(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038492
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】垂直共振器型面発光レーザ素子及び垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
H01S5/183
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143035
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 知雅
(72)【発明者】
【氏名】横関 弥樹博
(72)【発明者】
【氏名】中島 博
(72)【発明者】
【氏名】笠原 大爾
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AC04
5F173AC14
5F173AC35
5F173AC42
5F173AC46
5F173AC52
5F173AH03
5F173AP54
5F173AR14
(57)【要約】
【課題】生産性に優れ、高出力化に適した垂直共振器型面発光レーザ素子及び垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】本技術に係る垂直共振器型面発光レーザ素子は、第1のDBRと、第2のBRと、活性層と、トンネル接合層とを具備する。上記第1のDBRは、特定の波長の光を反射する。上記第2のDBRは、上記波長の光を反射する。上記活性層は、上記第1のDBRと上記第2のDBRの間に配置されている。上記トンネル接合層は、上記第1のDBRと上記活性層の間に配置され、トンネル接合を形成する。上記第1のDBRと上記第2のDBRの間の各層は、層面に垂直な方向から見て内周側の内周領域と、上記内周領域を囲む外周領域を有し、上記トンネル接合層の外周領域はイオンが注入され、上記トンネル接合層の内周領域よりキャリア濃度が低く、電気抵抗が大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の波長の光を反射する第1のDBR(Distributed Bragg Reflector)と、
前記波長の光を反射する第2のDBRと、
前記第1のDBRと前記第2のDBRの間に配置された活性層と、
前記第1のDBRと前記活性層の間に配置され、トンネル接合を形成するトンネル接合層と
を具備し、
前記第1のDBRと前記第2のDBRの間の各層は、層面に垂直な方向から見て内周側の内周領域と、前記内周領域を囲む外周領域を有し、前記トンネル接合層の外周領域はイオンが注入され、前記トンネル接合層の内周領域よりキャリア濃度が低く、電気抵抗が大きい
垂直共振器型面発光レーザ素子。
【請求項2】
請求項1に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
前記トンネル接合層の外周領域のバンドギャップは、前記トンネル接合層の内周領域のバンドギャップより大きい
垂直共振器型面発光レーザ素子。
【請求項3】
請求項2に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
前記トンネル接合層の外周領域の屈折率は、前記トンネル接合層の内周領域の屈折率より小さい
垂直共振器型面発光レーザ素子。
【請求項4】
請求項3に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
前記イオンはOイオンである
垂直共振器型面発光レーザ素子。
【請求項5】
請求項4に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
前記トンネル接合層は、少なくとも1層以上のAlを含む物質からなる
垂直共振器型面発光レーザ素子。
【請求項6】
請求項5に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
前記トンネル接合層の外周領域は、Al酸化物を含む
垂直共振器型面発光レーザ素子。
【請求項7】
請求項1に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
前記トンネル接合層と前記活性層の間に配置された第1の中間層と、
前記第2のDBRと前記活性層の間に配置された第2の中間層と
をさらに具備し、
前記イオンはOイオンであり、
前記活性層、前記第1の中間層及び前記第2の中間層のうち少なくともいずれか1層の外周領域はAl酸化物を含む
垂直共振器型面発光レーザ素子。
【請求項8】
請求項7に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
前記第1の中間層の外周領域はAl酸化物を含み、
前記活性層及び前記第2の中間層の外周領域はAl酸化物を含まない
垂直共振器型面発光レーザ素子。
【請求項9】
請求項7に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
前記第1の中間層、前記活性層及び前記第2の中間層の外周領域はAl酸化物を含む
垂直共振器型面発光レーザ素子。
【請求項10】
請求項7に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
前記活性層の外周領域はAl酸化物を含み、
前記第1の中間層及び前記第2の中間層の外周領域はAl酸化物を含まない
垂直共振器型面発光レーザ素子。
【請求項11】
請求項1に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
前記トンネル接合層の内周領域はp+-AlInAsからなる第1の層と、n+-AlInAsからなる第2の層が積層されて構成され、
前記トンネル接合層の外周領域はAlInAs酸化物からなる
垂直共振器型面発光レーザ素子。
【請求項12】
請求項1に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
前記トンネル接合層の内周領域はp+-AlGaAsからなる第1の層と、n+-AlGaAsからなる第2の層が積層されて構成され、
前記トンネル接合層の外周領域はAlGaAs酸化物からなる
垂直共振器型面発光レーザ素子。
【請求項13】
特定の波長の光を反射する第1のDBR(Distributed Bragg Reflector)と、前記波長の光を反射する第2のDBRと、前記第1のDBRと前記第2のDBRの間に配置された活性層と、前記第1のDBRと前記活性層の間に配置され、トンネル接合を形成するトンネル接合層とを備え、前記第1のDBRと前記第2のDBRの間の各層は、層面に垂直な方向から見て内周側の内周領域と、前記内周領域を囲む外周領域を有する積層体を形成し、
前記トンネル接合層の外周領域にイオンを注入し、前記トンネル接合層の外周領域のキャリア濃度を前記トンネル接合層の内周領域のキャリア濃度より小さくし、前記トンネル接合層の外周領域の電気抵抗を前記トンネル接合層の内周領域の電気抵抗より大きくする
垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法であって、
前記トンネル接合層はAlを含む物質からなり、
前記トンネル接合層の外周領域にイオンを注入する工程では、前記トンネル接合層の外周領域にOイオンを注入する
垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法であって、
前記トンネル接合層の外周領域にイオンを注入する工程では、Oイオンの注入により、前記トンネル接合層の外周領域にAl酸化物を生成させる
垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法であって、
前記積層体は、前記トンネル接合層と前記活性層の間に配置された第1の中間層と、前記第2のDBRと前記活性層の間に配置された第2の中間層とをさらに具備し、
