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特開2022-38516ウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤、植毛付きウェザーストリップ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038516
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】ウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤、植毛付きウェザーストリップ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20220303BHJP
   B60J 10/17 20160101ALI20220303BHJP
   B60J 10/74 20160101ALI20220303BHJP
   B60R 13/06 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
C09J175/04
B60J10/17
B60J10/74
B60R13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143070
(22)【出願日】2020-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 成志
【テーマコード(参考)】
3D201
4J040
【Fターム(参考)】
3D201AA01
3D201AA24
3D201DA18
3D201DA63
4J040EF111
4J040EF281
4J040JA05
4J040JB01
4J040LA02
4J040LA08
4J040LA09
4J040MA02
4J040MA10
4J040MA12
4J040NA15
(57)【要約】
【課題】ウレタンプレポリマーからなるホットメルト接着剤を用いたウェザーストリップに静電植毛を施す製造工程において、植毛後に所定の長さに裁断されたウェザーストリップの後加工処理工程時に発生する曲げ応力による接着剤層のひび割れを改善したホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを主成分とし、融点が40℃以上150℃以下であり、湿気硬化前の25℃の貯蔵弾性率が2.85×108Pa以下であることを特徴とするウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを主成分とし、融点が40℃以上150℃以下であり、湿気硬化前の25℃の貯蔵弾性率が2.85×108Pa以下であることを特徴とするウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。
【請求項2】
湿気硬化前の25℃における曲げ破壊ひずみが1.7%以上であることを特徴とする請求項1に記載のウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。
【請求項3】
25℃における比誘電率が3以上10以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。
【請求項4】
下記試験方法によるタックフリータイムが10分以内であることを特徴とする請求項1乃至請求項3から選ばれる何れか1項に記載のウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。
(試験方法):120±5℃に加熱溶融した接着剤を厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に100±10μmの厚みで均一に1cm×1cmの正方形に塗布して、25±1℃に保持された恒温槽に直ちに静置する。その後、指で塗布表面を触って接着剤のタックがなくなるまでの時間を測定する。
【請求項5】
タックフリータイムが30秒以上4分以内であることを特徴とする請求項4に記載のウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。
【請求項6】
溶融粘度が1000~50000mPa・s/120℃であることを特徴とする請求項1乃至請求項5から選ばれる何れか1項に記載のウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6から選ばれる何れか1項に記載のウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を介して基材に植毛を施してなる植毛付きウェザーストリップ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6から選ばれる何れか1項に記載のウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を加熱溶融して基材上に厚み40~150μmで塗布した面にパイルを静電植毛した後、前記接着剤を冷却固化して上記パイルを基材上に固着させた後、前記基材を所定のサイズに裁断する工程を含む植毛付きウェザーストリップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤、植毛付きウェザーストリップ及びその製造方法に関するものである。本発明のウェザーストリップはガラス等との摺動面に植毛を施してなり、特に自動車用に好適である。
【背景技術】
【0002】
ガラスとの摺動面を有するウェザーストリップは、摺動抵抗の低減及びシール性の確保のために摺動面に植毛を施すことが広く行われている。
【0003】
