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特開2022-38288固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038288
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20220303BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20220303BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20220303BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G02B5/22
G02B3/00 A
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142710
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】明野 康剛
【テーマコード(参考)】
2H148
4M118
【Fターム(参考)】
2H148BD01
2H148BD05
2H148BD21
2H148BE32
2H148BG11
2H148BH02
2H148BH28
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA14
2H148CA17
2H148CA23
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA09
4M118CA01
4M118CA32
4M118EA14
4M118FA06
4M118GC08
4M118GC11
4M118GC20
4M118GD04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】赤外光カットフィルターが含む赤外光吸収色素の一部溶出に起因する機能低下を抑制可能とした固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法を提供する。
【解決手段】赤色、緑色、および青色の各カラーフィルター12R,12G,12Bの内、少なくとも1色のカラーフィルターと、赤外光パスフィルター12Pとを半導体基板上に形成する工程と、赤色、緑色、および青色の各カラーフィルター12R,12G,12Bの内、少なくとも1色のカラーフィルターと、赤外光パスフィルター12Pとを形成した半導体基板上に赤外光カット前駆層を形成する工程と、赤外光カット前駆層をドライエッチングすることによって、カラーフィルター12R,12G,12B上に赤外光カットフィルター14を形成する工程と、を含んでいる固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の各カラーフィルターの内、少なくとも1色のカラーフィルターと、赤外光パスフィルターとを半導体基板上に形成する工程と、
前記赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の各カラーフィルターの内、少なくとも1色のカラーフィルターと、赤外光パスフィルターとを形成した前記半導体基板上に赤外光カット前駆層を形成する工程と、
前記赤外光カット前駆層をドライエッチングすることによって、前記カラーフィルター上に赤外光カットフィルターを形成する工程と、を含む
固体撮像素子用フィルターの製造方法。
【請求項2】
前記赤外光カット前駆層を形成する工程では、前記赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の各カラーフィルターの内、少なくとも1色のカラーフィルターと、赤外光パスフィルターとを形成した前記半導体基板上に、前記カラーフィルター、および前記赤外光パスフィルターの各表面を覆うように、前記赤外光カット前駆層を形成し、
前記赤外光カットフィルターを形成する工程では、前記赤外光カット前駆層をドライエッチングすることによって、前記赤外光パスフィルターの表面を露出させつつ、前記カラーフィルターの表面を覆うように、前記赤外光カットフィルターを形成する
請求項1に記載の固体撮像素子用フィルターの製造方法。
【請求項3】
前記赤外光パスフィルターは、前記赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の各カラーフィルターよりも膜厚が厚く、且つ、前記赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の各カラーフィルターの内、最上面のカラーフィルターとの高低差が0.5μm以上1.0μm以下の範囲内であり、
前記赤外光カット前駆層のドライエッチング量は、1.0μm以下である
請求項1または請求項2に記載の固体撮像素子用フィルターの製造方法。
【請求項4】
前記赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の各カラーフィルターの内、最上面のカラーフィルターの厚さは、0.5μm以上1.0μm以下の範囲内であり、
前記赤外光カット前駆層の厚さは、0.5μm以上1.1μm以下の範囲内である
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の固体撮像素子用フィルターの製造方法。
【請求項5】
前記赤外光カット前駆層を形成する前に、前記赤外光パスフィルターの表面上と、前記赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の各カラーフィルターの表面上に、ポリシロキサンで形成されたエッチングストッパー層を形成する工程と、をさらに含む
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の固体撮像素子用フィルターの製造方法。
【請求項6】
前記赤外光カットフィルターの表面と、前記赤外光パスフィルターの表面とを覆う酸素遮断層を形成する工程と、
前記酸素遮断層上に複数のマイクロレンズを形成する工程と、をさらに含む
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の固体撮像素子用フィルターの製造方法。
【請求項7】
前記赤外光カットフィルターの表面と、前記赤外光パスフィルターの表面とを含む面上に、複数のマイクロレンズを形成する工程と、
前記複数のマイクロレンズの表面を覆う酸素遮断層を形成する工程と、をさらに含む
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の固体撮像素子用フィルターの製造方法。
【請求項8】
半導体基板を準備する工程と、
前記半導体基板上に、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の固体撮像素子用フィルターの製造方法で固体撮像素子用フィルターを形成する工程と、を含む
