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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038436
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】ガス衣類乾燥機
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/02 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
D06F58/02 J
D06F58/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142944
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】川村 祥彰
(72)【発明者】
【氏名】江本 俊介
【テーマコード(参考)】
3B166
【Fターム(参考)】
3B166AA24
3B166AB24
3B166AB29
3B166AE01
3B166AE02
3B166AE07
3B166BA12
3B166BA23
3B166BA82
3B166CA04
3B166CA11
3B166CB12
3B166CB13
3B166CB14
3B166EA03
3B166EA15
3B166EB14
3B166EB18
3B166EC02
3B166EC13
3B166EC22
3B166EC40
3B166EE01
3B166EE04
3B166EE07
3B166GA02
3B166GA07
3B166GA12
3B166GA22
3B166GA45
(57)【要約】
【課題】ガス衣類乾燥機(1)の停止中に排気通路(41t、50)内の開閉板(42)で開閉音が生じることを防止する。
【解決手段】衣類の収容室(11)に供給された燃焼排気は、衣類を乾燥した後、排気通路から屋外に排出される。排気通路の向きが上向きとなった箇所には、排気通路を通過する燃焼排気によって押し上げられる開閉板が、排気通路に交差した支持軸(41s)によって軸支されており、開閉板が燃焼排気で押し上げられていない間は、開閉板は保持部(41h)に当接することで閉鎖位置に保持されている。そして、開閉板には、排気通路を流れる燃焼排気に対して背面側の位置に、開閉板を閉鎖位置に向けて回動させる錘部材(44)を取り付けできる。こうすれば、錘部材によって開閉板が保持部に押し付けられるので、ガス衣類乾燥機の停止中に開閉板が開閉して開閉音を発生させることがない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥しようとする衣類を収容する収容室と、燃料ガスを燃焼させて燃焼排気を前記収容室に供給するガスバーナと、前記収容室に供給された前記燃焼排気を屋外に排出するための排気通路と、前記排気通路内に軸支されて、前記排気通路内を前記燃焼排気が流れると押し開けられる開閉板とを有するガス衣類乾燥機において、
前記排気通路の向きが上向きとなっている箇所で、前記排気通路に交差した状態で設けられて前記開閉板が取り付けられた支持軸と、
前記排気通路の内壁面から突設されて、前記開閉板が前記燃焼排気によって押し上げていない場合は、前記開閉板に当接することで前記開閉板を閉鎖位置に保持する保持部と
を備え、
前記開閉板には、前記開閉板を前記閉鎖位置に向けて回動させる錘部材を取り付けるための取付部が、前記排気通路を流れる前記燃焼排気に対して背面側の位置に形成されている
ことを特徴とするガス衣類乾燥機。
【請求項2】
請求項1に記載のガス衣類乾燥機において、
前記取付部は、前記支持軸から前記錘部材までの距離を変更可能となっている
ことを特徴とするガス衣類乾燥機。
【請求項3】
請求項2に記載のガス衣類乾燥機において、
前記取付部は、前記錘部材を着脱可能な状態で位置決めする位置決部を備えており、
前記位置決部は、前記開閉板の前記背面側で、前記支持軸からの距離を異ならせた複数箇所に設けられている