植毛に使用される植毛用接着剤にはエマルションタイプと溶剤タイプがあるが、ウェザーストリップに使用されている接着剤は、基材への密着性及び耐水性を目的とするため2液溶剤タイプ及び1液溶剤タイプが一般的である。
【0004】
従来のこれら接着剤を使用した植毛付きウェザーストリップの製造方法は、ウェザーストリップ摺動面に接着剤を所定の膜厚で塗布した後、パイルを静電植毛し、裁断面を挟んだ状態で所定のサイズに裁断後、加熱することにより溶剤の乾燥と接着剤の硬化を行い、最後に裁断時に挟んで変形した立毛性が不良な両端をカットするものであった。
【0005】
乾燥前に裁断するのは、乾燥スペースを小さくするためで、即ち乾燥に10分程度要するとすると、例えばラインスピードを10m/分とした場合、乾燥炉長が100m必要となり、大きなスペースが必要となるからである。通常は植毛ラインに対して直角に、所定のサイズに裁断した植毛付きウェザーストリップの輸送が可能な幅を持つ乾燥ラインが走っている。
【0006】
特開平5-96670号公報において、基材にウレタンプレポリマーからなる接着剤を介してパイルを静電植毛した植毛材が開示されているが、この公開公報に記載されたウレタンプレポリマーの結晶性は不明である。
【0007】
上述の溶剤タイプの接着剤を使用した場合、乾燥前に裁断部の両端を挟んで裁断するため、裁断時に変形した両端をカットして廃棄することが必要になるが、その量は全体の約10%程度にもなる。従って、変動費と加工賃で約10%の損失が発生し、かつ無駄な廃棄物を出すことになる。
【0008】
また、溶剤を取り扱うため、作業環境の悪化、引火の危険性の問題が常に存在し、かつその乾燥には多大な光熱費が必要とされる。更に、2液の場合、硬化剤の配合ミスによる硬化不良部の発生が問題となる。
【0009】
上記の問題を解決したウェザーストリップの植毛に使用される接着剤組成物が、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0010】
これら文献に記載された発明は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを主成分とし、融点が40℃以上150℃以下であることを特徴とするウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤である。
このホットメルト接着剤を用いると、溶融状態で植毛したパイルを短時間で強固にウェザーストリップ基材に固着でき、植毛後のパイルは十分な立毛強度を有するので、裁断時に挟み応力による変形を受けない。このため、溶剤タイプの接着剤を使用した際に生じるロスと無駄な廃棄物発生を解消することができる。また、無溶剤の為、作業環境の悪化、引火の危険性が無く、また乾燥工程を必要としないため光熱費を節減でき、更にまた、1液タイプのため2液溶剤タイプの接着剤で問題となる硬化剤配合ミスの心配がない等の効果を有する。
【0011】
しかしながら、このホットメルト接着剤を用いて、ウェザーストリップ基材に静電植毛を施すウェザーストリップの製造工程において、植毛後のパイルを所定の長さに裁断し、更にその後の加工処理工程時に発生する曲げ応力により、冷却固化後のホットメルト接着剤層にひび割れを生じることがあった。このひび割れを防ぐためには、湿気硬化による高分子量架橋に伴う強靭性が発現するまで後加工を待たねばならず、生産性を低下させる恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002-38120号公報
【特許文献2】特開2002-224612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ウレタンプレポリマーからなるホットメルト接着剤を用いたウェザーストリップに静電植毛を施す製造工程において、植毛後に所定の長さに裁断されたウェザーストリップの後加工処理工程時に発生する曲げ応力による接着剤層のひび割れを改善したホットメルト接着剤及び植毛付きウェザーストリップ、並びに生産性の高い植毛付きウェザーストリップの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、かかる問題を解決するために鋭意検討した結果、冷却固化したばかりのホットメルト接着剤は、湿気硬化による高分子量架橋に伴う強靭性が発現していないため、曲げ応力に対してひび割れが生じ易くなること、及び当該ホットメルト接着剤として25℃における貯蔵弾性率が特定の範囲であるウレタンプレポリマーからなるものに調整することで、接着剤が冷却固化直後において曲げ応力を掛けてもひび割れが生じることがない特性を得られることを見出した。
【0015】
前記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを主成分とし、融点が40℃以上150℃以下であり、湿気硬化前の25℃の貯蔵弾性率が2.85×108Pa以下であることを特徴とするウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。
<2> 湿気硬化前の25℃における曲げ破壊ひずみが1.7%以上であることを特徴とする<1>に記載のウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。
<3> 25℃における比誘電率が3以上10以下であることを特徴とする<1>又は<2>に記載のウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。
<4> 下記試験方法によるタックフリータイムが10分以内であることを特徴とする<1>乃至<3>から選ばれる何れか1つに記載のウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。
