IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファインテック株式会社の特許一覧

特開2022-38435脆性材料基板用のスクライビングホイール及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038435
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】脆性材料基板用のスクライビングホイール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28D 5/00 20060101AFI20220303BHJP
   C03B 33/027 20060101ALI20220303BHJP
   B26F 3/00 20060101ALN20220303BHJP
【FI】
B28D5/00 Z
C03B33/027
B26F3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142943
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】305052584
【氏名又は名称】ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中川 考一
(72)【発明者】
【氏名】茂木 剛
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 勇雄
【テーマコード(参考)】
3C060
3C069
4G015
【Fターム(参考)】
3C060AA08
3C060AA20
3C060CB03
3C060CB14
3C069AA03
3C069BA04
3C069BB01
3C069CA03
3C069CA11
3C069EA05
4G015FA09
4G015FC01
(57)【要約】
【課題】水平方向へのマイクロクラックの発生を低減又は抑制でき、特に厚さが0.1mm以下の脆性材料基板の切断性能を高めることができる脆性材料基板用のスクライビングホイール及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、脆性材料基板にスクライブラインを付すためのディスク状のスクライビングホイールに係る。スクライビングホイール1は、その外周部3に第1の刃10と第2の刃20とを円周方向交互に備える。外周部3は、V字状に交差して第1の刃10をなす一対の斜面3aと、一対の斜面3aの一方又は両方から窪んで第2の刃20をなす凹部22とを含む。本発明において、第1の刃10の刃先11の位置と第2の刃20の刃先21の位置との半径方向における差Sは0.5μm未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料基板にスクライブラインを付すためのディスク状のスクライビングホイールであって、
前記スクライビングホイールの外周部に第1の刃と第2の刃とを円周方向交互に備え、
前記外周部は、V字状に交差して前記第1の刃をなす一対の斜面と、前記一対の斜面の一方又は両方から窪んで前記第2の刃をなす凹部とを含み、
前記第1の刃の刃先の位置と前記第2の刃の刃先の位置との半径方向における差が0.5μm未満であることを特徴とする脆性材料基板用のスクライビングホイール。
【請求項2】
前記第2の刃の角度が前記第1の刃の角度より小さいことを特徴とする請求項1に記載の脆性材料基板用のスクライビングホイール。
【請求項3】
前記第1の刃の刃先の位置と前記第2の刃の刃先の位置との半径方向における差が0であることを特徴とする請求項1又は2に記載の脆性材料基板用のスクライビングホイール。
【請求項4】
前記凹部は、前記一対の斜面の一方のみから窪んで前記第2の刃を、前記一対の斜面の他方と共になすことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の脆性材料基板用のスクライビングホイール。
【請求項5】
前記第1の刃の刃先の位置と前記第2の刃の刃先の位置との半径方向における差が0.2μm以上で0.5μm未満であり、
前記凹部各々は、前記一対の斜面の一方又は両方からの窪みの深さが最も深くなる円周方向中間の底部と、前記底部から円周方向において隣り合う2つの前記第1の刃へと前記深さを次第に浅くしつつ繋がる2つの底側部とを含み、
互いに隣り合う前記底側部と前記第1の刃との境界の曲率半径は、互いに隣り合う前記底側部と前記底部との境界の曲率半径よりも大きいことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の脆性材料基板用のスクライビングホイール。
【請求項6】
脆性材料基板にスクライブラインを付すためのディスク状のスクライビングホイールを製造する方法であって、
前記スクライビングホイールとなる原体の外周部に一対の原斜面を加工する工程Aであって、前記一対の原斜面がV字状に交差して第1の原刃をなす工程Aと、
前記一対の原斜面の両方から窪む一対の凹部を円周方向所定間隔で加工する工程Bであって、前記一対の凹部が第2の刃をなし、前記1の原刃と前記第2の刃とが円周方向交互となり、かつ前記第1の原刃の刃先の位置と前記第2の刃の刃先の位置との半径方向における差を0.5μm以上とする工程Bと、
