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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038293
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】冷凍幹細胞改質方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0775 20100101AFI20220303BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
C12N5/0775
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142717
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】519092200
【氏名又は名称】グラドコフ・アレクセイ
(71)【出願人】
【識別番号】519092211
【氏名又は名称】グラドコワ・ニナ
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(72)【発明者】
【氏名】グラドコフ・アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】グラドコワ・ニナ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC01
4B029GA02
4B065AA93X
4B065BC03
4B065BD09
4B065BD15
4B065BD50
4B065CA44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】冷凍保存された間葉系幹細胞を、十分な活性を有する活性化間葉系幹細胞に改質することができる、冷凍幹細胞改質方法の提供。
【解決手段】間葉系幹細胞を凍結保護剤とともに所定温度で冷凍保存し、冷凍保存した間葉系幹細胞を使用する場合、冷凍保存容器43を35~37℃の温水中に2~3分浸水させて間葉系幹細胞35を2~3℃の温度に解凍し、解凍された間葉系幹細胞及び凍結保護剤44を収容した冷凍保存容器に洗浄液46を注入し、洗浄液によって間葉系幹細胞から凍結保護剤を除去するとともに、凍結保護剤を除去した後の間葉系幹細胞、凍結保護剤、洗浄液を層状に遠心分離し、遠心分離した後の冷凍保存容器の最下層に位置する間葉系幹細胞を抽出し、抽出した間葉系幹細胞を収容した第1培養容器に培養液を注入し、間葉系幹細胞を第1培養容器において36~37℃で24時間培養し、間葉系幹細胞を活性化させて活性化間葉系幹細胞に改質させる。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定温度に冷凍された間葉系幹細胞を活性化させて活性化間葉系幹細胞に改質させる冷凍幹細胞改質方法において、
前記冷凍幹細胞改質方法が、ドナーから採取した骨髄液を培養することから作られた間葉系幹細胞を所定容積の冷凍保存容器に収容するとともに、前記間葉系幹細胞を収容した前記冷凍保存容器に凍結保護剤を注入し、前記冷凍保存容器に収容した間葉系幹細胞を使用するまでの間、該冷凍保存容器に収容した該間葉系幹細胞を前記凍結保護剤とともに所定温度で冷凍保存する冷凍保存工程と、
前記冷凍保存工程によって冷凍保存した前記間葉系幹細胞を使用する場合、冷凍保存された前記間葉系幹細胞及び前記凍結保護剤を収容した前記冷凍保存容器を35~37℃に保持された温水中に2~3分浸水させて該間葉系幹細胞を2~3℃の温度に解凍する幹細胞解凍工程と、
前記幹細胞解凍工程によって冷凍状態から解凍された前記間葉系幹細胞及び前記凍結保護剤を収容した前記冷凍保存容器に洗浄液を注入し、前記洗浄液を注入した前記冷凍保存容器を攪拌して該洗浄液によって該冷凍保存容器内の間葉系幹細胞から凍結保護剤を除去する撹拌除去工程と、
前記撹拌除去工程によって間葉系幹細胞から凍結保護剤を除去した後の前記冷凍保存容器を遠心分離器に設置し、前記冷凍保存容器内の前記間葉系幹細胞、前記凍結保護剤、前記洗浄液を層状に遠心分離し、前記遠心分離した後の前記冷凍保存容器の最下層に位置する間葉系幹細胞を抽出する間葉系幹細胞抽出工程と、
前記間葉系幹細胞抽出工程によって抽出した間葉系幹細胞を所定容量かつ所定面積の底面を有する第1培養容器に収容するとともに、前記間葉系幹細胞を収容した前記第1培養容器に所定の培養液を注入し、前記間葉系幹細胞を前記第1培養容器において36~37℃で24時間培養し、該第1培養容器内の該間葉系幹細胞を活性化させて前記活性化間葉系幹細胞に改質させる幹細胞活性化工程とを有することを特徴とする冷凍幹細胞改質方法。
【請求項2】
前記冷凍幹細胞改質方法が、前記活性化させた活性化間葉系幹細胞を前記第1培養容器から抽出した後、該活性化間葉系幹細胞を抽出後18~20時間以内に使用する場合、抽出した活性化間葉系幹細胞を20~21℃に保持した状態で前記18~20時間以内に該活性化間葉系幹細胞の使用箇所まで搬送する幹細胞搬送工程を含む請求項1に記載の冷凍幹細胞改質方法。
【請求項3】
前記幹細胞活性化工程が、前記ドナーから採取した骨髄液を培養する培養過程において生成された培養生成液を前記第1培養容器に注入し、前記培養液及び前記培養生成液を利用して前記間葉系幹細胞を前記第1培養容器において35~37℃の温度で24時間培養する請求項1又は請求項2に記載の冷凍幹細胞改質方法。
【請求項4】
前記幹細胞活性化工程が、前記第1培養容器を2~5度の角度に傾斜させた状態で該第1培養容器を35~37℃の温度で24時間静的に放置する請求項1ないし請求項3いずれかに記載の冷凍幹細胞改質方法。
【請求項5】
前記幹細胞活性化工程が、前記第1培養容器を一方向へ2~5度の角度に傾斜させた状態で該第1培養容器を35~37℃の温度で12時間静的に放置し、前記一方向へ傾斜させた前記第1培養容器を該一方向と反対の他方向へ2~5度の角度に傾斜させた状態で該第1培養容器を35~37℃の温度で12時間静的に放置する請求項4に記載の冷凍幹細胞改質方法。
【請求項6】
前記凍結保護剤が、ヒドロキシエチルスターチ(HES)とジメチルスルホキシド(DMSO)とエチレングリコール(EG)とのうちの少なくとも該ジメチルスルホキシド(DMSO)であり、前記洗浄液が、ダルベッコりん酸緩衝生理食塩水(D-PBS)又はりん酸緩衝生理食塩水(PBS)である請求項1ないし請求項5いずれかに記載の冷凍幹細胞改質方法。
【請求項7】
前記間葉系幹細胞が、前記ドナーから採取した骨髄液を層状に分離し、層状に分離させた前記骨髄液のうちの中間層に位置する中間層骨髄液を抽出し、所定容量かつ所定面積の底面を有する第2培養容器に前記中間層骨髄液と所定の培養液とを注入して該中間層骨髄液に含まれる第1間葉系幹細胞を前記第2培養容器の底面に定着させる幹細胞第1定着工程と、前記幹細胞第1定着工程によって前記第1間葉系幹細胞を前記第2培養容器の底面に定着させた後、前記第2培養容器内の培養液を排出しつつあらたな培養液を該第2培養容器に注入して前記第1間葉系幹細胞を培養し、前記第2培養容器の底面面積に対する前記第1間葉系幹細胞の総平面面積が第1目標割合に達するまで該第1間葉系幹細胞を増殖させる幹細胞第1培養工程と、前記幹細胞第1培養工程によって増殖させた前記第1間葉系幹細胞及び前記培養液を収容した第2培養容器を遠心分離器に設置し、前記第2培養容器内の前記第1間葉系幹細胞、前記培養液を層状に遠心分離し、前記遠心分離した後の前記第2培養容器の最下層に位置する第2間葉系幹細胞を抽出する第2間葉系幹細胞第1抽出工程と、所定容量かつ所定面積の底面を有して前記第2培養容器よりも大きい容量の第3培養容器に前記第2間葉系幹細胞第1抽出工程によって抽出した第2間葉系幹細胞を収容しつつ、前記第3培養容器にあらたな培養液を注入し、前記第2間葉系幹細胞を前記第3培養容器の底面に定着させる幹細胞第2定着工程と、前記幹細胞第2定着工程によって前記第2間葉系幹細胞を前記第3培養容器の底面に定着させた後、前記第3培養容器内の培養液を排出しつつあらたな培養液を該第3培養容器に注入して前記第2間葉系幹細胞を培養し、前記第3培養容器の底面面積に対する前記第2間葉系幹細胞の総平面面積が第2目標割合に達するまで該第2幹細胞を増殖させる幹細胞第2培養工程と、前記幹細胞第2培養工程によって培養された前記第2間葉系幹細胞を含む前記第3培養容器を遠心分離器に設置し、前記第3培養容器内の前記第2間葉系幹細胞、前記培養液を層状に遠心分離し、前記遠心分離した後の前記第3培養容器の最下層に位置する第2間葉系幹細胞を抽出する第2間葉系幹細胞第2抽出工程とを有する間葉系幹細胞培養方法によって作られている請求項1ないし請求項6いずれかに記載の冷凍幹細胞改質方法。
【請求項8】
前記冷凍保存工程が、前記第2間葉系幹細胞第2抽出工程によって抽出された直後の前記第2間葉系幹細胞を前記冷凍保存容器に収容し、該冷凍保存容器に収容した該間葉系幹細胞を前記凍結保護剤とともに直ちに冷凍保存する請求項7に記載の冷凍幹細胞改質方法。
【請求項9】
前記培養生成液が、前記第2培養容器又は前記第3培養容器から培養後の間葉系幹細胞を抽出した後に残った培養液であり、前記間葉系幹細胞の培養過程において該間葉系幹細胞から分泌された所定の代謝物質を含む請求項3ないし請求項8いずれかに記載の冷凍幹細胞改質方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定温度に冷凍された間葉系幹細胞を活性化させて活性化間葉系幹細胞に改質させる冷凍幹細胞改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロナーゼ溶液を用いて幹細胞を剥離する剥離工程と、剥離した幹細胞を幹細胞保存媒体中で緩慢凍結させる凍結工程とを備え、幹細胞保存媒体が、ヒドロキシエチルスターチ(HES)とジメチルスルホキシド(DMSO)とエチレングリコール(EG)を含有する媒体、或いは、ヒドロキシエチルスターチ(HES)とジメチルスルホキシド(DMSO)と、培地(culture medium)もしくはアルブミン溶液とを含む媒体である幹細胞保存方法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2013/187077
