(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038419
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】補助輪
(51)【国際特許分類】
B62H 1/12 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
B62H1/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142916
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】519030154
【氏名又は名称】アール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591117413
【氏名又は名称】株式会社菊池製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】安藤 弘
(57)【要約】
【課題】二輪車に装着され、この二輪車における走行時の円滑な操作性を確保しつつ、停止時や低速走行時における車体の傾斜や倒れ等を防止することを可能とする補助輪を提供する。
【解決手段】二輪車Xに装着される補助輪1であって、補助輪本体Aと、補助輪本体Aを二輪車Xに着脱可能に取り付ける取付け手段Bと、を備え、補助輪本体Aは、二輪車Xの車輪X1と共に接地可能に構成されたホイール部A1と、ホイール部A1を、接地位置P1と地面から離間させられた格納位置P2との間で移動可能とする移動手段A2と、二輪車Xの走行速度に基づいて移動手段A2の動作を制御する制御手段A3と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車に装着される補助輪であって、
補助輪本体を備え、
前記補助輪本体は、前記二輪車の車輪と共に接地可能に構成されたホイール部と、前記ホイール部を、接地位置と地面から離間させられた格納位置との間で移動可能とする移動手段と、前記二輪車の走行速度に基づいて前記移動手段の動作を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記二輪車の走行速度が設定値以下である場合に、前記ホイール部を前記接地位置に位置させ、前記二輪車の走行速度が設定値よりも大きい場合に、前記ホイール部を前記格納位置に位置させるように、前記移動手段を制御可能に構成されている補助輪。
【請求項2】
前記二輪車の車体に設けられる手動スイッチを備え、
前記手動スイッチは、前記走行速度に関わらず、前記ホイール部の前記接地位置と前記格納位置との間を移動するように、前記制御手段を制御する、請求項1に記載の補助輪。
【請求項3】
前記移動手段は、前記ホイール部を直線方向に移動させる移動手段本体を含む、請求項1又は2に記載の補助輪。
【請求項4】
前記移動手段本体は、ボールねじ機構である、請求項3に記載の補助輪。
【請求項5】
前記補助輪本体は、前記ホイール部に付与された外力を吸収する緩衝手段を有する、請求項1~4の何れかに記載の補助輪。
【請求項6】
前記移動手段は、前記ホイール部における前記接地位置と前記格納位置との間の移動を補助する補助手段を含み、
前記補助手段は、前記ホイール部の移動軌跡に沿って摺動可能に、前記ホイール部を支持する、請求項1~5の何れかに記載の補助輪。
【請求項7】
前記ホイール部は、ホイール部本体と、ホイール部本体を回転軸支する回転軸部と、を含み
前記回転軸部には、前記ホイール部本体における、前記二輪車の前進方向の回転のみを許容するワンウェイクラッチが設けられている、請求項1~6の何れかに記載の補助輪。
【請求項8】
前記ホイール部は、空気により膨張する空気圧タイヤである、請求項1~7の何れかに記載の補助輪。
【請求項9】
前記補助輪本体を前記二輪車に着脱可能に取付ける取付け手段を備える、請求項1~8の何れかに記載の補助輪。
【請求項10】
請求項1~9の何れかに記載の補助輪を備えた二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車の転倒を防止するための補助輪に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、二輪車は停止時や低速走行時において姿勢が不安定となる。このために、従来では、例えば、特許文献1に示されるように、車体の後部両側に補助輪を設けて車体の倒れを防止しつつ、走行中における走行方向変更時の車体の傾斜を許容するようにした二輪車が提案されている。
【0003】
