(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038373
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】システム、情報処理装置、及び学習済みモデル生成方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20220303BHJP
H03M 7/30 20060101ALI20220303BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
G06T7/00 350C
H03M7/30 Z
G08G1/16 C
G06T7/00 650Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142841
(22)【出願日】2020-08-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載年月日 令和2年5月22日 掲載アドレス https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2020/subject/1N3-GS-10-05/advanced 集会名 2020年度人工知能学会全国大会 開催日 令和2年6月9日 発行者名 一般社団法人人工知能学会 刊行物名 人工知能学会全国大会論文集 2020年 JSAI2020 1N3-GS-10-05 発行日 令和2年6月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸部田 雅一
【テーマコード(参考)】
5H181
5J064
5L096
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL06
5H181LL09
5J064BC02
5J064BD02
5J064BD03
5L096BA04
5L096CA02
5L096HA03
5L096HA11
5L096KA04
5L096KA15
5L096MA03
(57)【要約】
【課題】高い圧縮率の圧縮データを用いても高い精度の物体認識処理を実現可能にする。
【解決手段】システムは、移動体の周囲の状況を示す画像データを取得する取得部と、取得部により取得された画像データを圧縮して圧縮データを生成する圧縮部と、圧縮データを送信する第1送信部と、第1送信部により送信された圧縮データを受信する第1受信部と、第1受信部により受信された圧縮データを第1学習済みモデルにより改変して改変データを生成する改変部と、改変データに基づき、移動体の周囲に存在する物体を認識する物体認識処理を行う認識部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周囲の状況を示す画像データを取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記画像データを圧縮して圧縮データを生成する圧縮部と、
前記圧縮データを送信する第1送信部と、
前記第1送信部により送信された前記圧縮データを受信する第1受信部と、
前記第1受信部により受信された前記圧縮データを第1学習済みモデルにより改変して改変データを生成する改変部と、
前記改変データに基づき、前記移動体の周囲に存在する物体を認識する物体認識処理を行う認識部と、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記物体認識処理による認識結果を送信する第2送信部と、
前記第2送信部により送信された前記認識結果を受信する第2受信部と、
前記第2受信部により受信された前記認識結果に基づき前記移動体を制御する制御部と、
を更に備える請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記取得部、前記圧縮部、前記第1送信部、前記第2受信部、及び前記制御部は、前記移動体に備えられ、
前記第1受信部、前記改変部、前記認識部、及び前記第2送信部は、前記移動体と通信可能な情報処理装置に備えられる、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1学習済みモデルは、前記改変データに基づく前記物体認識処理の認識精度が前記画像データに基づく前記物体認識処理の認識精度より高くなるように前記圧縮データを改変する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1学習済みモデルは、前記圧縮データを圧縮された状態で改変して改変圧縮データを生成する改変層と、前記改変圧縮データを復号して前記改変データを生成する復号層とを含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記圧縮部は、第2学習済みモデルを利用して前記圧縮データを生成する、
請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記圧縮部は、更に、圧縮処理に関するメタデータを出力し、
前記第1送信部は、前記圧縮データと前記メタデータとを送信し、
前記第1受信部は、前記圧縮データと前記メタデータとを受信し、
前記改変部は、前記圧縮データと前記メタデータとに基づき前記改変データを生成する、