固体撮像素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSイメージセンサーやCCDイメージセンサーなどの固体撮像素子は、光の強度を電気信号に変換する光電変換素子を備える。固体撮像素子は、例えば、複数の色に対応する光を検出することが可能である。固体撮像素子には、各色用のカラーフィルターと各色用の光電変換素子とを備え、各色用の光電変換素子によって各色用の光を検出するものがある(例えば、特許文献1を参照)。固体撮像素子は、その他に、有機光電変換素子と無機光電変換素子とを備え、カラーフィルターを用いずに、各光電変換素子によって各色の光を検出するものがある(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
固体撮像素子には、光電変換素子上に赤外光カットフィルターを備えたものがある。このタイプの固体撮像素子では、赤外光カットフィルターが有する赤外光吸収色素が赤外光を吸収することによって、各光電変換素子が検出し得る赤外光を光電変換素子に対してカットする。これによって、各光電変換素子での可視光の検出精度が高められる。赤外光カットフィルターは、例えば、赤外光吸収色素であるシアニン色素を含んだものがある(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-060176号公報
【特許文献2】特開2018-060910号公報
【特許文献3】特開2007-219114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、固体撮像素子における画素サイズの微細化に伴い、赤外光カットフィルターの微細化が求められている。赤外光カットフィルターの微細化は、赤外光カットフィルター上に形成されたレジストパターンを用いたドライエッチングにより実現される。ドライエッチングを用いた赤外光カットフィルターのパターニングでは、まず、赤外光カットフィルター上にレジストパターンを形成する。次いで、レジストパターンを用いて赤外光カットフィルターをエッチングし、その後に、レジストパターンを赤外光カットフィルターから剥離する。赤外光カットフィルターからレジストパターンを剥離するために用いられる剥離液は、赤外光カットフィルターに接触することによって、赤外光カットフィルターが含む赤外光吸収色素の一部を赤外光カットフィルターの外部に溶出させることがある。これにより、固体撮像素子の機能が低下する場合がある。
【0006】
本発明は、赤外光カットフィルターが含む赤外光吸収色素の一部溶出に起因する機能低下を抑制可能とした固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための固体撮像素子用フィルターの製造方法の一態様は、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の各カラーフィルターの内、少なくとも1色のカラーフィルターと、赤外光パスフィルターとを半導体基板上に形成する工程と、前記赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の各カラーフィルターの内、少なくとも1色のカラーフィルターと、赤外光パスフィルターとを形成した前記半導体基板上に赤外光カット前駆層を形成する工程と、前記赤外光カット前駆層をドライエッチングすることによって、前記カラーフィルター上に赤外光カットフィルターを形成する工程と、を含む。
【0008】
また、前記赤外光カット前駆層を形成する工程では、前記赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の各カラーフィルターの内、少なくとも1色のカラーフィルターと、赤外光パスフィルターとを形成した前記半導体基板上に、前記カラーフィルター、および前記赤外光パスフィルターの各表面を覆うように、前記赤外光カット前駆層を形成し、前記赤外光カットフィルターを形成する工程では、前記赤外光カット前駆層をドライエッチングすることによって、前記赤外光パスフィルターの表面を露出させつつ、前記カラーフィルターの表面を覆うように、前記赤外光カットフィルターを形成してもよい。
【0009】
また、前記赤外光パスフィルターは、前記赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の各カラーフィルターよりも膜厚が厚く、且つ、前記赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の各カラーフィルターの内、最上面のカラーフィルターとの高低差が0.5μm以上1.0μm以下の範囲内であり、前記赤外光カット前駆層のドライエッチング量は、1.0μm以下であってもよい。
【0010】
また、前記赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の各カラーフィルターの内、最上面のカラーフィルターの厚さは、0.5μm以上1.0μm以下の範囲内であり、前記赤外光カット前駆層の厚さは、0.5μm以上1.1μm以下の範囲内であってもよい。
【0011】
また、前記赤外光カット前駆層を形成する前に、前記赤外光パスフィルターの表面上と、前記赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の各カラーフィルターの表面上に、ポリシロキサンで形成されたエッチングストッパー層を形成する工程と、をさらに含んでもよい。
【0012】
また、前記赤外光カットフィルターの表面と、前記赤外光パスフィルターの表面とを覆う酸素遮断層を形成する工程と、前記酸素遮断層上に複数のマイクロレンズを形成する工程と、をさらに含んでもよい。
【0013】
また、前記赤外光カットフィルターの表面と、前記赤外光パスフィルターの表面とを含む面上に、複数のマイクロレンズを形成する工程と、前記複数のマイクロレンズの表面を覆う酸素遮断層を形成する工程と、をさらに含んでもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するための固体撮像素子の製造方法の一態様は、半導体基板を準備する工程と、前記半導体基板上に、上述の固体撮像素子用フィルターの製造方法で固体撮像素子用フィルターを形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、赤外光カットフィルターが含む赤外光吸収色素の一部溶出に起因する固体撮像素子の機能低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る固体撮像素子の構造を示す分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図である。
図3】本発明の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図である。
図4】本発明の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図である。
図5】本発明の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図である。
図6】本発明の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図である。
図7】本発明の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図である。