前記一対の原斜面を研磨して一対の斜面とする工程Cであって、前記一対の斜面がV字状に交差して第1の刃をなし、かつ前記第1の刃の刃先の位置と前記第2の刃の刃先の位置との半径方向における差を0以上で0.5μm未満とする工程Cとを含むことを特徴とする脆性材料基板用のスクライビングホイール製造方法。
【請求項7】
前記工程Bにおいて、前記第2の刃の角度を前記第1の原刃の角度よりも小さくし、前記工程Cにおいて、前記第1の刃の角度を前記第2の刃の角度よりも大きくすることを特徴とする請求項6に記載の脆性材料基板用のスクライビングホイール製造方法。
【請求項8】
前記工程Cの後、前記一対の斜面の一方を研磨して、この一方の斜面における前記凹部を無くす工程Dを含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の脆性材料基板用のスクライビングホイール製造方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載のスクライビングホイールを用いて切断した脆性材料基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料基板用のスクライビングホイール及びその製造方法に関し、特に、ガラス基板、石英基板、セラミックス基板等板にスクライブラインを付すためのディスク状の工具であるスクライビングホイールと、このようなスクライビングホイールを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ(FPD)用のマザーガラス基板等の脆性材料基板を所定寸法の単位基板へと分断する方法の一つとして、スクライブ及びブレーク法が広く採用されている。この方法は、脆性材料基板上にスクライビングホイールを圧接転動させてスクライブライン、すなわち切りすじを付し、次いで、脆性材料基板に外力を加え、スクライブラインに沿ってブレーク、すなわち分断するものである。また、スクライビングホイールの一例として、外周稜部の刃先に所定ピッチで溝を設け、刃先を凹凸に加工したものが知られており、例えば特許第5022602号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
上記したような刃先を凹凸加工したスクライビングホイールを脆性材料基板上に圧接転動させると、基板表面に、図11に示すようなスクライブラインSLが生じる。スクライブラインSLは、凸状の刃1による比較的太いライン部分L1´と凹状の刃2による比較的細いライン部分L2´とが交互に連続的に形成される。この際また、刃1及び刃2はスクライブラインSLから基板を水平方向に割き開くような力(以下、本明細書中、「水平開力」という。)を基板に与える。この水平開力は、図11の矢印で便宜的に表すように刃1の方が刃2よりも大きい。このように刃1及び刃2による強弱の水平開力が連続的に基板に作用することにより、基板の厚さ方向に垂直クラックが浸透する。このような基板内部に生じた垂直クラックは基板をブレークする時の負荷を軽減させる。
【0004】
本発明者は、ライン部分L1´におけるほぼ一定の太さからライン部分L2´に向かって細くなり始める角Cから水平方向(基板の広がり方向)にマイクロクラックmc(一部のみ図示する)が生じる場合があることを見出した。このようなマイクロクラックmcは、基板の分断後の曲げ強度を低下させたり、基板表層を剥離させるおそれがある。特に、近年、脆性材料基板の軽量化に伴う薄肉化が求められており、例えば厚さが0.2mm以下のガラス基板も使用されているが、このような薄い基板は元々低強度であるため、上記マイクロクラックmcの発生は品質の低下に直結する。
【0005】
また、現在、厚さが0.1mm(100μm)以下の脆性材料基板に対するニーズが増えてきているが、このような薄い基板に対して従来のスクライビングホイールを使用すると、垂直クラックが基板の厚さ方向に必要以上に浸透して、基板を安定的に分断することが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5022602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、水平方向へのマイクロクラックの発生を低減又は抑制でき、特に厚さが0.1mm以下の脆性材料基板の切断性能を高めることができる脆性材料基板用のスクライビングホイール及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一側面によれば、脆性材料基板にスクライブラインを付すためのディスク状のスクライビングホイールであって、前記スクライビングホイールの外周部に第1の刃と第2の刃とを円周方向交互に備え、前記外周部は、V字状に交差して前記第1の刃をなす一対の斜面と、前記一対の斜面の一方又は両方から窪んで前記第2の刃をなす凹部とを含み、前記第1の刃の刃先の位置と前記第2の刃の刃先の位置との半径方向における差が0.5μm未満であることを特徴とする脆性材料基板用のスクライビングホイールが提供される。
【0009】
