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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038490
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】筒状積層体の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 7/08 20060101AFI20220303BHJP
   B21D 47/04 20060101ALI20220303BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20220303BHJP
   H02K 1/06 20060101ALN20220303BHJP
【FI】
B21D7/08 Z
B21D47/04
H02K15/02 F
H02K1/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143032
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】591012200
【氏名又は名称】株式会社東海理機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉本 昌文
(72)【発明者】
【氏名】夜陣 和典
(72)【発明者】
【氏名】牧野 継聖
(72)【発明者】
【氏名】平岡 義通
【テーマコード(参考)】
4E063
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
4E063AA02
4E063BB04
4E063JA07
4E063MA01
5H601GA02
5H601GC13
5H601KK07
5H601KK08
5H615AA01
5H615PP06
5H615SS04
5H615SS05
(57)【要約】
【課題】筒状積層体を精度良く製造することのできる筒状積層体の製造装置を提供する。
【解決手段】この装置は、帯状の母材11を幅方向に曲げ加工する成形部51,52,53と、母材11を順送りして成形部51,52,53に供給する供給部とを備える。各成形部51,52,53は、母材11の曲げ方向外側に接する態様で同母材の長さ方向に並ぶ2つの外ローラ31,32,33,34と、母材11の曲げ方向内側に接する態様で2つの外ローラの並び方向の中間に配置された1つの内ローラ41,42,43とによって構成される。母材11を順送りする方向に並ぶ態様で、複数の成形部51,52,53が設けられている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の母材を幅方向に曲げ加工して筒状積層体の各層を円環状に成形する成形部と前記母材を順送りして前記成形部に供給する供給部とを備え、前記成形部は、前記母材の曲げ方向外側に接する態様で同母材の長さ方向に並ぶ2つの外ローラと、前記母材の曲げ方向内側に接する態様で前記2つの外ローラの並び方向の中間に配置された1つの内ローラと、を有してなる筒状積層体の製造装置において、
前記母材を順送りする方向に並ぶ態様で前記成形部が複数設けられている
ことを特徴とする筒状積層体の製造装置。
【請求項2】
複数の前記成形部のうちの前記順送りする方向における手前側の前記成形部は、前記母材を第1曲げ角度に曲げるものであり、
複数の前記成形部のうちの前記順送りする方向における奥側の前記成形部は、前記母材を、前記第1曲げ角度よりも大きい第2曲げ角度に曲げるものである
請求項1に記載の筒状積層体の製造装置。
【請求項3】
前記幅方向への曲げ加工量が最も大きい前記成形部を構成する3つの前記ローラには、当該ローラによって前記母材を前記順送りする態様で同ローラを回転駆動する駆動部が設けられている
請求項2に記載の筒状積層体の製造装置。
【請求項4】
複数の前記成形部の一部を構成する複数の前記内ローラの少なくとも1つには、当該内ローラによって前記母材を前記順送りする態様で同内ローラを回転駆動する駆動部が設けられている
請求項1または2に記載の筒状積層体の製造装置。
【請求項5】
前記母材は、前記幅方向の端部が切り欠かれた形状の切り欠き部を有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の筒状積層体の製造装置。
【請求項6】
前記母材の曲げ方向外側に接する態様で同母材の長さ方向に並ぶ2つの外ローラと前記母材の曲げ方向内側に接する態様で前記2つの外ローラの並び方向の中間に配置された1つの内ローラとを有し、複数の前記成形部よりも前記順送りする方向における奥側に配置され、前記母材の曲げ角度を小さくする方向に同母材を曲げ加工する曲げ戻し部を有する
請求項1~5のいずれか一項に記載の筒状積層体の製造装置。
【請求項7】
前記母材は、金属板である
請求項1~6のいずれか一項に記載の筒状積層体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の板材から円筒状の積層体を製造する筒状積層体の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円環状の板材が積層された積層構造をなす円筒状の積層体が知られている(特許文献1参照)。本出願人は、円筒状の積層体を製造する製造装置を提案している(特願2019-43824)。
