(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038361
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】下地処理方法及び下地処理装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/36 20140101AFI20220303BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20220303BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20220303BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20220303BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20220303BHJP
【FI】
B23K26/36
G01N21/88 Z
B23K26/08 H
B01J19/12 B
B23K26/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142825
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 浩之
(72)【発明者】
【氏名】木村 和喜
(72)【発明者】
【氏名】藤井 茂登
【テーマコード(参考)】
2G051
4E168
4G075
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB07
2G051AB12
2G051AC19
2G051AC21
2G051CA04
2G051EA17
2G051EC01
4E168AD18
4E168CA06
4E168CB03
4E168CB08
4E168CB22
4E168DA32
4E168EA15
4E168EA17
4G075AA30
4G075AA61
4G075AA63
4G075BB10
4G075CA36
4G075DA01
4G075EB31
(57)【要約】
【課題】 従来定性的に評価していた品質レベルを定量的に評価することにより、要求された品質レベルに応じて、レーザー照射条件を適切に設定して、下地処理の品質を向上させることができるようにした下地処理方法及び下地処理装置を提供する。
【解決手段】 対象物1にレーザー光を照射するレーザー光照射装置10をマニピュレータロボット20により保持して、上記対象物1の処理対象領域を含む作業領域内で移動させ、上記レーザー光照射装置10により上記対象物1にレーザー光を照射して下地処理を行い、統括制御装置50により、下地処理後の上記対象物1の表面状況を測色装置30による測色情報に基づいて所定の処理品質以上であるか否か判定し、処理品質が不十分と判定された処理対象領域に対し、上記レーザー光照射装置10により再度レーザー照射を実施する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の付着物を除去あるいは対象物表面の状態を変化させる下地処理方法であって、
上記対象物にレーザー光照射装置によりレーザー光を照射して下地処理を行う下地処理工程と、
下地処理後の上記対象物の表面状況を物理測色手段による測色情報に基づいて所定の処理品質以上であるか否か判定する処理品質判定工程と、
を有し、
上記処理品質判定工程において、処理品質が不十分と判定された処理対象領域に対し、上記レーザー光照射装置により再度レーザー照射を実施することで、対象物全体に対し所定の下地処理品質を有する下地処理を行うことを特徴とする下地処理方法。
【請求項2】
上記下地処理工程では、上記対象物にレーザー光を照射するレーザー光照射装置をロボットにより保持して、上記対象物の処理対象領域を含む作業領域内で移動させ、上記レーザー光照射装置により上記対象物にレーザー光を照射して下地処理を行うことを特徴とする請求項1記載の下地処理方法。
【請求項3】
上記処理品質判定工程では、日本産業規格JIS Z 8722の6.2(光電色彩計)に規定された光電色彩計により得られる三刺激値の一つである明度Yの値により処理品質を判定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の下地処理方法。
【請求項4】
上記処理品質判定工程では、日本産業規格JIS Z 2358:2019(レーザー照射処理面の除せい(錆)度測定方法)に規定された色見本番号1号乃至5号の各色見本のカラーパッチを備えるカラーチャートと下地処理後の上記対象物の表面をカラー撮像し、上記カラー撮像により得られるカラー画像情報に基づいて上記カラーチャートの各色見本のカラーパッチと上記対象物の表面の色差を検出して、処理品質を判定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の下地処理方法。
【請求項5】
上記処理品質判定工程において上記物理測色手段により得られる上記対象物の表面の測色情報に基づいて、上記対象物に照射するレーザー密度を修正することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の下地処理方法。
【請求項6】
上記下地処理工程において、上記作業領域内の上記対象物の処理対象領域を複数の領域に分割して、分割領域毎に順次下地処理を行い、
上記処理品質判定工程において上記物理測色手段により得られる下地処理済みの分割領域における測色情報に基づいて、当該分割領域および/または次の分割領域に照射するレーザー密度を修正することを特徴とする請求項5に記載の下地処理方法。
【請求項7】
上記処理品質判定工程において、分割された領域をあらかじめ指定した個数あるいは範囲に基づいて集約し、該下地処理済みの集約された分割要素群内の代表要素における上記物理測色手段により得られる測色情報に基づいて、当該分割要素群および/または次の集約された分割要素群に照射するレーザー密度を修正することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の下地処理方法。
【請求項8】
上記処理品質判定工程において上記物理測色手段により得られる上記対象物の表面の測色情報に基づく処理品質評価レベルを多段階に分類し、目標評価レベルを満足するためのレーザー光のレーザー密度を処理対象物の材質、処理要求品質、および処理時間の少なくとも一つに応じて設定する関数あるいはテーブル値に基づき、レーザー照射距離を設定することを特徴とする請求項5乃至請求項7の何れか1項に記載の下地処理方法。
【請求項9】
レーザー光照射装置と、
上記レーザー光照射装置を保持し、対象物の処理対象領域を含む作業領域内で上記レーザー光照射装置を移動させるロボットと、
対象物の処理対象領域に設置されるか、あるいは作業領域内において、上記ロボットによりレーザー光照射装置とともに保持され共に移動し、上記対象物の表面状況を示す測色情報を取得する物理測色手段と、
上記レーザー光照射装置と上記ロボットの動作を制御する制御装置と、
を備え、
上記制御装置は、下地処理後の上記対象物の表面状況を示す測色情報を上記物理測色手段により取得し、測色情報に基づいて所定の処理品質以上であるか否か判定し、処理品質が不十分と判定された部分において、上記レーザー光照射装置により再度レーザー照射を実施することで、対象物全体に対し所定の下地処理品質を有する下地処理を行うことを特徴とする下地処理装置。