また、前述したように車体を傾斜させた状態であっても、両補助輪を接地状態に保持しなければならないため、特許文献1においては、これらの補助輪と車体との間に、この車体を直進時の姿勢に戻すような、たとえば、弾発部材やサスペンション等の補助手段を設けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二輪車は、特に通常走行時において、走行方向を変更する際には車体を傾斜させる必要がある。
しかしながら、前述した従来の技術では、このような車体を傾斜させる操作に際し、補助手段が傾動操作の抵抗となる。
【0006】
この結果、車体を傾斜させる際の操作性、すなわち、二輪車の操作性に影響を与えてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであり、二輪車に装着され、この二輪車における走行時の円滑な操作性を確保しつつ、停止時や低速走行時における車体の傾斜や倒れ等を防止することを可能とする補助輪を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、二輪車に装着される補助輪であって、
補助輪本体を備え、
前記補助輪本体は、前記二輪車の車輪と共に接地可能に構成されたホイール部と、前記ホイール部を、接地位置と地面から離間させられた格納位置との間で移動可能とする移動手段と、前記二輪車の走行速度に基づいて前記移動手段の動作を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記二輪車の走行速度が設定値以下である場合に、前記ホイール部を前記接地位置に位置させ、前記二輪車の走行速度が設定値よりも大きい場合に、前記ホイール部を前記格納位置に位置させるように、前記移動手段を制御するように構成されている。
【0009】
本発明によれば、二輪車の走行速度に基づいて移動手段の動作を制御する制御手段を有することで、ホイール部の位置を、二輪車の走行速度に基づいて、接地位置と地面から離間させられた格納位置との間で移動させることが可能となる。
【0010】
ここで、前述した走行速度に基準値を設け、たとえば、この基準値を、二輪車の姿勢が不安定となる低速の走行速度とし、この基準値以下の場合(停止時を含む)に、ホイール部を接地位置に位置させるようにし、また、走行速度が前記基準値を超えた場合に、ホイール部を格納位置に位置させるようにすることができる。
【0011】
これによって、姿勢が不安定となる走行速度の領域では、ホイール部を接地位置に位置させることにより二輪車が傾斜することを防止し、姿勢が安定する通常の走行速度領域では、ホイール部を格納して地面から離間させることができる。
【0012】
したがって、通常の走行速度領域では、車体を傾斜させる際にホイール部からの抵抗がなくなる。この結果、円滑な傾動操作を確保して走行時の操作性が損なわれることを防止することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記二輪車の車体に設けられる手動スイッチを備え、前記手動スイッチは、前記走行速度に関わらず、前記ホイール部の前記接地位置と前記格納位置との間を移動するように、前記制御手段を制御する。
【0014】
このような構成とすることで、低速あってもホイール本体を接地位置に位置させたい場合等、使用環境に合わせて、自由にホイール部の位置を変化させることができるため、本補助輪の使い勝手が向上する。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記移動手段は、前記ホイール部を直線方向に移動させる移動手段本体を含む。
【0016】
このような構成とすることで、より少ない動作時間、動作距離でもって、ホイール部の各位置間を移動させることができ、本補助輪の省電力化に寄与することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記移動手段本体は、ボールねじ機構を含む。
【0018】
このような構成とすることで、よりシンプルな構成で、ホイール部の各位置間の移動動作を行わせることができ、故障リスクの低減や製造性の向上に寄与することができる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記補助輪本体は、前記ホイール部に付与された外力を吸収する緩衝手段を有する。
【0020】