【0003】
この製造装置は、帯状の板材(母材)を幅方向に曲げ加工して筒状積層体の各層を円環状に成形する成形部と、母材を順送りして成形部に供給する供給部とを備えている。
成形部は、母材の曲げ方向外側に接する態様で同母材の長さ方向に並ぶ2つの外ローラと、母材の曲げ方向内側に接する態様で2つの外ローラの並び方向の中間に配置された1つの内ローラとを有している。この製造装置では、供給部から送り出された帯状の母材が3つのローラからなる成形部を通過する際に、同母材が幅方向に曲げられて円弧状に成形される。このようにして、帯状の母材から円環状の板材が成形され、同板材が積層された円筒状の積層体が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-102958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特願2019-43824の技術においては、供給部によって順送りされた帯状の母材が、3つのローラからなる成形部の通過に際して、連続的に曲げ加工される。こうした連続的な曲げ加工では、加工後における母材の各部に曲げ角度のばらつきが発生してしまう。この曲げ角度のばらつきは、筒状積層体の各層の真円度を低下させるため、同筒状積層体の形成精度を低下させる一因になる。
【0006】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、筒状積層体を精度良く製造できる積層体製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための筒状積層体の製造装置は、帯状の母材を幅方向に曲げ加工して筒状積層体の各層を円環状に成形する成形部と前記母材を順送りして前記成形部に供給する供給部とを備え、前記成形部は、前記母材の曲げ方向外側に接する態様で同母材の長さ方向に並ぶ2つの外ローラと、前記母材の曲げ方向内側に接する態様で前記2つの外ローラの並び方向の中間に配置された1つの内ローラと、を有してなる筒状積層体の製造装置において、前記母材を順送りする方向に並ぶ態様で前記成形部が複数設けられている。
【0008】
上記構成によれば、複数の成形部を用いて母材を段階的に曲げることによって一加工における曲げ量が大きいことに起因する加工誤差を抑えたり、第1成形部によって母材を所定の角度に曲げた後に第2成形部によって同母材の曲げ角度を矯正したりするなど、複数の成形部を用いて筒状積層体の各層を高い真円度で成形することができる。これにより、筒状積層体を精度良く製造することができる。
【0009】
上記製造装置において、複数の前記成形部のうちの前記順送りする方向における手前側の前記成形部は、前記母材を第1曲げ角度に曲げるものであり、複数の前記成形部のうちの前記順送りする方向における奥側の前記成形部は、前記母材を、前記第1曲げ角度よりも大きい第2曲げ角度に曲げるものであることが好ましい。
【0010】
一般に、一回の曲げ加工における母材の曲げ量を大きくすると、母材の一部(例えば脆弱な部分)が折れ曲がるように変形するなど、母材各部の曲げ角度にばらつきが生じ易くなる。上記構成によれば、複数の成形部を用いて母材を段階的に曲げることにより、一回の曲げ加工における母材の曲げ量を小さくすることができる。そのため、母材の曲げ角度が部分的に大きくなることを抑えて、筒状積層体の各層を高い真円度で成形することができる。
【0011】
上記製造装置において、前記幅方向への曲げ加工量が最も大きい前記成形部を構成する3つの前記ローラには、当該ローラによって前記母材を前記順送りする態様で同ローラを回転駆動する駆動部が設けられていることが好ましい。
【0012】
帯状の母材を幅方向に曲げる曲げ加工では、同母材の曲げ方向内側の部分に圧縮応力が生じ易く、この圧縮応力によって同部分が不要に厚くなったり波打ち形状になったりするおそれがある。
【0013】
上記構成によれば、複数の成形部のうちの曲げ加工量が最も大きい成形部、すなわち母材の曲げ方向内側の部分に生じる圧縮応力が大きくなり易い成形部(以下、特定成形部)による曲げ加工を、特定成形部を構成する3つのローラ(詳しくは、駆動部によって回転駆動される駆動ローラ)によって母材を順送り方向に送り出しつつ行うことができる。これにより、特定成形部による母材の曲げ加工に際して、同母材を特定成形部からスムーズに送り出すことができるようになる。そのため、このとき母材の曲げ方向内側の部分において生じる圧縮応力を小さくすることができ、母材の曲げ方向内側の部分が不要に厚くなったり波打ち形状になったりすることを抑えることができる。
【0014】
上記製造装置において、複数の前記成形部の一部を構成する複数の前記内ローラの少なくとも1つには、当該内ローラによって前記母材を前記順送りする態様で同内ローラを回転駆動する駆動部が設けられていることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、母材の曲げ方向内側の部分に接している内ローラが回転駆動されるため、成形部による母材の曲げ加工に際して、内ローラによって母材の曲げ方向内側の部分を順送り方向に送り出すことができる。これにより、母材の曲げ方向内側の部分を成形部からスムーズに送り出すことができるため、同部分において生じる圧縮応力を小さくすることができ、母材の曲げ方向内側の部分が不要に厚くなったり波打ち形状になったりすることを抑えることができる。
