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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038345
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】面格子取付け構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/01 20060101AFI20220303BHJP
   E06B 5/16 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
E06B9/01 K
E06B5/16
E06B9/01 E
E06B9/01 F
E06B9/01 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142794
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】592220200
【氏名又は名称】株式会社丸忠
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】米丸 忠良
【テーマコード(参考)】
2E020
2E239
【Fターム(参考)】
2E020BA02
2E020BB02
2E020BC06
2E020CA04
2E020EA03
2E020EA06
2E239CA52
2E239CA57
2E239CA61
(57)【要約】
【課題】通常においては面格子としての基本性能を発揮する構造を有し、火災発生時においては窓枠における急激な温度上昇を抑制できる信頼性の高い面格子を窓枠に設置することが可能な取付け構造を提供すること。
【解決手段】面格子取付け構造における上部ブラケットは、窓枠に固定するために窓枠の辺を挟着する挟着機構と、面格子に固定するための螺合機構と、螺合機構における接合部分を引き離すように配設された引き離し機構とを有し、螺合機構は、熱可塑性樹脂により形成された樹脂ワッシャと、上部ブラケットに形成された貫通孔と樹脂ワッシャとを貫通して、面格子に前記上部ブラケットを固定する螺合部材とを、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓枠、
前記窓枠に取り付けられる面格子、
前記面格子を前記窓枠の下部に接合するための下部ブラケット、および
前記面格子を前記窓枠の上部に接合するための上部ブラケット、
を備え、
前記下部ブラケットは、前記面格子を前記窓枠に対して回動可能に取り付ける構成を有し、
前記上部ブラケットは、前記窓枠に固定するために前記窓枠の辺を挟着する挟着機構と、前記面格子に固定するための螺合機構と、前記螺合機構における接合部分を引き離すように配設された引き離し機構とを有し、
前記螺合機構は、熱可塑性樹脂により形成された樹脂ワッシャと、前記上部ブラケットに形成された貫通孔と前記樹脂ワッシャとを貫通して、前記面格子に前記上部ブラケットを固定する螺合部材とを、を含み、
前記窓枠の周囲温度が所定温度に達したとき、前記樹脂ワッシャが溶融して、前記螺合部材が前記樹脂ワッシャから外れ、前記面格子の上部が前記窓枠から離れて、前記面格子が前記下部ブラケットを中心に回動するように構成された、面格子取付け構造。
【請求項2】
前記上部ブラケットが、前記面格子の上部が前記窓枠から離れるように回動したとき、前記面格子を前記窓枠から所定距離を有して保持するアーム部を備える、請求項1に記載の面格子取付け構造。
【請求項3】
前記引き離し機構が、前記面格子に形成された縦溝に沿って移動可能に構成された、請求項1または2に記載の面格子取付け構造。
【請求項4】
前記螺合部材が、前記面格子に形成された縦溝の裏側に配設された裏板と、前記樹脂ワッシャおよび前記上部ブラケットの貫通孔を通り、前記面格子に形成された縦溝を介して前記裏板に接合される面格子固定ネジとを含み、前記面格子固定ネジを前記裏板に螺合することにより、前記上部ブラケットを前記面格子に固定するように構成された、請求項3に記載の面格子取付け構造。
【請求項5】
前記引き離し機構が、前記螺合機構の接合部分に対して引き離す方向に付勢力を発生させる付勢部材を備える、請求項4に記載の面格子取付け構造。
【請求項6】
前記引き離し機構が、楔プレートを含み、前記楔プレートの先端が前記螺合機構における前記裏板と前記面格子との間に当接して、前記楔プレートが前記裏板と前記面格子との間を引き離すように前記付勢部材の付勢力が加わるように構成された、請求項5に記載の面格子取付け構造。
【請求項7】
前記楔プレートの先端部分が二股に分かれた二叉部を有し、
前記窓枠の周囲温度が所定温度に達して、前記樹脂ワッシャが溶融したとき、前記二叉部が前記付勢部材の付勢力により前記裏板と前記面格子との間に入り、前記螺合部材が前記樹脂ワッシャから外れて、前記面格子の上部が前記窓枠から離れるよう構成された、請求項6に記載の面格子取付け構造。
【請求項8】
前記二叉部が湾曲部を有し、前記二叉部が前記付勢部材の付勢力により前記裏板と前記面格子との間に入り、前記二叉部が前記裏板に接合された前記面格子固定ネジの両側に配置され、前記湾曲部が前記裏板を前記面格子からさらに引き離すように構成された、請求項7に記載の面格子取付け構造。
【請求項9】
前記下部ブラケットが、前記面格子を前記窓枠の下部から脱着可能に構成され、前記面格子の下側が前記窓枠から離れるように構成された、請求項1から8のいずれか一項に記載の面格子取付け構造。
【請求項10】
前記下部ブラケットが前記面格子から外されたとき、前記上部ブラケットが前記面格子の下側を開放するよう回動可能な構成を有する、請求項9に記載の面格子取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防犯などの目的のため窓の外側に取り付けられる面格子の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
面格子としては、住宅などにおいて、台所、トイレ、風呂場などの比較的小さい窓や、共同住宅における、所謂マンションなどにおける共用廊下に面した窓などに取り付けられるものがあり、このような面格子は該窓から住宅内部への侵入を防止するために設けられている。これらの面格子は、窓の外側に配設された金属製の格子状の面体であり、頑丈に取り付けられており、簡単には外れない強固な構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-73765号公報
【特許文献2】特開2020-101026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
住宅などに設ける面格子の分野においては、外部からの人の侵入を防止するための防犯機能を有すると共に、火災時の延焼を防止するための防火機能を備えた、頑丈で、断熱性能の高い面格子を窓枠(サッシ)に取り付ける各種構造が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0005】
