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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038301
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】固体組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/00 20170101AFI20220303BHJP
   C01B 33/38 20060101ALI20220303BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20220303BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20220303BHJP
【FI】
C01B32/00
C01B33/38
B82Y20/00
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142726
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】葛尾 巧
(72)【発明者】
【氏名】坂部 宏
【テーマコード(参考)】
4G073
4G146
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA57
4G073BA63
4G073BA75
4G073BD15
4G073CM15
4G073CM19
4G073CN06
4G073FA01
4G073UA06
4G073UA20
4G073UB60
4G146AA01
4G146AA15
4G146AA16
4G146AB03
4G146AB04
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146AD40
4G146BA11
4G146BA15
4G146BC03
4G146BC32B
4G146CB10
4G146CB19
4G146CB32
(57)【要約】
【課題】鉄を含有したとしても、炭素量子ドットが効率よく発光可能な固体組成物の提供を目的とする。
【解決手段】固体組成物は、炭素量子ドットと、層状粘土鉱物と、を含み、前記固体組成物中の鉄の量が、2質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素量子ドットと、層状粘土鉱物と、を含む固体組成物であって、
前記固体組成物中の鉄の量が、2質量%以下である、
固体組成物。
【請求項2】
前記層状粘土鉱物が、スメクタイトまたは層状複水酸化物を含む、
請求項1に記載の固体組成物。
【請求項3】
前記層状粘土鉱物の量が、40質量%以上99質量%以下である、
請求項1または2に記載の固体組成物。
【請求項4】
前記炭素量子ドットは、酸素、窒素、ホウ素、リン、硫黄、ケイ素、フッ素から選ばれる少なくとも一種の原子をヘテロ原子として含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の固体組成物。
【請求項5】
極大発光波長が350nm以上750nm以下である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の固体組成物。
【請求項6】
反応性基を有する有機化合物および鉄の含有量が2質量%以下である層状粘土鉱物を含む混合物を調製する工程と
前記混合物を加熱し、炭素量子ドットを調製する工程と、
を有する、固体組成物の製造方法。
【請求項7】
反応性基を有する有機化合物を加熱し炭素量子ドットを得る工程と、
前記炭素量子ドットおよび鉄の含有量が2質量%以下である層状粘土鉱物を混合する工程と、
を有する、固体組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素量子ドットは粒子径が数nm~数10nm程度の安定な炭素系微粒子である。炭素量子ドットは、良好な蛍光特性を示すことから、太陽電池、ディスプレイ、セキュリティインク等のフォトニクス材料としての用途が期待されている。また、低毒性で生体親和性も高いため、バイオセンサーやバイオイメージング等の医療分野への応用も期待されている。
【0003】
炭素量子ドットをさらに多様な分野に使用するために、発光効率の向上が求められている。一方で、炭素量子ドットを含む組成物が鉄元素を含むと、発光効率が非常に低くなることが報告されている。例えば、特許文献1には、炭素量子ドットを含む溶液中に鉄を0.002質量%程度含むと、当該溶液状の炭素量子ドットの発光効率が顕著に低下する、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国出願公開第108152263号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、鉄は各種無機物や各種有機物中に不純物として存在する。そのため、炭素量子ドットの原料となる有機化合物や、炭素量子ドットと組み合わせる化合物中にも含まれることがある。しかしながら、各種材料から微量の鉄を除去することは難しく、さらにこのような工程を行うことは、コストの面でも課題がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものである。本願は、鉄を含有したとしても、炭素量子ドットが効率よく発光可能な固体組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の固体組成物を提供する。
