(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038281
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】捜索支援システム
(51)【国際特許分類】
A62B 99/00 20090101AFI20220303BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20220303BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
A62B99/00 Z
G06K19/077 228
G06K7/10 148
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142699
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】浅井 康弘
(72)【発明者】
【氏名】関口 和人
(72)【発明者】
【氏名】水谷 康二
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184KA11
2E184MA01
2E184MA06
2E184MA07
2E184MA09
(57)【要約】
【課題】災害現場において行方不明になった作業者の位置を特定する作業を効率的に行うことができるように支援するための捜索支援システムを提供する。
【解決手段】捜索支援システム10は、作業時に一人の作業者が着用する作業用装備20に取り付けられ、探索電波の受信に基づいて応答電波を発信する複数のRFタグ30と、探索電波を発信するとともに、RFタグ30から受信した応答電波に含まれるタグID及び応答電波の電波強度を読み取るRFIDリーダ40と、RFIDリーダ40が読み取ったタグID及び受信した応答電波の電波強度を表示する表示部とを備えている。複数のRFタグ30は、作業用装備20の異なる複数の位置に取り付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業時に一人の作業者が着用する作業用装備に取り付けられ、探索電波の受信に基づいて応答電波を発信する複数のRFタグと、
前記探索電波を発信するとともに、前記RFタグから受信した前記応答電波に含まれるタグID及び前記応答電波の電波強度を読み取るRFIDリーダと、
前記RFIDリーダが読み取った前記タグID及び受信した前記応答電波の電波強度を表示する表示部とを備え、
複数の前記RFタグは、前記作業用装備の異なる複数の位置に取り付けられている捜索支援システム。
【請求項2】
前記作業用装備は、一又は複数の装備品から構成され、
少なくとも一つの前記装備品は、複数の前記RFタグを備えている請求項1に記載の捜索支援システム。
【請求項3】
複数の前記RFタグを備える前記装備品は、当該装備品を着用した状態において、作業者の人体を挟んだ両側に位置するように前記RFタグが取り付けられている請求項2に記載の捜索支援システム。
【請求項4】
前記RFタグは、受信した前記探索電波により電力を発生する電源回路を備えている請求項1~3のいずれか一項に記載の捜索支援システム。
【請求項5】
特定の前記RFタグからの前記応答電波の電波強度に応じて変化する検知音を発生させる検知音発生部を備えている請求項1~4のいずれか一項に記載の捜索支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、消防隊員や救助隊員などの災害現場で活動する作業者を捜索対象とする捜索支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
火災や風水害、地震等の災害現場において活動する消防隊員や救助隊員などの作業者は、二次災害に遭遇する機会が多く、活動中の事故等によって動けなくなり、行方不明となってしまうことが起こり得る。そのため、災害現場などの危険な環境で活動する作業者のリスクを低減するための種々のシステムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、災害現場での活動中の事故等によって動けなくなった非常状態にある作業者を検知するためのシステムが開示されている。これらのシステムでは、作業者が着用する無線機器に作業者の身体の動きを検知するセンサが設けられている。そして、一定時間、作業者が動いていない状態がセンサにより検出された場合、非常状態にあることを示す無線信号を無線機器から親機又は基地局に送信するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-322669号公報
【特許文献2】特開平11-066477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
