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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038275
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】モータ制御装置、及びモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/16 20160101AFI20220303BHJP
   G01D 5/244 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
H02P6/16
G01D5/244 Z
G01D5/244 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142688
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】寺田 弦
(72)【発明者】
【氏名】小島 輝久
【テーマコード(参考)】
2F077
5H560
【Fターム(参考)】
2F077AA25
2F077TT72
5H560DA07
5H560DB20
5H560DC12
5H560RR03
5H560TT01
5H560TT02
5H560TT11
5H560TT15
5H560XA04
5H560XA05
(57)【要約】
【課題】モータの正確な速度情報を演算できるモータ制御装置及びモータ制御方法を提供する。
【解決手段】モータ制御装置10はモータ1を駆動するアンプ2と、第一周期が経過する都度、モータ1の位置情報を取得するエンコーダ3とを有するモータ制御装置10であって、アンプ2は、第一周期よりも長い第二周期が経過する都度、位置情報の出力をエンコーダ3へ要求する要求信号を出力する第一出力部を備え、エンコーダ3は、位置情報をアンプ2へ出力する第二出力部を備えており、更に、エンコーダ3が要求信号を受信した要求受信時点の直前の時点である第一時点にて取得した位置情報と、エンコーダ3が第一時点から第一周期に基づき所定時間遡った第二時点にて取得した位置情報と、所定時間とに基づいてモータ1の速度情報を演算する演算部を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動するアンプと、第一周期が経過する都度、前記モータの位置情報を取得するエンコーダとを有するモータ制御装置であって、
前記アンプは、前記第一周期よりも長い第二周期が経過する都度、前記位置情報の出力を前記エンコーダへ要求する要求信号を出力する第一出力部を備え、
前記エンコーダは、前記位置情報を前記アンプへ出力する第二出力部を備えており、
更に、前記エンコーダが前記要求信号を受信した要求受信時点の直前の時点である第一時点にて取得した前記位置情報と、前記エンコーダが前記第一時点から前記第一周期に基づき所定時間遡った第二時点にて取得した前記位置情報と、前記所定時間とに基づいて前記モータの速度情報を演算する演算部
を備えるモータ制御装置。
【請求項2】
前記エンコーダは、前記第一周期に基づくカウント値を生成する生成部を備え、
前記所定時間は、前記第一周期に、前記カウント値の所定の変化量を示す所定カウント値を乗じた時間である
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記エンコーダは、前記演算部と、
前記演算部が演算した前記速度情報を前記アンプへ出力する第三出力部と
を備える請求項1又は請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記エンコーダは、前記要求信号の受信時における前記位置情報を、前記要求信号の受信の直前に前記エンコーダが取得した前記位置情報に基づいて推定する推定部を備え、
前記第二出力部は、前記推定部が推定した前記位置情報を前記アンプへ出力する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記エンコーダが前記第二時点にて取得した前記位置情報と、前記エンコーダが前記第二時点から前記所定時間遡った第三時点にて取得した前記位置情報と、前記所定時間とに基づいて加速度情報演算用速度情報を演算し、
前記エンコーダが前記第一時点にて取得した前記位置情報に基づき演算した前記速度情報と、演算した前記加速度情報演算用速度情報と、前記所定時間とに基づいて前記モータの加速度情報を演算する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記エンコーダは、前記要求信号を受信した際、前記要求信号を受信した時点から前記第一周期の計測を開始し、
前記第二出力部は、前記要求信号の受信の直前に前記エンコーダが取得した前記位置情報を前記アンプへ出力する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記エンコーダが前記要求受信時点にて前記要求信号を受信した際、前記速度情報を演算し、
前記エンコーダが前記要求受信時点にて前記要求信号を受信した際、演算した前記速度情報と、前記エンコーダが前記要求受信時点の一つ前の前記要求受信時点にて前記要求信号を受信した際、演算した前記速度情報と、前記第二周期の設定値とに基づいて前記モータの加速度情報を演算する
請求項1から請求項4又は請求項6のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項8】
モータを駆動するアンプと、第一周期が経過する都度、前記モータの位置情報を取得するエンコーダとを有するモータ制御装置が実行するモータ制御方法であって、
前記アンプは、前記第一周期よりも長い第二周期が経過する都度、前記位置情報の出力を前記エンコーダへ要求する要求信号を出力し、
前記エンコーダは、前記位置情報を前記アンプへ出力し、
更に、前記エンコーダが前記要求信号を受信した要求受信時点の直前の時点である第一時点にて取得した前記位置情報と、前記エンコーダが前記第一時点から前記第一周期に基づく所定時間遡った第二時点にて取得した前記位置情報と、前記所定時間とに基づいて前記モータの速度情報を演算する
モータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ制御装置、及びモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ制御装置は、モータを駆動するアンプと、モータの位置情報を取得するエンコーダとを備える(特許文献1参照)。エンコーダは、所定の周期(以下周期1と記す)が経過する都度、モータの位置情報を取得する。位置情報は、例えばモータの回転角である。アンプは、周期1と異なる周期(以下周期2と記す)が経過する都度、エンコーダへ位置情報の出力を要求する要求信号を出力し、エンコーダが出力した位置情報を取得する。例えばアンプは取得した位置情報と周期2とに基づきモータの速度(速度情報)を演算する。アンプは、演算した速度とモータの目標の速度とを比較し、モータの速度が目標の速度となるようにモータの駆動を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-226475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のモータ制御装置において、アンプとエンコーダとは周期を計測する水晶発振器等の計時部を個別に有する。アンプの水晶発振器とエンコーダの水晶発振器は独立して動作するので、例えばアンプが要求信号を出力する時点からエンコーダが要求信号に対して位置情報を出力する時点までの時間間隔にばらつきが生じる。従ってアンプが演算する速度情報は、上記のばらつきによる誤差を含む。アンプは、上位の制御装置(上位装置)と通信し、上位装置から指令信号を受信する。上位装置は周期1及び周期2と異なる周期3が経過する都度、指令信号をアンプへ出力する。上位装置も水晶発振器を個別に有しているので、アンプ側からみて、アンプが上位装置から指令信号を受信する間隔にも同じくばらつきが生じる。アンプが上位装置から指令信号を受信する時点からアンプがエンコーダから位置情報を受信する時点までの時間が長い場合、アンプは上位装置からの指令信号に追従できなくなる。そのためアンプは上位装置から指令信号を受け取ったタイミングに合わせて、エンコーダへ要求信号を出力するタイミングを変更する為に周期2を変更する。従って、アンプが演算する速度情報は、上位装置から指令信号を受け取る間隔のばらつきによる誤差を含む。例えばエンコーダは分解能を高める為に内挿分割を行う。エンコーダが内挿分割を行う際、内挿分割の為の処理、例えばAD(Analog to Digital)変換処理による時間遅れが発生する。そのため、エンコーダは要求信号を受信した時点の位置情報を推定し、推定した位置情報をアンプへ出力する。エンコーダが推定した位置情報は推定誤差を含むので、当該位置情報に基づきアンプが演算する速度情報は誤差を含む。速度情報が誤差を含む際、モータの速度情報の時系列データに対する解析を行って、例えば当該モータを有する機械の異常診断を行う事は難しい。
【0005】
本開示は、モータの正確な速度情報を演算できるモータ制御装置及びモータ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るモータ制御装置は、モータを駆動するアンプと、第一周期が経過する都度、前記モータの位置情報を取得するエンコーダとを有するモータ制御装置であって、前記アンプは、前記第一周期よりも長い第二周期が経過する都度、前記位置情報の出力を前記エンコーダへ要求する要求信号を出力する第一出力部を備え、前記エンコーダは、前記位置情報を前記アンプへ出力する第二出力部を備えており、更に、前記エンコーダが前記要求信号を受信した要求受信時点の直前の時点である第一時点にて取得した前記位置情報と、前記エンコーダが前記第一時点から前記第一周期に基づき所定時間遡った第二時点にて取得した前記位置情報と、前記所定時間とに基づいて前記モータの速度情報を演算する演算部を備える。
【0007】
本開示においては、エンコーダは第一周期を計測する計時部、例えば水晶発振器を有し、第一周期が経過する都度、モータの位置情報を取得する。アンプは第二周期を計測する計時部、例えば水晶発振器を有する。第二周期が経過する都度、第一出力部は要求信号をエンコーダへ出力する。演算部は、エンコーダが第一時点にて取得した位置情報と、エンコーダが第一時点から所定時間遡った第二時点にて取得した位置情報と、所定時間とに基づいてモータの速度情報を演算する。所定時間は、第一周期、即ちエンコーダが計測する時間に基づく時間であり、エンコーダの計時部とアンプの計時部とのずれによる影響を受けない。故に所定時間は、第二時点から第一時点までの正確な時間を示す。演算部はエンコーダが取得した位置情報を用いてモータの速度情報を演算する。従って演算部はモータのより正確な速度情報を演算できる。
【0008】
本開示に係るモータ制御装置は、前記エンコーダは、前記第一周期に基づくカウント値を生成する生成部を備え、前記所定時間は、前記第一周期に、前記カウント値の所定の変化量を示す所定カウント値を乗じた時間である。
【0009】
本開示においては、生成部はカウント値を生成する。カウント値は例えば整数であり、第一周期が経過する都度、即ちエンコーダが位置情報を取得する都度、1増加する。例えばエンコーダは位置情報を取得する都度、取得した位置情報を、当該位置情報を取得した際のカウント値と関連付けて記憶する。所定カウント値はカウント値の所定の変化量を示し、例えば予めエンコーダに記憶してある。演算部は、エンコーダが第一時点にて取得した位置情報と、エンコーダが第二時点にて取得した位置情報とを用いてモータの速度情報を演算できる。
【0010】
本開示に係るモータ制御装置は、前記エンコーダは、前記演算部と、前記演算部が演算した前記速度情報を前記アンプへ出力する第三出力部とを備える。
【0011】
本開示においては、エンコーダは演算部を備え、上述のようにしてモータの正確な速度情報を演算する。第三出力部は、演算部が演算した速度情報をアンプへ出力する。従ってアンプはモータの正確な速度情報をエンコーダから取得できる。
【0012】
本開示に係るモータ制御装置は、前記エンコーダは、前記要求信号の受信時における前記位置情報を、前記要求信号の受信の直前に前記エンコーダが取得した前記位置情報に基づいて推定する推定部を備え、前記第二出力部は、前記推定部が推定した前記位置情報を前記アンプへ出力する。
【0013】