【請求項10】
上記物理測色手段は、日本産業規格JIS Z 8722の6.2(光電色彩計)に規定された光電色彩計であり、
上記制御装置は、上記光電色彩計により得られる三刺激値の一つである明度Yの値により処理品質を判定することを特徴とする請求項9記載の下地処理装置。
【請求項11】
上記物理測色手段は、カラー撮像手段であり、日本産業規格JIS Z 2358:2019(レーザー照射処理面の除せい(錆)度測定方法)に規定された色見本番号1号乃至5号の各色見本のカラーパッチを備えるカラーチャートとともに下地処理後の上記対象物の表面をカラー撮像し、
上記制御装置は、上記カラー撮像手段により得られるカラー画像情報に基づいて上記カラーチャートの各色見本のカラーパッチと上記対象物の表面の色差を検出して、処理品質を判定することを特徴とする請求項9記載の下地処理装置。
【請求項12】
上記制御装置は、上記物理測色手段により得られる上記対象物の表面の測色情報に基づいて、上記レーザー光照射装置により上記対象物に照射するレーザー密度を修正することを特徴とする請求項9乃至請求項11の何れか1項に記載の下地処理装置。
【請求項13】
上記作業領域内の上記対象物の処理対象領域を複数の領域に分割して、分割領域毎に順次下地処理を行い、下地処理済みの分割領域における測色情報に基づいて、上記レーザー光照射装置により当該分割領域および/または次の分割領域に照射するレーザー密度を修正することを特徴とする請求項12に記載の下地処理装置。
【請求項14】
上記物理測色手段による上記対象物の表面の測色データに基づく処理品質評価レベルを多段階に分類し、目標評価レベルを満足するためのレーザー光のレーザー密度を処理対象物の材質、処理要求品質、および処理時間の少なくとも一つに応じて設定する関数あるいはテーブルに基づき、上記レーザー光照射装置によるレーザー光の照射距離を設定することを特徴とする請求項12又は請求項13記載の下地処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー照射によって対象物の付着物を除去する下地処理方法及び下地処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、橋梁等の鋼構造物の表面には、用途や機能に応じて、塗装、舗装、ライニング、樹脂シート等、種々の被膜が形成される。かかる被膜は、風雨に晒されることが多く、時間の経過とともに、劣化したり酸化物や汚れ等が付着したりすることとなる。鉄部に付着している汚れやさびを確実に落とさずに、塗料を塗布しても確実に塗料が付着しない場合があるので、すぐに剥がれてしまうなど、本来の耐久性を発揮することができない。その為、下地処理作業を行い、確実に汚れやさびを除去して密着性を向上させる必要がある。そこで、かかる被膜等を有する構造物等では、定期的に洗浄や剥離(下地処理作業を含む)等の除去作業を行い、必要に応じて、被膜の塗り替えや張り替え等の処理を行っている。
【0003】
従来、対象物表面のさびや塗膜を除去する処理では、塗膜剥離剤やショトブラストによる塗膜剥離処理が行われていたが、作業環境及び作業効率が悪いばかりでなく、大量の除去物の回収・廃棄処理に問題があることから、レーザー照射によるさびの除去や塗膜剥離処理が提案されている。
【0004】
例えば、化学薬品を用いることなく、塗装膜の除去が可能な塗装膜除去方法、及びその塗装膜除去に適したレーザー処理装置として、レーザー光を集光し処理対象物の表面に照射するレンズと、レンズを支持し、処理対象物表面からレンズまでの高さを調節可能なレンズ支持機構と、処理対象物の表面のレーザー光照射部分にガスを吹き付けるガス噴出手段とを有し、ガスを吹き付けることにより、処理対象物の表面温度の上昇を抑制することができるようにしたレーザー処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1には、かかるレーザー処理装置において、レーザー照射ヘッドは、マニピュレータアームの先端に取り付けられ、マニピュレータアームは、マニピュレータ本体により制御され、レーザー照射ヘッドを処理対象物の表面の所望の位置に移動させ支持することが記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の開示技術におけるレーザー照射装置では、レーザー集光レンズを所定の焦点距離に固定し、その高さを保つため、処理対象物の表面にレーザー照射ヘッドを接触させた状態で、マニピュレータアームにより、処理対象物の表面の所望の位置にレーザー照射ヘッドを移動させるようにしている。
【0007】
したがって、この特許文献1の開示技術では、複雑な形状や狭い空間での作業が極めて困難であり特に、突起物などを有する処理対象物の場合には角部における剥離処理作業が不可能であるという問題点があった。
【0008】
下地処理面の評価は、従来、検査員が目視で標準写真との比較によって、除せい(錆)の度合いを判断していた。しかしながら、目視検査では判定に熟練を要し、個人差もあるためバラツキが大きく、定量的な評価を行なうことができないという問題があった。
【0009】
鉄塔等の大型構造物を構成する部材外部表面の腐食状態や劣化状態を検出し判定するための表面処理された鋼材の劣化・腐食検出判定方法およびこれに使用される劣化・腐食検出判定システム装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
また、ブラストによる下地処理面の除せいを自動的に検査するブラスト後の除せい度検査システムとして、処理後表面にハロゲンランプにて投光しCCDカメラにて測定した後、画像処理することにより、除せい度を数値化して判断する除せい度検査システムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10-309899号公報
【特許文献2】特開平11-132962号公報
【特許文献3】特開2012-26820号公報
【非特許文献】
【0012】
JIS Z 2358:2019(レーザー照射処理面の除せい(錆)度測定方法)日本産業規格
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
レーザー照射によるさびの除去や塗膜剥離処理では、レーザーアブレーションにより、化学薬品を使用することなく、処理対象物の表面の下地処理を行うことができる。
【0014】
特許文献2の開示技術は、鉄塔などの大型構造物の劣化度、腐食度を定量的に測定・判定するシステムに関するもので、測定用のカメラをロボットにもたせ、遠隔で測定可能とするものであるが、下地処理に関しては何ら記載されていない。
【0015】
また、特許文献3の開示技術は、ブラスト後の除せい度を画像処理により判断することができるのであるが、レーザー照射による下地処理に関しては何ら記載されていない。
【0016】
レーザー照射による下地処理後の除せい度測定について、産業標準化法に基づき、日本産業標準調査会の審議を経て、経済産業大臣が制定した日本産業規格として、JIS Z 2358:2019 レーザー照射処理面の除せい(錆)度測定方法(Measurement methods for rust removal of steel structure treated by laser irradiation)が規定されている(非特許文献1参照)。
【0017】
