。そのようにして保持部材50に取付けられた補助ベルト40は、保持部材50に対して、その長さ方向にスライド移動可能となる。
孔50C2及びループ片50C1はこの実施形態では2つとされているが、これはこの限りではない。
なお、この実施形態では、補助ベルト40は、その長さ方向にスライド移動可能として保持部材50に対して取付けられているが、保持部材50に対するスライド移動は必須ではない。その場合、補助布50Cからループ片50C1を省略することが可能であり、補助ベルト40は、例えば、縫製、接着等によって補助布50Cに対して、その長さ方向の中心付近を固定されていても構わない。或いは補助布50Cすら省略して、補助ベルト40を保持布50B或いは背面布50Aに直接固定することも可能である。
【0037】
なお、保持部材50のうちの保持布50Bは、例えば、図6図7に示したようなものとすることができる。保持部材50をこのようなものとする場合には、背面布50Aを省略することができる。図6図7に示したものを、他の例による保持部材50Xと称することにする。なお、図6は他の例による保持部材50X単独の斜視図、図7(A)は、背面側から見た保持部材50X及び上半身用ベルト30を示す図、同(B)は、正面側から見た保持部材50X及び上半身用ベルト30を示す図である。雑にいえば、他の例による保持部材50Xは、図1図3、及び図5に示した保持部材50から背面布50Aを除くとともに、残った保持布50Bのうち、3つの孔51、52、53で囲まれた略三角形の部分(正確には、3つの孔51、52、53の僅かに外側の範囲を含む部分)のみを残して、矩形であった保持布50Bの形状を略三角形としたものである。
また、他の例による保持部材50Xは、一定の剛性を有する樹脂によってできており、また、いずれも二等辺三角形の環である、小環55と、大環56とを備えている。両二等辺三角形は、短辺よりも長辺が例えば1.5倍程度長い。これには限られないが、小環55と大環56とは相似形状であり、前者が後者よりも一回り小さい。小環55と大環56との間には幾らかの隙間があり、且つ小環55と大環56とは平行な位置関係にある。小環55と大環56とは、それらの重心位置が互いに略対応しており、小環55側から見れば、小環55の周りに大環56が一回り大きく食み出した状態となっている。
小環55と大環56は、それらの対応する頂点同士を、柱に相当するブリッジ57で接続されている。ブリッジ57の長さにより、小環55と大環56との距離が定まり、また、ブリッジ57の存在により、小環55と大環56との関係が平行に保たれるようになっている。小環55の図6における上面から大環56の図6における下面までの距離は概ね7mm~8mm程度である。つまり、保持部材50Xは薄く、全体として板状であると言える。
小環55と大環56との間には上述のように隙間があるが、その隙間はブリッジ57で3つに区切られている。また、他の例による保持部材50Xは、上半身補助器具の使用時における上側にその底辺が位置するようにして上半身用ベルト30に取りつけて用いられる。なお、これには限られないが、上半身補助器具の使用時において、小環55と大環56のうち、大環56が被験者の背中に当接することになる。その結果、小環55と大環56との間に存在する、小環55及び大環56の形状である二等辺三角形の3つの辺に対応した3つの孔57A、57B、57Cは、図5(A)、(B)を用いて説明した保持部材50における孔51、52、53にそれぞれ対応することになる。他の例による保持部材50Xにおける3つの孔57A、57B、57Cの相対的な位置関係と、大きさは、孔51、52、53に倣うことができる。また、3つの孔57A、57B、57Cには、上半身用ベルト30のうち、孔51、52、53を通ったのと同じ部分が通される(図7参照)。これにて、他の例による保持部材50Xは、上述した保持部材50のうちの保持布50Bと同等の機能を果たすことになる。
この例における他の例による保持部材50Xを用いても、上半身用ベルト30が作る上述の交点から、上半身用ベルト30の被験者の背中側における水平な部分までの距離を7cm以内に保つことが可能となる。図6図7に示した他の例による保持部材50Xを用いた場合には、上述した保持部材50を用いたときよりも上述の距離が短くされており、その距離は1cm内外である。もっとも、この距離がより大きくても良いのは、保持部材50の場合と同様である。
保持布50Bの代わりとして他の例による保持部材50Xを用いる場合であっても、補助布50Cをそのまま他の例による保持部材50Xに組み合わせることにより、長さ方向にスライド移動可能な状態で、他の例による保持部材50Xに対して補助ベルト40を取付けることが可能である。もちろん、孔50C2に相当する、孔50C2と同様に補助ベルト40を通すことのできる孔を他の例による保持部材50X自体に設けることにより、保持布50Cを省略して、他の例による保持部材50Xに対して直接、補助ベルト40を、その長さ方向にスライド移動可能な態様で取付けることも可能である。
【0038】
上半身用ベルト30に上述したような保持部材50(又は、他の例による保持部材50X)が取付けられることにより、例えば図1図2に示したように、上半身用ベルト30には、左右に1つずつループが存在することになる。
図1図2において左側に位置するのが左ループLLであり、右側に位置するのが右ループRLである。左ループLLは、上半身補助器具を使用するときに、被験者が左腕を通し、右ループRLは、上半身補助器具を使用するときに、被験者が右腕を通すためのものである。
上半身用ベルト30に保持部材50が取付けられたままの状態となっているので、右ループRLと左ループLLはともに、上半身補助器具の使用時にも不使用時にも存在したままの状態となる。
ただし、孔51、52、53(或いは、孔57A、57B、57C)の内部を上半身用ベルト30はその長さ方向に移動できるので、右ループRLと左ループLLの大きさはそれぞれ調節可能である。
【0039】