煙、瓦礫、建築物などにより視界が悪い災害現場では、動けなくなった作業者が近くにいたとしても、その作業者を発見することが難しい場合が多い。そのため、従来のシステムにより、非常状態にある作業者が発生したことを他の作業者が把握したとしても、非常状態にある作業者の位置を特定することは容易ではない。特に、非常状態にある作業者が置かれている状況が、煙や瓦礫等の障害物に覆われている状況である場合には、作業者の位置を特定する作業は更に難しくなる。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、災害現場において行方不明になった作業者の位置を特定する作業を効率的に行うことができるように支援するための捜索支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する捜索支援システムは、作業時に一人の作業者が着用する作業用装備に取り付けられ、探索電波の受信に基づいて応答電波を発信する複数のRFタグと、前記探索電波を発信するとともに、前記RFタグから受信した前記応答電波に含まれるタグID及び前記応答電波の電波強度を読み取るRFIDリーダと、前記RFIDリーダが読み取った前記タグID及び受信した前記応答電波の電波強度を表示する表示部とを備え、複数の前記RFタグは、前記作業用装備の異なる複数の位置に取り付けられている。
【0008】
上記構成によれば、捜索対象者の作業用装備に取り付けられたRFタグの少なくとも一つが、捜索者が有するRFIDリーダと通信可能な状態であれば、RFタグとRFIDリーダとの間の近距離無線通信を利用することによって、捜索対象者の位置を絞り込むことができる。したがって、捜索対象者が置かれている状況が周囲に障害物が多く存在する劣悪な状況である場合であっても、捜索対象者の位置を特定する作業を効率的に行うことができる。
【0009】
上記捜索支援システムにおいて、前記作業用装備は、一又は複数の装備品から構成され、少なくとも一つの前記装備品は、複数の前記RFタグを備えていることが好ましい。この場合、複数の前記RFタグを備える前記装備品は、当該装備品を着用した状態において、作業者の人体を挟んだ両側に位置するように前記RFタグが取り付けられていることが好ましい。
【0010】
人体に含まれる水分も、RFタグとRFIDリーダとの間の電波を遮断又は減衰させる障害物になり得る。上記構成によれば、装備品に対して、人体を挟んだ両側に位置するようにRFタグが装備品に取り付けられているため、両方のRFタグが同時に着用者の人体に覆われるような状態になり難い。したがって、捜索対象者がどのような姿勢であったとしても、人体を挟んだ両側に位置する複数のRFタグのうちの少なくとも一方のRFタグについては、RFIDリーダと通信可能な状態となる確率が高くなる。
【0011】
上記捜索支援システムにおいて、前記RFタグは、受信した前記探索電波により電力を発生する電源回路を備えていることが好ましい。
上記構成によれば、RFタグを動作させるための電池等の電源を設ける必要がない。そのため、メンテナンスが不十分であったり、災害現場での活動が長期化したりして、電池切れなどによりRFタグが正常に動作しなくなることを防止できる。
【0012】
上記捜索支援システムにおいて、特定の前記RFタグからの前記応答電波の電波強度に応じて変化する検知音を発生させる検知音発生部を備えていることが好ましい。
上記構成によれば、捜索者は、表示部を目で確認することなく、電波強度の増減を把握できる。そのため、捜索者の視覚を目視による捜索作業に集中させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、災害現場において行方不明になった作業者の位置を特定する作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の捜索支援システムを消防隊員の捜索支援システムに具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すように、捜索支援システム10は、作業者である消防隊員が着用する消防用の作業用装備20に取り付けられる複数のRFタグ(Radio Frequencyタグ)30、RFIDリーダ(Radio Frequency Identificationリーダ)40、情報処理端末50、及びサーバ60とを備えている。
【0016】
消防用の作業用装備20は、一人の消防隊員が作業時に着用する装備一式であり、複数の装備品から構成される。本実施形態においては、ヘルメット21、上衣22、右手袋23、左手袋24、ズボン25、右靴26、左靴27の7個の装備品により作業用装備20が構成されている。
【0017】
