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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038522
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】排水トラップ
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/28 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
E03C1/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143085
(22)【出願日】2020-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】391064474
【氏名又は名称】ミヤコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】特許業務法人安田岡本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】束田 勝
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA05
2D061DD03
2D061DE01
2D061DE13
(57)【要約】
【課題】施工後において排水管から排水トラップの全てを取り外して床材の張り替え工事や配管の改修工事の際に好ましい作業性を提供する。
【解決手段】この排水トラップ100は、排水管と接続されて床板Fの取付穴FA周縁に固定された固定用筒体2と、固定用筒体2に支持されて封水を確保可能なトラップ本体4と、固定用筒体2に支持されて設備機器の排水ホースと接続可能なエルボ部材5と、エルボ部材5に装着されるとともに、固定用筒体2にねじ結合されてエルボ部材5を固定用筒体2との間で挟み込むロック部材6とから構成される。固定用筒体2における筒状部材21の外周面と排水管Pの内周面との間に、筒状部材21と排水管Pとを取り外し可能に接合する中空円筒状の弾性部材(接続ゴム7)が設けられて構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備機器の排水を床板の取付穴に立ち上げられた排水管に導いて排出する排水トラップであって、前記排水トラップと前記排水管とは接着剤を用いることなく接合され、
排水管と接続される固定用筒体と、
前記固定用筒体に支持されて封水を確保可能なトラップ本体と、
前記固定用筒体に支持されて設備機器の排水ホースと接続可能なエルボ部材と、
前記エルボ部材に装着されるとともに、前記固定用筒体にねじ結合されて前記エルボ部材を前記固定用筒体との間で挟み込むロック部材と、
前記筒状部材の外周面と前記排水管の内周面との間に設けられ、前記筒状部材と前記排水管とを接合する弾性部材であって、前記筒状部材と前記排水管とを取り外し可能に接合する中空円筒状の弾性部材と、から構成され、
前記固定用筒体は筒状部材と前記筒状部材の外周に設けられたフランジ部とから構成され、前記固定用筒体が前記床板に取り外し可能に固定される部分を前記フランジ部に備えることを特徴とする排水トラップ。
【請求項2】
前記中空円筒状の弾性部材は、上端に円筒の内周側から外周側へ向けて延設された円環状の鍔を備え、前記固定用筒体の前記フランジ部の下面に連続する緩和面に前記鍔の上面が当接し、
前記緩和面に円環状の凹部を備え、前記鍔の上面が前記凹部を含んで当接することを特徴とする、請求項1に記載の排水トラップ。
【請求項3】
前記排水管は、内径が異なる場合があり、
前記弾性部材は、中空円筒の途中での外側への折り返し加工により内径が大きい場合に対応させることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の排水トラップ。
【請求項4】
前記弾性部材は、中空円筒の途中での外側への折り返し加工を行わない場合において、前記排水トラップ本体による封水が確保可能に調整加工されることを特徴とする、請求項3に記載の排水トラップ。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記折り返し加工または前記調整加工が行いやすい形状をその中空円筒形状の外周面に備えることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の排水トラップ。
【請求項6】