(試験方法):120±5℃に加熱溶融した接着剤を厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に100±10μmの厚みで均一に1cm×1cmの正方形に塗布して、25±1℃に保持された恒温槽に直ちに静置する。その後、指で塗布表面を触って接着剤のタックがなくなるまでの時間を測定する。
<5> タックフリータイムが30秒以上4分以内であることを特徴とする<4>に記載のウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。
<6> 溶融粘度が1000~50000mPa・s/120℃であることを特徴とする<1>乃至<5>から選ばれる何れか1つに記載のウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。
<7> <1>乃至<6>から選ばれる何れか1つに記載のウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を介して基材に植毛を施してなる植毛付きウェザーストリップ。
<8> <1>乃至<6>から選ばれる何れか1つに記載のウェザーストリップ植毛用湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を加熱溶融して基材上に厚み40~150μmで塗布した面にパイルを静電植毛した後、前記接着剤を冷却固化して上記パイルを基材上に固着させた後、前記基材を所定のサイズに裁断する工程を含む植毛付きウェザーストリップの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
冷却固化したばかりの接着剤は湿気硬化による高分子量架橋に伴う強靭性が十分に発現していない為、曲げ応力に対してひび割れが生じ易いが、本発明の接着剤は、25℃の貯蔵弾性率が2.85×108Pa以下のウレタンプレポリマーを用いているため、曲げ応力を掛けてもひび割れが生じることがなく、速やかに後加工処理を行うことが可能で、生産性を向上させるものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.接着剤
本発明における接着剤は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを主成分とする湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤である。
ここで主成分とは、接着剤全体に対して50質量%を超えて含むことをいい、好ましくは70質量%超である。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、分子内に2個以上の水酸基を有するポリオール1種以上と分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート1種以上とを反応させた、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーである。ウレタンプレポリマーの好ましい質量平均分子量は2000~50000である。当該ウレタンプレポリマーとして1種または2種以上を使用することができる。
【0018】
1.1.ポリオール
ウレタンプレポリマーの原料であるポリオールは、分子内に2個以上、好ましくは5個以内の水酸基を有するものであり、公知のものが使用可能である。好ましい具体例を以下に示す。
【0019】
1.1.1.ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールは、1種以上のポリカルボン酸と1種以上のポリオールとをランダム共縮重合させて得られるものである。
好ましいポリカルボン酸は、分子内に2個以上のカルボキシル基を有し、炭素数が4~24のものである。具体例として、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、ε-カプロラクトン、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸及びパラオキシ安息香酸等が挙げられる。
好ましいポリオールは、分子内に2個以上の水酸基を有し、質量平均分子量が60~5000のものである。具体例としてエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及び1,2,6-ヘキサントリオール等が挙げられる。
【0020】
1.1.2.ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールは、分子内に1個以上のエーテル結合を有し、好ましいポリエーテルポリオールは質量平均分子量が200~10000のものである。具体例としてポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0021】
1.1.3.ポリオレフィンポリオール
ポリオレフィンポリオールは、分子内にポリオレフィン骨格を有し、好ましいポリオレフィンポリオールは質量平均分子量が200~10000のものである。具体例として水素化ポリブタジエンポリオール、水素化ポリイソプレンポリオール等のポリアルキレンポリオールの水素化物、及びα-オレフィンの共重合物等が挙げられる。
【0022】
1.1.4.その他ポリオール
ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリアルキレンポリオール及びポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0023】
1.2.ポリイソシアネート
ウレタンプレポリマーの原料であるポリイソシアネートは、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するものであり、公知のものが使用可能である。具体的には、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニレンジイソシアネート、1,5-オクチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート及びカルボジイミド変性4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0024】