図8】本発明の実施形態の変形例に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図である。
図9】本発明の実施形態の変形例に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図である。
図10】本発明の実施形態の変形例に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から図10を参照して、本発明に係る固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法について、その実施形態を説明する。以下では、固体撮像素子の構造、および、固体撮像素子の製造方法を順に説明する。なお、本実施形態において、赤外光は、0.7μm以上1mm以下の範囲に含まれる波長を有した光であり、近赤外光は、赤外光のなかで特に700nm以上1100nm以下の範囲に含まれる波長を有した光である。
【0018】
[固体撮像素子]
図1を参照して、本実施形態に係る固体撮像素子の構造について説明する。図1は、固体撮像素子の一部における各層を分離して示す概略構成図(分解斜視図)である。
【0019】
図1が示すように、固体撮像素子10は、固体撮像素子用フィルター10F、および、複数の光電変換素子11を備える。
複数の光電変換素子11は、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、青色用光電変換素子11B、および、赤外光用光電変換素子11Pを備える。
【0020】
固体撮像素子10は、複数の赤色用光電変換素子11R、複数の緑色用光電変換素子11G、複数の青色用光電変換素子11B、および、複数の赤外光用光電変換素子11Pを備える。複数の赤外光用光電変換素子11Pは、赤外光の強度を測定する。なお、図1では、図示の便宜上、固体撮像素子10における光電変換素子11の繰り返し単位が示されている。
【0021】
固体撮像素子用フィルター10Fは、複数の可視光用フィルター、赤外光パスフィルター12P、エッチングストッパー層13、赤外光カットフィルター14、酸素遮断層15、複数の可視光用マイクロレンズ、および、赤外光用マイクロレンズ16Pを備える。
【0022】
可視光用カラーフィルターは、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bから構成される。赤色用フィルター12Rは、赤色用光電変換素子11Rに対して光の入射側に位置する。緑色用フィルター12Gは、緑色用光電変換素子11Gに対して光の入射側に位置する。青色用フィルター12Bは、青色用光電変換素子11Bに対して光の入射側に位置する。
【0023】
赤外光パスフィルター12Pは、赤外光用光電変換素子11Pに対して光の入射側に位置する。赤外光パスフィルター12Pは、赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る可視光を赤外光用光電変換素子11Pに対してカットする。これによって、赤外光用光電変換素子11Pによる赤外光の検出精度が高められる。赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る赤外光は、例えば近赤外光である。
【0024】
エッチングストッパー層13は、各色用フィルター(カラーフィルター)12R,12G,12B、および、赤外光パスフィルター12Pに対して光の入射側に位置する。より詳しくは、エッチングストッパー層13が広がる平面と対向する視点から見て、エッチングストッパー層13は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、青色用フィルター12B、および、赤外光パスフィルター12P上に位置する。
【0025】
赤外光カットフィルター14は、エッチングストッパー層13に対して光の入射側に位置する。赤外光カットフィルター14は、貫通孔14Hを備える。赤外光カットフィルター14が広がる平面と対向する視点から見て、貫通孔14Hが区画する領域内には、赤外光パスフィルター12Pが位置する。一方で、赤外光カットフィルター14が広がる平面と対向する視点から見て、赤外光カットフィルター14は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、青色用フィルター12B、および、エッチングストッパー層13上に位置する。
【0026】
酸素遮断層15は、赤外光カットフィルター14に対して光の入射側に位置する。酸素遮断層15は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、青色用フィルター12B、および、赤外光パスフィルター12Pに共通する層である。酸素遮断層15は、赤外光カットフィルター14に向けた酸化源の透過を抑える。酸化源は、例えば酸素および水などである。
【0027】
酸素遮断層15が有する酸素透過率は、例えば、5.0cc/m/day/atom以下であることが好ましい。この酸素透過率は、JIS K7126:2006に準拠した方法で測定された値である。酸素遮断層15が有する酸素透過率が5.0cc/m/day/atom以下であれば、酸素遮断層15によって赤外光カットフィルター14に酸化源が到達することが抑制される。そのため、赤外光カットフィルター14が酸化源によって酸化されにくくなる。これにより、赤外光カットフィルター14の耐光性を向上することが可能である。
【0028】
マイクロレンズは、赤色用マイクロレンズ16R、緑色用マイクロレンズ16G、青色用マイクロレンズ16B、および、赤外光用マイクロレンズ16Pから構成される。赤色用マイクロレンズ16Rは、赤色用フィルター12Rに対して光の入射側に位置する。緑色用マイクロレンズ16Gは、緑色用フィルター12Gに対して光の入射側に位置する。青色用マイクロレンズ16Bは、青色用フィルター12Bに対して光の入射側に位置する。赤外光用マイクロレンズ16Pは、赤外光パスフィルター12Pに対して光の入射側に位置する。
【0029】
各マイクロレンズ16R,16G,16B,16Pは、外表面である入射面16Sを備える。各マイクロレンズ16R,16G,16B,16Pは、入射面16Sに入る光を各光電変換素子11R,11G,11B,11Pに向けて集めるための屈折率差を外気との間において有する。各マイクロレンズ16R,16G,16B,16Pは、透明樹脂を含んで構成されていてもよい。
【0030】
