(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038266
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】圧力センサー
(51)【国際特許分類】
G01L 1/18 20060101AFI20220303BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220303BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20220303BHJP
H01L 41/113 20060101ALI20220303BHJP
H01L 41/193 20060101ALI20220303BHJP
H01L 41/053 20060101ALI20220303BHJP
H01L 41/311 20130101ALI20220303BHJP
【FI】
G01L1/18 B
H01L29/78 627D
H01L29/78 626C
H01L29/78 618B
H01L41/113
H01L41/193
H01L41/053
H01L41/311
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142666
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 壮介
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 守
【テーマコード(参考)】
5F110
【Fターム(参考)】
5F110AA14
5F110AA30
5F110BB09
5F110BB11
5F110CC03
5F110DD01
5F110DD06
5F110DD12
5F110DD13
5F110DD17
5F110EE01
5F110EE02
5F110EE03
5F110EE07
5F110EE42
5F110FF01
5F110FF02
5F110FF03
5F110FF04
5F110GG01
5F110GG05
5F110GG42
5F110GG43
5F110GG44
5F110NN27
5F110NN33
5F110NN72
5F110QQ16
(57)【要約】
【課題】
樹脂フィルムなど柔軟性を有する基材上に、水分や酸素に弱い物質を含む薄膜トランジスタアレイが形成され、さらにその上に同様に水分や酸素に弱い物質による感圧層が積層された構造であっても、特性が劣化せず安定して動作する圧力センサーを提供することを目的とする。
【解決手段】
柔軟性を有する基材と、薄膜トランジスタアレイが形成されたトランジスタ層と、下部電極と上部電極が形成された有機圧電体よりなる感圧層が少なくともこの順に積層され、
前記基材と前記トランジスタ層との間には無機蒸着層が形成されており、
さらに前記基材と前記無機蒸着層との間には下地層が介在することを特徴とする圧力センサーである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有する基材と、薄膜トランジスタアレイが形成されたトランジスタ層と、下部電極と上部電極が形成された有機圧電体よりなる感圧層が少なくともこの順に積層され、
前記基材と前記トランジスタ層との間には無機蒸着層が形成されており、
さらに前記基材と前記無機蒸着層との間には下地層が介在することを特徴とする圧力センサー。
【請求項2】
前記柔軟性を有する基材は、樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー。
【請求項3】
前記トランジスタ層は、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、活性層を含み、活性層は酸化物半導体よりなることを特徴とする請求項1または2に記載の圧力センサー。
【請求項4】
前記酸化物半導体は、In・Ga・ZnおよびSnよりなる群から選択された金属の酸化物であることを特徴とする請求項3に記載の圧力センサー。
【請求項5】
前記無機蒸着層は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムのいずれか、あるいはそれらの複合物であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の圧力センサー。
【請求項6】
前記有機圧電体は、ポリフッ化ビニリデンまたはフッ化ビニリデン-三フッ化エチレン共重合体よりなることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の圧力センサー。
【請求項7】
前記下地層は、アクリルポリオールの水酸基もしくはイソシアネート化合物のイソシアネート基の少なくとも一方と反応する有機官能基を有するシランカップリング剤またはその加水分解物と、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物とが含まれる混合体の反応物であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の圧力センサー。