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各種の幹細胞は、各種の疾患(心血管疾患や中枢神経系疾患等)の治療や再生医療における再生、美容等の非治療的用途に利用される。培養した幹細胞を冷凍保存する場合、所定の収容容器に幹細胞を収容しつつ、その収容容器にジメチルスルホキシド(DMSO)やヒドロキシエチルスターチ(HES)、エチレングリコール(EG)等の冷凍時の細胞破壊を防ぐ凍結保護剤が注入される。冷凍保存された冷凍幹細胞を使用する場合、その冷凍幹細胞を解凍する必要があるが、解凍時に凍結保護剤が除去されることはなく、凍結保護剤とともに解凍された幹細胞がそのまま使用される。
【0005】
冷凍幹細胞を解凍する際に凍結保護剤を除去しない場合、冷凍幹細胞をのうちの約50%以上が死滅するとともに、幹細胞を十分に活性化させることができない。生存する幹細胞が減少し、幹細胞を十分に活性化させることができない場合、幹細胞による各種の疾患に対する治療の効果や再生医療における再生の効果、美容等の非治療的用途における効果が低下し、所望の効果が得られない場合がある。又、凍結保護剤を含有した状態の幹細胞を人体に投与する場合、凍結保護剤による悪影響が懸念される。
【0006】
本発明の目的は、冷凍保存された間葉系幹細胞を解凍する場合、凍結保護剤を除去しつつ、大部分の間葉系幹細胞を生存させることができ、冷凍保存された間葉系幹細胞を十分な活性を有する活性化間葉系幹細胞に改質することができる冷凍幹細胞改質方法を提供することにある。本発明の他の目的は、冷凍保存された間葉系幹細胞を解凍する際に、各種の疾患に対する治療や再生医療における再生、美容等の非治療的用途における十分かつ高い効果を備え、所望の効果を得ることが可能な間葉系幹細胞を作ることができる冷凍幹細胞改質方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の前提は、所定温度に冷凍された間葉系幹細胞を活性化させて活性化間葉系幹細胞に改質させる冷凍幹細胞改質方法である。
【0008】
前記前提における本発明の特徴は、冷凍幹細胞改質方法が、ドナーから採取した骨髄液を培養することから作られた間葉系幹細胞を所定容積の冷凍保存容器に収容するとともに、間葉系幹細胞を収容した冷凍保存容器に凍結保護剤を注入し、冷凍保存容器に収容した間葉系幹細胞を使用するまでの間、冷凍保存容器に収容した間葉系幹細胞を凍結保護剤とともに所定温度で冷凍保存する冷凍保存工程と、冷凍保存工程によって冷凍保存した間葉系幹細胞を使用する場合、冷凍保存された間葉系幹細胞及び凍結保護剤を収容した冷凍保存容器を35~37℃に保持された温水中に2~3分浸水させて間葉系幹細胞を2~3℃の温度に解凍する幹細胞解凍工程と、幹細胞解凍工程によって冷凍状態から解凍された間葉系幹細胞及び凍結保護剤を収容した冷凍保存容器に洗浄液を注入し、洗浄液を注入した冷凍保存容器を攪拌して洗浄液によって冷凍保存容器内の間葉系幹細胞から凍結保護剤を除去する撹拌除去工程と、撹拌除去工程によって間葉系幹細胞から凍結保護剤を除去した後の冷凍保存容器を遠心分離器に設置し、冷凍保存容器内の間葉系幹細胞、凍結保護剤、洗浄液を層状に遠心分離し、遠心分離した後の冷凍保存容器の最下層に位置する間葉系幹細胞を抽出する間葉系幹細胞抽出工程と、間葉系幹細胞抽出工程によって抽出した間葉系幹細胞を所定容量かつ所定面積の底面を有する第1培養容器に収容するとともに、間葉系幹細胞を収容した第1培養容器に所定の培養液を注入し、間葉系幹細胞を第1培養容器において36~37℃で24時間培養し、第1培養容器内の間葉系幹細胞を活性化させて活性化間葉系幹細胞に改質させる幹細胞活性化工程とを有することにある。
【0009】
本発明の一例としては、冷凍幹細胞改質方法が、活性化させた活性化間葉系幹細胞を第1培養容器から抽出した後、活性化間葉系幹細胞を抽出後18~20時間以内に使用する場合、抽出した活性化間葉系幹細胞を20~21℃に保持した状態で18~20時間以内に活性化間葉系幹細胞の使用箇所まで搬送する幹細胞搬送工程を含む。
【0010】
本発明の他の一例としては、幹細胞活性化工程が、ドナーから採取した骨髄液を培養する培養過程において生成された培養生成液を第1培養容器に注入し、培養液及び培養生成液を利用して間葉系幹細胞を第1培養容器において35~37℃の温度で24時間培養する。
【0011】
本発明の他の一例としては、幹細胞活性化工程が、第1培養容器を2~5度の角度に傾斜させた状態で第1培養容器を35~37℃の温度で24時間静的に放置する。
【0012】
本発明の他の一例としては、幹細胞活性化工程が、第1培養容器を一方向へ2~5度の角度に傾斜させた状態で第1培養容器を35~37℃の温度で12時間静的に放置し、一方向へ傾斜させた第1培養容器を一方向と反対の他方向へ2~5度の角度に傾斜させた状態で第1培養容器を35~37℃の温度で12時間静的に放置する。
【0013】
本発明の他の一例としては、凍結保護剤が、ヒドロキシエチルスターチ(HES)とジメチルスルホキシド(DMSO)とエチレングリコール(EG)とのうちの少なくとも該ジメチルスルホキシド(DMSO)であり、洗浄液が、ダルベッコりん酸緩衝生理食塩水(D-PBS)又はりん酸緩衝生理食塩水(PBS)である。
【0014】
本発明の他の一例としては、間葉系幹細胞が、ドナーから採取した骨髄液を層状に分離し、層状に分離させた骨髄液のうちの中間層に位置する中間層骨髄液を抽出し、所定容量かつ所定面積の底面を有する第2培養容器に中間層骨髄液と所定の培養液とを注入して中間層骨髄液に含まれる第1間葉系幹細胞を第2培養容器の底面に定着させる幹細胞第1定着工程と、幹細胞第1定着工程によって第1間葉系幹細胞を第2培養容器の底面に定着させた後、第2培養容器内の培養液を排出しつつあらたな培養液を第2培養容器に注入して第1間葉系幹細胞を培養し、第2培養容器の底面面積に対する第1間葉系幹細胞の総平面面積が第1目標割合に達するまで第1間葉系幹細胞を増殖させる幹細胞第1培養工程と、幹細胞第1培養工程によって増殖させた第1間葉系幹細胞及び培養液を収容した第2培養容器を遠心分離器に設置し、第2培養容器内の第1間葉系幹細胞、培養液を層状に遠心分離し、遠心分離した後の第2培養容器の最下層に位置する第2間葉系幹細胞を抽出する第2間葉系幹細胞第1抽出工程と、所定容量かつ所定面積の底面を有して第2培養容器よりも大きい容量の第3培養容器に第2間葉系幹細胞第1抽出工程によって抽出した第2間葉系幹細胞を収容しつつ、第3培養容器にあらたな培養液を注入し、第2間葉系幹細胞を第3培養容器の底面に定着させる幹細胞第2定着工程と、幹細胞第2定着工程によって第2間葉系幹細胞を第3培養容器の底面に定着させた後、第3培養容器内の培養液を排出しつつあらたな培養液を第3培養容器に注入して第2間葉系幹細胞を培養し、第3培養容器の底面面積に対する第2間葉系幹細胞の総平面面積が第2目標割合に達するまで第2幹細胞を増殖させる幹細胞第2培養工程と、幹細胞第2培養工程によって培養された第2間葉系幹細胞を含む第3培養容器を遠心分離器に設置し、第3培養容器内の第2間葉系幹細胞、培養液を層状に遠心分離し、遠心分離した後の第3培養容器の最下層に位置する第2間葉系幹細胞を抽出する第2間葉系幹細胞第2抽出工程とを有する間葉系幹細胞培養方法によって作られている。
【0015】
本発明の他の一例としては、冷凍保存工程が、第2間葉系幹細胞第2抽出工程によって抽出された直後の第2間葉系幹細胞を冷凍保存容器に収容し、冷凍保存容器に収容した間葉系幹細胞を凍結保護剤とともに直ちに冷凍保存する。
【0016】
本発明の他の一例としては、培養生成液が、第2培養容器又は第3培養容器から培養後の間葉系幹細胞を抽出した後に残った培養液であり、間葉系幹細胞の培養過程において間葉系幹細胞から分泌された所定の代謝物質を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る冷凍幹細胞改質方法によれば、冷凍状態から解凍された間葉系幹細胞及び凍結保護剤を収容した冷凍保存容器に洗浄液を注入し、洗浄液を注入した冷凍保存容器を攪拌して洗浄液によって冷凍保存容器内の間葉系幹細胞から凍結保護剤を除去し、冷凍保存容器内の間葉系幹細胞、凍結保護剤、洗浄液を層状に遠心分離し、遠心分離した後の冷凍保存容器の最下層に位置する間葉系幹細胞を抽出するから、冷凍保存された間葉系幹細胞を解凍する際に洗浄液を利用して凍結保護剤を除去することができるとともに、冷凍状態から解凍された間葉系幹細胞の大部分(70~90%)を生存させることができる。冷凍幹細胞改質方法は、冷凍状態から解凍された間葉系幹細胞を所定容量かつ所定面積の底面を有する第1培養容器に収容するとともに、間葉系幹細胞を収容した第1培養容器に所定の培養液を注入し、間葉系幹細胞を第1培養容器において35~37℃で24時間培養し、第1培養容器内の間葉系幹細胞を活性化させるから、冷凍保存された間葉系幹細胞を解凍する際に、解凍された間葉系幹細胞を十分な活性を有する活性化間葉系幹細胞に改質することができる。冷凍幹細胞改質方法は、各種疾患(心血管疾患や中枢神経系疾患等)の治療や再生医療における再生、美容等の非治療的用途における十分かつ高い効果を有する活性化間葉系幹細胞を作ることができ、所望の効果を得ることが可能な活性化間葉系幹細胞を作ることができる。冷凍幹細胞改質方法は、各種疾患の治療に好適かつタイムリーに使用することが可能な活性化間葉系幹細胞を作ることができ、各種組織や各種臓器を再生に好適かつタイムリーに使用することが可能な活性化間葉系幹細胞を作ることができるとともに、美容等の非治療的用途に好適かつタイムリーに使用することが可能な活性化間葉系幹細胞を作ることができる。冷凍幹細胞改質方法は、解凍された活性化間葉系幹細胞に凍結保護剤が含まれていないから、冷凍幹細胞改質方法によって作られた活性化間葉系幹細胞を人体に投与下としても、人体に悪影響を与えることはない。