【0016】
上記製造装置において、前記母材は、前記幅方向の端部が切り欠かれた形状の切り欠き部を有する。
切り欠き部を有する母材を用いると、母材における切り欠き部とそれ以外の部分とで曲げ角度に差が生じ易く、これに起因して筒状積層体の各層の真円度の低下を招き易くなる。上記構成によれば、そうした切り欠き部を有する母材を用いて筒状積層体が製造されるとはいえ、同筒状積層体を精度良く製造することができる。
【0017】
上記製造装置において、前記母材の曲げ方向外側に接する態様で同母材の長さ方向に並ぶ2つの外ローラと前記母材の曲げ方向内側に接する態様で前記2つの外ローラの並び方向の中間に配置された1つの内ローラとを有し、複数の前記成形部よりも前記順送りする方向における奥側に配置され、前記母材の曲げ角度を小さくする方向に同母材を曲げ加工する曲げ戻し部を有することが好ましい。
【0018】
帯状の母材を幅方向に曲げ加工する際には、同母材における比較的脆弱な部分(以下、脆弱部分)の曲げ量が大きくなるのに対して、その他の部分の曲げ量は小さくなるといったように、母材の各部の曲げ量にばらつきが生じるおそれがある。
【0019】
上記構成では、母材が、複数の成形部による曲げ加工によって一方向に曲げられた後に、曲げ戻し部による曲げ加工によって他方向に曲げられて戻されるようになる。こうした一連の曲げ加工では、複数の成形部による曲げ加工や曲げ戻し部による曲げ加工のいずれにおいても、母材における脆弱部分の曲げ量がその他の部分の曲げ量よりも大きくなり易い。このことから上記構成によれば、複数の成形部による曲げ加工によって母材の脆弱部分が他の部分と比較して一方向に大きく曲がってしまった場合に、その後の曲げ戻し部による曲げ加工において上記脆弱部分を他の部分と比較して他方向に大きく曲げることによって、曲がり過ぎた部分を逆方向に曲げて戻すことができる。これにより、母材の脆弱部分とその他の部分との曲げ角度の差を小さくすることができるため、同母材の各部における曲げ角度のばらつきを抑えることができる。
【0020】
上記製造装置において、前記母材は、金属板である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、筒状積層体を精度良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態の積層体の斜視図。
図2】積層体を製造する製造装置の側面図。
図3】同製造装置の平面図。
図4】案内ローラの(a)は平面図であり、(b)は(a)の4b矢視図。
図5】各加工ローラと母材との位置関係を示す略図。
図6】曲げ戻し部による母材の曲げ加工の様子を示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、筒状積層体の製造装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、積層体10は略円筒状をなしている。積層体10は、略円環状の板材が積層された積層構造になっている。積層体10を構成する母材11は、鋼板によって構成されており、螺旋状に延びる帯状をなしている。積層体10は、その各層をなす母材11の各部が厚さ方向において重なった状態になっている。
【0024】
母材11は外周側の端部が切り欠かれた形状の切り欠き部12を有している。切り欠き部12は、母材11に、等角度(本実施形態では、72度)間隔で設けられている。切り欠き部12の内面は円弧状になっている。全ての切り欠き部12は同一形状になっている。
【0025】
母材11の切り欠き部12は、積層体10の製造に際して、同積層体10の各層の位置合わせに用いられる。具体的には、位置合わせ用の治具を用いる等して、積層体10の周方向における5箇所において同積層体10の中心線方向に上記切り欠き部12を重ねることにより、母材11における積層体10の各層をなす部分の周方向位置が調整される。
【0026】
また、母材11の切り欠き部12は、同母材11における積層体10の各層をなす部分を接合する接合部位として用いられる。具体的には、レーザー溶接加工を通じて、切り欠き部12の内面が中心線方向において連続的に溶接される。
【0027】
こうした母材11の切り欠き部12により、積層体10の外周面には、中心線方向に延びるとともに内面が円弧状をなす溝が等角度間隔で形成されている。
以下、積層体10を製造する製造装置について説明する。
【0028】
本実施形態では、積層体10の製造に際して、帯状の板材が幅方向に曲げ加工されて円環状に成形される。
図2および図3に示すように、この曲げ加工には、予め幅方向の一端に等間隔で切り欠き部12が形成された帯状の母材11が用いられる。この母材11は、ロール(図示略)に巻き付けられた状態で配置されている。
【0029】
本実施形態の製造装置20は、上下方向に延びる平板状のベース部21を有している。このベース部21には、母材11を案内するための案内ローラ22が回転可能に設けられている。
【0030】