本発明におけるウレタンプレポリマーを製造する際のポリオールに対するポリイソシアネートの仕込み量の好ましい比は、イソシアネート基/水酸基の当量比が1~5であり、より好ましくは1.5~3である。
【0025】
1.3.その他の配合物
本発明の接着剤にシランカップリング剤を配合すると、接着剤のウェザーストリップ基材に対する密着性が向上し、植毛ウェザーストリップ用に用いた場合にウェザーストリップの耐水性と耐摺動性を向上させることができる。
好ましいシランカップリング剤の例として、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン及びγ-メタクリロキシプロピル-トリ(β-メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、エポキシ基含有有機アルコキシシランである。
本発明に用いられるシランカップリング剤の好ましい含有量は、接着剤全量の1質量%以上20質量%以下である。1質量%以上で、十分な耐水性を得ることができ、20質量%以下で混合後の安定性があり、また加熱溶融時のシランカップリング剤蒸気臭が少なく作業環境の悪化につながることが少ない。
【0026】
本発明の接着剤には、湿気反応性を高めるための三級アミン系若しくは錫系等の触媒、粘着付与剤、充填剤、可塑剤、ワックス、安定剤又は酸化防止剤等を必要に応じて添加することができる。
【0027】
1.4.接着剤の融点
融点を有するウレタンプレポリマーは、融点以下の温度において結晶性の固体になるので、溶融状態から固体に変化する際、融点を境に樹脂の粘性が急激に増加する特徴を有している。従って、基材に塗布した接着剤層が溶融状態にあるときに植毛を行い、その後接着剤を冷却固化させることによって接着剤が結晶化しパイルが接着剤層に強固に固着され、裁断時の挟み応力に耐える初期立毛強度を容易に得ることができる。
具体的には接着剤の融点を40℃以上にすることにより常態で固体であり、かつ結晶時の凝集力により初期立毛強度を得ることができるので好ましい。融点が40℃未満の場合、常態での初期立毛強度を得ることができず、挟み時に変形を受ける為、両端のカットが必要になり、ロスを発生する恐れがある。
また、接着剤の融点が150℃以下とすることにより、ウェザーストリップ基材に影響を与えず、また加熱のためのエネルギーが少ないため好ましい。
融点は、示差走査熱量計(NETZSCH製DSC214Polyma)を用い、0℃から10℃/分の昇温速度の加熱を行うことで測定した。
【0028】
1.5.接着剤の貯蔵弾性率
接着剤が冷却固化した状態は、湿気硬化による高分子架橋が進行していない為、接着剤樹脂は脆い傾向があり、曲げ応力を掛けるとひび割れてしまう問題が生じる場合がある。
接着剤を、冷却固化した状態で湿気硬化前の25℃での貯蔵弾性率が2.85×108Pa以下であるウレタンプレポリマーからなるホットメルト接着剤に調整することで、接着剤が冷却固化した直後に曲げ応力が掛っても接着剤層にひび割れが生じない特性が得られる。
貯蔵弾性率の好ましい範囲は、1.00×108Pa以上2.80×108Pa以下である。
貯蔵弾性率は、120℃で加熱溶融した接着剤をテフロン(登録商標)製の型に流しいれて、室温の水を流したコールドプレスで15分間圧締して調製した長さ45mm、幅5mm、厚さ1mmの試料を用い、粘弾性測定機((株)日立ハイテクサイエンス製 DMA7100)を用い周波数 1Hz、昇温速度2℃/minで測定した。
【0029】
1.6.接着剤の曲げ破壊ひずみ
前述の接着剤が冷却固化した状態では接着剤樹脂に曲げ応力を掛けるとひび割れてしまうという問題を解決するためには、接着剤を、冷却固化した状態で湿気硬化前の25℃での曲げ破壊ひずみが1.7%以上であるウレタンプレポリマーからなるホットメルト接着剤とすることがより好ましい。
当該接着剤とすることで冷却固化した直後に曲げ応力が掛っても接着剤層のひび割れを抑制する効果が大きくなる。
曲げ破壊ひずみの好ましい範囲は、1.9%以上である。
曲げ破壊ひずみは、JIS K7171に基づき、前記貯蔵弾性率測定と同じ成型方法で調製した長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試料を用い、引張試験機((株)東洋精機製作所ストログラフV20-C)を用いて測定した。
【0030】
1.7.接着剤の比誘電率
本発明の接着剤は、誘電性の高い方が立毛性に優れている。具体的には接着剤樹脂の比誘電率が3以上10以下、更に好ましくは3.2以上9以下のときに外観上“てかり”の無い優れた立毛性を得ることができる。比誘電率が3未満の場合、植毛率も低く、また耐摺動性に欠ける植毛となる恐れがある。
接着剤の誘電率の測定は、プレシジョン インピーダンス・アナライザ(キーサイト・テクノロジー(株)製 4294A)を用いて湿気硬化前の接着剤を対象にして、23℃、相対湿度50%の雰囲気で、周波数1MHzで行った。
【0031】
1.8.接着剤のタックフリータイム
本発明の接着剤におけるタックフリータイムは10分以内が好ましく、好ましくは5分以内である。更に好ましくは30秒以上4分以内である。
タックフリータイムの上限値以内で、接着剤が製造工程内で冷却固化し易く、後加工で植毛が崩れることを防止される。また、下限値以上で植毛が十分になされる。
タックフリータイムは以下の方法により測定できる。