日本産業規格JIS Z 2358:2019では、主に構造物鋼材の表面をレーザー照射によって、さびなどの除去処理をした後の表面の除せい(錆)度を測定する方法として、処理表面の状態を色見本と比較して、除せい度を評価する目視法と、光電色彩計を用いて処理表面の色彩を測定し、除せい度を評価する色彩計法が規定されている。
【0018】
目視法では、自然昼光又は白色光源で、目視が容易な照明を用いて70lx以上の明るさの下で、供試体を目視によって色見本と比較して、日本産業規格JIS Z 2358:2019の表2に規定する5段階の色見本及び実物写真例によって評価し、色見本番号を選定することにより、表面の除せい度を求めるとされている。
【0019】
また、色彩計法では、日本産業規格JIS Z 8722の6.2(光電色彩計)に規定する光電色彩計を測定装置とし、供試体の測定箇所に光電色彩計の測定部を押し当てて色彩の計測を行い、三刺激値の一つである明度Yを求め、明度Yが10を超えた場合は、ほぼ除せいされているとみなすとされている。
【0020】
なお、日本産業規格JIS Z 2358:2019では、用語及び定義として、レーザー照射、除せい(錆)度、表面処理、構造物鋼材、三刺激値が、次のように定義されている。
【0021】
レーザー照射:レーザー光によって構造物鋼材の表面処理をする方法で,表面に付着している塗膜、さび、汚れなどを除去するために、高エネルギーレーザー光を当てること。
【0022】
除せい(錆)度:鋼材表面を処理した後の塗装,さび,汚れなどの除去程度。
【0023】
表面処理:材料表面の状態を変えることによって,表面の性質を変える、又は新しい機能を付加すること。
【0024】
構造物鋼材:建築物,橋,橋りょう(梁),その他の構造物用として強度などを重視して製造された鋼材。
【0025】
三刺激値:与えられた三色表色系において,試料の色刺激と等色するための3個の原刺激の量(JIS Z 8105参照)。注記 この規格では,三刺激値を記号X,Y,Zで表す。
【0026】
そこで、本発明の目的は、上述の如き従来の実情に鑑み、従来定性的に評価していた品質レベルを定量的に評価することにより、要求された品質レベルに応じて、レーザー照射条件を適切に設定して、下地処理の品質を向上させることができるようにした下地処理方法及び下地処理装置を提供することにある。
【0027】
更には、本発明の他の目的は、レーザー照射による下地処理作業を自動化して、全体に対し所定の下地処理品質を有する下地処理を確実に且つ効率よく行うことができるようにした下地処理方法及び下地処理装置を提供することにある。
【0028】
また、本発明の他の目的は、日本産業規格JIS Z 2358:2019に準拠したレーザー照射処理面の除せい(錆)度測定方法により、下地処理後の対象物表面の除せい度を評価して、下地処理品質の維持管理を確実に且つ効率よく行うことができるようにした下地処理方法及び下地処理装置を提供することにある。
【0029】
本発明の他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、レーザー照射によって対象物の付着物を除去する下地処理方法であって、上記対象物にレーザー光照射装置によりレーザー光を照射して下地処理を行う下地処理工程と、下地処理後の上記対象物の表面状況を物理測色手段による測色情報に基づいて所定の処理品質以上であるか否か判定する処理品質判定工程と、を有し、上記処理品質判定工程において、処理品質が不十分と判定された処理対象領域に対し、上記レーザー光照射装置により再度レーザー照射を実施することで、対象物全体に対し所定の下地処理品質を有する下地処理を行うことを特徴とする。
【0031】
本発明に係る下地処理方法では、上記下地処理工程において、上記対象物にレーザー光を照射するレーザー光照射装置をロボットにより保持して、上記対象物の処理対象領域を含む作業領域内で移動させ、上記レーザー光照射装置により上記対象物にレーザー光を照射して下地処理を行うものとすることができる。
【0032】
本発明に係る下地処理方法において、上記処理品質判定工程では、日本産業規格JIS Z 8722の6.2(光電色彩計)に規定された光電色彩計により得られる三刺激値の一つである明度Yの値により処理品質を判定するものとすることができる。
【0033】
また、本発明に係る下地処理方法において、上記処理品質判定工程では、日本産業規格JIS Z 2358:2019に規定された色見本番号1号乃至5号の各色見本のカラーパッチを備えるカラーチャートと下地処理後の上記対象物の表面をカラー撮像し、上記カラー撮像により得られるカラー画像情報に基づいて上記カラーチャートの各色見本のカラーパッチと上記対象物の表面の色差を検出して、処理品質を判定するものとすることができる。
【0034】
また、本発明に係る下地処理方法では、上記処理品質判定工程において上記物理測色手段により得られる上記対象物の表面の測色情報に基づいて、上記対象物に照射するレーザー密度を修正するものとすることができる。
【0035】
また、本発明に係る下地処理方法では、上記下地処理工程において、上記作業領域内の上記対象物の処理対象領域を複数の領域に分割して、分割領域毎に順次下地処理を行い、上記処理品質判定工程において上記物理測色手段により得られる下地処理済みの分割領域における測色情報に基づいて、当該分割領域および/または次の分割領域に照射するレーザー密度を修正するものとすることができる。
【0036】
また、本発明に係る下地処理方法では、上記処理品質判定工程において、分割された領域をあらかじめ指定した個数あるいは範囲に基づいて集約し、該下地処理済みの集約された分割要素群内の代表要素における上記物理測色手段により得られる測色情報に基づいて、当該分割要素群および/または次の集約された分割要素群に照射するレーザー密度を修正するものとすることができる。
【0037】
さらに、本発明に係る下地処理方法では、上記処理品質判定工程において上記物理測色手段により得られる上記対象物の表面の測色情報に基づく処理品質評価レベルを多段階に分類し、目標評価レベルを満足するためのレーザー光のレーザー密度の範囲を処理対象物の材質、処理要求品質、および処理時間の少なくとも一つに応じて設定する関数あるいはテーブル値に基づき、レーザー照射距離を設定することができる。
【0038】
本発明は、下地処理装置であって、レーザー光照射装置と、上記レーザー光照射装置を保持し、対象物の処理対象領域を含む作業領域内で上記レーザー光照射装置を移動させるロボットと、対象物の処理対象領域に設置されるか、あるいは作業領域内において、上記ロボットによりレーザー光照射装置とともに保持され共に移動し、上記対象物の表面状況を示す測色情報を取得する物理測色手段と、上記レーザー光照射装置と上記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備え、上記制御装置は、下地処理後の上記対象物の表面状況を示す測色情報を上記物理測色手段により取得し、測色情報に基づいて所定の処理品質以上であるか否か判定し、処理品質が不十分と判定された部分において、上記レーザー光照射装置により再度レーザー照射を実施することで、対象物全体に対し所定の下地処理品質を有する下地処理を行うことを特徴とする。
【0039】
本発明に係る下地処理装置において、上記物理測色手段は、日本産業規格JIS Z 8722の6.2(光電色彩計)に規定された光電色彩計であり、上記制御装置は、上記光電色彩計により得られる三刺激値の一つである明度Yの値により処理品質を判定するものとすることができる。
【0040】