住宅などの窓枠に設けられた面格子としては、防犯機能および防火機能を発揮して住みよい環境を確保する建具としては非常に重要であるが、屋内の火災発生時においては面格子が窓枠(サッシ)を外側から覆う構成であるため、窓枠の温度上昇を促進させる建具となる。火災発生時において、窓枠における急激な温度上昇は、窓枠からのガラスの脱落や窓枠の破損を招き、防災の観点においては問題である。
【0006】
本発明は、通常においては面格子としての基本性能を発揮する構造を有すると共に、屋内における火災発生時においては、窓枠における急激な温度上昇を抑制することが可能な面格子を提供することであり、信頼性の高い面格子取付け構造を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様の面格子取付け構造は、
窓枠と、
前記窓枠に取り付けられる面格子と、
前記面格子を前記窓枠の下部に接合するための下部ブラケットと、
前記面格子を前記窓枠の上部に接合するための上部ブラケットと、を備え、
前記下部ブラケットは、前記面格子を前記窓枠に対して回動可能に取り付ける構成を有し、
前記上部ブラケットは、前記窓枠に固定するために前記窓枠の辺を挟着する挟着機構と、前記面格子に固定するための螺合機構と、前記螺合機構における接合部分を引き離すように配設された引き離し機構とを有し、
前記螺合機構は、熱可塑性樹脂により形成された樹脂ワッシャと、前記上部ブラケットに形成された貫通孔と前記樹脂ワッシャとを貫通して、前記面格子に前記上部ブラケットを固定する螺合部材とを、を含み、
前記窓枠の周囲温度が所定温度に達したとき、前記樹脂ワッシャが溶融して、前記螺合部材が前記樹脂ワッシャから外れ、前記面格子の上部が前記窓枠から離れて、前記面格子が前記下部ブラケットを中心に回動するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通常においては面格子としての基本性能を発揮する構造を有し、火災発生時においては窓枠における急激な温度上昇を抑制できる信頼性の高い面格子を窓枠に設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る実施の形態1における面格子の取付け構造を示す縦断面図
図2】実施の形態1における面格子を屋内側から見た内観図
図3】実施の形態1における面格子が窓枠に取り付けられた状態を示す平面断面図
図4】実施の形態1において、窓枠に対して下部ブラケットにより面格子が取り付けられた状態を示す斜視図
図5】実施の形態1において、窓枠に対して下部ブラケットにより面格子が取り付けられた状態を示す斜視図
図6】実施の形態1の下部ブラケットにおいて、第1ブラケットおよび第2ブラケットを平面視したときの断面図
図7】実施の形態1の下部ブラケットにおいて、第1ブラケットおよび第2ブラケットを平面視したときの断面図
図8】実施の形態1の下部ブラケットにおいて、第1ブラケットおよび第2ブラケットを平面視したときの断面図
図9】実施の形態1において、窓枠に対して上部ブラケットにより面格子が取り付けられた状態を示す斜視図
図10】実施の形態1において、窓枠に対して上部ブラケットにより面格子が取り付けられた状態を示す斜視図
図11】実施の形態1において、窓枠に対して上部ブラケットにより面格子が取り付けられた状態を示す斜視図
図12】実施の形態1の上部ブラケットにおいて、第1ブラケットおよび第2ブラケットを平面視したときの断面図
図13】実施の形態1において、上部ブラケットにおける第3ブラケットと面格子との取付け部分を拡大して示す断面図
図14】実施の形態1において、上部ブラケットにおける第3ブラケットと面格子との取付け部分を拡大して示す断面図
図15】実施の形態1において、面格子が窓枠に固定された上部ブラケットから外れて、面格子が窓枠に対して所定距離を有して保持された状態を示す斜視図
図16】実施の形態1において、面格子が窓枠に固定された上部ブラケットから外れて、面格子が窓枠に対して所定距離を有して保持された状態を示す斜視図
図17】実施の形態1において、面格子が窓枠に固定された上部ブラケットから外れて、面格子が窓枠に対して所定距離を有して保持された状態を示す斜視図
図18】本発明の面格子取付け構造が、火災発生時の高温状況下において面格子が窓枠から外れて上方が開放された状態で保持される動作を模式的に示した説明図
図19】本発明の面格子取付け構造が、火災発生時の高温状況下において面格子が窓枠から外れて上方が開放された状態で保持される動作を模式的に示した説明図
図20】本発明の面格子取付け構造において、火災発生時の高温状況下において面格子が窓枠から外れて上方が開放された状態で保持される動作を模式的に示した説明図
図21】本発明の面格子取付け構造において、窓枠に設けた網戸を外す場合と、火災発生時の場合とにおける動きを示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施の形態として窓枠としてのアルミサッシに面格子を取り付けるための面格子取付け構造について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本発明の面格子の取付け構造は、以下の実施の形態に記載した面格子の取付け構造の構成に限定されるものではなく、以下の実施の形態において説明する技術的特徴を有する技術的思想と同等の技術に基づく取付け構造の構成を含むものである。
【0011】
また、以下の実施の形態において示す数値、形状、構成、ステップ(工程、モード)、およびステップの順序などは、一例を示すものであり、発明を本発明の内容に限定するものではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、各実施の形態においては、同じ要素には同じ符号を付して、説明を省略する場合がある。また、図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。
【0012】
先ず始めに、本発明の面格子取付け構造における各種態様を例示する。
本発明に係る第1の態様の面格子取付け構造は、
窓枠と、
前記窓枠に取り付けられる面格子と、
前記面格子を前記窓枠の下部に接合するための下部ブラケットと、
前記面格子を前記窓枠の上部に接合するための上部ブラケットと、を備え、
前記下部ブラケットは、前記面格子を前記窓枠に対して回動可能に取り付ける構成を有し、
前記上部ブラケットは、前記窓枠に固定するために前記窓枠の辺を挟着する挟着機構と、前記面格子に固定するための螺合機構と、前記螺合機構における接合部分を引き離すように配設された引き離し機構とを有し、
前記螺合機構は、熱可塑性樹脂により形成された樹脂ワッシャと、前記上部ブラケットに形成された貫通孔と前記樹脂ワッシャとを貫通して、前記面格子に前記上部ブラケットを固定する螺合部材とを、を含み、
前記窓枠の周囲温度が所定温度に達したとき、前記樹脂ワッシャが溶融して、前記螺合部材が前記樹脂ワッシャから外れ、前記面格子の上部が前記窓枠から離れて、前記面格子が前記下部ブラケットを中心に回動するように構成されている。
【0013】