本発明者は、上述した刃1による比較的太いスクライブライン部分L1´(図11参照)の角Cからの水平方向へのマイクロクラックmcを発生させないスクライビングホイールを模索する中で、スクライビングホイールにおいて第1の刃の刃先の位置と第2の刃の刃先の位置との半径方向における差(間隔)を0.5μm未満とすることで、そのようなマイクロクラックが低減又は抑制できることを見出し、本発明に至った。なお、従来のスクライビングホイールの刃1と刃2の半径方向間隔は0.5μm以上に設定されており、これは、前記間隔が0.5μm未満のスクライビングホイールを要する切断ニーズが無かったことと、スクライビングホイールの前記間隔を0.5μm未満に加工する難易度が非常に高いためであると考えられる。
【0010】
本発明において、スクライビングホイールは、焼結ダイヤモンド、単結晶ダイヤモンド又は超鋼合金又はこれらの組み合わせからなる。
【0011】
本発明において、第1の刃は、V字状に交差する一対の斜面によって定義される。また、第2の刃は、一対の斜面の両方に設けた凹部がV字状に交差して定義されるか、又は、一対の斜面の一方に設けた凹部と一対の斜面の他方とがV字状に交差して定義される。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記第2の刃の角度は前記第1の刃の角度よりも小さい。好ましくは、第2の刃の角度は第1の刃の角度の99.98%~10%であり、更に好ましくは、98%~90%の範囲である。第2の刃の角度を第1の刃の角度よりも小さくすることにより、第1及び第2の刃が脆性材料基板に与える水平開力の強弱変化を大きくして、厚さ方向への垂直クラックを伸長させることができる。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記第1の刃の刃先の位置と前記第2の刃の刃先の位置との半径方向における差は0である。この形態において、第2の刃の刃先は第1の刃の刃先と共に真円の稜線(エッジ)をなし、スクライブラインは図17に示すようにほぼ同じ太さのラインが連続する。しかしながら、第2の刃をなす凹部が第1の刃と円周方向交互に設けられるため、基板に対して第1及び第2の刃による水平開力の強弱変化が作用し、これにより、基板内部に垂直クラックが伸長すると考えられる。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記第1の刃の刃先の位置と前記第2の刃の刃先の位置との半径方向における差が0.2μm以上で0.5μm未満であり、前記凹部各々は、前記一対の斜面の一方又は両方からの窪みの深さが最も深くなる円周方向中間の底部と、前記底部から円周方向において隣り合う2つの前記第1の刃へと前記深さを次第に浅くしつつ繋がる2つの底側部とを含み、互いに隣り合う前記底側部と前記第1の刃との境界の曲率半径は、互いに隣り合う前記底側部と前記底部との境界の曲率半径よりも大きい。本発明者は、このような形態のスクライビングホイールを使用した場合、脆性材料基板面に図28に示すようなスクライブラインを形成し、水平方向へのマイクロクラックを更に低減又は抑制できることを見出した。この点については図25図28に関連して後述する。
【0015】
本発明の別の側面によれば、脆性材料基板にスクライブラインを付すためのディスク状のスクライビングホイールを製造する方法であって、前記スクライビングホイールとなる原体の外周部に一対の原斜面を加工する工程Aであって、前記一対の原斜面がV字状に交差して第1の原刃をなす工程Aと、前記一対の原斜面の両方から窪む一対の凹部を円周方向所定間隔で加工する工程Bであって、前記一対の凹部が第2の刃をなし、前記1の原刃と前記第2の刃とが円周方向交互となり、かつ前記第1の原刃の刃先の位置と前記第2の刃の刃先の位置との半径方向における差を0.5μm以上とする工程Bと、前記一対の原斜面を研磨して一対の斜面とする工程Cであって、前記一対の斜面がV字状に交差して第1の刃をなし、かつ前記第1の刃の刃先の位置と前記第2の刃の刃先の位置との半径方向における差を0以上で0.5μm未満とする工程Cとを含むことを特徴とする脆性材料基板用のスクライビングホイール製造方法が提供される。
【0016】
本方法は、上述した第1の刃の刃先の位置と第2の刃の刃先の位置との半径方向における差が0以上で0.5μm未満である脆性材料基板用のスクライビングホイールを製造するための方法に係る。本方法において、一対の原斜面の研磨には、所定粒度のダイヤモンド、セラミック、鉄等を用いることができ、一対の原斜面に対する凹部の形成には電子線やレーザー等を用いることができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記工程Bにおいて、前記第2の刃の角度を前記第1の原刃の角度よりも小さくし、前記工程Cにおいて、前記第1の刃の角度を前記第2の刃の角度よりも大きくする。これにより、第2の刃の角度が第1の刃の角度よりも小さくなる。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記工程Cの後、前記一対の斜面の一方を研磨して、この一方の斜面における前記凹部を無くす工程Dを含む。これにより、一対の斜面の他方にのみ凹部が残り、この凹部と一方の斜面とがV字状に交差して第2の刃を定義する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るスクライビングホイールでは、第1の刃の刃先の位置と第2の刃の刃先の位置との半径方向における差を0.5μm未満とすることで、第1の刃がなすスクライブライン部分からの水平方向へのマイクロクラックを低減又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るスクライビングホイールの斜視図である。