請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
画像データが圧縮された圧縮データを受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記圧縮データを学習済みモデルにより改変して改変データを生成する改変部と、
前記改変データに基づき物体を認識する物体認識処理を行う認識部と、
前記物体認識処理による認識結果を送信する送信部と、
を備える情報処理装置。
【請求項9】
画像データが圧縮された圧縮データを物体認識処理の認識精度が向上するように改変する学習済みモデルを生成するための方法であって、
前記画像データに基づく前記物体認識処理の認識結果と、前記学習済みモデルにより生成された改変データに基づく前記物体認識処理の認識結果との誤差が最小化されるように、前記学習済みモデルで使用されるパラメータを設定する、
学習済みモデル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、システム、情報処理装置、及び学習済みモデル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行を支援するシステム等において、車両の周囲を撮像して得られた画像データに基づき車両の周囲に存在する物体を検出する物体認識処理が利用されている。また、このようなシステムにおいて、車載カメラ等のエッジデバイスから物体認識処理を行う情報処理装置まで画像データを伝送する際に画像データを圧縮する技術が利用されている。
【0003】
例えば、画像データに対して領域毎に圧縮率を変化させる技術が開示されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社富士通研究所、”AIが認識できる画質で映像データを高圧縮する技術を開発”、[online]、2020年3月5日、PRESS RELEASE(技術)、[2020年3月5日検索]、インターネット<URL:https://pr.fujitsu.com/jp/news/2020/03/5.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像データの圧縮率を高めることにより、エッジデバイスから情報処理装置への画像データの伝送が容易となるが、物体認識処理の認識精度が低下するという問題が生じる。
【0006】
そこで、本開示の課題の一つは、高い圧縮率の圧縮データを用いても高い精度の物体認識処理を実現できるシステム、情報処理装置、及び学習済みモデル生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態としてのシステムは、移動体の周囲の状況を示す画像データを取得する取得部と、取得部により取得された画像データを圧縮して圧縮データを生成する圧縮部と、圧縮データを送信する第1送信部と、第1送信部により送信された圧縮データを受信する第1受信部と、第1受信部により受信された圧縮データを第1学習済みモデルにより改変して改変データを生成する改変部と、改変データに基づき、移動体の周囲に存在する物体を認識する物体認識処理を行う認識部と、を備えるものである。
【0008】
上記構成によれば、高い圧縮率の圧縮データを用いても高い精度の物体認識処理を実現できる。
【0009】
また、上記システムは、物体認識処理による認識結果を送信する第2送信部と、第2送信部により送信された認識結果を受信する第2受信部と、第2受信部により受信された認識結果に基づき移動体を制御する制御部と、を更に備えてもよい。
【0010】
上記構成によれば、高い精度の認識結果に基づき、移動体の危険を回避するための制御等を実現できる。
【0011】
また、取得部、圧縮部、第1送信部、第2受信部、及び制御部は、移動体に備えられ、第1受信部、改変部、認識部、及び第2送信部は、移動体と通信可能な情報処理装置に備えられてもよい。
【0012】
上記構成によれば、例えば、クラウドコンピューティングシステム等を利用した物体認識処理を実現できる。
【0013】
また、第1学習済みモデルは、改変データに基づく物体認識処理の認識精度が画像データに基づく物体認識処理の認識精度より高くなるように圧縮データを改変するものであってもよい。
【0014】
上記構成によれば、圧縮前の画像データを用いるより高い精度で物体認識処理を実現できる。
【0015】
また、第1学習済みモデルは、圧縮データを圧縮された状態で改変して改変圧縮データを生成する改変層と、改変圧縮データを復号して改変データを生成する復号層とを含むものであってもよい。
【0016】
上記構成のように、第1学習済みモデルは、改変層と復号層とに分割して構築することができる。
【0017】
また、圧縮部は、第2学習済みモデルを利用して圧縮データを生成するものであってもよい。
【0018】
上記構成のように、圧縮処理にも学習済みモデルを利用することにより、圧縮処理の最適化を図ることができる。
【0019】
また、圧縮部は、更に、圧縮処理に関するメタデータを出力し、第1送信部は、圧縮データとメタデータとを送信し、第1受信部は、圧縮データとメタデータとを受信し、改変部は、圧縮データとメタデータとに基づき改変データを生成してもよい。
【0020】
上記構成によれば、圧縮処理に関するメタデータを利用してより効率的に改変データを生成できる。