ことを特徴とするガス衣類乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥しようとする衣類を収容した収容室内に、燃料ガスを燃焼させた燃焼排気を供給して収容室内の衣類を乾燥させた後、収容室内の燃焼排気を排気通路で導くことによって屋外に排出するガス衣類乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥させようとする衣類を回転ドラムなどの収容室内に収容して、燃料ガスを燃焼させることによって発生させた燃焼排気を収容室に供給することで、衣類を乾燥させるガス衣類乾燥機が広く使用されている。このガス衣類乾燥機には屋外まで延びる排気通路が接続されており、衣類を乾燥させた後の湿気を含んだ燃焼排気は、排気通路を通って屋外に排出される。
【0003】
ガス衣類乾燥機は、このように、衣類を乾燥させた燃焼排気を排気通路で屋外に排出している関係上、ガス衣類乾燥機の内部が排気通路を介して屋外に接続された状態となっている。このため、ガス衣類乾燥機を運転していない間に、屋外の埃が排気通路を通ってガス衣類乾燥機の内部に入り込んだり、排気通路内に残っていた湿った燃焼排気が、ガス衣類乾燥機の内部に逆流して結露したりする虞がある。
【0004】
そこで、排気通路内に開閉板を設けておき、ガス衣類乾燥機の運転中は排気通路内を流れる燃焼排気によって開閉板が押し開けられて、燃焼排気が屋外に排出されるが、ガス衣類乾燥機が停止すると、開閉板が自重で排気通路を閉鎖するようにした技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63-125996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年では、ガス衣類乾燥機を運転していないにも拘わらず、開閉板が勝手に開閉することによって開閉音が発生して、ガス衣類乾燥機の使用者に違和感を与えることがあるという問題が生じていた。そして、このような現象が発生する理由について調査したところ、近年の住宅では部屋の気密性が高くなっており、この影響で開閉版が勝手に開閉し得ることが判明した。
【0007】
例えば、部屋の扉を閉じる際には、部屋の入り口と扉との間の空気が、扉の動きによって部屋の中に押し込まれる状態となるが、部屋の気密性が高いと室内の気圧が上昇し、その結果、室内の空気がガス衣類乾燥機の排気通路を通って屋外に流出する。この時に排気通路内の開閉板が一時的に開くので、ガス衣類乾燥機が停止していても開閉音が発生することになる。また、換気装置の中には、屋外の空気を取り入れて室内に送風するタイプの換気装置も存在している。このような換気装置を用いて部屋の換気をする場合、部屋の気密性が高いと、屋外から空気を取り入れることによって室内の気圧が上昇し、室内の空気がガス衣類乾燥機の排気通路を通って屋外に流出するので、排気通路の開閉板が開いた状態となる。ところが、その状態で部屋の窓が開けられると、窓から空気が流出して室内の気圧が下がるので、開いていた開閉板が閉じて閉鎖音が発生する。あるいは、屋外の風が排気通路に吹き込んだ場合にも、開いていた開閉板が風圧で閉じるので、この時に閉鎖音が発生することになる。このように、部屋の気密性が高くなると、ガス衣類乾燥機が運転していない場合でも、様々な理由で開閉板から開閉音が発生し得る。その結果、ガス衣類乾燥機が停止しているにも拘わらず、勝手に開閉板が開閉して開閉音が発生し、使用者に違和感を与えることがあった。
【0008】
この発明は、従来の技術における上述した課題を解決するために成されたものであり、ガス衣類乾燥機の停止中に、排気通路内の開閉板が勝手に開閉して開閉音を発生させることのないガス衣類乾燥機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明のガス衣類乾燥機は次の構成を採用した。すなわち、
乾燥しようとする衣類を収容する収容室と、燃料ガスを燃焼させて燃焼排気を前記収容室に供給するガスバーナと、前記収容室に供給された前記燃焼排気を屋外に排出するための排気通路と、前記排気通路内に軸支されて、前記排気通路内を流れる前記燃焼排気によって押し開けられる開閉板とを有するガス衣類乾燥機において、