このような構成とすることで、走行地形の変化によりホイール部に付与される外力を吸収し、本補助輪の破損の防止や、安定した走行状態を維持することができる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記移動手段は、前記ホイール部における前記接地位置と前記格納位置との間の移動を補助する補助手段を含み、前記補助手段は、前記ホイール部の移動軌跡に沿って摺動可能に、前記ホイール部を支持する。
【0022】
このような構成とすることで、ホイール部の各位置間の動作を、より安定したものとすることができる。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記ホイール部は、ホイール部本体と、ホイール部本体を回転軸支する回転軸部と、を含み、前記回転軸部には、前記ホイール部本体における、前記二輪車の前進方向の回転のみを許容するワンウェイクラッチが設けられている。
【0024】
このような構成とすることで、二輪車の停止位置の路面が傾斜している場合であっても、ホイール部がブレーキとなり、不意に二輪車が前進してしまう事態を防止することが可能となる。
【0025】
本発明の好ましい形態では、前記ホイール部は、空気により膨張する空気圧タイヤである。
【0026】
このような構成とすることで、走行地形の変化によりホイール部に付与される外力を、より効果的に吸収することができる。
【0027】
本発明の好ましい形態では、前記補助輪本体を前記二輪車に着脱可能に取付ける取付け手段を備える。
【0028】
このような構成とすることで、既存の二輪車に対して本補助輪を適用することができ、また、使用環境等に合わせて、不要な場合には取り外すことができるため、本補助輪の汎用性が向上する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、二輪車に装着され、この二輪車における走行時の円滑な操作性を確保しつつ、停止時や低速走行時における車体の傾斜や倒れ等を防止することを可能とする補助輪を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係る補助輪の概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る補助輪を示す図であって、(a)正面図、(b)右側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る補助輪の、二輪車への取付け方法の説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る補助輪の、二輪車への取付け方法の説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る補助輪における制御手段のブロック図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る補助輪における制御手段の制御フロー図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る補助輪の動作態様の説明図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る補助輪の変更例を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る補助輪の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る補助輪について説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、これらの図において、符号1は、本実施形態に係る補助輪を示す。
【0032】
図1及び
図2に示すように、補助輪1は、補助輪本体Aと、補助輪本体Aを二輪車X(
図4参照)に着脱可能に取付ける取付け手段Bと、補助輪本体Aを支持する基台Cと、二輪車Xの車体に設けられる手動スイッチD(
図4参照)と、を備える。
なお、
図1及び
図2において、取付け手段Bについては、基台Cの上端に延設された補助輪側取付け部B1が示されており、後述する二輪車側取付け部B2については、省略している。
【0033】
補助輪本体Aは、二輪車Xの車輪X1(
図4参照)と共に接地可能に構成されたホイール部A1と、ホイール部A1を、接地位置P1(
図7参照)と地面から離間させられた格納位置P2(
図7参照)との間で移動可能とする移動手段A2と、二輪車Xの走行速度に基づいて移動手段A2の動作を制御する制御手段A3(
図5参照)と、ホイール部A1に付与された外力を吸収する緩衝手段A4(
図2参照)と、を有する。
【0034】