また、本発明に係る下地処理装置において、上記物理測色手段は、カラー撮像手段であり、日本産業規格JIS Z 2358:2019に規定された色見本番号1号乃至5号の各色見本のカラーパッチを備えるカラーチャートとともに下地処理後の上記対象物の表面をカラー撮像し、上記制御装置は、上記カラー撮像手段により得られるカラー画像情報に基づいて上記カラーチャートの各色見本のカラーパッチと上記対象物の表面の色差を検出して、処理品質を判定するものとすることができる。
【0041】
本発明に係る下地処理装置において、上記制御装置は、上記物理測色手段により得られる上記対象物の表面の測色情報に基づいて、上記レーザー光照射装置により上記対象物に照射するレーザー密度を修正するものとすることができる。
【0042】
本発明に係る下地処理装置において、上記作業領域内の上記対象物の処理対象領域を複数の領域に分割して、分割領域毎に順次下地処理を行い、下地処理済みの分割領域における測色情報に基づいて、上記レーザー光照射装置により当該分割領域および/または次の分割領域に照射するレーザー密度を修正するものとすることができる。
【0043】
本発明に係る下地処理装置において、上記物理測色手段による上記対象物の表面の測色データに基づく処理品質評価レベルを多段階に分類し、目標評価レベルを満足するためのレーザー光のレーザー密度の範囲を処理対象物の材質、処理要求品質、および処理時間に応じて設定する関数あるいはテーブルに基づき、上記レーザー光照射装置によるレーザー光の照射距離を設定するものとすることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明では、レーザー光照射装置により対象物にレーザー光を照射して下地処理を行い、下地処理後の上記対象物の表面状況を物理測色手段による測色情報に基づいて所定の処理品質以上であるか否か判定し、処理品質が不十分と判定された処理対象領域に対し、上記レーザー光照射装置により再度レーザー照射を実施することで、レーザー照射による下地処理作業を自動化して、全体に対し所定の下地処理品質を有する下地処理を確実に且つ効率よく行うことができる。
【0045】
更に、本発明では、対象物にレーザー光を照射するレーザー光照射装置をロボットにより保持して、上記対象物の処理対象領域を含む作業領域内で移動させ、上記レーザー光照射装置により上記対象物にレーザー光を照射して下地処理を行うことで、レーザー照射による下地処理作業を自動化して、全体に対し所定の下地処理品質を有する下地処理を確実に且つ効率よく行うことができる。
【0046】
また、本発明では、日本産業規格JIS Z 8722の6.2(光電色彩計)に規定された光電色彩計により得られる三刺激値の一つである明度Yの値により処理品質を判定することにより、日本産業規格JIS Z 2358:2019に準拠したレーザー照射処理面の除せい(錆)度測定方法により、下地処理後の対象物表面の除せい度を評価して、下地処理品質の維持管理を確実に且つ効率よく行うことができる。
【0047】
また、本発明では、日本産業規格JIS Z 2358:2019に規定された色見本番号1号乃至5号の各色見本のカラーパッチを備えるカラーチャートとともに下地処理後の上記対象物の表面をカラー撮像して得られるカラー画像情報に基づいて上記カラーチャートの各色見本のカラーパッチと上記対象物の表面の色差を検出して、処理品質を判定することにより、JIS Z 2358:2019に準拠したレーザー照射処理面の除せい(錆)度測定方法により、下地処理後の対象物表面の除せい度を評価して、下地処理品質の維持管理を確実に且つ効率よく行うことができる。
【0048】
したがって、本発明によれば、レーザー照射による下地処理作業を自動化し、日本産業規格JIS Z 2358:2019に準拠したレーザー照射処理面の除せい(錆)度測定方法により、下地処理後の対象物表面の除せい度を評価して、全体に対し所定の下地処理品質を有する下地処理を確実に且つ効率よく行うことができるようにした下地処理方法及び下地処理装置を提供することができる。
【0049】
また、本発明によれば、従来定性的に評価していた品質レベルを定量的に評価して、要求された品質レベルに応じて、レーザー照射条件が適切に設定することができ、下地処理の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明を適用した下地処理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】上記下地処理装置に備えられた2軸のガルバノミラー機構の構造を模式的に示す斜視図である。
【
図3】この下地処理装置により実行される3次元近似された分割要素に対して順番にレーザー照射する様子を示す模式図である。
【
図4】対象物を分割した全ての要素に対して、品質判定を行う上記下地処理装置により実行される下地処理作業の手順を示すフローチャートである。
【
図5】対象物を分割した全ての要素において、集約した要素群に対して、上記下地処理装置により実行される下地処理作業の手順を示すフローチャートである。
【
図6】上記下地処理装置による下地処理作業における処理品質とレーザー密度(スポット径)の関係を示す模式図である。
【
図7】カラー撮像手段により下地処理後の対象物の表面とともにカラー撮像されるカラーチャートを示す図である。
【
図8】作業者がレーザーヘッド部を手に持って行う下地処理作業の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、共通の構成要素については、共通の指示符号を図中に付して説明する。また、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0052】
本発明は、例えば
図1のブロック図に示すように、ロボットにより下地処理作業を行う下地処理装置100に適用される。
【0053】
下地処理作業用のロボットは、多関節リンクから構成されるマニピュレータロボット、3軸(X,Y,Z)から構成される3軸ロボット、搬送ライン方向を1軸としそれ以外の2方向の2軸からなるロボット、あるいは移動台車による搬送装置なども含めたものであり、この下地処理装置100では、ロボットアーム21とロボット制御部22からなるマニピュレータロボット20が採用されている。
【0054】
この下地処理装置100は、レーザー光照射装置10をマニピュレータロボット20に持たせてレーザー光の照射によって対象物1の付着物を除去する下地処理作業を行うもので、レーザー光照射装置10、マニピュレータロボット20、測色装置30、統括制御装置50などからなる。
【0055】
レーザー光照射装置10は、レーザー発振部11と、このレーザー発振部11に光ファイバー12を介して接続されたレーザーヘッド部13からなる。このレーザー光照射装置10は、統括制御装置50に備えられたレーザー制御部51により動作が制御され、レーザー発振部11によりレーザー光を発生し、レーザーヘッド部13から出射して、対象物1に照射する。
【0056】
また、マニピュレータロボット20は、多関節のロボットアーム21を備え、ロボットアーム21の先端部21Aに上記レーザー光照射装置10のレーザーヘッド部13とともに測色装置30が取り付けられている。
【0057】
ここで、測色装置30は、ロボットアーム21の先端部21Aにレーザーヘッド部13とともに取り付けられている場合を示しているが、本ケースのみに限定されるものではない。例えば、測色装置30は、上記対象物1の処理対象領域内にあって、上記対象物1の表面状況を示す測色情報を取得することができる位置であれば、マニピュレータロボット20とは別の位置に独立して設置し、対象物1の表面状況を示す測色情報を取得する方法もある。