【0021】
また、本開示の他の形態としての情報処理装置は、データが圧縮された圧縮データを受信する受信部と、受信部により受信された圧縮データを学習済みモデルにより改変して改変データを生成する改変部と、改変データに基づき物体を認識する物体認識処理を行う認識部と、物体認識処理による認識結果を送信する送信部と、を備えるものである。
【0022】
上記構成によれば、高い圧縮率の圧縮データを用いても高い精度の物体認識処理を実現できる情報処理装置、例えばクラウドコンピューティングシステムに含まれるホストコンピュータ等を提供できる。
【0023】
また、本開示の他の形態としての学習済みモデル生成方法は、画像データが圧縮された圧縮データを物体認識処理の認識精度が向上するように改変する学習済みモデルを生成するための方法であって、画像データに基づく物体認識処理の認識結果と、改変データに基づく物体認識処理の認識結果との誤差が最小化されるように、学習済みモデルで使用されるパラメータを設定するものである。
【0024】
上記構成により、高い圧縮率の圧縮データを用いても高い精度の物体認識処理を実現するための学習済みモデルを生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る走行支援システムのシステム構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る車両及びホストコンピュータのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るホストコンピュータの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る走行支援システムにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る機械学習アルゴリズムの一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る機械学習アルゴリズムにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る改変データを用いて他車両を認識する場合における認識精度の一例を示すグラフである。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る改変データを用いて人を認識する場合における認識精度の一例を示すグラフである。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る機械学習アルゴリズムの一例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る機械学習アルゴリズムにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第3実施形態にかかる車両及びホストコンピュータのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係る走行支援システムにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用及び効果は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る走行支援システム1のシステム構成の一例を示す図である。
【0028】
本実施形態に係る走行支援システム1は、車両2(移動体)の周囲に存在する物体(例えば他車両、人等)を認識し、その認識結果に基づき車両2の走行を支援するシステムである。
【0029】
本実施形態に係る車両2は、エッジデバイス11及び車両制御システム12を有する。エッジデバイス11は、車両2の周囲の状況を示す環境情報を取得するデバイスである。環境情報とは、例えば、画像データ、TOF(Time Of Flite)データ等であり得る。車両制御システム12は、物体認識処理の認識結果に基づき車両2を制御するシステムである。車両制御システム12は、例えば、物体との接触を回避するための制動制御、操舵制御、警告出力等を行う。
【0030】
本実施形態に係る走行支援システム1は、クラウドコンピューティングシステム3を利用して構成される。クラウドコンピューティングシステム3には、物体認識処理の少なくとも一部を行うホストコンピュータ21(情報処理装置)が含まれている。ホストコンピュータ21は、エッジデバイス11から送信される環境情報に基づき物体認識処理を行い、その認識結果を車両2に送信する。
【0031】
図2は、第1実施形態に係る車両2及びホストコンピュータ21のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0032】
車両2は、エッジデバイス11、車両制御システム12、及び通信I/F(Interface)13(第1送信部、第2受信部)を有する。
【0033】
エッジデバイス11は、撮像装置31(取得部)及び符号化器32(圧縮部)を有する。撮像装置31は、車両2の車体に搭載され、車両2の周囲を撮像し、画像データを取得する。符号化器32は、撮像装置31により取得された画像データに対して所定の符号化処理(圧縮処理)を施し、圧縮データを生成する。
【0034】