各色用フィルター12R,12G,12Bの各厚さ(層厚)は、赤外光パスフィルター12Pの厚さ(層厚)よりも薄い。つまり、各色用フィルター12R,12G,12Bの高さは、赤外光パスフィルター12Pの高さよりも低い。エッチングストッパー層13の厚さと赤外光カットフィルター14の厚さとの合計は、各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さと、赤外光パスフィルター12Pの厚さとの差に相当する。上述のように、赤外光パスフィルター12Pの厚さは、各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さよりも大きい(厚い)。一方で、赤外光パスフィルター12Pと、各色用フィルター12R,12G,12Bとの間での段差TP(図2参照)は、エッチングストッパー層13、および赤外光カットフィルター14によって埋められる。そのため、各色用マイクロレンズ16R,16G,16B、および、赤外光用マイクロレンズ16Pの下層における平坦性が得られやすい。段差TPは、0.5μm以上1.0μm以下の範囲内であることが望ましい。段差TPが1.0μmを超えると、赤外光用マイクロレンズ16Pの下層における平坦性が得られず、ウエハ面内で各色用マイクロレンズ16R,16G,16Bの高さが不均一となり、固体撮像素子10の機能低下を引き起こす可能性が高まる。段差TPが0.5μm未満であると、赤外光カットフィルター14の性能が十分に発揮出来なくなる。
【0031】
[固体撮像素子の製造方法]
図2から図10を参照して、固体撮像素子用フィルターを含む固体撮像素子の製造方法を説明する。
【0032】
本実施形態に係る固体撮像素子用フィルターの製造方法は、カラーフィルターおよび赤外光パスフィルターを形成する工程、エッチングストッパー層を形成する工程、赤外光カット前駆層を形成する工程、および、赤外光カットフィルターを形成する工程を、少なくとも含む。カラーフィルターおよび赤外光パスフィルターを形成する工程では、半導体基板上にカラーフィルターおよび赤外光パスフィルターを形成する。エッチングストッパー層を形成する工程では、カラーフィルターおよび赤外光パスフィルターを形成した半導体基板にエッチングストッパー層を形成する。赤外光カット前駆層を形成する工程では、エッチングストッパー層上に、エッチングストッパー層とはドライエッチングにおけるエッチングレートが異なる赤外光カット前駆層を形成する。赤外光カットフィルターを形成する工程では、赤外光カット前駆層をドライエッチングして、赤外光カットフィルターを形成する。
【0033】
以下、図面を参照して、本実施形態に係る固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法をより詳しく説明する。図2から図10は、固体撮像素子を構成する層が積層される方向に沿って固体撮像素子を切断したときの断面を模式的に示している。
【0034】
図2が示すように、本実施形態に係る固体撮像素子用フィルターの製造方法では、まず、半導体基板21を準備する。半導体基板21には、一つの画素に一つの光電変換素子11が対応するように、複数の光電変換素子11が二次元的に配置されている。なお、図2から図10では、2つの青色用光電変換素子11Bと、3つの赤外光用光電変換素子11Pが図示されている。半導体基板21を形成する材料は、例えば、Si、および、SiOなどの酸化物、SiNなどの窒化物、並びに、これらの混合物などであってよい。
【0035】
図2が示すように、半導体基板21のうちで、半導体基板21が有する青色用光電変換素子11Bに対応する位置に青色用フィルター12Bを形成し、赤外光用光電変換素子11Pに対応する位置に、赤外光パスフィルター12Pを形成する。このとき、赤外光パスフィルター12Pの厚さが青色用フィルター12Bの厚さよりも厚くなるように形成する。こうして形成された、赤外光パスフィルター12Pの表面と青色用フィルター12Bの表面との間の段差を、図2では、「段差TP」として表記している。
【0036】
なお、図2では、赤色用光電変換素子11R、および赤色用光電変換素子11Rに対応する位置に赤色用フィルター12R、並びに、緑色用光電変換素子11G、および緑色用光電変換素子11Gに対応する位置に緑色用フィルター12Gの各記載を省略している。
【0037】
青色用フィルター12Bは、例えば、青色用感光性樹脂を含む塗膜の形成、および、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニングによって形成される。青色用感光性樹脂を含む塗膜は、例えば、青色用感光性樹脂を含む塗布液の塗布、および、塗膜の乾燥によって形成される。青色用フィルター12Bは、例えば、青色用感光性樹脂を含む塗膜に対し、青色用フィルター12Bの領域に相当する露光、および、現像を経て形成される。
【0038】
赤外光パスフィルター12Pは、例えば、着色感光性樹脂を含む塗膜の形成、および、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニングによって形成される。着色感光性樹脂を含む塗膜は、例えば、赤外光用感光性樹脂を含む塗布液の塗布、および、塗膜の乾燥によって形成される。
【0039】
なお、半導体基板21上には、緑色用フィルター12G、および、赤色用フィルター12Rが、青色用フィルター12Bと同様の方法によって形成される。
青色用フィルター12B、緑色用フィルター12G、および、赤色用フィルター12Rの各膜厚は所望の分光を確保するため、0.5μm以上1.0μm以下の範囲内で形成することが好ましい。
【0040】
赤外光用感光性樹脂は、黒色色素または黒色染料と、感光性樹脂とを含む。黒色色素は、単一で黒色を有する色素、あるいは、2種以上の色素によって黒色を有する混合物である。黒色染料は、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、アジン系染料、キノリン系染料、ペリノン系染料、ペリレン系染料、および、メチン系染料などであってよい。感光性樹脂である透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、および、ノルボルネン系樹脂であってよい。
【0041】
赤外光パスフィルター12Pを形成する材料は、屈折率を調整するための無機酸化物の粒子を含有可能である。無機酸化物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化チタンである。赤外光パスフィルター12Pは、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤などの他の機能を兼ね備えるための添加物を含有可能である。
【0042】
なお、青色用フィルター12Bを含む各色用フィルターを、赤外光パスフィルター12Pよりも先に形成してもよいし、赤外光パスフィルター12Pを各色用フィルターよりも先に形成してもよい。赤外光パスフィルター12Pの厚さは各色用フィルターの厚さよりも厚くなるように形成するため、製造上の観点から各色用フィルターを赤外光パスフィルター12Pよりも先に形成する方が好ましい。
【0043】
本実施形態において、緑色用フィルター12G、赤色用フィルター12R、および、青色用フィルター12Bの各膜厚(各高さ)は、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。ここで、緑色用フィルター12G、赤色用フィルター12R、および、青色用フィルター12Bの各膜厚(各高さ)が互いに異なっている場合には、最も膜厚が厚い(最も高い)フィルターを「最上面のカラーフィルター」と定義する。また、緑色用フィルター12G、赤色用フィルター12R、および、青色用フィルター12Bの各膜厚(各高さ)が互いに同じである場合には、各色用フィルターをそれぞれ「最上面のカラーフィルター」と定義する。
