(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038420
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】医療用器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/30 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
A61B17/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142917
(22)【出願日】2020-08-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイト掲載日 令和2年3月31日 ウェブサイトアドレス http://www.innov-kyouryokukai.com/award/pdf/report_4-3.pdf
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(72)【発明者】
【氏名】木下 雅史
(72)【発明者】
【氏名】中田 光俊
(72)【発明者】
【氏名】馬田 広隆
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG14
4C160MM32
(57)【要約】
【課題】把持操作および剥離操作の両方を好適に行うことができ、処置中における器具交換の頻度を低減できる医療用器具を提供する。
【解決手段】医療用器具1は、把持面12aを有する細長の第一部材10と、把持面を有する細長の第二部材50と、前端部が第一部材に取り付けられて後方に延びる第一バネ71と、前端部が第二部材に取り付けられて後方に延びる第二バネ72とを備える。第一部材および第二部材は、導体で形成され、かつ先端から一定範囲を除く外面が絶縁被覆されており、第一部材と第二部材とは、互いの把持面を対向させた状態で相対回動可能に連結されている。第一バネの後端部と第二バネの後端部とが接触し、かつ第一バネおよび第二バネが弾性変形していない初期形状において、第一部材の先端と第二部材の先端とが離間している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持面を有する細長の第一部材と、
把持面を有する細長の第二部材と、
前端部が前記第一部材に取り付けられて後方に延びる第一バネと、
前端部が前記第二部材に取り付けられて後方に延びる第二バネと、
を備え、
前記第一部材および前記第二部材は、導体で形成され、かつ先端から一定範囲を除く外面が絶縁被覆されており、
前記第一部材と前記第二部材とは、互いの把持面を対向させた状態で相対回動可能に連結され、
前記第一バネの後端部と前記第二バネの後端部とが接触し、かつ前記第一バネおよび前記第二バネが弾性変形していない初期形状において、前記第一部材の先端と前記第二部材の先端とが離間している、
医療用器具。
【請求項2】
前記第一部材と前記第二部材との連結部位には、絶縁体からなる回動軸部材が通されており、前記第一部材と前記第二部材とが前記回動軸部材を中心として相対回動可能に連結されている、
請求項1に記載の医療用器具。
【請求項3】
前記第一バネおよび前記第二バネは金属からなり、絶縁部材を介してそれぞれ前記第一部材及び前記第二部材に取り付けられている、
請求項1または2に記載の医療用器具。
【請求項4】
前記第一部材および前記第二部材は、
前記先端を含む先端部と、
使用者が把持する基端部と、
前記先端部と前記基端部とを接続する中間部と、を有し、
前記先端部の長手軸と前記基端部の長手軸とが非平行である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の医療用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手技等に用いられる医療用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外科手術中には、様々な生体組織を把持したり、剥離したりする操作が行われる。把持操作および剥離操作は、目的の病変に到達する前にも行われるし、目的の病変を処置する際にも行われる。
【0003】