補助ベルト40は、一本物のベルトである。補助ベルト40は、上半身用ベルト30を短くしたものであると言える。図1図2では補助ベルト40の幅は上半身用ベルト30よりも狭く描かれているがこれはこの限りではなく、その幅は上半身用ベルト30で許容される幅から選択される。
これには限られないがこの実施形態では、補助ベルト40はその長さ方向に伸縮性を備えている。補助ベルト40に与える伸縮性は、上半身用ベルト30に与えるべき、上述した上半身用ベルト30で許容される伸縮性の範囲から選択することができる。補助ベルト40の伸縮性と上半身用ベルト30の伸縮性は同じでも良いし、そうでなくてもよい。
補助ベルト40は、その使用時において、換言すれば、その両端が上半身用ベルト30に後述するようにして着脱自在に固定されたときにおいて張力が入るような長さとされている。その長さは一般的に、これには限られないが、50~80cmである。もっとも、補助ベルト40には、その全体の長さを調節することができるような部材が取付けられていても良い。この部材は、公知或いは周知のものとすることができ、例えば、バックル状のアジャスタをその部材として採用することができる。アジャスタの例は、YKK株式会社が製造販売する鞄用アジャスタである「LA-S」シリーズである。
補助ベルト40の一方の面(図1における奥側の面)の両端には、ベルクロテープその他の面ファスナ41が取付けられている。面ファスナ41は、上半身用ベルト30の適宜の位置と補助ベルト40の両端との着脱自在な固定をなすためのものである。面ファスナ41は、上半身用ベルト30の、被験者の身体に装着された状態で外部に露出する面のどこにでも着脱自在に固定できるようになっている。もちろん面ファスナ41は、上半身用ベルト30のうち、補助ベルト40の両端が固定されることが予定されている範囲にのみ着脱自在に固定できるようになっていれば足りる。また、かかる着脱自在な固定が可能なのであれば、面ファスナ41は、面ファスナによって構成する必要はなく、金属ホックやボタン等に置換可能である。
【0040】
以上で説明した上半身補助器具の使用方法を以下説明する。
既に述べたように、この実施形態における上半身補助器具には、「上半身補助器具の第1の使用方法」、「上半身補助器具の第2の使用方法」、「上半身補助器具の第3の使用方法」の三種類の使用方法が想定されている。
以下、それら三種類の使用方法について順に説明する。
【0041】
(上半身補助器具の第1の使用方法)
上半身補助器具の第1の使用方法(以下、単に「第1の使用方法」という場合がある。上半身補助器具の第2の使用方法、上半身補助器具の第3の使用方法もこれに準ずる。)で上半身補助器具を用いる場合、まず、上半身用ベルト30の長さを、第1の使用方法に相応しい長さに調節する。
上半身用ベルト30の長さの調節には、上述したように面ファスナ31を利用する。まず、図1の上半身用ベルト30の左部分30Lに示されたように、上半身用ベルト30の右部分30Rと左部分30Lとを各々所定長さ(通常は同じ長さ)だけ折返し、そして図1の上半身用ベルト30の右部分30Rで示されたように、右部分30R及び左部分30Lの先端にある面ファスナ31を、右部分30R又は左部分30Lのうち、折り返された上記部分から折り返された右部分30R又は左部分30Lの長さ分だけ保持部材50寄りの位置に着脱自在に固定する。
そうすることにより、右部分30Rと左部分30Lの先端側の所定の範囲では上半身用ベルト30が二重になり、上半身用ベルト30が二重となった分だけ右部分30Rと左部分30Lの長さが短くなる。上半身用ベルト30はそもそも伸縮性を有するので、上半身用ベルト30の右部分30Rと左部分30Lの長さの調節は、それ程厳密に行う必要はない。
そして、右部分30Rの折り返された位置に、第2右バックル20Rを、左部分30Lの折り返された位置に、第2左バックル20Lを、それぞれ移動させる。そうすることにより、先端側が折り返された状態における右部分30Rの先端に第2右バックル20Rが、先端側が折り返された状態における左部分30Lの先端に第2左バックル20Lが、それぞれ位置することになる。
これにて、上半身用ベルト30の長さの調節が終わる。
【0042】
次いで、被験者は、上半身補助器具を装着する。上半身補助器具を装着する場合、右ループRLに右腕を、左ループLLに左腕をそれぞれ通して、保持部材50が被験者の背中に当接するようにする。ナップサックを背負う要領である。このとき、第1右バックル10Rの第1右係合部材12Rと、第1左バックル10Lの第1左係合部材12Lとは互いに固定されておらず、また、第2右バックル20Rの第2右係合部材22Rと、第2左バックル20Lの第2左係合部材22Lとは互いに固定されていない状態である。
この状態では、上半身補助器具は、図3図4(d)に示した状態となっている。
【0043】
ここから、被験者は、上半身補助器具の装着を終了させる。その方法を、図8を用いて説明する。図8における記載の方法は、図4に準じている。図8では、保持部材50と補助ベルト40の記載は省略されている。
図8(a)は、図3図4(d)で示した状態と同じである。この時点から先の上半身補助器具の装着の仕方を以下説明する。
まず、上半身用ベルト30のうち背中側に垂れ下がった右部分30Rの先端側を、右腰の上辺りで被験者の身体の前に移動させ、第1右バックル10Rが腹の前に位置するようにする。同様に、上半身用ベルト30のうち背中側に垂れ下がった左部分30Lの先端側を、左腰の上辺りで被験者の身体の前に移動させ、第1左バックル10Lが腹の前に位置するようにする。そして、第1右バックル10Rの第1右係合部材12Rと、第1左バックル10Lの第1左係合部材12Lとを互いに係合させる(図8(b))。第1右係合部材12Rと、第1左係合部材12Lとは、オスとメスの一組のサイドリリースバックルであるので、それらのオス側の凸部をメス側の凹部に挿入することによって、両者は着脱自在に固定されることになる。なお、予め調節しておいても構わないが、適切な位置で第1右係合部材12Rと、第1左係合部材12Lとを係合させられるように、第1右係合部材12Rと、第1左係合部材12Lとを係合させる際に、右部分30Rの長さ方向における第1右バックル10Rの位置と、左部分30Lの長さ方向における第1左バックル10Lの位置とを必要に応じて調節する。