本実施形態では、以下、図2に示す青色用フィルター12Bを「最上面のカラーフィルター」として説明する。
【0044】
図3が示すように、青色用フィルター12B、および、赤外光パスフィルター12Pを形成した半導体基板21にエッチングストッパー層13を形成する。エッチングストッパー層13を形成する際には、まず、ケイ素を含む樹脂を用いて塗布液を作成する。ケイ素を含む樹脂は、例えば、ポリシロキサンなどであってよい。ポリシロキサンは、シロキサン結合の繰り返し構造から形成される。ポリシロキサンは、シリコーンであってよい。シリコーンは、ポリシロキサンであり、かつ、アルキル基およびアリール基などの有機基を含む。
【0045】
次に、上述した塗布液を、青色用フィルター12B、および、赤外光パスフィルター12Pを形成した半導体基板21上に塗布し、塗膜を乾燥させる。そして、乾燥した塗膜を加熱によって硬化させる。これにより、各色用フィルター12R,12G,12B上、および、赤外光パスフィルター12P上にエッチングストッパー層13が形成される。
【0046】
次に、図4が示すように、エッチングストッパー層13上に、赤外光カット前駆層24を形成する。赤外光カット前駆層24を形成する際には、まず、赤外光吸収色素、透明樹脂、および、有機溶剤を含む塗布液をエッチングストッパー層13上に塗布し、塗膜を乾燥させる。次いで、乾燥した塗膜を加熱によって硬化させる。これにより、エッチングストッパー層13上に赤外光カット前駆層24が形成される。
【0047】
赤外光カット前駆層24を形成するための赤外光吸収色素は、例えば、アントラキノン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ジチオール系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素、および、クロコニウム系色素などから選択される少なくとも1種であってよい。赤外光吸収色素は、これら色素のうち、シアニン系色素およびフタロシアニン系色素の少なくとも1種であることが好ましい。
【0048】
赤外光カット前駆層24を形成するための透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、および、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂から選択される少なくとも1種であってよい。透明樹脂は、これら樹脂のうち、アクリル系樹脂であることが好ましい。アクリル樹脂を使用することで、赤外光パスフィルター12Pと、各色用フィルター12R,12G,12Bとの間での段差TPの影響を受けることなく、平坦化された均一な赤外光カット前駆層24を形成することができる。
【0049】
次に、図5が示すように、赤外光カット前駆層24を有した半導体基板21のエッチング面全面にわたりドライエッチングすることによって、赤外光カットフィルター14を形成する。上述した工程で形成したエッチングストッパー層13は、このドライエッチングにおけるエッチングストッパーとして機能する。赤外光カットフィルター14の膜厚は、赤外光カットフィルター14の赤外光カット機能を発揮するには、0.5μm以上1.0μm以下の範囲内であることが好ましく、0.8μm以上1.0μm以下の範囲内であることがより好ましい。赤外光カットフィルター14の膜厚が0.5μm未満であると、赤外光カットフィルター機能を十分に発揮することが出来ない。赤外光カットフィルター14の膜厚が1.0μmを超えると(例えば、赤外光カットフィルター14の膜厚が1.01μmであると)、赤外光用マイクロレンズ16Pの下層における平坦性が得られず、ウエハ面内で各色用マイクロレンズ16R,16G,16Bの高さが不均一となり、固体撮像素子10の機能低下を引き起こす可能性が高まる。
【0050】
赤外光カット前駆層24のドライエッチングは、例えば、プラズマエッチングであってよい。このドライエッチングでは、エッチングガスとして、反応性ガスと希ガスとを用いることが可能である。反応性ガスは、例えば、酸素ガスであってよい。また、希ガスは、例えば、アルゴンガスであってよい。赤外光カット前駆層24のドライエッチングでは、赤外光カット前駆層24にバイアスを印加することが可能である。
【0051】
ここで、赤外光カット前駆層24のドライエッチング量ET(図4を参照)は、赤外光カット前駆層24の厚さ(例えば、0.5μm以上1.1μm以下の範囲内)から、赤外光パスフィルター12Pと、各色用フィルター12R,12G,12Bとの間での段差TPを差し引いた厚さに相当する。赤外光カット前駆層24のドライエッチング量ETの上限は、1.0μmである。赤外光カット前駆層24のドライエッチング量ETがこれ以上多くなるとエッチングによりエッチング表面に変質層が形成され、エッチング表面の凹凸が大きくなることがある。その結果、ウエハ面内の平坦性が確保できなくなることがある。
【0052】
エッチングストッパー層13のエッチングレートは、赤外光カット前駆層24のエッチングレートとは異なる。エッチングレートは、単位時間当たりにエッチングされる各層の厚さである。エッチングストッパー層13のエッチングレートは、赤外光カット前駆層24のエッチングレートよりも低いことが好ましい。これにより、エッチングストッパー層13のエッチングレートが赤外光カット前駆層24のエッチングレートよりも高い場合に比べて、エッチングストッパー層13の下層に対してエッチャントが衝突しにくくなるため、エッチングの時間を調整することが容易となる。
【0053】
次に、図6が示すように、半導体基板21が広がる平面と対向する視点から見て、赤外光カットフィルター14の表面と、赤外光パスフィルター12Pの表面とを覆う酸素遮断層15を形成する。酸素遮断層15は、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法などの気相成膜法、あるいは、塗布法などの液相成膜法を用いた成膜によって形成される。酸化珪素から形成される酸素遮断層15は、例えば、酸化珪素からなるターゲットを用いたスパッタリング法による成膜を経て形成されてもよい。また、酸化珪素から形成される酸素遮断層15は、例えば、シランと酸素とを用いたCVD法による成膜を経て形成されてもよい。また、酸化珪素から構成される酸素遮断層15は、例えば、ポリシラザンを含む塗布液の塗布、改質、および、塗膜の乾燥によって形成されてもよい。
【0054】
次に、図7が示すように、酸素遮断層15上に複数のマイクロレンズ16を形成する。これにより、本実施形態に係る固体撮像素子10を得ることができる。複数のマイクロレンズ16は、酸素遮断層15が広がる平面と対向する視点から見て、各カラーフィルター12R,12G,12B、および、赤外光パスフィルター12Pと重なる位置に形成される。各マイクロレンズ16は、例えば、エッチバック法を用いて形成される。エッチバック法では、まず、各マイクロレンズ16を形成するための透明樹脂層を酸素遮断層15上に形成する。次いで、透明樹脂層上に複数の半球が並ぶ形状(レンズ形状)を有したレジストパターンを形成する。そして、そのレジストパターンを備えた透明樹脂層のドライエッチングによって、レジストパターンが有する形状(レンズ形状)を透明樹脂層に転写することによって、複数のマイクロレンズ16を形成する。