図4に示すように、案内ローラ22は円柱状をなしている。案内ローラ22の外周面には、全周にわたる環状の係合溝23が設けられている。係合溝23の幅は、母材11の厚さよりも大きくなっている。製造装置20によって母材11を曲げ加工する際には、案内ローラ22の係合溝23に母材11の幅方向の端部が係合するようになっている。
【0031】
図2および図3に示すように、ベース部21には、母材11の幅方向における一方(図2の上方)の端部に係合する2つの案内ローラ22と、母材11の幅方向における他方(図2の下方)の端部に係合する2つの案内ローラ22との合計4つの案内ローラ22が設けられている。製造装置20によって母材11を曲げ加工する際には、4つの案内ローラ22の係合溝23に係合する態様で、それら案内ローラ22の間を母材11が通過するようになる。これにより、母材11が安定した状態で案内される。
【0032】
ベース部21には、母材11を順送りして同母材11を曲げ加工する部分(後述する成形部51,52,53や曲げ戻し部54)に供給する供給部24が設けられている。供給部24は上記案内ローラ22の間を通過した母材11が到達する位置に設けられている。供給部24は、外周面同士が対向する態様で設けられた一対の供給ローラ25を有している。これら供給ローラ25は歯車機構を介して連結されており、同一の回転速度で互いに反対の方向に回転するようになっている。一対の供給ローラ25の一方には、同供給ローラ25を回転駆動するための供給モータ26が連結されている。製造装置20によって母材11を曲げ加工する際には、案内ローラ22によって供給部24に案内された母材11が、供給モータ26によって回転駆動される供給ローラ25の間を通過するとともに押し出されて順送り方向に送られるようになる。
【0033】
ベース部21には、母材11を曲げ加工するための加工ローラ27が回転可能に設けられている。この加工ローラ27と前記案内ローラ22(図4参照)とは基本構造が同一になっている。図3および図5に示すように、具体的には、加工ローラ27は円柱状をなしており、加工ローラ27の外周面には全周にわたる環状の係合溝28が形成されている。この係合溝28の幅は、母材11の厚さと同等に(詳しくは、若干大きく)なっている。製造装置20によって母材11を曲げ加工する際には、加工ローラ27の係合溝28に母材11の幅方向の端部が係合するようになっている。
【0034】
図2および図3に示すように、ベース部21には、母材11の曲げ方向外側に接する態様で同母材11の順送り方向(長さ方向)に並ぶ5つの加工ローラ27と、母材11の曲げ方向内側に接する態様で同母材11の長さ方向に並ぶ4つの加工ローラ27との合計9つの加工ローラ27が設けられている。製造装置20によって母材11を曲げ加工する際には、9つの加工ローラ27の係合溝28に係合する態様で、それら加工ローラ27の間を母材11が通過する。本実施形態では、このようにして母材11が加工ローラ27の間を通過する際に、同母材11が幅方向に曲げ加工される。
【0035】
図5に示すように、本実施形態では、回転中心を繋ぐ線が三角形状をなすように配置される3つの加工ローラ27の間を通過させることによって、母材11が幅方向に曲げ加工されて円弧状に成形される。製造装置20において母材11を曲げ加工する部分である成形部51,52,53や曲げ戻し部54は、母材11の曲げ方向外側に接する態様で同母材11の長さ方向に並ぶ2つの加工ローラ27(外ローラ)と、母材11の曲げ方向内側に接する態様で2つの外ローラの並び方向の中間に配置された1つの加工ローラ27(内ローラ)とによって構成される。
【0036】
本実施形態では、母材11の曲げ方向外側に接する態様で同母材11の長さ方向に並ぶ5つの加工ローラ27を、母材11の順送り方向の手前側から順に、第1外ローラ31、第2外ローラ32、第3外ローラ33、第4外ローラ34、第5外ローラ35とする。また、母材11の曲げ方向内側に接する態様で同母材11の長さ方向に並ぶ4つの加工ローラ27を、母材11の順送り方向の手前側から順に、第1内ローラ41、第2内ローラ42、第3内ローラ43、第4内ローラ44とする。そして、上記成形部51,52,53や曲げ戻し部54は、以下の組み合わせで構成されている。
【0037】
本実施形態の製造装置20において、初めに母材11を曲げ加工する部分である第1成形部51は、第1外ローラ31、第2外ローラ32、第1内ローラ41によって構成される。第1内ローラ41は、2つの外ローラ(第1外ローラ31、第2外ローラ32)の並び方向の中間に配置されている。母材11は、第1成形部51を通過する際に幅方向に曲げられて半径がR1の円弧状に成形される。
【0038】
また、第1成形部51による曲げ加工の後に、母材11を曲げ加工する部分である第2成形部52は、第2外ローラ32、第3外ローラ33、第2内ローラ42によって構成される。第2内ローラ42は、2つの外ローラ(第2外ローラ32、第3外ローラ33)の並び方向の中間に配置されている。母材11は、第2成形部52を通過する際に幅方向に曲げられて半径がR2の円弧状に成形される。なお本実施形態では、第2成形部52によって曲げ加工された母材11の半径R2が、第1成形部51によって曲げ加工された母材11の半径R1よりも小さくなる(R2<R1)。
【0039】