本発明に係る第2の態様の面格子取付け構造は、前記の第1の態様において、前記上部ブラケットが、前記面格子の上部が前記窓枠から離れるように回動したとき、前記面格子を前記窓枠から所定距離を有して保持するアーム部を備える構成としてもよい。
【0014】
本発明に係る第3の態様の面格子取付け構造は、前記の第1または第2の態様において、前記引き離し機構が、前記面格子に形成された縦溝に沿って移動可能に構成されてもよい。
【0015】
本発明に係る第4の態様の面格子取付け構造は、前記の第3の態様において、前記螺合部材が、前記面格子に形成された縦溝の裏側に配設された裏板と、前記樹脂ワッシャおよび前記上部ブラケットの貫通孔を通り、前記面格子に形成された縦溝を介して前記裏板に接合される面格子固定ネジとを含み、前記面格子固定ネジを前記裏板に螺合することにより、前記上部ブラケットを前記面格子に固定するように構成されてもよい。
【0016】
本発明に係る第5の態様の面格子取付け構造は、前記の第4の態様において、前記引き離し機構が、前記螺合機構の接合部分に対して引き離す方向に付勢力を発生させる付勢部材を備える構成としてもよい。
【0017】
本発明に係る第6の態様の面格子取付け構造は、前記の第5の態様において、前記引き離し機構が、楔プレートを含み、前記楔プレートの先端が前記螺合機構における前記裏板と前記面格子との間に当接して、前記楔プレートが前記裏板と前記面格子との間を引き離すように前記付勢部材の付勢力が加わるように構成されてもよい。
【0018】
本発明に係る第7の態様の面格子取付け構造は、前記の第6の態様において、前記楔プレートの先端部分が二股に分かれた二叉部を有し、
前記窓枠の周囲温度が所定温度に達して、前記樹脂ワッシャが溶融したとき、前記二叉部が前記付勢部材の付勢力により前記裏板と前記面格子との間に入り、前記螺合部材が前記樹脂ワッシャから外れて、前記面格子の上部が前記窓枠から離れるよう構成されてもよい。
【0019】
本発明に係る第8の態様の面格子取付け構造は、前記の第7の態様において、前記二叉部が湾曲部を有し、前記二叉部が前記付勢部材の付勢力により前記裏板と前記面格子との間に入り、前記二叉部が前記裏板に接合された前記面格子固定ネジの両側に配置され、前記湾曲部が前記裏板を前記面格子からさらに引き離すように構成されてもよい。
【0020】
本発明に係る第9の態様の面格子取付け構造は、前記の第1から第8の態様におけるいずれかの態様において、前記下部ブラケットが、前記面格子を前記窓枠の下部から脱着可能に構成され、前記面格子の下側が前記窓枠から離れるように構成されてもよい。
【0021】
本発明に係る第10の態様の面格子取付け構造は、前記の第9の態様において、前記下部ブラケットが前記面格子から外されたとき、前記上部ブラケットが前記面格子の下側を開放するよう回動可能な構成を有してもよい。
【0022】
以下、本発明に係る面格子取付け構造に関して、例示としての実施の形態を添付の図面を参照しつつ説明する。
【0023】
《実施の形態1》
まず、本発明に係る実施の形態1の面格子取付け構造について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施の形態1における面格子取付け構造を示す縦断面図であり、面格子6が引違い窓4のための窓枠を構成する建材であるサッシ2に取り付けられた状態を模式的に示す断面図である。図1において、引違い窓4の右側が屋内側であり、面格子6の左側が屋外側となる。図1に示すように、面格子6には複数の細長い羽根板(以下、ルーパーと称す)7が水平方向を長手方向として上下方向に並設されており、それぞれのルーパー7が連動して水平方向の軸を中心に回動可能な構造を有する。
【0024】
図2は、面格子6を屋内側から見た内観図であり、窓枠2に取り付けられる前の状態を示している。なお、図2においては、ルーパー7は全閉した状態を示している。図2に示すように、面格子6にはサッシ2に取り付けるために、面格子6の下部両側に設けた下部ブラケット10と、面格子6の上部両側に設けた上部ブラケット12とを備えている。これらの下部ブラケット10および上部ブラケット12が、窓枠となるサッシ2に対する面格子6の取付け構造8を構成している。即ち、実施の形態1における面格子6は、四カ所において、取付け構造8によりサッシ2に固定される構成である。
【0025】
図3は、面格子6がサッシ2に取り付けられた状態を示す平面断面図であり、主要な部分を模式的に示している。図3においては、下側が屋内側であり、上側が屋外側である。図3に示すように、面格子6は、両側の取付け構造8(下部ブラケット10、上部ブラケット12)を介してサッシ2に確実に固定される。実施の形態1における取付け構造8における下部ブラケット10および上部ブラケット12の構造および取付け方法については以下に詳述する。
【0026】
<下部ブラケット10>
まず、取付け構造8における下部ブラケット10の構造について説明する。図4および図5は、サッシ2に対して下部ブラケット10により面格子6が取り付けられた状態を示す斜視図である。図4は、面格子6およびサッシ2を屋内側の上側から見た内観側の斜視図である。図5は、面格子6およびサッシ2を屋外側の上側から見た外観側の斜視図である。
【0027】
下部ブラケット10は、第1ブラケット14と、第2ブラケット16と、第3ブラケット18と、を備える。第1ブラケット14と第2ブラケット16は、協働してサッシ2の辺2aを挟着するように構成されている。第3ブラケット18は、面格子6に固定される構成を有し、サッシ2に固定された第1ブラケット14に対しては回動可能に接合される構成である。
【0028】
[サッシ2に対する固定:サッシ側ブラケット]
下部ブラケット10における第1ブラケット14および第2ブラケット16は、サッシ2において上下に延設された辺2a(図4参照)を両側から挟んで固定するために設けられた板状の部材である。第1ブラケット14と第2ブラケット16は互いに隣接して、一部が重なるように配置されており、サッシ2の辺2aを両側から圧着して固定する。第1ブラケット14および第2ブラケット16は「サッシ側ブラケット」と称してもよい。
【0029】
図6は、第1ブラケット14および第2ブラケット16を平面視したときの断面図である。図6に示すように、第1ブラケット14および第2ブラケット16は屈曲した形状を有しており、断面がL字状の部分が重なるように配設された構成である。
【0030】
以下、第1ブラケット14および第2ブラケット16における屈曲部を境として、それぞれの部分に符号を付けて、それぞれの機能について説明する。第1ブラケット14は、第1板状部14aと、第2板状部14bと、第3板状部14cと、第4板状部14dとを含む。第2ブラケット16は、第1板状部16aと、第2板状部16bとを含む。
【0031】