前記排気通路の向きが上向きとなっている箇所で、前記排気通路に交差した状態で設けられて前記開閉板が取り付けられた支持軸と、
前記排気通路の内壁面から突設されて、前記開閉板が前記燃焼排気によって押し上げていない場合は、前記開閉板に当接することで前記開閉板を閉鎖位置に保持する保持部と
を備え、
前記開閉板には、前記開閉板を前記閉鎖位置に向けて回動させる錘部材を取り付けるための取付部が、前記排気通路を流れる前記燃焼排気に対して背面側の位置に形成されている
ことを特徴とする。
【0010】
かかる本発明のガス衣類乾燥機においては、衣類を収容した収容室に供給された燃焼排気は、収容室内で衣類を乾燥させた後、排気通路を通過して屋外に排出される。また、排気通路の向きが上向きとなっている箇所には、排気通路を通過する燃焼排気によって押し上げられる開閉板が、排気通路に交差した支持軸によって軸支されており、開閉板が燃焼排気で押し上げられていない間は、開閉板は保持部に当接することで閉鎖位置に保持された状態となっている。そして、開閉板には、排気通路を流れる燃焼排気に対して背面側の位置に、開閉板を閉鎖位置に向けて回動させる錘部材を取り付けるための取付部が形成されている。
【0011】
こうすれば、必要に応じて取付部に錘部材を取り付けることで、錘部材によって開閉板が保持部に押し付けられるようにすることができるので、室内の気圧が高くなる条件でもガス衣類乾燥機の停止中に開閉板が勝手に開閉して開閉音を発生させることを防止することが可能となる。また、錘部材は燃焼排気に対して開閉板の背面側に取り付けられることになるので、錘部材が燃焼排気に晒されることがなく、錘部材が腐食することもない。
【0012】
また、上述した本発明のガス衣類乾燥機においては、取付部に錘部材を取り付ける際に、支持軸から錘部材までの距離を変更可能としてもよい。
【0013】
支持軸から錘部材までの距離を変更すれば、共通の錘部材を使用した場合でも、開閉板を閉鎖位置に向けて回動させようとする力を調節することができる。このため、ガス衣類乾燥機の乾燥運転中は排気通路を流れる燃焼排気によって開閉板が押し上げられるが、排気通路を燃焼排気が流れない場合は、開閉板が確実に閉鎖位置で保持されるように調節することが低コストで可能となる。
【0014】
また、上述した本発明のガス衣類乾燥機においては、錘部材を着脱可能な状態で位置決めする位置決部を、開閉板の背面側で、支持軸からの距離を異ならせた複数箇所に設けるようにしてもよい。
【0015】
こうすれば、錘部材を取り付ける位置決部を変更することで、支持軸から錘部材までの距離を変更することができるから、開閉部材を閉鎖位置に向かって回動させる力を変更することができる。そして、錘部材は位置決部に着脱可能となっているから、錘部材を取り付ける位置を、ガス衣類乾燥機を設置する環境に合わせて変更することができる。このため、ガス衣類乾燥機の乾燥運転中は燃焼排気によって開閉板が確実に押し上げられるが、乾燥運転が停止されると、開閉板を確実に閉鎖させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施例のガス衣類乾燥機1の大まかな内部構造を示す説明図である。
図2】本実施例のガス衣類乾燥機1に搭載された排気筒40の内部構造を示す分解組立図である。
図3】本実施例の排気筒40内に設けられた開閉板42の動作を示した説明図である。
図4】第1変形例の排気筒40の分解組立図である。
図5】第2変形例の開閉板42の動作を示す説明図である。
図6】第2変形例の他の態様の開閉板42の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施例のガス衣類乾燥機1の大まかな内部構造を示す説明図である。本実施例のガス衣類乾燥機1は、直方体形状の本体ケース10の内部に、円筒形状の回転ドラム11が搭載された構造となっている。回転ドラム11は、両端が開口した円筒形状の胴部11aの奥側の端面に、円板形状の奥板11bを嵌め込んで塞いだ形状となっており、胴部11aの手前側の端面には、円環形状のリング板12が嵌め込まれている。また、リング板12の内周側は曲げ加工されることによってバーリング形状に形成されており、バーリング形状の内周面には、一端側がフランジ状に拡径した大径の円筒パイプ13が組み付けられている。