さらに、第2成形部52による曲げ加工の後に、母材11を曲げ加工する部分である第3成形部53は、第3外ローラ33、第4外ローラ34、第3内ローラ43によって構成される。第3内ローラ43は、2つの外ローラ(第3外ローラ33、第4外ローラ34)の並び方向の中間に配置されている。母材11は、第3成形部53を通過する際に幅方向に曲げられて半径がR3の円弧状に成形される。なお本実施形態では、第3成形部53によって曲げ加工された母材11の半径R3が、第2成形部52によって曲げ加工された母材11の半径R2よりも小さくなる(R3<R2)。
【0040】
また、第3成形部53による曲げ加工の後に、母材11を曲げ加工する部分である曲げ戻し部54は、第4外ローラ34、第5外ローラ35、第4内ローラ44によって構成される。第4内ローラ44は、2つの外ローラ(第4外ローラ34、第5外ローラ35)の並び方向の中間に配置されている。母材11は、曲げ戻し部54を通過する際に幅方向に曲げられて半径がR0の円弧状に成形される。なお本実施形態では、曲げ戻し部54によって曲げ加工された母材11の半径R0が、第3成形部53によって曲げ加工された母材11の半径R3よりも大きくなるとともに、第2成形部52によって曲げ加工された母材11の半径R2よりも小さくなる(R3<R0<R2<R1)。
【0041】
本実施形態では、第1成形部51、第2成形部52、および第3成形部53による曲げ加工を通じて、母材11の半径を段階的に小さくするように(半径R1→R2→R3)、言い換えれば母材11の曲げ角度を段階的に大きくするように、同母材11が幅方向における一方側に曲げられる。なお本実施形態では、第1成形部51による母材11の曲げ量V1と、第2成形部52による母材11の曲げ量V2と、第3成形部53による母材11の曲げ量V3との関係が、母材11の順送り方向における奥側の成形部のほうが大きくなるように(V1<V2<V3)定められている。
【0042】
また本実施形態では、3つの成形部51,52,53による曲げ加工を通じて母材11が幅方向における一方側に曲げられた後に、曲げ戻し部54による曲げ加工を通じて同母材11が幅方向における他方側に曲げられる。曲げ戻し部54による曲げ加工では、母材11の半径を大きくする方向に(半径R3→R0)、言い換えれば母材11の曲げ角度を小さくする方向に同母材11が曲げられる。
【0043】
本実施形態では、3つの成形部51,52,53や曲げ戻し部54が、加工ローラ27の一部(詳しくは、外ローラ)を共用する態様で設けられている。具体的には、第1成形部51と第2成形部52とでは第2外ローラ32が共用されており、第2成形部52と第3成形部53とでは第3外ローラ33が共用されており、第3成形部53と曲げ戻し部54とでは第4外ローラ34が共用されている。
【0044】
図2および図3に示すように、本実施形態では、9つの加工ローラ27のうちの8つは、位置調節部55を介してベース部21に取り付けられている。なお、9つの加工ローラ27のうちの残りの1つには、位置調節部55が設けられていない。位置調節部55は、ベース部21に固定される固定部56と、同固定部56に対してスライド移動可能な可動部57とを有している。可動部57には加工ローラ27が回転可能に設けられている。本実施形態の製造装置20では、固定部56に対する可動部57の位置を変更することによって、ベース部21に対する加工ローラ27の位置を変更可能になっている。本実施形態の製造装置20では、8つの位置調節部55の設定を通じてベース部21に対する8つの加工ローラ27の位置を調整することにより、9つの加工ローラ27の間を母材11が通過するルートを変更することができる。これにより、成形部51,52,53や曲げ戻し部54による母材11の曲げ角度、ひいては積層体10の半径を任意の値に設定することが可能になっている。
【0045】
ベース部21には、加工ローラ27を回転駆動するための3つの駆動モータ29が設けられている。これら駆動モータ29は、第3成形部53(図5参照)を構成する3つの加工ローラ27(詳しくは、第3外ローラ33、第4外ローラ34、および第3内ローラ43)に1つずつ連結されている。第3成形部53を構成する3つの加工ローラ27を駆動モータ29によって回転駆動することにより、母材11が第3成形部53を通過する際に、それら加工ローラ27によって母材11を順送り方向に送り出すことが可能になっている。本実施形態では、駆動モータ29が駆動部に相当する。
【0046】
本実施形態の製造装置20は、例えばマイクロコンピュータを中心に構成される電子制御装置60を備えている。この電子制御装置60には、供給モータ26や3つの駆動モータ29が接続されている。電子制御装置60は、母材11を曲げ加工する際に、供給モータ26の運転制御や3つの駆動モータ29の運転制御を実行する。
【0047】
モータ26,29の運転制御は、一対の供給ローラ25と3つの加工ローラ27とを同期した状態で回転させるように実行される。詳しくは、モータ26,29の運転制御は、供給部24の供給ローラ25によって順送りされる母材11が第3成形部53を構成する3つの加工ローラ27の間を通過する際に、それら加工ローラ27を母材11に対して滑ることなく回転させることの可能な態様で実行される。本実施形態の製造装置20では、母材11を曲げ加工する際に、回転駆動される供給ローラ25によって順送りされる母材11の速度に合わせて、第3成形部53を構成する3つの加工ローラ27、詳しくは駆動モータ29によって回転駆動される加工ローラ27によって母材11を順送り方向に送り出すことが可能になっている。