前記固定用筒体において、前記筒状部材における前記フランジ部よりも上方には滑り防止用加工が施されていることを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれかに記載の排水トラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、設備機器の排水ホースと排水管との間に配設されて設備機器の排水を排水管に排出する排水トラップに関し、特に、(1)施工品質を均一化でき、(2)省施工で施工時間を短縮化でき、(3)接着剤を使用しないで排水管に接続して環境に配慮することができ、(4)施工後において排水管を切断することなく排水トラップの全てを排水管から取り外して床材の張り替え工事や配管の改修工事の際の作業性が好ましい排水トラップに関する。なお、本発明において、排水トラップと排水管とを繋いで設備機器の排水を排水管に排出できるように施工することを、「排水管に排水トラップを接続する」または「排水管に排水トラップを接合する」と記載し、「接続」と「接合」とを区別しない。
【背景技術】
【0002】
一般に、排水トラップは、洗濯機などの設備機器からの排水を床下に敷設された排水管に排出するために採用され、設備機器の排水ホースと接続可能なエルボ部材、エルボ部材および排水管にわたって接続可能な固定用筒体、固定用筒体に配置されて封水するトラップ本体を有し、排水管と接続されて床板に取り付けられている。そして、エルボ部材と設備機器の排水ホースとを接続することにより、設備機器からの排水をトラップ本体に導いて、臭気の逆流を防止しつつ排水管に排出する。
【0003】
このように用いられる排水トラップを施工する場合において、床板の上にはクッションフロアやフロアタイルなどの床材が敷設されているために、床排水トラップの周囲に床板そのものが見えると美感が損なわれる。このため、床排水トラップを施工するときには、床固定部材の接続部を通過させることができ、かつ、フランジ部を通過させることができない程度の大きさの穴を床材に形成し、穴の周囲の床材を床固定部材と床板との間に挟み込んでいる。
【0004】
たとえば、賃貸物件のリフォーム工事等において、既設の床材を新規の床材に張り替えることがある。床固定部材のフランジ部は接続部よりも大きいことから、床材を張り替える場合に、フランジ部を通過させることができる程度の大きさの穴を床材に形成したときには、床排水トラップの周囲に床板そのものが見えてしまい美感が損なわれる。このため、排水管を切断して床排水トラップを一旦取り外し、床材を張り替え、その後に床排水トラップを再び排水管に接続する作業を行っている。
【0005】
ところが、このように作業すると、排水管を切断したり、床排水トラップを再び排水管に接続したりする等の作業が必要であり、床材の張り替え作業が煩雑である。このような問題点を解決して床材の張り替え作業を簡単に行うことができる床排水トラップが特開2020-084434号公報(特許文献1)に開示されている。
この特許文献1に開示された床排水トラップは、排水ホースによって導かれた排水を床板の下穴に立ち上げられた排水管に排出する床排水トラップであって、前記排水ホースが接続されるホースジョイントと、前記ホースジョイントが接続され前記床板に固定される床固定部材と、前記床固定部材にスライド移動して取り付けられ前記ホースジョイントを前記床固定部材に押し付けるカバー部材と、前記床固定部材に保持される封水筒とを有し、前記床固定部材は、前記ホースジョイントが着脱自在に接続されるとともに前記排水管に接続される接続部と、前記接続部に着脱自在に連結され前記カバー部材がスライド移動して取り付けられるフランジ部とを有し、前記フランジ部が複数個の構成片に分割され、それぞれの構成片が前記床板に着脱自在にネジ締結されることを特徴とする(特許文献1の請求項1)。
【0006】
この床排水トラップは、床固定部材における接続部とフランジ部とが着脱自在であり、フランジ部が複数個の構成片に分割されている。フランジ部におけるそれぞれの構成片の床板へのネジ締結を解除することによって、接続部を排水管に接続したままの状態で、フランジ部の構成片を、接続部および床板から取り外すことができる。床板の上に敷設された既設の床材を新規の床材に張り替える場合にあっては、排水管を切断したり、床排水トラップを再び排水管に接続したりする作業は不要である。また、排水管に接続された接続