【0018】
円筒パイプ13は、拡径したフランジ部分で本体ケース10に組み付けられている。リング板12は円筒パイプ13を介して本体ケース10に固定されているが、回転ドラム11はリング板12に対して回転可能となっている。更に、回転ドラム11の奥側に嵌め込まれた奥板11bの中心位置には、回転ドラム11の外側に向かって回転軸14が取り付けられている。このため回転ドラム11は、手前側がリング板12によって支えられ、奥側が回転軸14で軸支されることによって、回転可能となっている。
【0019】
円筒パイプ13の内側は衣類投入口11iとなっており、通常状態では衣類投入口11iは開閉扉15によって塞がれているが、開閉扉15を開くと衣類投入口11iから回転ドラム11内に衣類を投入可能となる。回転ドラム11の下方には電動モータ20が搭載されており、電動モータ20を回転させると、その回転トルクが伝動ベルト21によって回転ドラム11に伝わり、回転軸14で軸支された回転ドラム11が回転するようになっている。尚、本実施例の回転ドラム11は、本発明における「収容室」に対応する。
【0020】
また、回転ドラム11の奥板11bには、回転軸14が取り付けられた中心位置を取り囲むようにして、複数の排出口11cが形成されており、複数の排出口11cを回転ドラム11の内側から覆うようにして、フィルタ16が取り付けられている。更に、回転ドラム11の内側から見て、奥板11bの向こう側にはファンカバー17が取り付けられており、ファンカバー17の中には送風ファン23が収納されている。この送風ファン23は、伝動ベルト22を介して電動モータ20によって回転するようになっている。また、ファンカバー17には内部通路18が接続されており、内部通路18は本体ケース10の上面に開口している。そして、本体ケース10の上面の内部通路18が開口する位置には、上方に向かって排気筒40が突設されており、排気筒40には排気ダクト50が接続されている。更に、排気ダクト50の他端側は屋外に開口している。
【0021】
回転ドラム11の下方には、燃料ガスを燃焼させるガスバーナ30や、ガスバーナ30に燃料ガスを供給するためのガスパイプ31も搭載されている。ガスパイプ31の先端には噴射ノズル32が取り付けられると共に、噴射ノズル32は、ガスバーナ30の混合通路の開口端を臨む位置に設けられている。更に、ガスパイプ31の途中には、ガス流量制御弁33が搭載されている。また、ガスバーナ30の上方には温風通路34が形成されており、温風通路34はリング板12に形成された導入口35に接続されている。
【0022】
このようなガス衣類乾燥機1で衣類を乾燥させる際には、開閉扉15を開いて、衣類投入口11iから回転ドラム11内に衣類を投入した後、開閉扉15を閉じる。そして、電動モータ20を回転させると、その回転トルクが伝動ベルト21によって回転ドラム11に伝わると共に、伝動ベルト22によって送風ファン23に伝わることによって、回転ドラム11および送風ファン23が回転し始める。すると、回転ドラム11の奥板11bに形成された複数の排出口11cから回転ドラム11内の空気が吸い出され、これに伴って、導入口35からは、回転ドラム11内に空気が流入する。また、本体ケース10の底面には複数の空気取入口10iが形成されており、空気取入口10iから本体ケース10内に流入した空気が、温風通路34を通って導入口35から回転ドラム11内に供給される。
【0023】
このように送風ファン23を回転させた状態で、噴射ノズル32から燃料ガスを噴射すると、噴射された燃料ガスは周囲の空気と一緒にガスバーナ30の混合通路に流入して、燃料ガスと空気との混合ガスを形成し、その混合ガスに図示しない点火プラグで点火することによって、ガスバーナ30での燃焼が開始される。ガスバーナ30で生じた燃焼排気は、本体ケース10の底面の空気取入口10iから流入した空気と共に温風通路34内に流入し、温風通路34内で空気と混合して加熱空気を生成した後、導入口35から回転ドラム11内に流入する。そして、回転ドラム11内を旋回しながら衣類を乾燥させた後、回転ドラム11の奥側に形成された排出口11cから流出する。こうして衣類を乾燥させた燃焼排気は、内部通路18を通って排気筒40に流入し、排気筒40内の開閉板42を押し上げて、排気ダクト50に流入した後、排気ダクト50を通って屋外に流出する。また、本体ケース10内には、電動モータ20やガス流量制御弁33の動作を制御するためのコントローラ60も搭載されている。尚、回転ドラム11の排出口11cから流出した燃焼排気は、内部通路18、排気筒40内の通路、および排気ダクト50を通って屋外に排出されることから、本実施例の内部通路18、排気筒40内の通路、および排気ダクト50は、本発明における「排気通路」に対応する。