【0048】
本実施形態において、積層体10を製造する際には先ず、帯状の母材11が螺旋状に成形される。
本実施形態の製造装置20では、回転駆動される一対の供給ローラ25によって母材11が順送り方向に送り出されている。なお、一対の供給ローラ25を有する供給部24には、前記ロールから案内ローラ22を経て母材11が供給されている。
【0049】
そして、図5に示すように、母材11が順送り方向(図中に黒塗りの矢印で示す方向)に進んで第1成形部51を通過することにより、同母材11は幅方向に曲げられて半径がR1の円弧状に成形される。
【0050】
母材11が順送り方向にさらに進んで第2成形部52を通過すると、同母材11は幅方向における曲げ角度を大きくするように曲げられて半径がR2(ただし、R2<R1)の円弧状に成形される。
【0051】
その後において母材11が第3成形部53を通過することにより、同母材11は幅方向における曲げ角度をさらに大きくするように曲げられて半径がR3(ただし、R3<R2)の円弧状に成形される。
【0052】
その後、母材11が順送り方向にさらに進んで曲げ戻し部54を通過すると、同母材11は幅方向における曲げ角度を小さくするように曲げられて半径がR0(ただし、R3<R0<R2)の円弧状に成形される。
【0053】
このように、本実施形態の製造装置20では、母材11を第1成形部51、第2成形部52、第3成形部53および曲げ戻し部54といった順に通過させることにより、母材11の各部が所定の曲げ角度(半径=R0)の円弧状に成形される。これにより螺旋状の母材11が成形される。
【0054】
本実施形態では、このようにして成形された螺旋状の母材11をもとに円筒状の積層体10が形成される。具体的には、先ず、製造装置20によって成形される螺旋状の母材11が所定の長さに切断される。その後、位置合わせ用の治具(図示略)を用いる等して、母材11の外周側の端部に等間隔で設けられた切り欠き部12が、同母材11の周方向における5箇所において同母材11の中心線方向に重なる状態にされる。これにより、母材11における積層体10の各層をなす部分の周方向位置が調整される。そして、その状態で、レーザー溶接加工を通じて、切り欠き部12の内面が中心線方向において連続的に溶接される。これにより、母材11における積層体10の各層をなす部分がレーザー溶接によって接合される。本実施形態では、このようにして円筒状の積層体10(図1参照)が製造される。
【0055】
以下、本実施形態の製造装置20による作用効果について説明する。
一般に、一回の曲げ加工における母材の曲げ量を大きくすると、母材の一部(例えば脆弱な部分)が折れ曲がるように変形するなど、母材11の各部の曲げ角度にばらつきが生じ易くなる。
【0056】
本実施形態では、第1成形部51、第2成形部52、および第3成形部53による曲げ加工を通じて、母材11の半径を段階的に小さくするように、同母材11が幅方向における一方側に曲げられる。これにより、一回の曲げ加工における母材11の曲げ量を小さくすることができる。そのため、母材11の曲げ角度が部分的に大きくなることを抑えて、母材11における積層体10の各層を構成する部分を高い真円度で成形することができる。したがって、円筒状の積層体10を精度良く製造することができるようになる。
【0057】
帯状の母材11を幅方向に曲げ加工する際には、同母材11における比較的脆弱な部分(以下、脆弱部分)の曲げ量が大きくなるのに対して、その他の部分の曲げ量は小さくなるといったように、母材11の各部の曲げ量にばらつきが生じるおそれがある。本実施形態では、母材11における切り欠き部12が形成された部分が脆弱部分にあたり、この脆弱部分において曲げ角度が部分的に大きくなるおそれがある。
【0058】
本実施形態では、第1成形部51、第2成形部52、および第3成形部53による曲げ加工を通じて母材11を幅方向における一方側に曲げた後に、曲げ戻し部54による曲げ加工を通じて同母材11が幅方向における他方側に曲げられて戻されるようになる。
【0059】
この一連の曲げ加工では、成形部51,52,53による曲げ加工や曲げ戻し部54による曲げ加工のいずれにおいても、母材11における脆弱部分(本実施形態では、切り欠き部12が形成された部分)の曲げ量がその他の部分の曲げ量よりも大きくなり易い。したがって本実施形態によれば、図6に示すように、3つの成形部51,52,53による曲げ加工によって母材11の脆弱部分が他の部分と比較して一方向に大きく曲がってしまった場合に(図6の二点鎖線参照)、その後の曲げ戻し部54による曲げ加工において上記脆弱部分を他の部分と比較して他方向に大きく曲げることによって、曲がり過ぎた部分を逆方向に曲げて戻すことができる(図6の実線参照)。これにより、母材11の脆弱部分とその他の部分との曲げ角度の差を小さくすることができるため、同母材11の各部における曲げ角度のばらつきを抑えることができる。なお図6には、曲げ戻し部54による母材11の曲げ加工についての理解を容易にするために、母材11の曲げ量を実際の曲げ量よりも誇張して示している。
【0060】
帯状の母材11を幅方向に曲げる曲げ加工では、同母材11の曲げ方向内側の部分に圧縮応力が生じ易く、この圧縮応力によって同部分が不要に厚くなったり波打ち形状になったりするおそれがある。