前記トンネル接合層の外周領域にイオンを注入する工程では、前記活性層、前記第1の中間層及び前記第2の中間層のうち少なくともいずれか1層の外周領域にOイオンを注入する
垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法。
【請求項17】
請求項14に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法であって、
前記イオン注入により生じた結晶欠陥を修復し、Al酸化物の生成を促進させるアニール工程
をさらに含む垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、層面に垂直な方向にレーザを出射する垂直共振器型面発光レーザ素子及び垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直共振器型面発光レーザ)素子は、活性層を一対の分布ブラッグ反射鏡(Distributed Bragg Reflector:DBR)によって挟んだ構造を有する。活性層の近傍には電流狭窄構造が設けられており、電流は電流狭窄構造によって活性層中の一部領域に集中し、自然放出光を生じる。DBRは低屈折率層と高屈折率層を交互に複数層積層したものであり、自然放出光のうち所定の波長の光を活性層に向けて反射することで、レーザ発振を生じさせる。
【0003】
ここで、InP系材料からなる活性層を有するInP系のVCSEL素子では、電流狭窄構造としてイオンインプラントが用いられている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、AlGaNAs混晶からなるトンネルジャンクション層の外周領域にプロトンをインプラントし、電流狭窄構造を形成した面発光レーザ素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、電流狭窄効果は得られるものの、プロトンをインプラントした領域で光吸収によるロスが生じるため、高出力化には不利となり実用化するには不十分であった。また、InP系のVCSEL素子の電流狭窄構造としては埋込トンネルジャンクション構造も知られているが、埋込トンネルジャンクション構造ではトンネルジャンクションの埋め込み成長工程が必要であり、再成長よる製造コストの増加が避けられない。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、生産性に優れ、高出力化に適した垂直共振器型面発光レーザ素子及び垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る垂直共振器型面発光レーザ素子は、第1のDBRと、第2のDBRと、活性層と、トンネル接合層とを具備する。
上記第1のDBRは、特定の波長の光を反射する。
上記第2のDBRは、上記波長の光を反射する。
上記活性層は、上記第1のDBRと上記第2のDBRの間に配置されている。
上記トンネル接合層は、上記第1のDBRと上記活性層の間に配置され、トンネル接合を形成する。
上記第1のDBRと上記第2のDBRの間の各層は、層面に垂直な方向から見て内周側の内周領域と、上記内周領域を囲む外周領域を有し、上記トンネル接合層の外周領域はイオンが注入され、上記トンネル接合層の内周領域よりキャリア濃度が低く、電気抵抗が大きい。
【0008】
この構成によれば、トンネル接合層の外周領域にイオンを注入することにより、外周領域におけるキャリア濃度を低下させ、外周領域でのトンネル接合を消失させることができる。これにより、外周領域は内周領域に比べて電気抵抗が大きくなり、トンネル接合層によって電流狭窄構造が形成される。イオンの注入によって電流狭窄構造を形成することができるため、本VCSEL素子は生産性に優れる。また、トンネル接合層の外周領域において結晶破壊により絶縁化しているものではないため、外周領域における光吸収は小さく、本VCSEL素子は高出力化に適している。
【0009】
上記トンネル接合層の外周領域のバンドギャップは、上記トンネル接合層の内周領域のバンドギャップより大きくてもよい。
【0010】
上記トンネル接合層の外周領域の屈折率は、上記トンネル接合層の内周領域の屈折率より小さくてもよい。
【0011】
上記イオンはOイオンであってもよい。
【0012】
上記トンネル接合層は、少なくとも1層以上のAlを含む物質からなるものであってもよい。
【0013】
上記トンネル接合層の外周領域は、Al酸化物を含むものであってもよい。
【0014】
上記垂直共振器型面発光レーザ素子は、
上記トンネル接合層と上記活性層の間に配置された第1の中間層と、
上記第2のDBRと上記活性層の間に配置された第2の中間層と
をさらに具備し、
上記イオンはOイオンであり、
上記活性層、上記第1の中間層及び上記第2の中間層のうち少なくともいずれか1層の外周領域はAl酸化物を含んでもよい。
【0015】
上記第1の中間層の外周領域はAl酸化物を含み、
上記活性層及び上記第2の中間層の外周領域はAl酸化物を含まないものであってもよい。
【0016】
上記第1の中間層、上記活性層及び上記第2の中間層の外周領域はAl酸化物を含むものであってもよい。
【0017】
上記活性層の外周領域はAl酸化物を含み、
上記第1の中間層及び上記第2の中間層の外周領域はAl酸化物を含まないものであってもよい。
【0018】
上記トンネル接合層の内周領域はp+-AlInAsからなる第1の層と、n+-AlInAsからなる第2の層が積層されて構成され、
上記トンネル接合層の外周領域はAlInAs酸化物からなるものであってもよい。
【0019】
上記トンネル接合層の内周領域はp+-AlGaAsからなる第1の層と、n+-AlGaAsからなる第2の層が積層されて構成され、
上記トンネル接合層の外周領域はAlGaAs酸化物からなるものであってもよい。
【0020】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法は、特定の波長の光を反射する第1のDBRと、上記波長の光を反射する第2のDBRと、上記第1のDBRと上記第2のDBRの間に配置された活性層と、上記第1のDBRと上記活性層の間に配置され、トンネル接合を形成するトンネル接合層とを備え、上記第1のDBRと上記第2のDBRの間の各層は、層面に垂直な方向から見て内周側の内周領域と、上記内周領域を囲む外周領域を有する積層体を形成し、
上記トンネル接合層の外周領域にイオンを注入し、上記トンネル接合層の外周領域のキャリア濃度を上記トンネル接合層の内周領域のキャリア濃度より小さくし、上記トンネル接合層の外周領域の電気抵抗を上記トンネル接合層の内周領域の電気抵抗より大きくする。
【0021】
上記トンネル接合層はAlを含む物質からなり、
上記トンネル接合層の外周領域にイオンを注入する工程では、上記トンネル接合層の外周領域にOイオンを注入してもよい。
【0022】
上記トンネル接合層の外周領域にイオンを注入する工程では、Oイオンの注入により、上記トンネル接合層の外周領域にAl酸化物を生成させてもよい。
【0023】
上記積層体は、上記トンネル接合層と上記活性層の間に配置された第1の中間層と、上記第2のDBRと上記活性層の間に配置された第2の中間層とをさらに具備し、
上記トンネル接合層の外周領域にイオンを注入する工程では、上記活性層、上記第1の中間層及び上記第2の中間層のうち少なくともいずれか1層の外周領域にOイオンを注入してもよい。
【0024】
上記垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法は、上記イオン注入により生じた結晶欠陥を修復し、Al酸化物の生成を促進させるアニール工程をさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本技術の実施形態に係るVCSEL素子の断面図である。
【
図2】上記VCSEL素子が備える積層体の模式図である。
【
図3】上記VCSEL素子が備える積層体の平面図である。
【