把持のための医療用器具として、医療用の鑷子が知られている(例えば、特許文献1参照)。剥離のための医療用器具としては、医療用の剥離子が知られている。一般的に、把持と剥離とはそれぞれ別の医療用器具を用いて行われるため、医療用器具を交換するための時間が必要となる。また、把持及び剥離はいずれも高頻度で行われるため、手術時間を長くする一因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の鑷子は、一対の挟持片の一端部が互いに連結された略V字形の形状をなす。鑷子の他端部に設けられた挟持面は、初期状態において離間しており、他端部に力を加えて挟持面を接近させた状態から力を緩めると、挟持片の弾性力により挟持面が離間する方向に移動しようとする。
挟持面のこのような動作を剥離操作に利用することは一応可能であるが、鑷子本来の使用法でないこともあり、操作性が悪い。
【0006】
また、脳神経外科領域においては、止血や脳機能の確認等の目的で電気が使用される。これらについても、現状は専用の器具が用いられているため、医療用器具の煩雑な交換が必要となっている。
【0007】
本発明は、把持操作および剥離操作の両方を好適に行うことができ、処置中における器具交換の頻度を低減できる医療用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、把持面を有する細長の第一部材と、把持面を有する細長の第二部材と、前端部が第一部材に取り付けられて後方に延びる第一バネと、前端部が第二部材に取り付けられて後方に延びる第二バネとを備える医療用器具である。
第一部材および第二部材は導体で形成され、かつ先端から一定範囲を除く外面が絶縁被覆されている。
第一部材と第二部材とは、互いの把持面を対向させた状態で相対回動可能に連結されている。
第一バネの後端部と第二バネの後端部とが接触し、かつ第一バネおよび第二バネが弾性変形していない初期形状において、第一部材の先端と第二部材の先端とが離間している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、把持操作および剥離操作の両方を好適に行うことができ、処置中における器具交換の頻度を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る医療用器具の平面図である。
【
図3】第一部材における第一バネの取り付け部位を示す図である。
【
図6】同医療用器具を本体に接続した状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について、
図1から
図6を参照して説明する。
図1は、本実施形態の医療用器具1を示す平面図であり、
図2は左側面図である。
図1に示すように、医療用器具1は、細長い棒状の第一部材10と第二部材50が回動可能に連結された基本構成を有する。
【0012】
第一部材10は、棒状の本体部11と、本体部11に設けられた連結部20およびガイド部25とを備えている。
本体部11は、把持及び剥離の際に組織と接触する先端部12と、ガイド部25が設けられた基端部14と、先端部12と基端部14とを接続する中間部13とを有する。
以降の説明において、先端部12がある側を医療用器具1の前方、基端部14がある側を医療用器具1の後方、
図1の紙面手前側を医療用器具1の上方、とそれぞれ定義する。
【0013】
先端部12は、先端に近づくにつれて徐々に細くなる先細り状に形成されている。先端部12には、
図1および
図2に示すように、把持の際に組織と接触する把持面12aと、剥離の際に組織と接触する剥離面12bとが形成されている。第一部材10において、把持面12aは、第二部材50と対向する側に形成され、剥離面12bは、第一部材10における把持面と反対側に形成されている。把持面12aおよび剥離面12bの形状に特に制限はないが、平坦に形成されるのが好ましい。必要に応じて、公知の表面粗し処理等により、把持面12aまたは剥離面12bに微小凹凸を設けて滑り止め機能を付与してもよい。
【0014】
基端部14は、使用者が把持する部位であり、先端部12よりも径の大きい半円柱状の形状を有する。これにより、基端部14は、曲面状の第一外周面と略平面状の第二外周面とを有する。
基端部14の前側の断面形状は、長手方向において第一外周面の曲率半径が所定周期で増減を繰り返すように形成されている。これにより、基端部前側の第一外周面には、
図1および
図2に示すように、一定の間隔で節15が形成されており、竹に似た外観を有している。
【0015】
中間部13は、基端部14の前端と接続されている。中間部13は、
図2に示すように、基端部14との接続部位から上方かつ前方に向かって延び先端部12の後端と接続されている。これにより、先端部の後端は、基端部14よりも上方に位置しており、基端部14の長手軸と先端部12の長手軸とは非平行となっている。先端部12の先端は、概ね基端部14の長手軸の延長線上に位置している。
【0016】
連結部20は、