【0061】
図2および図5に示すように、本実施形態では、第3成形部53を構成する3つの加工ローラ27(詳しくは、第3外ローラ33、第4外ローラ34、および第3内ローラ43)に、それぞれ駆動モータ29が連結されている。そして、製造装置20によって母材11を曲げ加工する際には、各駆動モータ29の運転制御が実行されて第3成形部53を構成する3つの加工ローラ27が回転駆動される。
【0062】
本実施形態によれば、このようにして回転駆動される3つの加工ローラ27によって母材11を順送り方向に送り出しつつ、製造装置20による母材11の曲げ加工を行うことができる。そのため、3つの成形部51,52,53による母材11の曲げ加工に際して、同母材11をそれら成形部51,52,53からスムーズに送り出すことができる。これにより、母材11の曲げ方向内側の部分において生じる圧縮応力を小さくすることができる。
【0063】
本実施形態では、第3成形部53による母材11の曲げ量が最も大きくなるように、3つの成形部51,52,53による母材11の曲げ量が定められている。このことから、曲げ量の最も大きい第3成形部53によって母材11が曲げ加工される際に、同母材11の曲げ方向内側の部分において生じる圧縮応力が大きくなり易いと云える。
【0064】
本実施形態では、そうした第3成形部53を構成する3つの加工ローラ27が駆動モータ29によって回転駆動される。そのため、上記圧縮応力が大きくなり易い第3成形部53による母材11の曲げ加工を、3つの加工ローラ27の回転駆動を通じて同母材11を第3成形部53から順送り方向に送り出しつつ行うことができる。これにより、第3成形部53による母材11の曲げ加工に際して生じる上記圧縮応力を的確に抑えることができる。
【0065】
しかも本実施形態では、そうした第3成形部53が、3つの成形部51,52,53の中でも母材11の順送り方向における最も奥側に配置されている。そのため、順送り方向における手前側に配置された第1成形部51や第2成形部52による母材11の曲げ加工を、第3成形部53を構成する3つの加工ローラ27の回転駆動を通じて同母材11を順送り方向の奥側に引っ張りつつ行うことができる。これにより、3つの成形部51,52,53による母材11の曲げ加工に際して、同母材11をそれら成形部51,52,53からスムーズに送り出すことができるため、母材11の曲げ方向内側の部分において生じる圧縮応力を小さくすることができる。
【0066】
本実施形態によれば、このようにして、母材11の曲げ加工に際して同母材11の曲げ方向内側の部分において生じる圧縮応力を小さく抑えることができるため、同母材11の曲げ方向内側の部分が不要に厚くなったり波打ち形状になったりすることを抑えることができる。これにより、円筒状の積層体10を精度良く製造することができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)第1成形部51、第2成形部52、および第3成形部53を、母材11の順送り方向において並ぶ態様で配設した。そのため、それら成形部51,52,53を用いて、母材11における積層体10の各層をなす部分を高い真円度で成形することができる。したがって、積層体10を精度良く製造することができるようになる。
【0068】
(2)第1成形部51、第2成形部52、および第3成形部53による曲げ加工を通じて、母材11の半径を段階的に小さくするように、同母材11が幅方向における一方側に曲げられる。そのため、母材11の曲げ角度が部分的に大きくなることを抑えて、母材11における積層体10の各層を構成する部分を高い真円度で成形することができる。
【0069】
(3)曲げ加工量が最も大きい第3成形部53を構成する3つの加工ローラ27には、それら加工ローラ27によって母材11を順送りする態様で同加工ローラ27を回転駆動する駆動モータ29が設けられている。そのため、製造装置20による母材11の曲げ加工に際して、同母材11の曲げ方向内側の部分が不要に厚くなったり波打ち形状になったりすることを抑えることができる。
【0070】
(4)切り欠き部12を有する母材11を用いて積層体10が製造されるとはいえ、同積層体10を精度良く製造することができる。
(5)3つの成形部51,52,53よりも母材11の順送り方向における奥側に配置されて、母材11の曲げ角度を小さくする方向に同母材11を曲げ加工する曲げ戻し部54を有している。これにより、母材11の各部における曲げ角度のばらつきを抑えることができる。
【0071】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0072】
・積層体10の各層を接合する方法としては、かしめ加工による接合方法や接着材による接合方法など、任意の接合方法を採用することができる。また、母材11における積層体10の各層をなす部分を接合する接合部位は、切り欠き部12が設けられた部分に限らず、任意に設定することができる。
【0073】
・第1成形部51、第2成形部、第3成形部53、および曲げ戻し部54を、加工ローラ27の一部を共用することなく、それぞれが専用の3つの加工ローラ27によって構成される態様で設けるようにしてもよい。
【0074】