炭素量子ドットと、層状粘土鉱物と、を含む固体組成物であって、前記固体組成物中の鉄の量が、2質量%以下である、固体組成物。
【0008】
本発明は、以下の固体組成物の製造方法を提供する。
反応性基を有する有機化合物および鉄の含有量が2質量%以下である層状粘土鉱物を含む混合物を調製する工程と、前記混合物を加熱し、炭素量子ドットを調製する工程と、を有する、固体組成物の製造方法。
【0009】
本発明は、以下の固体組成物の製造方法も提供する。
反応性基を有する有機化合物を加熱し炭素量子ドットを得る工程と、前記炭素量子ドットおよび鉄の含有量が2質量%以下である層状粘土鉱物を混合する工程と、を有する、固体組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の固体組成物では、炭素量子ドットが効率よく発光する。したがって、照明用途や医療用途等、各種用途に使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「~」で示す数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を含む数値範囲を意味する。
【0012】
本発明の固体組成物は、炭素量子ドットと、層状粘土鉱物と、を含む固体状の組成物であり、当該固体組成物中の鉄の量は、2質量%以下である。本願における鉄とは、2価鉄Fe(II)および3価鉄Fe(III)をいい、以下、鉄元素ともいう。
【0013】
前述のように、従来、炭素量子ドットと共に鉄元素が存在すると、炭素量子ドットが効率よく発光しないことがあった。その詳細なメカニズムは解明されていないが、一つの仮説として以下のように考えられる。炭素量子ドットの近傍に鉄元素が存在すると、鉄元素と炭素量子ドット間の電子移動および配位相互作用が働き、炭素量子ドットが励起されても、その励起電子が鉄元素(鉄イオン)に移動し、蛍光が生じ難くなる。さらに、鉄元素(鉄イオン)を含有する物質は可視光域の光を吸収する。そのため、炭素量子ドットに照射した励起光が鉄イオンに吸収されてしまい、励起光の利用効率が低下したり、炭素量子ドットからの発光が鉄イオンに吸収されてしまい、炭素量子ドットからの発光が得られ難くなったりする。また、上述の特許文献1のように、溶液中に鉄元素(鉄イオン)と炭素量子ドットとが含まれる場合には特に、炭素量子ドットの発光強度が顕著に低下しやすい。溶液中では鉄イオンが動きやすく、鉄イオンが炭素量子ドットと相互作用しやすいと考えられる。
【0014】
これに対し、本発明のように、炭素量子ドットと、層状粘土鉱物とを組み合わせて、固体状の組成物とすると、イオンの運動性が低くなる。さらに層状粘土鉱物が、固体組成物中の鉄イオンを捕捉するため、鉄イオンと炭素量子ドットとの間での電子移動が抑制される。さらに、層状粘土鉱物が鉄イオンを捕捉することで、炭素量子ドットの励起光や炭素量子ドットからの発光が鉄イオンに吸収され難くなる。したがって、固体組成物中の鉄元素の量が増加しても、炭素量子ドットを十分に発光させることができ、さらにその光を取り出すことができる。つまり、層状粘土鉱物を含む固体組成物では、鉄元素を2質量%程度含む場合でも、一定の発光効率が得られる。
【0015】
(炭素量子ドット)
本発明の固体組成物が含む炭素量子ドットは、主に炭素を含む量子ドットであり、例えば反応性基を有する有機化合物を炭化させて調製される量子ドットである。
【0016】
炭素量子ドットの発光波長や構造は特に制限されない。炭素量子ドットの発光波長や構造は、炭素量子ドットの調製に使用する有機化合物の種類や、炭素量子ドットの調製方法、炭素量子ドットの粒子径等に応じて適宜選択される。
【0017】
当該炭素量子ドットは、炭素のみで構成されていてもよいが、酸素、窒素、ホウ素、リン、硫黄、ケイ素、フッ素等の原子をヘテロ原子として含んでいてもよい。炭素量子ドットは、これらを一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0018】
また、炭素量子ドットは、表面官能基を有することが好ましい。表面官能基の例には、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホ基、およびボロン酸基が含まれる。炭素量子ドットは、表面官能基を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。炭素量子ドットが表面官能基を含むと、炭素量子ドット、ひいては固体組成物の溶媒に対する分散性が良好になり、種々の用途に使用しやすくなる。炭素量子ドットが有する官能基の種類は、例えばIRスペクトル等により特定できる。また、炭素量子ドットが有する官能基は、炭素量子ドットの原料が含む元素や構造に由来する。
【0019】
また、炭素量子ドットを原子間力顕微鏡(AFM)により観察して測定される平均粒子径は、1nm以上100nm以下が好ましく、1nm以上80nm以下がより好ましい。炭素量子ドットの平均粒子径が当該範囲であると、量子ドットとしての性質が十分に得られやすい。なお、上記炭素量子ドットの平均粒子径は、3個以上の炭素量子ドットについて測定し、これらの平均値を測定することが好ましい。
【0020】
さらに、当該炭素量子ドットは、波長250nm以上1000nm以下の光を照射したときに、可視光または近赤外光を発することが好ましく、このときの極大発光波長は300nm以上2000nm以下が好ましく、300nm以上1500nm以下がより好ましく、350nm以上750nm以下が特に好ましい。極大発光波長が当該範囲であると、本発明の固体組成物を種々の用途に使用できる。