本開示においては、推定部は要求信号の受信時における位置情報を推定する。第二出力部は推定部が推定した要求信号の受信時における位置情報をアンプへ出力する。エンコーダが位置情報を取得した時点とエンコーダが要求信号を受信した時点とが異なる場合であってもアンプは、エンコーダが要求信号を受信した時点における位置情報を取得できる。
【0014】
本開示に係るモータ制御装置は、前記演算部は、前記エンコーダが前記第二時点にて取得した前記位置情報と、前記エンコーダが前記第二時点から前記所定時間遡った第三時点にて取得した前記位置情報と、前記所定時間とに基づいて加速度情報演算用速度情報を演算し、前記エンコーダが前記第一時点にて取得した前記位置情報に基づき演算した前記速度情報と、演算した前記加速度情報演算用速度情報と、前記所定時間とに基づいて前記モータの加速度情報を演算する。
【0015】
本開示においては、演算部はモータの加速度情報を演算する。演算部は加速度情報を演算する際、第二時点から所定時間遡った第三時点にてエンコーダが取得した位置情報を特定する。演算部は、エンコーダが第二時点にて取得した位置情報と、エンコーダが第三時点にて取得した位置情報と、所定時間とに基づいて加速度情報演算用速度情報を演算する。加速度情報演算用速度情報は、第三時点から第二時点までの間におけるモータの正確な速度情報を示す。演算部は、エンコーダが第一時点にて取得した位置情報、エンコーダが第二時点にて取得した位置情報、及び所定時間に基づき演算した速度情報と、演算した加速度情報演算用速度情報と、所定時間とに基づいてモータの加速度情報を演算する。所定時間は第一周期に基づく時間なので、演算部はモータの正確な加速度情報を演算できる。
【0016】
本開示に係るモータ制御装置は、前記エンコーダは、前記要求信号を受信した際、前記要求信号を受信した時点から前記第一周期の計測を開始し、前記第二出力部は、前記要求信号の受信の直前に前記エンコーダが取得した前記位置情報を前記アンプへ出力する。
【0017】
本開示においては、エンコーダは要求信号を受信した際、要求信号を受信した時点から第一周期の計測を開始する。エンコーダは要求信号の受信時、アンプとのいわゆる同期を行う。第二出力部は要求信号の受信の直前にエンコーダが取得した位置情報をアンプへ出力する。エンコーダは要求信号の受信時にアンプとの同期を行うので、エンコーダが位置情報を取得する時点と、第一出力部が要求信号を出力する時点との間の時間は一定である。当該時間が変化しないので、アンプは要求信号の受信の直前にエンコーダが取得した位置情報を用いてモータの駆動を制御できる。
【0018】
本開示に係るモータ制御装置は、前記演算部は、前記エンコーダが前記要求受信時点にて前記要求信号を受信した際、前記速度情報を演算し、前記エンコーダが前記要求受信時点にて前記要求信号を受信した際、演算した前記速度情報と、前記エンコーダが前記要求受信時点の一つ前の前記要求受信時点にて前記要求信号を受信した際、演算した前記速度情報と、前記第二周期の設定値とに基づいて前記モータの加速度情報を演算する。
【0019】
本開示においては、演算部は演算した速度情報を、例えばアクセス可能な記憶部に記憶する。演算部は、エンコーダが要求受信時点にて要求信号を受信した際、演算した速度情報と、エンコーダが上記の要求受信時点の一つ前の要求受信時点にて要求信号を受信した際、演算した速度情報と、第二周期の設定値とに基づいて、モータの加速度情報を演算する。例えば第二周期の設定値は予め上記の記憶部に記憶してある。第二周期の設定値は固定値であるので、エンコーダの計時部とアンプの計時部とのずれによる影響を受けない。従って演算部はモータの正確な加速度情報を演算できる。
【0020】
本開示に係るモータ制御方法は、モータを駆動するアンプと、第一周期が経過する都度、前記モータの位置情報を取得するエンコーダとを有するモータ制御装置が実行するモータ制御方法であって、前記アンプは、前記第一周期よりも長い第二周期が経過する都度、前記位置情報の出力を前記エンコーダへ要求する要求信号を出力し、前記エンコーダは、前記位置情報を前記アンプへ出力し、更に、前記エンコーダが前記要求信号を受信した要求受信時点の直前の時点である第一時点にて取得した前記位置情報と、前記エンコーダが前記第一時点から前記第一周期に基づく所定時間遡った第二時点にて取得した前記位置情報と、前記所定時間とに基づいて前記モータの速度情報を演算する。
【0021】
本開示においては、エンコーダは第一周期を計測する計時部を有し、第一周期が経過する都度、モータの位置情報を取得する。アンプは第二周期を計測する計時部を有し、第二周期が経過する都度、要求信号をエンコーダへ出力する。エンコーダ又はアンプは、エンコーダが第一時点にて取得した位置情報と、エンコーダが第一時点から所定時間遡った第二時点にて取得した位置情報と、所定時間とに基づいてモータの速度情報を演算する。所定時間は第一周期に基づく時間であり、エンコーダの計時部とアンプの計時部とのずれによる影響を受けない。故に所定時間は、第二時点から第一時点までの正確な時間を示す。エンコーダ又はアンプは、エンコーダが取得した位置情報を用いてモータの速度情報を演算する。従ってエンコーダ又はアンプはモータの正確な速度情報を演算できる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、モータの正確な速度情報を演算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】モータ制御システムの構成を略示する模式図である。
図2】要求信号の受信時における位置情報の推定とモータの速度情報及び加速度情報の演算とに関する説明図である。
図3】エンコーダが記憶部に記憶する位置情報とカウント値との模式図である。
図4】エンコーダのCPUが行うモータに関する情報の出力処理を例示するフローチャートである。
図5】実施形態2におけるモータの速度情報及び加速度情報の演算に関する説明図である。
図6】実施形態2においてエンコーダのCPUが行うモータに関する情報の出力処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。図1はモータ制御システムの構成を略示する模式図である。モータ制御システムはモータ1と、モータ1の駆動を制御するモータ制御装置10とを含む。モータ制御装置10は、モータ1を駆動するアンプ2と、モータ1の後述の位置情報を取得するエンコーダ3とを備える。アンプ2とエンコーダ3とは接続してある。アンプ2はモータ1と接続してある。エンコーダ3は、モータ1に取り付けてある検出部5を介してモータ1と接続してある。アンプ2は、上位装置4、例えば数値制御装置と接続してある。
