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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038475
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】演算装置、制御システム及び演算方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20220303BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143003
(22)【出願日】2020-08-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「低炭素社会を実現する次世代パワーエレクトロニクスプロジェクト/研究開発項目1(10)新世代Siパワーデバイス技術開発/新世代Si-IGBTと応用基本技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】山口 大輝
(72)【発明者】
【氏名】和田 圭二
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BA12
5H740BB05
5H740BB08
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM02
5H740MM11
5J055AX25
5J055AX55
5J055AX56
5J055AX65
5J055BX16
5J055CX07
5J055CX19
5J055CX20
5J055DX09
5J055DX56
5J055DX60
5J055EX01
5J055EY05
5J055EY10
5J055EZ13
5J055EZ23
5J055EZ28
5J055EZ29
5J055EZ30
5J055EZ33
5J055EZ34
5J055EZ39
5J055FX03
5J055FX05
5J055FX13
5J055FX17
5J055FX21
5J055FX22
5J055FX40
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX03
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】負荷電流の瞬時値を考慮して、好適な電圧上昇率(dv/dt)及び電流上昇率(di/dt)に制御することができる制御技術を提供する。
【解決手段】演算装置は、複数の無接点スイッチがそれぞれスイッチングすることにより第一電圧を第二電圧に変換する電圧変換回路のうち、特定の無接点スイッチに生じるサージ電圧の値を取得する電圧取得部と、前記特定の無接点スイッチの電力損失の値を取得する電力損失取得部と、前記電圧取得部が取得した前記サージ電圧の値と、前記電力損失取得部が取得した前記電力損失の値とに基づいて、前記電圧変換回路が備える複数の前記無接点スイッチのゲートに印加されるゲート電圧の値を演算する演算部と、前記演算部により演算された前記ゲート電圧の値を出力する出力部とを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無接点スイッチがそれぞれスイッチングすることにより第一電圧を第二電圧に変換する電圧変換回路のうち、特定の無接点スイッチに生じるサージ電圧の値を取得する電圧取得部と、
前記特定の無接点スイッチの電力損失の値を取得する電力損失取得部と、
前記電圧取得部が取得した前記サージ電圧の値と、前記電力損失取得部が取得した前記電力損失の値とに基づいて、前記電圧変換回路が備える複数の前記無接点スイッチのゲートに印加されるゲート電圧の値を演算する演算部と、
前記演算部により演算された前記ゲート電圧の値を出力する出力部と
を備える演算装置。
【請求項2】
前記演算部により演算される前記ゲート電圧の値は、時間に応じた複数の値である
請求項1に記載の演算装置。
【請求項3】
前記演算部は、所定の評価関数に基づいて前記ゲート電圧の値を演算する
請求項1又は請求項2に記載の演算装置。
【請求項4】
前記演算部は、取得した前記サージ電圧又は前記電力損失の少なくともいずれか一方を変数として、前記評価関数に基づいて前記ゲート電圧の値を演算する
請求項3に記載の演算装置。
【請求項5】
前記電圧変換回路とは、正弦波交流電流を入力、出力、又は入出力する電力変換器であり、
前記無接点スイッチとは、ゲートを制御することにより主回路電流を制御するトランジスタである
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の演算装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の前記演算装置と、
前記サージ電圧を測定する電圧測定器と、
前記無接点スイッチに生じる前記電力損失の値を測定する電力損失測定器と、
前記電圧変換回路と
を備える制御システム。
【請求項7】
複数の無接点スイッチがそれぞれスイッチングすることにより第一電圧を第二電圧に変換する電圧変換回路のうち、特定の無接点スイッチに生じるサージ電圧の値を取得する電圧取得工程と、
前記特定の無接点スイッチの電力損失の値を取得する電力損失取得工程と、
前記電圧取得工程により取得された前記サージ電圧の値と、前記電力損失取得工程により取得された前記電力損失の値とに基づいて、前記電圧変換回路が備える複数の前記無接点スイッチのゲートに印加されるゲート電圧の値を演算する演算工程と、
前記演算工程により演算された前記ゲート電圧の値を出力する出力工程と
を有する演算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算装置、制御システム及び演算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワーデバイスに用いられるトランジスタに流れる主回路電流の制御を行う際のスイッチング制御回路において、ゲートに印加される電圧を制御することにより、サージ電圧を抑制する技術があった(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-153007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電圧変化率(dv/dt)と電流変化率(di/dt)とを大きくすることにより、スイッチング損失を低減できたとしても、サージ電圧が大きくなるため、これの抑制が必要となる。一方、サージ電圧を低減するためには、電圧変化率(dv/dt)と電流変化率(di/dt)とを小さくすればよいが、その一方でスイッチング損失が増大してしまう。したがって、電圧変化率及び電流変化率は、サージ電圧とスイッチング損失とのトレードオフ関係を考慮して設定する必要がある。さらに、パワーデバイスの電気特性のばらつきや負荷変動を考慮すると、設計段階においてゲート駆動回路の好適な回路定数と制御パラメータとを設定することは容易ではなかった。そのため、電圧変化率(dv/dt)と電流変化率(di/dt)を最適化したいといった要求がある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、負荷電流の瞬時値を考慮して、好適な電圧変化率(dv/dt)及び電流変化率(di/dt)に制御することができる制御技術を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る演算装置は、複数の無接点スイッチがそれぞれスイッチングすることにより第一電圧を第二電圧に変換する電圧変換回路のうち、特定の無接点スイッチに生じるサージ電圧の値を取得する電圧取得部と、前記特定の無接点スイッチの電力損失の値を取得する電力損失取得部と、前記電圧取得部が取得した前記サージ電圧の値と、前記電力損失取得部が取得した前記電力損失の値とに基づいて、前記電圧変換回路が備える複数の前記無接点スイッチのゲートに印加されるゲート電圧の値を演算する演算部と、前記演算部により演算された前記ゲート電圧の値を出力する出力部とを備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る演算装置は、前記演算部により演算される前記ゲート電圧の値は、時間に応じた複数の値である。