ホイール部A1は、本実施形態においては、剛性を有する略円形状のホイール部本体A1aと、ホイール部本体A1aの外周面全周に設けられたゴムシート部A1bと、内部に軸受け(図示せず)が設けられることで、緩衝手段A4の下端部に回転自在に軸支させられる回転軸部A1cと、を含む。
【0035】
回転軸部A1cには、ホイール部本体A1aにおける、二輪車Xの前進方向の回転のみを許容するワンウェイクラッチRが設けられている。
【0036】
移動手段A2は、ホイール部A1を直線方向に移動させる移動手段本体A2aと、移動手段本体A2aに隣接して設けられ、制御手段A3に電気的に接続されることにより、移動手段本体A2aを動作させる電動モーターM(
図2(a)参照)が内蔵された電動モーター部A2bと、移動手段本体A2aと電動モーター部A2bとの上面に設けられた取付け突起A2cと、ホイール部A1における接地位置P1と格納位置P2との間の移動を補助する補助手段A2dと、を含む。
電動モーターMは、制御手段A3から延びるケーブルA3aを介して、制御手段A3に電気的に接続されている。
なお、制御手段A3は、二輪車Xに別途設けられたバッテリー(図示せず)と電気的に接続されており、電動モーターMは、制御手段A3(ケーブルA3a)を介して、バッテリーから電力を供給されている。
【0037】
補助手段A2dは、緩衝手段A4を介して、且つホイール部A1の移動軌跡に沿って摺動可能に、ホイール部A1を支持している。
即ち、補助手段A2dは、基台Cに取付けられ、基台Cの面方向に沿って延びるレール部L1と、レール部L1に対して摺動可能に嵌合するブラケットL2と、により構成されている。
【0038】
取付け手段Bは、基台Cの上端に延設された補助輪側取付け部B1と、二輪車側取付け部B2(
図3参照)と、を有している。
【0039】
補助輪側取付け部B1には、二輪車側取付け部B2と連結するための貫通孔h1が、2カ所設けられている。
【0040】
基台Cと補助輪側取付け部B1とは、一枚の薄板状体を屈曲させることで構成され、補助輪側取付け部B1は、基台Cに対する補助輪本体Aの取付け面と対向する側に向かって屈曲形成させられている。
【0041】
図2(a)は、補助輪の正面図であって、移動手段A2の内部構成を概略的に示している。即ち、
図2(a)では、移動手段本体A2aにおける駆動軸部W1が格納させる筐体及び電動モーター部A2bのみを、断面図で示している。
また、
図2(a)では、ホイール部A1を点線とし、ホイール部A1の後方に配置されている緩衝手段A4を示している。
【0042】
図2(a)に示すように、移動手段本体A2aは、ボールねじ機構であり、上下方向に延びる中空円筒状の駆動軸部W1、駆動軸部W1の上端に設けられるナット部W2、ナット部W2に挿通させられたねじ部W3、ねじ部W3を回転支持する軸受けW4、電動モーターMの回転をねじ部W3に伝達する歯車部W5等により構成されている。
【0043】
移動手段本体A2aは、このような構成により、電動モーターMの回転方向に基づいて、ナット部W2がねじ部W3に沿って上下方向に摺動することで、ホイール部A1を直線方向(上下方向)に移動させることができる。
【0044】
緩衝手段A4は、本実施形態においては、一対のスプリングや一対のショックアブソーバー等により構成された所謂サスペンションであり、その下端部が、回転軸部A1cに、その上端部が、補助手段A2dのブラケットL2に、それぞれ連結されている。
【0045】
図2(b)に示すように、回転軸部A1cは、その内部に挿通させられたシャフトjと複数のナットnとにより、緩衝手段A4の下端部に連結させられている。
また、駆動軸部W1は、ネジsと複数のナットnとにより、ブラケットL2に連結させられている。
また、緩衝手段A4は、その上端が、ネジsと複数のナットnとにより、ブラケットL2の下端に連結させられている。
また、取付け突起A2cは、ネジsと複数のナットnとにより、基台Cの上部に連結させられている。
【0046】
上記のように構成することで、ホイール部A1の移動手段A2による動作を可能としつつ、補助輪本体Aが、基台Cに安定的に取付けられる。
【0047】
以下、
図3及び
図4を用いて、補助輪1の、二輪車Xへの取付け方法を説明する。
なお、本実施形態においては、二輪車Xは一般的な自転車であり、
図4に示すように、後輪である車輪X1と、車輪X1の中央に設けられたハブX2と、ハブX2から延びるフレームX3と、を備える。
また、フレームX3は、略水平方向に延びるチェーンステーX3aと、斜め上方に延びるシートステーX3bと、を有する。
【0048】
図3に示すように、取付けに際して、取付け手段Bの二輪車側取付け部B2を用いる。
【0049】