【0025】
例えば上位装置4はモータ1の駆動内容を示す指令信号をアンプ2へ出力する。詳細は後述するがアンプ2は、指令信号を受信し、受信した指令信号に応じた駆動をモータ1が行うようにモータ1の駆動を制御する。検出部5はモータ1の位置情報を検出する。エンコーダ3は、第一周期が経過する都度、検出部5からモータ1の位置情報を取得する。詳細は後述するがエンコーダ3は、取得した位置情報を用いてモータ1の速度情報を演算し、演算した速度情報を用いてモータ1の加速度情報を演算する。速度情報はモータ1の速度を表す。加速度情報はモータ1の加速度を表す。アンプ2は、第一周期よりも長い第二周期が経過する都度、位置情報の出力をエンコーダ3へ要求する要求信号を出力する。エンコーダ3は要求信号を受信した際、モータ1の位置情報、速度情報、及び加速度情報をアンプ2へ出力する。アンプ2はエンコーダ3から取得した位置情報、速度情報、及び加速度情報の少なくとも一つに基づいてモータ1の駆動を上述のように制御する。アンプ2はモータ1の駆動に対するフィードバック制御を行う。
【0026】
上位装置4は、CPU40と、アンプ2と通信する為の入出力インタフェース(入出力I/F)41とを備える。入出力I/F41は、アンプ2が備える入出力I/F22と接続してある。CPU40は、入出力I/F41及び入出力I/F22を介してアンプ2と通信を行う。CPU40は、モータ1の駆動内容を示す指令信号をアンプ2へ出力する。例えばCPU40は、アンプ2がモータ1の速度情報及び加速度情報を取得する都度、アンプ2からモータ1の速度情報及び加速度情報を取得する。CPU40は取得した速度情報及び加速度情報を、時系列データとしてEEPROM、EPROM又はフラッシュメモリ等の図示しない記憶部に記憶する。CPU40は記憶部に記憶した速度情報及び加速度情報の少なくとも一方に対して解析、例えばフーリエ変換を行い、種々の推定、例えばモータ1の寿命の推定を行う。上位装置4はCPU40に代えて、論理回路(FPGA/Field Programmable Gate Array)を備えてもよい。
【0027】
アンプ2はCPU20と、記憶部21と、上位装置4と通信する為の入出力I/F22と、水晶発振器を有するタイマ23と、モータ1へ電流を出力する電流出力部24と、エンコーダ3と通信する為の入出力I/F25とを備える。CPU20、記憶部21、入出力I/F22、タイマ23及び入出力I/F25は接続してある。入出力I/F22は入出力I/F41と接続してある。入出力I/F25は、エンコーダ3が備える入出力I/F32と接続してある。電流出力部24はCPU20及びモータ1と接続してある。アンプ2はCPU20に代えて、FPGAを備えてもよい。
【0028】
記憶部21は、例えばEEPROM、EPROM又はフラッシュメモリである。記憶部21には、アンプ2を制御する為の制御プログラム、及び制御プログラムを実行するために必要な各種の情報が予め記憶してある。CPU20は記憶部21に記憶してある制御プログラムを実行することにより、モータ1の制御処理等の各種の処理を行う。
【0029】
CPU20は入出力I/F22を介して上位装置4と通信を行う。CPU20は入出力I/F25を介してエンコーダ3と通信を行う。タイマ23は時間を計測する。タイマ23が計測する時間が第二周期を経過する都度、即ち第二周期が経過する都度、CPU20は入出力I/F25を介して要求信号をエンコーダ3へ出力する。CPU20及び入出力I/F25は第一出力部に相当する。CPU20はエンコーダ3からモータ1の位置情報、速度情報、及び加速度情報を取得する。例えばCPU20は取得したモータ1の速度情報及び加速度情報を上位装置4へ出力する。CPU20は上位装置4から指令信号を受信する。
【0030】
CPU20は、電流出力部24がモータ1へ出力する電流を制御し、受信した指令信号に応じた駆動をモータ1が行うようにモータ1の駆動を制御する。例えばCPU20は取得した位置情報、速度情報及び加速度情報の少なくとも一つに基づき、電流出力部24が出力すべき電流を導出し、導出した電流を示す電流信号を電流出力部24へ出力する。電流出力部24は電流信号を受信し、受信した電流信号に基づいてモータ1へ電流を出力する。
【0031】
検出部5は、例えばコードホイール、発光素子、及び受光素子を含む。上述のように検出部5はモータ1に取り付けてあり、モータ1の位置情報を検出する。モータ1の位置情報は、例えばモータ1の回転角である。
【0032】
エンコーダ3は、CPU30、記憶部31、アンプ2と通信する為の入出力I/F32、水晶発振器を有するタイマ33、及びモータ1の位置情報を取得する取得部34を備える。CPU30、記憶部31、入出力I/F32、タイマ33、及び取得部34は接続してある。入出力I/F32は上述のように入出力I/F25と接続してある。エンコーダ3はCPU30に代えて、FPGAを備えてもよい。
【0033】
記憶部31は、例えばEEPROM、EPROM又はフラッシュメモリである。記憶部31には、エンコーダ3を制御する為の制御プログラム、及び制御プログラムを実行するために必要な各種の情報が予め記憶してある。CPU30は記憶部31に記憶してある制御プログラムを実行することにより、演算処理及び出力処理等の各種の処理を行う。
【0034】
取得部34は検出部5と接続してあり、検出部5が検出するモータ1の位置情報を取得する。エンコーダ3は検出部5を含んでもよい。タイマ33は時間を計測する。タイマ33が計測する時間が第一周期を経過する都度、即ち第一周期が経過する都度、CPU30は取得部34を介してモータ1の位置情報を取得する。CPU30は取得した位置情報を後述のカウント値と関連付けて記憶部31に記憶する。
【0035】
CPU30は入出力I/F32を介してアンプ2と通信を行う。例えばCPU30は、アンプ2が出力する要求信号を受信する。CPU30は要求信号の受信時における位置情報を推定する。CPU30が位置情報を推定する方法については後述する。CPU30は推定した位置情報を入出力I/F32を介してアンプ2へ出力する。詳細は後述するがCPU30はモータ1の速度情報及び加速度情報を演算する。CPU30は演算した速度情報及び加速度情報を入出力I/F32を介してアンプ2へ出力する。CPU30は推定部、及び演算部に相当する。CPU30及び入出力I/F32は、第二出力部、及び第三出力部に相当する。