車両制御システム12は、ECU41(Electronic Control Unit)、走行機構42、及びユーザI/F43を有する。ECU41は、マイクロプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を利用して構成され、走行機構42及びユーザI/F43を制御するための制御信号を生成する。走行機構42は、駆動機構、制動機構、操舵機構等を含む。ユーザI/F43は、車内に搭載されたディスプレイ、スピーカ等を含む。
【0035】
通信I/F13は、移動体通信ネットワーク、コンピュータネットワーク等を介してホストコンピュータ21との通信を確立するデバイスである。通信I/F13は、エッジデバイス11(符号化器32)により生成された圧縮データをホストコンピュータ21に送信し、ホストコンピュータ21から送信された認識結果を受信する。通信I/F13により受信された認識結果は、車両制御システム12(ECU41)に出力される。
【0036】
ホストコンピュータ21は、CPU(Central Processing Unit)51、RAM(Random Access Memory)52、ROM(Read Only Memory)53、補助記憶装置54、ユーザI/F55、及び通信I/F56(第1受信部、第2送信部)を有する。CPU51は、ROM53や補助記憶装置54に記憶されたプログラム、ファームフェア等に従い所定の演算処理及び制御処理を行う。ユーザI/F55は、ユーザとの間で情報の入出力を実現するデバイスであり、例えばキーボード、ポインティングデバイス、ディスプレイ、スピーカ等であり得る。通信I/F56は、移動体通信ネットワーク、コンピュータネットワーク等を介して車両2(通信I/F13)との通信を確立するデバイスである。
【0037】
図3は、第1実施形態に係るホストコンピュータ21の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0038】
ホストコンピュータ21は、受信部101(第1受信部)、フィルタ部102(改変部)、認識部103、及び送信部104(第2送信部)を有する。これらの機能部101~104は、上述したようなホストコンピュータ21のハードウェア構成要素51~56及びプログラムの協働により構成される。
【0039】
受信部101は、車両2のエッジデバイス11により取得され、通信I/F13から送信された圧縮データを受信する。
【0040】
フィルタ部102は、画質改変モデル111(第1学習済みモデル)を利用して圧縮データを改変し、物体認識処理に適した改変データを生成する。画質改変モデル111は、圧縮データを、物体認識処理の認識精度が向上するように改変する学習済みモデルである。画質改変モデル111は、人の目から見て画像が鮮明であるか否かという観点ではなく、物体認識処理が高精度で行われるか否かという観点に基づき構築される。例えば、画質改変モデル111は、画像中から検出対象となる物体(他車両、人等)に対応する領域を識別するために有効な画像的特徴を強調するように圧縮データを改変する。
【0041】
画質改変モデル111は、改変層121及び複合層122を有する。改変層121は、圧縮データに対して改変処理を行うことにより改変圧縮データを生成する。復号層122は、改変圧縮データに対して復号処理を行うことにより改変データを生成する。
【0042】
認識部103は、フィルタ部102により生成された改変データに基づき物体認識処理を行う。認識部103は、物体認識処理の結果として、車両2の周囲に存在する物体(例えば他車両、人等)の存否、位置、距離等を示すデータである認識結果を生成する。
【0043】
送信部104は、認識部103により生成された認識結果を車両2の通信I/F13に送信する。
【0044】
図4は、第1実施形態に係る走行支援システム1における処理の一例を示すフローチャートである。
【0045】
撮像装置31が車両2の周囲の画像データを取得すると(S101)、符号化器32は画像データを圧縮して圧縮データを生成する(S102)。車両2の通信I/F13は、圧縮データをホストコンピュータ21へ送信する(S103)。
【0046】
ホストコンピュータ21の通信I/F56(受信部101)は、圧縮データを受信する(S104)。フィルタ部102(画質改変モデル111の改変層121)は、圧縮データを改変し、改変圧縮データを生成する(S105)。また、フィルタ部102(画質改変モデル111の復号層122)は、改変圧縮データを復号し、改変データを生成する(S106)。認識部103は、改変データに基づき物体認識処理を実行する(S107)。ホストコンピュータ21の通信I/F56(送信部104)は、物体認識処理による認識結果を車両2へ送信する(S108)。
【0047】
車両2の通信I/F13は、認識結果を受信する(S109)。車両制御システム12は、認識結果に基づき車両制御を実行する(S110)。
【0048】
図5は、第1実施形態に係る機械学習アルゴリズムの一例を示すブロック図である。
【0049】
本実施形態に係る機械学習アルゴリズム(学習済みモデル生成方法)は、誤差逆伝播学習法を利用して画質改変モデル111を構築するものである。本実施形態に係る機械学習アルゴリズムは、画像データ(非圧縮データ)に基づく物体認識処理の認識結果Aと、改変データに基づく物体認識処理の認識結果Bとの誤差が最小化されるように、画像改変モデル111で使用されるパラメータを調整する。