二輪車側取付け部B2は、補助輪側取付け部B1に当接させられる二輪車側取付け部本体B2aと、二輪車側取付け部本体B2aの上端から延設させられたハブ取付け部B2bと、ハブ取付け部B2bの側方から延設させられたフレーム当接部B2cと、を含む。
また、二輪車側取付け部B2の、車輪X1と対向する面には、後述する回転計A3bを構成する磁気センサーm1が設けられている。
磁気センサーm1は、別途ケーブルを介して制御手段A3に、電気的に接続されている。
【0050】
二輪車側取付け部本体B2aには、補助輪側取付け部B1と連結するための貫通孔h2が、2カ所設けられている。
【0051】
ハブ取付け部B2bには、車輪X1中央のハブX2が有するネジやナット等の軸部品X2a(
図4参照)が挿通させられる貫通孔h3が設けられている。
【0052】
フレーム当接部B2cには、その先端部に、二輪車XのフレームX3の外周面に沿って当接するように湾曲形成された湾曲部kが設けられている。
【0053】
補助輪1を二輪車Xへ取付ける際、まず、作業者は、補助輪側取付け部B1が上になるように、補助輪側取付け部B1と二輪車側取付け部本体B2aとを重ね合わせ、各貫通孔h1及びh2を連通させる。
【0054】
次に、作業者は、各ボルトbを各貫通孔h1及びh2に挿通させ、ナットnにより、各ボルトb及びワッシャーwを補助輪側取付け部B1及び二輪車側取付け部本体B2aに締結する。
【0055】
次に、作業者は、
図4に示すように、ハブ取付け部B2bの貫通孔h3に軸部品X2aを挿通させ、ナット等により、軸部品X2aをハブ取付け部B2bに締結する。
また、このとき、作業者は、フレーム当接部B2cの延びる方向を、フレームX3のチェーンステーX3aの延びる方向に沿わせておき、湾曲部cを、チェーンステーX3aの外周面に当接させる。
なお、フレーム当接部B2cは、シートステーX3bの延びる方向に延びていても良く、チェーンステーX3a方向に延びる部分とシートステーX3b方向に延びる部分とで、フレーム当接部B2cが2つ設けられていても良い。
【0056】
このようにすることで、補助輪1が二輪車Xに安定的に取付けられる。
なお、本実施形態においては、補助輪1を二輪車Xの左側面に取付けた例を示すが、右側面に取付けても良いし、両側面に取付けても良く、一つの二輪車Xに対する補助輪1の取付け数は、特に限定されない。
【0057】
また、
図4に示すように、車輪X1の、ハブX2を挟んで対向する2本のスポークに、それぞれ一つずつ、後述する回転計A3bを構成するマグネットm2が設けられている。
【0058】
また、
図4に示すように、二輪車Xの車体の一部である左方のハンドルX4に、手動スイッチDが設けられている。
【0059】
手動スイッチDは、別途ケーブルにより制御手段A3に電気的に接続された、3ポジションの所謂トグルスイッチであり、例えば、中央に位置する場合には、制御手段A3は動作せず、前方に倒すことで、ホイール本体A1を、格納位置P2に位置させるように、制御手段A3を動作させ、後方に倒すことで、ホイール本体A1を、接地位置P1に位置させるように、制御手段A3を動作させるように構成されている。
【0060】
以下、
図5及び
図6を用いて、制御手段A3の構成について詳述する。
【0061】
制御手段A3は、
図5に示すように、電動モーターMと接続するケーブルA3aと、二輪車Xの車輪X1の回転数を検出する回転計A3bと、二輪車Xの走行速度を検出する速度計A3cと、ホイール部A1が格納位置P2にあることを検出する格納位置検出センサーA3dと、ホイール部A1が下方へ移動させられて接地状態にあることを検出する接地位置検出センサーA3eと、これらの回転計A3b、速度計A3c、格納位置検出センサーA3d及び接地位置検出センサーA3eからの情報に基づき、電動モーターMの動作を制御するプロセッサA3fと、を有する。
なお、制御手段A3は、例えばサドルの下面やシートピラー等、走行時の障害とならない任意の箇所に取付け可能である。また、格納位置検出センサーA3dや接地位置検出センサーA3eは、例えば、駆動軸部W1が格納させる筐体の内部に設けても良い。
【0062】
回転計A3bは、上記の通り、磁気センサーm1とマグネットm2とにより構成され、各マグネットm2を検知する時間間隔を検知することで、プロセッサA3fにより、この時間間隔が、車輪X1の回転数として変換、検出される。
【0063】
プロセッサA3fには、二輪車Xの姿勢が不安定となると想定される走行速度V1(例えば、10km/h)が設定されており、この走行速度V1を基準にホイール部A1の位置制御を行なうようになっている。
【0064】
また、プロセッサA3fは、手動スイッチDが前方に倒されたか或いは後方に倒されたかという操作情報を取得し、電動モーターMの動作を制御する。