図4】上記VCSEL素子が備える積層体の各層を分離して示す模式図である。
【
図5】上記VCSEL素子が備えるトンネル接合層の断面図である。
【
図6】上記VCSEL素子が備えるトンネル接合層の平面図である。
【
図8】上記VCSEL素子の内周領域のバンド構造を示すバンド図である。
【
図9】上記VCSEL素子の外周領域のバンド構造を示すバンド図である。
【
図10】上記VCSEL素子の製造方法を示す模式図である。
【
図11】上記VCSEL素子の製造方法を示す模式図である。
【
図12】上記VCSEL素子の製造方法を示す模式図である。
【
図13】上記VCSEL素子の製造方法を示す模式図である。
【
図14】上記VCSEL素子の製造方法を示す模式図である。
【
図15】上記VCSEL素子の製造方法を示す模式図である。
【
図16】上記VCSEL素子の製造方法を示す模式図である。
【
図17】上記VCSEL素子の製造方法を示す模式図である。
【
図18】上記VCSEL素子の製造方法を示す模式図である。
【
図19】上記VCSEL素子の製造方法を示す模式図である。
【
図20】上記VCSEL素子の製造方法を示す模式図である。
【
図21】上記VCSEL素子の製造方法を示す模式図である。
【
図22】上記VCSEL素子のイオン注入領域の配置例1を示す模式図である。
【
図23】上記VCSEL素子のイオン注入領域の配置例2を示す模式図である。
【
図24】上記VCSEL素子のイオン注入領域の配置例3を示す模式図である。
【
図25】上記VCSEL素子の配置例1における外周領域のバンド構造を示すバンド図である。
【
図26】上記VCSEL素子の配置例2における外周領域のバンド構造を示すバンド図である。
【
図27】上記VCSEL素子の配置例3における外周領域のバンド構造を示すバンド図である。
【
図28】本技術の実施形態に係る、他の構造を有するVCSEL素子の断面図である。
【
図29】本技術の実施形態に係る、他の構造を有するVCSEL素子の断面図である。
【
図30】本技術の実施形態に係る、他の構造を有するVCSEL素子の断面図である。
【
図31】本技術の実施形態に係る、他の構造を有するVCSEL素子の断面図である。
【
図32】本技術の実施形態に係るVCSEL素子アレイの断面図である。
【
図33】上記VCSEL素子アレイが備えるトンネル接合層の平面図である。
【
図34】本技術の実施形態に係る集積化モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本技術の実施形態に係るVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直共振器型面発光レーザ)素子について説明する。
【0027】
[VCSEL素子の構造]
図1は本実施形態に係るVCSEL素子100の断面図である。同図に示すように、VCSEL素子100は、下部スペーサー層101、下部中間層102、活性層103、上部中間層104、トンネル接合層105、上部スペーサー層106、コンタクト層107、下部DBR108、上部DBR109、下部電極110及び上部電極111を備える。
【0028】
VCSEL素子100の構成のうち、下部DBR108と上部DBR109の間の層、即ち下部スペーサー層101、下部中間層102、活性層103、上部中間層104、トンネル接合層105及び上部スペーサー層106の積層体を積層体120とする。
図2は、積層体120の模式図である。同図に示すように積層体120の各層の層面方向をX-Y方向とし、層面方向に垂直な方向をZ方向とする。
【0029】
図3は、積層体120をZ方向から見た図である。同図に示すように、積層体120はZ方向から見て内周領域120a及び外周領域120bを有する。Z方向に平行な積層体120の周面を周面120cとすると、内周領域120aはZ方向から見て内周側の領域であり、周面120cから離間した領域である。外周領域120bは、内周領域120aと周面120cの間の領域であり、内周領域120aを囲む領域である。
【0030】
図4は、積層体120の各層を離間させて示す模式図である。同図に示すように、下部スペーサー層101において内周領域120aに含まれる領域を内周領域101aとし、外周領域121bに含まれる領域を外周領域101bとする。以下同様に各層は内周領域と外周領域を有するものとする。
【0031】
即ち、下部中間層102は内周領域102a及び外周領域102bを有し、活性層103は内周領域103a及び外周領域103bを有する。上部中間層104は内周領域104a及び外周領域104bを有し、トンネル接合層105は内周領域105a及び外周領域105bを有する。上部スペーサー層106は内周領域106aと外周領域106bを有する。
【0032】
以下、
図1を参照して、VCSEL素子100の各構成について説明する。下部スペーサー層101は、下部DBR108と上部DBR109の間隔を調整する層である。下部スペーサー層101はn型半導体材料からなり、例えばn-InPからなるものとすることができる。
【0033】
下部中間層102は、下部スペーサー層101上に設けられ、キャリアを活性層103に閉じ込める層である。下部中間層102はn型半導体材料からなり、Alを含む材料、例えばn-AlGaInAsからなるものとすることができる。また、下部中間層102はAlを含まない材料からなるものであってもよく、例えばn-InPからなるものとすることもできる。
【0034】
活性層103は、下部中間層102上に設けられ、自然放出光の放出及び増幅を行う。活性層103は、バンドギャップが小さい量子井戸層とバンドギャップが大きい障壁層を交互に積層した量子井戸(QW:quantum well)構造を有する層とすることができる。活性層103は、Alを含む材料、例えばAlGaInAsからなるものとすることができる。また、活性層103はAlを含まない材料からなるものであってもよく、例えばInGaAs又はInGaAsPからなるものとすることもできる。さらに、活性層103は量子井戸構造に限られず、InAs等からなる量子ドット(QDs:quantum dots)構造等を有するものであってもよい。
【0035】
上部中間層104は、活性層103上に設けられ、キャリアを活性層103にとじ込める層である。上部中間層104はp型半導体材料からなり、Alを含む材料、例えばp-AlGaInAsからなるものとすることができる。また、上部中間層104はAlを含まない材料からなるものであってもよく、例えばp-InPからなるものとすることもできる。
【0036】
トンネル接合層105は、上部中間層104上に設けられ、トンネル接合による電流狭窄構造を形成する。
図5は、トンネル接合層105の断面図であり、
図6はトンネル接合層の平面図である。
図5に示すように、トンネル接合層105は、第1層121及び第2層122を備える。第1層121は、トンネル接合層105において上部中間層104側の層であり、不純物濃度が高いp型半導体材料からなる。第2層122は、トンネル接合層105において上部スペーサー層106側の層であり、不純物濃度が高いn型半導体材料からなる。
【0037】
トンネル接合層105は、Alを含む物質からなるものとすることができる。Alを含む物質としてAlInAs又はAlGaInAsが挙げられる。AlInAsの場合、第1層121はp+-AlInAsからなり、第2層122はn+-AlInAsからなるものとすることができる。また、AlGaInAsの場合、第1層121はp+-AlGaInAsからなり、第2層122はn+-AlGaInAsからなるものとすることができる。
【0038】
さらにトンネル接合層105は、Alを含まない物質からなるものとすることもでき、例えば、InP、InGaAsP又はInGaAsからなるものとすることができる。InPの場合、第1層121はp+-InPからなり、第2層122はn+-InPからなるものとすることができる。InGaAsPの場合、第1層121はp+-InGaAsPからなり、第2層122はn+-InGaAsPからなるものとすることができる。InGaAsの場合、第1層121はp+-InGaAsからなり、第2層122はn+-InGaAsからなるものとすることができる。