図2図2図1のスクライビングホイールの側面図である。
図3図3図1のスクライビングホイールの正面図である。
図4図4図2の一部を拡大した図面である。
図5図5は、図1等のスクライビングホイールの製造工程を略示する説明図である。
図6図6は、図1等のスクライビングホイールの製造工程Aを略示する説明図である。
図7図7は、図1等のスクライビングホイールの製造工程Bを略示する説明図である。
図8図8は、図1等のスクライビングホイールの製造工程Cを略示する説明図である。
図9図9図6図8の製造工程に対応する説明図である。
図10図10は、図1等のスクライビングホイールによってガラス基板上に付したスクライブラインの模式図である。
図11図11は、従来のスクライビングホイールがガラス基板上に付したスクライブラインの模式図である。
図12図12は、本発明の第2実施形態に係るスクライビングホイールの斜視図である。
図13図13図12のスクライビングホイールの側面図である。
図14図14図12のスクライビングホイールの正面図である。
図15図15図13のA-A線に沿う断面図である。
図16図16図15の囲みB部分の拡大図である。
図17図17は、図12等のスクライビングホイールによってガラス基板上に付したスクライブラインの模式図である。
図18図18は、第2実施形態のスクライビングホイールの変形例である。
図19図19は、第1実施形態のスクライビングホイールの変形例である。
図20図20は、図19のスクライビングホイールの製造工程Dを略示する説明図である。
図21図21は、本発明の第3実施形態に係るスクライビングホイールの部分側面図である。
図22図22は、図21のクライビングホイールの部分斜視図である。
図23図23図21の一部拡大図である。
図24図24は、図21等のスクライビングホイールがガラス基板の表面に付したスクライブラインの模式図である。
図25図25は、本発明の第4実施形態に係るスクライビングホイールの部分側面図である。
図26図26は、図25のクライビングホイールの部分斜視図である。
図27図27図25の一部拡大図である。
図28図28は、図25等のスクライビングホイールがガラス基板の表面に付したスクライブラインの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のいくかの実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び均等の範囲内で変更等が可能である。図1図2及び図3は、本発明の第1実施形態に係るスクライビングホイール(以下、単に「ホイール」ともいう。)1の斜視図、側面図及び正面図である。図4は、図2の一部を拡大した図面である。以下、ホイール1(及び後述するホイール61、101、201)についての左右は別途指定しない限り図3図14等に基づくものとする。ホイール1(61、101、201)は実質的に左右対称である。そのため、ホイール1(61、101、201)の左右一方についての説明は、左右他方についても当てはまる。ホイール1は、ディスク状の本体部2と、本体部2から半径方向外側へと断面三角形状に突出する外周部3とを備える。ホイール1は、外周部3の半径方向外側端部である稜部4に、第1の刃10と第2の刃20とを円周方向交互に備える。本体部2は、ホイール1の軸線に垂直な左右の円環状の側面2aを有する。また、本体部2は、左右の側面2a間を貫通する軸孔5を備える。ホイール1は、図示しないスクライビング装置の軸部が本体部2の軸孔5に通されてスクライビング装置に装着されて使用される。
【0022】
外周部3は、本体部2の左右の側面2aに対して傾斜する左右一対の斜面3aを有する。左右の斜面3aは、半径方向外側へと相互に次第に近づき、稜部4にてV字状に交差して第1の刃10を定義する。第1の刃10の刃先11はホイール1において最も半径方向外側の外周エッジに沿う。左右の斜面3aには、左右一対の凹部22が円周方向所定間隔で設けられる。左右の凹部22は斜面3aから窪み、稜部4にてV字状に交差して第2の刃20を定義する。第2の刃20の角度A2(図9参照)は第1の刃10の角度(A1)よりも小さくなるように設定される。本実施形態において、A1は95°~110°であり、A2はA1の90%~98%に設定される。第2の刃20の刃先21は、第1の刃10の刃先11と共にホイール1の外周エッジをなす。第1及び第2の刃10、20の刃先11、21がなす外周エッジは稜部4の稜線でもある。
【0023】