【0058】
このマニピュレータロボット20は、ロボット制御部22による制御によって、上記ロボットアーム21の先端部21Aを、所定の作業範囲内を自由に移動させ、前方の実質的な立体角で任意の方向に向けることができるようになっている。
【0059】
すなわち、マニピュレータロボット20は、上記ロボットアーム21の先端部21Aに取り付けられた上記測色装置30とともに上記レーザー光照射装置10のレーザーヘッド部13を保持し、対象物1の処理対象領域を含む上記ロボットアーム21による作業領域内で上記測色装置30とともに上記レーザーヘッド部13を移動させ、作業範囲内の任意の位置において、上記レーザー光照射装置10のレーザーヘッド部13により前方の任意の方向に向けてレーザー光を照射して対象物1の下地処理を行い、下地処理後の対象物1の表面状況を示す測色情報を測色装置30により取得することができるようになっている。ここで、上記レーザーヘッド部13は、対象物1の表面から所定のレーザー密度を得るスポット径を決める照射距離だけ離れた位置に移動する。
【0060】
また、このレーザー光照射装置10のレーザーヘッド部13には、
図2に示すように、2つのモータ131X、131Yと2つのミラー132X、132Yからなる2軸のガルバノミラー機構130が設けられている。
【0061】
この2軸のガルバノミラー機構130は、レーザー発振部11から光ファイバー12を介して供給されるレーザー光LをX軸方向とY軸方向に独立してレーザーの反射角度を変更させて走査することができるようになっている。
【0062】
2軸のガルバノミラー機構130は、対象物1の処理対象領域内でレーザー光Lの照射位置を移動させるスキャン手段として機能する。
【0063】
すなわち、ミラー132Xは、モータ131XによりZ軸周りに回転することにより、対象物1に照射するレーザー光LをX軸方向に走査する。
【0064】
また、ミラー132Yは、モータ131YによりX軸周りに回転することにより、対象物1に照射するレーザー光LをY軸方向に走査する。
【0065】
なお、上記2軸のガルバノミラー機構130における二つのミラー132X、132Yは、それぞれポリゴンミラーに置き換えることができる。
【0066】
すなわち、レーザー光照射装置10のレーザーヘッド部13の位置を固定した状態で、所定の範囲内を照射することができるようになっている。
【0067】
なお、ガルバノミラーやポリゴンミラーによる走査では光軸が法線方向と一致するのは一点のみで、レーザー光Lの焦点位置は円弧状に位置することになるので、この2軸のガルバノミラー機構130は、テレセントリックf-θレンズ(あるいはテレセントリックf-θレンズと同等の光学特性を有するテレセントリック光学系)133を介してレーザー光Lを対象物1に照射するようになっている。すなわち、カルバノミラー走査によるレーザー照射では、対象物1まで焦点距離が変化するので、レーザー処理能力の低下幅が小さい範囲内でレーザー光Lの照射位置を走査するように、レーザー照射範囲を制約する必要がある。
【0068】
また、上記ロボットアーム21の先端部21Aに上記レーザー光照射装置10のレーザーヘッド部13とともに取り付けられた測色装置30は、上記対象物1の表面状況を示す測色情報を取得する物理測色手段である。
【0069】
ここでは、上記測色装置30として、非接触式の光電色彩計が、上記マニピュレータロボット20の上記ロボットアーム21の先端部21Aにレーザー光照射装置10とともに取り付けられ、上記レーザー光照射装置10による下地処理後の上記対象物1の表面状況を示す測色情報を光電色彩計により取得できるようになっている。
【0070】
そして、統括制御装置50は、上記ロボットアーム21の先端部21Aに取り付けられたレーザー光照射装置10のレーザーヘッド部13が予め設定したマニピュレータロボット20による下地処理作業軌道を通過するように、軌道制御データ演算処理部53によりロボット制御部22を制御するとともに、レーザー光照射装置10の動作を制御して、この下地処理装置100による一連の下地処理作業動作を自動制御する。
【0071】
この下地処理装置100において、マニピュレータロボット20の制御は、基本的には、ロボット制御部22を用いて事前にティーチングにより動作軌道がプログラミングされる
【0072】
すなわち、統括制御装置50は、この下地処理装置100による一連の下地処理作業動作を自動制御するにあたり、上記対象物1の処理対象領域の3次元曲面を表す3次元曲面形状データとして、上記対象物1の3次元CADで設計した3次元CADデータを予め取得しておき、マニピュレータロボット20の動作を対象物1の形状に基づき初期ティーチングして軌道制御データ演算処理部53によりロボット制御部22に登録する。
【0073】
ただし、ロボットの制御方法は、本方法に限定するものではない。例えば、図示していないが、下地処理の作業領域内に対象物1の3次元形状を測定するカメラを設けるか、あるいはロボットアーム21の先端部21Aに3次元形状を測定するカメラを設けるかし、前記3次元カメラの測定結果を3次元データとして取得しても良い。
【0074】
そして、この下地処理装置100において、統括制御装置50は、予め取得した3次元CADデータに基づき、データ処理部52において、上記処理対象領域の3次元曲面を多角形近似する分割要素データを作成し、作成した分割要素データに基づき、各分割要素の頂点、重心及び法線ベクトルを演算して、レーザー照射パターンを決定し、軌道制御データ演算処理部53により上記マニピュレータロボット20のロボット制御により分割要素間の移動を行い、レーザー制御部51により上記レーザー光照射装置10のガルバノミラー制御で分割要素内のレーザー照射を行うことにより、
図3に示すように、最初の要素から最後の要素まで、それぞれの要素の重心を目標地点として移動し、順番にレーザー照射される。ここで、
図3は、簡単のために3次元近似されたそれぞれの分割要素三角形△1、△2、△3・・・に対してのレーザー照射の一部に対するロボット軌道の動きを示すものである。
【0075】
すなわち、この下地処理装置100では、統括制御装置50の軌道制御データ演算処理部53により、決定された照射パターンに基づき、上記マニピュレータロボット20のロボット制御で分割要素間の移動を行い、上記マニピュレータロボット20のロボット制御部22からレーザー照射すべき所定の位置に到着した信号を受け取り、レーザー制御部51からレーザー光照射装置10のレーザー発振部11にレーザー照射開始の指令を送り、レーザー制御部51により上記ガルバノミラー制御で分割要素内のレーザー光の走査を行い、レーザー制御部51からレーザー照射完了の信号を受け取り、ロボット制御部22に次の照射位置に移動する開始指令を送ることにより、あらかじめ設定した処理範囲毎に、レーザー照射開始位置から終了位置までレーザー光照射装置10による繰り返しレーザー光を照射することにより、対象物1の処理対象領域全体の下地処理作業を実施する。
【0076】
このように、この下地処理装置100では、軌道制御データ演算処理部53により上記マニピュレータロボット20のロボット制御で分割要素間の移動を行い、レーザー制御部51により上記レーザー光照射装置10のガルバノミラー制御で分割要素内のレーザー光の走査を行うことにより、上記対象物1が複雑な形状や大面積形状を有する3次元曲面処理対象物であっても、レーザー照射により確実に且つ効率よく表面処理を行うことができるようになっている。
【0077】