第1ブラケット14における第1板状部14aと第2板状部14bとにより、平面視の断面がL字状に略直角に屈曲して構成され、第2ブラケット16における第1板状部16aと第2板状部16bとにより、同様に平面視の断面がL字状に略直角に屈曲して構成されており、それぞれが対向するように配置されている。第1ブラケット14の第1板状部14aと、第2ブラケット16の第1板状部16aとは締め付けネジ38により接合するよう構成されている。締め付けネジ38は、第1ブラケット14の第1板状部14aに形成された貫通孔を挿通し、第2ブラケット16の第1板状部16aに形成された雌ネジに螺合する構成である。なお、締め付けネジ38のネジ部分が挿通する第1板状部14aの貫通孔は、締め付けネジ38の頭部の直径より小さく形成されており、締め付けネジ38の頭部が第1板状部14aの貫通孔を通り抜けることはない。従って、締め付けネジ38を回動させることにより、第2ブラケット16が第1ブラケット14に対して実質的に近づくように移動(図6における下方向)する。なお、第1ブラケット14には位置規制突起30が形成されており、この位置規制突起30が第2ブラケット16に形成された位置規制孔31の内部を移動し、第2ブラケット16の第1ブラケット14に対する移動方向が規制されている。
【0032】
図7は、「サッシ側ブラケット」である第1ブラケット14および第2ブラケット16をサッシ2の上下方向(略鉛直方向)に延設している辺2aに取り付けるときの状態を示しており、固着する直前の状態を示す横断面図である。図8は、第1ブラケット14および第2ブラケット16の「サッシ側ブラケット」によりサッシ2の辺2aを挟着して、「サッシ側ブラケット」がサッシ2に固定された状態を示す横断面図である。
【0033】
図6図8に示すように、第1ブラケット14における第3板状部14cと第4板状部14dとにより形成されるU字形状部分の隙間Cの間にサッシ2の辺2aが挿入配置され、第2ブラケット16の第2板状部16bにおける突出端部が圧着用先端部16cとしてサッシ2の辺2aに当接するように配置される。また、第2ブラケット16の圧着用先端部16cが当接するサッシ2の辺2aの背面側(図7および図8においては下側)を支持するように、第1ブラケット14における第4板状部14dの先端部分が突出して圧着用先端部14eとして形成されている。従って、サッシ2の辺2aは、第1ブラケット14における圧着用先端部14eと、第2ブラケット16における圧着用先端部16cとに挟まれるように配置される。
【0034】
前述のように、締め付けネジ38を回動(例えば、図7における矢印Rの方向に回動)することにより、第1ブラケット14の第1板状部14aと第2ブラケット16の第1板状部16aとの隙間Aが小さくなり、即ち、お互いの相対距離が短くなり、第2ブラケット16は第1ブラケット14に近づくように矢印B方向(図7参照)に移動する。このため、第2ブラケット16の圧着用先端部16cがサッシ2の辺2aに当接し、押し付けられる。この結果、第1ブラケット14の圧着用先端部14eと、第2ブラケット16の圧着用先端部16cとの間でサッシ2の辺2aが確実に挟着され、互いに強固に固定された状態となる。
【0035】
実施の形態1における圧着用先端部16cは、図5に示すように鋸歯状の圧着面を有する形状としてもよい。また、圧着用先端部16cに対向するように配置される第1ブラケット14における圧着用先端部14eにおいても、サッシ2の辺2aとの摩擦係数が高くなるように、例えば、凸凹面を有する構成としてもよい。なお、圧着用先端部14e、16cにおいては、サッシ2の表面に当接して圧着できる機能を有する構成であればよく、そのような機能を有する任意の形態を採用してもよい。例えば、それらの先端部にディッピング加工によりゴム部材を取り付けることで圧着用先端部として構成してもよい。
【0036】
上記のように、締め付けネジ38を回動させることにより、第2ブラケット16が第1ブラケット14に対して相対的に移動して、第1ブラケット14の圧着用先端部14eと第2ブラケット16の圧着用先端部16cとによりサッシ2において上下方向(略鉛直方向)に延びる辺2aを挟着する構成である。本発明の「サッシ側ブラケット」においては、上記の実施の形態1の構成に限定されるものではなく、各種接合機構を含む螺合機構の回動によりサッシの一部が挟着されて互いに確実に固定状態となる構成であればよい。
【0037】
なお、締め付けネジ38を回動して、第1ブラケット14と第2ブラケット16とを接合し、サッシ2に固定するための取付け作業は、第1ブラケット14の内側において屋内側から行える構成であり、締め付けネジ38に対する作業空間が確保されている。サッシ2における固定すべき辺2aが第1ブラケット14の外側(L字状の外側)から挿入される構成であり、第1ブラケット14の内側(L字状の内側)において締め付けネジ38を回動させるための作業空間が確保された構成となっている。このため、作業空間は取り付けるべきサッシ2の辺2aと干渉しない位置に形成されており、「サッシ側ブラケット」の取付け作業を容易なものとしている。
【0038】
[面格子6に対する固定:面格子側ブラケット]
図4および図5に示すように、下部ブラケット10における第3ブラケット18は、面格子6に取り付けられる板状の部材である。第3ブラケット18は「面格子側ブラケット」と称してもよい。第3ブラケット18である「面格子側ブラケット」は、前述の「サッシ側ブラケット」(第1ブラケット14および第2ブラケット16)に対して、回動可能に接合される。即ち、第3ブラケット18は、回転軸19(図5参照)を中心として、第1ブラケット14に回動可能である。
【0039】
第3ブラケット18は、図4に示すように、裏板20を介して面格子6に取り付けられる。裏板20は、面格子6に形成された縦溝22を介して内側に配置された板状の部材である。縦溝22は、面格子6の縦方向(上下方向)に沿って延びる溝であり、裏板20も縦方向(上下方向)に沿って延設されている。裏板20は、固定ネジ(蝶ネジ)24a、24bにより縦溝22の所定位置に固定される。裏板20は、縦溝22の開口の横幅よりも広い横幅を有しており、縦溝22を通り抜けて外側へ脱落することが防止されている。
【0040】
また、第3ブラケット18は、面格子固定ネジ25と固定ネジ(蝶ネジ)24bとにより裏板20に固定される。面格子固定ネジ25は、第3ブラケット18の貫通孔18aを挿通して、裏板20に形成された雌ネジに螺合している。面格子固定ネジ25が挿通する貫通孔18aの開口形状は、所謂、上下で孔の大きさが異なる瓢箪形状を有しており、面格子固定ネジ25の頭部より直径が小さい上側開口と、その頭部より直径が大きい下側開口とが上下に繋がった形状を有している。即ち、面格子固定ネジ25が貫通孔18aに係合した状態で第3ブラケット18を持ち上げることにより、面格子固定ネジ25の頭部が第3ブラケット18の貫通孔18aを通り抜けることが可能な状態となる。
【0041】
一方、面格子固定ネジ25の下側に設けられた固定ネジ24b(蝶ネジ)は、第3ブラケット18に形成された溝開口に配置され、裏板20に形成された雌ネジに螺合するように構成されている。第3ブラケット18に形成された溝開口は、下方側が開放された逆U字状の溝形状である。このため、固定ネジ24bを緩めて、面格子6を持ち上げることが可能であり、面格子固定ネジ25を貫通孔18aから外すことが可能となるため、面格子6を下部ブラケット10の「面格子側ブラケット」から容易に取り外すことが可能となる。
【0042】