本実施形態において、1つの第2の刃20の円周方向に沿う長さは、1つの第1の刃10の円周方向に沿う長さの約3~4倍である。図4を参照して、各第2の刃20の刃先21は、その円周方向両端(図4において左右に隣り合う第1の刃10の刃先11との隣接点)から円周方向中間点へとわずかに半径方向内側に窪み、円周方向中間点にて最も半径方向内側への窪みが大きくなる。この第2の刃20(及び凹部22)の窪みは半径方向内側に凸となる湾曲状である。本実施形態において、第1の刃10の刃先11の位置と第2の刃20の刃先21の円周方向中間点との半径方向における差Sは0.2μmであるが、0.1μm以上で0.5μm未満に設定することができる。また、第1の刃10のピッチは0.014μm以上で0.019μm以下である。更に、ホイール1の直径は2.6mm、ホイール1の厚さ、すなわち左右の側面2a間の間隔は0.65mmである。
【0024】
表1は、スクライビングホイール1の好ましい仕様範囲等を示す。
【0025】
【表1】
【0026】
次に、スクライビングホイール1の製造方法について説明する。図5図8はホイール1の製造工程を略示する説明図である。図9図6図8の製造工程に対応する説明図である。まず、最終的にホイール1となる原体1´を用意する(図5参照)。原体1´は、ホイール1の本体部2を半径方向外側へとそのまま拡張したディスク形状であり、左右の側面2a(ホイール1の左右の側面2aと共通するため、同じ参照番号を用いる。)と、左右の側面2aの半径方向外側端間を連結する周側面3´とを有する。なお、図5図8において、原体1´及びホイール1は、図4のC-C線から見た断面にて示される。次いで、図6に示すように原体1´の外周部に一対の原斜面3a´を粗加工する(工程A)。一対の原斜面3a´はV字状に交差して第1の原刃10´をなす。第1の原刃10´は刃先11´を有する。第1の原刃10´の角度は最終的に形成される第1の刃10の角度と実質的に同じとされる。一対の原斜面3a´及び第1の原刃10´は、最終的な一対の斜面3a及び第1の刃10(図8等参照)よりもわずかに半径方向外側にある。
【0027】
次いで、図7に示すように一対の原斜面3a´それぞれに凹部22を円周方向所定間隔でレーザー加工する(工程B)。左右一対の凹部22はV字状に交差して第2の刃20を定義する。第2の刃20は刃先21を有する。図9を参照して、第2の刃20の角度A2は第1の原刃10´の角度(実質的にA1)の90%~98%に設定される。そのため、一対の凹部22の、原斜面3a´に対して垂直な深さd(図9参照)は、稜線にある刃先21から凹部22の半径方向内側端22bへと次第にわずかに深くなる。第2の刃20の形成により、第1の原刃10´と第2の刃20とが円周方向交互となる。また、この時点において、第1の原刃10´の刃先11´の位置と第2の刃20の刃先21の位置との半径方向における差S´(図9参照)は、0.5μmをわずかに上回るように設定される。
【0028】
次いで、一対の原斜面3a´を所定粒度のダイヤモンドで研磨して、第1の原刃10´を図8に示す第1の刃10とする(工程C)。この際、一対の原斜面3a´は最終的な一対の斜面3aへと実質的に平行に研磨される。そのため、第1の刃10の角度A1は第1の原刃10´の角度と実質的に同じであり、第2の刃20の角度A2よりも大きい。本実施形態において、第2の刃20の角度A2は第1の刃10の角度A1の90%~98%に設定される。また、工程Cにおいて、第1の刃10の刃先11の位置と第2の刃20の刃先21の位置との半径方向における差Sは0.2μmに設定される。更に、工程Cにより凹部22はわずかに浅くなる。すなわち、凹部22の斜面3aからの深さは、原斜面3a´からの深さよりもわずか小さくなる。以上によりスクライビングホイール1が得られる。以上の工程A~Cは後述する第2~第4実施形態のホイール61、101、201(図12図21図25等参照)の製造についても実質的に当てはまるが、ホイール61では、工程Cにおいて第1の刃70の刃先71の位置と第2の刃80の刃先81の位置との半径方向における差Sがゼロとなるように原斜面(3a´)が斜面3aへと研磨される。
【0029】
図10は、ホイール1によってガラス基板上に付したスクライブラインSL1の模式図である。スクライブラインSL1は、第1の刃10による比較的太いライン部分L1と第2の刃20による比較的細いライン部分L2とが交互に連続的に形成される。図11は、凸状の刃1と凹状の刃2を有する従来のスクライビングホイール(以下、「比較例ホイール」ともいう。)がガラス基板上に付したスクライブラインSLの模式図である。比較例ホイールにおいて刃1の刃先の位置と刃2の刃先の位置との半径方向間隔は1.5μmであり、刃1の角度と刃2の角度はほぼ同じであり、ホイール径、ホイール厚及び刃1のピッチはホイール1とほぼ同じである。また、スクライブラインSL1及びSLを付すガラス基板の厚さ、転動圧、転動速度等もホイール1及び比較例ホイールとで同じとした。ホイール1によるスクライブラインSL1では、第1の刃10の刃先11と第2の刃20の刃先21との半径方向間隔Sを0.2μmとしたため、ライン部分L1とライン部分L2との太さの差が図11のスクライブラインSLに比べて縮小している。すなわち、スクライブラインSL1のライン部分L1はスクライブラインSLのライン部分L1´に比べて細く、また、ライン部分L2はライン部分L2´とほぼ同じ細さである。これにより、スクライブラインSL1ではライン部分L1とライン部分L2との間の変化が低減し、これによりマイクロクラックmcが低減又は抑制されたと考えられる。