【0021】
固体組成物中の炭素量子ドットの量は、1質量%以上60質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。固体組成物中の炭素量子ドットの量が上記範囲であると、固体組成物から十分な発光が得られる。また、炭素量子ドットの量が上記範囲であると、固体組成物内で炭素量子ドットが凝集し難くなり、固体組成物の安定性が高まる。
【0022】
(層状粘土鉱物)
層状粘土鉱物は、ケイ素、アルミニウム、酸素等が所定の構造で配列した結晶層の積層体であり、一般的に、結晶層どうしの間に、水;プロトン、金属イオンおよび4級アンモニウムイオン等の陽イオン;ケイ酸イオン、リン酸イオンおよび硫酸イオン等の陰イオン;石油系炭化水素、アルコールおよびケトン等の有機化合物などが取り込まれている。層状粘土鉱物は、アニオン交換性であってもよく、カチオン交換性であってもよい。なお、鉄元素(鉄イオン)を捕捉するとの観点では、カチオン交換性の層状粘土鉱物が好ましい。
【0023】
層状粘土鉱物の例には、スメクタイト、層状複水酸化物、カオリナイト、および雲母等が含まれる。これらの中でもスメクタイトまたは層状複水酸化物が、炭素量子ドットを担持するのに適した平均層間隔を有する点で好ましい。
【0024】
スメクタイトは、水等によって膨潤する粘土鉱物であり、その例には、サポナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、バイデライト、ソーコナイト、スティーブンサイト等が含まれる。
【0025】
一方、層状複水酸化物は、2価の金属酸化物に3価の金属イオンが固溶した複水酸化物であり、その例には、ハイドロタルサイト、ハイドロカルマイト、ハイドロマグネサイト、パイロオーライト等が含まれる。
【0026】
層状粘土鉱物は天然物であってもよく、人工物であってもよい。また、結晶層中のヒドロキシ基がフッ素で置換されたものであってもよい。さらに、層間イオンがアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、アンモニウムイオン等で置換されたものであってもよい。また、層状粘土鉱物は、各種有機物によって修飾されていてもよく、例えば、四級アンモニウム塩化合物や四級ピリジニウム塩化合物で化学修飾されたスメクタイトであってもよい。
【0027】
固体組成物中の層状粘土鉱物の量は、40質量%以上99質量%以下が好ましく、60質量%以上90質量%以下がより好ましい。層状粘土鉱物の量が上記範囲であると、相対的に含有炭素量子ドットの量が十分に多くなり、十分な発光量が得られる。また、層状粘土鉱物の量が上記範囲であると、層状粘土鉱物によって炭素量子ドットを十分に担持でき、炭素量子ドットの分散性が良好になりやすい。
【0028】
(固体組成物)
本発明の固体組成物は、上記炭素量子ドットおよび層状粘土鉱物を含んでおり、かつ25℃、1気圧において固体である。固体組成物は、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。ただし、当該固体組成物中の鉄の量は2質量%以下であり、好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。一方、下限値は、後述する本願で使用するプラズマ発光分光分析における定量下限値である0.003質量%以上である。固体組成物中の鉄の量が当該範囲であると、炭素量子ドットの発光効率が低下し難い。
【0029】
固体組成物中の鉄の量は、例えば上述の層状粘土鉱物中の鉄の含有量等によって調整できる。固体組成物中の鉄は、無機物に由来することが多い。そこで、例えば、鉄の含有量が2質量%以下である層状粘土鉱物を使用すれば、固体組成物中の鉄の量を2質量%以下に抑えやすい。
【0030】
また本発明の固体組成物では、層状粘土鉱物の層間に、炭素量子ドットの少なくとも一部が入り込んでいることが好ましい。このような固体組成物では、炭素量子ドットおよび層状粘土鉱物の分散状態が均一になるだけでなく、炭素量子ドットが長期間に亘って凝集し難くなり、所望の性能が安定して得られやすくなる。層状粘土鉱物の層間に、炭素量子ドットの少なくとも一部が入り込んでいる固体組成物は、後述の第1の製造方法によって調製できる。なお、固体組成物において、層状粘土鉱物および炭素量子ドットが、どのように分布しているかは、エネルギー分散型X線解析等によって特定可能である。例えば、走査型電子顕微鏡による観察によって、層状粘土鉱物の断面を特定し、当該断面に対してエネルギー分散型X線解析を行うことで、炭素量子ドットが層状粘土鉱物の層間に入り込んでいるか否かを、確認できる。
【0031】
(固体組成物の製造方法)
上記炭素量子ドット、層状粘土鉱物と、を含む固体組成物の製造方法の例には、以下の2つの方法が含まれる。ただし、上記固体組成物の製造方法は、当該方法に限定されない。
【0032】
(1)第1の製造方法
第1の製造方法は、反応性を有する有機化合物、および鉄の含有量が2質量%以下である層状粘土鉱物の混合物を調製する工程(混合物調製工程)と、当該混合物を加熱し、炭素量子ドットを調製する工程(加熱工程)と、を含む。当該方法では、層状粘土鉱物の存在下で炭素量子ドットを調製する。
【0033】