RFタグ30は、全ての装備品に対してそれぞれ取り付けられるとともに、一部の装備品については、複数取り付けられている。詳述すると、上衣22には、背面側の襟部分、前面側胴部、右袖、及び左袖の4か所に合計4個のRFタグ30が取り付けられている。ズボン25には、右裾、左裾の2か所に合計2個のRFタグ30が取り付けられている。その他の装備品には、それぞれ1個ずつRFタグ30が取り付けられている。
【0018】
なお、各RFタグ30は、取り付けられる装備品が備える耐熱素材、耐火素材、耐衝撃素材などの作業用装備20の機能に応じた機能製素材よりも内側(人体側)の部分に縫い込みなどより取り付けられている。また、各RFタグ30は、熱や煙等の外部環境に直接、曝されないように、袖口や襟元など生地を折り返した部分の内部に取り付けられていることが好ましい。
【0019】
図2に示すように、RFタグ30は、探索電波の受信及び応答電波の発信を行うアンテナ31、及びICチップ32を備えている。ICチップ32は、受信した探索電波により電力を発生する電源回路33、タグIDを記憶するための記憶回路34、及びタグIDを載せた応答電波を発信するための無線回路35を備えている。RFタグ30としては、受信した探索電波をエネルギー源として恒久的に動作する公知のパッシブタグを用いることができる。また、RFタグ30は、電波方式(UHF帯)タグであることが好ましい。
【0020】
ICチップ32の記憶回路34に記憶されるタグIDには、RFタグ30が取り付けられている装備品を特定する装備情報、及び装備品におけるRFタグ30が取り付けられている位置を特定する位置情報が含まれている。なお、RFタグ30の取り付け数が1個である装備品に取り付けられるRFタグ30に記憶されるタグIDについては、位置情報を省略することもできる。
【0021】
また、RFタグ30は、防水性タグであることが好ましい。防水性タグとしては、例えば、アンテナ31及びICチップ32を合成紙や化学繊維の布で挟み込んだ構造のタグが挙げられる。
【0022】
図1に示すように、RFIDリーダ40は、探索電波の発信及び応答電波の受信を行う第1通信部41、情報処理端末50との間で通信を行う第2通信部42、及び受信した応答電波からタグIDを読み取る読取部43を備えている。RFIDリーダ40としては、近距離無線通信を用いた自動認識技術に適用される公知の読み込み装置を用いることができる。
【0023】
第2通信部42は、近距離無線通信を介して、情報処理端末50と通信を行うための通信インターフェースである。近距離無線通信は、例えば、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)通信である。第2通信部42は、受信した応答電波から読み取ったタグID、及び受信した応答電波の電波強度を情報処理端末50に送信する。
【0024】
情報処理端末50は、RFIDリーダ40に対して、取り外し可能に取り付けられている。情報処理端末50は、例えば、高機能携帯電話(スマートフォン)であり、端末タッチパネル51、端末タッチセンサ52、第1端末通信部53、第2端末通信部54、検知音発生部55、制御部としての端末CPU56、及び記憶部としての端末メモリ57を備えている。
【0025】
端末タッチパネル51は、長手方向及び短手方向を有する矩形状である。端末タッチパネル51は、ユーザに対して報知を行うものであり、詳細には所望の画像を表示させるものである。本実施形態では、端末タッチパネル51が「表示部」に対応する。
【0026】
端末タッチセンサ52は、情報処理端末50に対する操作の一種である、端末タッチパネル51に対する入力操作を検知するものである。上記入力操作としては、例えば、タッチ操作、スライド操作が挙げられる。詳細には、端末タッチセンサ52は、端末タッチパネル51に対して指が接触しているか否かを検知するとともに、指の接触が検知された場合にはその位置を検知する。そして、端末タッチセンサ52は、検知結果を端末CPU56に出力する。これにより、端末CPU56は、端末タッチパネル51に対する入力操作を把握できる。
【0027】
第1端末通信部53は、近距離無線通信を介して、RFIDリーダ40と通信を行うための通信インターフェースである。近距離無線通信は、例えば、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)通信である。
【0028】
第2端末通信部54は、例えば、広域通信網としてのインターネットNT1を介して、他の情報処理端末50やサーバ60と通信を行うための通信インターフェースである。第2端末通信部54は、例えば、直接インターネットNT1と繋がるように移動通信システムに対応するものであってもよいし、インターネットNT1に繋がっている機器と通信を行うものであってもよい。なお、広域通信網とは任意であり、例えば電話回線でもよい。
【0029】
検知音発生部55は、受信した応答電波の電波強度に応じて変化する検知音を発生させる発音器である。