上記のように、面格子6は第3ブラケット18である「面格子側ブラケット」に対して固定ネジ(24b、25)により取り外し可能に固定される構成を有すると共に、「面格子側ブラケット」は回転軸19を回転の中心として「サッシ側ブラケット」(第1ブラケット14および第2ブラケット16)に対して回転可能な構成を有する。
【0043】
なお、図4に示すように、「サッシ側ブラケット」(第1ブラケット14および第2ブラケット16)をサッシ2に固定するための2本の締め付けネジ38と、「面格子側ブラケット」(第3ブラケット18)を面格子6に固定するための2本の固定ネジ(24b、25)が、第1ブラケット14および第3ブラケット18における内側の空間において上下にずれた位置に配設されている。即ち、締め付けネジ38と固定ネジ(24b、25)は、上下にずれた位置において取付け作業を行う構成である。この結果、回転工具を用いてそれぞれのネジ(24b、25、38)を回転させる際に、それぞれのネジを回動させる作業空間が他の部材と干渉しないため、取付け作業性の向上が図られている。
【0044】
実施の形態1において用いる取付け構造8において用いるネジはSUSで形成されており、耐熱性、剛性を有する材料で構成されている。
【0045】
<上部ブラケット12>
次に、実施の形態1の面格子6の取付け構造8における上部ブラケット12について、その構造および取付け方法について詳述する。
【0046】
図9図11は、サッシ2に対して上部ブラケット12により面格子6が取り付けられた状態を示す斜視図である。図9は、面格子6およびサッシ2を屋外側の斜め上から見た斜視図である。図10は、面格子6およびサッシ2を屋内側の斜め下からサッシ側を見た斜視図である。図11は、面格子6およびサッシ2を屋内側の斜め上から面格子側を見た斜視図である。
【0047】
図9図11に示すように、上部ブラケット12におけるサッシ2に対する固定方法は、下部ブラケット10と同様の構成を有する挟着機構を用いてサッシ2の上下方向に延びる辺2aを挟着して固定する構成である。一方、上部ブラケット12における面格子6に対する固定方法は、下部ブラケット10と同様にネジを用いた螺合機構を用いる構成であるが、上部ブラケット12においては、火災発生時に面格子6が上部ブラケット12から自動的に外れるように引き離し機構が設けられている。上部ブラケット12は、サッシ2に固定するための挟着機構を構成する第1ブラケット50と第2ブラケット52、面格子6に固定するために樹脂ワッシャ70を用いた螺合機構、および火災発生時の高温時において動作する引き離し部80とアーム部90とを有する引き離し機構を備える構成である。実施の形態1の構成においては、火災発生時の高温状況下において、樹脂ワッシャ70を用いた螺合機構の接合部分に対して引き離し機構が作動して、螺合機構における接合部分を確実に引き離して、面格子6をサッシ2から所定距だけ離れた所定位置に保持する構成を有している。
【0048】
[サッシ2に対する固定:サッシ側ブラケット]
次に、上部ブラケット12においてサッシ2に固定するための挟着機構について説明する。上部ブラケット12における挟着機構は、前述の下部ブラケット10における第1ブラケット14および第2ブラケット16の「サッシ側ブラケット」によるサッシ2の辺2aに対する挟着機構と実質的に同様の構成である。上部ブラケット12における「サッシ側ブラケット」は、第1ブラケット50と第2ブラケット52が対応する。
【0049】
第1ブラケット50および第2ブラケット52は、サッシ2において上下に延設された辺2aを両側から挟んで固定するために設けられた板状の金属部材である。第1ブラケット50と第2ブラケット52は互いに隣接して、一部が重なるように配置されており、サッシ2の辺2aを挟着して固定する。
【0050】
図12は、第1ブラケット50および第2ブラケット52を平面視したときの断面図である。図12に示すように、第1ブラケット50および第2ブラケット52は屈曲した形状を有しており、断面がL字状の部分が重なるように配設された構成である。
【0051】
図12に示す上部ブラケット12における第1ブラケット50および第2ブラケット52の「サッシ側ブラケット」によるサッシ2に対する挟着構成および方法は、図6から図8において説明した下部ブラケット10における第1ブラケット14および第2ブラケット16の「サッシ側ブラケット」によるサッシ2に対する挟着構成および方法と同じである。なお、図12においては、上部ブラケット12が取り付けられるサッシ2を一点鎖線で示している。
【0052】
図12に示すように、第1ブラケット50における第3板状部50cと第4板状部50dとにより形成されるU字形状部分の隙間Cの間にサッシ2の辺2aが挿入配置され、第2ブラケット52における突出端部が圧着用先端部52cとしてサッシ2の辺2aに当接するように配置される。また、第2ブラケット52の圧着用先端部52cが当接するサッシ2の辺2aの背面側(図12おいては下側)を支持するように、第1ブラケット50における第4板状部50dの先端部分が突出して圧着用先端部50eが形成されている。従って、サッシ2の辺2aは、第1ブラケット50における圧着用先端部50eと、第2ブラケット52における圧着用先端部52cとに挟まれるように配置される。
【0053】
前述のように、締め付けネジ38を回動することにより、第1ブラケット50の第1板状部50aと第2ブラケット52の第1板状部52aとの隙間Aが小さくなり、即ち、お互いの相対距離が短くなり、第2ブラケット52は第1ブラケット50に近づくように矢印B方向に移動する。このため、第2ブラケット52の圧着用先端部52cがサッシ2の辺2aに当接し、押し付けられる。この結果、第1ブラケット50の第4板状部50dの圧着用先端部50eと、第2ブラケット52の圧着用先端部52cとの間でサッシ2の辺2aが確実に挟着され、互いに強固に固定された状態となる。
【0054】
なお、上部ブラケット12には、第1ブラケット50および第2ブラケット52と共に、第3ブラケット54が設けられており、この第3ブラケット54は、面格子6に対して固定される部材であり、火災発生時の高温状況下では面格子6に対して自動的に外れる構成を有している。また、第3ブラケット54は、第1ブラケット50に対しては回動軸65(図9参照)を中心として回動可能な構成を有し、下部ブラケット10を外したときに、面格子6の下側が開放可能となるように、面格子6が回動する構成である。
【0055】
[面格子6に対する固定:面格子側ブラケット]
図9に示すように、上部ブラケット12における第3ブラケット54は、面格子6に取り付けられる板状の金属部材である。実施の形態1において、第3ブラケット54は第1ブラケット50に対して回動可能な構成を有している。第3ブラケット54は「面格子側ブラケット」と称してもよい。なお、火災発生時の高温状況下では、後述するように、「面格子側ブラケット」が面格子6から自動的に外れる構成を有している。
【0056】