【請求項8】
前記シランカップリング剤に含まれる有機官能基は、イソシアネート基、アミノ基、またはメルカプト基のいずれか1種であることを特徴とする請求項7に記載の圧力センサー。
【請求項9】
前記無機蒸着層の、前記基材とは反対側の面には被覆層が形成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の圧力センサー。
【請求項10】
前記被覆層は、水溶性高分子と、1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物とが含まれる混合体の反応物であることを特徴とする請求項9に記載の圧力センサー。
【請求項11】
前記水溶性高分子と、1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物とが含まれる混合体には、塩化スズを含むことを特徴とする請求項10に記載の圧力センサー。
【請求項12】
前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項10または11に記載の圧力センサー。
【請求項13】
前記アルコキシドは、一般式M(OR)m(M:金属元素,R:アルキル基,m:金属元素の酸化数)で表せる金属アルコキシド、または一般式R’M(OR)m-1(R’:官能基,M:金属元素,R:のアルキル基,m:金属元素の酸化数)で表せるオルガノアルコキシメタラン、あるいはその混合物であることを特徴とする請求項10~12のいずれかに記載の圧力センサー。
【請求項14】
前記金属アルコキシドは、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、あるいはその混合物であることを特徴とする請求項13に記載の圧力センサー。
【請求項15】
前記オルガノアルコキシメタランは、グリシドキシプロピルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項13または14に記載の圧力センサー。
【請求項16】
前記感圧層の前記上部電極側にはバリア層が積層されていることを特徴とする請求項1~15のいずれかに記載の圧力センサー。
【請求項17】
前記バリア層は、前記基材/下地層/無機蒸着層/被覆層と同一の構成および材料であることを特徴とする請求項16に記載の圧力センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタアレイを形成した、柔軟性を有する圧力センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
シート型の圧力センサーは、柔軟性に富むため、フレキシブル性が要求される大面積の圧力測定用途への応用が期待されている。シート型圧力センサーの駆動方式の一つであるアクティブ型圧力センサーは、感圧部に印加された圧力をトランジスタにより検出する。
【0003】
このようなシート型圧力センサーを実現する技術として、低電圧で駆動させても高感度で圧力を検出できる有機圧力センサーが提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
しかしこうしたシート型圧力センサーの活性層(半導体層)は水分や酸素に影響を受けやすく、特にその材料が有機物である場合はこれらによって特性が劣化し、動作不良が引き起こされる可能性が高いにもかかわらず、樹脂フィルムなど柔軟性を有する基材は、ガラスや金属などの基板と比較して水分や酸素の遮断能力が低いという問題があった。
【0005】
さらには感圧層を構成する有機圧電体材料も水分や酸素に影響を受けやすく、同様に動作不良が引き起こされる懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、樹脂フィルムなど柔軟性を有する基材上に、水分や酸素に弱い物質を含む薄膜トランジスタアレイが形成され、さらにその上に同様に水分や酸素に弱い物質による感圧層が積層された構造であっても、特性が劣化せず安定して動作する圧力センサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1側面によると、柔軟性を有する基材と、薄膜トランジスタアレイが形成されたトランジスタ層と、下部電極と上部電極が形成された有機圧電体よりなる感圧層が少なくともこの順に積層され、前記基材と前記トランジスタ層との間には無機蒸着層が形成されており、さらに前記基材と前記無機蒸着層との間には下地層が介在した圧力センサーが提供される。
【0009】
柔軟性を有する基材としては、例えば樹脂フィルムを用いることができる。トランジスタ層は、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、活性層を含み、活性層は酸化物半導体により形成することができる。酸化物半導体としては例えばIn・Ga・ZnおよびSnよりなる群から選択された金属の酸化物を用いることができる。