【0039】
またトンネル接合層105は、第1層121と第2層122の材料が異なり、Alを含む物質とAlを含まない物質の両方からなるものとすることもできる。具体的には第1層121はAlを含むAlInAs又はAlGaInAsからなり、第2層122はAlを含まないInP、InGaAsP又はInGaAsからなるものとすることができる。この場合、例えば第1層121はp+-AlInAsからなり、第2層122はn+-InPからなるものとすることができる。
【0040】
反対に、第1層121はAlを含まないInP、InGaAsP又はInGaAsからなり、第2層122はAlを含むAlInAs又はAlGaInAsからなるものとすることもできる。この場合、例えば第1層121はp+-InPからなり、第2層122はn+-AlInAsからなるものとすることができる。
【0041】
ここで、上述のようにトンネル接合層105は、Z方向から見て内周側の内周領域105aと、内周領域105aを囲む外周領域105bを有する(
図4参照)。外周領域105bにはイオンが注入されており、内周領域105aにはイオンが注入されていない。
図1及び以下の図において、VCSEL素子100においてイオンが注入された領域をイオン注入領域Rとし、ドットを描画した領域によって示す。イオンの注入により外周領域105bの不純物濃度は内周領域105aの不純物濃度より小さくなり、外周領域105bのキャリア濃度(電子及び正孔の密度)は内周領域105aのキャリア濃度より小さくなっている。
【0042】
この外周領域105bのキャリア濃度の低下により、後述するように第1層121と第2層122によるトンネル接合が消失している。一方、内周領域105aはイオンが注入されず、第1層121と第2層122によるトンネル接合が維持されている。これにより、外周領域105bの電気抵抗は内周領域105aの電気抵抗より大きくなっている。
【0043】
外周領域105bに注入されているイオンのイオン種は、第1層121と第2層122のバンドギャップが増加するイオン種とすることができ、具体的にはOイオン又はNイオンとすることができる。このうち、Oイオンは外周領域105bを酸化することができ、より好適である。
【0044】
上部スペーサー層106は、トンネル接合層105上に設けられ、下部DBR108と上部DBR109の間隔を調整する層である。上部スペーサー層106はn型半導体材料からなり、例えばn-InPからなるものとすることができる。
【0045】
コンタクト層107は、上部スペーサー層106上において上部DBR109の周囲に設けられ、上部電極111と上部スペーサー層106の電気的接続を確保する。コンタクト層107は、積層体120の内周領域120aを囲む環状形状を有するものとすることができる。コンタクト層107は、不純物濃度が高いn型半導体材料からなり、例えばn+-InGaAs、n+-InGaAsP又はn+-InPからなるものとすることができる。
【0046】
下部DBR108は、下部スペーサー層101の内周領域101a(
図4参照)に隣接して設けられ、波長λの光を反射するDBR(Distributed Bragg Reflector:分布ブラッグ反射鏡)として機能する。下部DBR108は、上部DBR109と共に積層体120を挟み、レーザ発振のための共振器を構成する。下部DBR108は例えば誘電体DBRであり、SiO
2、TiO
2、Ta
2O
5、a-Si又はAl
2O
3等からなるものとすることができる。
【0047】
上部DBR109は、上部スペーサー層106の内周領域106a(
図4参照)に隣接して設けられ、波長λの光を反射するDBR(Distributed Bragg Reflector:分布ブラッグ反射鏡)として機能する。上部DBR109は、下部DBR108と共に積層体120を挟み、レーザ発振ための共振器を構成する。上部DBR109は例えば、誘電体DBRであり、SiO
2、TiO
2、Ta
2O
5、a-Si又はAl
2O
3等からなるものとすることができる。
【0048】
下部電極110は、下部DBR108の周囲において下部スペーサー層101に隣接して設けられ、VCSEL素子100の一方の電極として機能する。下部電極110は例えばTi/Pt/Au又はAuGe/Ni/Au等からなるものとすることができる。また、下部電極110はメッキにより形成されたものであってもよい。
【0049】
上部電極111は、コンタクト層107に隣接して設けられ、VCSEL素子100の他方電極として機能する。上部電極111は、上部DBR109を囲む環状形状を有するものとすることができる。上部電極111は、例えばTi/Pt/Au等からなるものとすることができる。
【0050】
VCSEL素子100は、以上のような構成を有する。VCSEL素子100の構成はここに示すものに限られず、少なくとも活性層103、トンネル接合層105、下部DBR108及び上部DBR109を備えるものであればよい。
【0051】
[VCSEL素子のバンド構造]
VCSEL素子100のバンド構造について説明する。
図7はVCSEL素子100の模式図である。同図においてA-A線はトンネル接合層105の内周領域105aを通過する線であり、B-B線はトンネル接合層105の外周領域105bを通過する線である。
図8は
図7におけるA-A線でのバンド構造を示すバンド図であり、
図9は
図7におけるB-B線でのバンド構造を示すバンド図である。
【0052】
図8に示すように、トンネル接合層105の内周領域105aでは、第1層121と第2層122の境界において第1層121のコンダクションバンドEcと、第2層122のヴァレンスバンドEvが接近しており、第1層121と第2層122によるトンネル接合が形成されている。これにより、図中矢印で示すように、第2層122から第1層121へ電流が流れる。
【0053】
一方、
図9に示すように、トンネル接合層105の外周領域105bでは、イオンの注入によりキャリア濃度が低下し、第1層121と第2層122においてコンダクションバンドEcとヴァレンスバンドEvの間隔(バンドギャップ)が増大している。これにより、外周領域105bのバンドギャップは内周領域105aのバンドギャップより大きくなっておいる。外周領域105bでは、このバンドギャップの増大により、第1層121と第2層122の間のトンネル接合が消失するため、第1層121と第2層122の間で電流が流れない。
【0054】
このように、トンネル接合層105では、内周領域105aにおいてはトンネル接合により電流が流れるが、外周領域105bにおいてはトンネル接合による電流が流れない。このため、トンネル接合層105を流れる電流は内周領域105aに集中し、即ち電流狭窄作用が発生する。
【0055】
なお、外周領域105bに注入されるイオンのイオン種は、
図9に示すように第1層121と第2層122においてコンダクションバンドEcとヴァレンスバンドEvのバンドギャップが増大するイオン種であればよく、例えばOイオン又はNイオンとすることができる。
【0056】
[VCSEL素子の動作]
下部電極110と上部電極111の間に電圧を印加すると、下部電極110と上部電極111の間で電流が流れる(
図1参照)。電流は、トンネル接合層105におけるトンネル接合による電流狭窄作用を受け、活性層103のうちトンネル接合層105の内周領域105aに近接する領域に注入される。これにより、当該領域において自然放出光が生じる。自然放出光はVCSEL素子100の積層方向(Z方向)に進行し、下部DBR108及び上部DBR109によって反射される。
【0057】
下部DBR108及び上部DBR109は発振波長λを有する光を反射するように構成されているため、自然放出光のうち発振波長λの成分は下部DBR108及び上部DBR109の間で定在波を形成し、活性層103によって増幅される。注入電流が閾値を超えると定在波を形成する光がレーザ発振し、上部DBR109を透過してレーザ光が出射される。