【0055】
これにより、図1を参照して先に説明した固体撮像素子10を、1つの半導体基板21に対して複数形成することが可能である。
以上説明したように、実施形態の固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法、および、固体撮像素子10の製造方法によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
【0056】
(1)本実施形態に係る固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および青色用フィルター12Bの内、少なくとも1色のカラーフィルター(例えば、青色用フィルター12B)と、赤外光パスフィルター12Pとを半導体基板21上に形成する工程と、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および青色用フィルター12Bの内、少なくとも1色のカラーフィルター(例えば、青色用フィルター12B)と、赤外光パスフィルター12Pとを形成した半導体基板21上に赤外光カット前駆層24を形成する工程と、赤外光カット前駆層24をドライエッチングすることによって、赤外光カットフィルター14を形成する工程と、を含んでいる。
【0057】
(2)また、本実施形態に係る固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法における赤外光カット前駆層24を形成する工程では、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および青色用フィルター12Bの内、少なくとも1色のカラーフィルター(例えば、青色用フィルター12B)と、赤外光パスフィルター12Pとを形成した半導体基板21上に、カラーフィルター(例えば、青色用フィルター12B)、および赤外光パスフィルター12Pの各表面を覆うように、赤外光カット前駆層24を形成し、赤外光カットフィルター14を形成する工程では、赤外光カット前駆層24をドライエッチングすることによって、赤外光パスフィルター12Pの表面を露出させつつ、カラーフィルター(例えば、青色用フィルター12B)の表面を覆うように、赤外光カットフィルター14を形成してもよい。
【0058】
このような構成であれば、赤外光カット前駆層24を全面エッチング(ドライエッチング)することによって、レジストパターンを形成せずに赤外光カットフィルター14の形成が可能となる。つまり、本実施形態に係る固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法は、レジストパターンを形成しない製造方法であるため、赤外光カットフィルター14の分光特性が劣化してしまう要因であるレジストパターンの剥離液を使用しない。その結果、赤外光カットフィルター14が含む赤外光吸収色素の一部溶出に起因する固体撮像素子10の機能低下が抑えられる。
【0059】
また、このような構成であれば、赤外光カットフィルター14の形成が画素サイズに依存しないため、その形成が容易になる。つまり、上述した構成であれば、種々の画素サイズの赤外光カットフィルター14を容易に形成することができる。
なお、従来技術に係る固体撮像素子用フィルターの製造方法は、例えばフォトリソグラフィー法を用いて画素ごとにレジストパターン(マスクパターン)を作製する必要があった。その場合には、レジストパターン(マスクパターン)のサイズには作製限界があるため、種々の画素サイズに対して赤外光カットフィルターを形成することは困難であった。
【0060】
(3)また、本実施形態に係る固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法は、赤外光カットフィルター14の表面と、赤外光パスフィルター12Pの表面とを覆う酸素遮断層15を形成する工程と、酸素遮断層15上に複数のマイクロレンズ16を形成する工程と、をさらに含んでもよい。
このような構成であれば、酸素遮断層15によって赤外光パスフィルター12Pに酸化源が到達することが抑えられるため、赤外光パスフィルター12Pが酸化されにくくなる。
【0061】
(4)また、本実施形態に係る固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法において、赤外光パスフィルター12Pは、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および青色用フィルター12Bの各カラーフィルターよりも膜厚が厚く、且つ、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および青色用フィルター12Bの内、最上面のカラーフィルター(例えば、青色用フィルター12B)との高低差が0.5μm以上1.0μm以下の範囲内であり、赤外光カットフィルター14を形成する工程における赤外光カット前駆層24のドライエッチング量は、1.0μm以下であってもよい。
【0062】
このような構成であれば、赤外光カットフィルター14に所望の赤外光カット性能を確実に付与することができ、且つ赤外光用マイクロレンズ16Pの下層における平坦性が得られ、ウエハ面内で各色用マイクロレンズ16R,16G,16Bの高さが均一となり、固体撮像素子10の機能低下を抑制することができる。
また、このような構成であれば、エッチングによりエッチング表面に変質層が形成され、エッチング表面の凹凸が大きくなることを抑制することができる。
【0063】
(5)また、本実施形態に係る固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法において、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および青色用フィルター12Bの内、最上面のカラーフィルター(例えば、青色用フィルター12B)の厚さは、0.5μm以上1.0μm以下の範囲内であり、赤外光カット前駆層24の厚さは、0.5μm以上1.1μm以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、カラーフィルター12R,12G,12Bに所望の分光性能を確実に付与することができ、且つ赤外光カットフィルター14に所望の赤外光カット性能を確実に付与することができる。
【0064】
(6)また、本実施形態に係る固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法は、赤外光カット前駆層24を形成する前に、赤外光パスフィルター12Pの表面上と、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および青色用フィルター12Bの各カラーフィルターの表面上に、ポリシロキサンで形成されたエッチングストッパー層13を形成する工程と、をさらに含んでもよい。
【0065】
このような構成であれば、赤外光カット前駆層24のオーバーエッチングによって赤外光カット前駆層24の一部を取り除くとしても、赤外光カット前駆層24の下層にはエッチングストッパー層13が位置するため、エッチングストッパー層13の下層に対するエッチャントの衝突が抑えられる。これによって、エッチング対象である赤外光カット前駆層24の下層における表面性状が変化することに起因する固体撮像素子10の機能の低下が抑えられる。