【0018】
活性化させた活性化間葉系幹細胞を第1培養容器から抽出した後、活性化間葉系幹細胞を抽出後18~20時間以内に使用する場合、抽出した活性化間葉系幹細胞を20~21℃に保持した状態で18~20時間以内に活性化間葉系幹細胞の使用箇所まで搬送する幹細胞搬送工程を含む冷凍幹細胞改質方法は、活性化間葉系幹細胞を20~21℃に保持した状態で18~20時間以内に活性化間葉系幹細胞の使用箇所まで搬送することで、活性化間葉系幹細胞の活性が失われず、その活性化間葉系幹細胞を各種疾患(心血管疾患や中枢神経系疾患等)の治療に利用することができ、その活性化間葉系幹細胞を再生医療における再生に利用することができるとともに、その活性化間葉系幹細胞を美容等の非治療的用途に利用することができる。
【0019】
幹細胞活性化工程において、ドナーから採取した骨髄液を培養する培養過程において生成された培養生成液を第1培養容器に注入し、培養液及び培養生成液を利用して間葉系幹細胞を第1培養容器において35~37℃の温度で24時間培養する冷凍幹細胞改質方法は、冷凍保存前の間葉系幹細胞の培養過程において生成された培養生成液を利用することによって第1培養容器において間葉系幹細胞の活性化が確実に促進されるから、培養生成液を利用して解凍後の間葉系幹細胞を24時間で活性化させることができ、十分な活性を有する活性化間葉系幹細胞を効率よく製造することができるとともに、凍結保護剤を除去した間葉系幹細胞を速やかに利用することができる。
【0020】
幹細胞活性化工程において、第1培養容器を2~5度の角度に傾斜させた状態で第1培養容器を35~37℃の温度で24時間静的に放置する冷凍幹細胞改質方法は、第1培養容器を2~5度の角度に傾斜させることで、第1培養容器内において解凍後の間葉系幹細胞、培養液(及び培養生成液)が第1培養容器の一方に偏り、第1培養容器の一方において間葉系幹細胞、培養液(及び培養生成液)の圧力が大きくなるとともに間葉系幹細胞が第1培養容器の一方に集中し、それによって間葉系幹細胞どうしの活性を高めることができ、解凍された間葉系幹細胞を十分な活性を有する活性化間葉系幹細胞に改質することができる。
【0021】
幹細胞活性化工程において、第1培養容器を一方向へ2~5度の角度に傾斜させた状態で第1培養容器を35~37℃の温度で12時間静的に放置し、一方向へ傾斜させた第1培養容器を一方向と反対の他方向へ2~5度の角度に傾斜させた状態で第1培養容器を35~37℃の温度で12時間静的に放置する冷凍幹細胞改質方法は、第1培養容器を一方向へ2~5度の角度に傾斜させ、更に、一方向へ傾斜させた第1培養容器を一方向と反対の他方向へ2~5度の角度に傾斜させることで、第1培養容器内において解凍後の間葉系幹細胞、培養液(及び培養生成液)が第1培養容器の一方又は他方へ偏り、第1培養容器の一方又は他方において間葉系幹細胞、培養液(及び培養生成液)の圧力が大きくなるとともに間葉系幹細胞が第1培養容器の一方又は他方へ満遍なく集中し、それによって間葉系幹細胞どうしの活性を高めることができ、解凍された間葉系幹細胞を十分な活性を有する活性化間葉系幹細胞に改質することができる。
【0022】
凍結保護剤がヒドロキシエチルスターチ(HES)とジメチルスルホキシド(DMSO)とエチレングリコール(EG)とのうちの少なくともジメチルスルホキシド(DMSO)であり、洗浄液がダルベッコりん酸緩衝生理食塩水(D-PBS)又はりん酸緩衝生理食塩水(PBS)である冷凍幹細胞改質方法は、冷凍状態から解凍された間葉系幹細胞及び凍結保護剤を収容した冷凍保存容器に洗浄液(ダルベッコりん酸緩衝生理食塩水(D-PBS)又はりん酸緩衝生理食塩水(PBS))を注入し、洗浄液を注入した冷凍保存容器を攪拌して洗浄液によって冷凍保存容器内の間葉系幹細胞から凍結保護剤(ヒドロキシエチルスターチ(HES)とジメチルスルホキシド(DMSO)とエチレングリコール(EG)とのうちの少なくともジメチルスルホキシド(DMSO))を除去し、冷凍保存容器内の間葉系幹細胞、凍結保護剤、洗浄液を層状に遠心分離し、遠心分離した後の冷凍保存容器の最下層に位置する間葉系幹細胞を抽出するから、冷凍保存された間葉系幹細胞を解凍する際に洗浄液(ダルベッコりん酸緩衝生理食塩水(D-PBS)又はりん酸緩衝生理食塩水(PBS))を利用して凍結保護剤(ヒドロキシエチルスターチ(HES)とジメチルスルホキシド(DMSO)とエチレングリコール(EG)とのうちの少なくともジメチルスルホキシド(DMSO))を確実に除去することができ、解凍において大部分(70~90%)の間葉系幹細胞を生存させることができるとともに、解凍された間葉系幹細胞を十分な活性を有する活性化間葉系幹細胞に改質することができる。
【0023】
間葉系幹細胞が、ドナーから採取した骨髄液を層状に分離し、層状に分離させた骨髄液のうちの中間層に位置する中間層骨髄液を抽出し、所定容量かつ所定面積の底面を有する第2培養容器に中間層骨髄液と所定の培養液とを注入して中間層骨髄液に含まれる第1間葉系幹細胞を第2培養容器の底面に定着させる幹細胞第1定着工程と、幹細胞第1定着工程によって第1間葉系幹細胞を第2培養容器の底面に定着させた後、第2培養容器内の培養液を排出しつつあらたな培養液を第2培養容器に注入して第1間葉系幹細胞を培養し、第2培養容器の底面面積に対する第1間葉系幹細胞の総平面面積が第1目標割合に達するまで第1間葉系幹細胞を増殖させる幹細胞第1培養工程と、幹細胞第1培養工程によって増殖させた第1間葉系幹細胞及び培養液を収容した第2培養容器を遠心分離器に設置し、第2培養容器内の第1間葉系幹細胞、培養液を層状に遠心分離し、遠心分離した後の第2培養容器の最下層に位置する第2間葉系幹細胞を抽出する第2間葉系幹細胞第1抽出工程と、所定容量かつ所定面積の底面を有して第2培養容器よりも大きい容量の第3培養容器に第2間葉系幹細胞第1抽出工程によって抽出した第2間葉系幹細胞を収容しつつ、第3培養容器にあらたな培養液を注入し、第2間葉系幹細胞を第3培養容器の底面に定着させる幹細胞第2定着工程と、幹細胞第2定着工程によって第2間葉系幹細胞を第3培養容器の底面に定着させた後、第3培養容器内の培養液を排出しつつあらたな培養液を第3培養容器に注入して第2間葉系幹細胞を培養し、第3培養容器の底面面積に対する第2間葉系幹細胞の総平面面積が第2目標割合に達するまで第2幹細胞を増殖させる幹細胞第2培養工程と、幹細胞第2培養工程によって培養された第2間葉系幹細胞を含む第3培養容器を遠心分離器に設置し、第3培養容器内の第2間葉系幹細胞、培養液を層状に遠心分離し、遠心分離した後の第3培養容器の最下層に位置する第2間葉系幹細胞を抽出する第2間葉系幹細胞第2抽出工程とを有する間葉系幹細胞培養方法によって作られている冷凍幹細胞改質方法は、第1間葉系幹細胞を第2培養容器の底面に定着させた後、培養液を第2培養容器から排出しつつ、あらたな培養液を第2培養容器に注入し、第2培養容器の底面に定着させた第1間葉系幹細胞をあらたな培養液を利用して培養し、第2培養容器において増殖させた第2間葉系幹細胞を第3培養容器に収容し、第2間葉系幹細胞を第3培養容器の底面に定着させた後、培養液を第3培養容器から排出しつつ、あらたな培養液を第3培養容器に注入し、第3培養容器の底面に定着させた第2間葉系幹細胞をあらたな培養液を利用して培養し、第3培養容器において第2間葉系幹細胞を増殖させるから、間葉系幹細胞を効率よく確実に増殖させることができ、十分な活性を有する間葉系幹細胞を効率よく作ることができる。
【0024】
冷凍保存工程において、第2間葉系幹細胞第2抽出工程によって抽出された直後の第2間葉系幹細胞を冷凍保存容器に収容し、冷凍保存容器に収容した間葉系幹細胞を凍結保護剤とともに直ちに冷凍保存する冷凍幹細胞改質方法は、間葉系幹細胞培養方法によって作られた十分な活性を有する間葉系幹細胞を直ちに冷凍保存するから、冷凍保存容器に収容された間葉系幹細胞の大部分を生きたまま冷凍保存することができ、間葉系幹細胞培養方法によって作られた間葉系幹細胞を長期間保存することができる。
【0025】
培養生成液が第2培養容器又は第3培養容器から培養後の間葉系幹細胞を抽出した後に残った培養液であり、間葉系幹細胞の培養過程において間葉系幹細胞から分泌された所定の代謝物質を含む冷凍幹細胞改質方法は、間葉系幹細胞の培養過程において間葉系幹細胞から分泌された所定の代謝物質を含むから、間葉系幹細胞自体の代謝物質がトリガーとなり、間葉系幹細胞が速やかに活性を開始するとともに、その培養生成液を利用して間葉系幹細胞を速やかに活性化させることができ、活性化間葉系幹細胞を短時間に効率よく作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一例として示す冷凍幹細胞改質システムの概略構成図。
図2】間葉系幹細胞培養方法における骨髄液分離工程の一例を示す説明図
図3図2から続く骨髄液分離工程の説明図。
図4】形状変形第1観察工程の一例を示す説明図。
図5】第1扁平培養容器(第2培養容器)の側面図。
図6】間葉系幹細胞培養方法における第2間葉系幹細胞第1抽出工程の一例を示す説明図。
図7】間葉系幹細胞培養方法における形状変形第2観察工程の一例を示す説明図。
図8】第2扁平培養容器(第3培養容器)の側面図。
図9】冷凍幹細胞改質方法における冷凍保存工程の一例を示す説明図。
図10】冷凍幹細胞改質方法における幹細胞解凍工程の一例を示す説明図。
図11】冷凍幹細胞改質方法における撹拌除去工程の一例を示す説明図。
図12】冷凍幹細胞改質方法における間葉系幹細胞抽出工程の一例を示す説明図。
図13】冷凍幹細胞改質方法における幹細胞活性化工程の一例を示す説明図。
図14】第3扁平培養容器(第1培養容器)の側面図。
図15】第2間葉系幹細胞の平面形状の一例を示す部分拡大図。
図16】第2間葉系幹細胞の平面形状の他の一例を示す部分拡大図。
図17】冷凍幹細胞改質方法における幹細胞搬送工程の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