部を通過させることができる程度の大きさの穴を新規の床材に形成すればよいため、床排水トラップの周囲に床板そのものが見えることがなく、美感が損なわれない。よって、ホースジョイントの取り付け・取り外しの操作性を維持したまま、床材の張り替え作業を簡単に行うことができるよう改善した床排水トラップを提供できる(特許文献1の第0010段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-084434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された床排水トラップは、床固定部材を構成する接続部とその接続部に着脱自在に連結されるフランジ部とを有し、その接続部の外周面に排水管の内周面が接着剤によって接続されて施工されており、接続部を排水管に接続したままの状態で、既設の床材を床板から簡単に剥がし取ることができるに過ぎない。
より具体的には、特許文献1に開示された床排水トラップが施工された床板の上に敷設された既設の床材を新規の床材に張り替える場合にあっては、確かに床材に固定されていた部分を取り外して排水管に固定された筐体(特許文献1においては排水管に接着剤で接続された接続部)だけを残して床材の張り替えが可能になるに過ぎない。このため、実際には、この筐体の上部は床面や床材に対して水平ではないことが多いために、排水管に接続された筐体を残したままの状態で新規の床材をきれいに張るためには相当な煩雑さを伴うことになる。これは、新規の床材を張る際には、部屋の隅から床材を押さえながら新規の床材の皺を伸ばして施工することによりきれいに新規の床材を張ることができるわけであるが、このように筐体の上部は床面に対して水平ではないことが多いために、床材に十字の切欠きをカッター等で位置を(床材は透明ではないために)手探りで確認しながら加工して床材を張りつける作業になるために、相当な煩雑さを伴うとともに、均一な品質で新規の床材に張り替えることは、実質的に特許文献1に開示された床排水トラップでは困難である。
【0009】
すなわち、この床排水トラップの施工時において排水管とは接着剤により接続されるために、(1)施工品質の均一化が困難で接着不良等の漏水リスクが発生し得る、(2)長い施工時間が必要となっている、(3)揮発性の接着剤が使用されると施工者および居住者が安心して使用できない可能性がある(環境に配慮されていない)、また、この床排水トラップの施工時において排水管とは接着剤により接続されたために(この床排水トラップを構成する接続部が排水管と接着剤により接続されており接続部(上述の筐体)が取り外すことができないために)排水管を切断しない限り(4)排水管から排水トラップの全てを取り外すことができずクッションフロア(床材)の張り替え工事や配管の改修工事の際の作業性が好ましくなく、特にリフォーム頻度が高い賃貸物件に好ましくない、という問題点が発生し得る。(4)に関しては、床排水トラップの全ての構成を排水管から取り外すことができるようになると、排水管とその周囲に開けられた床穴のみが存在することになり、(十字の切欠きを開ける必要もなく)新規の床材を床板の全面に皺を伸ばして張りつけた後に排水管の周りをカッター等で切り欠いて施工できるようになるために、均一な品質で新規の床材に張り替えることができるようになる。
【0010】
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、(1)施工品質を均一化でき、(2)省施工で施工時間を短縮化でき、(3)接着剤を使用しないで排水管に接続して環境に配慮することができ、(4)施工後において排水管を切断することなく排水トラップの全てを排水管から取り外して床材の張り替え工事や配管の改修工事の際の作業性が好ましい排水トラップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る排水トラップは以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係る排水トラップは、設備機器の排水を床板の取付穴に立ち上げら
れた排水管に導いて排出する排水トラップであって、前記排水トラップと前記排水管とは接着剤を用いることなく接合され、排水管と接続される固定用筒体と、前記固定用筒体に支持されて封水を確保可能なトラップ本体と、前記固定用筒体に支持されて設備機器の排水ホースと接続可能なエルボ部材と、前記エルボ部材に装着されるとともに、前記固定用筒体にねじ結合されて前記エルボ部材を前記固定用筒体との間で挟み込むロック部材と、前記筒状部材の外周面と前記排水管の内周面との間に設けられ、前記筒状部材と前記排水管とを接合する弾性部材であって、前記筒状部材と前記排水管とを取り外し可能に接合する中空円筒状の弾性部材と、から構成され、前記固定用筒体は筒状部材と前記筒状部材の外周に設けられたフランジ部とから構成され、前記固定用筒体が前記床板に取り外し可能に固定される部分を前記フランジ部に備えることを特徴とする