【0058】
ここで、VCSEL素子100では上記のように、トンネル接合層105の外周領域105bにおいてイオンを注入し、外周領域105bのトンネル接合を解消させることで電流狭窄構造が実現されている。プロトンインプラント(特許文献1参照)のように外周領域105bの結晶を破壊して高抵抗化しているのではないため、外周領域105bにおける光吸収は小さく、光吸収によるロスが抑制されている。
【0059】
[イオン注入による酸化について]
上記のように、トンネル接合層105の外周領域105bにはイオンが注入され、電流狭窄構造が実現されている。ここで、トンネル接合層105がAlを含む物質(AlInAs等)からなり、外周領域105bがOイオンである場合、外周領域105bにおいてAlを含む物質にOが取り込まれ、外周領域105bが半絶縁体化する。これにより、トンネル接合の消失に加え、半絶縁体化により外周領域105bが高抵抗化し、より好適である。
【0060】
また、外周領域105bへのOイオンの注入量を増加させることにより、外周領域105bにおいてAl酸化物(AlOX)が形成される。例えば内周領域105aにおいて第1層121がp+-AlInAsからなり、第2層122がn+-AlInAsからなる場合、外周領域105bはAlInAs酸化物からなるものとすることができる。
【0061】
Al酸化物の形成により、外周領域105bのバンドギャップ(
図9参照)がより広がり、外周領域105bの屈折率が内周領域105aの屈折率より小さくなる。これにより、下部DBR108と上部DBR109の間を進行する光は外周領域105bよりも内周領域105aを進行しやすくなり、層面方向(X-Y方向)における光閉じ込め作用、即ち光狭窄作用が発生する。このため、VCSEL素子100から放出されるレーザ光の量が増加し、VCSEL素子100の発光特性が向上する。
【0062】
[VCSEL素子の製造方法について]
VCSEL素子100の製造方法について説明する。
図10乃至
図21は、VCSEL素子100の製造方法を示す模式図である。
【0063】
図10に示すように、基板131上に、半導体層132、エッチングストップ層133、下部スペーサー層101、下部中間層102、活性層103、上部中間層104、トンネル接合層105、上部スペーサー層106及びコンタクト層107を順に形成し、積層体130を作成する。これらの各層はエピタキシャル成長法によって形成することが可能である。
【0064】
なお、基板131はn型半導体材料からなる基板であり、例えばn-InP基板とすることができる。半導体層132はn型半導体材料からなり、例えば、n-InPからなるものとすることができる。エッチングストップ層133はn型半導体材料からなり、例えばn-InGaAsPからなるものとすることができる。下部スペーサー層101からコンタクト層107までの各層は、上述した材料からなる。
【0065】
次に、
図11に示すように、コンタクト層107をパターニングし、上部スペーサー層106の内周領域106aを含む領域が露出するように、コンタクト層107の一部を除去する。コンタクト層107のパターニングはフォトリソグラフィを用いて行うことができ、不要部分の除去はウェットエッチング又は塩素系ドライエッチングとすることができる。なお、ウェットエッチングがより好適であり、硫酸:過酸化水素水:水の混合液やクエン酸:過酸化水素水:水の混合液をエッチング液として選択エッチングを行うことができる。
【0066】
次に、
図12に示すように、前工程により露出した上部スペーサー層106上にレジスト134を形成し、内周領域106aをレジスト134によって被覆する。レジスト134は、フォトリソグラフィを用いるパターニングにより形成することができる。
【0067】
続いて、
図13に示すように、コンタクト層107及びレジスト134上からイオンを注入する。ここで、内周領域120a(
図2参照)に入射したイオンはレジスト134によって遮蔽される。一方、外周領域120bに入射したイオンはトンネル接合層105の外周領域105bに注入され、イオン注入領域Rが形成される。これにより、トンネル接合層105には、トンネル接合により電流が通過する内周領域105aと、トンネル接合が消失し、電流が通過しない外周領域105bが形成される。
【0068】
ここで、トンネル接合層105がAlを含む物質からなり、イオンがOイオンである場合、Oイオンの注入量を増加させることにより、外周領域105bに存在するAlを酸化させ、Al酸化物(AlOX)を形成させることが可能である。
【0069】
例えば、トンネル接合層105がAlを含む物質からなる場合、上部中間層104の手前の深さまでOイオンを注入することで、外周領域105bにAl酸化物を生成させることができる。コンタクト層107及び上部スペーサー層106はAlを含まない物質からなるものとすることにより、注入されたOイオンにより酸化されない。
【0070】
続いて、
図14に示すように、レジスト134を除去する。さらに、アニール処理を行う。コンタクト層107と上部スペーサー層106には前工程のイオン注入により結晶欠陥が生じ、導電性が低下しているが、アニール処理により結晶欠陥を修復し、導電性低下を解消することができる。また、アニール処理により、上述した外周領域105bの酸化を促進することができる。
【0071】
続いて、
図15に示すように、コンタクト層107上に上部電極111を形成する。上部電極111はフォトリソグラフィを用いるパターニングにより形成することができる。
【0072】
続いて、
図16に示すように、上部スペーサー層106の内周領域106a上に上部DBR109を形成する。上部DBR109はリフトオフやドライエッチングによる開口等によってパターニングし、形成することができる。
【0073】
続いて、
図17に示すように、基板131を除去する。基板131の除去は積層体130を支持基板に貼り合わせ、バックグラインダー等によって研削することによって行うことができる。
【0074】
続いて、
図18に示すように半導体層132を除去する。半導体層132の除去は、エッチングストップ層133との間で選択エッチングを行うため、硝酸:リン酸の混合液等をエッチング液とするウェットエッチングによって行うことができる。
【0075】
続いて、
図19に示すようにエッチングストップ層133を除去する。エッチングストップ層133の除去は、下部スペーサー層101との間で選択エッチングを行うため、硫酸:過酸化水素水:水酸の混合液等をエッチング液とするウェットエッチングによって行うことができる。
【0076】
続いて、
図20に示すように、下部スペーサー層101の内周領域101a上に下部DBR108を形成する。下部DBR108はリフトオフやドライエッチングによる開口等によってパターニングし、形成することができる。
【0077】
続いて、
図21に示すように、下部スペーサー層101及び下部DBR108上に下部電極110を形成する。下部電極110は、メッキにより形成することができる。
【0078】
以上のようにして、VCSEL素子100を作製することができる。なお、VCSEL素子100の製造方法はここに示すものに限られず、少なくともトンネル接合層105の外周領域105bにイオンを注入する工程を含むものであればよい。
【0079】
[VCEL素子の効果]
VCSEL素子100は上述のように、トンネル接合層105の外周領域105bにおいてイオンの注入によりキャリア濃度を低下させ、トンネル接合を消失させることにより電流狭窄作用を発生させることができる。外周領域105bは結晶の破壊により電流狭窄構造が実現されているものではないため、外周領域105bにおける光吸収は小さく、光吸収によるロスを抑制することができる。このため、VCSEL素子100は高出力化に適している。また、また、VCSEL素子100では、電流狭窄構造の形成のために埋込トンネルジャンクション構造のような埋め込み成長工程が不要であり、生産性に優れる。
【0080】