一例として示す冷凍幹細胞改質システム10の概略構成図である図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る冷凍幹細胞改質方法の詳細を説明すると、以下のとおりである。尚、図2は、間葉系幹細胞培養方法における骨髄液分離工程の一例を示す説明図であり、図3は、図2から続く骨髄液分離工程の説明図である。図4は、形状変形第1観察工程の一例を示す説明図であり、図5は、第1扁平培養容器(第2培養容器)の側面図である。
【0028】
冷凍幹細胞改質システム10は、幹細胞培養方法によって特定種類の単一種間葉系幹細胞を培養(製造)し、冷凍保存された単一種の間葉系幹細胞を冷凍幹細胞改質方法によって活性化間葉系幹細胞に改質する。幹細胞培養方法は、複数のドナー(人)から採取した第1骨髄液を利用し、幹細胞第1定着工程、幹細胞第1培養工程、第2間葉系幹細胞第1抽出工程、幹細胞第2定着工程、幹細胞第2培養工程、第2間葉系幹細胞第2抽出工程を実施することにより、第1骨髄液に含まれる複数種類の間葉系幹細胞の中から特定種類の単一種間葉系幹細胞を培養(製造)する。
【0029】
冷凍幹細胞改質システム10は、管理サーバ11、管理サーバ11にインターフェイス(無線または有線)を介して接続されたICタグリーダ/ライタ12、管理サーバ11にインターフェイス(無線または有線)を介して接続された電子顕微鏡13、管理サーバ11にインターフェイス(無線または有線)を介して接続された冷蔵庫14又は冷凍庫14から形成されている。電子顕微鏡13は、撮像素子によって被写体の拡大画像を撮影する画像撮影機能を有するとともに、その拡大画像を管理サーバ11に送信する画像送信機能を有する。
【0030】
管理サーバ11は、中央処理部(CPU又はMPU、仮想CPU又は仮想MPU)とメモリ(メインメモリ及びキャッシュメモリ、仮想メインメモリ及び仮想キャッシュメモリ)とを備えた物理的なコンピュータ又はクラウドコンピューティングであり、大容量記憶領域又は大容量仮想記憶領域を内蔵している。クラウドとしては、Infrastructure as a Service(IaaS)、Platform as a Service(PaaS)、Software as a Service(SaaS)を利用することができる。管理サーバ11には、キーボード15やマウス16等の入力装置、ディスプレイ17やプリンタ(図示せず)等の出力装置がインターフェイス(無線または有線)を介して接続されている。
【0031】
冷凍幹細胞改質システム10では、各種のドナーデータ(ドナー特定情報)がICタグ18(ICチップ)を利用して管理され、間葉系幹細胞に関する幹細胞データがICタグ18を利用して管理される。ドナーデータには、ドナーの氏名、住所、電話番号、生年月日、性別、血液型、身長、体重、メールアドレス等があり、幹細胞データには、幹細胞特定情報、幹細胞製造年月日、培養生成液製造年月日、培養生成液特定情報等がある。幹細胞第1定着工程では、担当者(医師や看護師、研究者、バイオ技術者等)がドナーから第1骨髄液を2~3cc(2~3ml)採取する。担当者は、第1骨髄液の採取と同時に、管理サーバ11において冷凍幹細胞改質システム10を起動し、キーボード15やマウス16等の入力装置を利用してドナーデータや幹細胞データを管理サーバ11に適宜入力する。
【0032】
管理サーバ11は、ドナーデータが入力される度毎(ドナーから第1骨髄液を採取する度毎)に各ドナーを特定するユニークなドナー識別子を生成する。管理サーバ11は、入力されたドナーデータや幹細胞データをICタグリーダ/ライタ12を利用してICタグ18に書き込む。管理サーバ11は、ドナーデータ及び幹細胞データをドナー識別子及びICタグ18のICタグ特定情報(ICタグ識別子)に関連付けた状態で大容量記憶領域又は大容量仮想記憶領域に格納(記憶)する(ドナーデータ記憶工程)。
【0033】
ドナーから採取された第1骨髄液19は、図2に示すように、上下方向へ長いガラス試験管20(分離容器)内に注入(収容)される。尚、2~3ccの第1骨髄液19には、0.5~1ml(約5×10(cells/ml))の複数種類の間葉系幹細胞が含まれる。ガラス試験管20の外周面には、ICタグ18が貼付されている。尚、管理サーバ11は、ICタグ18に書き込まれたドナーデータや幹細胞データがICタグリーダ/ライタ12によって読み取られた場合、そのドナーデータや幹細胞データをディスプレイ17に表示する。第1骨髄液19を注入したガラス試験管20は、試験管立て(図示せず)にセットされ、試験管立てとともに恒温槽(図示せず)の内部に収容される。
【0034】
第1骨髄液19を注入したガラス試験管20は、恒温槽において所定時間(約2時間)静的に放置(動かすことなく静かに放置)される。恒温槽内の温度は、体温と略同一の約35~37℃に保持されている。ガラス試験管20を恒温槽に所定時間(約2時間)静的に放置することで、図3に示すように、ガラス試験管20に注入された第1骨髄液19がガラス試験管20内において上下方向へ何層か(3層)の層状に分離する(骨髄液分離工程)。第1骨髄液19を層状に分離させた後、恒温槽の内部から試験管立てを取り出し、試験管立てからガラス試験管20を引き抜き、層状に分離した第1骨髄液19の特定の層(3層(層状)に分離した中間層(第2層))に存在する第2骨髄液21(中間層骨髄液)を注射器(図示せず)又はピペット(図示せず)を利用して抽出(吸引)する(骨髄液抽出工程)。
【0035】
第1骨髄液19から中間層に位置する特定の第2骨髄液21(中間層骨髄液)を抽出した後、第2骨髄液21及び培養液26を第1扁平培養容器22(第2培養容器)(細胞培養容器)に注入(収容)し、培養容器22を体温と略同一の温度(約35~37℃)に保持しつつ、12~24時間静的に放置(動かすことなく静かに放置)し、12~24時間の間において約1~2時間間隔で培養容器22内の第2骨髄液21に含まれる第1間葉系幹細胞21の初期平面形状からの変形をディスプレイ17(電子顕微鏡)で観察し、第1間葉系幹細胞21が第1扁平培養容器22の底面23に定着したか否かを判断する(形状変形第1観察工程)。第1扁平培養容器22の底面23(底壁外面)には、ドナーデータや幹細胞データが書き込まれたICタグ18が取り付けられている。
【0036】
第1扁平培養容器22(第2培養容器)は、透明なガラス又は透明なプラスチックから作られ、小容量かつ所定面積の底面23を有する平面形状が略正四角形の扁平な容器である。第1扁平培養容器22の注入口24は、蓋25によって水密に閉塞されている。第1扁平培養容器22は、その容量が約20~30cc(好ましくは、25cc)であり、その底面23の面積が約25~36mmであるとともに、その一辺の長さが5~6mmである。尚、第1扁平培養容器22として小容量かつ所定面積の底面を有する平面形状が円形や楕円形の扁平な容器を使用することもできる。
【0037】
担当者は、注入口24から蓋25を取り外し、注射器又はピペットに吸引された第2骨髄液21を第1扁平培養容器22の注入口24から培養容器22の内部に注入(収容)するとともに、培養液26を培養容器22の内部に注入(収容)し、蓋25によって注入口24を閉塞する。培養液26には、ペニシリン(約100U/ml)、アムホテリシン(約100ng/ml)、ストレプトマイシン(約100mkg/ml)、L-グルタミン(約2~4ml)、20%ウシ胎児血清を添加したミネラル塩溶液およびアミノ酸が含まれる。
【0038】
尚、培養液26には、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)、Grasgow Minimum Essential Medium(GMEM)、RPMI640等を使用することもできる。培養液26には、インスリン、トランスフェリン、エタノールアミン、セレニウム、2-メルカプトエタノール、L-アラニル-L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、L-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラチン酸、グリシン、L-プロリン、L-セリン等を添加することもできる。第1扁平培養容器22に注入された第2骨髄液21に含まれる第1間葉系幹細胞21は、時間の経過とともに第1扁平培養容器22の底面23に定着しつつ、培養液26によって培養され、培養容器22の底面23において次第に増殖(分化)してコロニーを形成する。
【0039】
第2骨髄液21及び培養液26を第1扁平培養容器22に注入した後、培養容器22を電子顕微鏡13の試料ホルダ27に設置(セット)する。電子顕微鏡13の試料ホルダ27の上面28と第1扁平培養容器22の底部29との間にスペーサー30を介在させ、培養容器22の底部29をスペーサー30によって持ち上げた状態に保持し、培養容器22の底部29が上となり培養容器22の頂部31(注入口24)が下となるように、培養容器22を所定角度に傾斜させた状態に保持する。尚、第1扁平培養容器22の頂部31をスペーサー30によって持ち上げた状態に保持し、培養容器22の頂部31が上となり培養容器22の底部29が下となるように、培養容器22を所定角度に傾斜させた状態に保持してもよい。試料ホルダ27の上面28に対する第1扁平培養容器22の傾斜角度α1は、2~5°の範囲にあり、好ましくは、2~3°の範囲にある。
【0040】
試料ホルダ27の上面28に対して第1扁平培養容器22を前記傾斜角度で傾斜させることで、培養容器22内において第2骨髄液21(又は第1間葉系幹細胞21)及び培養液26が培養容器22の頂部31の側(又は底部29の側)に偏り、培養容器22の頂部31の側(又は底部29の側)において第2骨髄液21(又は第1間葉系幹細胞21)と培養液26との水圧が大きくなって第2骨髄液21(又は第1間葉系幹細胞21)が培養容器22の頂部31の側に集中し、それによって第1間葉系幹細胞21どうしの活性が高まり、培養容器22の底面23において第1間葉系幹細胞21を容易かつ迅速に定着(又は増殖(分化))させることができる。
【0041】