好ましくは、前記中空円筒状の弾性部材は、上端に円筒の内周側から外周側へ向けて延設された円環状の鍔を備え、前記固定用筒体の前記フランジ部の下面に連続する緩和面に前記鍔の上面が当接し、前記緩和面に円環状の凹部を備え、前記鍔の上面が前記凹部を含んで当接するように構成することができる。
【0012】
さらに好ましくは、前記排水管は、内径が異なる場合があり、前記弾性部材は、中空円筒の途中での外側への折り返し加工により内径が大きい場合に対応させるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記弾性部材は、中空円筒の途中での外側への折り返し加工を行わない場合において、前記排水トラップ本体による封水が確保可能に調整加工されるように構成することができる。
【0013】
さらに好ましくは、前記弾性部材は、前記折り返し加工または前記調整加工が行いやすい形状をその中空円筒形状の外周面に備えるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記固定用筒体において、前記筒状部材における前記フランジ部よりも上方には滑り防止用加工が施されているように構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る排水トラップによると、(1)施工品質を均一化でき、(2)省施工で施工時間を短縮化でき、(3)接着剤を使用しないで排水管に接続して環境に配慮することができ、(4)施工後において排水管を切断することなく排水トラップの全てを排水管から取り外して床材の張り替え工事や配管の改修工事の際の作業性が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る排水トラップ100の分解斜視図である。
図2】排水トラップ100の(A)外観状態を示す上面図、(B)排水管(内径がVP管より大きいVU管)に接続して床板に固定した状態の断面図、(C)外観状態を示す側面図、(D)図2(B)の部分拡大図である。
図3】排水トラップ100の(A)外観状態を示す上面図、(B)排水管(内径がVU管より小さいVP管)に接続して床板に固定した状態の断面図、(C)外観状態を示す側面図、(D)図3(B)の部分拡大図である。
図4】排水トラップ100を構成する固定用筒体2の(A)外観状態を示す上面図、(B)外観状態を示す側面図、(C)図4(B)の部分断面図、(D)図4(C)における4D部分の拡大図である。
図5】排水トラップ100を構成する弾性部材(接続ゴム7)の(A)外観状態を示す上面図、(B)外観状態を示す側面図、(C)図5(B)の断面図、(D)排水管(VU管)への施工する場合を説明するための断面図、(E)排水管(VP管)への施工する場合を説明するための断面図である。
図6】排水トラップ100を(A)排水管(VU管)に接続して床板に固定した状態の部分的な断面図、(B)排水管(VP管)に接続して床板に固定した状態の部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明の実施の形態に係る排水トラップ100について、図面を参照して説明する。
図1図6を参照して、本実施の形態に係る排水トラップ100について説明する。
この排水トラップ100は、設備機器の排水を床板F(床面高さFL)の取付穴FAに立ち上げられた排水管P(後述するように排水管PはVU管(または単にVUと記載)とVP管(または単にVPと記載)とがあるがこれらを区別しない場合に排水管Pと記載する)に導いて排出する。この排水トラップ100は、排水管Pと(接着剤を用いることなく後述する弾性部材(接続ゴム7)を用いることにより)取り外し可能に接続(接合)されるとともに、床板Fに形成された取付穴FAの周縁に固定される固定用筒体2と、固定用筒体2に装着された化粧カバー3と、固定用筒体2に支持されたトラップ本体4と、トラップ本体4に嵌挿されて固定用筒体2に支持されたエルボ部材5と、エルボ部材5に装着されて固定用筒体2とねじ結合されたロック部材6と、から構成されている。
【0017】
固定用筒体2は、筒状部材21(上筒部26、下筒部23)およびフランジ部22から構成されている。詳しくは後述するが、この筒状部材21における下筒部23の外周面と排水管Pの内周面との間には、筒状部材21と排水管Pとを接合する弾性部材であって、筒状部材21と排水管Pとを取り外し可能に接合する中空円筒状の弾性部材である接続ゴム7が設けられている。ここで、排水管Pの内径が異なる場合があっても、同じ接続ゴム7が用いられる。なお、本発明の説明における内径が異なる排水管Pとして、VU管とVP管とを一例に挙げて説明するが、本発明の適用はこれらのVU管にもVP管にも限定されるものではない。一例として挙げたVU管は外径φD(U)60mmで内径φd(U)56mm(肉厚t2.0mm)、VP管は外径φD(P)60mmで内径φd(P)51mm(肉厚t4.5mm)である。すなわち、外径φDについてφD(U)=φD(P)、内径φdについてφd(U)>φd(P)である。