さらに、この下地処理装置100における統括制御装置50では、軌道制御データ演算処理部53によりマニピュレータロボット20のロボット制御で分割要素間の移動を行い、レーザー制御部51により上記レーザー光照射装置10のガルバノミラー制御で分割要素内のレーザー光の走査を行うに当たり、対象物1の最初の処理範囲(分割要素)内のレーザー照射による下地処理が完了したところで、下地処理後の対象物1の表面状況を示す測色情報を測色装置30により取得し、データ処理部52において、取得した測色情報から三刺激値の一つである明度Yの値により、所定の処理品質以上であるか否か判定する処理品質判定処理を行い、処理品質が不十分と判定された場合には、処理品質が不十分と判定された処理範囲(分割要素)に対して、レーザー光照射装置10により再度レーザー照射を実施することで、レーザー照射により確実に下地処理を行うようになっている。
【0078】
すなわち、この下地処理装置100では、
図4のフローチャートに示す手順にしたがって本発明に係る下地処理方法が自動的に実行される。
【0079】
初期要素設定工程ST1において、下地処理の初期設定として、対象物1の分割数の設定、各要素に対するレーザー照射条件(例えば、レーザー密度を決める照射距離やレーザーの走査速度など)や品質判定条件などを設定する。ここで、レーザー密度の設定方法としては、レーザー照射距離に基づき決まるレーザースポット径とレーザー1パルス当たりのレーザースポットの移動距離である走査速度を上記スポット径から決定することができる。つまり、レーザー照射距離が決まれば、それに基づきレーザースポット径とレーザー走査速度が決まるという事である。たとえば、レーザースポット径がd(μm)と決まれば、レーザー走査速度はd×(1/√2~1)の範囲内となるように決定する。したがって、以下では、レーザー密度は、レーザー照射距離に基づき決まるものとして表現する。
【0080】
初期要素設定工程ST2は、第1の要素に処理要素カウンターを設定し、処理要素決定工程ST3では、処理要素カウンターKに該当する要素に対しマニピュレータロボット20を移動させ、ロボットアーム21の先端部21Aに取り付けられたレーザー光照射装置10の照射スタンバイを行う。
【0081】
次の下地処理ST4では、初期要素設定工程ST1にて設定された条件で当該要素に対する下地処理を行う。
【0082】
次の色情報取得工程ST5では、下地処理後の対象物1の表面状況を示す測色情報を測色装置30により取得する。
【0083】
そして、次の処理品質判定工程ST6では、統括制御装置50のデータ処理部52において、下地処理後の対象物1の表面状況を示す測色装置30による測色情報に基づいて処理品質を評価し、所定の処理品質以上であるか否か判定する。
【0084】
この処理品質判定工程ST6における判定結果がNG、すなわち、当該処理範囲(分割要素)の下地処理が所定の処理品質に達していない場合には、照射距離修正工程ST7にて、どの程度レーザー照射密度が不足していたかを判定し、適切なレーザー密度となるように不足分だけレーザー照射距離を修正する。
【0085】
照射距離修正工程ST7では、測色装置30により得られる下地処理済みの処理範囲(分割要素)における測色情報に基づいて、レーザー光照射装置10により当該処理範囲(分割要素)および/または次の処理範囲(分割要素)に照射するレーザー密度を修正する。
【0086】
すなわち、当該処理範囲の品質結果が目標レベルより低い場合には、当該処理範囲および/または続く処理範囲に対しては、レーザー密度を高くして目標とする品質レベルが得られるように照射距離を修正し、反対に、品質判定結果が、目標レベルより高い場合には、必要以上のレーザー密度を投入していることとなり、エネルギーコストや処理時間の関係で無駄となるので、この場合は、当該処理範囲および/または続く処理範囲に対しては、レーザー密度低くして目標とする品質レベルが得られるように照射距離を修正する。
【0087】
そして、上記処理要素決定工程ST3に戻って、再度、処理範囲(分割要素)に対してレーザー光照射装置10によりレーザー光を照射して下地処理を行う。ここで、レーザーによる再下地処理は1回のみとする。これは、上記説明した様に、品質結果が目標レベルに入るようにレーザー密度を修正しているので、当該1回の再処理で品質目標を満足する。再処理回数は、当然、1回に限定したものではないが処理回数が増加することで能率が低下するため適切な回数に制約することが望ましい。
【0088】
この下地処理装置100における統括制御装置50では、要求される対象物の材質、処理要求品質、および処理時間の少なくとも1つに応じて必要なレーザー密度を得るためのレーザー照射距離を設定する関数あるいはテーブル値を設け、当該関数あるいはテーブル値に基づき品質レベルに応じたレーザー密度を得るためのレーザー照射距離を設定するようになっている。
【0089】
上記処理品質判定工程ST6における判定得結果がOK、すなわち、当該処理範囲(分割要素)の下地処理が所定の処理品質に達していた場合には、次の要素に移るべくST8に移る。
【0090】
次の処理終了判定工程ST8では、全ての処理範囲(分割要素)の下地処理が完了したか否かを判定する。
【0091】
この処理終了判定工程ST8において、処理要素カウンターKが分割要素数であるNより小さい場合は、すなわち、下地処理を行う処理範囲(分割要素)が残っている場合には、ST9において、処理要素カウンターKを1つカウントアップし、上記下地処理工程に戻って、次の処理範囲(分割要素)に対してマニピュレータロボット20を移動させレーザー光照射装置10によりレーザー光を照射して下地処理を行う。また、処理要素カウンターKが分割要素数Nに等しくなったとき、すなわち、全ての処理範囲(分割要素)の下地処理が完了したら、この下地処理装置100による対象物1に対する下地処理は終了となる。
【0092】
ここで、レーザー密度の不足分は、後述の色彩計測定結果である明度Yのレベル、あるいは、カラー撮像手段により得られるカラー画像情報に応じて、例えば、要求レベルがレベルIVに対して、測定結果がレベルIIである場合は、このレベル差を補正する分だけレーザー密度高めるべく照射距離の修正を行う。
【0093】
そして、照射距離修正工程ST7における分割要素毎の照射距離の不足分の修正は、次のような一時平滑式に基づいて決定することが望ましい。
【0094】
<不足分修正量>=<前回の修正量>×(1-α)+<今回修正量>×α
【0095】
ここで、α(0≦α≦1)は重み係数であり、今回要素での結果に基づく修正効果をどの程度反映するかを決めるものであり、α=0の場合は従来のままであり、α=1の場合は、今回要素の修正分をそのまま使用するという事である。通常は、0≦α≦1の範囲内で実際の品質結果を確認しながら決定する。この様にすることにより、ある特定の要素のデータに大きく影響されることなく平均化された修正量を得ることが可能となる。
【0096】
なお、第1要素K=1における<現時点の修正量>に関しては、0からスタートする場合もあるが、過去の同一あるいは類似の対象物の最終分割要素における<不足分修正量>を統括制御装置50のレーザー制御部51に装備された記憶装置に対象物の種類や品質レベル毎に設定したテーブルを設け、当該テーブルに記憶しておき、今回の対象物の種類と品質レベルに応じて記憶された数値を前記テーブルから引用して初期値として使用する方法が有効である。
【0097】
上記