【0024】
図2は、本実施例のガス衣類乾燥機1に搭載された排気筒40の内部構造を示した分解組立図である。図示されるように排気筒40は、下端にフランジ41fを有する円筒形状の本体部41の内部に、円板形状の開閉板42が収容された構造となっている。本体部41の内周面41aには、互いに向かい合う位置に一対の支持軸41sが突設されている。一対の支持軸41sは同一の軸線上に形成されており、一対の支持軸41sの軸線は、本体部41の中心軸に対して垂直に形成されているが、本体部41の中心軸に対してはオフセットした位置に形成されている。また、それぞれの支持軸41sが突設された箇所では、本体部41の内周面41aが内側に膨出することによって、支持軸41sに垂直な基台面41bが形成されている。
【0025】
開閉板42は、本体部41の内径よりも小さな外径に形成されており、本体部41の内側に挿入することが可能となっている。また、開閉板42は、両側が平行に切断されることによって一対の辺部42aが形成された形状となっており、一対の辺部42aの間隔は、本体部41に形成された一対の基台面41bの間隔よりも小さな値に設定されている。更に、開閉板42のそれぞれの辺部42aからは、下方に向かって軸受片42bが突設されている。これらの辺部42aは互いに向かい合った状態で形成されており、それぞれの軸受片42bには貫通孔42cが形成されている。そして、これらの貫通孔42cは本体部41の支持軸41sよりも大径に形成されており、開閉板42を撓ませて貫通孔42cに本体部41の支持軸41sを挿通させることで、開閉板42を取り付けることが可能となっている。
【0026】
また、前述したように、支持軸41sは本体部41の中心軸に対してオフセットしているので、開閉板42が軸支される位置も、開閉板42の重心からオフセットした位置となるため、開閉板42は自重によって回転しようとする。そこで、本体部41の内周面41aには、開閉板42に当接することによって、開閉板42の傾きをほぼ水平に保持する保持部41hが突設されている。そして、開閉板42が保持部41hで保持されると、本体部41の内部通路41tは開閉板42で閉鎖された状態となる。従って、開閉板42が保持部41hで保持されている位置が、本発明における「閉鎖位置」となる。また、前述した内部通路18や排気ダクト50と同様に、本体部41の内部通路41tも、本発明における「排気通路」となっている。尚、図2に示されるように、保持部41hに対して向かい合う位置の内周面41aには、保持部41hよりも下方の位置から、凸部41cが突設されている。凸部41cが突設されている理由については後述する。
【0027】
更に、開閉板42の上面には、互いに平行な一対のスライダ43が設けられている。スライダ43は細長い直方体形状となっており、互いに向き合う面には下方が切り欠かれることによって、矩形断面の嵌合溝43aが形成されている。そして、一対のスライダ43の間には、細長い薄板上の錘部材44が、両端を嵌合溝43aに嵌合させた状態で取り付けられている。錘部材44は、図中に太い矢印で示したように、スライダ43に沿ってスライドさせることが可能となっているが、意図して動かそうとしない限りは動かない程度の固さで嵌合溝43aに嵌合している。このため、錘部材44が勝手にスライドして開閉板42から外れてしまうことはない。尚、本実施例のスライダ43、および篏合溝43aは、本発明における「取付部」に対応する。
【0028】