このとき、右部分30Rの第1右バックル10Rよりも先端側の部分と、左部分30Lの第1左バックル10Lよりも先端側の部分とは、第1右係合部材12Rと、第1左係合部材12Lの下側に垂れ下がった状態となる。
次いで、上半身用ベルト30の右部分30Rのうち第1右バックル10Rから垂れ下がった部分の先端側を、右腰の辺りで被験者の身体の後ろに移動させ、身体の後側で被験者の左腰の外側に引出す。同様に、上半身用ベルト30の左部分30Lのうち第1左バックル10Lから垂れ下がった部分の先端側を、左腰の辺りで被験者の身体の後ろに移動させ、身体の後側で被験者の右腰の外側に引出す(図8(c))。右部分30Rも左部分30Lも、臀部の辺り(臀部にかかるか、その上下)を横切ることになる。
次いで、上半身用ベルト30の右部分30Rの先端を、身体の前側で恥骨(或いはその下5cm~その上15cm程度くらいまでの範囲)のあたりまで引っ張る。同様に、上半身用ベルト30の左部分30Lの先端を、身体の前側で恥骨(或いはその下5cm~その上15cm程度くらいまでの範囲)のあたりまで引っ張る。そして、右部分30Rの先端(折り返された部分)に位置している第2右バックル20Rの第2右係合部材22Rを、左部分30Lの先端(折り返された部分)に位置している第2左バックル20Lの第2左係合部材22Lと係合させることにより、互いに着脱自在に固定する(図8(d))。
これにて、上半身用ベルト30が被験者の身体に装着される。この状態で上半身用ベルト30には張力が入っている。
【0044】
この状態では、補助ベルト40は、保持部材50からその両端が垂れ下がった状態となっている。
被験者は、補助ベルト40の右側の端部を身体の前に引き出し、補助ベルト40の右側の端部を、上半身用ベルト30のうち、被験者の腹部の前を左上がりに横切っている部分(右腰から第1右バックル10Rの間の部分)のうちの適当な部分(右腰から第1右バックル10Rの間の部分のうち、その長さ方向の中央付近のその長さの40%程度の範囲内であるのが好ましい。)に着脱自在に固定する。かかる固定には、補助ベルト40の右側の端部付近に取付けられた面ファスナ41を用いる。
他方、被験者は、補助ベルト40の左側の端部を身体の前に引き出し、補助ベルト40の左側の端部を、上半身用ベルト30のうち、被験者の腹部の前を右上がりに横切っている部分(左腰から第1左バックル10Lの間の部分)のうちの適当な部分(左腰から第1左バックル10Lの間の部分のうち、その長さ方向の中央付近のその長さの40%程度の範囲内であるのが好ましい。)に着脱自在に固定する。かかる固定には、補助ベルト40の左側の端部付近に取付けられた面ファスナ41を用いる。
以上により、第1の使用方法における上半身補助器具の装着が終了する。
第1の使用方法で使用される場合において上半身補助器具を装着した被験者の正面図、左斜め前から見た斜視図、背面図をそれぞれ図9、10、11に示す。
この状態で、上半身用ベルト30と補助ベルト40の双方に張力が入っており、この実施形態では、前者にかかる張力よりも後者にかかる張力が大きくなっている。
補助ベルト40の右側の先端側は、上半身用ベルト30のうちの、右腰から第1右バックル10Rの間を横切る左上がりの部分の下側において、上記上半身用ベルト30の当該部分と略平行な状態で、被験者の腹を横切る。この状態で補助ベルト40には張力が入っているので、上半身用ベルト30の上記部分は、保持部材50に向けて引かれるから、補助ベルト40自体が被験者の腹部に対して与える腹圧もあり、被験者の腹部に対して与えられる腹圧は大きくなる。
補助ベルト40の左側の先端側は、上半身用ベルト30のうちの、左腰から第1左バックル10Lの間を横切る右上がりの部分の下側において、上記上半身用ベルト30の当該部分と略平行な状態で、被験者の腹を横切る。この状態で補助ベルト40には張力が入っているので、上半身用ベルト30の上記部分は、保持部材50に向けて引かれるから、補助ベルト40自体が被験者の腹部に対して与える腹圧もあり、被験者の腹部に対して与えられる腹圧は大きくなる。
なお、上半身用ベルト30の右部分30Rの先端と、左部分30Lの先端とを接続する位置(第2右バックル20Rの第2右係合部材22Rと、第2左バックル20Lの第2左係合部材22Lとが係合される位置)を恥骨の上10数cmの位置、例えば臍の前あたりの位置とすると、右ベルト30Rと左ベルト30Lは、それらが交差する部分の周辺のみならず、それらの先端の周辺でも被験者の腹に腹圧を与えることになる。これにより、被験者に腹圧をかけることによる上述の効果がより強調されることになる。
【0045】
上半身用ベルト30の長さは適当に調節されているので、上半身用ベルト30の全体には適度な張力が入っている。もちろん、上半身用ベルト30の長さを長く調節すればその張力は小さくなり、上半身用ベルト30の長さを短く調節すればその張力は大きくなる。補助ベルト40に入る張力も、上述したアジャスタその他の部材を用いれば調節可能である。
上半身用ベルト30には適当なテンションがかかっている。それにより、被験者の両肩が上半身用ベルト30によって後方に引かれることになるので、被験者は胸を張った姿勢の良い状態を自然に保てるようになる。また、上半身用ベルト30は、被験者が歩行を行うときに被験者の体が左右に振れるのと回転するのを防止できるようになるので、被験者は例えば歩行時においても姿勢の良い状態をより良く保てるようになり、また上半身用ベルト30が被験者の歩行を補助する。加えて、特に、上述したD2の距離が小さい(例えば、7cm以下)場合であれば、上半身用ベルト30は、肩周りの筋肉に、腕を持ち上げる方向の力を与えるので、肩周りの筋肉を弛緩させることが可能となる。