【0008】
また、本発明の一態様に係る演算装置において、前記演算部は、所定の評価関数に基づいて前記ゲート電圧の値を演算する。
【0009】
また、本発明の一態様に係る演算装置において、前記演算部は、取得した前記サージ電圧又は前記電力損失の少なくともいずれか一方を変数として、前記評価関数に基づいて前記ゲート電圧の値を演算する。
【0010】
また、本発明の一態様に係る演算装置において、前記電圧変換回路とは、正弦波交流電流を入力、出力、又は入出力する電力変換器であり、前記無接点スイッチとは、ゲートを制御することにより主回路電流を制御するトランジスタである。
【0011】
また、本発明の一態様に係る制御システムは、上述した演算装置と、前記サージ電圧を測定する電圧測定器と、前記無接点スイッチに生じる前記電力損失の値を測定する電力損失測定器と、前記電圧変換回路とを備える。
【0012】
また、本発明の一態様に係る演算方法は、複数の無接点スイッチがそれぞれスイッチングすることにより第一電圧を第二電圧に変換する電圧変換回路のうち、特定の無接点スイッチに生じるサージ電圧の値を取得する電圧取得工程と、前記特定の無接点スイッチの電力損失の値を取得する電力損失取得工程と、前記電圧取得工程により取得された前記サージ電圧の値と、前記電力損失取得工程により取得された前記電力損失の値とに基づいて、前記電圧変換回路が備える複数の前記無接点スイッチのゲートに印加されるゲート電圧の値を演算する演算工程と、前記演算工程により演算された前記ゲート電圧の値を出力する出力工程とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、負荷電流の瞬時値を考慮して、好適な電圧上昇率(dv/dt)及び電流上昇率(di/dt)に制御することができる制御技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る制御システムの概略構成図の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る主回路の回路構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る制御システムのシステム構成の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る制御システムの回路定数及び制御パラメータの設定について説明するための図である。
図5】本実施形態に係るスイッチング素子のゲートに印加される電圧の時間ごとの変化の一例を説明するためのである。
図6】本実施形態に係る演算装置の機能構成の一例を示す図である。
図7】本実施形態に係る演算部の機能構成の一例を示す図である。
図8】本実施形態に係るプログラマブルデバイスの機能構成の一例を示す図である。
図9】本実施形態に係るスイッチング素子に印加されるゲート電圧の時間毎の変化に応じて主回路が出力する交流電圧について説明するための図である。
図10】本実施形態に係るスイッチング素子に印加されるゲート電圧の時間毎の変化を示した図である。
図11】本実施形態に係るスイッチング素子に印加するゲート電圧、スイッチング素子に流れるコレクタ電流、コレクタ-エミッタ間電圧の時間毎の変化を示した図である。
図12】本実施形態に係るスイッチング素子に印加されるゲート電圧の時間毎の変化の拡大図を示した図である。
図13】本実施形態に係る探索パターン信号又は固定パターン信号が含む情報の一例を示す図である。
図14】本実施形態に係る探索区間について説明するための図である。
図15】本実施形態に係る演算装置の一連の動作を説明するための図である。
図16】本実施形態に係る演算装置の区間ごとの動作を説明するための図である。
図17】本実施形態に係る演算装置を用いた場合のサージ電圧の変化を説明するための図である。
図18】本実施形態に係るアクティブゲートドライバによる回路構成図の一例を示した図である。
図19】本実施形態に係るゲートドライバを複数用いた場合の回路構成図の一例を示した図である。
図20】従来技術によるゲートドライブ回路の回路構成図の一例である。
図21】従来技術によるゲートドライブ回路を用いた場合の、第1の条件におけるスイッチング素子の端子間電圧の変化を説明するための図である。
図22】従来技術によるゲートドライブ回路を用いた場合の、第2の条件におけるスイッチング素子の端子間電圧の変化を説明するための図である。
図23】従来技術によるゲートドライブ回路を用いた場合の、第3の条件におけるスイッチング素子の端子間電圧の変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[従来技術]
まず、従来技術について説明する。
従来、ゲートドライバを用いて、パワーデバイスであるスイッチング素子(以後の説明において、単にスイッチング素子と記載する。)のゲートを制御する技術があった。ゲートドライバには、2値の電圧レベルにより印加されるパルスのデューティ比を制御することによりスイッチング素子に流れる主回路電流を制御するゲートドライバと、時間に応じてゲート端子に印加される電圧値又は電流値を可変するアクティブゲートドライバとがある。アクティブゲートドライバを用いてスイッチング素子のゲートに印加される電圧を制御する場合、駆動対象の回路の駆動条件と、スイッチング素子の電気的特性とを考慮して、ゲートドライバの回路定数と、制御パラメータとを設計することを要していた。このような従来の手法では、駆動対象の回路の動作点は任意にも関わらず、スイッチング周波数、直流リンク電圧、負荷電流等の代表値を仮定し、仮定した代表値に基づいて、回路定数と制御パラメータとを設計しなければならない。スイッチング素子の電気特性はデータシートから得ることができるが、限られた電気特性が記載されているだけであり、なおかつデバイスの個体差を考慮し、代表値を仮定することは容易でない。
【0016】
このような従来技術により、スイッチング素子のゲートに印加される電圧を制御する場合、(1)駆動対象の回路の任意の動作点に対応することが容易でない、(2)スイッチング素子の個体差を考慮することが容易でない、(3)スイッチング素子の劣化を考慮してゲートドライバの回路定数と制御パラメータとを設計することが容易でない、といった3つの課題が存在する。
したがって、従来技術によれば、駆動される回路の動作条件や、スイッチング素子の個体差によっては、スイッチング損失が増大したり、過大なサージ電圧が生じたりする恐れがあった。
【0017】
図20は、従来技術によるゲートドライブ回路90の回路構成図の一例である。同図を参照しながら、ゲートドライブ回路90の回路構成について説明する。ゲートドライブ回路90の一例として、主回路の寄生インダクタンスを考慮しない場合のゲートドライブ回路90Aと、主回路の寄生インダクタンスを考慮した場合のゲートドライブ回路90Bについて説明する。
図20(A)は、主回路の寄生インダクタンスを考慮しない場合のゲートドライブ回路90Aの一例を説明するための図である。ゲートドライブ回路90Aは、ゲートドライバ91と、スイッチング素子92と、抵抗93と、負荷94とを備える。
スイッチング素子92は、負荷94と接地点95との間に接続され、負荷94からの電流を制御する。
ゲートドライバ91は矩形波電圧源として動作し、抵抗93を介して92のゲート端子に電圧を印加する。ゲートドライバ91は、所定のデューティ比のパルス信号を出力する。負荷94から接地点95へは、所定のデューティ比に応じた電流が流れる。
図20(B)に示すゲートドライブ回路90Bは、図19(A)に図示したゲートドライブ回路90Aの構成に加え、寄生インダクタンスを考慮した場合の一例である。ゲートドライブ回路90Bは、寄生インダクタンス97を備える。
【0018】