【0065】
次に、制御手段A3による、移動手段A2を介したホイール部A1の位置制御について、
図8の制御フロー図を参照して説明する。
【0066】
まず、制御が開始されると、ステップS1において、手動スイッチDによる操作情報が取得されたか否かが判断される。
【0067】
操作情報が取得された場合、ステップS2へ移行し、操作情報の種類を判断する。
即ち、手動スイッチDが前方に倒されたか(格納側)、後方に倒されたか(接地側)、を判断する。
そして、格納側であれば後述するステップS6に移行し、接地側であれば後述するステップS8に移行する。
【0068】
操作情報が取得されない場合、即ち、手動スイッチDが中央に位置している場合、ステップS3に移行し、回転計A3bからの情報を基に車輪X1が回転しているか、即ち、人がペダルを漕いで走行しているか否かが判断される。
ここで車輪X1が回転していない場合、二輪車Xが停止状態と判断され、制御が終了する。
【0069】
また、車輪X1が回転している場合には、次のステップS4へ移行し、速度計A3cからの速度情報の有無が判断される。
速度情報がない場合には、車輪X1が回転状態にあることを条件として、速度情報が入力されるまでステップS4を繰り返す。
【0070】
そして、速度情報がある場合にはつぎのステップS5へ移行し、走行速度Vが、予め設定されている基準の走行速度V1(好ましくは、走行姿勢が不安定となる走行速度に設定する)以下か否かが判断される。
【0071】
ここで、走行速度Vが基準の走行速度V1を超えている場合には、二輪車Xが安定して走行できる速度領域にあるとしてステップS6へ移行する。
【0072】
ステップS6へ移行すると、制御手段A3から移動手段A2へ、ケーブルA3aを介して信号が送出され、電動モーターMによってボールねじ機構が駆動する。即ち、駆動軸部W1が上方へ移動させられ、駆動軸部W1に支持されているホイール部A1が上方の格納位置P2に位置させられる。
【0073】
そして、つぎのステップS7において、格納位置検出センサーA3dからの情報に基づき、ホイール部A1が格納位置P2にあることが検出されたことを条件としてステップS1以降の処理に戻る。
【0074】
このように、安定した姿勢での走行が可能な速度領域での走行時には、ホイール部A1が格納位置P2に位置させられて、地面G(
図7参照)との接触が回避されている。
したがって、進行方向の変更のため二輪車Xを左右に傾斜させる際にホイール部A1が邪魔にならず、二輪車Xの傾動操作、即ち、走行方向変更操作を円滑に行なうことができる。
【0075】
一方、ステップS5において、走行速度Vが基準の走行速度V1以下であると判断された場合には、二輪車Xは走行姿勢が不安定となる走行領域にあるとしてステップS8へ移行する。
【0076】
ステップS8では、プロセッサA3fからの駆動信号によって、駆動軸部W1が下方へ移動させられ、駆動軸部W1に支持されているホイール部A1が接地位置P1に移動させられる。
【0077】
そして、つぎのステップS9において、接地位置検出センサーA3eからの情報に基づき、ホイール部A1が接地位置P1にあることが検出されたことを条件としてステップS2以降の処理に戻る。
【0078】
このように、二輪車Xが、走行姿勢が不安定となる走行速度領域に至った際に、ホイール部A1が接地されることにより、二輪車Xの左右への傾斜や倒れを防止することができる。
【0079】
図7に、上記の制御手段A3による走行速度に基づいた移動手段A2の動作制御を行った際の移動手段A2及びホイール部A1の動作態様を示す。
なお、
図7において、ホイール部A1が格納位置P2に位置させられた際のホイール部A1、駆動軸部W1及びブラケットL2については一点鎖線で示している。
【0080】
上記したように、走行速度Vが基準の走行速度V1以下であると判断された場合には、ホイール部A1が、駆動軸部W1と共に下方へ移動させられ、接地位置P1に位置させられる(矢印a1)。
【0081】
また、上記したように、走行速度Vが基準の走行速度V1を超えている場合には、ホイール部A1が、駆動軸部W1と共に上方へ移動させられ、格納位置P2に位置させられる(矢印a2)。
【0082】
本実施形態によれば、基準の走行速度V1が設定された制御手段により、姿勢が不安定となる走行速度Vの領域では、ホイール部A1を接地位置P1に位置させることにより二輪車Xが傾斜することを防止し、姿勢が安定する通常の走行速度領域では、ホイール部A1を格納して地面Gから離間させることができる。