【0036】
CPU30は、第一周期に基づくカウント値を生成する生成部として機能する。カウント値は整数であり、第一周期が経過する都度、1増加する。即ちCPU30は位置情報を取得する都度、カウント値を更新する。CPU30は位置情報を取得した際にカウント値を生成し、取得した位置情報と生成したカウント値とを関連付けて記憶部31に記憶する。例えばCPU30は適宜カウント値を0にリセットしてもよい。
【0037】
エンコーダ3は図示しないタイマ用カウンタを備える。タイマ用カウンタは、タイマ33の水晶発振器が発生するパルスの個数を計測する。以下、タイマ用カウンタが計測するパルスの個数を、タイマ値とも称する。CPU30は、第一周期が経過する都度、即ちCPU30が位置情報を取得する都度、タイマ値を0にリセットする。従って第一周期の開始時点にてタイマ値は0である。例えばタイマ値が0からa(aは自然数)になった場合、第一周期が経過する。CPU30はタイマ値をaから0にリセットする。タイマ値がb(bは0以上a以下の整数)である場合、第一周期の開始時点から経過した時間は、第一周期×b/aと表すことができる。
【0038】
図2は、要求信号の受信時における位置情報の推定とモータ1の速度情報及び加速度情報の演算とに関する説明図である。図2において、アンプ2がm回目に出力する要求信号はR(m)と示してある。エンコーダ3がn回目に取得する位置情報はP(n)と示してある。mとnとは自然数である。後述の図5も同様である。
【0039】
まずCPU30、即ちエンコーダ3が要求信号の受信時における位置情報を推定する方法を説明する。エンコーダ3は要求信号の受信時における位置情報を、要求信号の受信の直前に取得した位置情報に基づいて推定する。
【0040】
図2において、アンプ2がR(m+2)を出力した際、エンコーダ3はP(n+10)を取得した直後であってP(n+11)を取得する直前にR(m+2)を受信する。R(m+2)の受信の直前にエンコーダ3が取得した位置情報はP(n+10)である。
【0041】
上述のようにエンコーダ3は取得した位置情報と更新したカウント値とを関連付けて記憶部31に記憶する。図3は、エンコーダ3が記憶部31に記憶する位置情報とカウント値との模式図である。エンコーダ3はP(n+10)を、P(n+10)取得時に更新したカウント値であるn+10と関連付けて記憶部31に記憶する。カウント値はエンコーダ3が位置情報を取得する都度、1増加するので、エンコーダ3は、P(n+10)の一つ前の位置情報であるP(n+9)を取得した際、P(n+9)とn+9というカウント値とを関連付けて記憶部31に記憶している。
【0042】
図2に示す如く、エンコーダ3がP(n+10)を取得した時点からR(m+2)を受信した時点までには時間Tが経過している。例えば位置情報はモータ1の回転角である。エンコーダ3は時間Tにおける回転角の変化量を、R(m+2)の受信の直前に取得した位置情報であるP(n+10)と、P(n+10)の一つ前の位置情報であるP(n+9)と、上述のタイマ値とに基づき推定する。
【0043】
例えばタイマ値が0からaになった場合、第一周期が経過する。エンコーダ3がR(m+2)を受信した時点におけるタイマ値はbである。エンコーダ3は、時間Tにおける回転角の変化量=(P(n+10)-P(n+9))/第一周期×(第一周期×b/a)=(P(n+10)-P(n+9))×b/aと推定する。時間Tにおける回転角の変化量は、P(n+10)を取得した時点から変化した量であるので、エンコーダ3は、R(m+2)の受信時における位置情報=P(n+10)+(P(n+10)-P(n+9))×b/aと推定する。
【0044】
以下、エンコーダ3がある要求信号を受信した時点を要求受信時点とも称する。エンコーダ3が要求受信時点の直前の位置情報を取得した時点、即ちエンコーダ3が要求信号受信時点における最新の位置情報を取得した時点を第一時点とも称する。R(m+2)に着目した場合、エンコーダ3がR(m+2)を受信した時点は要求受信時点に相当する。P(n+10)は要求受信時点の直前の位置情報に相当する。エンコーダ3がP(n+10)を取得した時点は第一時点に相当する。エンコーダ3が第一時点にて取得した位置情報を、第一時点の位置情報とも称する。エンコーダ3が第一時点の位置情報の一つ前に取得した位置情報を推定用情報とも称する。エンコーダ3は、要求信号の受信時における位置情報=第一時点の位置情報+(第一時点の位置情報-推定用情報)×b/aと推定する。
【0045】
次に、エンコーダ3がモータ1の速度情報及び加速度情報を演算する方法について説明する。例えばエンコーダ3は、要求信号を受信した際に速度情報及び加速度情報を演算する。エンコーダ3は速度情報を演算する際、第一時点から第一周期に所定カウント値を乗じた所定時間遡った第二時点にて取得した位置情報を特定する。所定時間は第一周期以上であり、第二周期未満である。所定カウント値は、カウント値の所定の変化量を示す。所定カウント値は、所定カウント値と第一周期との積が第一周期以上第二周期未満を満たす整数である。所定カウント値は予め記憶部31に記憶してある。以下、エンコーダ3が第二時点にて取得した位置情報を、第二時点の位置情報とも称する。
【0046】
所定カウント値をNとした場合、第二時点の位置情報は、エンコーダ3が第一時点の位置情報のN個前に取得した位置情報である。例えばエンコーダ3は、位置情報と関連付けて記憶部31に記憶したカウント値に基づいて第二時点の位置情報を特定する。エンコーダ3は、第一時点の位置情報と関連付けてあるカウント値と所定カウント値との差分を導出し、導出した差分と同じ値であるカウント値と関連付けてある位置情報を第二時点の位置情報と特定する。
【0047】
R(m+2)に着目した場合、要求受信時点はエンコーダ3がR(m+2)を受信した時点である。エンコーダ3が第一時点にて取得した位置情報はP(n+10)である。例えば所定カウント値が4である場合、P(n+10)と関連付けてあるカウント値であるn+10と所定カウント値との差分はn+6である。n+6のカウント値と関連付けてある位置情報はP(n+6)である。従ってエンコーダ3はR(m+2)を受信した際、P(n+6)を第二時点の位置情報として特定する。なお所定カウント値は、所定カウント値と第一周期との積が第一周期以上第二周期未満を満たす整数であれば、4に限らない。