図21から図23は、従来技術によるゲートドライブ回路90を用いた場合のスイッチング素子92の端子間電圧の変化を説明するための図である。ただし、簡単化のためにテイル電荷などの少数キャリア吐き出しに関する影響は無視している。
図21は、第1の条件におけるスイッチング素子92のターンオフ動作を説明するための図である。図21(A)は、スイッチング素子92のゲートに印加される電圧について、図21(B)は、スイッチング素子92のコレクタ-エミッタ間に流れる電流について、図21(C)は、スイッチング素子92の電力損失についての、時間変化を示す。図21図20(A)の回路図を用いた理想的なスイッチング動作を示す。ゲートドライバ91は、スイッチング素子92を遮断するための電圧レベルを出力する。これにより、時刻t91においてターンオフ動作が開始し、コレクタ-エミッタ間電圧が上昇を始める。その後、時刻t92において遮断電圧v91に達し、コレクタ電流の下降が開始する。コレクタ電流は時刻t93において電流が零となり、ターンオフ動作が完了する。時刻t91から時刻t92における電圧変化がdv/dtであり、時刻t92から時刻t93における電流変化がdi/dtである。一方、時刻t91から時刻t93の期間において、スイッチング素子92には、コレクタ-エミッタ間電圧とコレクタ電流の積によるスイッチング損失が生じる。このスイッチング損失を低減するためは、電圧変化率(dv/dt)と電流変化率(di/dt)とを大きくし、ターンオフに要する時間を低減すればよい。
【0019】
図22は、第2の条件におけるスイッチング素子92の端子間電圧の変化を説明するための図である。図22(A)は、スイッチング素子92のゲートに印加される電圧について、図22(B)は、スイッチング素子92のコレクタ-エミッタ間に流れる電流について、図22(C)は、スイッチング素子92の電力損失についての、時間変化を示す。図22を参照しながら、図20(B)の回路を用いて、寄生インダクタンスLsを考慮した場合のサージ電圧とスイッチング損失について説明する。第2の条件においては、第1の条件に加えて配線中の寄生インダクタンス97を考慮し、スイッチング素子92をターンオフさせる。
第2の条件においては、コレクタ電流が変化する時刻t95から時刻t96において、寄生インダクタによるサージ電圧v93が発生する。サージ電圧は寄生インダクタンス97と電流変化率の積で表される。すなわち、寄生インダクタンス97が一定の場合、電流変化率を低減するとサージ電圧が小さくなり、反対に電流変化率を増大させるとサージ電圧が大きくなる。
【0020】
図23は、第3の条件におけるスイッチング素子92の端子間電圧の変化を説明するための図である。図23(A)は、スイッチング素子92のゲートに印加される電圧について、図23(B)は、スイッチング素子92のコレクタ-エミッタ間に流れる電流について、図23(C)は、スイッチング素子92の電力損失についての、時間変化を示す。図23を参照しながら、図21よりも電圧変化率・電流変化率を増加させた場合におけるサージ電圧とスイッチング損失について説明する。第3の条件においては、配線中の寄生インダクタンス97を考慮し、第2の条件よりも電圧変化率(dv/dt)と電流変化率(di/dt)が大きい。例えば、抵抗93の抵抗値を小さくすること等により、第3の条件を構成してもよい。
第3の条件においては、第1の条件と第2の条件よりも電圧変化率(dv/dt)および電流変化率(di/dt)が大きいため、スイッチング素子92がターンオフに要する時間が短くなり、スイッチング素子92に生じるスイッチング損失は小さくなる。一方で、コレクタ電流が変化する期間において、電流変化率(di/dt)を増大させることにより、サージ電圧が大きくなる。
【0021】
従来技術によれは、上述したように電圧変化率(dv/dt)および電流変化率(di/dt)とターンオフに要する期間(又はターンオンに要する期間)との間にはトレードオフ関係が存在するため、サージ電圧を抑止した結果としてターンオフに要する期間が増大し、電力損失が上昇してしまう。本実施形態においては、電圧変化率(dv/dt)および電流変化率(di/dt)をターンオフに要する期間(又はターンオンに要する)よりも高速に変化させ、好適に制御することを目的とする。
【0022】
[本実施形態]
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る制御システム1の概略構成図の一例を示す図である。同図を参照しながら、制御システム1の概略構成図の一例について説明する。
制御システム1は、演算装置10と、主回路20と、電圧測定器31と、電力損失測定器32とを備える。
【0023】
主回路20は、スイッチング素子Qを含む回路である。本実施形態において、スイッチング素子Qとは、半導体を用いた無接点スイッチである。具体的には、スイッチング素子Qとは、パワートランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等の、電気的に電流の流れを制御する半導体素子を広く含む。主回路20は、例えば、DC-DCコンバータ等に用いられるスイッチングレギュレータ、DC-ACインバータ等に用いられる三相インバータ等の電圧変換回路、モータドライブ用Hブリッジ駆動回路等である。具体的には、主回路20とは、PWMインバータ、PWM整流器、アクティブフィルタ、無効電力補償装置、モータドライブ回路、系統連系インバータ(太陽光発電・風力発電)等である。主回路20は、家電、民生機器、鉄道交通、ハイブリットカー、電気自動車、再生可能エネルギー、送配電等の分野において用いられる。
本実施形態においては、主回路20が三相インバータである場合の一例について説明する。
【0024】
図2は、本実施形態に係る主回路20の回路構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、主回路20が三相インバータである場合の回路構成の一例について説明する。この一例において、端子T1及び端子T2間には、所定の電圧(例えば、直流電圧V1)を有する不図示の直流電源に接続される。また、端子T3、端子T4及び端子T5には、所定の負荷が接続される。主回路20は、端子T1及び端子T2間に印加された直流電圧V1を、三相交流に変換し、端子T3、端子T4及び端子T5に出力する電圧変換回路である。
主回路20は、コンデンサC1と、スイッチング部21と、プログラマブルデバイス22と、インダクタL1乃至インダクタL3と、コンデンサC2乃至コンデンサC4とを備える。
【0025】
スイッチング部21は、複数のスイッチング素子(無接点スイッチ)Qを備える。具体的には、スイッチング部21は、スイッチング素子Q1乃至スイッチング素子Q6を備える。スイッチング素子Q1乃至スイッチング素子Q6は、プログラマブルデバイス22により制御される。この一例においては、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2がスイッチングすることにより、直流電圧V1をu相における単相交流電圧に変換する。また、スイッチング素子Q3及びスイッチング素子Q4がスイッチングすることにより、直流電圧V1をv相における単相交流電圧に変換する。また、スイッチング素子Q5及びスイッチング素子Q6がスイッチングすることにより、直流電圧V1をw相における単相交流電圧に変換する。すなわち、主回路20は、複数の無接点スイッチがそれぞれスイッチングすることにより、直流電圧V1(第一電圧)を三相交流電圧(第二電圧)に変換する電圧変換回路である。
なお、スイッチング部21が備えるスイッチング素子Q1乃至スイッチング素子Q6を区別しない場合には、スイッチング素子Qと記載する。本実施形態においては、スイッチング素子QがIGBTである場合の一例について説明する。
【0026】
プログラマブルデバイス22は、スイッチング素子Q1乃至スイッチング素子Q6を制御する。具体的には、プログラマブルデバイス22は、スイッチング素子Q1乃至スイッチング素子Q6に印加される電圧の値を制御する。プログラマブルデバイス22は、時間に応じた複数の所定の値を、パターンとして記憶しており、当該パターンを参照することにより所定時間ごとにスイッチング素子のゲートに印加する電圧の値を制御する。