図4のフローチャートに示にした下地処理方法においては、全ての分割要素に対して測色情報を取得し品質判定する場合を示したが、当該方法は、非常に品質レベルの高い対象物の場合には有効であるが、品質レベルが比較的低い対象物の場合には、全ての分割要素に対して品質判定することは非効率となる場合がある。
【0098】
このような対象物に対しては、全ての分割要素に対して品質判定するのではなく、分割された領域をあらかじめ指定した個数あるいは範囲に基づいて大括りして集約し、大括りして集約された分割要素群内の下地処理が完了したところで、代表要素(要素群の中央の要素あるいは最後の要素など)における上記物理測色手段により得られる測色情報に基づいて、次の集約された分割要素群に対するレーザー照射距離を修正し照射する。
【0099】
分割要素を大括して集約された分割要素群内の下地処理を行うようにした下地処理方法について
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0100】
図5のフローチャートに示す下地処理方法では、分割要素を大括して集約するために処理フローを
図4に記載した処理工程ST2,ST3、ST9の変更および処理工程ST10、ST11、ST12の追加を行う。集約する要素群の個数をm個とすると共に、集約する要素数をカウントするために、ST2において集約に関連した新たな集約カウンターJと要素群カウンターLを導入し、ST3において、処理要素カウンターKをK=m(L-1)+1として計算する。
【0101】
ST4により集約したm個の要素群の下地処理を実施し、ST10により下地処理数が集約数mと等しいかどうか判定し、mより少ない場合は、ST11により処理数Jを1つカウントアップしてST3に戻り、mに等しくなった場合は、集約分の下地処理が完了となる。
【0102】
上記集約したm個の要素群に対して、あらかじめ設定した代表要素(要素群の中央の要素あるいは最後の要素など)においてST5で測色情報を取得し、ST6で品質判定する。ここで、例えば、代表要素が中間要素場合は、要素番号K=m(L-1)+m/2(四捨五入)を選択し、最終要素の場合はK=m(L-1)+mの要素を選択する。
【0103】
この処理品質判定工程ST6における判定結果がNG、すなわち、当該処理範囲の下地処理が所定の処理品質に達していない場合には、照射距離修正工程ST7にて、どの程度レーザー照射密度が不足していたかを判定し、適切なレーザー密度となるように不足分だけレーザー照射距離を修正する。
【0104】
照射距離修正工程ST7では、測色装置30により得られる下地処理済みの処理範囲(分割要素群)における測色情報に基づいて、レーザー光照射装置10により当該処理範囲(分割要素群)および/または次の処理範囲(分割要素群)に照射するレーザー密度を修正する。
【0105】
ST12において、集約したm個の要素群(K=m(L-1)+1~mL)に対し再度、下地処理を実施する。ここで、レーザーによる再下地処理は1回のみとする。これは、上記説明した様に、品質結果が目標レベルに入るようにレーザー密度を修正しているので、当該1回の再処理で品質目標を満足する。再処理回数は、当然、1回に限定したものではないが処理回数が増加することで能率が低下するため適切な回数に制約することが望ましい。
【0106】
そして、ST9において、処理要素群カウンターLを1つカウントアップすると共に集約カウントJをJ=1に初期化し、上記下地処理工程に戻って、次の処理範囲(分割要素群)に対してマニピュレータロボット20を移動させレーザー光照射装置10によりレーザー光を照射して下地処理を行う。これを全領域にわたって実施する。
【0107】
このように、この下地処理装置100では、対象物1の表面状況を示す測色情報を測色装置30により取得し、括制御装置50のデータ処理部52により取得した測色情報に基づいて所定の処理品質以上であるか否か判定して、品質判定レベルが目標とする品質レベルより低い(劣る)場合には、レーザー光照射装置10により再度レーザー照射を実施することで目標とする品質レベルを確保することができる。
【0108】
すなわち、この下地処理装置100では、従来定性的に評価していた品質レベルを定量的に評価することにより、要求された品質レベルに応じて、レーザー照射条件を適切に設定して、下地処理の品質を向上させることができる。
【0109】
また、この下地処理装置100における統括制御装置50では、最初の処理範囲の品質結果が目標レベルより低い場合には、レーザー光照射装置10により再度レーザー照射するとともに、続く処理範囲に対しては、レーザー密度を高くして目標とする品質レベルが得られるように照射距離を変更してレーザー照射を実施する。反対に、品質判定結果が、目標レベルより高い場合には、必要以上のレーザー密度を投入していることとなり、エネルギーコストや処理時間の関係で無駄となるので、この場合は、続く処理範囲に対しては、レーザー密度低くして目標とする品質レベルが得られるように照射距離を変更してレーザー照射を実施する。この下地処理装置100では、上記照射距離修正工程ST7において、処理品質判定工程ST6における測色装置30による測色情報に基づく処理品質の評価結果に応じて、レーザー光照射装置10によるレーザー光の照射距離を対象物1の表面において適正なレーザー密度になるように修正することにより、
図6に示すように、下地処理性能として品質および作業効率に優れた最適条件を確保するようにレーザー密度(スポット径および当該スポット径に基づき決定するレーザー走査速度)が設定できる。
【0110】
ここで、レーザー光照射装置10のレーザー発振部11が発生するレーザー光は、対象物1の付着物(例えば表面に塗布された塗料膜など)をレーザーアブレーションにより除去するのに必要なパワーを有するものであれば、連続光あるいはパルス光の何れであってもよく、統括制御装置50により、対象物1の処理対象領域の表面形状や下地処理品質などに応じてレーザー光の照射条件を適切に設定したレーザー照射によって対象物1の付着物を除去する下地処理作業を行うことができる。
【0111】
したがって、この下地処理装置100では、上記レーザー光照射装置10を用いたレーザー照射による下地処理を最初の処理範囲から、最後の処理範囲まで自動化して実施することで、対象物1の処理領域全体に対し所定の下地処理品質を有する下地処理を確実に且つ効率よく行うことができる。
【0112】
ここで、この下地処理装置100における統括制御装置50のデータ処理部52では、上記測色装置30として、上記マニピュレータロボット20の上記ロボットアーム21の先端部21Aにレーザー光照射装置10とともに取り付けられた非接触式の光電色彩計により、上記レーザー光照射装置10による下地処理後の上記対象物1の表面状況を示す測色情報を取得して、三刺激値の一つである明度Yの値により処理品質を判定するようにしたが、例えば、上記測色装置30として、日本産業規格JIS Z 8722の6.2(光電色彩計)に規定された接触型の光電色彩計を、上記マニピュレータロボット20の上記ロボットアーム21の先端部21Aにレーザー光照射装置10とともに取り付けて上記レーザー光照射装置10による下地処理後の上記対象物1の表面状況を示す測色情報を取得することにより、統括制御装置50において、上記光電色彩計により得られる三刺激値の一つである明度Yの値により処理品質を判定して、日本産業規格JIS Z 2358:2019に準拠したレーザー照射処理面の除せい(錆)度測定方法により、下地処理後の対象物表面の除せい度を評価して、下地処理品質の維持管理を確実に且つ効率よく行うことができる。
【0113】