端末CPU56は、端末メモリ57に記憶されている各種プログラムを用いて各種処理を実行するものである。詳細には、端末メモリ57には、端末タッチパネル51の表示制御、検知音発生部55からの検知音の発生制御、並びにRFIDリーダ40、他の情報処理端末50、及びサーバ60との間の通信制御に関する端末用プログラムが記憶されている。端末CPU56は、端末用プログラムを読み出し実行することによって端末タッチパネル51の表示制御、検知音の発生制御、及び各種通信制御を行う。
【0030】
サーバ60は、情報処理端末50と通信を行うサーバ通信部61、サーバCPU62、及びサーバメモリ63を備えている。サーバCPU62は、サーバメモリ63に記憶されている各種プログラムを実行することにより、情報処理端末50との間における通信制御を行う。サーバメモリ63には、予め設定されたグループに属する全ての消防隊員について、各消防隊員が着用している作業用装備20を特定するための装備情報が記憶されている。装備情報は、作業用装備20を構成する各装備品と、その着用者とを一対一の関係で紐付けした情報である。
【0031】
以下では、捜索支援システム10の具体的な運用方法について説明する。
まず、準備段階として、予め設定されたグループに属する各消防隊員の装備情報をサーバ60のサーバメモリ63に記憶させる登録ステップを行う。ここでは、個々の消防隊員が毎日の始業時などに定期的に実施する装備点検を利用した登録ステップについて説明する。
【0032】
各消防隊員は、自身の作業用装備20が保管されている保管場所に向かって、RFIDリーダ40から探索電波を発信し、作業用装備20を構成する各装備品に取り付けられた各RFタグ30の各タグIDをRFIDリーダ40により一括して読み取る。
【0033】
RFIDリーダ40に読み取られた各タグIDは、情報処理端末50に送信されて、情報処理端末50の端末タッチパネル51に一覧表示される。消防隊員は、端末タッチパネル51に一覧表示されたタグIDを確認することによって、作業用装備20に過不足がないかを把握する。作業用装備20に過不足などの問題がない場合、消防隊員は、情報処理端末50を操作して、一覧表示されたタグIDを自身の作業用装備20とする装備情報を作成する。ここで作成される装備情報は、登録日(例えば、20200520)と、着用者の名称(例えば、消防隊員A)と、及び作業用装備20に取り付けられた全RFタグ30のタグIDとを紐付けた情報である。作成された装備情報は、情報処理端末50からサーバ60に送信されて、サーバ60のサーバメモリ63に記憶される。
【0034】
次に、実際に隊員の捜索を行う捜索ステップについて説明する。ここでは、火災現場において、連絡が取れなくなった消防隊員Aを捜索対象者とし、消防隊員Aと同じグループに所属する他の消防隊員Bが捜索者として捜索を行う状況を想定する。
【0035】
捜索者は、自身の情報処理端末50を操作して、サーバ60から捜索対象者である消防隊員Aの装備情報を取得する。取得された消防隊員Aの装備情報は、情報処理端末50の端末メモリ57に記憶される。
【0036】
図3(a)に示すように、消防隊員Aの装備情報を取得すると情報処理端末50の端末タッチパネル51には、消防隊員Aの装備情報を構成するタグIDからの応答電波の受信状況を一覧表示する第1捜索画面G1が表示される。なお、
図3(a)は、消防隊員Aの装備情報を構成するRFタグ30からの応答電波の受信していない状態を示している。
【0037】
次に、捜索者は、RFIDリーダ40を操作して周囲の各方向に探索電波を発信しながら消防隊員Aの捜索を行う。このとき、探索電波が到達する有効範囲内に消防隊員Aが存在すると、消防隊員Aが着用する作業用装備20に取り付けられたRFタグ30から応答電波が送信される。
【0038】
図3(b)に示すように、捜索者のRFIDリーダ40が消防隊員Aの作業用装備20に取り付けられたRFタグ30からの応答電波を受信すると、第1捜索画面G1には、受信した応答電波に対応するタグIDの一覧が、受信した応答電波の電波強度と共に表示される。本実施形態では、応答電波の電波強度は、電波強度に応じて増減する棒グラフとして表示される。捜索者は、受信した応答電波に対するタグIDが第1捜索画面G1に表示されたことを確認することにより、自身の近くに消防隊員Aがいることを把握できる。
【0039】
ここで、
図3(b)に示すように、消防隊員Aの作業用装備20に取り付けられたRFタグ30のうちの一部のRFタグ30のタグIDのみが表示され、その他のRFタグ30のタグIDが表示されない場合がある。この原因としては、タグIDが表示されないRFタグ30とRFIDリーダ40との間に電波的を遮断又は減衰させる障害物が存在し、その障害物によって探索電波又は応答電波が遮断又は減衰されていることが挙げられる。上記障害物は、例えば、土砂、瓦礫、煙、壁等の建築物である。