電子顕微鏡13は、第1扁平培養容器22に注入された第2骨髄液21に含まれる第1間葉系幹細胞21の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔で撮影し、撮影した第1間葉系幹細胞21の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔で管理サーバ11に送信する。管理サーバ11は、電子顕微鏡13から送信された第1間葉系幹細胞21の平面形状の拡大画像と撮影時間とをICタグ特定情報(ICタグ識別子)及びドナー識別子に関連付けた状態で記憶領域に格納(記憶)する。管理サーバ11は、電子顕微鏡13から送信された第1間葉系幹細胞21の平面形状の拡大画像と撮影時間とをディスプレイ17に出力(表示)する。担当者(医師や看護師、研究者、バイオ技術者等)は、ディスプレイ17に表示された第1間葉系幹細胞21の平面形状の拡大画像を12~24時間の間において約1~2時間間隔で確認(視認)し、第2骨髄液21に含まれる第1間葉系幹細胞21の平面形状の変化を観察する。
【0042】
図示はしていないが、第1間葉系幹細胞21の初期平面形状は略円形であり、第1間葉系幹細胞21の平面形状が略円形の場合、第1間葉系幹細胞21が第1扁平培養容器22の底面23(底壁内面)に定着しておらず、第1間葉系幹細胞21が増殖(分化)を開始していない。第1間葉系幹細胞21の変形後の平面形状は定着前の略円形を核として第1間葉系幹細胞21が一方向(所定方向)へ不定形に伸張(拡張)した扁平形状であり、第1間葉系幹細胞21が第1扁平培養容器22の底面23(底壁内面)に定着し、第1間葉系幹細胞21が増殖(分化)を開始している。
【0043】
形状変形第1観察工程における観察の結果、ディスプレイ17に出力(表示)された第1間葉系幹細胞21の平面形状が略円形から略円形を核として不定形の扁平形状に変形した場合、第1間葉系幹細胞21が第1扁平培養容器22の底面23に定着したと判断する(幹細胞第1定着工程)。形状変形第1観察工程における観察の結果、第1間葉系幹細胞21が略円形(初期平面形状)から略円形を核として不定形の扁平形状に変形し、第1間葉系幹細胞21の第1扁平培養容器22(第1培養容器)の底面23への定着を確認した後、総平面面積第1観察工程が行われる。
【0044】
担当者は、第1扁平培養容器22内に注入されている培養液26を培養容器22から排出し、培養容器22内にあらたな培養液26を注入(収容)する。次に、第1扁平培養容器22を体温と略同一の温度(約35~37℃)で36~48時間静的に放置(動かすことなく静かに放置)して第1間葉系幹細胞21を培養しつつ、36~48時間の間において約1~2時間間隔で培養容器22の底面23に定着した第1間葉系幹細胞21の培養容器22の底面面積に対する総平面面積をディスプレイ17(電子顕微鏡13)で観察し、第1間葉系幹細胞21の総平面面積が培養容器22の底面面積に対して第1目標割合に達したか否かを判断する(総平面面積第1観察工程)。第1扁平培養容器22の底面面積に対する第1間葉系幹細胞21の総平面面積の第1目標割合は、70~80%(70~80%コンフルエント)である。
【0045】
総平面面積第1観察工程では、第1扁平培養容器22に注入した培養液26を培養容器22から排出し、あらたな培養液26を培養容器22に注入(収容)し、あらたな培養液26を注入した第1扁平培養容器22を電子顕微鏡13の試料ホルダ27に設置(セット)する。電子顕微鏡13の試料ホルダ27の上面28と第1扁平培養容器22の底部29との間にスペーサー30を介在させ、培養容器22の底部29をスペーサー30によって持ち上げた状態に保持し、培養容器22の底部29が上となり培養容器22の頂部31(注入口24)が下となるように、培養容器22を所定角度に傾斜させた状態に保持する(図6参照)。試料ホルダ27の上面28に対する第1扁平培養容器22の傾斜角度α1は、2~5°の範囲にあり、好ましくは、2~3°の範囲にある。
【0046】
電子顕微鏡13は、第1扁平培養容器22内の第1間葉系幹細胞21の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔で撮影し、撮影した第1間葉系幹細胞21の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔で管理サーバ11に送信する。管理サーバ11は、電子顕微鏡13から送信された第1間葉系幹細胞21の平面形状の拡大画像と撮影時間とをICタグ特定情報(ICタグ識別子)及びドナー識別子に関連付けた状態で記憶領域に格納(記憶)する。管理サーバ11は、電子顕微鏡13から送信された第1間葉系幹細胞21の平面形状の拡大画像と撮影時間とをディスプレイ17に出力(表示)する。
【0047】
担当者(医師や看護師、研究者、バイオ技術者等)は、ディスプレイ17に表示された第1間葉系幹細胞21の平面形状の拡大画像を36~48時間の間において約1~2時間間隔で確認(視認)し、第1扁平培養容器22の底面23に定着した第1間葉系幹細胞21の培養容器22の底面面積に対する総平面面積を観察しつつ、第1間葉系幹細胞21の総平面面積が第1扁平培養容器22の底面面積に対して第1目標割合(70~80%コンフルエント)に達したか否かを判断する。
【0048】
第1間葉系幹細胞21は、第1扁平培養容器22の底面23(底壁内面)において増殖してコロニーを形成する(幹細胞第1培養工程)。第1間葉系幹細胞21がコロニーを形成し、総平面面積第1観察工程における観察の結果、第1間葉系幹細胞21の平面形状が拡張し、ディスプレイ17に表示された第1間葉系幹細胞21の第1扁平培養容器22の底面面積に対する総平面面積が第1目標割合(70~80%コンフルエント)に達した場合、培養容器22から第1間葉系幹細胞21を抽出する。
【0049】
第1扁平培養容器22に注入されている総平面面積第1観察工程時の培養液26(第1培養生成液32)を第1扁平培養容器22から排出し、培養容器22をりん酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した後、トリプシン液を培養容器22内に注入する。第1扁平培養容器22にトリプシン液を注入すると、培養容器22の底面23に定着した第1間葉系幹細胞21がトリプシン液によって底面23から剥離し、トリプシン液の水面に浮上する。担当者は、浮上した第1間葉系幹細胞21をピペットを利用して吸引する。
【0050】
尚、第1扁平培養容器22(第2培養容器)から排出された培養液26は、培養容器22から第1間葉系幹細胞21を抽出した後に残った培養液26であり、第1間葉系幹細胞21の培養過程において第1間葉系幹細胞21から分泌された所定の代謝物質を含む第1培養生成液32(培養生成液)に変化している。代謝物質を含む第1培養生成液32は、活性が低下した間葉系幹細胞を活性化させる。第1培養生成液32は、ICタグ18が取り付けられた後記する冷凍保存容器43に注入されて急速冷凍機(図示せず)によって急速冷凍された後、冷凍保存容器43に収容された状態で冷蔵庫14又は冷凍庫14において所定期間、所定温度(0~5℃のチルド保存又は0℃以下の冷凍保存)で保存される。
【0051】
図6は、間葉系幹細胞培養方法における第2間葉系幹細胞第1抽出工程の一例を示す説明図であり、図7は、間葉系幹細胞培養方法における形状変形第2観察工程の一例を示す説明図であり、図8は、第2扁平培養容器33(第3培養容器)の側面図である。担当者(医師や看護師、研究者、バイオ技術者等)は、第1扁平培養容器22から第1間葉系幹細胞21を抽出した後、第1間葉系幹細胞21をガラス試験管34に注入(収容)し、ガラス試験管34を遠心分離器(図示せず)に設置(セット)する。第1間葉系幹細胞21を遠心分離器によって所定時間遠心分離した後、ガラス試験管34を遠心分離器から取り出す。ガラス試験管34内の第1間葉系幹細胞21は、遠心分離器によって上下方向へ2層の層状に遠心分離される。
【0052】
第1間葉系幹細胞21を層状に分離させた後、図6に示すように、層状に分離した第1間葉系幹細胞21から下層(最下層)に位置する第2間葉系幹細胞35を注射器(図示せず)又はピペット(図示せず)を利用して抽出(吸引)する抽出する(第2間葉系幹細胞第1抽出工程)。不要な幹細胞を含む第1間葉系幹細胞21を遠心分離器で遠心分離して上下方向へ層状に分離させ、層状に遠心分離した第1間葉系幹細胞21のうちの下層(最下層)に位置する第2間葉系幹細胞35を抽出することで、第1間葉系幹細胞21から特定の第2間葉系幹細胞35を確実に抽出することができ、第1間葉系幹細胞21から不要な間葉系幹細胞を除去することができる。
【0053】
第1間葉系幹細胞21から下層(最下層)に位置する特定の第2間葉系幹細胞35を抽出した後、形状変形第2観察工程が行われる。形状変形第2観察工程では、第2間葉系幹細胞35及び培養液36を第2扁平培養容器33(第3培養容器)(細胞培養容器)に注入(収容)し、培養容器33を体温と略同一の温度(約35~37℃)で36~48時間静的に放置(動かすことなく静かに放置)しつつ、36~48時間の間において約1~2時間間隔で培養容器33内の第2間葉系幹細胞35(間葉系幹細胞)の初期平面形状からの変形をディスプレイ17(電子顕微鏡)で観察し、第2間葉系幹細胞35が培養容器33の底面37に定着したか否かを判断する(形状変形第2観察工程)。第2扁平培養容器33の底面37(底壁外面)には、ドナーデータや幹細胞データが書き込まれたICタグ18が取り付けられている。
【0054】
第2扁平培養容器33(第3培養容器)は、透明なガラス又は透明なプラスチックから作られ、小容量かつ所定面積の底面を有する平面形状が略正四角形の扁平な容器であり、その容積が第1扁平培養容器22(第2培養容器)のそれよりも大きい。第2扁平培養容器33の注入口38は、蓋39によって水密に閉塞されている。第2扁平培養容器33は、その容量が約40~60cc(好ましくは、50cc)であり、その底面面積が約50~72mmであるともに、その一辺の長さが約7~8.5mmである。尚、第2扁平培養容器33として小容量かつ所定面積の底面を有する平面形状が円形や楕円形の扁平な容器を使用することもできる。第2扁平培養容器33に注入された第2間葉系幹細胞35は、時間の経過とともに培養容器33の底面37に定着しつつ、培養液36によって培養され、培養容器33の底面37において次第に増殖(分化)してコロニーを形成する。