混合物調製工程で、有機化合物と、層状粘土鉱物とを混合すると、有機化合物の一部が層状粘土鉱物の層間に入りこむ。そして、層状粘土鉱物の層間は狭いため、有機化合物の集合体が分断されやすい。したがって、有機化合物を層状粘土鉱物の存在下で炭化すると、層状粘土鉱物の層間がテンプレートとなり、粒子径の揃った炭素量子ドットが調製されやすくなる。またさらに、原料となる有機化合物が微細に分散されているため、得られる炭素量子ドットの粒子径を小さくすることも可能である。
【0034】
また、このように炭素量子ドットを調製すると、上述のように炭素量子ドットの一部が層状粘土鉱物の層間に入り込んだ状態(複合体)となり、長期間にわたって凝集し難く、さらに外部環境の影響を受けにくい。したがって、性能が安定した固体組成物が得られる。以下、各工程について説明する。
【0035】
(1-1)混合物調製工程
混合物調製工程では、反応性を有する有機化合物と、鉄の含有量が2質量%以下である層状粘土鉱物とを混合する。有機化合物は、反応性基を有し、炭化によって上述の炭素量子ドットを生成可能な化合物であれば特に制限されない。本明細書において、「反応性基」とは、後述の加熱工程において、有機化合物どうしの重縮合反応等を生じさせるための基であり、炭素量子ドットの主骨格の形成に寄与する基である。
【0036】
なお、得られる炭素量子ドットにおいて、これらの反応性基の一部が表面官能基等として残存していてもよい。反応性基の例には、カルボキシ基、ヒドロキシ基、およびアミノ基等が含まれる。当該有機化合物は、炭素量子ドットにおいてヘテロ原子となる元素(例えば、ホウ素原子やリン原子、硫黄原子、ケイ素原子、フッ素原子等)を含んでいてもよい。なお、混合物調製工程では、二種以上の有機化合物を層状粘土鉱物と混合してもよい。この場合、複数の有機化合物は、互いに反応しやすい基を有することが好ましい。
【0037】
上記反応性基を有する有機化合物の例には、カルボン酸、アルコール、ポリフェノール、アミン化合物、および糖類が含まれる。有機化合物は、常温で固体状であってもよく、液体状であってもよい。
【0038】
カルボン酸は、分子中にカルボキシ基を1つ以上有する化合物(ただし、ポリフェノール、アミン化合物、または糖に相当するものは除く)であればよい。カルボン酸の例には、ギ酸、酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、α-リポ酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ポリアクリル酸、(エチレンジチオ)二酢酸、チオリンゴ酸、テトラフルオロテレフタル酸等の2価以上の多価カルボン酸;クエン酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、5-スルホサリチル酸等のヒドロキシ酸;が含まれる。
【0039】
アルコールは、ヒドロキシ基を1つ以上有する化合物(ただし、カルボン酸、ポリフェノール、アミン化合物、または糖に相当するものは除く)であればよい。アルコールの例には、エチレングリコール、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アスコルビン酸、ポリエチレングリコール等の多価アルコールが含まれる。
【0040】
ポリフェノールは、ベンゼン環にヒドロキシ基が結合した構造を有する化合物であればよい。ポリフェノールの例には、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、没食子酸、タンニン、リグニン、カテキン、アントシアニン、ルチン、クロロゲン酸、リグナン、クルクミン等が含まれる。
【0041】
アミン化合物の例には、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、尿素、チオ尿素、チオシアン酸アンモニウム、エタノールアミン、1-アミノ-2-プロパノール、メラミン、シアヌル酸、バルビツール酸、葉酸、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ジシアンジアミド、グアニジン、アミノグアニジン、ホルムアミド、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、グルタチオン、RNA、DNA、システアミン、メチオニン、ホモシステイン、タウリン、チアミン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、4,5-ジフルオロ-1,2-フェニレンジアミン等が含まれる。
【0042】
糖類の例には、グルコース、スクロース、グルコサミン、セルロース、キチン、キトサン等が含まれる。
【0043】
上記の中でも、縮合反応が効率的に進行する有機化合物が好ましく、好ましいものの一例として、カルボン酸、ポリフェノール、アミン化合物、もしくはカルボン酸とアミン化合物との組み合わせが挙げられる。
【0044】
また、炭素量子ドットを調製する際、ホウ素原子やリン原子、硫黄原子、ケイ素原子、フッ素原子等を含む化合物(以下、「その他の化合物」とも称する)を、上述の有機化合物と混合して炭素量子ドットを調製してもよい。これにより、所望のヘテロ原子を含んだ炭素量子ドットを得ることができる。
【0045】