・供給モータ26の運転制御の実行態様や3つの駆動モータ29の運転制御の実行態様は、母材11を順送り方向にスムーズに送り出すことができるのであれば、任意に変更することができる。例えば、供給ローラ25によって母材11(詳しくは、同供給ローラ25に接触する部分)を順送り方向に送り出す速度と加工ローラ27によって母材11(詳しくは、同加工ローラ27に接触する部分)を順送り方向に送り出す速度とが同一になるように、供給モータ26の運転制御と3つの駆動モータ29の運転制御とを実行してもよい。こうした構成は、ローラの半径RRに同ローラの回転速度RVを乗算した値(=RR×RV)が同一の値になるように各モータ26,29の運転制御を実行することによって実現することができる。
【0075】
・加工ローラ27を回転駆動する駆動モータ29を、第3成形部53を構成する3つの加工ローラ27に設けることに代えて、あるいは合わせて、曲げ戻し部54を構成する3つの加工ローラ27に設けるようにしてもよい。
【0076】
同構成によれば、曲げ戻し部54による母材11の曲げ加工を、同曲げ戻し部54を構成する3つの加工ローラ27によって母材11における曲げ加工されている部分の全体を順送り方向に送り出しつつ行うことができる。しかも、3つの成形部51,52,53による母材11の曲げ加工については、曲げ戻し部54を構成する3つの加工ローラ27によって同母材11を曲げ戻し部54側、すなわち順送り方向の奥側に引っ張りつつ行うことができる。これにより、3つの成形部51,52,53および曲げ戻し部54による母材11の曲げ加工に際して、同母材11を、それら成形部51,52,53および曲げ戻し部54からスムーズに送り出すことができる。そのため、このとき母材11の曲げ方向内側の部分において生じる圧縮応力を小さくすることができる。
【0077】
・駆動モータ29を設ける対象の加工ローラ27は、任意に設定することができる。
同構成においては、4つの内ローラ41~44のうちの少なくとも1つに駆動モータ29を設けることが好ましい。同構成によれば、母材11の曲げ方向内側の部分に接している内ローラが回転駆動されるため、成形部51,52,53による母材11の曲げ加工に際して、内ローラによって母材11の曲げ方向内側の部分を順送り方向に送り出すことができる。これにより、母材11の曲げ方向内側の部分を成形部51,52,53からスムーズに送り出すことができる。
【0078】
上記構成において、曲げ加工量が最も大きい第3成形部53を構成する第3内ローラ43に駆動モータ29を設けることができる。同構成によれば、上記圧縮応力が大きくなり易い第3成形部53による母材11の曲げ加工を、第3内ローラ43の回転駆動を通じて同母材11を第3成形部53から順送り方向に送り出しつつ行うことができる。
【0079】
・曲げ戻し部54を省略してもよい。
・3つの成形部51,52,53を設けることに限らず、母材11を幅方向に曲げ加工する成形部を2つのみ設けたり、同成形部を4つ以上設けたりしてもよい。
【0080】
・順送り方向における手前側の第1成形部による母材11の曲げ角度と順送り方向における奥側の第2成形部による母材11の曲げ角度とが同一になるように、複数の成形部を設けるようにしてもよい。同構成によれば、第1成形部によって母材11を所定の角度に曲げた後に第2成形部によって同母材11の曲げ角度を矯正するといったように、複数の成形部を用いて積層体10の各層を高い真円度で成形することができる。
【0081】
・母材11を構成する板材としては、鋼以外の鉄系の金属材料からなる板材や、アルミニウム(あるいはアルミニウム合金)からなる板材、銅板など、鋼板以外の金属板を採用することができる。なお、鋼板よりも軟質な金属板(例えばアルミニウム板や銅板など)を母材として採用すると、母材を幅方向に曲げ加工して筒状積層体の各層を円環状に成形する際に同母材が撓む座屈現象が生じやすいため、その成形加工が困難になる。上記実施形態にかかる製造装置によれば、そうした軟質な金属板からなる母材を、半径を段階的に小さくするように幅方向に曲げることができる。これにより、一回の曲げ加工における母材の曲げ量を小さくすることができるため、座屈現象の発生を抑えつつ母材の曲げ加工を行うことができる。したがって上記製造装置によれば、軟質な金属板が母材として採用される場合であっても、円筒状の積層体を精度良く製造することができる。
【0082】
・上記実施形態にかかる製造装置は、曲げ方向内側に切り欠き部が設けられた母材によって構成される筒状積層体にも適用することができる。また、切り欠き部を有していない母材によって構成される筒状積層体にも、上記実施形態にかかる製造装置は適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
10…積層体
11…母材
12…切り欠き部
20…製造装置
24…供給部
25…供給ローラ
26…供給モータ
27…加工ローラ
29…駆動モータ
31…第1外ローラ
32…第2外ローラ
33…第3外ローラ
34…第4外ローラ
35…第5外ローラ
41…第1内ローラ
42…第2内ローラ
43…第3内ローラ
44…第4内ローラ
51…第1成形部
52…第2成形部
53…第3成形部
54…曲げ戻し部
60…電子制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6