【0027】
なお、プログラマブルデバイス22は、具体的には、FPGA(Field Programmable Gate Array)や、PLD(Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等のLSI(Large Scale Integration circuit)、DSP(Digital Signal Processor)等のマイクロプロセッサであってもよい。
【0028】
コンデンサC1は、入力される直流電圧V1の電圧を安定させる。コンデンサC1のキャパシタンスは、例えば4700μFであってもよい。インダクタL1乃至インダクタL3は、スイッチング部21がスイッチングすることにより出力される電圧を平滑化する。インダクタL1乃至インダクタL3のインダクタンスは、例えば1mHであってもよい。コンデンサC2乃至コンデンサC4のキャパシタンスは、例えば4.7μFであってもよい。インダクタL1及至インダクタL3およびコンデンサC2乃至コンデンサC4を用いることによりローパスフィルタを構成し、負荷電流のスイッチングリプルを低減する。
【0029】
図1に戻り、電圧測定器31は、主回路20における電圧Vceを測定する。電圧測定器31が測定する電圧Vceとは、具体的には、スイッチング素子Qがスイッチングする際に、スイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間の端子間電圧である。
【0030】
電力損失測定器32は、主回路20の電力損失Pを測定する。電力損失測定器32は、主回路20における入力電力PINと、出力電力POUTとに基づいて、主回路20の電力損失Pを測定する。
【0031】
演算装置10は、電圧測定器31から電圧Vceを取得し、電力損失測定器32から電力損失Pを取得する。演算装置10は、取得した電圧Vceと電力損失Pとに基づいて、スイッチング素子Qのゲートに印加されるのに好適な電圧のパターンの演算を行う。演算装置10は、演算を行った結果を、制御情報Iとして主回路20に出力する。
【0032】
図3は、本実施形態に係る制御システム1のシステム構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、本実施形態に係る制御システム1のシステム構成の一例について説明する。図1において既に説明した構成については同様の符号を付して、説明を省略する場合がある。
【0033】
主回路20において、スイッチング部21は、プログラマブルデバイス22により制御される。プログラマブルデバイス22は、三相交流電力を生成するスイッチング素子Qのうち、特定の相を生成する特定のスイッチング素子Qに対し、探索パターン信号Iを出力し、特定の相を生成する特定のスイッチング素子Q以外のスイッチング素子Qに対し、固定パターン信号Iを出力する。
【0034】
探索パターン信号I及び固定パターン信号Iは、いずれもスイッチング素子Qのゲートに印加される電圧の値を含む信号である。探索パターン信号I及び固定パターン信号Iは、制御情報Iに含まれる。
探索パターン信号I及び固定パターン信号Iは、スイッチング素子Q1乃至スイッチング素子Q6を制御するアクティブゲートドライバAGD1乃至アクティブゲートドライバAGD6に入力される。アクティブゲートドライバAGD1乃至アクティブゲートドライバAGD6は、入力された探索パターン信号I又は固定パターン信号Iに基づき、スイッチング素子Q1乃至スイッチング素子Q6のゲートを制御する。
【0035】
探索パターン信号Iとは、演算装置10により生成されるパターン信号である。探索パターン信号Iとは、スイッチング素子Qに印加されるのに好適なゲート信号の値を探索するために生成したパターンである。演算装置10は、探索パターン信号Iを、特定のスイッチング素子Qに印加した結果、電圧測定器31から得られる電圧Vce及び、電力損失測定器32から得られる電力損失Pに基づき、更に好適なゲート信号の値を探索する。
固定パターン信号Iとは、演算装置10が特定のスイッチング素子Qにおいて、好適なゲート信号の値を探索した結果、好適であると認められた値を、他のスイッチング素子Qにも反映させたパターンである。
【0036】
この一例において、電圧測定器31は、差動プローブ311と、電圧計312とを備える。差動プローブ311は、一端がスイッチング素子Qのコレクタ端子、他端が当該スイッチング素子Qのエミッタ端子に接続される。電圧計312は、差動プローブ311の両端に生じる電位差(すなわち、スイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間電圧VCE)を測定する。
【0037】
この一例において、電力損失測定器32は、演算装置10から取得する同期信号ISYNCに基づき、主回路20における入力電力PINと、出力電力POUTとを取得する。電力損失測定器32は、取得した入力電力PINと、出力電力POUTとに基づき、電力損失Pを算出し、算出した電力損失Pを演算装置10に出力する。
【0038】
図4は、本実施形態に係る制御システム1の回路定数及び制御パラメータの設定について説明するための図である。“通常のゲートドライバ”及び“アクティブゲートドライバ”は、従来技術を用いた場合の一例である。“アクティブゲートドライバ+演算装置”は、本実施形態を用いた場合の一例である。
【0039】
“回路定数”は、主回路20に備えられる電子回路の定数である。主回路20に備えられる電子回路の定数とは、入力端子に備えられるコンデンサのキャパシタンスや、スイッチング素子のゲートに備えられる抵抗の抵抗値、出力端子の各相に備えられるインダクタのインダクタンス等である。
“回路定数”については、従来技術による方法を用いた場合であっても、本実施形態に係る演算装置10を用いた場合であっても、回路設計時に設定することを要する。
【0040】
“制御パラメータ”とは、スイッチング素子のゲート電圧を時間ごとに設定したパラメータである。制御パラメータは、例えば、20ns(ナノセカンド)ごとに、電圧値を64段階で設定した値である。
従来技術による“通常のゲートドライバ”を用いた場合、ゲート電圧を1又は0の2値により制御するため、“制御パラメータ”を設定することはできなかった。また、従来技術による“アクティブゲートドライバ”を用いた場合、“制御パラメータ”を設定することはできるものの、その設定値は、回路設計時に設定する必要があった。すなわち、従来技術による“通常のゲートドライバ”又は“アクティブゲートドライバ”を用いた場合、製品の出荷後は、負荷の変動や、電子部品の劣化等により、電気的特性が変化した場合には、スイッチング素子に好適なゲート電圧を印加することができなかった。
一方、本実施形態に係る“アクティブゲートドライバ+演算装置”を用いた場合、“制御パラメータ”を回路動作時に学習することができる。したがって、本実施形態によれば、負荷の変動や、電子部品の劣化等により、電気的特性が変化した場合においても、電気的特性の変化に応じて、好適な“制御パラメータ”を設定することができる。
【0041】
図5は、本実施形態に係るスイッチング素子Qのゲートに印加される電圧の時間ごとの変化の一例を説明するためのである。図5(A)は、従来技術によるゲートドライバを用いた場合のスイッチング素子のゲートに印加される電圧の時間ごとの変化を示す。従来技術によるゲートドライバを用いた場合のスイッチング素子のゲートに印加される電圧は、0又は1の2値により制御される。このような場合、電圧変化率(dv/dt)および電流変化率(di/dt)は、スイッチング素子の入力容量とゲート抵抗の時定数で決まるため、スイッチング損失とサージ電圧を低減するような好適なゲート抵抗を選定する必要がある。しかし、スイッチング損失とサージ電圧の低減効果にはトレードオフ関係があるため、ゲート抵抗を好適な値に設定することは困難である。
【0042】