【0030】
表2は、上述したスクライビングホイール1と比較例ホイールを用いた実験結果を示す。実験は次のように行った。まず、厚さ100μm(0.1mm)及び150μm(0.15mm)のガラス基板に対してスクライビングホイール1と比較例ホイールにより同じ転動圧力及び転動速度にてスクライブラインを付け、各ガラス基板内部に生じた垂直クラックの厚さ方向における長さ(μm)を測定した。これを、各厚さのガラス基板について8回繰り返した。
【0031】
【表2】
1回目の比較例ホイールによる厚さ100μmのガラス基板への垂直クラック長さは90.9μmであった。これは、100μmの厚さに対して垂直クラックが90.9%浸透したことを意味する。そのため、1回目の「浸透率」は90.9%である。比較例ホイール-厚さ100μmのガラス基板の2回目の垂直クラック長は89.2μm(浸透率89.2%)であり、以後3回~8回目の垂直クラック(浸透率)は表2の通りである。
1回目のホイール1による厚さ100μmのガラス基板への垂直クラック長さは83.4μm(浸透率83.4%)であった。以後2回~8回目の垂直クラック(浸透率)は表2の通りである。
1回目の比較例ホイールによる厚さ150μmのガラス基板への垂直クラック長さは127.3μmであった。そのため、浸透率は、127.3μm/150μm=84.9%である。以後2回~8回目の垂直クラック及び浸透率は表2の通りである。
1回目のホイール1による厚さ150μmのガラス基板への垂直クラック長さは109.8μm(浸透率73.2%)であった。以後2回~8回目の垂直クラック(浸透率)は表2の通りである。
【0032】
グラフ1は、表2の平均浸透率をプロットすると共に、厚さ200μm~100μmのガラス基板に対する上記実験と同様の多数の浸透率の測定値から推測した厚さ150μm~50μmのガラス基板に対する浸透率の推測値を示す。
一般に、ガラス基板にスクライブラインを付して分断する際、垂直クラックの浸透率が75%~90%の間にあると基板の分断作業が安定することが知られている。表2及びグラフ1から、本発明に係るホイール1は、厚さが150μm以下、特に100μm以下のガラス基板に対して浸透率が75%~90%の間にあり、基板の分断作業が安定することが分かる。これに対し、比較例ホイールでは、厚さが100μm以下のガラス基板に対して浸透率が90%を上回り、基板の分断作業が不安定になると考えられる。
【0033】
図12図13及び図14は、本発明の第2実施形態に係るスクライビングホイール61の斜視図、側面図及び正面図である。図15図13のA-A線に沿う断面図である。図16図15の囲みB部分の拡大図である。ホイール61において、既述したホイール1と実質的に共通する構成、例えば本体部2、外周部3等については、ホイール1と同じ参照番号を用いてそれらの説明を省略する。ホイール61は、外周部3の半径方向外側端部である稜部4に、第1の刃70と第2の刃80とを円周方向交互に備える。外周部3の左右一対の斜面3aは、稜部4にてV字状に交差して第1の刃70を定義する。左右の斜面3aには、左右一対の凹部82が円周方向所定間隔で設けられる。左右の凹部82は斜面3aから窪む。左右の凹部82は稜部4にてV字状に交差して第2の刃80を定義する。本実施形態において、第1の刃70の刃先71の位置と第2の刃80の刃先81の位置との半径方向における差Sはゼロ(S=0)である。そのため、第1の刃70の刃先71と第2の刃80の刃先81とはホイール1において最も半径方向外側の真円の外周エッジに沿う。また、図16を参照して、第1の刃70の角度A1は95°~110°、第2の刃80の角度A2は第1の刃70の角度A1の90%~98%に設定される。なお、A2は10%~99.98%に設定可能である。本実施形態において、1つの第1の刃70の円周方向に沿う長さは、1つの第2の刃80の円周方向に沿う長さの約1.5倍である。ホイール61は、ホイール1とほぼ同様に上述した工程A~Cを経て製造されるが、ホイール61では、工程Cにおいて第1の刃70の刃先71の位置と第2の刃80の刃先81の位置との半径方向における差Sがゼロとなるように原斜面3a´が斜面3aへと研磨される。スクライビングホイール61の好ましい仕様範囲等はS=0の点を除きホイール1(表1参照)と同じである。
【0034】
図17は、ホイール61によってガラス基板上に付したスクライブラインSL2の模式図である。スクライブラインSL2は、ホイール61において第1の刃70の刃先71と第2の刃80の刃先81の半径方向間隔Sをゼロとしたことにより、ほぼ一定の細さのラインが連続する。しかしながら、第2の刃80をなす凹部82の存在と第1及び第2の刃70、80の角度差により、強弱の水平開力が連続的に基板に作用し、これにより基板の厚さ方向に垂直クラックが伸長する。また、スクライブラインSL2では、第1の刃70がなすライン部分と第2の刃80がなすライン部分との間の変化がほとんどないため、水平方向へのマイクロクラックmcの発生が低減又は抑制されると考えられる。
【0035】