図13は、上部ブラケット12における「面格子側ブラケット」である第3ブラケット54と、面格子6との取付け部分を拡大して模式的に示す断面図である。図13に示すように、第3ブラケット54は、面格子固定ネジ60が裏板61に螺合することにより、樹脂ワッシャ70を介して面格子6に取り付けられる。裏板61は、面格子6に形成された縦溝22を介して内側に配置された板状の部材である。縦溝22は、面格子6の縦方向(上下方向)に沿って延びる溝であり、裏板61も縦方向(上下方向)に沿って所定長さを有して延設されている。実施の形態1の構成においては、面格子固定ネジ60および裏板61が螺合部材となる。なお、本発明における螺合部材としては、螺合状態で接合されるものを特定するものではなく、単に接合される部材なども含むものとする。
【0057】
第3ブラケット54は、2本の面格子固定ネジ60により樹脂ワッシャ70を介して面格子6と共に裏板61に固定される。裏板61は、縦溝22の開口の横幅よりも広い横幅を有しており、縦溝22から抜けて外側へ脱落することが防止されている。面格子固定ネジ60は、第3ブラケット54の貫通孔54aを挿通しており、裏板61に形成された雌ネジに螺合されている。
【0058】
図13に示すように、面格子固定ネジ60の頭部と第3ブラケット54との間には樹脂ワッシャ70が配設されている。樹脂ワッシャ70は、熱可塑性の樹脂で形成されており、平温時の状態では第3ブラケット54の貫通孔54aを通り抜けない形状を有している。樹脂ワッシャ70を形成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂が用いられ、高温度で溶融する材料が用いられる。なお、樹脂が溶融する温度としては、120℃以上、300℃以下の融点を有する樹脂が好ましく、特に、200℃以下の融点の樹脂材料が好ましい。発明者の実験においては、140℃~150℃でゲル化する熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレンなど)を材料として、厚み3mmの樹脂ワッシャ70を用いて好ましい結果を得た。樹脂ワッシャ70としては、所定の温度でゲル化して、第3ブラケット54の貫通孔54aを通り抜ける構成であると共に、上部ブラケット12における面格子側ブラケットとして平温時は所定荷重に確実に耐える剛性を有する構成が必要である。実施の形態1における樹脂ワッシャ70としては、所定荷重に耐える剛性を確保するために、所定の厚み(例えば、2~5mm厚)として構成した。樹脂ワッシャ70の構成および形状に関しては、第3ブラケット54の貫通孔54aの形状および大きさ、面格子6の荷重などの各種条件に応じて適切に設定される。
【0059】
なお、実施の形態1における第3ブラケット54の貫通孔54aは、横長の長孔形状であるため、樹脂ワッシャ70の直径が、第3ブラケット54の貫通孔54aの上下方向の開口長さより大きく設定されている。従って、面格子固定ネジ60を裏板61に螺合させて締め付けることにより、樹脂ワッシャ70と裏板61とにより第3ブラケット54および面格子6が挟着されて、第3ブラケット54が面格子6に確実に固定される。
【0060】
上記のように、平温時においては、上部ブラケット12における面格子側ブラケット(第3ブラケット54)およびサッシ側ブラケット(第1ブラケット50と第2ブラケット52)を用いて、面格子6がサッシ2に確実に固定された状態となる。一方、火災発生時の非常時である高温状況下では、樹脂ワッシャ70が溶融しゲル化して第3ブラケット54の貫通孔54aを通り抜け、面格子側ブラケットである第3ブラケット54が面格子6から外れる構成である。図14は、高温状況下で樹脂ワッシャ70がゲル化して第3ブラケット54の貫通孔54aを通り抜けて、上部ブラケット12が面格子6から離れた状態を模式的に示す断面図である。
【0061】
実施の形態1においては、樹脂ワッシャ70を熱可塑性樹脂で構成して、面格子側ブラケット(第3ブラケット54)を取り付けることにより、サッシ2を有する建物内部で火災が生じたときに、建物内部からの熱で樹脂ワッシャ70が溶融する。これにより、第3ブラケット54と面格子6との間の固定状態が外れて、面格子6がサッシ2から離れる方向に移動可能な状態となる。面格子6がサッシ2から離れるように移動することで、面格子6によるサッシ2の外側の閉鎖空間が開放され、建物内部の熱を外部に逃がすことができる。上記のようにして、サッシ2に取付け構造8を取り付ける場合であっても、火災発生時において、サッシ2に対する防火上の悪影響を与えないようにすることが可能となり、サッシ2の遮炎性能を維持することができる。
【0062】
実施の形態1における上部ブラケット12においては、高温状況下でゲル化した樹脂ワッシャ70が第3ブラケット54の貫通孔54aを確実に通り抜けて、面格子6が上部ブラケット12(サッシ2)から確実に引き離され、面格子6がサッシ2から確実に離れるように引き離し機構が設けられている。
【0063】
[引き離し機構]
上部ブラケット12における引き離し機構は、面格子6を上部ブラケット12の第3ブラケット54から直接的に引き離すための引き離し部80と、サッシ2から引き離された面格子6をサッシ2から所定距離を有して保持し、面格子6の上部空間を開放するアーム部90とを備える。
【0064】
[引き離し部80の構成]
引き離し部80は、面格子6を上部ブラケット12の第3ブラケット54から直接的に引き離すための楔プレート81を有している。図10に示すように、楔プレート81は、付勢部材82、例えば、引っ張りバネにより上方に付勢力が常時加わっており、楔プレート81の上端が、第3ブラケット54を固定するために面格子6の裏側に設けられた裏板61の下端部61aと、面格子6の縦溝22の両側の溝フレーム6aとの間に当接している。即ち、楔プレート81においては、裏板61と面格子6の溝フレーム6aとの間に入り込み、裏板61を第3ブラケット54から引き離すように、常時付勢力が働いている。
【0065】
楔プレート81の上端部分は、二叉に分かれた二叉部81aが形成されており、面格子6の縦溝22の両側の溝フレーム6aに対応している。また、裏板61の下端部61aは、面格子6から持ち上がるように斜めに形成されており、楔プレート81の上端である二叉部81aの先端が確実に当接するよう構成されている。
【0066】
図10に示したように、楔プレート81においては、二叉部81aにはその中間部分が湾曲した湾曲部81bが形成されている。火災発生時の高温状況下において二叉部81aが裏板61と溝フレーム6aとの間に挿入されていく場合、湾曲部81bが裏板61と溝フレーム6aとの間をより引き離すように機能する。また、楔プレート81において、裏板61と溝フレーム6aとの間の隙間に挿入される部分が二叉部81aに形成されているため、第3ブラケット54を固定するために裏板61に螺合された面格子固定ネジ60に干渉することがなく、面格子固定ネジ60の両側に挿入される。なお、二叉部81aの先端をくさび状に形成して、僅かな隙間でも確実に挿入される形状として、前述のように、火災発生時の高温状況下において樹脂ワッシャ70が溶融したとき、楔プレート81が僅かな隙間に入り込み、直ぐに引き離し動作を行う構成となる。
【0067】