【0048】
エンコーダ3は、第一時点の位置情報と、第二時点の位置情報と、所定時間とに基づき、以下のようにしてモータ1の速度情報を演算する。エンコーダ3は、モータ1の速度情報=(第一時点の位置情報-第二時点の位置情報)/所定時間と演算する。例えばエンコーダ3は、R(m+2)を受信した際のモータ1の速度情報V1=(P(n+10)-P(n+6))/所定時間と演算する。エンコーダ3は、R(m+1)を受信した際のモータ1の速度情報=(P(n+5)-P(n+1))/所定時間と演算する。
【0049】
エンコーダ3はモータ1の速度情報を演算する際、推定した位置情報ではなく、取得した位置情報を用いる。故にエンコーダ3が速度情報の演算に用いる位置情報は、推定による誤差を含まない。所定時間は第一周期、即ちエンコーダ3が計測する時間に基づく時間であり、タイマ33の水晶発振器とタイマ23の水晶発振器とのずれによる影響を受けない。故に所定時間は、第二時点から第一時点までの正確な時間を示す。従ってエンコーダ3はモータ1の正確な速度情報を演算できる。エンコーダ3が演算する速度情報は、タイマ33の水晶発振器とタイマ23の水晶発振器とのずれにより生じるエンコーダ3とアンプ2との通信間隔のばらつきによる誤差を含まない。同様に、エンコーダ3が演算する速度情報は、上位装置4とアンプ2との通信間隔のばらつきによる誤差も含まない。
【0050】
エンコーダ3はモータ1の速度情報を演算した後、モータ1の加速度情報を演算する。エンコーダ3は加速度情報を演算する際、第二時点から所定時間遡った第三時点にて取得した位置情報を特定する。例えばエンコーダ3は、上述のように位置情報と関連付けて記憶部31に記憶したカウント値に基づき、第三時点にて取得した位置情報を特定する。図2においてR(m+2)に着目した場合、エンコーダ3がP(n+6)を取得した時点が第二時点に相当する。この場合の第三時点は、エンコーダ3がP(n+2)を取得した時点である。エンコーダ3は、P(n+2)を第三時点にて取得した位置情報として特定する。以下、エンコーダ3が第三時点にて取得した位置情報を第三時点の位置情報とも称する。
【0051】
エンコーダ3は以下のようにして、モータ1の加速度情報を演算する為の加速度情報演算用速度情報を、第二時点の位置情報と、第三時点の位置情報と、所定時間とに基づいて演算する。エンコーダ3は、加速度情報演算用速度情報=(第二時点の位置情報-第三時点の位置情報)/所定時間と演算する。エンコーダ3は、要求受信時点にて要求信号を受信した際に上述のようにして演算した速度情報と、演算した加速度情報演算用速度情報と、所定時間とに基づいてモータ1の加速度情報を演算する。エンコーダ3は、モータ1の加速度情報=(要求受信時点にて要求信号を受信した際に演算した速度情報-加速度情報演算用速度情報)/所定時間と演算する。
【0052】
例えばエンコーダ3はR(m+2)を受信した際、上述のようにR(m+2)を受信した際のモータ1の速度情報V1を演算する。エンコーダ3は、R(m+2)を受信した際の加速度情報演算用速度情報Vc=(P(n+6)-P(n+2))/所定時間と演算する。エンコーダ3は、R(m+2)を受信した際のモータ1の加速度情報=(V1-Vc)/所定時間と演算する。
【0053】
エンコーダ3が演算した速度情報は、第二時点から第一時点までの時間におけるモータ1の正確な速度情報を示す。加速度情報演算用速度情報は、第三時点から第二時点までの時間におけるモータ1の正確な速度情報を示す。所定時間は第一周期に基づく時間であり、第二時点から第一時点までの正確な時間を示す。従ってエンコーダ3はモータ1のより正確な加速度情報を演算できる。
【0054】
エンコーダ3がモータ1の加速度情報を演算する方法は、上述の方法に限らない。例えばエンコーダ3は後述する実施形態2の加速度情報の演算方法を用いて、モータ1の加速度情報を演算してもよい。
【0055】
図4はエンコーダ3のCPU30が行うモータ1に関する情報の出力処理を例示するフローチャートである。モータ1に関する情報は、モータ1の位置情報、速度情報及び加速度情報を含む。例えばCPU30は、出力処理の開始を示す開始信号をアンプ2から受信し、以下の処理を開始する。以下、ステップをSと省略する。
【0056】
CPU30はモータ1の位置情報の取得を開始する(S11)。タイマ33は第一周期の計測を開始する。上述のようにCPU30は、第一周期が経過する都度、位置情報を取得する。CPU30は、アンプ2から要求信号を受信したか否かを判定する(S12)。
【0057】
CPU30は、要求信号を受信していない場合(S12:NO)、第一周期が経過したか否かを判定する(S13)。第一周期が経過していない場合(S13:NO)、CPU30はS12の処理を行う。
【0058】
第一周期が経過した場合(S13:YES)、CPU30は、位置情報の取得を完了し(S14)、タイマ値をリセットする(S15)。CPU30はカウント値を更新する(S16)。更新によりカウント値は、更新前のカウント値よりも1増加する。CPU30は、取得した位置情報を更新したカウント値と関連付けて記憶部31に記憶し(S17)、S11の処理を行う。
【0059】
CPU30は、要求信号を受信した場合(S12:YES)、上述のように要求信号の受信時における位置情報を推定する(S121)。CPU30は上述のようにモータ1の速度情報を演算する(S122)。CPU30は上述のようにモータ1の加速度情報を演算する(S123)。CPU30は、推定した要求信号の受信時における位置情報と、演算した速度情報と、演算した加速度情報とをアンプ2へ出力する(S124)。CPU30はS13の処理を行う。例えばCPU30は、出力処理の終了を示す終了信号をアンプ2から受信し、出力処理を終了する。
【0060】
アンプ2のCPU20は、CPU30が推定した要求信号の受信時における位置情報を取得する。CPU30が位置情報を取得した時点とCPU30が要求信号を受信した時点とが異なる場合であってもCPU20は、CPU30が要求信号を受信した時点における位置情報を取得できる。
【0061】