ここで、色彩計に基づく表面品質の評価に関して、日本産業規格JIS Z 2358:2019では、明度Yが10以上であれば、ほぼさび除去ができているという判定である。ただし、これだけでは不十分であり、補足資料には、4レベルの目視判定と明度Yの関係が示されている。これから、レベル2の明度Yの範囲を5以上10未満(5≦Y<10)、レベル3の明度Yの範囲を15以上20未満(15≦Y<20)、レベル4の明度Yの範囲を20以上30未満(20≦Y<30)、レベル5の明度Yの範囲を10以上15未満(10≦Y<15)と設定し、このように設定した判定レベルに応じてレーザー密度を決定する。なお、レベル1は、未処理の場合である。
【0114】
判定レベルは、次のように、レベル2,3,4を更に2分割して細かく設定してもよい。
【0115】
レベル2-1:5≦Y<7、
レベル2-2:7≦Y<10、
レベル3-1:15≦Y<20、
レベル3-2:20≦Y<23、
レベル4-1:23≦Y<27、
レベル4-2:27≦Y
【0116】
なお、日本産業規格JIS Z 2358:2019に記載された下地処理レベルにおいて、レベル1(1号)は未処理、レベル2がサビ残存あり、光沢無し、レベル3がほぼ除せいできたとみなす、光沢有り、レベル4がほぼ除せいできたとみなす 酸化被膜無し、光沢有り、レベル5はほぼ除せいできたとみなす 酸化被膜多い、光沢有りである。
【0117】
また、本実施例において、測色装置30は、ロボットアーム21の先端部21Aにレーザーヘッド部13とともに取り付けられている場合を示しているが、本ケースのみに限定されるものではない。例えば、測色装置30は、上記対象物1の処理対象領域内にあって、上記対象物1の表面状況を示す測色情報を取得することができる位置であれば、マニピュレータロボット20とは別の位置に独立して設置し、対象物1の表面状況を示す測色情報を取得する方法もある。
【0118】
さらに、上記測色装置30は、カラーカメラなどのカラー撮像手段であってもよい。
【0119】
上記測色装置30として、カラーカメラなどのカラー撮像手段を用いる場合、環境光の影響による色相変化に対応するために、環境光下でホワイトバランスがとられたカラー撮像手段により、例えば、日本産業規格JIS Z 2358:2019に規定された色見本番号1号乃至5号の各色見本のカラーパッチを備える
図7に示すようなカラーチャート35とともに下地処理後の上記対象物1の表面をカラー撮像する。
【0120】
ここで、
図7に示したカラーチャート35は、日本産業規格JIS Z 2358:2019の表2に規定された色見本番号1号乃至5号の各色見本のカラーパッチC1~C5とともに各実物写真例P1~P5が配列されており、各色見本のカラーパッチC1~C5や各実物写真例P1~P5の色と下地処理後の上記対象物1の表面の色を比較することにより、下地処理後の上記対象物1の表面の色が見本番号3号乃至5号の各色見本のカラーパッチC3~C5の色の範囲内でれば、下地処理によりほぼさびの除去ができているという処理品質の判定を行うことができる。
【0121】
統括制御装置50のデータ処理部52では、カラー撮像手段により得られるカラー画像情報に基づいてカラーチャート35の各色見本のカラーパッチC1~C5と対象物1の表面の色差を検出することにより、日本産業規格JIS Z 2358:2019の表2に規定された色見本番号1号乃至5号の各色見本を用いた目視による評価と同等な表面の除せい度を求めることができる。
【0122】
上記実施例では、上記対象物1にレーザー光を照射するレーザー光照射装置10をマニピュレータロボット20により保持して、上記対象物1の処理対象領域を含む作業領域内で移動させ、上記レーザー光照射装置10により上記対象物1にレーザー光を照射して下地処理する方法について詳細に説明した。上記方法によれば、対象物1を所定の下地処理品質を確保する最適なレーザー条件により自動にて下地処理を実施することができる。
【0123】
しかし、本発明は、上記方法に限定するものではなく、下地処理装置100における、レーザー発振部11と、このレーザー発振部11に光ファイバー12を介して接続されたレーザーヘッド部13からなるレーザー光照射装置10を取り出し、作業者がレーザーヘッド部13を手で持ち、携帯型の測色装置30を携帯して作業することも可能である。
【0124】
上記作業者がレーザーヘッド部13を手に持って作業する方法は、
図8のフローチャートに示すST20~ST25の手順に従って実行される。
【0125】
ST20では、作業者により下地処理の初期設定として、対象物1のレーザー照射条件(例えば、レーザー密度を決める照射距離やレーザーパワーなど)をレーザー発振部11に直接入力して設定する。
【0126】
ST21では、作業者が手に持ったレーザーヘッドを動かすことで照射可能な範囲に対するレーザー照射を実施する。ここで、対象材が小規模な場合は、1回の動作で全体を下地処理することが可能であるが、大規模な対象材の場合は、複数回に分けて下地処理をすることとなる。また、レーザー照射距離の保持は、レーザーヘッド13に照射距離が許容範囲にあることを示すガイド光(LEDなどを用いる)を設け、当該ガイド光が所定内(照射距離の許容範囲内)に入るように作業者が目視確認しながら実施することになる。
【0127】
ST22では、携帯用の測色装置30を用いて、対象物1のレーザー照射が完了した部位における代表カ所の表面状況を示す測色情報を取得し、取得した測色情報に基づき下地処理判定基準に応じて処理品質を評価する。ここで、測色装置30は、日本産業規格JIS Z 8722の6.2(光電色彩計)に規定する光電色彩計を測定装置とし、供試体の測定箇所に光電色彩計(接触式)を押し当てて色彩の測定を行う。
【0128】
ST23では、上記処理品質判定工程ST22における判定結果がNG、すなわち、最初の処理範囲(分割要素)の下地処理が所定の処理品質に達していない場合には、必要なレーザー照射条件(レーザー照射距離など)を作業者の判断に基づいて修正し、再度、レーザー照射を実施する。
【0129】
そして、上記処理品質判定工程ST22における判定結果がOK、すなわち、最初の処理範囲(分割要素)の下地処理が所定の処理品質に達している場合には、ST24において、次の処理対象部分の有無を判断する。
【0130】
ST25では、上記ST24における判断結果がYES、すなわち、次の処理対象部分がある場合には、ST25にて、上記レーザー照射条件の修正量を加味した新たなレーザー照射条件を設定し、次の処理対象部分に対するレーザー照射による下地処理を実施する。
【0131】
上記ST20~25のステップを対象物1の全ての処理部分に対して順次実施することで、対象物1全体の下地処理を完成する。
【0132】
上記方法によれば、前述のマニピュレータロボット20を用いた自動処理に比べ、高い品質の下地処理を実施することは難しいが、マニュピレータロボット20や統括制御装置50が不要なことから設備費を大きく抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0133】
1 対象物、10 レーザー光照射装置、11 レーザー発振部、12 光ファイバー、13 レーザーヘッド部、20 マニピュレータロボット、21 ロボットアーム、21A 先端部、22 ロボット制御部、23 、30 測色装置、35 カラーチャート、50 統括制御装置、51 レーザー制御部、52 データ処理部、53 軌道制御データ演算処理部、100 下地処理装置、130 ガルバノミラー機構、131X、131Y モータ、132X、132Y ミラー、133 テレセントリックf-θレンズ