ホウ素原子を含む化合物の例には、ホウ素、ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、酸化ホウ素、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリオクタデシル、ホウ酸トリフェニル、2-エトキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン、ホウ酸トリエタノールアミン、2,4,6-トリメトキシボロキシン、トリス(トリメチルシリル)ボラート、ホウ酸トリス(2-シアノエチル)、3-アミノフェニルボロン酸、2-アントラセンボロン酸、9-アントラセンボロン酸、フェニルボロン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、4,4’-ビフェニルジボロン酸、2-ブロモフェニルボロン酸、4-ブロモ-1-ナフタレンボロン酸、3-ブロモ-2-フルオロフェニルボロン酸、4-カルボキシフェニルボロン酸、3-シアノフェニルボロン酸、4-シアノ-3-フルオロフェニルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、4-(ジフェニルアミノ)フェニルボロン酸、3-フルオロフェニルボロン酸、3-ヒドロキシフェニルボロン酸、4-メルカプトフェニルボロン酸、1-ナフタレンボロン酸、9-フェナントレンボロン酸、1,4-フェニレンジボロン酸、1-ピレンボロン酸、2-アミノピリミジン-5-ボロン酸、2-ブロモピリジン-3-ボロン酸、2-フルオロピリジン-3-ボロン酸、4-ピリジルボロン酸、キノリン-8-ボロン酸、4-アミノフェニルボロン酸ピナコール、3-ヒドロキシフェニルボロン酸ピナコール、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン、ジボロン酸、水素化ホウ素ナトリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素等が含まれる。
【0046】
リン原子を含む化合物の例には、リン単体、リン酸、酸化リン、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、フィチン酸、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、o-ホスホリルエタノールアミン、塩化リン、臭化リン、ホスホノ酢酸トリエチル、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリド、リン酸メチル、亜リン酸トリエチル、o-ホスホセリン、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、N,N,N’,N’-エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、アデノシン5’-三リン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、グアニジンリン酸塩、グアニル尿素リン酸塩、が含まれる。
【0047】
また、硫黄原子を含む化合物の例には、硫黄、チオ硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸、メタンスルホン酸、リグニンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、水硫化ナトリウム、が含まれる。
【0048】
ケイ素原子を含む化合物の例には、テトラクロロシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、1-(トリメチルシリル)イミダゾール、テトラエトキシシランが含まれる。
【0049】
フッ素原子を含む化合物の例には、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、2-(ペルフルオロヘキシル)エタノール、フッ化ナトリウムが含まれる。
【0050】
上記有機化合物と、その他の化合物との混合比は、所望のヘテロ原子の量に合わせて適宜選択される。
【0051】
一方、上記有機化合物やその他の化合物と組み合わせる層状粘土鉱物は、鉄の含有量が2質量%以下であればよく、上述の層状粘土鉱物(固体組成物が含む層状粘土鉱物)と同様の層状粘土鉱物を使用できるが、必要に応じて、層状粘土鉱物中の鉄の含有量を調整してもよい。
【0052】
また、層状粘土鉱物は、所望の炭素量子ドットの発光波長、すなわち所望の炭素量子ドットの粒子径等に合わせて、選択することが好ましい。有機化合物やその他の化合物と組み合わせる層状粘土鉱物の平均層間隔は、有機化合物の分子構造やホウ素化合物の分子構造、所望の炭素量子ドットの粒子径等に合わせて適宜選択されるが、0.1nm以上10nm以下が好ましく、0.1nm以上8nm以下がより好ましい。層状粘土鉱物の平均層間隔は、X線回折装置等によって解析できる。なお、層状粘土鉱物の平均層間隔とは、層状粘土鉱物の隣り合う結晶層の一方の底面と他方の天面との間隔をいう。本製造方法では、層状粘土鉱物の層間をテンプレートとして炭素量子ドットが調製される。そのため、層状粘土鉱物の平均層間隔が、10nm以下であると、発光波長が所望の範囲の炭素量子ドットが得られやすくなる。一方で、平均層間隔が0.1nm以上であると、これらの間に有機化合物の一部が入り込みやすくなり、層状粘土鉱物の層間をテンプレートとして炭素量子ドットが形成されやすくなる。
【0053】
なお、層状粘土鉱物の平均層間隔を調整するため、層状粘土鉱物を水や各種溶媒によって膨潤させてもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。混合物(有機化合物とホウ素化合物と層状粘土鉱物と溶媒)中の溶媒の量は、10質量%以上80質量%以下が好ましく、10質量%以上70重量%以下がより好ましい。
【0054】