CPU20は、CPU30が演算したモータ1の速度情報及び加速度情報を取得する。CPU30は上述のようにモータ1の正確な速度情報及び加速度情報を演算するので、アンプ2のCPU20は、モータ1の正確な速度情報及び加速度情報を取得できる。CPU20は上述のように、取得した位置情報、速度情報、及び加速度情報の少なくとも一つに基づいてモータ1の駆動を制御する。
【0062】
例えばCPU20は取得したモータ1の速度情報及び加速度情報を上位装置4へ出力する。上位装置4のCPU40は、モータ1の速度情報及び加速度情報をCPU20から取得する。上述のようにCPU40は取得した速度情報及び加速度情報の少なくとも一方を解析し、種々の推定を行う。CPU40がCPU20から取得した速度情報及び加速度情報は、モータ1の正確な速度及び加速度を表すので、CPU40は正確な解析及び推定を行うことができる。
【0063】
本実施形態においてCPU30はモータ1の速度情報及び加速度情報を演算するが、速度情報及び加速度情報のうち、速度情報のみを演算してもよい。CPU30に代えて、CPU20がモータ1の速度情報及び加速度情報を演算してもよい。即ちエンコーダ3に代えて、アンプ2がモータ1の速度情報及び加速度情報を演算してもよい。
【0064】
アンプ2が速度情報及び加速度情報を演算する場合、例えばCPU30はS122及びS123にて、第二時点の位置情報、及び第三時点の位置情報を特定する。CPU30はS124にて速度情報及び加速度情報の代わりに、第一時点の位置情報、第二時点の位置情報、第三時点の位置情報、及び所定時間をアンプ2へ出力する。アンプ2のCPU20は、第一時点の位置情報、第二時点の位置情報、第三時点の位置情報、及び所定時間をCPU30から取得し、モータ1の速度情報及び加速度情報を演算する。
【0065】
本実施形態において、上位装置4(CPU40)が取得したモータ1の速度情報及び加速度情報の少なくとも一方に基づき解析及び推定を行うが、上位装置4以外の装置が解析及び推定を行ってもよい。例えば上位装置4は図示しないインタフェース及びネットワークを介してサーバコンピュータと接続してある。上位装置4は、アンプ2からモータ1の位置情報、速度情報及び加速度情報を取得し、取得した位置情報、速度情報及び加速度情報をサーバコンピュータへ出力する。サーバコンピュータは、上位装置4が出力した位置情報、速度情報及び加速度情報を取得し、取得した位置情報、速度情報及び加速度情報を、サーバコンピュータがアクセス可能な記憶装置に記憶する。サーバコンピュータは、記憶装置に記憶した位置情報、速度情報及び加速度情報の少なくとも一つを用いて、モータ1の状態又はモータ1が駆動する装置の状態を推定する。
【0066】
(実施形態2)
実施形態2に係る構成のうち、実施形態1と同様な構成部については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0067】
実施形態2のエンコーダ3において、エンコーダ3がアンプ2から要求信号を受信した際、タイマ33は、エンコーダ3が要求信号を受信した時点を第一周期の新たな開始時点とし、当該新たな開始時点から第一周期の計測を開始する。エンコーダ3はアンプ2といわゆる同期を行う。実施形態2のCPU30は要求信号の受信の直前にエンコーダ3が取得した位置情報を入出力I/F32を介してアンプ2へ出力する。実施形態2の記憶部31は、加速度情報の演算の為の速度情報を記憶する演算用速度情報記憶領域を有する。
【0068】
図5は実施形態2におけるモータ1の速度情報及び加速度情報の演算に関する説明図である。上述のようにエンコーダ3は要求信号を受信した際、新たな第一周期の開始時点から第一周期の計測を開始する。例えばエンコーダ3は新たな第一周期の開始時点にて位置情報を取得せず、カウント値を更新しない。
【0069】
図5において、エンコーダ3はP(n)を取得した直後、R(m)を受信する。エンコーダ3はR(m)を受信した時点を第一周期の新たな開始時点とし、例えばR(m)を受信した時点にてタイマ値をリセットし、R(m)を受信した時点から第一周期の計測を開始する。エンコーダ3はR(m)を受信した時点にて位置情報を取得せず、カウント値を更新しない。
【0070】
エンコーダ3は第一周期が経過する都度、位置情報を取得する。エンコーダ3はP(n+5)を取得した直後にR(m+1)を受信する。エンコーダ3はR(m+1)を受信した際、R(m)を受信した際と同様に新たな第一周期の開始時点から第一周期の計測を開始する。エンコーダ3はR(m+1)を受信した時点から第一周期の計測を開始し、第一周期が経過する都度、位置情報を取得する。エンコーダ3はP(n+10)を取得した直後にR(m+2)を受信する。エンコーダ3はR(m+2)を受信した際、R(m)を受信した際と同様に新たな第一周期の開始時点から第一周期の計測を開始する。エンコーダ3はR(m+2)を受信した時点から第一周期の計測を開始し、第一周期が経過する都度、位置情報を取得する。
【0071】
実施形態1と同様にエンコーダ3は位置情報を取得した際、カウント値を更新し、取得した位置情報と更新した位置情報とを関連付けて記憶部31に記憶する。エンコーダ3は要求信号を受信した際、要求信号の受信の直前に取得した位置情報、即ち第一時点の位置情報をアンプ2へ出力する。例えばエンコーダ3はR(m+1)を受信した際、P(n+5)をアンプ2へ出力する。エンコーダ3はR(m+2)を受信した際、P(n+10)をアンプ2へ出力する。
【0072】
エンコーダ3は要求信号の受信時にアンプ2との同期を行うので、エンコーダ3が位置情報を取得する時点と、アンプ2が要求信号を出力する時点との間の時間は一定である。当該時間が変化しないのでアンプ2は、エンコーダ3が要求信号の受信の直前に取得した位置情報を用いてモータ1の駆動を制御できる。
【0073】
エンコーダ3は要求信号を受信した際、実施形態1と同様にしてモータ1の速度情報を演算する。図5において所定カウント値は4である。例えばエンコーダ3はR(m+1)を受信した際、R(m+1)を受信した際の速度情報であるV(m+1)=(P(n+5)-P(n+1))/所定時間と演算する。エンコーダ3はV(m+1)を演算した後、後述の演算方法によってモータ1の加速度情報を演算する。エンコーダ3は加速度情報を演算した後、V(m+1)を演算用速度情報記憶領域に記憶する。
【0074】