また、この実施形態における上半身用ベルト30は、実際には交差はしていないが、被験者の腹の前あたりで一見すればX字状に交差した状態となる。この交差した状態となった上半身用ベルト30は、被験者の腹に対して適度な圧力(腹圧)をかける。また、この腹圧は、上述したように補助ベルト40の存在によりより大きくなる。この腹圧の存在により、深層筋を刺激することにより深層筋を活発にはたらかせることが可能になり、それにより、個人差もあるが、被験者は、腰痛の防止、便秘の解消等の効果を得ることができることになる。
とはいえ、補助ベルト40が存在しても、補助ベルト40に入る張力を上半身用ベルト30に入る張力とは別に調節することができるので、上半身用ベルト30が生じる腹圧以外の効果は妨げられることがない。
被験者は、上半身補助器具を装着した状態で、例えば、20分以上過ごすことが可能であり、歩行等の軽い運動を行うことができる。また、被験者は、上半身用ベルト30のテンションがそれ程大きくないのであれば、個人差もあるが、その状態のまま、例えば2、3時間程度であれば日常生活を送ることもできる。
【0046】
(上半身補助器具の第2の使用方法)
第2の使用方法は、第1の使用方法と殆ど同じである。
第2の使用方法では、上半身用ベルト30の長さは、第1の使用方法の場合よりも幾らか短く調節される。上半身用ベルト30の長さの調節は、第1の使用方法の場合と同様に、例えば、面ファスナ31を利用しての、右部分30Rの折返しと、左部分30Lの折返しとによって行うことができる。
第2の使用方法でも、被験者は、右ループRLに右腕を、左ループLLに左腕をそれぞれ通して、保持部材50が被験者の背中に当接するようにする。第2の使用方法を実行する場合でも、上半身補助器具は一旦、図3図4(d)に示した状態となる。
第2の使用方法で上半身補助器具が使用される場合にこの後実行される過程を図12を用いて説明する。図12における記載の方法は、図8に準じている。
図12(a)は、図3図4(d)で示した状態と同じである。
この状態で、上半身用ベルト30のうち背中側に垂れ下がった右部分30Rの先端側を、右腰の上辺りで被験者の身体の前に移動させ、第1右バックル10Rが腹の前に位置するようにする。同様に、上半身用ベルト30のうち背中側に垂れ下がった左部分30Lの先端側を、左腰の上辺りで被験者の身体の前に移動させ、第1左バックル10Lが腹の前に位置するようにする。そして、第1右バックル10Rの第1右係合部材12Rと、第1左バックル10Lの第1左係合部材12Lとを互いに係合させる(図12(b))。これも、第1の使用方法と同じである。図12(b)に示した状態は、図8(b)に示した状態と同じである。
次いで、上半身用ベルト30の右部分30Rのうち第1右バックル10Rから垂れ下がった部分の先端側を、右腰の辺りで被験者の身体の後ろに移動させる。同様に、上半身用ベルト30の左部分30Lのうち第1左バックル10Lから垂れ下がった部分の先端側を、左腰の辺りで被験者の身体の後ろに移動させる。そして、右部分30Rの先端(折り返された部分)に位置している第2右バックル20Rの第2右係合部材22Rを、左部分30Lの先端(折り返された部分)に位置している第2左バックル20Lの第2左係合部材22Lと係合させることにより、互いに着脱自在に固定する(図12(c))。第2右係合部材22Rと第2左係合部材22Lとが互いに固定されるのは、臀部の左右方向の中央付近である。それらが互いに固定される場所は、臀部の上下方向の中心或いはその上下の適当な位置である。
以上により、第2の使用方法における上半身用ベルト30の装着が終了する。
第2の使用方法における右部分30Rと左部分30Lの経路は、それらの先端が身体の前方に回り込まない分だけ、第1の使用方法における右部分30Rと左部分30Lの経路よりも短い。その分、第2の使用方法では、上半身用ベルト30或いは、右部分30R及び左部分30Lの長さが、第1の使用方法の場合よりも短い。
その後、第1の使用方法の場合と同様に、補助ベルト40の右端の端部を、上半身用ベルト30のうちの、右腰から第1右バックル10Rの間を横切る左上がりの部分のどこかに接続する。同様に、補助ベルト40の左端の端部を、上半身用ベルト30のうちの、左腰から第1左バックル10Lの間を横切る右上がりの部分のどこかに接続する。両端を上半身用ベルト30に対して固定した状態の補助ベルト40の辿る経路、及びそれにより生じる効果は、第1の使用方法の場合と変わらない。
以上により、第2の使用方法における上半身補助器具の装着が終了する。
【0047】
第2の使用方法でも、上半身用ベルト30の全体には適度な張力が入っている。また、補助ベルト40にも適度な張力が入っている。その着用時間、それを着用して日常生活を送ることができること等は第2の使用方法でも変わらない。
また、上半身用ベルト30を着用することにより被験者が得られる効果も、多少の相違はあるものの、第1の使用方法と第2の使用方法とで大きな相違がない。
第2の使用方法でも、上半身用ベルト30は、実際には交差はしていないが、被験者の腹の前あたりで一見すればX字状に交差した状態となる。これにより腹圧が生じ、腹圧は補助ベルト40の存在により大きくなるが、それによって得られる効果も第1の使用方法と、第2の使用方法とで変わりがない。
【0048】
(上半身補助器具の第3の使用方法)
第1の使用方法、第2の使用方法ともに、被験者の身体に巻き付けられた上半身用ベルト30は、第1右バックル10Rの第1右係合部材12Rと、第1左バックル10Lの第1左係合部材12Lとを互いに係合させるとともに、第2右バックル20Rの第2右係合部材22Rと、第2左バックル20Lの第2左係合部材22Lとを係合させることにより、その形状或いは経路を維持するようになっていた。