さらにVCSEL素子100ではトンネル接合層105がAlを含む物質からなり、外周領域105bに注入されるイオンがOイオンである場合、Oイオンの注入量を増加させることにより、外周領域105bにおいてAl酸化物(AlOX)を形成させることができる。Al酸化物の形成により、外周領域105bの屈折率より小さくなるため、トンネル接合層105によって光狭窄作用を発生させることができ、VCSEL素子100の発光特性を向上させることが可能である。
【0081】
また、Oイオンの注入後にアニール処理を行うことにより、外周領域105bのキャリア濃度を低下させると共にAl酸化物の形成を促進し、結晶品質の改善と強固な酸化によって、VCSEL素子100の信頼性向上を実現することが可能である。
【0082】
[イオン注入領域について]
上記説明において、VCSEL素子100は、トンネル接合層105の外周領域105bにイオンが注入されるものとしたが、VCSEL素子100の他の層にもイオンが注入されてもよい。
図22乃至
図24は、トンネル接合層105以外の層にイオンが注入されたVCSEL素子100の断面図である。
【0083】
(イオン注入領域1)
図22に示すように、VCSEL素子100は、トンネル接合層105に加え、上部中間層104にイオンが注入されていてもよい。上部中間層104は、外周領域104b(
図4参照)にイオンが注入され、内周領域104aにはイオンが注入されないものとすることができる。
【0084】
図25は
図22に示すVCSEL素子100の、B-B線におけるバンド構造を示すバンド図である。なお、
図22に示すVCSEL素子100の、A-A線におけるバンド構造は
図8と同一である。
【0085】
図25に示すように、トンネル接合層105の外周領域105bでは、イオンの注入によりキャリア濃度が低下し、バンドギャップの増大によりトンネル接合が消失している。また、上部中間層104の外周領域104bでは、外周領域105bと同様にバンドギャップが増大している。このため、
図22に示す構成においてもトンネル接合層105による電流狭窄構造が実現されている。
【0086】
外周領域105b及び外周領域104bへのイオンの注入は、内周領域120a上にレジストを設け、その上からイオンを照射することによって行うことができる(
図13参照)。この際、イオンの注入深さを活性層103の手前までとすることによって、外周領域105b及び外周領域104bへイオンを注入することができる。
【0087】
なお、トンネル接合層105及び上部中間層104がAlを含む物質からなる場合、外周領域105b及び外周領域104bにOイオンを注入することにより、外周領域105b及び外周領域104bにAl酸化物を形成することができる。これにより、外周領域105bの屈折率を内周領域105aの屈折率より小さくし、外周領域104bの屈折率を内周領域104aの屈折率より小さくすることができるため、トンネル接合層105及び上部中間層104によって光狭窄が可能である。
【0088】
具体的には、トンネル接合層105はn+-AlInAs及びp+-AlInAsからなり、上部中間層104はp-AlGaInAsからなるものとすることができる。また、活性層103は、Alを含まない物質からなり、例えばInGaAsからなるものとすることができる。これにより、トンネル接合層105及び上部中間層104の外周領域にのみAl酸化物を形成することができる。下部中間層102はn-AlGaInAsのようにAlを含む物質からなるものであてもよく、n-InPのようにAlを含まない物質からなるものであってもよい。
【0089】
(イオン注入領域2)
図23に示すように、VCSEL素子100は、トンネル接合層105に加え、上部中間層104、活性層103及び下部中間層102にイオンが注入されていてもよい。上部中間層104は外周領域104b(
図4参照)にイオンが注入され、内周領域104aにはイオンが注入されないものとすることができる。
【0090】
また、活性層103は外周領域103b(
図4参照)にイオンが注入され、内周領域103aにはイオンが注入されないものとすることができる。下部中間層102は外周領域102b(
図4参照)にイオンが注入され、内周領域102aにはイオンが注入されないものとすることができる。
【0091】
図26は
図23に示すVCSEL素子100の、B-B線におけるバンド構造を示すバンド図である。なお、
図23に示すVCSEL素子100の、A-A線におけるバンド構造は
図8と同一である。
【0092】
図26に示すように、トンネル接合層105の外周領域105bでは、イオンの注入によりキャリア濃度が低下し、バンドギャップの増大によりトンネル接合が消失している。また、上部中間層104、活性層103及び下部中間層102のそれぞれの外周領域では外周領域105bと同様にバンドギャップが増大している。このため、
図23に示す構成においてもトンネル接合層105により電流狭窄構造が実現されている。
【0093】
トンネル接合層105、上部中間層104、活性層103及び下部中間層102の外周領域へのイオンの注入は、内周領域120a上にレジストを設け、その上からイオンを照射することによって行うことができる(
図13参照)。この際、イオンの注入深さを下部スペーサー層101の手前までとすることによって、各層の外周領域へイオンを注入することができる。
【0094】
なお、トンネル接合層105、上部中間層104、活性層103及び下部中間層102がAlを含む物質からなる場合、各層の外周領域にOイオンを注入することにより、各層の外周領域にAl酸化物を形成することができる。これにより、各層の外周領域の屈折率を各層の内周領域の屈折率より小さくすることができるため、トンネル接合層105、上部中間層104、活性層103及び下部中間層102によって光狭窄が可能である。
【0095】
具体的には、トンネル接合層105はn+-AlInAs及びp+-AlInAsからなり、上部中間層104はp-AlGaInAsからなるものとすることができる。また、活性層103はAlGaInAsからなり、下部中間層102はn-AlGaInAsからなるものとすることができる。これにより、トンネル接合層105、上部中間層104、活性層103及び下部中間層102の外周領域にAl酸化物を形成することができる。
【0096】
なお、下部中間層102はn-InPのようにAlを含まない物質からなるものであってもよく、この場合、トンネル接合層105、上部中間層104及び活性層103の外周領域にのみAl酸化物を形成することができる。
【0097】
(イオン注入領域3)
図24に示すように、VCSEL素子100は、トンネル接合層105に加え、活性層103にイオンが注入されていてもよい。活性層103は外周領域103b(
図4参照)にイオンが注入され、内周領域103aにはイオンが注入されないものとすることができる。また、トンネル接合層105と活性層103の間の上部中間層104にはイオンが注入されないものとすることができる。
【0098】
図27は
図24に示すVCSEL素子100の、B-B線におけるバンド構造を示すバンド図である。なお、
図24に示すVCSEL素子100の、A-A線におけるバンド構造は
図8と同一である。
【0099】
図27に示すように、トンネル接合層105の外周領域105bでは、イオンの注入によりキャリア濃度が低下し、バンドギャップの増大によりトンネル接合が消失している。また、活性層103の外周領域103bでは外周領域105bと同様にバンドギャップが増大している。一方、上部中間層104の外周領域104bはイオンが注入されていないため、バンドギャップが維持されている。
【0100】
トンネル接合層105及び活性層103の外周領域へのイオンの注入は、内周領域120a上にレジストを設け、その上からイオンを照射することによって行うことができる(
図13参照)。ここで、トンネル接合層105及び活性層103をAlを含む物質、上部中間層104をAlを含まない物質からなるものとし、注入するイオンをOイオンとすることにより、トンネル接合層105及び活性層103の外周領域にのみイオンを注入することができる。