【0018】
また、固定用筒体2は、無色透明、有色透明または有色不透明である樹脂、たとえば、ABS樹脂によって形成されている。このようにABS樹脂を採用することにより透明で形成したとしても強度低下を抑えることができる。
固定用筒体2の筒状部材21は、下筒部23と、下筒部23の上端から外方に延びるフランジ部22と、フランジ部22の上面から立設され下筒部23よりも大径の上筒部26と、からなり、下筒部23の外径は内径φdが異なる排水管Pであっても共用できる弾性部材(接続ゴム7)の内径に対応して設定され、上筒部26内筒の上面26Uにはエルボ部材5の突出部51を載置することができる。また、上筒部26内筒の下面段差により形成された支持部25には、トラップ本体4の周縁段差部411を支持することができる。さらに、筒状部材21の上筒部26の内周面には雌ねじ26Fが形成されており、ロック部材6の雄ねじ6Mとねじ結合することができる。
【0019】
固定用筒体2のフランジ部22は、筒状部材21の外周面にリング板状(円環平板状)に形成されている。そして、フランジ部22には、周方向に設定間隔をおいて複数個(ここでは3個)のビス穴22Aが形成されており、ビス穴22Aを通してビスSを床板Fにねじ込むことによって床板Fに固定用筒体2を固定することができる。
化粧カバー3は、固定用筒体2に装着可能であって、固定用筒体2に装着することにより、筒状部材21の上筒部26の外周面とともに、フランジ部22の上面を覆って、固定用筒体2およびビスSを目隠しして外観を化粧することができる。
【0020】
トラップ本体4は、固定用筒体2における筒状部材21の下筒部23の内周面に嵌合可能な外径のわん体41と、わん体41の内部に配設された傾斜部421および垂直部422からなる仕切り壁42と、から形成されている。そして、仕切り壁42の垂直部422によってわん体41の内部が横断面半円状に二分割される一方、仕切り壁42の垂直部422の下端縁とわん体41の底面との間には、流通路4Aが形成されている。また、仕切り壁42の傾斜部421の裏面側において、わん体41の上部には、略半周にわたる流出口4Bが形成されている。このため、後述するように、設備機器からの排水は、仕切り壁42の傾斜部421に沿ってわん体41の横断面半円状の一方の空間に流れるとともに、流通路4Aを経てわん体41の横断面半円状の他方の空間に達し、流出口4Bから溢水する。この際、トラップ本体4のわん体41の内部において、その底面から流出口4Bに達する高さの封水を確保することができる。
【0021】
なお、トラップ本体4のわん体41の上部外周面には、固定用筒体2における筒状部材21の下筒部23の内径に対応する外径の周縁段差部411が突出して形成されており、前述した固定用筒体2における筒状部材21の支持部25に支持することができる。
エルボ部材5は、ゴムなどから形成されたエルボ状の管状体であって、その一端部に排水ホース(図示せず)が接続可能であり、その他端部に、前述したトラップ本体4におけるわん体41の周縁段差部411の内周面に嵌合可能な外周面が形成されるとともに、固定用筒体2における筒状部材21の上筒部26内筒の上面26Uに支持可能な突出部51が形成されている。
【0022】
ロック部材6は、前述した固定用筒体2における筒状部材21の上筒部26の雌ねじ26Fに螺合可能な雄ねじ6Mを有し、エルボ部材5にその他端部側から装着されるようになっている。
そして、本実施の形態に係る排水トラップ100は、以下のような特徴的な構成を備える。
【0023】
図2(D)、図3(D)および図6に示すように、本実施の形態に係る排水トラップ100は、固定用筒体2における筒状部材21の外周面と排水管Pの内周面との間に設けられ、筒状部材21と排水管Pとを接合する(結果的に排水トラップ100と排水管Pとを接合することになる)弾性部材であって、筒状部材21と排水管Pとを取り外し可能に接合する中空円筒状の弾性部材(接続ゴム7)を含んで構成されている。そして、固定用筒体2は筒状部材21と筒状部材21の外周に設けられたフランジ部22とから構成され、固定用筒体2が床板Fに取り外し可能に固定される部分(より詳しくはビス穴22A)をフランジ部22に備える。
【0024】
このように、弾性部材(接続ゴム7)を用いて排水トラップ100と排水管Pとを接着剤を用いることなく接合することができるために、(1)施工品質を均一化でき、(2)省施工で施工時間を短縮化でき、(3)接着剤を使用しないで排水管Pに接続して環境に配慮することができ、(4)施工後において排水管Pを切断することなく排水トラップ100の全てを排水管Pから取り外して床材の張り替え工事や配管の改修工事の際の作業性が好ましい。