図1に示すように基端部14の長手方向中間部に設けられ、第二部材50に向かって突出している。連結部20には、回動軸部材(後述)が挿通される軸孔20aが形成されている。
【0017】
ガイド部25は、基端部14に設けられた一対のガイド部材26および27を有する。
図1において、ガイド部材27は、ガイド部材26と重なっており、見えなくなっている。一対のガイド部材26、27は、所定の間隔を空けて略平行に第二部材50に向かって突出している。
【0018】
第二部材50は、第一部材10と同様の基本形状を有し、先端部12、中間部13、および基端部14を備えている。
図1に示すように、第二部材50も複数の節15を有する。第一部材10と第二部材50とは、
図1に示すように、互いの把持面12aが対向するように配置されている。
【0019】
第二部材50に形成された連結部21は、第一部材10に設けられた連結部20と概ね同様の形状であり、第一部材10に向かって突出している。第一部材10と第二部材50との連結態様の詳細については後述する。
【0020】
第二部材50には、被ガイド部28が設けられている。被ガイド部28の形状は、ガイド部材26やガイド部材27と概ね同様であり、第一部材10に向かって突出して一対のガイド部材26、27間に進入している。
【0021】
医療用器具1は、先端部12と接触した組織に電流を流せるように構成されている。以下、通電を可能とするための構成について説明する。
第一部材10および第二部材50は、通電可能な導体で形成され、先端から一定長さの範囲を除き、外面が絶縁被覆されている。一定長さは、例えば5~10mm程度とできる。
第一部材10の基端部14には、第一コード61が、第二部材50の基端部14には、第二コード62が、それぞれ電気的接続を確保して固定されている。固定は、例えば熱収縮チューブ等により行える。第一コード61および第二コード62は、プラグ63に接続されている。これにより、医療用器具1は、プラグ63を介して後述する本体に接続できるように構成されている。
【0022】
第一部材10および第二部材50には、第一バネ71および第二バネ72がそれぞれ取り付けられている。本実施形態における第一バネ71および第二バネ72は、金属からなる帯状の部材であるが、第一バネ71および第二バネ72の形状や材質は、後述する操作力量等を考慮して適宜決定できる。
【0023】
図3は、第一部材10における第一バネ71の取り付け部位を示す図である。本実施形態において、第一バネ71は、基端部14先端側の内側の面に取り付けられた絶縁部材73に固定されている。絶縁部材73は、例えばフッ素系樹脂等の絶縁体であり、ビス74により第一部材10に固定されている。フッ素系樹脂としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を例示できる。
【0024】
第一バネ71は、ネジ75により前側の端部を絶縁部材73に固定されている。第一バネ71は、緩やかに湾曲しながら後方かつ第二部材50に接近する方向に向かって延びている。
図4に、第一バネ71の取り付け部位の断面を示す。ビス74は、絶縁部材73を貫通して第一部材10と係合しているが、ネジ75は、絶縁部材73を貫通しておらず、第一部材10と接触していない。これにより、第一バネ71は、第一部材10と電気的に非接続の状態を確保しつつ第一部材10に固定されている。第二部材50に対する第二バネ72の取り付け態様も、概ね同様である。
【0025】
上述の延び方により、第一バネ71と第二バネ72とは、後端に近づくほど接近している。第一バネ71の後端は細くなっており、二股に分かれた第二バネ72の後端間に進入して交差している。このような構成により、第一部材10と第二部材50とは、第一バネ71の後端部と第二バネ72の後端部とが接触して係合し、かつ第一バネ71および第二バネ72が弾性変形していない初期形状において、先端を含む絶縁被覆されていない領域どうしが接触せずに離間するように付勢されている。この付勢力はごく小さい値に設定されるのが好ましく、例えば0.1ニュートン(N)~1.0N程度が好ましい。初期状態における先端の離間距離は、第一バネ71および第二バネ72の曲がり方を手で調節する等により変更できる。
【0026】
図5は、
図1のI-I線における断面図である。連結部20と連結部21とは、互いの軸孔が重なるように配置され、連結部20と連結部21との間に絶縁性の第一ワッシャ81が配置されている。重なった軸孔および第一ワッシャ81には、絶縁体からなるボルト(回動軸部材)82が連結部21側から通されている。連結部20側に突出したボルト82の端部には、絶縁性の第二ワッシャ83を挟んで絶縁体からなるナット84がネジ嵌合している。