図5(B)は、本実施形態に係る演算装置10を用いた場合のスイッチング素子Qのゲートに印加される電圧の時間ごとの変化を示す。本実施形態においては、周期T1ごとに異なる値が設定される。周期T1及び周期T2は、例えば、いずれも20nsである。本実施形態によれば、スイッチング素子Qのゲートに印加される電圧を詳細に制御することができるため、スイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間に生じるサージ電圧を制御することができる。
なお、スイッチング素子Qのゲートに印加される電圧を緩やかに変化させた場合、急峻に変化させた場合と比較して、スイッチング素子Qのターンオン及びターンオフ期間が長くなるため、主回路20の電力損失Pは大きくなる。したがって、本実施形態に係る演算装置10は、スイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間に生じるサージ電圧を抑制することができ、かつ主回路20の電力損失Pを抑制することが可能なパラメータを探索する。
【0043】
図6は、本実施形態に係る演算装置10の機能構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、演算装置10の機能構成の一例について説明する。
演算装置10は、電圧取得部11と、電力損失取得部12と、演算部13と、出力部14とを備える。
【0044】
電圧取得部11は、主回路20が備える複数のスイッチング素子Qのうち、特定のスイッチング素子Qに生じるサージ電圧の値を取得する。具体的には、電圧取得部11は、電圧測定器31により測定された電圧Vceを取得する。
【0045】
電力損失取得部12は、主回路20が備える複数のスイッチング素子Qのうち、特定のスイッチング素子Qの電力損失の値を取得する。具体的には、電力損失取得部12は、電力損失測定器32により測定された電力損失Pを取得する。
【0046】
演算部13は、電圧取得部11が取得したサージ電圧の値(すなわち、電圧Vce)と、電力損失取得部12が取得した電力損失Pとを取得する。演算部13は、電圧Vceと、電力損失Pとに基づいて、主回路20が備える複数のスイッチング素子Qのゲートに印加されるゲート電圧の値を演算する。演算部13は、演算した結果を出力部14に提供する。
【0047】
演算部13は、具体的には、所定の評価関数に基づいてスイッチング素子Qのゲート電圧の値を演算する。例えば、所定の評価関数とは、下の式(1)で表される。
【0048】
【数1】
【0049】
関数fobjectiveは、サージ電圧v’surgeと、電力損失P’lossとを変数として有する。係数wは、任意の値である。演算部13は、式(1)により表される所定の評価関数を用いることにより、取得した前記サージ電圧又は前記電力損失の少なくともいずれか一方を変数として、評価関数に基づいてゲート電圧の値を演算する。
なお、サージ電圧v’surgeの係数と、電力損失P’lossの係数とを所定の値に設定することにより、演算部13は、電圧上昇率(dv/dt)及び電流上昇率(di/dt)を好適な値に制御することができる。
【0050】
図7は、本実施形態に係る演算部13の機能構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、演算部13の機能構成の一例について説明する。
演算部13は、探索パターン生成部131と、比較部132と、記憶部133とを備える。
探索パターン生成部131は、特定の相のスイッチング素子Qに印加されるのに好適なゲート信号の値を探索するためのパターンである探索パターンを生成する。具体的には、探索パターン生成部131は、制御情報Iに含まれる探索パターン信号Iを生成する。探索パターン生成部131により生成されるパターンにおいて、ゲート電圧の値は、時間に応じた複数の値である。
【0051】
記憶部133は、探索パターン生成部131により生成された探索パターンを記憶する。記憶部133に記憶された探索パターンは、出力部14により制御情報Iとして出力される。また、記憶部133は、探索パターン生成部131により生成された探索パターンと、当該探索パターンを出力した場合に電圧測定器31から得られる電圧Vce及び電力損失測定器32から得られる電力損失Pとを、対応づけて記憶する。
【0052】
比較部132は、記憶部133に記憶された電圧Vce及び電力損失Pに基づき好適なゲート信号の値を探索する。具体的には、比較部132は、記憶部133に記憶された複数の探索パターンに対応づけて記憶された電圧Vce及び電力損失Pを比較し、所定の条件に基づき、好適な探索パターンを選定する。例えば、比較部132は、電圧Vceが所定の範囲内において、電力損失Pが最小となる探索パターンを選定する。具体的には、比較部132は、電圧Vceが第二電源の最大値の10%以内において、電力損失Pが最小となる探索パターンを選定する。
【0053】
図6に戻り、出力部14は、演算部13により演算された探索パターン(すなわち、時間ごとのゲート電圧の値)を出力する。出力部14は、演算部13により演算されたゲート電圧の値を、例えば主回路20が備えるプログラマブルデバイス22に出力する。
【0054】
図8は、本実施形態に係るプログラマブルデバイス22の機能構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、プログラマブルデバイス22の機能構成の一例について説明する。
プログラマブルデバイス22は、CPU(Central Processing Unit)221と、ROM(Read Only Memory)222と、RAM(Random Access Memory)223と、レジスタ224と、タイマーカウンタ225と、ゲート電圧出力部226とを備える。
【0055】
CPU221は、必要に応じてROM222に格納されている各種プログラムを読み出してRAM223に展開し、各種プログラムを実行する。
なお、CPU221と、ROM222と、RAM223は、プログラマブルデバイス22が備えていなくてもよく、プログラマブルデバイス22の外部に備えられていてもよい。
【0056】
レジスタ224は、出力部14により出力された制御情報Iに含まれる探索パターン信号I及び固定パターン信号Iを記憶する。
タイマーカウンタ225は、プログラマブルデバイス22に接続された不図示の発振回路が出力した所定の周波数の信号に基づき、カウントアップを行う。
ゲート電圧出力部226は、タイマーカウンタ225がカウントアップする値と、レジスタ224に記憶された値とに基づいて、スイッチング部21が備えるスイッチング素子Qのゲート電圧を制御する。
なお、ゲート電圧出力部226は、電力損失測定器32から取得した同期信号ISYNCに更に基づいてスイッチング部21が備えるスイッチング素子Qのゲート電圧を制御するよう構成してもよい。
【0057】
図9から図11を参照しながら、スイッチング素子Qに印加される電圧波形について説明する。
図9は、スイッチング素子Qに印加されるゲート電圧の時間毎の変化に応じて主回路20が出力する交流電圧について説明するための図である。同図を参照しながら、スイッチング素子Qに印加されるゲート電圧と、主回路20が出力する交流電圧との対応関係について説明する。
【0058】
図9(A)は、主回路20が出力する交流電圧の時間毎の変化を示した図である。同図には、主回路20が出力する交流電圧の変化を、横軸を時間として示す。同図において、縦軸は電圧を示す。同図は、主回路20が出力する交流電圧の一例として、主回路20の各相に出力される電圧波形である。同図は、主回路20の各相に出力される電圧波形として、u相に出力される電圧波形を示す。
時刻t11から時刻t15までを周期T11とする。例えば、主回路20が50Hzの交流電力を出力する場合、周期T11は、20ms(ミリセカンド)である。また、主回路20が60Hzの交流電力を出力する場合、周期T11は、16.67msである。主回路20の各相に出力される電圧の最大値は時刻t12における電圧v11であり、最小値は、時刻t14における電圧v12である。
【0059】