【0010】
無機蒸着層は、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムのいずれか、あるいはそれらの複合物を用いることができる。有機圧電体は、ポリフッ化ビニリデンまたはフッ化ビニリデン-三フッ化エチレン共重合体を用いることができる。下地層は、アクリルポリオールの水酸基もしくはイソシアネート化合物のイソシアネート基の少なくと
も一方と反応する有機官能基を有するシランカップリング剤またはその加水分解物と、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物とが含まれる溶液が反応してなるものとすることができ、シランカップリング剤に含まれる有機官能基としては、例えば、イソシアネート基、アミノ基、またはメルカプト基のいずれか1種を挙げることができる。
【0011】
本発明の第2側面によると、前記無機蒸着層の、前記基材とは反対側の面には被覆層が形成された圧力センサーが提供される。被覆層は、例えば、水溶性高分子と、1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物とが含まれる混合体の反応物とすることができる。この混合体には、塩化スズが含まれていてもよく、水溶性高分子には、例えばポリビニルアルコールを使用することができる。
【0012】
また、アルコキシドは、一般式M(OR)m(M:金属元素,R:アルキル基,m:金属元素の酸化数)で表せる金属アルコキシド、または一般式R’M(OR)m-1(R’:官能基,M:金属元素,R:のアルキル基,m:金属元素の酸化数)で表せるオルガノアルコキシメタラン、あるいはその混合物を使用することができ、一例として、金属アルコキシドとしては、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、あるいはその複合物が挙げられ、オルガノアルコキシメタランとしては、グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0013】
本発明の第3側面によると、前記感圧層の上部電極側にバリア層が積層された圧力センサーが提供される。バリア層は、例えば前記基材/下地層/無機蒸着層/被覆層と同一の材料および構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、水分や酸素のバリア層となる無機蒸着膜および下地層が付与された圧力センサーが得られる。下地層によって、柔軟性を有する基材に強固に結びついた無機蒸着膜が安定して水分や酸素を遮断する結果、薄膜トランジスタアレイが水分や酸素に弱い物質を含んで形成され、さらにその上に同様に水分や酸素に弱い物質による感圧層が積層された構造であっても、特性が劣化せず安定して動作することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の圧力センサーの一態様の一部を模式的に示した断面図。
【
図2】本発明のトランジスタ層の一態様の一部を模式的に示した断面図。
【
図3】本発明の感圧層の一態様の一部を模式的に示した断面図。
【
図4】本発明の圧力センサーのうちバリア層を積層した態様の一部を模式的に示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様または類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1は、本発明の圧力センサーの一態様の一部を模式的に示した断面図である。本発明の圧力センサー10は、柔軟性を有する基材11と、TFTアレイが形成されたトランジスタ層20を少なくとも含み、前記基材11と前記トランジスタ層20との間には無機蒸着層12が形成されており、前記無機蒸着層と前記基材との間には下地層13が介在する。
【0018】
柔軟性を有する基材11としては、樹脂板や樹脂フィルムを用いることができる。樹脂板や樹脂フィルムの材料としては、例えば、トリアセチルセルロースなどのセルロースエ
ステル、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロンなどのポリアミド、直鎖状あるいは分枝ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、エポキシ、ポリアリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、あるいはこれらの共重合体等を挙げることができる。
【0019】
本発明の圧力センサーは、必ずしも独立した基材上にトランジスタ層をはじめとした各層を形成する製造法によらなくてもよい。例えば、ガラス基板などの支持板上に前記樹脂フィルム材料の溶液、あるいは前駆体の溶液等を塗工して樹脂膜とし、その上に順次、下地層、無機蒸着層、必要に応じて被覆層、トランジスタ層等を形成し、最後にシートを支持板から剥離してもよい。
【0020】