ここで、有機化合物と、層状粘土鉱物と、必要に応じてその他の化合物と、を混合する方法は、これらを均一に混合可能であれば、特に制限されない。例えば、乳鉢ですりつぶしながら混合したり、ボールミル等によって粉砕しながら混合したりしてもよい。さらに、水や有機溶媒に各材料を溶解、混和あるいは分散させて混合したりしてもよい。有機化合物またはその他の化合物が液体である場合、これらに層状粘土鉱物等を溶解、混和あるいは分散させて混合してもよい。液体状の混合物は乾燥させてもよいし、そのまま次の工程に用いてもよい。副反応を抑制する観点から、混合物は固体状であることが好ましい。
【0055】
また、有機化合物、その他の化合物、および層状粘土鉱物の混合比は、炭素量子ドットおよび層状粘土鉱物の所望の含有比に合わせて適宜選択される。
【0056】
(1-2)加熱工程
加熱工程は、上述の有機化合物やその他の化合物を層状粘土鉱物と共に加熱して炭素量子ドットを調製する工程である。上記混合物の加熱方法は、有機化合物やその他の化合物を炭化させて、炭素量子ドットを調製可能であれば特に制限されない。例えば、ヒータによる加熱や、電磁波の照射等が含まれる。
【0057】
混合物をヒータ等によって加熱する場合、加熱温度は70℃以上700℃以下が好ましく、100℃以上500℃以下がより好ましく、100℃以上300℃以下がさらに好ましい。また、加熱時間は0.01時間以上45時間以下が好ましく、0.1時間以上30時間以下がより好ましく、0.5時間以上10時間以下がさらに好ましい。加熱時間によって、得られる炭素量子ドットの粒子径、ひいては発光波長を調整できる。またこのとき、窒素等の不活性ガスを流通させながら非酸化性雰囲気で加熱を行ってもよい。
【0058】
電磁波(例えばマイクロ波)を照射する場合、ワット数は1W以上1500W以下が好ましく、1W以上1000W以下がより好ましい。また、電磁波(例えばマイクロ波)による加熱時間は0.01時間以上10時間以下が好ましく、0.01時間以上5時間以下がより好ましく、0.01時間以上1時間以下がさらに好ましい。電磁波の照射時間によって、得られる炭素量子ドットの粒子径、ひいては発光波長を調整できる。
【0059】
上記電磁波の照射は、例えば半導体式電磁波照射装置等によって行うことができる。電磁波の照射は、上記混合物の温度を確認しながら行うことが好ましい。例えば温度が70℃以上700℃以下となるように調整しながら、電磁波を照射することが好ましい。
【0060】
当該加熱工程により、炭素量子ドットと、層状粘土鉱物とが均一に分散された固体組成物が得られる。またこのとき、当該固体組成物を有機溶媒で洗浄して、未反応物や副生物を除去して精製してもよい。
【0061】
(2)第2の製造方法
上述の固体組成物の第2の製造方法は、反応性基を有する有機化合物を加熱し、炭素量子ドットを得る工程(加熱工程)と、炭素量子ドットおよび鉄の含有量が2質量%以下である層状粘土鉱物を混合する工程(組成物調製工程)と、を含む。当該方法では、炭素量子ドットを調製した後、当該炭素量子ドットを層状粘土鉱物と混合する。当該方法においても、炭素量子ドットと層状粘土鉱物とを十分に混合することで、炭素量子ドットを固体組成物中に微分散させることができる。当該方法で固体組成物を調製した場合、炭素量子ドットは、主として層状粘土鉱物の表面に配置される。以下、各工程について説明する。
【0062】
(2-1)加熱工程
反応性基を有する有機化合物を準備し、これを加熱する。このとき、必要に応じて、上述のその他の化合物を混合してもよい。有機化合物およびその他の化合物については、上述の第1の方法で使用するものと同様である。また、有機化合物およびその他の化合物を混合する場合、その混合方法は、これらを均一に混合可能であれば、特に制限されない。例えば、乳鉢ですりつぶしながら混合したり、ボールミル等によって粉砕しながら混合したり、水や有機溶媒に溶解、混和あるいは分散させて混合したりしてもよい。また、有機化合物およびその他の化合物のいずれか一方が液体である場合、一方の成分を他方の成分に溶解、混和あるいは分散させて混合したりしてもよい。有機化合物およびその他の化合物の量法が液体である場合、これらを公知の方法で攪拌して混合してもよい。なお、液体状の混合物は乾燥させてもよいし、そのまま次の工程に用いてもよい。副反応を抑制する観点から、混合物は固体状であることが好ましい。
【0063】
また、有機化合物、およびその他の化合物の混合比は、炭素量子ドット中の所望のヘテロ原子の量に合わせて適宜選択される。
【0064】
また、有機化合物等を加熱する方法は、炭素量子ドットを調製可能であれば特に制限されない。例えばヒータによる加熱や、電磁波の照射等が含まれる。当該ヒータによる加熱方法や、電磁波の照射方法は、第1の製造方法の加熱工程と同様である。
【0065】
(2-2)組成物調製工程
上述の加熱工程で得られた炭素量子ドットと、鉄の含有量が2質量%以下である層状粘土鉱物とを混合する。層状粘土鉱物は、鉄の含有量が2質量%以下であればよく、上述の層状粘土鉱物(固体組成物が含む層状粘土鉱物)と同様の層状粘土鉱物を使用できるが、必要に応じて、層状粘土鉱物中の鉄の含有量を調整してもよい。
【0066】
第2の方法では、炭素量子ドットと、層状粘土鉱物とを、公知の方法で混合することにより、炭素量子ドットと層状粘土鉱物とが均一に分散された固体組成物が得られる。炭素量子ドットと、層状粘土鉱物との混合は、乳鉢ですりつぶしながら行ってもよく、ボールミル等によって粉砕しながら混合したり、水や有機溶媒に分散させて混合したりしてもよい。水や有機溶媒は、混合後、乾燥等によって除去する。
【0067】