図9(B)は、スイッチング素子Qに印加されるゲート電圧の時間毎の変化を示した図である。同図には、スイッチング素子Qに印加されるゲート電圧の変化を、横軸を時間として示す。同図において、縦軸は電圧を示す。プログラマブルデバイス22は、スイッチング素子Qに印加されるゲート電圧を制御することにより、主回路20に、図9(A)に示した三相交流電圧を出力させる。スイッチング素子Qに印加されるゲート電圧の最大値は電圧v21であり、最小値は電圧v22である。
あるパルスの立ち上がり時刻と次のパルスの立ち上がり時刻をT12とすると、T12はスイッチング周期である。例えばスイッチング周波数を20kHzとすると、スイッチング周期T21は50μs(マイクロセカンド)である。
【0060】
図10は、スイッチング素子Qの端子間に存在する容量成分を考慮した等価回路である。Cx1は帰還容量、Cx2は入力容量、Cx3は出力容量である。ゲートドライバで帰還容量Cx1と入力容量Cx2とを充放電することにより、スイッチング素子Qの導通状態を制御することができる。
【0061】
図11は、本実施形態に係るスイッチング素子に印加するゲート電圧、スイッチング素子に流れるコレクタ電流、コレクタ-エミッタ間電圧の時間毎の変化を示した図である。図11(A)は、スイッチング素子Qに印加するゲート電圧の時間毎の変化を示した図である。同図には、スイッチング素子Qのゲート電圧の変化について横軸を時間として示す。同図において、縦軸は電圧を示す。例えば、スイッチング素子Qに印加されるゲート電圧のスイッチング周波数を20kHzとすると、スイッチング周期T21は、50μs(マイクロセカンド)である。スイッチング素子Qに印加するゲート電圧の最大値は電圧v31であり、最小値は電圧v33である。
図11(B)は、スイッチング素子Qのコレクタ電流の時間毎の変化を示した図である。同図には、スイッチング素子Qのコレクタ電流の変化について横軸を時間として示す。同図において、縦軸は電流を示す。スイッチング素子Qのコレクタ電流の最大値は電流I41であり、最小値は電流I42である。
図11(C)は、スイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間電圧の時間毎の変化を示した図である。同図には、スイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間電圧の変化について横軸を時間として示す。同図において、縦軸は電圧を示す。スイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間電圧の最大値は電圧v51であり、最小値は電圧v52である。
【0062】
時刻t21乃至時刻t22において、ゲート電圧は最小値の電圧v33で維持することにより、スイッチング素子Qは遮断状態を維持する。時刻t21では、スイッチング素子Qを導通状態とするために、ゲートドライブ回路は電圧v31を出力する。すると、スイッチング素子Qの入力容量Cx2が充電され、ゲート電圧が上昇する。これにより、主回路電流がスイッチング素子Qに流入し、ターンオンを開始する。時刻t23では、コレクタ電流が電流I41に達することにより、スイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間電圧の下降が開始する。このとき、スイッチング素子Qの入力容量Cx2の充電が停止し、帰還容量Cx1の放電を開始する。このとき、ミラー効果によってゲート電圧は電圧v32の一定値となる。時刻t24では、スイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間電圧が最小値の電圧v52まで低下し、ターンオンが完了する。
【0063】
t24乃至t25では、ゲートドライバの入力容量Cx2を充電するが、スイッチング素子Qの動作には影響しない。t25では、ゲートの端子電圧が電圧v31に達し、ゲートドライバの出力電圧と一致することにより、ゲート電圧の上昇が停止する。時刻t26乃至時刻t29はスイッチング素子Qのターンオフ期間であり、時刻t22乃至時刻t25と対称の動作を行う。
したがって、従来のゲートドライバでゲート電圧を制御する場合、時刻t22乃至時刻t24(又は時刻t27乃至時刻t29)が制御の時間分解能に相当する。例えば、スイッチング素子Qの定格が1200V、100Aかつ、ゲート抵抗が10Ωの場合、時間分解は1μs(マイクロセコンド)程度である。
【0064】
図12は、スイッチング素子Qに印加されるゲート電圧の時間毎の変化の拡大図を示した図である。同図には、スイッチング素子Qに印加されるゲート電圧の変化を、横軸を時間として示す。同図において、縦軸は、スイッチング素子Qが制御可能な電圧の分解能を示す。この一例において、プログラマブルデバイス22は、スイッチング素子Qに印加されるゲート電圧を、1から64までの64段階で制御する。例えば、周期T31は、20nsである。プログラマブルデバイス22は、20kHzでスイッチング素子Qに印加されるゲート電圧を制御する場合、パルスの立ち上がり時の所定時間と、パルスの立ち下がり時間の所定時間において、電圧を制御することができる。例えば、プログラマブルデバイス22は、パルスの立ち上がり時及び立ち下がり時に、それぞれ128パルス分の期間(すなわち、2.56μs)の電圧を制御することができる。
【0065】
図13は、探索パターン信号I又は固定パターン信号Iが含む情報の一例を示す図である。同図には、スイッチング素子Qに印加される電圧の値が、時間に対応づけられている。同図における“電圧(bit)”は、1から64までの64段階で示される。
同図において、時間“t1”には、電圧“17”が対応づけられ、時間“t2”には、電圧“32”が対応づけられ、時間“t3”には、電圧“25”が対応づけられ、…、時間“t128”には、電圧“48”が対応づけられている。同図に示される値は、例えば、プログラマブルデバイス22が備えるレジスタ224に記憶され、ゲート電圧出力部226により、スイッチング素子Qのゲートに出力される。
【0066】
プログラマブルデバイス22は、主回路20が出力する交流波形の周期に応じた特定の区間ごとに、スイッチング素子Qのゲートに出力される電圧を制御する。本実施形態においては、区間1から区間4の、4区間においてスイッチング素子Qのゲートに出力される電圧を制御する場合の一例について説明する。
【0067】
図14は、本実施形態に係る演算部13が好適なパターンを探索する探索区間Tについて説明するための図である。同図を参照しながら探索区間Tについて説明する。
探索区間Tは、主回路20が出力する交流波形の周期に応じた特定の区間である。具体的には、探索区間Tは、主回路20が出力する交流電圧の電気角に応じた区間である。演算部13は、探索区間Tごとに好適なパターンを生成する。区間1における探索区間Tを探索区間Ts1と、区間2における探索区間Tを探索区間Ts2と、区間3における探索区間Tを探索区間Ts3と、区間4における探索区間Tを探索区間Ts4と記載する。
【0068】
図14(A)は、区間1における探索区間Ts1を説明するための図である。同図には、主回路20が出力する交流電圧の変化を、横軸を時間として示す。同図において、縦軸は電圧を示す。この一例において、電圧が0から電圧V43までの区間を探索区間Ts1とする。すなわち、探索区間Ts1とは、時刻t0から時刻t41まで、及び時刻t48から時刻t49までの区間である。
【0069】
図14(B)は、区間2における探索区間Ts2を説明するための図である。同図には、主回路20が出力する交流電圧の変化を、横軸を時間として示す。同図において、縦軸は電圧を示す。この一例において、電圧が電圧V43から電圧V44までの区間を探索区間Ts2とする。すなわち、探索区間Ts2とは、時刻t41から時刻t42まで、及び時刻t47から時刻t48までの区間である。
【0070】
図14(C)は、区間3における探索区間Ts3を説明するための図である。同図には、主回路20が出力する交流電圧の変化を、横軸を時間として示す。同図において、縦軸は電圧を示す。この一例において、電圧が電圧V44から電圧V45までの区間を探索区間Ts3とする。すなわち、探索区間Ts3とは、時刻t42から時刻t43まで、及び時刻t46から時刻t47までの区間である。