基材11に用いられる樹脂材料には、必要に応じて帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤など公知の添加剤を加えることができる。
【0021】
柔軟性を有する基材11とトランジスタ層20との間には無機蒸着層12が形成されている。
【0022】
無機蒸着層12は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、錫、マグネシウムなどの酸化物、窒化物、弗化物の単体、或いはそれらの複合物からなり、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法(CVD法)などの真空プロセスにより形成される。特に酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、あるいはこれらの複合物は、無色または色が薄くかつ透明であり、本発明の半導体回路シートの無機蒸着層として好適である。
【0023】
無機蒸着層12の膜厚は、概ね数nmから500nmとできるが、5nm未満では薄膜の連続性に問題があり、また300nmを越えるとクラックが発生しやすくなるため、好ましくは5~300nmである。
【0024】
柔軟性を有する基材11と無機蒸着層12の間には下地層13が介在している。下地層13の材料およびその形成方法は、基材11と無機蒸着層4の密着性が向上するものが選択されるのが好ましく、この点において、アクリルポリオールの水酸基もしくはイソシアネート化合物のイソシアネート基の少なくとも一方と反応する有機官能基を有するシランカップリング剤またはその加水分解物と、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物とが含まれる溶液を塗布し、加熱乾燥して得られる膜は下地層として好適である。
【0025】
シランカップリング剤に含まれる有機官能基としては、イソシアネート基、アミノ基、またはメルカプト基のいずれか1種が、前記した密着性の観点からは特に好ましい。
【0026】
下地層13が基材11と無機蒸着層12の間に介在することにより両者が強固に結びつき、無機蒸着層12が安定して水分や酸素を遮断することが可能となる。
【0027】
無機蒸着層12の基材11と反対面には、トランジスタ層20が形成されている。
図2は、本発明のトランジスタ層の一態様の一部を模式的に示した断面図である。
【0028】
トランジスタ層20には、ゲート配線(図示せず)に接続されたゲート電極21、ゲート絶縁膜22、ソース配線(図示せず)に接続されたソース電極23、ドレイン電極(下部画素電極)24、活性層25、層間絶縁膜28を含む。
【0029】
ゲート電極21およびゲート配線、ソース電極23、ドレイン電極24は、Al、Ag、Cu、Cr、Ni、Mo、Nb,Au、Pt等の金属や、ITO等の導電性酸化物、カーボン、導電性高分子等を用いて形成することができる。製法としては、全面成膜後にフォトリソ・エッチング・レジスト剥離、あるいは、全面成膜後にレジスト印刷・エッチング・レジスト剥離を選択することもできるが、インクを印刷・焼成して得ることが望ましい。印刷方法としては、オフセット印刷が好適である。オフセット印刷には、反転オフセット印刷や、グラビアオフセット印刷が含まれる。
【0030】
ゲート絶縁膜22は、SiO2、SiON、SiN等の無機物や、ポリビニルフェノール(PVP)、エポキシ等の有機物を用いて形成することができる。製法としては、スパッタ、CVD等の真空成膜や、溶液の塗布・焼成が挙げられる。
【0031】
活性層25は、ポリチオフェン系、アセン系、アリルアミン系などの有機半導体を用いて形成することもできるが、水分や酸素に対する耐性の観点からはIn2O3系、Ga2O3系、ZnO系、SnO2系、InGaZnO系、InGaSnO系、InSnZnO系などの酸化物半導体を用いて形成することが好ましい。製法としては、無機蒸着層と同様に真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法(CVD法)などの真空プロセスを用いることができる。
【0032】
トランジスタ層20には、必要に応じてキャパシタ配線(図示せず)に接続されたキャパシタ電極26が含まれていてもよい。キャパシタ電極26およびキャパシタ配線は、ゲート電極21およびゲート配線、ソース電極23およびソース電極、ドレイン電極24などと同様の材料を用い、同様の製法にて形成することができる。
【0033】
またトランジスタ層20には、活性層25を覆う保護層27が含まれていてもよい。保護層27には、活性層25を水分や酸素などから保護するという目的を達するのであればどのような材料を用いることもできるが、フッ素系樹脂、ポリビニルアルコール等が好適である。製法としては、溶液をインクジェット、ディスペンサ、凸版印刷等で印刷・焼成する方法を挙げることができる。
【0034】
さらにトランジスタ層20には、下部電極32と上部電極33が形成された有機圧電体31よりなる感圧層30が積層される。
図3は、本発明の感圧層の一態様の一部を模式的に示した断面図である。
【0035】