【0025】
ここで、図4図6に示すように、この中空円筒状の弾性部材である接続ゴム7は、上端にこの円筒の内周側から外周側へ向けて延設された円環状の鍔72を備え、固定用筒体2のフランジ部22の下面に連続する緩和面220に鍔72の上面が当接し、さらに、緩和面220に円環状の凹部222を備え、鍔72の上面がこの円環状の凹部222を含んで当接する。
【0026】
このように、緩和面220に円環状の凹部222を備え、鍔72の上面をこの円環状の凹部222を含んで当接させることにより、接続ゴム7の形状の可動領域を広げる作用効果を発現させることができる。このため、排水管P(多くの場合には塩ビ(塩化ビニル)管の端面に当たる接続ゴム7の鍔部72で吸収できる範囲(許容範囲)を広げることができる。たとえば、床面に対して垂直に立ち上げられた排水管P(塩ビ管)の上端面が床面に対して平行(上端面が水平)であるように(排水トラップ100の施工前に)排水管Pが床面が施工されていることが通常であるが、そうではない場合、すなわち、排水管P(塩ビ管)の上端面が床面に対して平行(上端面が水平)でない場合であっても、接続ゴム7の形状の可動領域を広げる作用効果が発現されて、容易な施工で、排水トラップ100を床面に垂直に施工することができる。したがって、施工現場において想定される様々な状況においてもこのように許容範囲を広げることができるために、(1)施工品質を均一化でき、(2)省施工で施工時間を短縮化できる。
【0027】
さらに、排水管Pは、内径φdが異なる場合があり、このような場合においても弾性部材として同じ接続ゴム7が用いられ、弾性部材である接続ゴム7は、中空円筒の途中(図5(B)または図5(C)に示す黒塗り三角印の位置)での外側への折り返し加工(図5(D)に示す白抜き矢示)により内径φdが大きい場合に対応させている。
さらに、弾性部材である接続ゴム7は、中空円筒の途中(図5(B)または図5(C)に示す黒塗り三角印の位置)での外側への折り返し加工(図5(D)に示す白抜き矢示)
を行わない場合において、排水トラップ100本体による封水が確保可能に調整加工される。
【0028】
ここで、弾性部材である接続ゴム7は、このような折り返し加工(図5(D)に示す白抜き矢示)または調整加工(たとえばこの調整加工の一例として図5(B)または図5(C)に示す黒塗り三角印の位置での図5(E)に示す切断加工が挙げられる)が行いやすい形状をその中空円筒形状の外周面に備える。このような形状として、たとえば図5(B)または図5(C)に示す黒塗り三角印の位置に設けられた溝71CCが挙げられる。なお、調整加工として切断加工が採用される場合には、その切断に用いる工具は、はさみ、カッター等の切断工具であって特に限定されるものではない。
【0029】
このように、排水管Pの内径φdが異なる場合であっても弾性部材として同じ接続ゴム7を用いることができる。そして、排水管Pの内径φdが異なる場合において、折り返し加工や調整加工を行うことにより、トラップ100本体による封水が確保可能に、かつ、(1)施工品質を均一化でき、(2)省施工で施工時間を短縮化でき、(3)接着剤を使用しないで排水管Pに接続して環境に配慮することができる。
【0030】
さらに、固定用筒体2において、筒状部材21におけるフランジ部22よりも上方には(上筒部26には)滑り防止用加工が施されている。このような滑り防止用加工として、たとえば図4(B)または図4(C)に示す上筒部26にローレット加工を設けることが挙げられる。
このように、固定用筒体2における筒状部材21の上筒部26には滑り防止用加工が施されているために、施工時において固定用本体2を排水管P(立ち上っている塩ビ管)に挿入した後、排水管Pに固定用本体2を馴染ませる作業を容易に行うことができるので、(1)施工品質を均一化でき、(2)省施工で施工時間を短縮化できる。なお、このような滑り止め加工(一例としてのローレット加工)した部分(上筒部26)は化粧カバー3で覆われるために意匠性を損なうことを抑制することができる。
【0031】
本実施の形態に係る排水トラップ100が備えるこのような特徴的な構成についてさらに詳細に説明する。
まず、図4を参照して、この排水トラップ100に含まれる固定用筒体2について詳しく説明する。この図4に示すように、固定用筒体2は、概略的には、上述したように、固定用筒体2のフランジ部22の下面に連続する緩和面220に円環状の凹部222を備える。図6(A)に示すように排水管PがVU管7Uであっても図6(B)に示すように排水管PがVP管7Pであっても、この固定用筒体2のフランジ部22の下面に連続する緩和面220に鍔72の上面が当接する。そして、図4(D)に示すように、固定用筒体2のフランジ部22の下面に連続する緩和面220には円環状の凹部222が設けられ、図6(A)および図6(B)に示すように、鍔72の上面がこの円環状の凹部222を含んで当接して、固定用筒体2が接着剤を用いることなく排水管Pに接合され、結果的に排水トラップ100が排水管Pに接合される。