【0101】
さらに、Oイオンの注入量を増加させることにより、トンネル接合層105及び活性層103の外周領域にAl酸化物を形成することができる。これにより、トンネル接合層105及び活性層103の外周領域の屈折率を各層の内周領域の屈折率より小さくすることができるため、トンネル接合層105及び活性層103によって光狭窄が可能である。
【0102】
具体的には、トンネル接合層105はn+-AlInAs及びp+-AlInAsからなり、活性層103はAlGaInAsらなるものとすることができる。また、上部中間層104はp-InPからなるものとすることができる。これにより、トンネル接合層105及び活性層103の外周領域にAl酸化物を形成し、上部中間層104にはAl酸化物を形成しないものとすることができる。
【0103】
なお、下部中間層102はn-AlGaInAsのようにAlを含む物質からなるものであてもよく、n-InPのようにAlを含まない物質からなるものであってもよい。下部中間層102がAlを含む物質からなる場合、トンネル接合層105、活性層103及び下部中間層102の外周領域にAl酸化物を形成することができる。
【0104】
この他にもVCSEL素子100では、下部中間層102、活性層103及び上部中間層104のうち少なくともいずれか1層の外周領域にイオンが注入されたものとすることが可能である。また、VCSEL素子100では下部中間層102、活性層103及び上部中間層104のうち少なくともいずれか1層の外周領域がAl酸化物を含むものとすることが可能である。
【0105】
[VCSEL素子の他の構造]
VCSEL素子100の他の構造について説明する。
図28乃至
図31は、他の構造を有するVCSEL素子100の断面図である。なお、以下に示す各VCSEL素子100において、イオン注入領域Rの配置は、上述したいずれの構成であってもよい。
【0106】
(下部DBR)
図28に示すようにVCSEL素子100は、凹状曲面形状の下部DBR108を備えるものであってもよい。同図に示すようにVCSEL素子100は、下部スペーサー層101上に形成された支持層112をさらに備える。支持層112は、SI(semi-insulate)-InP等の半絶縁性材料からなり、凸状曲面形状に形成されている。
【0107】
下部DBR108は支持層112上に形成され、凹状曲面形状に形成されている。下部DBR108を凹状曲面形状とすることにより、下部DBR108での反射光を内周領域120aに集光させることができ、下部DBR108による光狭窄作用を生じさせることができる。なお、下部DBR108は、球面状の曲面形状であってもよく円筒状の曲面形状やその他の曲面形状であってもよい。
【0108】
(裏面出射型VCSEL)
図29に示すようにVCSEL素子100は、裏面出射側VCSELであってもよい。この構造では上部電極111は上部DBR109を被覆し、下部電極110は下部DBR108の周囲に設けられている。VCSEL素子100において生成されたレーザ光は下部DBR108を透過して裏面側(下部スペーサー層101側)から出射される。なお、上部DBR109は上述した凹状曲面形状を有するものとすることも可能である。
【0109】
(トンネル接合層の配置)
図30に示すように、VCSEL素子100おいてトンネル接合層105は、活性層103より下部DBR108側に設けられてもよい。即ち、VCSEL素子100は、下部スペーサー層101、トンネル接合層105、下部中間層102、活性層103、上部中間層104、上部スペーサー層106の順で積層されたものとすることもできる。
【0110】
この構造では、下部中間層102はp-AlGaInAs等のp型半導体材料からなり、上部中間層104はn-AlGaInAs等のn型半導体材料からなるものとすることができる。その他の層はこれまでに説明した材料からなるものとすることができる。なお、この構造においてVCSEL素子100を裏面出射側VCSELとすることも可能であり、下部DBR108又は上部DBR109を凹状曲面形状とすることも可能である。
【0111】
(異種材料基板)
図31に示すようにVCSEL素子100は、下部スペーサー層101に替えて基板113を備えるものであってもよい。基板113は、Si、SiC、AlN、GaN又はガラス等の、VCSEL素子100の他の各層とは異なる材料からなり、下部中間層102に貼付されたものとすることができる。基板113は熱伝導性が高い材料からなるものが好適である。
【0112】
(各層の材料)
上記のようにVCSEL素子100は、n-InPからなる基板131(
図10参照)上に結晶成長により各層を積層させたInP系VCSEL素子とすることができる。また、そその他にもVCSEL素子100は、n-GaAsからなる基板上に結晶成長により各層を積層させたGaAs系VCSEL素子であってもよい。
【0113】
この場合、下部スペーサー層101及び上部スペーサー層106(
図1参照)はn-GaAsからなり、下部中間層102はn-AlGaAsからなるものとすることができる。また、活性層103はInGaAs又はGaInNAs等からなり、上部中間層104はp-AlGaAsからなるものとすることができる。トンネル接合層105は内周領域105aにおいて第1層121がp
+-AlGaAsからなり、第2層122がn
+-AlGaAsからなり、外周領域105bはAlGaAs酸化物からなるものとすることができる。コンタクト層107はn
+-GaAsからなるものとすることができる。この他にもVCSEL素子100はVCSEL素子を実現することが可能な各種材料からなるものとすることが可能である。
【0114】
[VCSEL素子アレイ]
本実施形態に係るVCSEL素子100は、VCSEL素子アレイを構成することも可能である。
図32は、本実施形態に係るVCSEL素子アレイ200の断面図である。同図に示すように、VCSEL素子アレイ200は、複数のVCSEL素子100が配列されて構成されている。VCSEL素子アレイ200を構成するVCSEL素子100の数は特に限定されない。
【0115】
図33は、VCSEL素子アレイ200におけるトンネル接合層105を示す平面図である。同図に示すようにトンネル接合層105は複数の内周領域105aと、内周領域105aの周囲を囲む外周領域105bを備える。外周領域105bにはイオン注入領域Rが形成され、トンネル接合層105によって電流狭窄構造が実現されている。
【0116】
[集積化モジュール]
本実施形態に係るVCSEL素子100は、集積化モジュールを構成することも可能である。
図34は、本実施形態に係る集積化モジュール300の断面図である。同図に示すように、集積化モジュール300は、VCSEL素子100と半導体素子301を備える。
【0117】
VCSEL素子100は、上述した基板113(
図31参照)を備え、基板113はSi回路等の半導体回路を構成することができる。半導体素子301は、基板113に実装され、基板113中の半導体回路を介してVCSEL素子100と電気的に接続されている。半導体素子301は受光素子であり、例えばSiGeからなるAPD(avalanche photodiode)とすることができる。これにより集積化モジュール300はTOF(Time-of-Flight)モジュールを構成することができる。
【0118】
また、半導体素子301は受光素子以外の素子であってもよく、例えば、VCSEL素子の駆動素子であってもよい。また、上述したVCSEL素子アレイ200に一つ又は複数の半導体素子301を実装し、集積化モジュールとすることも可能である。半導体素子301の実装は、シリコンフォトニクス技術により行うことが可能である。集積化モジュール300は半導体素子301を備えないものであってもよく、基板113中に形成された半導体回路と一つ又は複数のVCSEL素子100によって構成されてもよい。
【0119】
[本開示について]