図3は、排気筒40の内部に搭載された開閉板42の動作を示す説明図である。ガス衣類乾燥機1が乾燥運転を停止している場合は、本体部41の内部通路41tを燃焼排気が通過しない。このため、図3(a)に示したように、開閉板42は自重によって支持軸41sを中心として回動しようとするが、保持部41hに当接して閉鎖位置で保持されている。その結果、排気筒40は開閉板42によって閉鎖された状態となっている。また、図中に斜線を付して表示した矢印は、開閉板42の上面に取り付けられた錘部材44による重力を示しているが、錘部材44の重力は、開閉板42を保持部41hに押し付ける方向に作用する。このため、開閉板42に何らかの振動が伝わるなどして、開閉板42でビビリ音などが発生することを防止可能となっている。
【0029】
ガス衣類乾燥機1で乾燥運転が開始されると、排気筒40の内部通路41tを燃焼排気が通過する。図3(b)中で斜線を付して表示した矢印は、燃焼排気の流れを表している。開閉板42は、この燃焼排気の流れで押し上げられることによって保持部41hから離間する方向に回動し、排気筒40の内部通路41tを燃焼排気が通過可能となる。また、錘部材44は、燃焼排気の流れに対して開閉板42の背面側に取り付けられているので、錘部材44が燃焼排気に晒されることがない。排気筒40の内部通路41tを通過する燃焼排気は、ガス衣類乾燥機1のガスバーナ30で燃料ガスを燃焼させることによって生成しているため、燃焼排気には酸性の燃焼生成物(例えば、二酸化炭素や窒素酸化物など)が含まれている。しかも回転ドラム11から流出した燃焼排気には、衣類を乾燥させたことによる多くの湿気も含まれており、このような燃焼排気が錘部材44に触れると、長い間には錘部材44を腐食させる虞がある。しかし、錘部材44は開閉板42の背面側に取り付けられているため、錘部材44が燃焼排気に晒されることはなく、長い間に錘部材44が腐食する虞は生じない。
【0030】
また、開閉板42が押し上げられると、押し上げられた開閉板42の側方を燃焼排気が通過できるようになるため、燃焼排気が開閉板42を押し上げようとする力は弱くなる。このため開閉板42は、図3(b)中で一点鎖線を用いて示したように直立した状態になるまで回動することは稀であり、大部分の場合は、実線で示したように、直立状態となるよりも手前の状態で停止する。そして、開閉板42がこの状態であれば、開閉板42の自重は開閉板42を元の閉鎖位置(すなわち、開閉板42が保持部41hに当接する位置)に戻そうとする方向に作用する。このため、ガス衣類乾燥機1の乾燥運転が停止されると、開閉板42は図3(a)に示すような閉鎖した状態に復帰する。
【0031】
もっとも、何らかの理由(例えば、燃焼排気が排気筒40の内部通路41tを突発的に勢いよく流れるなど)で、開閉板42が、図3(b)中に一点鎖線で示した直立状態を超えて回動する事態も起こり得る。開閉板42が直立状態を超えて回動すると、開閉板42の自重は開閉板42を更に回動させる方向に作用するようになるので、ガス衣類乾燥機1の乾燥運転が停止されても、開閉板42が図3(a)に示した閉鎖位置まで復帰しなくなる。
【0032】
そこで、開閉板42が回りすぎてしまい、元の閉鎖位置まで戻れなくなることを防止するために、本実施例の排気筒40では、本体部41の内周面41aに凸部41cが突設されている(図2参照)。すなわち、開閉板42を回動させると、開閉板42が直立状態になるよりも手前の段階で開閉板42の一部が凸部41cに当接して、それ以上には回動できないようになっている。図3(b)では、凸部41cに当接して回動できない状態の開閉板42が、破線を用いて表示されている。このため、ガス衣類乾燥機1の乾燥運転が停止されると、図3(a)に示した閉鎖位置まで、開閉板42を確実に復帰させることが可能となっている。
【0033】
また、部屋の気密性が高い場合には、前述したように、様々な理由で室内の気圧が高くなり、室内の空気が排気ダクト50を通って屋外に流出しようとする。そして、この空気の流れによって排気筒40の開閉板42が開いてしまうと、ガス衣類乾燥機1が乾燥運転していないにも拘わらず、開閉板42の開閉音が発生して、ガス衣類乾燥機1の使用者に違和感を与える虞が生じる。
【0034】
図3(c)中に表示した白抜きの矢印は、室内の気圧が高くなったために、排気筒40の内部通路41tを通過しようとする空気の流れを表している。この空気の流れによって開閉板42が押し上げられて回動すると、開閉板42が閉じる時に開閉音が発生する。そこで、開閉板42の背面側には錘部材44が取り付けられており、錘部材44の重さによって、開閉板42を保持部41hに押さえ付けるようになっている。