楔プレート81が上方への付勢力が常時働くように、楔プレート81には付勢部材82、例えば、引っ張りバネが設けられている。付勢部材82の一端が楔プレート81の下端部81cに固定され、付勢部材82の他端が、後述するアーム部90を面格子6に対して摺動可能に固定するためのアーム接合ネジ93c(図10参照)に固定されている。アーム接合ネジ93cは、アーム部90を面格子6に摺動可能に固定するための表板93aと裏板93bとに螺合している。表板93aと裏板93bは、アーム接合ネジ93cが螺合された状態で面格子6の縦溝22に沿って上下に摺動するように、溝フレーム6aに取り付けられている。
【0068】
[アーム部90の構成]
上部ブラケット12の引き離し機構におけるアーム部90は、サッシ2から引き離された面格子6をサッシ2から所定距離を有して、面格子6の上方が開放されるように、面格子6をサッシ2におり保持するために設けられている。
【0069】
図15図17は、面格子6がサッシ2に固定された上部ブラケット12から外れて、面格子6がサッシ2に対して所定距離を有して保持された状態を示す斜視図である。図15は、面格子6およびサッシ2を屋外側の斜め上から見た斜視図である。図16は、面格子6およびサッシ2を屋内側の斜め下からサッシ側を見た斜視図である。図17は、面格子6およびサッシ2を屋内側の斜め上から面格子側を見た斜視図である。
【0070】
アーム部90は、第1アーム91と第2アーム92とアーム固定部93とを備える。第1アーム91の一端は、上部ブラケット12の第1ブラケット50に回動可能に接合され、第1アーム91の他端には、第2アーム92に対して摺動可能および回動可能に接合するための摺動軸91aが形成されている。摺動軸91aは、第2アーム92の一端に形成された長孔92aと係合しており、第1アーム91の他端が第2アーム92の一端に対して摺動可能および回動可能な接合状態を構成している。第2アーム92の他端は、面格子6に固定されたアーム固定部93における表板93aに回動可能に接合されている。第1ブラケット50と第1アーム91との間の回動面と、第1アーム91と第2アーム92との間の回動面と、第2アーム92とアーム固定部93の表板93aとの間の回動面は、実質的に同じ平面、若しくは実質的に平行な平面であり、面格子6の上方がサッシ2から離れる方向への回動面である。このため、火災発生時における高温状況下において、アーム部90における回動動作は素早く滑らかに行われる構成であり、面格子6がサッシ2に固定された上部ブラケット12から外れたとき、瞬時に所定距離を有して保持される状態となる。
【0071】
アーム固定部93は、面格子6の縦溝22の両側を形成する溝フレーム6aのサッシ側である表側に配設される表板93aと、面格子6の内側(裏側)に配設される裏板93bと、表板93aと裏板93bとを所定距離を有して接合し、表板93aと裏板93bが溝フレーム6aに沿って上下に摺動可能に接合するアーム接合ネジ93cと、を備える。
【0072】
図9及び図15等に示すように、表板93aにおいてサッシ側に突設された部位に第2アーム92の上端部92bが回動可能に接合される構成である。また、表板93aと裏板93bとを溝フレーム6aを介して接合するアーム接合ネジ93cにおける面格子6の裏側の突出端(図16参照)には、前述の付勢部材82である引っ張りバネの一端が固定されている。
【0073】
従って、付勢部材82の一端がアーム接合ネジ93cに固定され、付勢部材82の他端が楔フレーム81の下端部81cに固定されている。この結果、面格子6がサッシ2に取り付けられるとき、アーム部90の第1アーム91と第2アーム92が折りたたまれる状態となるため、第2アーム92の上端部92bが面格子6の縦溝22に沿って上方に移動する(図11参照)。第2アーム92の上端部92bが上方へ移動すると、第2アーム92の上端部92bに接合されたアーム固定部93の表板9aと共にアーム接合ネジ93cが上方へ移動する。アーム接合ネジ93cが上方へ移動すると、付勢部材82の一端が引き上げられて付勢部材82は伸長状態となる。前述したように、面格子固定ネジ60により固定された裏板61の下端部61aに楔プレート81の上端である二叉部81aの先端が当接しているため、付勢部材82の伸長状態による上向きの付勢力が楔フレーム81に加えられた状態が維持される。
【0074】
上記のように、引き離し機構には、引き離し部80とアーム部90とを備えているため、図15図17に示したように、火災発生時の高温状況下において樹脂ワッシャ70が溶融したとき(図14参照)、引き離し部80の楔プレート81の二叉部81aの先端が裏板61と溝フレーム6aとの隙間に入り込み、面格子6を上部ブラケット12(サッシ2)から直接的に引き離す動作を行う。この結果、サッシ2から引き離された面格子6は、アーム部90によりサッシ2から所定距離を有して、面格子6の上部が開放した状態で保持される。
【0075】
<火災発生時における面格子6のサッシ2からの開放動作>
前述のように、下部ブラケット10および上部ブラケット12を備える取付け構造8を用いて、サッシ2に対して面格子6を取り付けることにより、例えば、屋内で火災が発生したときの高温状況下で面格子6がサッシ2から自動的に外れて、面格子6がサッシ2から所定距離を有して上方が開放された状態で確実に保持された状態となる。
【0076】
図18図20は、火災発生時の高温状況下において面格子6がサッシ2から外れて上方が開放された状態で保持される動作を模式的に示した説明図である。図18は、火災発生時の高温状況下における上部ブラケット12の動作を模式的に示しており、(a)が平温時(通常時)の状態を示し、(b)が火災発生時において樹脂ワッシャ70が熱により溶融してゲル化し、楔プレート81が上方へ挿入されたときの状態を示し、(c)が面格子6の開放状態を示している。図19は、上部ブラケット12における引き離し部80の動作を模式的に示しており、(a)が平温時(通常時)の状態を示し、(b)が火災発生時において樹脂ワッシャ70がゲル化して楔プレート81の二叉部81aが面格子固定ネジ60の両側に挿入されたときの状態を示し、(c)は面格子6がサッシ2から外れたときの状態を示している。図20は、火災発生時の高温状況下における下部ブラケット10および上部ブラケット12の動作を含む面格子6の開放動作を模式的に示しており、(a)が平温時(通常時)の状態を示し、(b)が火災発生時の状態を示し、(c)が面格子6の上方が開放されたときの状態を示している。
【0077】
図18図20に示すように、サッシ2を有する建物内部において火災が発生し、その熱によって面格子6をサッシ2に固定するために用いた取付け構造8の樹脂ワッシャ70が溶融する(図14参照)。下部ブラケット10および上部ブラケット12における樹脂ワッシャ70以外の構成はSUSで構成されており、耐熱性を有し、樹脂ワッシャ70が溶融する温度(例えば、140℃~150℃)では外れるようなことはない。
【0078】
樹脂ワッシャ70が溶融し、ゲル化することにより、第3ブラケット54と裏板61との接合状態が緩くなる。このように樹脂ワッシャ70がゲル化し、接合状態が緩くなったとき、楔プレート81の二叉部81aの先端が、付勢部材82(引っ張りバネ)の付勢力により裏板61と面格子6との間に入り込む。この結果、楔プレート81の二叉部81aが面格子固定ネジ60の両側に挿入されることになり、湾曲部81bにより裏板61が面格子6から離されて、面格子6が第3ブラケット54から完全に引き離された状態となる。