他方、第3の使用方法では、被験者の身体に巻き付けられた上半身用ベルト30の形状或いは経路を維持するために、第1右バックル10Rの第1右係合部材12Rと、第1左バックル10Lの第1左係合部材12Lとを互いに係合させるが、第2右バックル20Rの第2右係合部材22Rと、第2左バックル20Lの第2左係合部材22Lとを係合させることはない。第3の使用方法では、第2右係合部材22Rを含む第2右バックル20Rと、第2左係合部材22Lを含む第2左バックル20Lとは遊んだ状態となる。
【0049】
第3の使用方法では、上半身用ベルト30の右部分30Rと左部分30Lとにおいて長さの調節を行わない。右部分30Rの先端付近は折り返されず、左部分30Lの先端付近も同様である。それにより、右部分30Rの先端に設けられた面ファスナ31と、左部分30Lの先端に設けられた面ファスナ31とは、被験者が上半身補助器具の装着を開始する前の状態では、何にも固定されていない状態、或いは何かに固定できる状態となっている。
【0050】
上半身補助器具の第3の使用方法は、第2の使用方法と同じく、途中までは、上半身補助器具の第1の使用方法と共通している。
第3の使用方法でも、被験者は、右ループRLに右腕を、左ループLLに左腕をそれぞれ通して、保持部材50が被験者の背中に当接するようにする。第3の使用方法を実行する場合でも、上半身補助器具は一旦、図3図4(d)に示した状態となる。
第3の使用方法で上半身補助器具が使用される場合にこの後実行される過程を図13を用いて説明する。図13における記載の方法は、図8に準じている。
図13(a)は、図3図4(d)で示した状態と同じである。
この状態で、上半身用ベルト30のうち背中側に垂れ下がった右部分30Rの先端側を、右腰の上辺りで被験者の身体の前に移動させ、第1右バックル10Rが腹の前に位置するようにする。同様に、上半身用ベルト30のうち背中側に垂れ下がった左部分30Lの先端側を、左腰の上辺りで被験者の身体の前に移動させ、第1左バックル10Lが腹の前に位置するようにする。そして、第1右バックル10Rの第1右係合部材12Rと、第1左バックル10Lの第1左係合部材12Lとを互いに係合させる(図13(b))。これも、第1の使用方法と同じである。図13(b)に示した状態は、図8(b)に示した状態と同じである。
次いで、上半身用ベルト30の右部分30Rのうち第1右バックル10Rから垂れ下がった部分の先端側を、右腰の辺りで被験者の身体の後ろに移動させる。そして、その先端側を、更に、被験者の身体の後側を通して、被験者の右の太腿の内側(股の間)から引出す。同様に、上半身用ベルト30の左部分30Lのうち第1左バックル10Lから垂れ下がった部分の先端側を、左腰の辺りで被験者の身体の後ろに移動させる。そして、その先端側を、更に、被験者の身体の後側を通して、被験者の左の太腿の内側(股の間)から引出す。(図13(c))。
次いで、上半身用ベルト30の右部分30Rの先端を、右の太腿の周りで、平面視した場合に時計回りの方向となる方向で一回転させ、その先端を、被験者の右の太腿の内側(股の間)から再び引出す。同様に、上半身用ベルト30の左部分30Lの先端を、左の太腿の周りで、平面視した場合に反時計回りの方向となる方向で一回転させ、その先端を、被験者の左の太腿の内側(股の間)から再び引出す(図13(d))。
そして、右部分30Rの先端に取付けられている面ファスナ31を、太腿に既に巻き付けられている右部分30Rの表面に着脱自在に固定する。同様に、左部分30Lの先端に取付けられている面ファスナ31を、太腿に既に巻き付けられている左部分30Lの表面に着脱自在に固定する(図13(e))。被験者の体格により、右部分30Rの先端の面ファスナ31が固定される位置は、図示されたものと異なる場合がある。左部分30Lも同様である。
以上により、第3の使用方法における上半身補助器具のうちの、上半身用ベルト30の装着が終了する。
その後、第1の使用方法の場合と同様に、補助ベルト40の右端の端部を、上半身用ベルト30のうちの、右腰から第1右バックル10Rの間を横切る左上がりの部分のどこかに接続する。同様に、補助ベルト40の左端の端部を、上半身用ベルト30のうちの、左腰から第1左バックル10Lの間を横切る右上がりの部分のどこかに接続する。両端を上半身用ベルト30に対して固定した状態の補助ベルト40の辿る経路、及びそれにより生じる効果は、第1の使用方法の場合と変わらない。
以上により、第3の使用方法における上半身補助器具の装着が終了する。
なお、第3の使用方法では、右部分30Rと左部分30Lは、それらの一方を右脚又は左脚に固定するところまでを先に行い、それらの他方を右脚又は左脚に固定するのが好適であろう。
第3の使用方法における右部分30Rと左部分30Lの経路は、それらが被験者の右の太腿又は左の太腿の周囲を1周以上する分、第1の使用方法における右部分30Rと左部分30Lの経路よりも長い。その分、第3の使用方法では、上半身用ベルト30或いは、右部分30R及び左部分30Lの長さが、第1の使用方法の場合よりも長い必要があるから、上述のように、右部分30R及び左部分30Lで折り返しを設けない。
第3の使用方法では、第2右係合部材22Rを含む第2右バックル20Rと、第2左係合部材22Lを含む第2左バックル20Lとは遊んだ状態となるから、それらを上半身用ベルト30から取外してもよいが、そうするには及ばない。それらは、上半身用ベルト30に取付けられたままの状態で良く、それによっても上半身補助器具の効果には何らの問題も生じない。
【0051】
第3の使用方法でも、上半身用ベルト30の全体には適度な張力が入っている。その着用時間、それを着用して日常生活を送ることができること等は第3の使用方法でも変わらない。
また、上半身用ベルト30を着用することにより被験者が得られる効果も、多少の相違はあるものの、第1の使用方法と第3の使用方法とで大きな相違がない。
第3の使用方法でも、上半身用ベルト30は、実際には交差はしていないが、被験者の腹の前あたりで一見すればX字状に交差した状態となる。これにより腹圧が生じ、腹圧は補助ベルト40の存在により大きくなるが、それによって得られる効果も第1の使用方法と、第3の使用方法とで変わりがない。