【0050】
図6は、第1実施形態に係る機械学習アルゴリズムにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【0051】
本実施形態に係る機械学習アルゴリズムを実行する学習装置は、撮像装置31により取得された画像データ(非圧縮データ)に基づく認識結果Aを取得する(S201)。学習装置は、学習対象となっている画質改変モデル111により生成された改変データに基づく認識結果Bを取得する(S202)。このとき、画質改変モデル111は、所定のパラメータを用いて圧縮データを改変データに改変する。
【0052】
学習装置は、認識結果Aと認識結果Bとの誤差の度合いを示す誤差値(ここでは誤差値が大きい程誤差が大きいものとする。)が閾値より小さいか否かを判定する(S203)。誤差値が閾値より小さい場合(S203:Yes)、ステップS202において使用されたパラメータを適用して画質改変モデル111を確定する(S204)。誤差値が閾値より小さくない場合(S203:No)、学習装置は、所定の規則に従い画像改変モデル111のパラメータを変更し(S205)、変更後のパラメータを用いて再度ステップS202以降の処理を実行する。これにより、認識結果Aと認識結果Bとの誤差が最小化されるように画像改変モデル111が構築される。
【0053】
図7は、第1実施形態に係る改変データを用いて他車両を認識する場合における認識精度の一例を示すグラフである。
図8は、第1実施形態に係る改変データを用いて人を認識する場合における認識精度の一例を示すグラフである。
図7及び
図8において、横軸は画像データの圧縮率に対応し、右縦軸は認識結果の平均精度に対応する。
【0054】
図7及び
図8において、実線は、改変データに基づき物体認識処理を行った場合における圧縮率と認識精度との関係を示している。破線は、通常の復号データ(符号化器32により圧縮された圧縮データを、フィルタ部102を通さずに復号したデータ)に基づき物体認識処理を行った場合における圧縮率と認識精度との関係を示している。
【0055】
図7及び
図8に示すように、改変データを用いた場合の認識精度は、通常の復号データを用いた場合と比較して全体的に高くなっている。このことから、本実施形態に係る画質改変モデル111は、改変データに基づく物体認識処理の認識精度が通常の復号データに基づく物体認識処理の認識精度より高くなるように圧縮データを改変するものであることがわかる。また、
図7及び
図8には、比較的高い圧縮率における両認識精度の差が大きいことが示されている。これらのことから、フィルタ部102(画質改変モデル111)を利用することにより、圧縮率にかかわらず認識精度を向上できると共に、高い圧縮率を採用しても認識精度を高く維持できると言える。
【0056】
上記実施形態に係る各種機能をホストコンピュータ21に実行させるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供することが可能なものである。また、当該プログラムは、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布されてもよい。
【0057】
上記実施形態によれば、画像データを高い圧縮率で圧縮しても、高い精度で物体認識処理を行うことができる。これにより、上記のような走行支援システム1において、車両2等の移動体からホストコンピュータ21へ送信されるデータの情報量を低く抑えつつ、高精度な物体認識処理を実現できる。
【0058】
以下に、他の実施形態について図面を参照して説明するが、第1実施形態と同一又は同様の作用効果を奏する箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0059】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係る機械学習アルゴリズムの一例を示すブロック図である。
【0060】
本実施形態に係る符号化器32は、学習済みモデルである符号化モデル221(第2学習済みモデル)を利用して画像データを圧縮する。
【0061】
本実施形態に係る機械学習アルゴリズム(学習済みモデル生成方法)は、誤差逆伝播学習法を利用して画質改変モデル111及び符号化モデル221を構築するものである。本実施形態に係る機械学習アルゴリズムは、画像データ(非圧縮データ)に基づく物体認識処理の認識結果Aと、改変データに基づく物体認識処理の認識結果Bとの誤差が最小化されるように、画像改変モデル111で使用されるパラメータと、符号化モデル221で使用されるパラメータとを調整する。
【0062】
図10は、第2実施形態に係る機械学習アルゴリズムにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【0063】
本実施形態に係る機械学習アルゴリズムを実行する学習装置は、撮像装置31により取得された画像データ(非圧縮データ)に基づく認識結果Aを取得する(S301)。学習装置は、学習対象となっている符号化モデル221により圧縮された圧縮データを学習対象となっている画質改変モデル111により改変した改変データに基づく認識結果Bを取得する(S302)。このとき、符号化モデル221は、所定のパラメータを用いて画像データを圧縮し、圧縮データを生成する。画質改変モデル111は、所定のパラメータを用いて圧縮データを改変データに改変する。