【0032】
このようにこの固定用筒体2は、そのフランジ部22の下面に連続する緩和面220に、弾性部材である接続ゴム7の鍔72の上面が当接する円環状の凹部222を備える。さらに、この固定用筒体2の筒状部材21におけるフランジ部22よりも上方には(上筒部26には)滑り防止用加工(たとえば図4(B)に示すローレット加工)が施されている。
【0033】
このように、緩和面220に円環状の凹部222を備え、鍔72の上面をこの円環状の凹部222を含んで当接させることにより、接続ゴム7の形状の可動領域を広げる作用効果を発現させることができるとともに、固定用筒体2の筒状部材21における上筒部26には滑り防止用加工(ローレット加工)が施されていることにより、施工時において固定用本体2を排水管P(立ち上っている塩ビ管)に挿入した後、排水管Pに固定用本体2を馴染ませる作業を容易に行うことができる。
【0034】
ここで、この排水管Pに固定用本体2を馴染ませる作業においては、排水トラップ100における固定用部材2と排水管Pとの接合部分に水を含ませる(より限定的には接続ゴム7を水に浸す)ことにより、摩擦抵抗を低減することができるために、上筒部26に施
された滑り防止用加工と相俟って、排水管Pに固定用本体2を馴染ませる作業をさらに容易に行うことができる。
【0035】
次に、図5を参照して、この排水トラップ100に含まれる弾性部材としての接続ゴム7について詳しく説明する。この図5に示すように、接続ゴム7は、概略的には、上述したように、中空円筒状の形状を備え、上端にこの円筒の内周側から外周側へ向けて延設された円環状の鍔72を備える。図6(A)に示すように排水管PがVU管7Uであっても図6(B)に示すように排水管PがVP管7Pであっても、この鍔72の上面が、固定用筒体2のフランジ部22の下面に連続する緩和面220に当接する。そして、図4(D)に示すように、固定用筒体2のフランジ部22の下面に連続する緩和面220には円環状の凹部222が設けられ、図6(A)および図6(B)に示すように、鍔72の上面がこの円環状の凹部222を含んで当接して、固定用筒体2が接着剤を用いることなく排水管Pに接合され、結果的に排水トラップ100が排水管Pに接合される。
【0036】
ここで、この接続ゴム7は、排水管Pが内径φdの大きなVU管7Uである場合には、弾性部材である接続ゴム7は、中空円筒の途中(図5(B)または図5(C)に示す黒塗り三角印の位置)での外側への折り返し加工(図5(D)に示す白抜き矢示)されるとともに、排水管Pが内径φdの小さなVP管7Pである場合には、弾性部材である接続ゴム7は、中空円筒の途中(図5(B)または図5(C)に示す黒塗り三角印の位置)での外側への折り返し加工(図5(D)に示す白抜き矢示)を行わないで調整加工(この一例として図5(B)または図5(C)に示す黒塗り三角印の位置での図5(E)に示す切断加工)されて、排水管Pが内径φdの大きなVU管7Uであっても内径φdの小さなVP管7Pであっても排水トラップ100本体による封水を確保することができる。すなわち、排水管Pが、図2(B)に示すようにVU管7Uであっても図3(B)に示すようにVP管7Pであっても、排水トラップ100のわん体41の上部に設けられた略半周にわたる流出口4Bよりも下方に接続ゴム7が存在することを回避して、排水トラップ100本体による封水を確保することができる。
【0037】
また、図5に示すように、この接続ゴム7には、図5(B)または図5(C)に示す黒塗り三角印の位置における、折り返し加工(図5(D)に示す白抜き矢示のように外側へ下方部分71Dを上方部分71U側へ折り返す、または、調整加工(図5(E)に示す切断加工)が行いやすいように、その中空円筒形状の外周面には、図5(B)または図5(C)に示す黒塗り三角印の位置に溝71CCが設けられている。
【0038】
これに加えて、この接続ゴム7には、上方部分71Uの内周面および外周面に滑り止め用の溝71UCや、下方部分71Dの内周面に滑り止め用の溝71DCが設けられており、この接続ゴム7の内周面に当接する(圧接される)固定用部材2(より詳しくは下筒部23)との施工後の滑りを防止するとともに、この接続ゴム7の外周面に当接する(圧接される)排水管Pとの施工後の滑りを防止することができる。
【0039】