またこのとき、当該固体組成物を有機溶媒で洗浄して、未反応物や副生物を除去して精製してもよい。
【0068】
(用途)
上述の炭素量子ドットおよび層状粘土鉱物を含む固体組成物は、発光特性が良好であったり、炭素量子ドットが有する官能基を利用して特定物質を分離させる分離剤として有用であったりする。したがって、当該固体組成物は各種用途に利用可能である。
【0069】
また、上述の固体組成物の用途は、特に制限されず、炭素量子ドットの性能に合わせて、例えば太陽電池、ディスプレイ、セキュリティインク、量子ドットレーザ、バイオマーカー、照明材料、熱電材料、光触媒、特定物質の分離剤等に使用できる。
【0070】
なお、上述の固体組成物は、25℃、1気圧において固体であるが、これを溶媒等に分散させた溶液の状態で、各種用途に使用してもよい。
【実施例0071】
以下、本発明の具体的な実施例を比較例とともに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
[実施例1]
(1)固体組成物の調製
サポナイト(スメクトンSA、クニミネ工業社製、鉄含有量:0.003質量%未満)0.1gと、フロログルシノール二水和物0.015gと、ホウ酸0.0057gと、を乳鉢ですりつぶした。当該混合物を内容積15mlのねじ口試験管に入れ、ゴムパッキン付きねじ口キャップで封をした。そして、ねじ口試験管内に窒素を流通させながら、200℃で3時間加熱し、炭素量子ドットと、層状粘土鉱物と、を含む固体組成物(複合体)を調製した。
【0073】
(2)発光特性の評価
上記で得られた固体組成物をKBrプレートに挟み、プレスして測定用サンプルを作製した。積分球ユニットILF-835付属の分光蛍光光度計FP-8500(日本分光社製)を用いて、当該測定用サンプルの固体状態での発光波長(極大発光波長)、蛍光量子収率を評価した。励起光は、固体組成物の蛍光量子収率が最大となる波長の光とした。
【0074】
(3)鉄含有量の評価
白金るつぼに、固体組成物10mgと、四ホウ酸リチウム0.5gと、を入れて1000℃で15分加熱して溶融させた。その後、硝酸を5mL加えて加熱し、上記溶融物を溶解させた。当該溶液を100mLに定容し、誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS3500DD(日立ハイテク製)を用いて鉄含有量を測定した。なお、固体組成物の原料である粘土鉱物中の鉄含有量も同様に測定した。
【0075】
[実施例2]
(1)鉄含有サポナイトの調製
硝酸鉄(III)9水和物0.4gを1mLの水に溶解させた水溶液を調製した。この水溶液サポナイト2.0gを含む水分散液200mLに滴下し、室温で8時間撹拌した。この溶液にアセトンを50mL加えて吸引ろ過し、回収した固体を水およびアセトンで洗浄した。その後、50℃で5時間真空乾燥することで鉄含有サポナイト(鉄含有量:0.2質量%)を調製した。
【0076】
(2)固体組成物の調製および評価
上記の鉄含有サポナイト0.1gと、フロログルシノール二水和物0.015gと、ホウ酸0.0057gと、を乳鉢ですりつぶした。当該混合物を内容積15mlのねじ口試験管に入れ、ゴムパッキン付きねじ口キャップで封をした。そして、ねじ口試験管内に窒素を流通させながら、200℃で3時間加熱し、炭素量子ドットと、層状粘土鉱物と、を含む固体組成物(複合体)を調製した。実施例1と同様に、調製した固体組成物の発光特性および鉄含有量を評価した。
【0077】
[実施例3]
モンモリロナイト(Fluorochem製、鉄含有量:1.3質量%)0.1gと、フロログルシノール二水和物0.015gと、ホウ酸0.0057gと、を乳鉢ですりつぶした。当該混合物を内容積15mlのねじ口試験管に入れ、ゴムパッキン付きねじ口キャップで封をした。そして、ねじ口試験管内に窒素を流通させながら、200℃で3時間加熱し、炭素量子ドットと、層状粘土鉱物と、を含む固体組成物(複合体)を調製した。実施例1と同様に、調製した固体組成物の発光特性および鉄含有量を評価した。
【0078】
[実施例4]
サポナイト(鉄含有量:0.003質量%未満)1.0gと、ジシアンジアミド0.11gと、を乳鉢ですりつぶした。当該混合物を内容積15mlのねじ口試験管に入れ、ゴムパッキン付きねじ口キャップで封をした。そして、ねじ口試験管内に窒素を流通させながら、200℃で3時間加熱し、炭素量子ドットと、層状粘土鉱物と、を含む固体組成物(複合体)を調製した。実施例1と同様に、調製した固体組成物の発光特性および鉄含有量を評価した。
【0079】
[実施例5]
ハイドロタルサイト(富士フイルム和光純薬社製、鉄含有量:0.003質量%未満)0.5gと、クエン酸0.15gと、ジシアンジアミド0.1gと、ホウ酸0.048gと、を乳鉢ですりつぶした。当該混合物を内容積15mlのねじ口試験管に入れ、ゴムパッキン付きねじ口キャップで封をした。そして、ねじ口試験管内に窒素を流通させながら、170℃で1.5時間加熱し、炭素量子ドットと、層状粘土鉱物と、を含む固体組成物(複合体)を調製した。実施例1と同様に、調製した固体組成物の発光特性および鉄含有量を評価した。
【0080】
[実施例6]
サポナイト(鉄含有量:0.003質量%未満)1.0gと、フロログルシノール二水和物0.15gと、酸化リン0.13gと、を乳鉢ですりつぶした。当該混合物を内容積15mlのねじ口試験管に入れ、ゴムパッキン付きねじ口キャップで封をした。そして、ねじ口試験管内に窒素を流通させながら、200℃で3時間加熱した。得られた粉末0.05gに水50μLを加え乳鉢ですりつぶし、50℃、3時間真空乾燥することで、炭素量子ドットと、層状粘土鉱物と、を含む固体組成物(複合体)を調製した。実施例1と同様に、調製した固体組成物の発光特性および鉄含有量を評価した。