上記構成により、第一部材10と第二部材50とは、ボルト82を回動軸として相対回動可能に連結されつつ、電気的に非接続の状態が確保されている。
連結部位における絶縁性の部材の材質としては、硬度が比較的高く滑りのよいものが好ましく、例えばフッ素系樹脂を例示できる。
【0027】
上記のように構成された本実施形態の医療用器具1の使用時の動作について説明する。
まず、医療用器具1のプラグ63を、
図6に示すように、電流を供給する本体100に接続する。
図6に示す本体100は、電流供給のオンオフを制御するフットスイッチ101と接続されているが、これは一例であり、オンオフ制御の具体的態様は適宜決定できる。
【0028】
使用者は、初期形状の医療用器具1を利き手に取り、第一部材10および第二部材50をそれぞれ所望の態様で保持する。医療用器具1の持ち方には特に制限はないが、標準的な持ち方の一例として、第一部材10を親指と人差し指との間に挟み、第二部材50を親指、人差し指、および中指の3本の指を用いて軽く持つ方法を例示できる。これは、我が国で食事の際に使用する箸の持ち方と概ね同様である。
【0029】
医療用器具1を保持した状態で、第一部材10および第二部材50の一方を他方に対してボルト82を中心に回動させると、一対の先端部12を接近および離間させて医療用器具1を開閉することができる。医療用器具1の開閉に伴い、把持面12aおよび剥離面12bも接近および離間するように動作する。
【0030】
把持操作時には第一バネ71および第二バネ72による反力が第一部材10および第二部材50の先端部12を離間させる方向に作用するが、第一バネ71および第二バネ72による付勢力が上述のようなごく小さい値に設定されている場合、生じる反力もごく小さくなる。その結果、把持面12aが把持した組織等から受ける反力への影響が著しく小さくなり、使用者は、把持した組織等に関して、硬さ等の性状を正確に把握して適切に手技を進めることができる。
【0031】
剥離する組織等を一対の剥離面12bの一方に接触させた状態で、先端部12が離間するように第一部材10と第二部材50とを相対回動させることにより、組織等を移動させて剥離することができる。
剥離操作時は、先端部12を所定距離以上離間させると、第一バネ71の後端と第二バネ72の後端とが離間し、第一バネ71および第二バネ72の付勢力が第一部材10および第二部材50に作用しなくなる。この状態において、使用者は組織等から受ける反力のみを医療用器具1を通して手に感じることができるため、剥離対象の組織等について、硬さ等の性状や、癒着の程度等の状態などを正確に把握して適切に手技を進めることができる。第一バネ71および第二バネ72が発生させる付勢力を十分に小さく設定した場合は、付勢力が組織等から受ける反力にほとんど影響しないため、第一バネ71の後端と第二バネ72の後端とが離間しない状態でも同様に組織等の性状や状態等を正確に把握することができる。
【0032】
第一部材10の先端および第二部材50の先端が組織に接触した状態で使用者がフットスイッチ101を踏むと本体100から医療用器具1に電流が供給され、第一部材10の先端と第二部材50の先端との間に電流を流せる。
本体100から供給される電流が高周波電流であれば、医療用器具1は、電流により組織を凝固して止血したり、焼灼したりできる。
医療用器具1が脳外科領域で使用される場合、本体100から供給される電流を変更することにより、脳の所定部位に電気的刺激を加えることにより、所定部位の機能の有無を確認できる。したがって、これを利用した脳マッピングにより、処置範囲を適切に設定して脳機能の温存に寄与できる。
電流の変更は、本体の設定変更や交換等により行える。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の医療用器具1によれば、医療用器具1を保持する手で操作対象の組織から受ける微細な反力も詳細に感知することができ、医療用器具1を用いて把持操作及び剥離操作の両方を適切な大きさの力で好適に行うことができる。さらに、通電による止血や、脳機能の確認も、従来使用されている専用の器具に交換せずに行うことができる。これにより、処置中の器具交換の頻度を著しく低減し、処置時間の短縮と、患者の負担軽減に大きく寄与できる。
特に、脳神経外科の領域では、組織等から受ける反力のわずかな違いに基づいて組織等の性状や状態等を判断し、この判断に基づいて、組織に加える力の大きさを細かく調整して手技を行っているため、上記構成がもたらすメリットは著しく大きい。
【0034】
また、第一部材10と第二部材50とは、被ガイド部28が一対のガイド部材26、27の間に配置されていることにより、被ガイド部28がガイド部25にガイドされながら相対回動する。