【0055】
担当者は、注入口38から蓋39を取り外し、注射器又はピペットに吸引された第2間葉系幹細胞35を第2扁平培養容器33の注入口38から培養容器33の内部に注入(収容)するとともに、培養液36を培養容器33の内部に注入(収容)し、蓋39によって注入口38を閉塞する。培養液36は、形状変形第1観察工程において注入されたそれと同一である。担当者は、第2間葉系幹細胞35及び培養液36を第2扁平培養容器33に注入した後、培養容器33を電子顕微鏡13の試料ホルダ27に設置(セット)する。
【0056】
電子顕微鏡13の試料ホルダ27の上面28と第2扁平培養容器33の底部40との間にスペーサー30を介在させ、培養容器33の底部40をスペーサー30によって持ち上げた状態に保持し、培養容器33の底部40が上となり培養容器33の頂部41(注入口38)が下となるように、培養容器33を所定角度に傾斜させた状態に保持する。又、電子顕微鏡13の試料ホルダ27の上面28と第2扁平培養容器33の頂部41との間にスペーサー30を介在させ、培養容器33の頂部41をスペーサー30によって持ち上げた状態に保持し、培養容器33の頂部41が上となり培養容器33の底部40が下となるように、培養容器33を所定角度に傾斜させた状態に保持してもよい。試料ホルダ27の上面28に対する第2扁平培養容器33の傾斜角度α2は、2~5°の範囲にあり、好ましくは、2~3°の範囲にある。
【0057】
試料ホルダ27の上面28に対して第2扁平培養容器33を前記傾斜角度で傾斜させることで、培養容器33内において第2間葉系幹細胞35及び培養液36が培養容器33の頂部41の側(又は底部40の側)に偏り、培養容器33の頂部41の側(又は底部40の側)において第2間葉系幹細胞35と培養液36との水圧が大きくなって第2間葉系幹細胞35が培養容器33の頂部41の側(又は底部40の側)に集中し、それによって第2間葉系幹細胞35どうしの活性が高まり、培養容器33の底面37において第2間葉系幹細胞35を容易かつ迅速に定着(又は増殖(分化))させることができる。
【0058】
電子顕微鏡13は、第2扁平培養容器33に注入された第2間葉系幹細胞35の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔で撮影し、撮影した第2間葉系幹細胞35の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔で管理サーバ11に送信する。管理サーバ11は、電子顕微鏡13から送信された第2間葉系幹細胞35の平面形状の拡大画像と撮影時間とをICタグ特定情報(ICタグ識別子)及びドナー識別子に関連付けた状態で記憶領域に格納(記憶)する。管理サーバ11は、電子顕微鏡13から送信された第2間葉系幹細胞35の平面形状の拡大画像と撮影時間とをディスプレイ17に表示する。担当者は、ディスプレイ17に表示された第2間葉系幹細胞35の平面形状の拡大画像を36~48時間の間において約1~2時間間隔で確認(視認)し、第2間葉系幹細胞35の平面形状の変化を観察する。
【0059】
第2間葉系幹細胞35の初期平面形状は略円形であり、第2間葉系幹細胞35の平面形状が略円形の場合、第2間葉系幹細胞35が第2扁平培養容器33の底面37(底壁内面)に定着しておらず、第2間葉系幹細胞35が増殖(分化)を開始していない。第2間葉系幹細胞35の変形後の平面形状は定着前の略円形を核として第2間葉系幹細胞35が一方向へ不定形に伸張した扁平形状であり、第2間葉系幹細胞35が第2扁平培養容器33の底面37(底壁内面)に定着し、第2間葉系幹細胞35が増殖(分化)を開始している。
【0060】
形状変形第2観察工程における観察の結果、ディスプレイ17に表示された第2間葉系幹細胞35の平面形状が略円形から略円形を核として不定形の扁平形状に変形した場合、第2間葉系幹細胞35が第2扁平培養容器33の底面37に定着したと判断する(幹細胞第2定着工程)。形状変形第2観察工程における観察の結果、第2間葉系幹細胞35が略円形(初期平面形状)から略円形を核として不定形の扁平形状に変形し、第2間葉系幹細胞35の第2扁平培養容器33(第3培養容器)の底面37への定着を確認した後、総平面面積第2観察工程が行われる。
【0061】
第2扁平培養容器33内に注入されている培養液36を培養容器33から排出し、培養容器33にあらたな培養液36を注入(収容)する。次に、第2扁平培養容器33を体温と略同一の温度(約35~37℃)で36~48時間静的に放置(動かすことなく静かに放置)して第2間葉系幹細胞35を培養しつつ、36~48時間の間において約1~2時間間隔で培養容器33の底面37に定着した第2間葉系幹細胞35の培養容器33の底面面積に対する総平面面積をディスプレイ17(電子顕微鏡)で観察し、第2間葉系幹細胞35の総平面面積が第2扁平培養容器33の底面面積に対して第2目標割合に達したか否かを判断する(総平面面積第2観察工程)。第2扁平培養容器33の底面面積に対する第2間葉系幹細胞35の総平面面積の第2目標割合は、88~92%(88~92%コンフルエント)である。
【0062】
総平面面積第2観察工程では、第2扁平培養容器33に注入した培養液36を培養容器33から排出し、あらたな培養液36を培養容器33に注入(収容)し、あらたな培養液36を注入した培養容器33を電子顕微鏡13の試料ホルダ27に設置(セット)する。電子顕微鏡13の試料ホルダ27の上面28と第2扁平培養容器33の底部40との間にスペーサー30を介在させ、培養容器33の底部40をスペーサー30によって持ち上げた状態に保持し、培養容器33の底部40が上となり培養容器33の頂部41(注入口38)が下となるように、第2扁平培養容器33を所定角度に傾斜させた状態に保持する(図8参照)。試料ホルダ27の上面28に対する第2扁平培養容器33の傾斜角度α1は、2~5°の範囲にあり、好ましくは、2~3°の範囲にある。
【0063】
電子顕微鏡13は、第2扁平培養容器33内の第2間葉系幹細胞35の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔で撮影し、撮影した第2間葉系幹細胞35の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔で管理サーバ11に送信する。管理サーバ11は、電子顕微鏡13から送信された第2間葉系幹細胞35の平面形状の拡大画像と撮影時間とをICタグ特定情報(ICタグ識別子)及びドナー識別子に関連付けた状態で記憶領域に格納(記憶)する。管理サーバ11は、電子顕微鏡13から送信された第2間葉系幹細胞35の平面形状の拡大画像と撮影時間とをディスプレイ17に出力(表示)する。
【0064】
担当者(医師や看護師、研究者、バイオ技術者等)は、ディスプレイ17に表示された第2間葉系幹細胞35の平面形状の拡大画像を36~48時間の間において約1~2時間間隔で確認(視認)し、第2扁平培養容器33の底面37に定着した第2間葉系幹細胞35の培養容器33の底面面積に対する総平面面積を観察しつつ、第2間葉系幹細胞35の総平面面積が培養容器33の底面面積に対して第2目標割合(70~80%コンフルエント)に達したか否かを判断する。
【0065】
第2間葉系幹細胞35は、第2扁平培養容器33の底面37(底壁内面)において増殖してコロニーを形成する(幹細胞第2培養工程)。第2間葉系幹細胞35がコロニーを形成し、第2間葉系幹細胞35の平面形状が拡張し、総平面面積第2観察工程における観察の結果、ディスプレイ17に表示された第2間葉系幹細胞35の第2扁平培養容器33の底面面積に対する総平面面積が第2目標割合(70~80%コンフルエント)に達した場合、培養容器33から第2間葉系幹細胞を抽出する。
【0066】
第2扁平培養容器33に注入されている総平面面積第2観察工程時の培養液36を培養容器33から排出し、培養容器33をりん酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した後、トリプシン液を培養容器33内に注入する。第2扁平培養容器33にトリプシン液を注入すると、培養容器33の底面37に定着した第2間葉系幹細胞35がトリプシン液によって底面37から剥離し、トリプシン液の水面に浮上する。担当者は、浮上した第2間葉系幹細胞35をピペットを利用して吸引する(第2間葉系幹細胞第2抽出工程)。
【0067】
尚、第2扁平培養容器33(第3培養容器)から排出された培養液36は、培養容器33から第2間葉系幹細胞35を抽出した後に残った培養液36であり、第2間葉系幹細胞35の培養過程において第2間葉系幹細胞35から分泌された所定の代謝物質を含む第2培養生成液42(培養生成液)に変化している。代謝物質を含む第2培養生成液42は、活性が低下した間葉系幹細胞を活性化させる。第2培養生成液42は、ICタグ18が取り付けられた冷凍保存容器43に注入されて急速冷凍機によって急速冷凍された後、冷凍保存容器43に収容された状態で冷蔵庫14又は冷凍庫14において所定期間、所定温度(0~5℃のチルド保存又は0℃以下の冷凍保存)で保存される。
【0068】
冷凍幹細胞改質方法は、第1間葉系幹細胞21を第1扁平培養容器22(第2培養容器)の底面23に定着させた後、培養液26を培養容器22から排出しつつ、あらたな培養液26を培養容器22に注入し、培養容器22の底面23に定着させた第1間葉系幹細胞21をあらたな培養液26を利用して培養し、培養容器22において増殖させた第2間葉系幹細胞35及び培養液36を第2扁平培養容器33(第3培養容器)に収容し、第2間葉系幹細胞35を培養容器33の底面37に定着させた後、培養液36を培養容器33から排出しつつ、あらたな培養液36を培養容器33に注入し、培養容器33の底面37に定着させた第2間葉系幹細胞35をあらたな培養液36を利用して培養し、培養容器33において第2間葉系幹細胞35を増殖させるから、間葉系幹細胞35を効率よく確実に増殖させることができ、十分な活性を有する間葉系幹細胞35を効率よく作ることができる。