また、第3の使用方法では、両太腿に、上半身用ベルト30から内旋方向の力が加えられることになる。これにより、被験者は、歩行がしやすくなる。
【0052】
<変形例>
変形例による上半身補助器具は、概ね、上述の第1実施形態で説明した上半身補助器具と同じである。
ただし、変形例による上半身補助器具は、以下に説明する1通りの使用方法で使用されることしか意図されていない。
そのため、変形例における上半身補助器具は、上述の実施形態で説明した上半身補助器具が備えていた、第2右係合部材22Rを含む第2右バックル20Rと、第2左係合部材22Lを含む第2左バックル20Lとを備えていない。
また、変形例における上半身補助器具における上半身用ベルト30の長さは、上述した実施形態における上半身用ベルト30よりも短い。
他方、変形例における上半身補助器具は、左右両脚にそれぞれ取付けられる脚ベルト100(図14参照)と組み合わせて使用される。脚ベルト100は、被験者の脚、この例では両太腿にそれぞれ巻き付けて用いられるベルトである。脚ベルト100は無端の環状であって伸縮性による締め付けによって太腿に固定されるものでも構わないが、細長い略矩形状であり、太腿の周りを一周させた状態で太腿に固定されるベルトであっても構わない。かかる固定には、ベルクロテープその他の面ファスナを利用することができる。
【0053】
変形例による上半身補助器具は以下のようにして用いられる。
この上半身補助器具を用いる場合には、上述の実施形態で説明した上半身用ベルト30、或いは右部分30R及び左部分30Lの長さの調節を行わない。
その代わりに、上半身補助器具を被験者の身体に装着させるに先立って、両太腿に脚ベルト100を取付ける。
【0054】
そして、変形例の上半身補助器具を使用する場合でも、被験者は、右ループRLに右腕を、左ループLLに左腕をそれぞれ通して、保持部材50が被験者の背中に当接するようにする。この場合でも、上半身補助器具は一旦、図3図4(d)に示した状態となる。
変形例の上半身補助器具が使用される場合にこの後実行される過程を図14を用いて説明する。図14における記載の方法は、図8に準じている。
図14(a)は、脚ベルト100が両太腿に取付けられている点を除けば、図3図4(d)で示した状態と同じである。
この状態で、上半身用ベルト30のうち背中側に垂れ下がった右部分30Rの先端側を、右腰の上辺りで被験者の身体の前に移動させ、第1右バックル10Rが腹の前に位置するようにする。同様に、上半身用ベルト30のうち背中側に垂れ下がった左部分30Lの先端側を、左腰の上辺りで被験者の身体の前に移動させ、第1左バックル10Lが腹の前に位置するようにする。そして、第1右バックル10Rの第1右係合部材12Rと、第1左バックル10Lの第1左係合部材12Lとを互いに係合させる(図14(b))。これも、第1の使用方法と同じである。図14(b)に示した状態は、脚ベルト100が両太腿に取付けられている点を除けば、図8(b)に示した状態と同じである。
次いで、上半身用ベルト30の右部分30Rのうち第1右バックル10Rから垂れ下がった部分の先端側を、右腰の辺りで被験者の身体の後ろに移動させる。そして、その先端側を、更に、被験者の身体の後側を通して、被験者の右の太腿の後側まで導き、そこで右部分30Rの先端に設けられた面ファスナ31を、右大腿に巻かれた脚ベルト100の表面に着脱自在に固定する。面ファスナ31は、脚ベルト100の表面のいずれの部分にも着脱自在に固定できるようにされている。同様に、上半身用ベルト30の左部分30Lのうち第1左バックル10Lから垂れ下がった部分の先端側を、左腰の辺りで被験者の身体の後ろに移動させる。そして、その先端側を、更に、被験者の身体の後側を通して、被験者の左の太腿の後側まで導き、そこで左部分30Lの先端に設けられた面ファスナ31を、左大腿に巻かれた脚ベルト100の表面に着脱自在に固定する。
以上により、上半身用ベルト30の装着が終わる。
その後、第1の使用方法の場合と同様に、補助ベルト40の右端の端部を、上半身用ベルト30のうちの、右腰から第1右バックル10Rの間を横切る左上がりの部分のどこかに接続する。同様に、補助ベルト40の左端の端部を、上半身用ベルト30のうちの、左腰から第1左バックル10Lの間を横切る右上がりの部分のどこかに接続する。両端を上半身用ベルト30に対して固定した状態の補助ベルト40の辿る経路、及びそれにより生じる効果は、第1の使用方法の場合と変わらない。
以上により、変形例による上半身補助器具の被験者の身体への装着が終了する。
【0055】
変形例による上半身補助器具の使用の仕方は、上述した実施形態で説明した「上半身補助器具の第3の使用方法」において右部分30R及び左部分30Lに右及び左の大腿を一周させた部分を、2つの脚ベルト100に置換したものであるといえる。
それ故、変形例による上半身補助器具の使用の仕方、及び効果は、「上半身補助器具の第3の使用方法」で説明したそれらと変わりない。
【0056】
≪第2実施形態≫
第2実施形態による上半身補助器具は、第1実施形態による上半身補助器具とほとんど同じものである。
第2実施形態による上半身補助器具は、第1実施形態の上半身補助器具と同じように、上半身補助器具の第1の使用方法から第3の使用方法のいずれかで用いることができる。もちろん、第2実施形態による上半身補助器具も、第1実施形態による上半身補助器具と同じように、上半身補助器具の第1の使用方法から第3の使用方法のうちの少なくとも1つの方法でしか使用できない(或いは使用を意図しない)ものとされていても構わないが、この実施形態では上半身補助器具の第1の使用方法から第3の使用方法のすべてで使用される。
第2実施形態による上半身補助器具と第1実施形態による上半身補助器具で異なるのは、第1実施形態による上半身補助器具では、その使用方法の別によらず、上半身用ベルト30は、本願発明でいう第1の経路を辿った状態で被験者の身体に装着されることになるが、それに対し第2実施形態による上半身補助器具では、その使用方法の別によらず、上半身用ベルト30は、本願発明でいう第2の経路を辿った状態で被験者の身体に装着されることになる、という点である。