【0035】
開閉板42を保持部41hにしっかりと押さえ付けるためには、錘部材44は重たい方がよい。しかし、錘部材44を重たくし過ぎると、ガス衣類乾燥機1が乾燥運転を開始した時に、燃焼排気で開閉板42を押し上げて回動させることができなくなり、排気筒40が閉鎖状態のままとなる。このため、ガス衣類乾燥機1で乾燥運転を開始した時に、排気筒40の開閉板42が確実に開くようにするためには、錘部材44はできるだけ軽めにしておくことが望ましい。従って、錘部材44の重さは、ガス衣類乾燥機1の乾燥運転時には、ガス衣類乾燥機1から燃焼排気で開閉板42を確実に押し上げることが可能な程度には軽く、それでいながら、ガス衣類乾燥機1を設置した部屋の気密性が高いために、室内の気圧が高くなった場合でも、排気筒40を通過しようとする空気で開閉板42が押し上げられない程度には重くしておく必要がある。
【0036】
ところが、ガス衣類乾燥機1を設置した部屋の気密性が高い場合に、室内の気圧が高くなる程度は、部屋の気密性や、部屋の大きさや、部屋の扉の大きさなど、ガス衣類乾燥機1を設置する部屋の状況によって変化する。従って、錘部材44の適切な重さも、ガス衣類乾燥機1を設置する部屋の状況によって変化する。このため、ガス衣類乾燥機1を設置する際に、設置する部屋の状況に応じて、作業者が適切な重さの錘部材44を選択するという面倒な作業が必要となってしまう。
【0037】
これに対して本実施例の排気筒40では、前述したように錘部材44をスライドさせることが可能となっている(図2参照)。そして、錘部材44をスライドさせれば、図3(c)に示したように、支持軸41sと錘部材44との間の距離Dが変化する。このため、開閉板42が押し上げられないように保持部41hに押さえ付ける方向の回転モーメントを増減させることができる。例えば、距離Dが大きくなる方向に錘部材44をスライドさせれば、開閉板42を保持部41hに押さえ付けておく回転モーメントを増加させることができ、距離Dが小さくなる方向にスライドさせれば、この回転モーメントを減少させることができる。従って、ガス衣類乾燥機1を設置する作業者は、設置する部屋の状況に合わせて、錘部材44を適切な位置にスライドさせることによって、ガス衣類乾燥機1が乾燥運転を開始すると開閉板42が確実に開いた状態となり、それでいながら、ガス衣類乾燥機1の停止中は開閉板42で開閉音が発生しないようにすることが可能となる。
【0038】
上述した本実施例の排気筒40には、幾つかの変形例が存在する。以下では、これらの変形例について、上述した本実施例との相違点を中心として説明する。
【0039】
上述した本実施例では、図2に示したように、錘部材44がスライダ43の嵌合溝43aに固く嵌合しており、錘部材44は嵌合溝43aとの間で生じる摩擦力で保持されているものとして説明した。しかし、開閉板42の上面(燃焼排気に対しては背面側)に複数の位置決部45(図4参照)を設けておき、何れかの位置決部45を用いて錘部材44を位置決めするようにしても良い。
【0040】
図4は、このような第1変形例の排気筒40の分解組立図である。図示した第1変形例の排気筒40は、図2を用いて前述した本実施例の排気筒40に対して、開閉板42の上面に複数の位置決部45が設けられている点と、位置決部45に嵌合する嵌合孔44aが錘部材44に形成されている点とが異なるが、その他の点については前述した本実施例と同様である。そこで、本実施例と第1変形例とで同様な構成については、第1変形例でも本実施例と同じ番号を付番することとして、詳細な説明を省略する。
【0041】