【0069】
図9は、冷凍幹細胞改質方法における冷凍保存工程の一例を示す説明図であり、図10は、冷凍幹細胞改質方法における幹細胞解凍工程の一例を示す説明図である。図11は、冷凍幹細胞改質方法における撹拌除去工程の一例を示す説明図であり、図12は、冷凍幹細胞改質方法における間葉系幹細胞抽出工程の一例を示す説明図である。図13は、冷凍幹細胞改質方法における幹細胞活性化工程の一例を示す説明図であり、図14は、第3扁平培養容器(第1培養容器)の側面図である。図15は、第2間葉系幹細胞35の平面形状の一例を示す部分拡大図であり、図16は、第2間葉系幹細胞35の平面形状の他の一例を示す部分拡大図である。図17は、冷凍幹細胞改質方法における幹細胞搬送工程の一例を示す説明図である。図15,16は、電子顕微鏡13によって撮影された第2間葉系幹細胞35の平面形状の拡大画像を示す。
【0070】
冷凍幹細胞改質方法は、幹細胞培養方法によって培養した第2間葉系幹細胞35(間葉系幹細胞)を冷凍保存工程を実施することによって冷凍保存し、冷凍保存した後の第2間葉系幹細胞35(間葉系幹細胞)を幹細胞解凍工程、撹拌除去工程、間葉系幹細胞抽出工程、幹細胞活性化工程、幹細胞搬送工程を実施することによって活性化間葉系幹細胞55に改質する。
【0071】
担当者(医師や看護師、研究者等)は、第2間葉系幹細胞35(培養された間葉系幹細胞)をピペットから所定容積の冷凍保存容器43に注入(収容)する。冷凍保存容器43に注入された第2間葉系幹細胞35は、不要な間葉系幹細胞が除去された活性を有する培養対象の特定種類(略単一種)のピュアな間葉系幹細胞である。冷凍保存容器43の外周面には、ドナーデータや幹細胞データが格納されたICタグ18が取り付けられている。
【0072】
冷凍保存容器43には、凍結保護剤44(ヒドロキシエチルスターチ(HES)とジメチルスルホキシド(DMSO)とエチレングリコール(EG)とのうちの少なくともジメチルスルホキシド(DMSO))が注入される。第2間葉系幹細胞35及び凍結保護剤44を収容した冷凍保存容器43は、急速冷凍機(図示せず)によって急速冷凍する。急速冷凍された第2間葉系幹細胞35は、それが使用されるまでの間、図9に示すように、冷凍保存容器43に収容された状態で冷蔵庫14又は冷凍庫14において所定期間、所定温度(0~5℃のチルド保存又は0℃以下の冷凍保存)で保存される(冷凍保存工程)。
【0073】
冷蔵庫14又は冷凍庫14で冷凍保存された第2間葉系幹細胞35を使用する場合(冷凍保存工程によって冷凍保存した間葉系幹細胞35を使用する場合)、図10に示すように、温度コントロールが可能な所定容積の保温容器45(恒温槽)を用意し、その保温容器45の温水中に冷凍保存容器43を2~3分間漬け(浸水させ)、第2間葉系幹細胞35を2~3℃の温度に解凍する(幹細胞解凍工程)。保温容器45では、温水の温度が35~37℃に保持される。尚、第1培養生成液32及び第2培養生成液42を収容した冷凍保存容器43を保温容器45の温水中に2~3分間漬け(浸水させ)、第1及び第2培養生成液32,42を2~3℃の温度に解凍する。
【0074】
次に、保温容器45から冷凍保存容器43を取り出し、冷凍状態から解凍された第2間葉系幹細胞35及び凍結保護剤44を収容した冷凍保存容器43に洗浄液46(ダルベッコりん酸緩衝生理食塩水(D-PBS)又はりん酸緩衝生理食塩水(PBS))を注入する。冷凍保存容器43に洗浄液46を注入した後、図11に示すように、洗浄液46を注入した冷凍保存容器43を左右に振って冷凍保存容器43を攪拌し、洗浄液46(ダルベッコりん酸緩衝生理食塩水(D-PBS)又はりん酸緩衝生理食塩水(PBS))によって冷凍保存容器43内の第2間葉系幹細胞35から凍結保護剤44を除去(分離)する(撹拌除去工程)。
【0075】
担当者(医師や看護師、研究者等)は、撹拌除去工程によって第2間葉系幹細胞35から凍結保護剤44を除去(分離)した後、第2間葉系幹細胞35と間葉系幹細胞35から分離された凍結保護剤44と洗浄液46とを含む混合液を収容した冷凍保存容器43を遠心分離器47に設置(セット)する。混合液を遠心分離器47によって所定時間遠心分離し、冷凍保存容器43内の第2間葉系幹細胞35、凍結保護剤44、洗浄液46を層状に遠心分離する。冷凍保存容器43内の混合液は、上下方向へ2層の層状に遠心分離される。
【0076】
担当者は、混合液を2層の層状に分離させた後、図12に示すように、層状に分離した混合液から下層(最下層)に位置する第2間葉系幹細胞35を注射器(図示せず)又はピペット(図示せず)を利用して抽出(吸引)する抽出する(間葉系幹細胞抽出工程)。間葉系幹細胞抽出工程によって抽出された第2間葉系幹細胞35は、その冷凍時に注入された凍結保護剤44(ヒドロキシエチルスターチ(HES)とジメチルスルホキシド(DMSO)とエチレングリコール(EG)とのうちの少なくともジメチルスルホキシド(DMSO))が除去(分離)されている。
【0077】
混合液から下層(最下層)に位置する特定の第2間葉系幹細胞35を抽出した後、幹細胞活性化工程が行われる。幹細胞活性化工程では、洗浄後の第2間葉系幹細胞35と培養液48と第1培養生成液32及び/又は第2培養生成液42とを第3扁平培養容器49(第1培養容器)に注入(収容)する。第3扁平培養容器49に注入される第1培養生成液32は、解凍された第2間葉系幹細胞35(間葉系幹細胞)の元となる第1間葉系幹細胞21の培養過程において第1間葉系幹細胞21から分泌された所定の代謝物質を含む培養生成液であり、第3扁平培養容器49に注入される第2培養生成液42は、解凍された第2間葉系幹細胞35(間葉系幹細胞)の培養過程において第2間葉系幹細胞35から分泌された所定の代謝物質を含む培養生成液である。尚、第3扁平培養容器49に注入する培養生成液32,42の注入割合は、培養容器49に注入する培養液48の総注入量を100%としたときに5~15%、好ましくは、8~12%、より好ましくは、10%である。
【0078】
第3扁平培養容器49(第1培養容器)は、透明なガラス又は透明なプラスチックから作られ、小容量かつ所定面積の底面を有する平面形状が略正四角形の扁平な容器である。第3扁平培養容器49の注入口50は、蓋51によって水密に閉塞されている。第3扁平培養容器49は、その容量が約20~30cc(好ましくは、25cc)であり、その底面面積が約25~36mmであるとともに、その一辺の長さが5~6mmである。尚、第3扁平培養容器49として小容量かつ所定面積の底面を有する平面形状が円形や楕円形の扁平な容器を使用することもできる。第3扁平培養容器49の底面52(底壁外面)には、ドナーデータや幹細胞データが書き込まれたICタグ18が取り付けられている。
【0079】
洗浄後の第2間葉系幹細胞35、培養液48、第1培養生成液32及び/又は第2培養生成液42を収容した後、第3扁平培養容器49を電子顕微鏡13の試料ホルダ27に設置(セット)する。電子顕微鏡13の試料ホルダ27の上面28と第3扁平培養容器49の底部53との間にスペーサー30を介在させ、培養容器49の底部53をスペーサー30によって持ち上げた状態に保持し、培養容器49の底部53が上となり培養容器49の頂部54(注入口50)が下となるように、培養容器49を所定角度に傾斜させた(一方向へ傾斜させた)状態に保持する。尚、第3扁平培養容器49の頂部54をスペーサー30によって持ち上げた状態に保持し、培養容器49の頂部54が上となり培養容器49の底部53が下となるように、培養容器49を所定角度に傾斜させた(一方向へ傾斜させた)状態に保持してもよい。試料ホルダ27の上面28に対する第3扁平培養容器49の一方向への傾斜角度α3は、2~5°の範囲にあり、好ましくは、2~3°の範囲にある。
【0080】
第3扁平培養容器49を電子顕微鏡13の試料ホルダ27に傾斜させた状態で設置(セット)した後、第2間葉系幹細胞35、培養液48、第1培養生成液32及び/又は第2培養生成液42を収容した第3扁平培養容器49を体温と略同一の温度(約35~37℃)で24時間静的に放置(動かすことなく静かに放置)し、第2間葉系幹細胞35(間葉系幹細胞)を第3扁平培養容器49(第1培養容器)において36~37℃で24時間培養する。
【0081】
第3扁平培養容器49を電子顕微鏡13の試料ホルダ27に設置(セット)した後、12時間経過した場合、電子顕微鏡13の試料ホルダ27の上面28と培養容器49の底部53との間に介在させたスペーサー30を取り外し、そのスペーサー30を電子顕微鏡13の試料ホルダ27の上面28と培養容器49の頂部54との間に介在させ、培養容器49の頂部54をスペーサー30によって持ち上げた状態に保持し、培養容器49の頂部54が上となり培養容器49の底部53が下となるように、培養容器49を所定角度に傾斜させた(他方向へ傾斜させた)状態に保持する。尚、最初に第3扁平培養容器49の頂部54が上となり培養容器49の底部53が下となるように傾斜させた場合、スペーサー30を電子顕微鏡13の試料ホルダ27の上面28と培養容器49の底部53との間に介在させ、培養容器49の底部53をスペーサー30によって持ち上げた状態に保持し、培養容器49の底部53が上となり培養容器49の頂部54が下となるように、培養容器49を所定角度に傾斜させた(他方向へ傾斜させた)状態に保持する。
【0082】
試料ホルダ27の上面28に対する第3扁平培養容器49の他方向への傾斜角度α3は、2~5°の範囲にあり、好ましくは、2~3°の範囲にある。尚、第3扁平培養容器49を一方向(又は他方向)へ継続して傾斜させた状態で体温と略同一の温度(約35~37℃)で24時間静的に放置(動かすことなく静かに放置)し、第2間葉系幹細胞35(間葉系幹細胞)を第3扁平培養容器49(第1培養容器)において36~37℃で24時間培養する場合もある。
【0083】