即ち、120±5℃に加熱溶融した接着剤を厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に100±10μmの厚みで均一に1cm×1cmの正方形に塗布して、25±1℃に保持された恒温槽に直ちに静置する。その後、指で塗布表面を触って接着剤のタックがなくなるまでの時間を測定する。
【0032】
1.9.接着剤の溶融粘度
本発明の接着剤の好ましい溶融粘度は200~100000mPa・s/120℃であり、より好ましい溶融粘度は1000~50000mPa・s/120℃である。さらに好ましくは、1000~20000mPa・s/120℃である。溶融粘度の上限以下でウェザーストリップの植毛面に均一に接着剤を塗工し易くなる。
溶融粘度はBM型粘度計により容易に測定できる。
【0033】
2.植毛付きウェザーストリップ
本発明の接着剤を介して基材に植毛を施すことにより植毛付きウェザーストリップを得ることができる。
本発明のウェザーストリップは、パイルが本発明の接着剤により強固に基材に固着されているので、耐水性及び耐摺動性に優れている。
【0034】
3.植毛付きウェザーストリップの製造方法
加熱溶融した湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤をロールコーター等でウェザーストリップ基材の摺動面に40~150μmの厚みで塗布し、次いでフロッキー加工工程でパイルをウェザーストリップ基材に静電植毛した後、湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を冷却固化して上記パイルを固着させ、同時に接着剤表面のタックを消失させた後、所定のサイズに裁断する工程を含むことで植毛付きウェザーストリップができあがる。接着剤の塗工厚みが40μm以上の場合、パイルと接着層の十分な勘合強度を得ることができ、また150μm以下の場合、冷却固化に時間を要しないため、ラインが短くラインスペース設備投資費用が少なく済む。
【実施例0035】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、各実施例及び比較例における接着剤の融点、貯蔵弾性率、比誘電率、タックフリータイム及び溶融粘度の各特性値は前記の方法で測定した値である。
また、各実施例及び比較例における接着剤の「接着剤硬化物の曲げ加工性」及び「植毛性」の評価は次の方法で行った。
【0036】
(接着剤硬化物の曲げ加工性)
本接着剤を120℃に加熱溶融し、ロールコーターで1mm厚の軟質塩ビ製シートに150μmの厚みで塗布する。その試験片を10℃の水が入った水槽に1分間浸漬して接着剤を冷却固化させた後に、水槽から取り出して25℃で5分間静置する。試験片を接着剤層が外側になるようにして90度に折り曲げた際に接着剤層にひび割れが生じていないかを目視確認する。
ひび割れが確認できなければ「〇」とした。長さ1mm未満のひび割れを確認した場合は、「△」とし、長さ1mm以上のひび割れを確認した場合は、「×」とし、ひび割れが進んで接着剤層の一部が剥落した場合は「××」とした。
【0037】
(植毛性)
本接着剤を120℃に加熱溶融し、ロールコーターで1mm厚の軟質塩ビ製シート(ウェザーストリップ基材)のウェザーストリップ部の摺動面に100μmの厚みに塗工し、直ちにパイルを静電植毛して、試験片を得る。塗工2分後に指圧して立毛性を確認する。
本試験片を25℃50%下で48時間養生した後、爪で擦りパイルが剥がれないことにより耐摺動性を確認する。
立毛性及び耐摺動性が確認されれば「〇」とし、何れかが確認できなかった場合は「×」とした。
【0038】
実施例1
ポリエステルポリオールとして、HS2H-201AP(豊国製油(株)製品名)40質量部、、HS2H-200S(豊国製油(株)製品名)40質量部及びHS2F-305S(豊国製油(株)製品名)20質量部を用い、ポリイソシアネートとして、スミジュール44S(住化コベストロウレタン(株)製品名)23質量部とを反応させてイソシアネート末端ポリウレタン系ホットメルト接着剤を得た。
接着剤の融点は59℃、湿気硬化前の25℃の貯蔵弾性率は1.68×108Pa、曲げ破壊ひずみは3.9%であった。また、接着剤の比誘電率は4.1であり、タックフリータイムは1分10秒、溶融粘度は5450mPa・s/120℃であった。
この接着剤について曲げ試験を行ったところ、接着剤層のひび割れは認められなかった。
この接着剤について植毛性を測定したところ、良好であることが確認された。
【0039】
比較例1
ポリエステルポリオールとして、HS2H-201AP(豊国製油(株)製品名)100質量部、ポリイソシアネートとしてスミジュール44S(住化コベストロウレタン(株)製品名)25質量部とを反応させてイソシアネート末端ポリウレタン系ホットメルト接着剤を得た。
接着剤の融点は51℃、湿気硬化前の25℃の貯蔵弾性率は2.96×108Pa、曲げ破壊ひずみは1.6%であった。また、接着剤の比誘電率は3.7であり、タックフリータイムは1分20秒、溶融粘度は4500mPa・s/120℃であった。
この接着剤について曲げ試験を行ったところ、接着剤層にひび割れが認められた。
一方、植毛性を確認したところ良好であった。
【0040】
実施例2~5、比較例2
表1記載の組成で、イソシアネート末端ポリウレタン系ホットメルト接着剤を得た。
これら接着剤について、融点、25℃の貯蔵弾性率、曲げ破壊ひずみ、比誘電率、タックフリータイム及び溶融粘度を測定し表1に記載した。
次いでこれら接着剤について、実施例1と同じ方法で、曲げ加工性及び植毛性を評価し、これらの結果を表1に記載した。
【0041】
【表1】
【0042】
なお、表1において、HS2H-351A、HS2F-136P及びHS2F-231ASは、豊国製油(株)製ポリエステルポリオールを、P-2011は、(株)クラレ製ポリエステルポリオールを、PTMG-3000は、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(ポリエーテルポリオール)を示す。