【0064】
学習装置は、認識結果Aと認識結果Bとの誤差の度合いを示す誤差値(ここでは値が大きい程誤差が大きいものとする。)が閾値より小さいか否かを判定する(S303)。誤差値が閾値より小さい場合(S303:Yes)、ステップS302において使用されたパラメータを適用して符号化モデル221及び画質改変モデル111を確定する(S304)。誤差値が閾値より小さくない場合(S303:No)、学習装置は、所定の規則に従い符号化モデル221のパラメータ及び画像改変モデル111のパラメータを変更し(S305)、変更後のパラメータを用いて再度ステップS302以降の処理を実行する。これにより、認識結果Aと認識結果Bとの誤差が最小化されるように符号化モデル221及び画像改変モデル111が構築される。
【0065】
上記実施形態によれば、フィルタ部102による圧縮データの改変だけでなく、符号化器32による画像データの圧縮も学習済みモデルにより実行できる。これにより、画像データの圧縮処理の最適化及び認識精度の向上を更に図ることができる。
【0066】
(第3実施形態)
図11は、第3実施形態にかかる車両2及びホストコンピュータ21のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0067】
本実施形態に係るエッジデバイス11(符号化器32)は、圧縮データと、符号化器32による圧縮処理に関するメタデータとを出力し、通信I/F13は、圧縮データ及びメタデータをホストコンピュータ21に送信する。メタデータは、認識部103(
図3参照)による物体認識処理の精度を向上させることを目的として、符号化器32が補助的に出力する微小データである。メタデータは、認識部103の種類に応じて変更される。メタデータは、画像全体を平均的に復元する目的においては省略され得るデータであるが、認識部103による物体認識処理にとって重要な特徴情報を示し、符号化器32が主として出力する圧縮データとは別途生成されるデータである。メタデータは、画像内の物体位置・種別等を含んでもよい。ホストコンピュータ21は、圧縮データ及びメタデータに基づき物体認識処理を行う。
【0068】
図12は、第3実施形態に係る走行支援システム1における処理の一例を示すフローチャートである。
【0069】
撮像装置31が車両2の周囲の画像データを取得すると(S401)、符号化器32は画像データに圧縮処理を施して圧縮データを生成し、当該圧縮処理に関し物体認識処理の精度を向上させるためのメタデータを生成する(S402)。車両2の通信I/F13は、圧縮データ及びメタデータをホストコンピュータ21へ送信する(S403)。
【0070】
ホストコンピュータ21の通信I/F56(受信部101)は、圧縮データ及びメタデータを受信する(S404)。フィルタ部102(画質改変モデル111の改変層121)は、メタデータに基づき圧縮データを改変し、改変圧縮データを生成する(S405)。また、フィルタ部102(画質改変モデル111の復号層122)は、メタデータに基づき改変圧縮データを復号し、改変データを生成する(S406)。認識部103は、改変データに基づき物体認識処理を実行する(S407)。ホストコンピュータ21の通信I/F56(送信部104)は、物体認識処理の結果である認識結果を車両2へ送信する(S408)。
【0071】
車両2の通信I/F13は、認識結果を受信する(S409)。車両制御システム12は、認識結果に基づき車両制御を実行する(S410)。
【0072】
上記実施形態によれば、圧縮処理に関し物体認識処理の精度を向上させるためのメタデータに基づき圧縮データを改変する処理が行われる。これにより、改変データの生成をより効率的に行うことができる。
【0073】
以上、本開示の実施形態を説明したが、上述した実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述した実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0074】
例えば、上述した実施形態においては、車両2(移動体)の周囲の状況を示す環境情報として、画像データを用いる例を示したが、環境情報はこれに限定されるものではない。例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging)等により取得されるTOF情報等であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…走行支援システム、2…車両(移動体)、3…クラウドコンピューティングシステム、11…エッジデバイス、12…車両制御システム(制御部)、13…通信I/F(第1送信部、第2受信部)、21…ホストコンピュータ(情報処理装置)、31…撮像装置(取得部)、32…符号化器(圧縮部)、41…ECU、42…走行機構、43…ユーザI/F、51…CPU、52…RAM、53…ROM、54…補助記憶装置、55…ユーザI/F、56…通信I/F、101…受信部(第1受信部)、102…フィルタ部(改変部)、103…認識部、104…送信部(第2送信部)、111…画質改変モデル(第1学習済みモデル)、121…改変層、122…復号層、221…符号化モデル(第2学習済みモデル)