このような特徴的な構成を備える排水トラップ100は、その施工時において、以下に示す作用効果を奏する。
排水トラップ100が接続される排水管Pが内径φdの大きなVU管7Uであっても内径φdの小さなVP管7Pであっても同じ接続ゴム7を使用して、排水トラップ100を排水管Pに接着剤を用いることなく接合することができる。このとき、接続ゴム7を図5(D)に示す折り返し加工や図5(E)に示す調整加工(切断加工)することにより、内径φdの異なる排水管Pに対して同じ接続ゴム7を使用して排水トラップ100を排水管Pに接合することができるとともに、排水管Pが、図2(B)に示すようにVU管7Uであっても図3(B)に示すようにVP管7Pであっても、排水トラップ100のわん体41の上部に設けられた略半周にわたる流出口4Bよりも下方に接続ゴム7が存在しないようにできるために、排水トラップ100本体による封水を確保することができる。
【0040】
このような施工時において、折り返し加工する場合(排水管Pが内径φdの大きなVU管7Uである場合)であっても、切断加工する場合(排水管Pが内径φdの小さなVP管7Pである場合)であっても、溝71CCの位置で折り返したり切断したりするために、施工性が極めて好ましい。そして、固定用本体2の筒状部材21における上筒部26に滑
り防止用加工(ローレット加工)が施されていることにより、施工時において固定用本体2を排水管P(立ち上っている塩ビ管)に挿入した後、排水管Pに固定用本体2を馴染ませる作業を容易に行うことができる。
【0041】
さらに、固定用筒体2のフランジ部22の下面に連続する緩和面220に円環状の凹部222を備え、かつ、弾性部材である接続ゴム7は中空円筒状の形状を備え、上端にこの円筒の内周側から外周側へ向けて延設された円環状の鍔72を備える。そして、この鍔72の上面が、固定用筒体2のフランジ部22の下面に連続する緩和面220に設けられた円環状の凹部222を含んで当接するために、接続ゴム7の形状の可動領域を広げる作用効果を発現させることができて、排水管P(多くの場合には塩ビ(塩化ビニル)管の端面に当たる接続ゴム7の鍔部72で吸収できる範囲(許容範囲)を広げることができる。したがって、施工現場において想定される様々な状況においてもこのように許容範囲を広げることができるために、(1)施工品質を均一化でき、(2)省施工で施工時間を短縮化できる。このようにして、固定用筒体2が接着剤を用いることなく排水管Pに好ましい施工性で接合され、結果的に排水トラップ100が排水管Pに接合される。
【0042】
そして、上述した特徴的な構成を備える排水トラップ100は、その施工後の床材の張り替え時等において、以下に示す作用効果を奏する。
固定用部材2を床材Fと接合しているビスSを抜くと、固定用部材2と排水管Pとは接着剤ではなく接続ゴム7により接合されている。このため、固定用部材2を排水管Pから引く抜くことができる。したがって、床Fから排水管Pを切断することなく、排水トラップ100の全てを排水管Pから取り外すことができるので、床材の張り替え工事や配管の改修工事の際の作業性が非常に好ましいものとなる。
【0043】
このような床材の張り替え工事や配管の改修工事の後に、本実施の形態に係る排水トラップ100を(接着剤を用いることなく)接続ゴム7を用いて排水管Pに取り外し可能に接合する手順は上述した通りである。
以上のようにして、本実施の形態に係る排水トラップ100によると、(1)施工品質を均一化でき、(2)省施工で施工時間を短縮化でき、(3)接着剤を使用しないで排水管に接続して環境に配慮することができ、(4)施工後において排水管を切断することなく排水トラップの全てを排水管から取り外して均一な品質を実現した床材の張り替え工事や配管の改修工事の際の作業性が好ましい排水トラップを提供することができる。
【0044】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、設備機器の排水ホースと排水管との間に配設されて設備機器の排水を排水管に排出する排水トラップに好適であって、(1)施工品質を均一化でき、(2)省施工で施工時間を短縮化でき、(3)接着剤を使用しないで排水管に接続して環境に配慮することができ、(4)施工後において排水管を切断することなく排水トラップの全てを排水管から取り外して床材の張り替え工事や配管の改修工事の際の作業性が好ましい点で特に好適である。
【符号の説明】
【0046】
100 排水トラップ
2 固定用筒体
3 化粧カバー
4 トラップ本体
5 エルボ部材
6 ロック部材
7 (弾性部材とのして)接続ゴム
P 排水管
F 床板
FA 取付穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6