さらに、第一部材10および第二部材50に付勢力を加える第一バネ71と第二バネ72とは直接接続されていないため、係合している両者の後端は相対移動可能である。したがって、第一バネ71および第二バネ72の状態にかかわらず、第一部材10および第二部材50の先端を第一部材10および第二部材50の長手方向に移動させる力が生じない。
【0035】
上述した構成により、医療用器具1においては、先端部12の先端の長手方向に直交する方向の寸法が例えば1ミリメートル以下と細い場合であっても、把持操作時に先端のずれが発生しにくい。したがって、小さな対象物の把持操作であっても確実に行うことができる。
さらに、剥離操作時に第一バネ71の後端と第二バネ72の後端とが離間して係合が外れても、被ガイド部28が一対のガイド部材26、27の間に配置された状態が維持されるため、再び第一部材10と第二部材50とが接近した際に第一バネ71の後端と第二バネ72の後端とが容易に再係合する。これにより、先端のずれ防止とスムーズな開閉動作とが好適に両立されている。
【0036】
さらに、中間部13が複数の節15を有する形状であるため、使用者は手の大きさや指の長さ等に応じて適切な節に指を掛けて医療用器具1を保持することができる。したがって、幅広い使用者において、滑りにくく使用しやすい構成とすることができる。
【0037】
医療用器具1の初期形状においては、第一バネ71および第二バネ72により、第一部材10および第二部材50の先端が離間した状態が保持される。これにより、医療用器具1の使用時に先端が不用意に接触して電気的短絡が生じることを好適に防止できる。
【0038】
さらに、使用者が把持する基端部14の長手軸と、組織に接近して接触する先端部12の長手軸とが非平行であるため、基端部14を把持する使用者の手が先端部12の軸線の延長上に位置しない。したがって、先端部を視認する使用者の視野内に使用者の手が入りにくく、手によって先端の位置が確認しにくくなる等の事態を抑制できる。この効果は、顕微鏡下で処置を行うことが多い脳外科領域等で特に顕著であり、例えば脳の深部で処置を行う際等に極めて有用である。
【0039】
本発明の医療用器具の開閉動作は、わが国で食事等に用いる箸に近いため、日本で生活する使用者であれば、使い慣れた箸と概ね同様の動作で違和感なく使用することが可能である。日本食の普及等により箸が世界的に使用されるようになった現在では、より多くの使用者が本発明の医療用器具を違和感なく使用することができると推測される。
【0040】
なお、上述した医療用器具1の保持態様は一例であり、医療用器具1の使用態様がこれにより制限されるものではない。上述した箸が、我が国ならびに世界各地において様々な持ち方で使用されているのと同様に、使用者は自身が使用しやすい態様で医療用器具1を保持し、第一部材10と第二部材50とを相対回動させて把持操作及び剥離操作を行うことができる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において異なる実施形態の構成要素を組み合わせたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
【0042】
本発明の医療用器具の材質は、通電可能な導体であれば特に制限はないが、生体適合性や滅菌処理への耐性等の観点からは、チタンやステンレス鋼等が好ましい。
また、本発明では、第一部材および第二部材において先端部の長手軸と基端部の長手軸とが非平行であることは必須ではなく、先端部と基端部が同軸に配置された直線状であってもよい。この場合、医療用器具は中間部を備えなくてもよい。第一部材および第二部材が直線状である場合、上述した利点は薄れるが、比較的浅い部位等では他の効果を享受して良好に手技を行える。
【0043】
本発明において、第一バネおよび第二バネは、金属以外の材料、例えば樹脂等で形成されてもよい。この場合、第一バネと第二バネとが係合しても、第一部材と第二部材とは導通しないため、第一バネおよび第二バネが、絶縁部材を介さずに直接第一部材および第二部材に取り付けられてもよい。
また、初期形状において、第一バネの後端部と第二バネの後端部とが係合することは必須ではなく、単に接触しているだけでもよい。
【0044】
本発明の医療用器具の適用領域は、上述した脳外科領域には限られない。他の領域であっても、把持操作と剥離操作を一つの医療機器で行うことにより、手術時間の短縮や患者負担の軽減に貢献することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 医療用器具
10 第一部材
12 先端部
13 中間部
14 基端部
12a 把持面
50 第二部材
71 第一バネ
72 第二バネ
73 絶縁部材
82 ボルト(回動軸部材)