試料ホルダ27の上面28に対して第3扁平培養容器49を前記傾斜角度で一方向及び他方向へ傾斜させることで、培養容器49内において第2間葉系幹細胞35(間葉系幹細胞)、培養液48、培養生成液32,42が培養容器49の頂部54の側(又は底部53の側)に偏り、培養容器49の頂部54の側(又は底部53の側)において第2間葉系幹細胞35、培養液48、培養生成液32,42の水圧が大きくなって第2間葉系幹細胞35が培養容器49の頂部54の側(又は底部53の側)に集中し、それによって第2間葉系幹細胞35どうしの活性が高まり、培養容器49の底面52において第2間葉系幹細胞35を容易かつ迅速に活性化(定着)させることができる。
【0084】
電子顕微鏡13は、第3扁平培養容器49に注入された第2間葉系幹細胞35の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔で撮影し、撮影した第2間葉系幹細胞35の平面形状の拡大画像を約1~2時間間隔で管理サーバ11に送信する。管理サーバ11は、電子顕微鏡13から送信された第2間葉系幹細胞35の平面形状の拡大画像と撮影時間とをICタグ特定情報(ICタグ識別子)及びドナー識別子に関連付けた状態で記憶領域に格納(記憶)する。管理サーバ11は、電子顕微鏡13から送信された第2間葉系幹細胞35の平面形状の拡大画像と撮影時間とをディスプレイ17に出力(表示)する。担当者(医師や看護師、研究者、バイオ技術者等)は、ディスプレイ17に表示された第2間葉系幹細胞35の平面形状の拡大画像を12~24時間の間において約1~2時間間隔で確認(視認)し、第2間葉系幹細胞35の平面形状の変化を観察し、第2間葉系幹細胞35が活性化したか(第3扁平培養容器49の底面52に定着したか)否かを判断する(形状変形第3観察工程)。
【0085】
解凍後の第2間葉系幹細胞35の平面形状は略円形であり、第2間葉系幹細胞35の平面形状が略円形の場合、第2間葉系幹細胞35が活性化しておらず(第3扁平培養容器49の底面52(底壁内面)に定着しておらず)、第2間葉系幹細胞35が活性化を開始していない。第2間葉系幹細胞35の変形後の平面形状は定着前の略円形を核として第2間葉系幹細胞35が一方向(所定方向)へ不定形に伸張(拡張)した扁平形状であり、第2間葉系幹細胞35が第3扁平培養容器49の底面52(底壁内面)に定着し、第2間葉系幹細胞35が活性化し、培養容器内49(第1培養容器内)の第2間葉系幹細胞35(間葉系幹細胞)が活性化間葉系幹細胞に改質している。
【0086】
担当者は、形状変形第3観察工程における観察の結果、図14に示すように、ディスプレイ17に表示された第2間葉系幹細胞35の平面形状が略円形のまま観察される場合、第2間葉系幹細胞35が第3扁平培養容器49の底面52(底壁内面)に定着していないと判断し、第2間葉系幹細胞35の平面形状の変化を約1~2時間間隔で継続して観察する。担当者は、形状変形第3観察工程における観察の結果、図15に示すように、ディスプレイ17に出力(表示)された第2間葉系幹細胞35の平面形状が略円形から略円形を核として不定形の扁平形状に変形した場合、第2間葉系幹細胞35が活性化し(第3扁平培養容器の底面に定着し)、第2間葉系幹細胞35が活性化間葉系幹細胞55に改質したと判断する(幹細胞活性化工程)。
【0087】
第2間葉系幹細胞35が活性化間葉系幹細胞55に改質したと判断した後、第3扁平培養容器49に注入されている培養液48及び培養生成液32,42を培養容器49から排出し、培養容器49をりん酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した後、トリプシン液を培養容器49内に注入する。第3扁平培養容器49にトリプシン液を注入すると、培養容器49の底面52に定着した活性化間葉系幹細胞55がトリプシン液によって底面52から剥離し、トリプシン液の水面に浮上する。担当者は、浮上した活性化間葉系幹細胞55をピペットを利用して吸引し、その活性化間葉系幹細胞55を第3扁平培養容器49(第1培養容器)から抽出し、その活性化間葉系幹細胞55を保存容器56に収容する。
【0088】
活性化間葉系幹細胞55を抽出後18~20時間以内に使用する場合、担当者は、図17に示すように、活性化間葉系幹細胞55を収容した保存容器56を持ち運び可能な恒温ケース57に収容し、恒温ケース57内の温度を20~21℃に保持し、抽出した活性化間葉系幹細胞55を20~21℃に保持した状態で、18~20時間以内に活性化間葉系幹細胞55の使用箇所まで搬送する(幹細胞搬送工程)。使用箇所まで搬送された活性化間葉系幹細胞55は、恒温ケース57から取り出され、各種の疾患(心血管疾患や中枢神経系疾患等)の治療や再生医療における再生、美容等の非治療的用途に使用される。
【0089】
冷凍幹細胞改質方法(冷凍幹細胞改質システム10)は、冷凍状態から解凍された第2間葉系幹細胞35(間葉系幹細胞)及び凍結保護剤44(ヒドロキシエチルスターチ(HES)とジメチルスルホキシド(DMSO)とエチレングリコール(EG)とのうちの少なくともジメチルスルホキシド(DMSO))を収容した冷凍保存容器43に洗浄液46(ダルベッコりん酸緩衝生理食塩水(D-PBS)又はりん酸緩衝生理食塩水(PBS))を注入し、洗浄液46を注入した冷凍保存容器43を攪拌して洗浄液46によって冷凍保存容器43内の第2間葉系幹細胞35から凍結保護剤44を除去(分離)し、冷凍保存容器43内の第2間葉系幹細胞35、凍結保護剤44、洗浄液46を層状に遠心分離し、遠心分離した後の冷凍保存容器43の最下層に位置する第2間葉系幹細胞35を抽出するから、冷凍保存された第2間葉系幹細胞35を解凍する際に洗浄液46を利用して凍結保護剤44を除去することができるとともに、冷凍状態から解凍された第2間葉系幹細胞35の大部分(70~90%)を生存させることができる。
【0090】
冷凍幹細胞改質方法(冷凍幹細胞改質システム10)は、冷凍状態から解凍された第2間葉系幹細胞35(間葉系幹細胞)を所定容量かつ所定面積の底面を有する第3扁平培養容器49(第1培養容器)に収容するとともに、第2間葉系幹細胞35を収容した培養容器49に所定の培養液48及び培養生成液32,42を注入し、第2間葉系幹細胞35を培養容器49において35~37℃で24時間培養し、培養容器49内の第2間葉系幹細胞35を活性化させるから、冷凍保存された第2間葉系幹細胞35を解凍する際に、解凍された第2間葉系幹細胞35を十分な活性を有する活性化間葉系幹細胞55に改質することができる。
【0091】
冷凍幹細胞改質方法(冷凍幹細胞改質システム10)は、各種疾患(心血管疾患や中枢神経系疾患等)の治療や再生医療における再生、美容等の非治療的用途における十分かつ高い効果を有する活性化間葉系幹細胞55を作ることができ、所望の効果を得ることが可能な活性化間葉系幹細胞55を作ることができる。冷凍幹細胞改質方法(冷凍幹細胞改質システム10)は、各種疾患の治療に好適かつタイムリーに使用することが可能な活性化間葉系幹細胞55を作ることができ、各種組織や各種臓器を再生に好適かつタイムリーに使用することが可能な活性化間葉系幹細胞55を作ることができるとともに、美容等の非治療的用途に好適かつタイムリーに使用することが可能な活性化間葉系幹細胞55を作ることができる。冷凍幹細胞改質方法(冷凍幹細胞改質システム10)は、活性化された活性化間葉系幹細胞55に凍結保護剤44が含まれていないから、冷凍幹細胞改質方法によって作られた活性化間葉系幹細胞55を人体に投与下としても、人体に悪影響を与えることはない。
【0092】
冷凍幹細胞改質方法(冷凍幹細胞改質システム10)は、培養生成液32,42が第1扁平培養容器22(第2培養容器)又は第2扁平培養容器33(第3培養容器)から培養後の第1及び第2間葉系幹細胞21,35(間葉系幹細胞)を抽出した後に残った培養液であり、間葉系幹細胞21,35の培養過程において間葉系幹細胞21,35から分泌された所定の代謝物質を含むから、間葉系幹細胞21,35自体の代謝物質がトリガーとなり、第2間葉系幹細胞35が速やかに活性を開始するとともに、その培養生成液32,42を利用して第2間葉系幹細胞35を速やかに培養することができ、活性化間葉系幹細胞55を短時間に効率よく作ることができる。
【0093】
冷凍幹細胞改質方法(冷凍幹細胞改質システム10)は、活性化間葉系幹細胞55を抽出後18~20時間以内に使用する場合、活性化間葉系幹細胞55を20~21℃に保持した状態で18~20時間以内に活性化間葉系幹細胞55の使用箇所まで搬送することで、活性化間葉系幹細胞55の活性が失われず、その活性化間葉系幹細胞55を各種疾患(心血管疾患や中枢神経系疾患等)の治療に利用することができ、その活性化間葉系幹細胞55を再生医療における再生に利用することができるとともに、その活性化間葉系幹細胞55を美容等の非治療的用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
10 冷凍幹細胞改質システム
11 管理サーバ
12 ICタグリーダ/ライタ
13 電子顕微鏡
14 冷蔵庫又は冷凍庫
15 キーボード
16 マウス
17 ディスプレイ
18 ICタグ
19 第1骨髄液
20 ガラス試験管
21 第2骨髄液(第1間葉系幹細胞)
22 第1扁平培養容器(第2培養容器)
23 底面
24 注入口
25 蓋
26 培養液
27 試料ホルダ
28 上面
29 底部
30 スぺーサー
31 頂部
32 第1培養生成液
33 第2扁平培養容器(第3培養容器)
34 ガラス試験管
35 第2間葉系幹細胞
36 培養液
37 底面
38 注入口
39 蓋
40 底部
41 頂部
42 第2培養生成液
43 冷凍保存容器
44 凍結保護剤
45 保温容器
46 洗浄剤
47 遠心分離器
48 培養液
49 第3扁平培養容器(第1培養容器)
50 注入口
51 蓋
52 底面
53 底部
54 頂部
55 活性化間葉系幹細胞
56 保存容器
57 恒温ケース
図1
図2
図3
図4
図5
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図17