【0071】
図14(D)は、区間4における探索区間Ts4を説明するための図である。同図には、主回路20が出力する交流電圧の変化を、横軸を時間として示す。同図において、縦軸は電圧を示す。この一例において、電圧が電圧V45から電圧V41までの区間を探索区間Ts4とする。すなわち、探索区間Ts4とは、時刻t43から時刻t46までの区間である。
【0072】
図15は、本実施形態に係る演算装置10の一連の動作を説明するための図である。同図を参照しながら、演算装置10の一連の動作について説明する。
(ステップS11)演算装置10は、動作を開始する。演算装置10は、例えば、ユーザによる電源投入等により動作を開始する。
(ステップS12)演算装置10は、区間1における探索パターンを演算する。
(ステップS13)演算装置10は、区間2における探索パターンを演算する。
(ステップS14)演算装置10は、区間3における探索パターンを演算する。
(ステップS15)演算装置10は、区間4における探索パターンを演算する。
(ステップS16)演算装置10は、動作を停止する場合には処理を終了し、動作を停止しない場合には、処理をステップS12に進める。すなわち、演算装置10は、動作を開始してから動作を停止するまでの間、区間1から区間4までの各探索区間Tにおける好適なパターンを演算する。
【0073】
なお、演算装置10は、区間1から区間4までの探索パターンの演算処理を行っている期間(すなわち、ステップS12からステップS15のいずれかの処理をおこなっているとき)に、割り込み信号等により処理を終了するよう構成してもよい。
【0074】
図16は、本実施形態に係る演算装置10の区間ごとの動作を説明するための図である。同図を参照しながら、演算装置10の一連の動作について説明する。
(ステップS21)電圧取得部11は、スイッチング素子Qに生じるサージ電圧の値(すなわち、電圧Vce)を取得する。電力損失取得部12は、スイッチング素子Qの電力損失の値(すなわち、電力損失P)を取得する。
(ステップS22)演算部13は、取得した電圧Vceと電力損失Pとに基づいて、探索区間Tにおいてスイッチング素子Qのゲートに印加される電圧のパターンである探索パターンを生成する。なお、演算部13は、粒子群最適化(PSO(Particle Swarm Optimization)の手法により、好適な探索パターンを生成してもよい。
(ステップS23)出力部14は、生成された探索パターンを出力する。
【0075】
図17は、本実施形態に係る演算装置10を用いた場合のサージ電圧の変化を説明するための図である。図17(A)(B)(D)(E)には、それぞれスイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間に生じるサージ電圧の変化を、横軸を時間として示す。同図において、縦軸は電圧を示す。図17(C)(F)には、それぞれ主回路20の交流出力端子に流れる電流の変化を、横軸を時間として示す。同図において、縦軸は電流を示す。
図17(A)から図17(C)は、本実施形態に係る演算装置10を用いない場合の実験結果の一例を示す。図17(D)から図17(F)は、本実施形態に係る演算装置10を用いた場合の実験結果の一例を示す。
【0076】
図17(A)は、主回路20における直流電源の電源端子側に接続されるスイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間に生じるサージ電圧の変化を示す。同図における測定結果は、演算装置10により算出された好適なパターンを適用しない場合の一例である。この一例において、スイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間に生じるサージ電圧の最大値は、電圧v51である。
図17(B)は、主回路20における直流電源のGND端子側に接続されるスイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間に生じるサージ電圧の変化を示す。同図における測定結果は、演算装置10により算出された好適なパターンを適用しない場合の一例である。この一例において、スイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間に生じるサージ電圧の最大値は、電圧v52である。
【0077】
図17(D)は、主回路20における直流電源の電源端子側に接続されるスイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間に生じるサージ電圧の変化を示す。同図における測定結果は、演算装置10により算出された好適なパターンを適用する場合の一例である。この一例において、スイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間に生じるサージ電圧の最大値は、電圧v61である。
図17(E)は、主回路20における直流電源のGND端子側に接続されるスイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間に生じるサージ電圧の変化を示す。同図における測定結果は、演算装置10により算出された好適なパターンを適用する場合の一例である。この一例において、スイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間に生じるサージ電圧の最大値は、電圧v62である。
【0078】
図17に示すように、演算装置10により算出された好適なパターンを適用することにより、主回路20における直流電源の電源端子側に接続されるスイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間に生じるサージ電圧は、電圧v51から電圧v61に変化している。電圧v61は、電圧v51より小さい値である。また、演算装置10により算出された好適なパターンを適用することにより、主回路20における直流電源のGND端子側に接続されるスイッチング素子Qのコレクタ-エミッタ間に生じるサージ電圧は、電圧v52から電圧v62に変化している。電圧v62は、電圧v52より小さい値である。すなわち、演算装置10により算出された好適なパターンを適用することにより、サージ電圧を抑止することができる。
【0079】
本実施形態によれば、スイッチングレギュレータの直流入力電圧と負荷電流の瞬時値を考慮し、アクティブゲートドライバの好適な制御パラメータを全自動で探索する。本実施形態に係る演算装置10を用いることにより、アクティブゲートドライバのクロック周波数もしくは応答時定数の分解能で制御パラメータを決定することができる。例えば、クロック周波数50MHzのディジタルアクティブゲートドライバに適用すれば、20nsの時間分解能となる。また、本実施形態によれば、探索時の評価関数は任意に与えることができるため、パラメータの探索はサージ電圧の抑制に特化するか、スイッチング損失の抑制に特化するか、あるいは両方を考慮するかなど、様々な条件を探索することができる。さらに、本実施形態に係る演算装置10は民生用の安価なコンピュータにより構成することができるので、容易に本実施形態に係る演算装置10を用いることができる。
【0080】
また、本実施形態に係る演算装置10によれば、高い時間分解能で制御パラメータを探索する特徴を活かし、DC-DCコンバータ、50Hzや60Hzの商用周波数用途、モータドライブ用途などであれば、入力電圧と負荷電流の瞬時値に応じた最適なパラメータを得ることができる。また、本実施形態に係る演算装置10は安価なコンピュータで構成することができることから、電力変換器の開発段階から、出荷後メンテナンの任意の期間に適用することができる。例えば、本実施形態に係る演算装置10を出荷試験に適用すれば、デバイスの個体差を考慮した最適な制御パラメータを設定できる。また、本実施形態に係る演算装置10を保守点検に適用すれば、デバイスの劣化を考慮した最適なパラメータを得ることができる。