エンコーダ3はR(m+2)を受信した際、R(m+2)を受信した際の速度情報であるV(m+2)=(P(n+10)-P(n+6))/所定時間と演算する。エンコーダ3はV(m+2)を演算した後、演算したV(m+2)と、演算用速度情報記憶領域に記憶してある速度情報、即ちV(m+1)と、アンプ2のタイマ23が計測する第二周期の設定値とに基づき、以下のようにしてモータ1の加速度情報を演算する。エンコーダ3は、R(m+2)を受信した際のモータ1の加速度情報=(V(m+2)-V(m+1))/第二周期の設定値と演算する。第二周期の設定値は、例えばエンコーダ3の製造時に、予め記憶部31に記憶してある固定値(定数)である。エンコーダ3はR(m+2)を受信した際のモータ1の加速度情報を演算した後、V(m+2)を演算用速度情報記憶領域に上書きし、演算用速度情報記憶領域に記憶してある速度情報を更新する。
【0075】
R(m+2)に着目した場合、エンコーダ3がR(m+2)を受信した時点は、要求受信時点に相当する。V(m+2)は、エンコーダ3が要求受信時点にて要求信号を受信した際、演算した速度情報に相当する。エンコーダ3がR(m+1)を受信した時点は、上記の要求受信時点の一つ前の要求受信時点に相当する。V(m+1)は、エンコーダ3が一つ前の要求受信時点にて要求信号を受信した際、演算した速度情報に相当する。即ち演算用速度情報記憶領域に記憶してある速度情報は、エンコーダ3が一つ前の要求受信時点にて要求信号を受信した際、演算した速度情報である。
【0076】
エンコーダ3は、モータ1の加速度情報=(要求受信時点にて要求信号を受信した際に演算した速度情報-演算用速度情報記憶領域に記憶してある速度情報)/第二周期の設定値と演算する。エンコーダ3は加速度情報の演算後、要求受信時点にて要求信号を受信した際に演算した速度情報を演算用速度情報記憶領域に上書きし、演算用速度情報記憶領域に記憶してある速度情報を更新する。第二周期の設定値は固定値であり、タイマ33の水晶発振器とタイマ23の水晶発振器とのずれによる影響を受けないので、エンコーダ3はモータ1の正確な加速度情報を演算できる。
【0077】
図6は、実施形態2においてエンコーダ3のCPU30が行うモータ1に関する情報の出力処理を例示するフローチャートである。例えばCPU30は、出力処理の開始を示す開始信号をアンプ2から受信し、以下の処理を開始する。
【0078】
CPU30はS21及びS22の処理を行う。S21及びS22の処理はS11及びS12の処理と同様なので、詳細な説明は省略する。CPU30は要求信号を受信していない場合(S22:NO)、S23の処理を行う。S23の処理はS13の処理と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0079】
第一周期が経過していない場合(S23:NO)、CPU30はS22の処理を行う。第一周期が経過した場合(S23:YES)、CPU30はS24、S25、S26及びS27の処理を行う。S24、S25、S26及びS27の処理は、S14,S15、S16及びS17の処理と同様なので、詳細な説明は省略する。CPU30はS21の処理を行う。
【0080】
CPU30は、要求信号を受信した場合(S22:YES)、上述のようにモータ1の速度情報を演算する(S221)。CPU30は上述のようにモータ1の加速度情報を演算する(S222)。CPU30は、演算した速度情報を演算用速度情報記憶領域に上書きする(S223)。CPU30は、要求信号の受信の直前に取得した位置情報と、演算した速度情報と、演算した加速度情報とをアンプ2へ出力する(S224)。
【0081】
CPU30はタイマ値をリセットし(S225)、S21の処理を行う。CPU30はエンコーダ3とアンプ2との同期を行う。タイマ33は第一周期の新たな開始時点から第一周期の計測を開始する。例えばCPU30は、出力処理の終了を示す終了信号をアンプ2から受信し、出力処理を終了する。CPU30はモータ1の速度情報及び加速度情報のうち、速度情報のみを演算してもよい。
【0082】
アンプ2のCPU20は、CPU30が演算した速度情報及び加速度情報を取得する。CPU30はモータ1の正確な速度情報及び加速度情報を演算するので、アンプ2のCPU20はモータ1の正確な速度情報及び加速度情報を取得できる。CPU20は取得した位置情報、速度情報及び加速度情報の少なくとも一つに基づいてモータ1の駆動を制御する。
【0083】
例えばCPU20は取得したモータ1の速度情報及び加速度情報を上位装置4へ出力する。実施形態1と同様に上位装置4のCPU40は、CPU20から取得した速度情報及び加速度情報の少なくとも一方を解析し、種々の推定を行う。CPU40はモータ1の正確な速度情報及び加速度情報を利用できるので、高精度な解析及び推定を行うことができる。
【0084】
CPU30は要求信号を受信した際、実施形態1のように要求信号の受信時における位置情報を推定してもよい。CPU30はS224にて、要求信号の受信の直前に取得した位置情報に代えて、推定した要求信号の受信時における位置情報をアンプ2へ出力する。
【0085】
CPU30に代えて、アンプ2のCPU20がモータ1の速度情報及び加速度情報を演算してもよい。CPU20が速度情報及び加速度情報を演算する場合、CPU30は、S221、S222及びS223の処理に代えて、第二時点の位置情報を特定する。CPU30はS124にて、要求信号の受信の直前に取得した位置情報、即ち第一時点の位置情報と、特定した第二時点の位置情報と、所定時間とをアンプ2へ出力する。
【0086】
アンプ2のCPU20は、第一時点の位置情報、第二時点の位置情報、及び所定時間をCPU30から取得し、モータ1の速度情報を演算する。アンプ2の記憶部21は、演算用速度情報記憶領域を有する。CPU20が前回に演算した速度情報が演算用速度情報記憶領域に記憶してある。記憶部21には第二周期の設定値が記憶してある。CPU20は演算した速度情報、演算用速度情報記憶領域に記憶してある速度情報、及び第二周期の設定値に基づいてモータ1の加速度情報を演算する。CPU20は演算した速度情報を演算用速度情報記憶領域に上書きする。
【0087】
今回開示した実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0088】
1 モータ
10 モータ制御装置
2 アンプ
20 CPU
21 記憶部
3 エンコーダ
30 CPU
31 記憶部
4 上位装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6