このような上半身用ベルト30の経路の違いがあるため、第2実施形態における上半身補助器具は、殆ど図1に示したものと同じなのであるが、第1実施形態における上半身補助器具において第1の経路を上半身用ベルト30に辿らせるために必要であった第1右バックル10Rと、第1左バックル10Lとがともに省略されている。
また、第2実施形態の上半身補助器具では、上半身用ベルト30の両端部の一方側の面に設けられていた面ファスナ31は、図1で示したのとは反対側の面に取付けられている。その理由は、上半身補助器具の第3の使用方法では面ファスナ31は、太腿に先に巻き付けられた上半身用ベルト30の外側に露出している面に対して着脱自在に固定されるところ、第2実施形態では第2の経路を辿る上半身用ベルト30の右部分30Rと左部分30Lの後述する交差点よりも先端側の部分は、第1実施形態における上半身用ベルト30とは異なり、右折返し位置及び左折返し位置で折り返されることがないためである。言い換えれば、第1実施形態における右折返し位置よりも先の部分における上半身用ベルト30の右部分30Rと、第2実施形態における交差点よりも先の部分における上半身用ベルト30の右部分30Rとは、互いに裏返しの関係にあり、また、第1実施形態における左折返し位置よりも先の部分における上半身用ベルト30の左部分30Lと、第2実施形態における交差点よりも先の部分における上半身用ベルト30の左部分30Lとは、互いに裏返しの関係にある。したがって、第2実施形態における面ファスナ31が、仮に第1実施形態における面ファスナ31と上半身用ベルト30の同じ面に設けられていると、第3の使用方法で上半身補助器具が使用されるときにおいて面ファスナ31を機能させることができなくなる。このような理由により、第2実施形態の上半身補助器具における面ファスナ31は、上半身用ベルト30の両端部の他方側の面、つまり、図1で示したのとは反対側の面に取付けられている。
なお、第2実施形態においても、面ファスナ31は、上半身補助器具の第1の使用方法、及び上半身補助器具の第2の使用方法では、上半身用ベルト30の長さを調節する目的で利用することができる。第1実施形態では、面ファスナ31は、端部付近を折り返した上半身用ベルト30の長さ方向の中央よりの所定の位置に固定するようにして用い、それにより、上半身用ベルト30の長さを調節することができるようにされていた。第2実施形態の面ファスナ31も同様の使い方が可能である。ただし、上半身用ベルト30を折り返す場合における折返しの向きが、第1実施形態と第2実施形態とで逆になる。
【0057】
第2実施形態における上半身用ベルト30の使用方法について説明する。
上述したように、第2実施形態による上半身補助器具は、上半身補助器具の第1の使用方法から第3の使用方法から選択した方法で用いることができる。
とりあえず、上半身補助器具の第2の使用方法で第2実施形態の上半身補助器具を使用する場合について説明する。
【0058】
第2実施形態の上半身補助器具の第2の使用方法は、第1実施形態の上半身補助器具の第2の使用方法と殆ど同じである。
第2実施形態の上半身補助器具を第2の使用方法で用いる場合、まず、第1実施形態の上半身補助器具の第2の使用方法の場合と同じ方法で、つまり、面ファスナ31を利用して、上半身用ベルト30の長さを調節する。上半身用ベルト30の長さは、両実施形態で同じで良い。
第2実施形態の上半身補助器具を第2の使用方法で用いる場合でも、被験者は、右ループRLに右腕を、左ループLLに左腕をそれぞれ通して、保持部材50が被験者の背中に当接するようにする。第2の使用方法を実行する場合でも、上半身補助器具は一旦、図3図4(d)に示した状態となる。
第2の使用方法で上半身補助器具が使用される場合にこの後実行される過程を図17を用いて説明する。図17における記載の方法は、図8に準じている。
図17(a)は、図3図4(d)で示した状態と同じである。
この状態で、上半身用ベルト30のうち背中側に垂れ下がった右部分30Rの先端側を、右腰の上辺りで被験者の身体の前に移動させ、右部分30Rが被験者の腹の前を左下がりに横切るようにして、左腰の外側、例えば左腰の外側下辺りに至らせる。他方、上半身用ベルト30のうち背中側に垂れ下がった左部分30Lの先端側を、左腰の上辺りで被験者の身体の前に移動させ、左部分30Lが被験者の腹の前を右下がりに横切るようにして、右腰の外側、例えば右腰の外側下辺りに至らせる(図17(b))。便宜上、上半身用ベルト30の右部分30Rと左部分30Lが被験者の腹の前で交差した位置を交差点と称することとする。
この状態で、第2実施形態における上半身用ベルト30は、交差点より下の部分における右部分30Rと左部分30Lとの左右方向の位置関係が、第1実施形態における上半身用ベルト30の第1右バックル10R及び第1左バックル10Lよりも下側の部分と、左右方向で入れ替わっているものの、第1実施形態の上半身用ベルト30と同じ状態となる。平たく言えば、この状態では、上述した右部分30R及び左部分30Lの入れ替わりを無視すれば、第2実施形態における図17(b)に示された上半身用ベルト30と、第1実施形態における図12(b)に示された上半身用ベルト30とは、同じ状態となっている。
次いで、上半身用ベルト30の右部分30Rの先端側を、左腰の辺りで被験者の身体の後ろに移動させる。同様に、上半身用ベルト30の左部分30Lの先端側を、右腰の辺りで被験者の身体の後ろに移動させる。そして、右部分30Rの先端(折り返された部分)に位置している第2右バックル20Rの第2右係合部材22Rを、左部分30Lの先端(折り返された部分)に位置している第2左バックル20Lの第2左係合部材22Lと係合させることにより、互いに着脱自在に固定する(図17(c))。第2右係合部材22Rと第2左係合部材22Lとが互いに固定されるのは、臀部の左右方向の中央付近である。それらが互いに固定される場所は、第1実施形態の場合と同様に、臀部の上下方向の中心或いはその上下の適当な位置である。