したがって、通常の走行速度領域では、車体を傾斜させる際にホイール部A1からの抵抗がなくなる。この結果、円滑な傾動操作を確保して走行時の操作性が損なわれることを防止することができる。
【0083】
また、手動スイッチDにより、低速であってもホイール部A1を接地位置P1に位置させたい場合等、使用環境に合わせて、自由にホイール部A1の位置を変化させることができるため、補助輪1の使い勝手が向上する。
【0084】
また、移動手段A2がホイール部A1を直線方向に移動させる移動手段本体A2aを含むことで、より少ない動作時間、動作距離でもって、ホイール部A1の各位置間を移動させることができ、補助輪1の省電力化に寄与することができる。
【0085】
また、移動手段本体A2aがボールねじ機構であることで、よりシンプルな構成で、ホイール部A1の各位置間の移動動作を行わせることができ、故障リスクの低減や製造性の向上に寄与することができる。
【0086】
また、補助輪本体Aがホイール部A1に付与された外力を吸収する緩衝手段A4を有することで、走行地形の変化によりホイール部A1に付与される外力を吸収し、補助輪1の破損の防止や、安定した走行状態を維持することができる。
【0087】
また、移動手段A2がホイール部A1における接地位置P1と格納位置P2との間の移動を補助する補助手段A2dを含ことで、ホイール部A1の各位置間の動作を、より安定したものとすることができる。
【0088】
また、ワンウェイクラッチRにより、二輪車Xの停止位置の路面が傾斜している場合であっても、ホイール部A1がブレーキとなり、不意に二輪車Xが前進してしまう事態を防止することが可能となる。
【0089】
また、ホイール部A1は、空気により膨張する空気圧タイヤであることで、走行地形の変化によりホイール部A1に付与される外力を、より効果的に吸収することができる。
【0090】
また、補助輪本体Aを二輪車Xに着脱可能に取付ける取付け手段Bを備えることで、既存の二輪車Xに対して補助輪1を適用することができ、また、使用環境等に合わせて、不要な場合には取り外すことができるため、補助輪1の汎用性が向上する。
【0091】
なお、上述の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0092】
例えば、先の実施形態においては、ホイール部A1は、剛性を有する略円形状のホイール部本体A1aと、ホイール部本体A1aの外周面全周に設けられたゴムシート部A1bと、を有する、キャスター様を呈する例を示したが、これに限られない。
即ち、
図8に示すように、ホイール部A1´として、空気により膨張する空気圧タイヤを用いても良い。
【0093】
ホイール部A1´について詳述すれば、ホイール部A1´は、中空状のチューブ体であるホイール部本体A1a´と、中央から放射状に延びるディスク部A1b´と、内部に軸受け(図示せず)が設けられた回転軸部A1c´と、ホイール部本体A1a´の内部に空気を注入するためのバルブA1d´と、を有する。
なお、ホイール部A1´においても、当然にワンウェイクラッチRを設けることができる。
【0094】
このようにすることで、ホイール部A1´自体にクッション性が付与されることから、先の実施形態に示した緩衝手段A4が不要となり、補助輪1を、
図8に示すような、より簡素な構成とすることができる。ただし、本実施形態においても、ホイール部A1´と共に先の実施形態に示した緩衝手段A4を設ける構成としても良い。
【0095】
また、取付け手段Bについて、
図9に示すように、補助輪側取付け部B1を、基台Cと共に、湾曲部分の無い一枚の平板として構成し、二輪車側取付け部B2も同様に、一枚の平板として構成しても良い。
そして、補助輪側取付け部B1と二輪車側取付け部B2との間に、ボルトbが挿通される挿通孔(図示せず)が形成されたスペーサYを設け、これらをボルトb等で連結することで、二輪車Xに取付ける構成としても良い。
この場合、例えば、基台Cにおける、車輪X1と対向する面に、磁気センサーm1を設けることができる。
【0096】
なお、上記した実施形態においては、二輪車Xを自転車とした例を示したが、これに限られず、補助輪1は、オートバイやスクーター等の自動二輪車にも適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 補助輪
A 補助輪本体
A1、A1´ ホイール部
A2 移動手段
A2a 移動手段本体
W1 駆動軸部
W2 ナット部
W3 ねじ部
W4 軸受け
W5 歯車部
A3 制御手段
A4 緩衝手段
B 取付け手段
B1 補助輪側取付け部
B2 二輪車側取付け部
C 基台
X 二輪車
X1 車輪
X2 ハブ
X3 フレーム
P1 接地位置
P2 格納位置
G 地面