【0040】
図4に示すように、消防隊員Aの体の大部分が土砂等の障害物Sに覆われた状態である場合には、消防隊員Aの体における障害物Sから露出している部分に位置するRFタグ30のみがRFIDリーダ40との間で通信可能となる。そして、障害物Sから露出している部分に位置するRFタグ30の応答電波のみが受信され、それらのRFタグ30のタグIDが第1捜索画面G1に表示される。
【0041】
次に、近くにいる消防隊員Aの詳細な位置の特定を行う。第1捜索画面G1に表示されたタグIDの一つをタッチして指定すると、情報処理端末50の端末タッチパネル51の表示される画面が第1捜索画面G1から第2捜索画面G2に切り替わる。
【0042】
図5に示すように、第2捜索画面G2には、指定されたタグIDからの応答電波の受信状況のみが表示される。そして、第2捜索画面G2が表示されている状態においては、指定されたタグIDからの応答電波の電波強度に応じて変化する検知音が情報処理端末50から発生する。電波強度に応じた検知音の変化としては、例えば、音量の変化、音の間隔の変化が挙げられる。電波強度に応じた検知音の変化は、電波強度が強くなるにしたがって、音量が大きくなるとともに音の間隔か短くなるように変化するものであることが好ましい。
【0043】
捜索者は、探索電波を発信する方向を変化させ、第2捜索画面G2の表示及び検知音の変化に基づいて、応答電波の電波強度が最も強くなる方向を特定する。次に、捜索者は、応答電波の電波強度が最も強くなる方向に探索電波を発信しながら、同方向に向かって移動することにより、応答電波の電波強度が最も強くなる位置を特定する。そして、応答電波の電波強度が最も強くなる位置の近傍に捜索範囲を絞り込んだ集中的な捜索を行う。これにより、捜索対象者である消防隊員Aの位置を絞り込む作業を効率的に行うことができ、その結果、消防隊員Aをより早く発見することができる。
【0044】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態の捜索支援システム10では、消防隊員Aが着用する作業用装備20に予めRFタグ30が取り付けられている。そして、消防隊員Aが行方不明となった場合には、消防隊員Aの作業用装備20に取り付けられているRFタグ30と、捜索者が用いるRFIDリーダ40との間の近距離無線通信を利用することによって、消防隊員Aの位置を絞り込むことを可能にしている。
【0045】
特に、RFタグ30は、一式の作業用装備20の異なる複数の位置に取り付けられている。そのため、消防隊員Aの一部が障害物Sに覆われた状態であるなどして、捜索者のRFIDリーダ40と消防隊員Aとの間に障害物Sが存在していたとしても、消防隊員Aの作業用装備20に取り付けられたRFタグ30の少なくとも一つがRFIDリーダ40と通信可能な状態であれば、消防隊員Aの位置を絞り込むことができる。
【0046】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)捜索支援システム10は、作業時に一人の作業者が着用する作業用装備20に取り付けられ、探索電波の受信に基づいて応答電波を発信する複数のRFタグ30と、探索電波を発信するとともに、RFタグ30から受信した応答電波に含まれるタグID及び応答電波の電波強度を読み取るRFIDリーダ40と、RFIDリーダ40が読み取ったタグID及び受信した応答電波の電波強度を表示する表示部とを備えている。複数のRFタグ30は、作業用装備20の異なる複数の位置に取り付けられている。
【0047】
上記構成によれば、捜索対象者の作業用装備20に取り付けられたRFタグ30の少なくとも一つが、捜索者が有するRFIDリーダ40と通信可能な状態であれば、捜索対象者の位置を絞り込むことができる。したがって、捜索対象者が置かれている状況が周囲に障害物Sが多く存在する劣悪な状況である場合であっても、捜索対象者の位置を特定する作業を効率的に行うことができる。
【0048】
(2)複数のRFタグ30の一部は、上衣22の背面側の襟部分と前面側胴部のように、着用者の人体を挟んだ両側に位置するように装備品に取り付けられている。
人体に含まれる水分も、RFタグ30とRFIDリーダ40との間の電波を遮断又は減衰させる障害物Sになり得る。特に、胴体部分は、水分による影響が大きい。そのため、捜索対象者がうつ伏せで倒れているような状況においては、捜索対象者の前面側に取り付けられているRFタグ30は、捜索対象者の人体が障害物Sとなって、RFIDリーダ40との通信が不能になる場合がある。
【0049】
上記構成によれば、装備品に対して、人体を挟んだ両側に位置するようにRFタグ30が装備品に取り付けられているため、両方のRFタグ30が同時に着用者の人体に覆われるような状態になり難い。したがって、捜索対象者がどのような姿勢であったとしても、人体を挟んだ両側に位置する複数のRFタグ30のうちの少なくとも一方のRFタグ30については、RFIDリーダ40と通信可能な状態となる確率が高くなる。