【0081】
[実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、演算装置10は、電圧取得部11を備えることにより、特定のスイッチング素子Qに生じるサージ電圧を取得する。また、演算装置10は、電力損失取得部12を備えることにより、特定のスイッチング素子Qの電力損失の値を取得する。したがって、本実施形態によれば、演算装置10は、全てのスイッチング素子Qについてサージ電圧及び電力損失を計測することなく、容易にスイッチング素子Qのゲートに印加される好適な電圧のパターンを算出することができる。
【0082】
また、以上説明した実施形態によれば、演算装置10は、時間に応じたゲート電圧の値を制御する。したがって、演算装置10は、時間に応じたゲート電圧の値を制御することにより、主回路20のサージ電圧及び電力損失を詳細に制御することができる。演算装置10は、主回路20のサージ電圧及び電力損失を詳細に制御することができるため、サージ電圧及び電力損失を抑制する好適なパターンを生成することができる。
【0083】
また、以上説明した実施形態によれば、演算装置10は、演算部13を備えることにより、サージ電圧が所定の範囲内において、電力損失が最小となる探索パターンを算出する。したがって、本実施形態に係る演算装置10によれば、サージ電圧を抑制し、かつ電力損失が小さくなるようにスイッチング素子Qのゲートに印加される電圧を制御することができる。
【0084】
また、以上説明した実施形態によれば、演算装置10は、演算部13を備えることにより、サージ電圧が10%以内である範囲内において、電力損失が最小となる探索パターンを算出する。したがって、本実施形態に係る演算装置10によれば、サージ電圧を10%以内に抑制し、かつサージ電圧10%の範囲内において電力損失が最小となるようにスイッチング素子Qのゲートに印加される電圧を制御することができる。
【0085】
また、以上説明した実施形態によれば、主回路20とは正弦波交流電流を入力、出力、又は入出力する電力変換器であり、スイッチング素子QとはIGBTである。したがって、本実施形態に係る演算装置10によれば、三相インバータが備える各相のうち、特定の相のみの測定をすることにより、好適なパターンを生成することができる。したがって、本実施形態に係る演算装置10によれば、測定に要する差動プローブ等の測定器の数を削減することができる。さらに、本実施形態に係る演算装置10によれば、容易に好適なパターンを生成することができる。
【0086】
なお、上述した一例においては、主回路20が三相インバータである場合の一例について説明したが、本実施形態は、この一例に限定されない。例えば、主回路20が三相インバータ以外である場合の一例について、本実施形態の変形例として説明する。
【0087】
[主回路20の変形例1]
主回路20は、本実施形態に係る変形例1として、直流-交流変換器(インバータ)であってもよい。主回路20は、直流-交流変換器である場合、具体的には、フルブリッジインバータ、三相インバータ、モジュラーマルチレベルインバータ等であってもよい。
【0088】
[主回路20の変形例2]
主回路20は、本実施形態に係る変形例2として、交流-直流変換器(PWM(Pulse Width Modulation)整流器)であってもよい。主回路20は、交流-直流変換器である場合、フルブリッジ整流器、三相PWM整流器、PFC(Power Factor Correction)回路、モジュラーマルチレベルコンバータ等であってもよい。
【0089】
[主回路20の変形例3]
主回路20は、本実施形態に係る変形例3として、交流-交流変換器であってもよい。主回路20は、交流-交流変換器である場合、マトリックスコンバータ、サイクロコンバータ等であってもよい。
【0090】
[主回路20の変形例4]
主回路20は、本実施形態に係る変形例3として、上述した変形例1、変形例2及び変形例3を組み合わせた構成であってもよい。主回路20は、例えば、PWM整流器とPWMインバータとを組み合わせた交流-交流変換回路(back-to-back構成)であってもよいし、PWMインバータとPWM整流器とを組み合わせた直流-直流変換回路(front-to-front構成)であってもよい。
【0091】
[通常のゲートドライバを用いた場合の変形例]
上述した説明では、アクティブゲートドライバを用いた場合の一例について説明してきたが、本実施形態においては、アクティブゲートドライバを用いた場合の一例に限定されるものではなく、通常のゲートドライバにより構成されていてもよい。
図18は、本実施形態に係るアクティブゲートドライバ81による回路構成図の一例を示した図である。同図においては、アクティブゲートドライバ81を、電流源811及び電流源812により等価的に図示している。この一例において、アクティブゲートドライバはスイッチング素子82を制御する。スイッチング素子82は、負荷84と、接地点85との間に配置され、負荷84から接地点85に流れる電流を制御する。負荷84は、電源86に接続される。アクティブゲートドライバ81は、例えば64段階で出力を制御することができる。一方、通常のゲートドライバは、2段階で出力を制御する。
【0092】
図19は、本実施形態に係る通常のゲートドライバ70を複数用いた場合の回路構成図の一例を示した図である。ゲートドライバ71、ゲートドライバ72及びゲートドライバ73は、ゲートドライバ70の一例である。この一例においては、それぞれのゲートドライバ70の出力がマルチプレクサ74の入力端子に入力される。マルチプレクサ74は、入力された信号に基づく出力信号を出力端子75に出力する。このように構成することにより、2値の出力しか有さない通常のゲートドライバ70によっても、本実施形態において説明したアクティブゲートドライバによる回路と同様の効果を得ることができる。
【0093】
なお、上述した演算装置10が備える機能の全部又は一部は、プログラムとしてコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、このプログラムがコンピュータシステムにより実行されてもよい。コンピュータシステムは、OS、周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置、インターネット等のネットワーク上のサーバ等が備える揮発性メモリ(Random Access Memory:RAM)である。なお、揮発性メモリは、一定時間プログラムを保持する記録媒体の一例である。
【0094】
また、上述したプログラムは、伝送媒体、例えば、インターネット等のネットワーク、電話回線等の通信回線により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。
【0095】
また、上記プログラムは、上述した機能の全部又は一部を実現するプログラムであってもよい。なお、上述した機能の一部を実現するプログラムは、上述した機能をコンピュータシステムに予め記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるプログラム、いわゆる差分プログラムであってもよい。
【0096】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明したが、具体的な構成が上述した実施形態に限られるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1…制御システム、10…演算装置、20…主回路、21…スイッチング部、22…プログラマブルデバイス、11…電圧取得部、12…電力損失取得部、13…演算部、14…出力部、31…電圧測定器、32…電力損失測定器、311…差動プローブ、312…電圧計、131…探索パターン生成部、132…比較部、133…記憶部、221…CPU、222…ROM、223…RAM、224…レジスタ、225…タイマーカウンタ、226…ゲート電圧出力部
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