【0081】
[実施例7]
サポナイト(鉄含有量0.003質量%未満)1.0gと、フロログルシノール二水和物0.15gと、酸化リン0.13gと、を乳鉢ですりつぶした。当該混合物を内容積15mlのねじ口試験管に入れ、ゴムパッキン付きねじ口キャップで封をした。そして、ねじ口試験管内に窒素を流通させながら、200℃で3時間加熱した。得られた粉末0.05gに対して、硫酸鉄(III)n水和物(富士フイルム和光純薬社製)250mgを5mLの水に溶解した水溶液50μLを加え乳鉢ですりつぶし、50℃、3時間真空乾燥することで、炭素量子ドットと、層状粘土鉱物と、を含む固体組成物(複合体)を調製した。実施例1と同様に、調製した固体組成物の発光特性および鉄含有量を評価した。
【0082】
[実施例8]
クエン酸0.15gと、ホウ酸0.048gとを乳鉢ですりつぶした。当該混合物を、三方コックを取り付けた内容積50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、170℃で90分加熱して炭素量子ドットを合成した。合成した炭素量子ドットを0.01g測り取り、サポナイト(鉄含有量:0.003質量%未満)0.09gとともに乳鉢ですりつぶすことで両者を混合し、固体組成物を得た。実施例1と同様に、調製した固体組成物の発光特性および鉄含有量を評価した。
【0083】
[比較例1]
(1)鉄含有サポナイトの調製
硝酸鉄(III)9水和物0.04gを1mLの水に溶解させた水溶液を調製し、この水溶液を、サポナイト2.0gを含む水分散液200mLに滴下した。その後、室温で8時間撹拌した。この溶液にアセトンを50mL加えて吸引ろ過し、回収した固体を水およびアセトンで洗浄した。その後、50℃で5時間真空乾燥することで、鉄含有サポナイト(鉄含有量:2.7質量%)を調製した。
【0084】
(2)固体組成物の調製および評価
上記の鉄含有サポナイト0.1gと、フロログルシノール二水和物0.015gと、ホウ酸0.0057gと、を乳鉢ですりつぶした。当該混合物を内容積15mlのねじ口試験管に入れ、ゴムパッキン付きねじ口キャップで封をした。そして、ねじ口試験管内に窒素を流通させながら、200℃で3時間加熱し、炭素量子ドットと、層状粘土鉱物と、を含む固体組成物(複合体)を調製した。実施例1と同様に、調製した固体組成物の発光特性および鉄含有量を評価した。
【0085】
[比較例2]
モンモリロナイト(ベントナイト、クニミネ工業社製、鉄含有量:11.0質量%)1.0gと、ジシアンジアミド0.11gと、を乳鉢ですりつぶした。当該混合物を内容積15mlのねじ口試験管に入れ、ゴムパッキン付きねじ口キャップで封をした。そして、ねじ口試験管内に窒素を流通させながら、200℃で3時間加熱し、炭素量子ドットと、層状粘土鉱物と、を含む固体組成物(複合体)を調製した。実施例1と同様に、調製した固体組成物の発光特性および鉄含有量を評価した。
【0086】
[比較例3]
(1)鉄含有ハイドロタルサイトの調製
塩化マグネシウム6水和物4.0gを18mLの水に溶解させた水溶液、および塩化鉄0.8gを5mLの水に溶解させた水溶液を調製した。これらの水溶液を100mLの1mol/L炭酸ナトリウム水溶液に40℃で撹拌しながら同時に滴下し、滴下終了後70℃に昇温して1時間撹拌した。この溶液を19時間静置したのち、吸引ろ過し、回収した固体を水およびアセトンで洗浄後、60℃で1時間真空乾燥することで鉄含有ハイドロタルサイト(鉄含有量:11.7質量%)を調製した。
【0087】
(2)固体組成物の調製および評価
上記の鉄含有ハイドロタルサイト0.1gと、クエン酸0.03gと、ジシアンジアミド0.02gと、ホウ酸0.009gと、を乳鉢ですりつぶした。当該混合物を内容積15mlのねじ口試験管に入れ、ゴムパッキン付きねじ口キャップで封をした。そして、ねじ口試験管内に窒素を流通させながら、170℃で1.5時間加熱し、炭素量子ドットと、層状粘土鉱物と、を含む固体組成物(複合体)を調製した。実施例1と同様に、調製した固体組成物の発光特性および鉄含有量を評価した。
【0088】
[比較例4]
サポナイト(鉄含有量:0.003質量%未満)1.0gと、フロログルシノール二水和物0.15gと、酸化リン0.13gと、を乳鉢ですりつぶした。当該混合物を内容積15mlのねじ口試験管に入れ、ゴムパッキン付きねじ口キャップで封をした。そして、ねじ口試験管内に窒素を流通させながら、200℃で3時間加熱した。得られた粉末0.05gに対して、硫酸鉄(III)n水和物(富士フイルム和光純薬社製)1.25gを5mLの水に溶解した水溶液50μLを加え乳鉢ですりつぶし、50℃、3時間真空乾燥した。これにより、炭素量子ドットと、層状粘土鉱物と、を含む固体組成物(複合体)を調製した。実施例1と同様に、調製した固体組成物の発光特性および鉄含有量を評価した。
【0089】
【表1】
【0090】
上記表1に示されるように、鉄含有量が2質量%以下である固体組成物では、いずれも固体蛍光量子収率が5%以上であった(実施例1~8)。これに対し、鉄含有量が2質量%を超える固体組成物では、発光が見られない、もしくは固体蛍光量子収率非常に低かった(比較例1~4)。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の固体組成物は、鉄を含んでいても固体蛍光量子効率が良好である。したがって、当該固体組成物を各種用途に使用可能である。