以上に述べた第1及び第2実施形態のホイール1、61では、外周部3の左右一対の斜面3aの両方に凹部22、82を設けて第2の刃20、80を定義したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。図18は、第2実施形態のホイール61の変形例であるホイール61Aの正面図である。ホイール61Aでは、左右一対の斜面3a、3Aの一方(左方)3aにのみ凹部82を周方向所定間隔で設けている。そのため、各第2の刃80(便宜的にホイール61の第2の刃80と同じ参照番号を用いる。)は、左方の凹部82と右方の斜面3Aとによって定義される。ホイール61Aにおいても、第1の刃70の刃先71と第2の刃80の刃先81は半径方向において同じ位置(S=0)にあるため、ホイール61とほぼ同様にマイクロクラックmcを低減又は抑制することができる。ホイール61Aの右方の凹部のない平坦な斜面3Aは、次に述べる第1実施形態の変形例であるホイール1Aの右方の平坦な斜面3Aと同様に形成される実質的に同じ面であるため、同じ参照番号を用いる。
【0036】
図19は、第1実施形態のホイール1の変形例であるホイール1Aの正面図である。ホイール1Aでは、左右一対の斜面3a、3Aの一方(左方)3aにのみ凹部22を周方向所定間隔で設けている。そのため、各第2の刃20(便宜的にホイール1の第2の刃20と同じ参照番号を用いる。)は、左方の凹部22と右方の斜面3Aとによって定義される。ホイール1Aにおいても、第1の刃10の刃先11の位置と第2の刃20の刃先21の位置との半径方向間隔は0.2μm(S=0.2μm)である。これにより、ホイール1とほぼ同様にマイクロクラックmcを低減又は抑制することができる。ホイール1Aの右方の凹部のない平坦な斜面3Aは、上述したホイール1の製造方法における工程C(図8参照)の後、図20に示すように、右方の斜面3aを研磨して、右方の斜面3aの凹部22を無くすことによって形成される(工程D)。工程Dにおいて、第2の刃20の刃先21の位置は維持される。これにより、図9において第1及び第2の刃10、20の刃先11、21を通る垂線(図示せず)に対する左右の斜面3a、3Aの傾斜角度は、斜面3Aの方がわずかに小さくなる。
【0037】
図21及び図22は、本発明の第3実施形態に係るスクライビングホイール101の部分側面図及び部分斜視図である。図23図21の一部拡大図である。以下のホイール101及びホイール201の説明において、既述したホイール1と実質的に共通する構成、例えば本体部2、外周部3等については、ホイール1と同じ参照番号を用いてそれらの説明を省略する。ホイール101は、外周部3の半径方向外側端部である稜部4に、第1の刃110と第2の刃120とを円周方向交互に備える。外周部3の左右一対の斜面3aは、稜部4にてV字状に交差して第1の刃110を定義する。左右の斜面3aには、左右一対の凹部122が円周方向所定間隔で設けられる。左右の凹部122は稜部4にてV字状に交差して第2の刃120を定義する。本実施形態において、第1の刃110の刃先111の位置と第2の刃120の刃先121の位置との半径方向における差Sは0.4μmである。また、第1の刃110の角度A1は120°、第2の刃120の角度A2は108°である。
【0038】
図23を参照して、各凹部122は、窪みの深さが最も深くなる円周方向中間の底部122aと、底部122aから円周方向において隣り合う2つの第1の刃110へと深さを次第に浅くしつつ繋がる2つの底側部122bとを含む。本実施形態では、各底側部122bは、半径方向内側に凸となる湾曲面である。左右の凹部122が定義する第2の刃120の刃先121も底部122aに対応する部分122a(便宜的に同じ参照番号を用いる)と2つの底側部122bに対応する部分122b(便宜的に同じ参照番号を用いる)とを含む。ホイール101では、円周方向に隣り合う底側部122bと第1の刃110との境界の凸状の曲率半径R1´は円周方向に隣り合う底側部122bと底部122aとの境界の凹状の曲率半径R2´よりも小さい(R1´<R2´)。なお、R1´+R2´=一定である。
【0039】
図24はホイール101がガラス基板の表面に付したスクライブラインSL3を示す模式図である。スクライブラインSL3は、ホイール101の第1の刃110による比較的太いライン部分L11と第2の刃120による比較的細いライン部分L12とが交互に連続する。スクライブラインSL3には、ホイール101の凹部122の底側部122bと第1の刃110との間の曲率半径R1´に対応する角C1´が生じる。このような角C1´からはスクライブラインSL3の外側の水平方向にマイクロクラックmc(図11参照)が発生し易いが、第1の刃110の刃先111と第2の刃120の刃先121との半径方向間隔Sを5μm未満とすることにより、そのようなマイクロクラックmcの発生を低減又は抑制することができる。
【0040】
図25及び図26は、本発明の第4実施形態に係るスクライビングホイール201の部分側面図及び部分斜視図である。図27図25の一部拡大図である。ホイール201は、外周部3の半径方向外側端部である稜部4に、第1の刃210と第2の刃220とを円周方向交互に備える。外周部3の左右一対の斜面3aは、稜部4にてV字状に交差して第1の刃210を定義する。左右の斜面3aには、左右一対の凹部222が円周方向所定間隔で設けられる。左右の凹部222は稜部4にてV字状に交差して第2の刃220を定義する。本実施形態において、第1の刃210の刃先211の位置と第2の刃220の刃先221の位置との半径方向における差Sは0.4μmである。また、第1の刃210の角度A1は120°、第2の刃220の角度A2は108°である。