下部電極32と上部電極33の平面的形状は、センサーとしての機能を実現し得るのであればどのようなものでもよいが、典型的には上部電極33は連続膜状、下部電極32はトランジスタ層20に形成されたTFTに対応した島状マトリクスとなる。
【0036】
下部電極32と上部電極33の形成方法も、同様にどのようなものでも用いることができるが、典型的には上部電極33は無機蒸着層と同様の真空プロセスが、下部電極32はゲート電極21およびゲート配線、ソース電極23、ドレイン電極24などトランジスタ層20の各電極層と同様に印刷法が採用され、その材料についても各電極層と同様のものが採用され得る。
【0037】
有機圧電体の材料としては、柔軟性がありかつ圧電性を示すものであれば特に限定されないが、一例を挙げるとポリフッ化ビニリデン(PVDF)あるいはフッ化ビニリデン-三フッ化エチレン共重合体(P(VDF-TrFE))を好適に使用できる。
【0038】
無機蒸着層12の、柔軟性を有する基材11とは反対側の面には被覆層14を形成してもよい。被覆層14により、硬くてもろい無機蒸着層12を保護することができるともに
、トランジスタ層20と無機蒸着層12の密着性向上が期待できる。
【0039】
被覆層14の材料はどのようなものを使用して、どのような方法で形成してもよいが、水溶性高分子と、1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物とが含まれる水溶液を塗布し、加熱乾燥して得ると、被覆層14そのものにバリア性を付与でき、何らかの原因で無機蒸着層12にクラックが発生してもトランジスタ層20に対する水蒸気等の侵入を抑制できるため好ましい。
【0040】
水溶性高分子には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどを用いることができる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAとする)は、本発明の光学素子の被覆層の材料として用いた場合にガスバリア性が優れるため好適である。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全鹸化PVAまでを含み、特に限定されるものではない。
【0041】
アルコキシドとしては、例えば、一般式M(OR)m(M:金属元素,R:アルキル基,m:金属元素の酸化数)で表せる金属アルコキシド、または一般式R’M(OR)m-1(R’:官能基,M:金属元素,R:のアルキル基,m:金属元素の酸化数)で表せるオルガノアルコキシメタラン、あるいはその混合物を用いることができる。
【0042】
金属アルコキシドの例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウム、テトライソプロポキシチタン、ペンタエトキシタンタル、ペンタエトキシニオブなどを挙げることができるが、なかでもテトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、あるいはその混合物が加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0043】
オルガノアルコキシメタランの例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、アセトアルコキシジイソプロポキシアルミニウム、ビス(トリエタノールアミナト)ジイソプロポキシチタンなどを挙げることができるが、なかでもグリシドキシプロピルトリメトキシシランが、耐久性の高い塗膜が得られるので好ましい。
【0044】
感圧層30の上部電極33側にはバリア層40を積層することができる。
図4は、本発明の圧力センサーのうちバリア層を積層した態様の一部を模式的に示した断面図である。
【0045】
バリア層40を積層することにより、トランジスタ層20と感圧層30は、基材11/下地層13/無機蒸着層12(/被覆層14)とバリア層40に挟まれ封止されることになり、強固に水分や酸素から防護される。
【0046】
バリア層40は水分や酸素の遮断が期待できればどのような材料および構成でもよいが、基材11/下地層13/無機蒸着層12(/被覆層14)と同様の構成を採用し、同様の材料を用いることができる。この際、これらと全く同一の構成および材料であってもよいし、基材11、下地層13、無機蒸着層12、被覆層14の項で挙げた材料の範囲内で、基材11/下地層13/無機蒸着層12(/被覆層14)とは異なるものを選択してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10、100・・・圧力センサー
11・・・基材
12・・・無機蒸着層
13・・・下地層
14・・・被覆層
20・・・トランジスタ層
21・・・ゲート電極
22・・・ゲート絶縁膜
23・・・ソース電極
24・・・ドレイン電極(下部画素電極)
25・・・活性層
26・・・キャパシタ電極
27・・・保護層
28・・・層間絶縁膜
30・・・感圧層
31・・・有機圧電体
32・・・下部電極
33・・・上部電極
40・・・バリア層