【0066】
(7)また、本実施形態に係る固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法は、赤外光カットフィルター14の表面と、赤外光パスフィルター12Pの表面とを覆う酸素遮断層15を形成する工程と、酸素遮断層15上に複数のマイクロレンズ16を形成する工程と、をさらに含んでもよい。
【0067】
このような構成であれば、酸素遮断層15によって、赤外光カットフィルター14、および赤外光パスフィルター12Pに酸化源が到達することが抑えられるため、赤外光カットフィルター14および赤外光パスフィルター12Pが酸化されにくくなる。
【0068】
(8)また、本実施形態に係る固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および青色用フィルター12Bの各カラーフィルターと、複数の赤外光パスフィルター12Pとを半導体基板21上に形成する工程と、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および青色用フィルター12Bの各カラーフィルターと、複数の赤外光パスフィルター12Pとを形成した半導体基板21上に赤外光カット前駆層24を形成する工程と、赤外光カット前駆層24をドライエッチングすることによって、赤外光カットフィルター14を形成する工程と、を含んでいてもよい。
【0069】
(9)また、本実施形態に係る固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法における赤外光カット前駆層24を形成する工程では、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および青色用フィルター12Bの各カラーフィルターと、複数の赤外光パスフィルター12Pとを形成した半導体基板21上に、各カラーフィルター12R,12G,12B、および赤外光パスフィルター12Pの各表面を全て覆うように、赤外光カット前駆層24を形成し、赤外光カットフィルター14を形成する工程では、赤外光カット前駆層24をドライエッチングすることによって、複数の赤外光パスフィルター12Pの表面を露出させつつ、各カラーフィルター12R,12G,12Bの各表面を全て覆うように、赤外光カットフィルター14を形成してもよい。
【0070】
このような構成であれば、赤外光パスフィルター12P同士の間に赤外光カット前駆層24を充填し、その後ドライエッチングするため、レジストパターンを形成する必要がない。そのため、赤外光カットフィルター14の分光特性が劣化してしまう要因であるレジストパターンの剥離液を使用しない。その結果、赤外光カットフィルター14が含む赤外光吸収色素の一部溶出に起因する固体撮像素子10の機能低下が確実に抑えられる。
【0071】
[実施形態の変形例]
なお、上述した実施形態は、以下のように変形して実施することができる。
[酸素遮断層]
上述した実施形態では、酸素遮断層15を、赤外光カットフィルター14、および、赤外光パスフィルター12Pと、各マイクロレンズ16との間に形成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。酸素遮断層15の形成位置は、赤外光カットフィルター14、および、赤外光パスフィルター12Pと、各マイクロレンズ16との間に限らず、各マイクロレンズ16の外表面(入射面16S)上であってもよい。
【0072】
本変形例に係る固体撮像素子10を形成する場合には、図8に示すように、まず、赤外光カットフィルター14の表面と、赤外光パスフィルター12Pの表面とを含む面上に、複数のマイクロレンズ26を形成する。次に、各マイクロレンズ26を、各色用フィルター12R,12G,12B、および、赤外光パスフィルター12Pのうち、少なくとも1つを覆うように形成する。
【0073】
次に、図9が示すように、複数のマイクロレンズ26の表面を覆うように、酸素遮断層25を形成する。酸素遮断層25は、反射防止層としての機能を有していてもよい。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法は、赤外光カットフィルター14の表面と、赤外光パスフィルター12Pの表面とを含む面上に、複数のマイクロレンズ26を形成する工程と、複数のマイクロレンズ26の表面を覆う酸素遮断層25を形成する工程と、をさらに含んでもよい。
このような構成であれば、酸素遮断層25によって、マイクロレンズ26に酸化源が到達することが抑えられるため、マイクロレンズ26が酸化されにくくなる。
【0075】
また、上述した実施形態では、酸素遮断層15を形成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。固体撮像素子用フィルター10Fは、酸素遮断層15を備えていなくてもよい。この場合であっても、半導体基板21の表面を覆うエッチングストッパー層13上に赤外光カット前駆層24を形成することによって、酸素遮断層15を形成した形態で得られる効果に準じた効果を得ることは可能である。
【0076】
また、酸素遮断層25の層構造は、単一の化合物からなる単層構造でもよいし、単一の化合物からなる層の積層構造であってもよいし、互いに異なる化合物からなる層の積層構造でもよい。
【0077】
また、赤外光カットフィルター14の表面と、赤外光パスフィルター12Pの表面とは、半導体基板21の厚さ方向において、段差を有してもよい。具体的には、赤外光カットフィルター14の表面と、赤外光パスフィルター12Pの表面とは、半導体基板21の厚さ方向において、5μm以下の段差、より好ましくは3μm以下の段差、さらに好ましくは1μm以下の段差を有してもよい。この場合には、例えば、SiOで形成された酸素遮断層15は、赤外光カットフィルター14の表面と赤外光パスフィルター12Pの表面とが形成する段差を埋める平坦化層として機能し得る。なお、酸素遮断層15は、赤外光カットフィルター14の表面と赤外光パスフィルター12Pの表面との間の段差を埋めることが可能な厚さを有することによって、平坦化層として機能することが可能である。
【0078】
[エッチングストッパー層]
エッチングストッパー層13のうちで、半導体基板21の表面上に形成された部分は、完全に除去されなくてもよい。この場合であっても、エッチングストッパー層13が透明樹脂から形成されることによって、固体撮像素子10に入射した光はエッチングストッパー層13を介して光電変換素子11に入射することが可能である。
【0079】
また、上述した実施形態では、エッチングストッパー層13を形成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図10が示すように固体撮像素子用フィルター10Fは、エッチングストッパー層13を備えていなくてもよい。この場合には、エッチングストッパー層13を形成した形態で得られる効果は得られにくいが、この場合であっても赤外光パスフィルター12Pの表面が現われるまでのエッチング時間を調整することで赤外光カットフィルター14の形成は可能である。
【0080】
[実施例]