【0041】
図27を参照して、各凹部222は、窪みの深さが最も深くなる円周方向中間の底部222aと、底部222aから円周方向において隣り合う2つの第1の刃210へと深さを次第に浅くしつつ繋がる2つの底側部222bとを含む。本実施形態では、各底側部222bは、半径方向外側に凸となる湾曲面である。左右の凹部222が定義する第2の刃220の刃先221も底部222aに対応する部分222a(便宜的に同じ参照番号を用いる)と2つの底側部222bに対応する部分222b(便宜的に同じ参照番号を用いる)とを含む。ホイール201では、円周方向に隣り合う底側部222bと第1の刃210との境界の凸状の曲率半径R1は円周方向に隣り合う底側部222bと底部222aとの境界の凹状の曲率半径R2よりも大きい(R1>R2)。なお、R1+R2=一定である。
【0042】
図28はホイール201がガラス基板の表面に付したスクライブラインSL4を示す模式図である。スクライブラインSL4は、ホイール201の第1の刃210による比較的太いライン部分L21と第2の刃220による比較的細いライン部分L22とが交互に連続する。スクライブラインSL4では、凹部222の底側部222bと第1の刃210との間の曲率半径R1が比較的大きいため、スクライブラインSL3(図24参照)の角C1´のような角が生じない。そのため、マイクロクラックmcの発生をより一層低減又は抑制することができる。なお、底側部222bと底部222aとの間の比較的小さい曲率半径R2により、スクライブラインSL4における比較的太いライン部分L21と比較的細いライン部分L22との間に水平マイクロクラックが発生し易くなるが、このマイクロクラックはスクライブラインSL4の外側ではなく内側に生じるため、何ら問題はない。
【符号の説明】
【0043】
1、1A、61、61A、101、201 スクライビングホイール
2 本体部
3 外周部
3a 一対の斜面
3A 凹部を無くした斜面
4 稜部
10、70、110、210 第1の刃
11、71、111、211 第1の刃の刃先
20、80、120、220 第2の刃
21、81、121、221 第2の刃の刃先
22、82、122、222 凹部
122a、222a 底部
122b、222b 底側部
SL1、SL2、SL3、SL4 スクライブライン
C1´ 角
R1、R1´、R2、R2´ 曲率半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【手続補正書】
【提出日】2020-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明の一実施形態において、前記第2の刃の角度は前記第1の刃の角度よりも小さい。好ましくは、第2の刃の角度は第1の刃の角度の99.98%~10%であり、更に好ましくは、98%~90%の範囲である。第2の刃の角度を第1の刃の角度よりも小さくすることにより、第1及び第2の刃が脆性材料基板に与える水平開力の強弱変化を大きくして、厚さ方向への垂直クラックを伸長させることができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
図12図13及び図14は、本発明の第2実施形態に係るスクライビングホイール61の斜視図、側面図及び正面図である。図15図13のA-A線に沿う断面図である。図16図15の囲みB部分の拡大図である。ホイール61において、既述したホイール1と実質的に共通する構成、例えば本体部2、外周部3等については、ホイール1と同じ参照番号を用いてそれらの説明を省略する。ホイール61は、外周部3の半径方向外側端部である稜部4に、第1の刃70と第2の刃80とを円周方向交互に備える。外周部3の左右一対の斜面3aは、稜部4にてV字状に交差して第1の刃70を定義する。左右の斜面3aには、左右一対の凹部82が円周方向所定間隔で設けられる。左右の凹部82は斜面3aから窪む。左右の凹部82は稜部4にてV字状に交差して第2の刃80を定義する。本実施形態において、第1の刃70の刃先71の位置と第2の刃80の刃先81の位置との半径方向における差Sはゼロ(S=0)である。そのため、第1の刃70の刃先71と第2の刃80の刃先81とはホイール1において最も半径方向外側の真円の外周エッジに沿う。また、図16を参照して、第1の刃70の角度A1は95°~110°、第2の刃80の角度A2は第1の刃70の角度A1の90%~98%に設定される。なお、A2は10%~99.98%に設定可能である。本実施形態において、1つの第1の刃70の円周方向に沿う長さは、1つの第2の刃80の円周方向に沿う長さの約1.5倍である。ホイール61は、ホイール1とほぼ同様に上述した工程A~Cを経て製造されるが、ホイール61では、工程Cにおいて第1の刃70の刃先71の位置と第2の刃80の刃先81の位置との半径方向における差Sがゼロとなるように原斜面3a´が斜面3aへと研磨される。スクライビングホイール61の好ましい仕様範囲等はS=0の点を除きホイール1(表1参照)と同じである。