これにて、上半身用ベルト30が被験者の身体に装着された。
第2実施形態と第1実施形態との双方における上半身用ベルト30が辿っている経路は、第2実施形態の上半身用ベルト30における交差点より下の部分における右部分30Rと左部分30Lとの左右方向の位置関係が、第1実施形態の上半身用ベルト30における第1右バックル10R及び第1左バックル10Lよりも下側の部分と、左右方向で入れ替わっているものの、その点を除けば、少なくとも見た目上同一となっている(図17(c)、図12(c))。
次いで、補助ベルト40が上半身用ベルト30に固定される。補助ベルト40の右端の端部が固定されるのは、第1実施形態の場合と同様の場合であり、上半身用ベルト30のうち、交差点と右腰の下とを結ぶ範囲における左部分30Lのいずれかの位置である。補助ベルト40の左端の端部が固定されるのは、第1実施形態の場合と同様の場合であり、上半身用ベルト30のうち、交差点と左腰の下とを結ぶ範囲における右部分30Rのいずれかの位置である。
以上により、第2実施形態の上半身補助器具の第2の使用方法における上半身補助器具の装着が終了する。
第2実施形態の上半身補助器具を第2の使用方法で装着した場合における被験者の正面図を図18に示す。
【0059】
第2実施形態の上半身補助器具を被験者の身体に装着した状態は、上述した交差点よりも下側における右部分30Rと左部分30Lとの左右方向の入れ替わりを除けば、第1実施形態の上半身補助器具を被験者の身体に装着した状態と等しい。
したがって、第2実施形態の上半身補助器具を第2の使用方法で装着した被験者は、上半身補助器具を装着した状態で第2実施形態の場合と同様に生活等することにより、第1実施形態の上半身補助器具を第1の使用方法で装着した被験者が得られるのと同等の効果を得られることになる。
【0060】
ここまでで説明したように、第2実施形態の上半身補助器具は、上半身補助器具の第2の使用方法で用いることができる。
同様に、第2実施形態の上半身補助器具は、第1の使用方法と第3の使用方法でも用いることができる。
既に説明したように、第2実施形態の上半身補助器具を第2の使用方法で使用する場合には、上半身補助器具に含まれる上半身用ベルト30は一旦、図17(b)に示した状態となる。この状態は、既に説明したように、第1実施形態における上半身補助器具を第2の使用方法で用いる場合に生じる、図12(b)に示された上半身用ベルト30の状態と同じである。
そして、第1実施形態における上半身補助器具を第2の使用方法で用いる場合に生じる、図12(b)に示された上半身用ベルト30の状態は、第1実施形態における上半身補助器具を第1の使用方法で用いる場合に生じる図8(b)に示された上半身用ベルト30の状態、及び第1実施形態における上半身補助器具を第3の使用方法で用いる場合に生じる図13(b)に示された上半身用ベルト30の状態と等しい。
したがって、第2実施形態の上半身補助器具を第1の使用方法で用いる場合には、図17(b)で示された状態から、上半身用ベルト30の右部分30Rと左部分30Lとを、図8(c)以降に示されたようにして被験者の身体に巻き付けて行けば、第1の使用方法で意図した経路で、上半身用ベルト30を被験者の身体に装着させることができる。ただし、交差点より下の範囲における右部分30R及び左部分30Lの左右方向の位置関係は、既に述べた理由により、図8に示した場合とは逆になる。
同様に、第2実施形態の上半身補助器具を第3の使用方法で用いる場合には、図17(b)で示された状態から、上半身用ベルト30の右部分30Rと左部分30Lとを、図13(c)以降に示されたようにして被験者の身体に巻き付けて行けば、第3の使用方法で意図した経路で、上半身用ベルト30を被験者の身体に装着させることができる。ただし、交差点より下の範囲における右部分30R及び左部分30Lの左右方向の位置関係は、既に述べた理由により、図13に示した場合とは逆になる。
その後、第2の使用方法で説明したのと同様の方法で、補助ベルト40の両端を、上半身用ベルト30の適宜の位置に着脱自在に固定することにより、第2実施形態のベルトの、第1の使用方法と第3の使用方法に対応した方法での被験者の身体への装着が終了する。
第1の使用方法と第3の使用方法で被験者が第2実施形態の上半身補助器具を装着した場合における被験者の振舞い、及び被験者が得ることのできる効果は、第1実施形態の場合と変わらない。
【0061】
第2実施形態の上半身補助器具を、第1実施形態の変形例で説明した上半身補助器具のように変形することも当然に可能である。その場合には、第1実施形態の変形例の場合と同じく、第1右バックル10R、第1左バックル10Rのみならず、第2右バックル20R、第2左バックル20Lも省略することができるが、2つの脚ベルト100が必要となる。
第2実施形態の上半身補助器具を変形した上述のような上半身補助器具も、上半身用ベルト30の、上述した右部分30R及び左部分30Lの左右方向の反転を無視すれば、図17(b)と事実上等しい状態の図14(b)の状態から図14(c)の処理を実行すれば、被験者の身体に適切に装着することができる。
第1実施形態の変形例で説明した使用方法で第2実施形態の上半身補助器具を装着した場合における被験者の振舞い、及び被験者が得ることのできる効果は、第1実施形態の変形例で説明した場合と変わらない。
【符号の説明】
【0062】
10R 第1右バックル
10L 第1左バックル
12R 第1右係合部材
12L 第1左係合部材
20R 第2右バックル
20L 第2左バックル
22R 第2右係合部材
22L 第2左係合部材
30 上半身用ベルト
31 面ファスナ
40 補助ベルト
41 面ファスナ
50 保持部材
50A 背面布
50B 保持布
50C 補助布
50X 保持部材
51 孔
52 孔
53 孔
100 脚ベルト
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