本開示中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。上記の複数の効果の記載は、それらの効果が必ずしも同時に発揮されるということを意味しているのではない。条件等により、少なくとも上記した効果のいずれかが得られることを意味しており、本開示中に記載されていない効果が発揮される可能性もある。また、本開示中に記載された特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。
【0120】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
【0121】
(1)
特定の波長の光を反射する第1のDBR(Distributed Bragg Reflector)と、
上記波長の光を反射する第2のDBRと、
上記第1のDBRと上記第2のDBRの間に配置された活性層と、
上記第1のDBRと上記活性層の間に配置され、トンネル接合を形成するトンネル接合層と
を具備し、
上記第1のDBRと上記第2のDBRの間の各層は、層面に垂直な方向から見て内周側の内周領域と、上記内周領域を囲む外周領域を有し、上記トンネル接合層の外周領域はイオンが注入され、上記トンネル接合層の内周領域よりキャリア濃度が低く、電気抵抗が大きい
垂直共振器型面発光レーザ素子。
(2)
上記(1)に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
上記トンネル接合層の外周領域のバンドギャップは、上記トンネル接合層の内周領域のバンドギャップより大きい
垂直共振器型面発光レーザ素子。
(3)
上記(2)に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
上記トンネル接合層の外周領域の屈折率は、上記トンネル接合層の内周領域の屈折率より小さい
垂直共振器型面発光レーザ素子。
(4)
上記(1)から(3)のうちいずれか1つに記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
上記イオンはOイオンである
垂直共振器型面発光レーザ素子。
(5)
上記(1)から(4)のうちいずれか1つに記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
上記トンネル接合層は、少なくとも1層以上のAlを含む物質からなる
垂直共振器型面発光レーザ素子。
(6)
上記(5)に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
上記トンネル接合層の外周領域は、Al酸化物を含む
垂直共振器型面発光レーザ素子。
(7)
上記(1)から(6)のうちいずれか1つに記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
上記トンネル接合層と上記活性層の間に配置された第1の中間層と、
上記第2のDBRと上記活性層の間に配置された第2の中間層と
をさらに具備し、
上記イオンはOイオンであり、
上記活性層、上記第1の中間層及び上記第2の中間層のうち少なくともいずれか1層の外周領域はAl酸化物を含む
垂直共振器型面発光レーザ素子。
(8)
上記(7)に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
上記第1の中間層の外周領域はAl酸化物を含み、
上記活性層及び上記第2の中間層の外周領域はAl酸化物を含まない
垂直共振器型面発光レーザ素子。
(9)
上記(7)に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
上記第1の中間層、上記活性層及び上記第2の中間層の外周領域はAl酸化物を含む
垂直共振器型面発光レーザ素子。
(10)
上記(7)に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
上記活性層の外周領域はAl酸化物を含み、
上記第1の中間層及び上記第2の中間層の外周領域はAl酸化物を含まない
垂直共振器型面発光レーザ素子。
(11)
上記(1)から(10)のうちいずれか1つに記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
上記トンネル接合層の内周領域はp+-AlInAsからなる第1の層と、n+-AlInAsからなる第2の層が積層されて構成され、
上記トンネル接合層の外周領域はAlInAs酸化物からなる
垂直共振器型面発光レーザ素子。
(12)
上記(1)から(10)のうちいずれか1つに記載の垂直共振器型面発光レーザ素子であって、
上記トンネル接合層の内周領域はp+-AlGaAsからなる第1の層と、n+-AlGaAsからなる第2の層が積層されて構成され、
上記トンネル接合層の外周領域はAlGaAs酸化物からなる
垂直共振器型面発光レーザ素子。
(13)
特定の波長の光を反射する第1のDBR(Distributed Bragg Reflector)と、上記波長の光を反射する第2のDBRと、上記第1のDBRと上記第2のDBRの間に配置された活性層と、上記第1のDBRと上記活性層の間に配置され、トンネル接合を形成するトンネル接合層とを備え、上記第1のDBRと上記第2のDBRの間の各層は、層面に垂直な方向から見て内周側の内周領域と、上記内周領域を囲む外周領域を有する積層体を形成し、
上記トンネル接合層の外周領域にイオンを注入し、上記トンネル接合層の外周領域のキャリア濃度を上記トンネル接合層の内周領域のキャリア濃度より小さくし、上記トンネル接合層の外周領域の電気抵抗を上記トンネル接合層の内周領域の電気抵抗より大きくする
垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法。
(14)
上記(13)に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法であって、
上記トンネル接合層はAlを含む物質からなり、
上記トンネル接合層の外周領域にイオンを注入する工程では、上記トンネル接合層の外周領域にOイオンを注入する
垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法。
(15)
上記(14)に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法であって、
上記トンネル接合層の外周領域にイオンを注入する工程では、Oイオンの注入により、上記トンネル接合層の外周領域にAl酸化物を生成させる
垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法。
(16)
上記(14)に記載の垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法であって、
上記積層体は、上記トンネル接合層と上記活性層の間に配置された第1の中間層と、上記第2のDBRと上記活性層の間に配置された第2の中間層とをさらに具備し、
上記トンネル接合層の外周領域にイオンを注入する工程では、上記活性層、上記第1の中間層及び上記第2の中間層のうち少なくともいずれか1層の外周領域にOイオンを注入する
垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法。
(17)
上記(14)から(16)のうちいずれか1つに記載の垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法であって、
上記イオン注入により生じた結晶欠陥を修復し、Al酸化物の生成を促進させるアニール工程
をさらに含む垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法。
【符号の説明】
【0122】
100…VCSEL素子
101…下部スペーサー層
102…下部中間層
103…活性層
104…上部中間層
105…トンネル接合層
105a…内周領域
105b…外周領域
106…上部スペーサー層
107…コンタクト層
108…下部DBR
109…上部DBR
110…下部電極
111…上部電極