図4に示したように、第1変形例の開閉板42には、一対のスライダ43の間に、複数(図示した例では3つ)の位置決部45が突設されている。これらの位置決部45は小さな円柱形状に形成されており、スライダ43に対して平行に配置されている。また、錘部材44の両端は、スライダ43の嵌合溝43aに緩く嵌合している。そして、錘部材44の中央には、円柱形状の位置決部45が嵌合可能な嵌合孔44aが形成されている。このため、複数の位置決部45の何れかを嵌合孔44aに嵌合させることで、錘部材44を開閉板42に対して位置決めした状態で、錘部材44を着脱可能に取り付けることができる。また、嵌合孔44aに嵌合させる位置決部45を変更することで、図3(c)を用いて前述した本実施例と同様に、支持軸41sから錘部材44までの距離Dを変更することができる。その結果、ガス衣類乾燥機1を設置する部屋の状況に合わせて、錘部材44の嵌合孔44aに嵌合させる位置決部45を変更することで、ガス衣類乾燥機1が乾燥運転を開始すると開閉板42が確実に開いた状態となり、それでいながら、ガス衣類乾燥機1の停止中は開閉板42で開閉音が発生しないようにすることが可能となる。
【0042】
また、前述した本実施例では、開閉板42が回りすぎてしまい、自重で元の位置に復帰できなくなる事態を防止するために、本体部41の内周面41aから凸部41cを突設させて、開閉板42が回りすぎないようにしていた。しかし、開閉板42の形状を工夫することによって、開閉板42が回りすぎた場合でも、開閉板42が自重で元の位置に復帰できるようにしてもよい。例えば、開閉板42の両側に形成された2つの軸受片42bの間の位置から、下方に向けて突出部46を突設させても良い。
【0043】
図5には、このような突出部46が突設された第2変形例の開閉板42の動作についての説明図である。図5(a)には、開閉板42が保持部41hに当接した状態(閉鎖状態)が示されている。開閉板42に形成された2つの軸受片42bの間には、下方に向けて突出部46が突設されているが、突出部46の重さは開閉板42の回転軸(支持軸41s)上に作用する。図中には、突出部46の重力が斜線を付した矢印で表示されている。このため、開閉板42の閉鎖状態では、突出部46が設けられたことで開閉板42が開きにくくなることはない。
【0044】
しかし、開閉板42が回転すると、突出部46の重さは開閉板42を閉じる方向に作用するようになり、開閉板42が大きく回転するほど、開閉板42を閉じようとする作用も大きくなる。このため、図5(b)に例示したように、開閉板42が直立状態を超えて回転した場合でも、突出部46の重さで開閉板42を元の閉鎖状態に復帰させることが可能となる。
【0045】
あるいは、図6(a)に例示したように、開閉板42の先端側を下方に向けて折り曲げることによって、折曲部42dを設けるようにしても良い。折曲部42dは下方に向けて折り曲げられているため、開閉板42が支持軸41sの真上に達するまで回転しても、折曲部42dの部分は未だ支持軸41sの真上には達しておらず、従って折曲部42dの重さは開閉板42を元の閉鎖位置に復帰させる方向に作用する。このため、折曲部42dを設けることで、開閉板42が回転しすぎてしまったために、図6(a)のような元の閉鎖状態に復帰しなくなる事態を抑制することが可能となる。
【0046】
以上、本実施例および各種の変形例のガス衣類乾燥機1について説明したが、本発明は上記の実施例および各種の変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…ガス衣類乾燥機、 10…本体ケース、 10i…空気取入口、
11…回転ドラム、 11a…胴部、 11b…奥板、 11c…排出口、
11i…衣類投入口、 12…リング板、 13…円筒パイプ、
14…回転軸、 15…開閉扉、 16…フィルタ、 17…ファンカバー、
18…内部通路、 20…電動モータ、 21、22…伝動ベルト、
23…送風ファン、 30…ガスバーナ、 31…ガスパイプ、
32…噴射ノズル、 33…ガス流量制御弁、 34…温風通路、
35…導入口、 40…排気筒、 41…本体部、 41a…内周面、
41b…基台面、 41c…凸部、 41f…フランジ、 41h…保持部、
41s…支持軸、 41t…内部通路、 42…開閉板、 42a…辺部、
42b…軸受片、 42c…貫通孔、 42d…折曲部、 43…スライダ、
43a…嵌合溝、 44…錘部材、 44a…嵌合孔、 45…位置決部、
46…突出部、 50…排気ダクト、 60…コントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6