以下、実施形態に対応する固体撮像素子の製造例を説明する。なお、以下に説明する製造例では、赤外光パスフィルターの厚さが各色用フィルターの厚さよりも厚く、且つエッチングストッパー層を設けない場合における固体撮像素子の製造例を説明する。
【0081】
複数の光電変換素子が二次元的に配置された半導体基板上に、緑色顔料、感光性硬化樹脂、および、熱硬化性樹脂を含む緑色用レジストを1000rpmの回転数でスピンコートした緑色用レジスト層を形成した。緑色顔料には、カラーインデックスにおけるC.I.PG58を用いた。緑色用レジストにおいて、緑色顔料の濃度を70質量%に設定した。次に、緑色用マスクを用いて緑色用レジスト層を選択的に露光した後に、露光後の緑色用レジスト層を現像することによって、緑色用フィルターパターンを形成した。そして、緑色用フィルターパターンを、ホットプレートを用いて230℃において6分間加熱することによって硬化させた。これにより、600nmの厚さを有した緑色用フィルターを形成した。
【0082】
次に、緑色用フィルター、および、半導体基板のうちで緑色用フィルターによって覆われていない部分に、顔料、感光性硬化樹脂、および、熱硬化性樹脂を含む青色用レジストを1000rpmの回転数でスピンコートした青色用レジスト層を形成した。顔料には、カラーインデックスにおけるC.I.PB156、および、C.I.PV23を用いた。青色用レジストにおいて、青色顔料の濃度を50質量%に設定した。次に、青色用マスクを用いたフォトリソグラフィーにより青色用レジスト層を選択的に露光した後に、露光後の青色用レジスト層を現像することによって、青色用フィルターパターンを形成した。そして、青色用フィルターパターンを、ホットプレートを用いて230℃において6分間加熱することによって硬化させた。これにより、600nmの厚さを有した青色用フィルターを形成した。この際に、青色用フィルターを半導体基板の表面のうちで、緑色用フィルターが形成されている位置とは異なる位置に形成した。
【0083】
次に、緑色用フィルター上、青色用フィルター上、および、半導体基板のうちでこれらフィルターに覆われていない部分に、顔料、感光性硬化樹脂、および、熱硬化性樹脂を含む赤色用レジストを1000rpmの回転数でスピンコートした赤色用レジスト層を形成した。顔料には、カラーインデックスにおけるC.I.PR254、および、C.I.PY139を用いた。赤色用レジストにおいて、顔料の濃度を60質量%に設定した。次に、赤色用マスクを用いて赤色用レジスト層を選択的に露光した後に、露光後の赤色用レジスト層を現像することによって、赤色用フィルターパターンを形成した。そして、赤色用フィルターパターンを、ホットプレートを用いて230℃において6分間加熱することによって硬化させた。これにより、600nmの厚さを有した赤色用フィルターを形成した。この際に、赤色用フィルターを半導体基板の表面のうちで、青色用フィルター、および、緑色用フィルターが形成されている位置とは異なる位置に形成した。
【0084】
次に、各色用フィルター上、および、半導体基板のうちでカラーフィルターによって覆われていない部分に、青色顔料、紫色顔料、および、黄色顔料を含む感光性を有した赤外光パス用レジストを塗布した。これにより、赤外光パス用レジスト層を形成した。青色顔料にはカラーインデックスにおけるC.I.PB15:6を用い、紫色顔料にはカラーインデックスにおけるC.I.PV23を用い、黄色顔料にはカラーインデックスにおけるC.I.PY139を用いた。赤外光パス用レジストにおいて、顔料の濃度を78質量%に設定した。
【0085】
次に、赤外光パス用マスクを用いて赤外光パス用レジスト層を選択的に露光した後に、露光後の赤外光パス用レジスト層を現像することによって、赤外光パスフィルターパターンを形成した。そして、赤外光パスフィルターパターンを、ホットプレートを用いて230℃において6分間加熱することによって硬化させた。これにより、1300nmの厚さを有した赤外光パスフィルターを形成した。この際に、赤外光パスフィルターを、半導体基板の表面のうちで、上述した各色用フィルターが形成されている位置とは異なる位置に形成した。なお、赤外光パスフィルターにおいて、400nm以上650nm以下の波長を有する光に対する透過率の最大値は4.8%であり、650nm以上730nm以下の波長を有する光に対する透過率の最大値は8.6%であった。また、赤外光パスフィルターにおいて、800nm以上1000nm以下の波長を有する光に対する透過率の最小値は、92.1%であった。赤外光パスフィルターと、各色用フィルターとの間での段差は、700nmであった。
【0086】
次に、各色用フィルター上、および、赤外光パスフィルター上に、赤外光吸収色素、および、熱硬化性樹脂を含む塗布液を1000rpmの回転数でスピンコートすることによって塗膜を形成した。そして、塗膜を、ホットプレートを用いて200℃において20分間加熱することによって硬化させた。これにより、1000nmの厚さを有した赤外光カット前駆層を各色用フィルター上、および、赤外光パスフィルター上に形成した。赤外光カット前駆層において、940nm付近の波長を有する光に対する透過率は8%であった。
【0087】
次に、赤外光カット前駆層をドライエッチングした。この際に、ドライエッチング装置には、ICP方式のドライエッチング装置を用いた。エッチングガスには、アルゴンガス、および、酸素ガスを含む混合ガスを用い、かつ、エッチング対象物にバイアスを印加することによって、赤外光カット前駆層に対して異方性エッチングを行った。赤外光カット前駆層のドライエッチング量は、300nmであった。これにより、700nmの厚さを有した赤外光カットフィルターを形成した。
【0088】
次に、赤外光カットフィルター表面、および、赤外光パスフィルター表面に、プラズマCVD法を用いてSiOから形成され、かつ、100nmの厚さを有した酸素遮断層を形成した。
【0089】
次いで、酸素遮断層上にエッチバック法を用いて、500nmの高さを有した複数のマイクロレンズを形成した。これにより、本実施例に係る固体撮像素子が得られた。
このように、本実施例に係る固体撮像素子の製造方法であれば、赤外光カットフィルターの形成にレジストパターンの形成は不要である。そのため、そのレジストパターンを剥離するための剥離液も不要である。その結果、赤外光カットフィルター形成時における、赤外光カットフィルターに含まれる赤外光吸収色素の溶出が抑制され、固体撮像素子の機能低下を抑制することができた。具体的には、赤外光カットフィルターの形成にレジストパターンの形成する従来技術に係る固体撮像素子の製造方法で製造した固体撮像素子と比較して、本実施例に係る固体撮像素子の受光感度は、各画素(各色)において、1.2倍~1、5倍程度向上した。
【符号の説明】
【0090】
10…固体撮像素子
10F…固体撮像素子用フィルター
11…光電変換素子
12B…青色用フィルター
12G…緑色用フィルター
12R…赤色用フィルター
12P…赤外光パスフィルター
13…エッチングストッパー層
14…赤外光カットフィルター
15,25…酸素遮断層
16,26…マイクロレンズ
21…半導体基板
24…赤外光カット前駆層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10