【0050】
(3)複数のRFタグ30の一部は、上衣22の右袖と左袖、及びズボン25の右裾と左裾のように各装備品における手足の先端側の部分に取り付けられている。
手足の先端側の部分は、捜索対象者が土砂などに埋れた状態であっても露出しやすい部位であるとともに、人体において比較的、水分が少ない部分である。そのため、これらの部分に取り付けたRFタグ30については、土砂や人体に含まれる水分が障害物Sとなって、RFIDリーダ40との通信が不能になる状況が生じ難い。
【0051】
(4)作業用装備20は、複数の装備品から構成され、全ての装備品に1個以上のRFタグ30が取り付けられている。
上記構成によれば、各装備品に取り付けられているRFタグ30とRFIDリーダ40とを利用して、一式の作業用装備20が揃っているか否かの確認などの装備点検を簡単に行うことができる。
【0052】
(5)日常の業務である装備点検の際に、消防隊員ごとの装備情報をサーバ60のサーバメモリ63に記憶させる登録ステップを行っている。
上記構成によれば、登録ステップを装備点検という日常の業務に組み込むことにより、装備情報の登録の漏れを抑制できる。
【0053】
(6)RFタグ30は、受信した探索電波により電力を発生する電源回路33を備えている。
上記構成によれば、RFタグ30を動作させるための電池等の電源を設ける必要がない。そのため、メンテナンスが不十分であったり、災害現場での活動が長期化したりして、電池切れなどによりRFタグ30が正常に動作しなくなることを防止できる。
【0054】
(7)情報処理端末50は、特定のタグIDに対するRFタグ30からの応答電波の電波強度に応じて変化する検知音を発生させる。
上記構成によれば、捜索者は、情報処理端末50の端末タッチパネル51を目で確認することなく、電波強度の増減を把握できる。そのため、捜索者の視覚を目視による捜索作業に集中させることができる。
【0055】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・捜索支援システム10の捜索対象となる作業者は、消防隊員に限定されない。消防隊員以外の作業者としては、例えば、火災や自然災害、交通事故などに対応する特別救助隊の隊員や、土砂、瓦礫、煙等が発生する環境で作業を行う労働者が挙げられる。
【0056】
・作業用装備20を構成する装備品は、作業者に応じて適宜変更できる。
・一人の作業者が着用する一式の作業用装備20に対して2個以上のRFタグ30が取り付けられていれば、作業用装備20に対するRFタグ30の取付数及び取付位置は上記実施形態に限定されない。例えば、作業用装備20は、RFタグ30が取り付けられていない装備品を含むものであってもよい。
【0057】
・検知音発生部55を省略してもよい。
・上記実施形態では、予め特定された捜索対象者を捜索する場合について説明したが、不特定の捜索対象者を捜索する場合に捜索支援システム10を適用してもよい。例えば、捜索前に、サーバ60から作業中の作業者全員の装備情報を取得し、情報処理端末50の端末メモリ57に記憶させておく。そして、捜索者により、RFIDリーダ40を操作して周囲の各方向に探索電波を発信しながら捜索を行う作業が行われる。RFタグ30からの応答電波がRFIDリーダ40により受信されると、受信された応答電波のタグIDが情報処理端末50へと送られ、端末メモリ57に記憶されている装備情報と応答電波のタグIDとの照合が行われる。これにより、応答電波のタグIDがどの作業者に対応するものであるかを特定できる。作業者を特定した後の捜索処理は、実施形態と同様である。
【0058】
・捜索時において、RFIDリーダ40により受信したタグIDに関する情報を情報処理端末50からサーバ60へ送信し、サーバ60にて受信したタグIDに関する情報を一元管理する構成としてもよい。こうした構成は、捜索者が複数である場合に特に有効であり、捜索を指揮する本部や他のグループとの間において捜索状況をリアルタイムで共有することが可能となり、組織的な捜索の効率が向上する。
【0059】
・各作業者の情報処理端末50に、予め設定されたグループに属する全ての作業者の装備情報を予め記憶させておいてもよい。
・サーバ60を介して作業者の装備情報が取得されるように構成していたが、情報処理端末50間の通信により作業者の装備情報が取得される構成としてもよい。この場合、サーバ60を省略することもできる。
【0060】
・捜索支援システム10を構成するための情報処理端末50の各構成は、RFIDリーダ40に設けられていてもよい。この場合、情報処理端末50は省略される。
【符号の説明】
【0061】
10…捜索支援システム
20…作業用装備
30…RFタグ
40…RFIDリーダ
51…端末タッチパネル(表示部)