【0079】
面格子6が第3ブラケット54から引き離されたとき、図18図20における(c)に示すように、面格子6の上部は重力によりサッシ2から離れる方向に移動する。このとき、アーム部90における第1アーム91の摺動軸91aと第2アーム92の長孔92aとの接合位置において回動することにより、第1アーム91と第2アーム92との成す角度が広がり、面格子6の上部がサッシ2から離れるように回動する。このため、面格子6によるサッシ2の屋外側に対する閉鎖状態が解放された状態となり、サッシ2を有する建物内部の熱を面格子6の上部から上方に逃がす状態となる。この結果、サッシ2に対して急激に高温度化となる状況を防止することが可能となり、サッシ2の破損、ガラスの脱落などの事故の発生を抑制することが可能となる。
【0080】
なお、実施の形態1の面格子6の取付け構造8においては、図4に示したように、下部ブラケット10の第3ブラケット18は、固定ネジ(24b、25)により面格子6に接合される構造であり、容易に脱着可能な構成を有している。このため、図21の(a)に示すように、窓枠(サッシ2)に設けた網戸95などを外すときに、面格子6を下部ブラケット10から取り外すことにより、面格子6の下側が開放状態となり、面格子6の下側から網戸95などを容易に交換することが可能となる。なお、このように面格子6の下側が開放状態となるように、上部ブラケット12は第1ブラケット50と第3ブラケット54が回動軸65を中心として回動可能な構成である。
【0081】
一方、火災発生時においては、自動的に面格子6がサッシ2か離れて上部が開放状態となるように、上部ブラケット12に樹脂ワッシャ70を用いた特別な機構が設けられているため、建物内部の熱を面格子6の上部から上方に確実に逃がす構成となる(図21の(b)参照)。
【0082】
上記のように、実施の形態1の面格子の取付け構造8を用いて、サッシ2に対して面格子6を取り付けることにより、面格子6が取り付けられた建物において火災が起こった場合、取付け構造8における樹脂ワッシャ70が熱で溶けて螺合機構が外れると共に、そのときの螺合機構に対して強制的に引き離すように引き離し機構が機能するように構成されている。このため、第3ブラケット54と面格子6との間の固定状態が解放され、面格子6は、サッシ2から外れて、サッシ2から確実に離れる方向に回動する。このように、火災発生時に面格子6を自動的に回動させて、サッシ2との間の上部空間を開放することで、建物内部の熱を外に逃がすことが可能となる。このように、サッシ2に対して、その外側を覆うように面格子6を取り付けた場合であっても、サッシ2に対して防火上の悪影響を与えない構成とすることができると共に、サッシ2における遮炎性能を維持することができる。
【0083】
なお、実施の形態1の構成においては、上部ブラケット(12)が窓枠(サッシ2)に対して挟着機構により接合し、面格子(6)に対して樹脂ワッシャ(70)を用いた螺合機構により接合して、その螺合機構の接合部分に対して切り離し機構を設けた構成について説明したが、変形例としては、上部ブラケット(12)が面格子(6)に対して挟着機構により接合し、窓枠(サッシ2)に対して樹脂ワッシャ(70)を用いた螺合機構を設け、その螺合機構の接合部分に対して切り離し機構を設けた構成とすることも可能であり、同様の効果を奏する。
【0084】
また、実施の形態1の構成においては、ネジを用いて接合する螺合機構を用いた構成について説明したが、本発明においてはネジを用いた接合に限定されるものではなく、使用する箇所、使用する目的、使用する部材の構成などに応じて、ネジ以外の各種接合部材を用いることが可能である。
【0085】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。また、各実施形態における要素の組合せや順序の変化は、本開示の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【0086】
なお、前記の実施の形態および変形例のうちの任意の実施の形態あるいは変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの形態が有する効果を奏するものとなる。
【0087】
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明および添付の図面を開示した。よって、詳細な説明および添付の図面に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須でない構成要素が含まれることがある。したがって、それらの必須でない構成要素が、詳細な説明および添付の図面に記載されているからといって、直ちに、それらの必須ではない構成要素に対して必須であると認定されるべきではない。
【0088】
上記の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置換、付加、省略などを行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の面格子の取付け構造は、窓枠に対して面格子を確実に取り付けることができる構成であると共に、火災発生時において面格子が自動的に外れて、窓枠と面格子との上部空間が開放されて、建物内部の熱を外部に確実に逃がすことが可能な構成であり、窓枠に面格子が取り付けられる建物において有用なものとなる。
【符号の説明】
【0090】
2 サッシ(窓枠)
2a 辺
4 引き違い窓
6 面格子
6a 溝フレーム
7 ルーパー
8 取付け構造
10 下部ブラケット
12 上部ブラケット
14 第1ブラケット
14a 第1板状部
14b 第2板状部
14c 第3板状部
14d 第4板状部
14e 圧着用先端部
16 第2ブラケット
16a 第1板状部
16b 第2板状部
16c 圧着用先端部
18 第3ブラケット
18a 貫通孔
19 回転軸
20 裏板
22 縦溝
24a 固定ネジ(蝶ネジ)
24b 固定ネジ(蝶ネジ)
25 固定ネジ
30 位置規制突起
31 位置規制孔
38 締め付けネジ
50 第1ブラケット
50a 第1板状部
50b 第2板状部
50c 第3板状部
50d 第4板状部
50e 圧着用先端部
52 第2ブラケット
52a 第1板状部
52b 第2板状部
52c 圧着用先端部
54 第3ブラケット
54a 貫通孔
60 面格子固定ネジ
61 裏板
61a 下端部
65 回動軸
70 樹脂ワッシャ
80 引き離し部
81 楔プレート
81a 二叉部
81b 湾曲部
81c 下端部
82 付勢部材(引っ張りバネ)
90 アーム部
91 第1アーム
91a 摺動軸
92 第2アーム
92a 長孔(下端部)
92b 上端部
93 アーム固定部
93a 表板
93b 裏板
93c アーム接合ネジ
95 網戸
図1
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