(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038524
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】7型コラーゲン増加を介した皮膚表皮細胞増殖作用を呈するウンベリフェロン誘導体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 473/30 20060101AFI20220303BHJP
C12P 17/16 20060101ALI20220303BHJP
A61K 31/708 20060101ALI20220303BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220303BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20220303BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220303BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
C07D473/30
C12P17/16
A61K31/708
A61P17/00
A61K8/49
A61Q19/08
A61K31/522
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143087
(22)【出願日】2020-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】504447198
【氏名又は名称】二村 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】二村 芳弘
【テーマコード(参考)】
4B064
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4B064AE54
4B064CA02
4B064CE10
4B064DA01
4C083AC851
4C083AC852
4C083CC02
4C083EE12
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA89
(57)【要約】
【課題】 7型コラーゲン増加作用を介した皮膚表皮細胞増殖作用を呈するウンベリフェロン誘導体及びその製造方法。
【解決手段】 ここでいうウンベリフェロン誘導体は1分子のウンベリフェロン、1分子のイノシン及び1分子のプロリンを構成分子としている。ウンベリフェロン誘導体は分子式C23H21O8N5で示され、炭素23個、水素21個、酸素8個及び窒素5個より構成される。推定分子量は495.44である。この誘導体の製造方法はコリアンダーと白金粉末を乳酸桿菌により発酵した後、精製される製造工程によりなる。このウンベリフェロン誘導体は美容効果を期待した化粧料、医薬品や食品に利用される。特に、基底層の表皮幹細胞の増殖に優れた働きを示すことから幹細胞化粧品として利用される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で示される7型コラーゲン増加作用を介した皮膚表皮細胞増殖作用を呈するウンベリフェロン誘導体。
【化1】
【請求項2】
清浄な発酵タンクにコリアンダーの葉または果実と白金粉末を添加し、乳酸桿菌により発酵させ、得られた発酵物を精製する工程よりなる式(1)で示される請求項1に記載の7型コラーゲン増加作用を介した皮膚表皮細胞増殖作用を呈するウンベリフェロン誘導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は7型コラーゲン増加を介した皮膚表皮細胞増殖作用を呈するウンベリフェロン誘導体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚の健康と美容にとって皮膚の表皮細胞と基底層と線維芽細胞の結合は非常に重要な役割を担っている。表皮細胞は皮膚の表層に位置し、皮膚バリア層を形成し、異物や微生物、ウイルスの侵入を防御している。一方、基底層では表皮細胞の幹細胞が存在して表皮組織を維持している。真皮組織の線維芽細胞はコラーゲンとエラスチンを産生し、皮膚の弾性を維持する。
【0003】
この表皮細胞と基底層と線維芽細胞の結合を担っているのが接着因子といわれるタンパク質であり、ラミニン、インテグリン、フィブロネクチン、コラーゲンである。このうち、7型コラーゲンは皮膚の基底膜または基底板の真皮層を支える弾力性タンパク質である、また、7型コラーゲンは係留線維として基底板に結合して表皮組織を支える。
【0004】
7型コラーゲンに関する発明としては、たとえば、創傷治癒を強化する方法及び薬剤の発明があり、COL7A1遺伝子におけるナンセンス突然変異を患っている細胞における、全長C7の発現を誘発するための、又は、不完全C7の発現を強化するための方法であって、該細胞を、アミノグリコシドを含有する有効量の組成物と接触させることを含む方法(例えば、特許文献1参照)が記載されている。しかし、表皮細胞を増殖させる作用は軽度であり、具体的な成分や構造については明記されておらず、産業への利用は限定的である。
【0005】
また、例えば、加齢に伴う障害の治療のための組換え7型コラーゲンの投与の発明があり、ここでは対象を治療する方法であって、加齢に伴う障害を有する又は加齢に伴う障害を有するリスクのある高齢対象に、7型コラーゲン又はその機能的断片及び変異体を投与することが記載されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、表皮細胞に対する働きは軽度であり、産業上の利用には限度がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2013-509317
【特許文献2】特願2015-550734
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存の植物エキスによる皮膚表皮細胞増殖作用は著しく軽度であり、産業上への利用が限定されるという課題がある。一方、化学合成された物質では安全性に問題があり、その利用が限られている。
【0008】
そこで、副作用が弱く優れた皮膚表皮細胞増殖作用を呈する天然由来の物質及びその製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は下記の式(1)で示される7型コラーゲン増加を介した皮膚表皮細胞増殖作用を呈するウンベリフェロン誘導体に関するものである。
【0010】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項2に記載の発明は式(1)で示される請求項1に記載の7型コラーゲン増加を介した皮膚表皮細胞増殖作用を呈するウンベリフェロン誘導体の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
【0013】
請求項1に記載のウンベリフェロン誘導体によれば、副作用が少ない、かつ、優れた7型コラーゲン増加を介した皮膚表皮細胞増殖作用を呈する天然由来の物質が得られる。
【0014】
請求項2に記載のウンベリフェロン誘導体の製造方法によれば、効率良く、環境汚染が少なく、天然物由来の発酵法を利用したウンベリフェロン誘導体の製造方法が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
【0016】
7型コラーゲン増加を介した皮膚表皮細胞増殖作用を呈するウンベリフェロン誘導体とは以下の式(1)で示される構造からなる。
【0017】
【0018】
式(1)示したウンベリフェロン誘導体は分子式C23H21O8N5で示され、炭素23個、水素21個、酸素8個及び窒素5個より構成される。推定分子量は495.44である。
【0019】
このウンベリフェロン誘導体はウンベリフェロンの1分子、イノシンの1分子及びプロリンの1分子より形成される。ウンベリフェロンの水酸基とイノシンのリボース部分が酸素元素を介してエーテル結合している。また、イノシンのリボースのもう一つの水酸基とプロリンのカルボン酸部分がエステル結合している。
【0020】
構成分子であるウンベリフェロン、イノシン及びプロリンはいずれも天然に存在する物質であり、いずれもその安全性が確認されている。ウンベリフェロンはクマリン類の化合物であり、ココナッツ、コリアンダーやセイヨウトウキでも見出される。イノシンは核酸の構成成分であり、動植物で生合成される。また、プロリンはアミノ酸であり、ヒドロキシプロリンとしてコラーゲンを構成するアミノ酸の一つである。
【0021】
このウンベリフェロン誘導体は水酸基や酸素元素が多いため、水溶性であり、中性溶液やエタノールに溶解しやすい性質を有する。電気的には、ウンベリフェロン部分が疎水性を示し、細胞膜に浸透性を示す。このウンベリフェロン誘導体の電気的な性質は表皮細胞の細胞膜に浸透し、基底層や基底板に到達しやすいことから好ましい。
【0022】
このウンベリフェロン誘導体は皮膚線維芽細胞や表皮細胞の7型コラーゲン量を増加させる。増加した7型コラーゲンは皮膚の基底層や基底板において係留線維として基底板と線維芽細胞を結合し、表皮と真皮の弾性を形成する。さらに、7型コラーゲンは表皮細胞に働き、EGF受容体を活性化することにより表皮細胞の細胞分裂及び細胞増殖を促進する。
【0023】
このウンベリフェロン誘導体はヒト皮膚の表皮細胞を増殖させる。特に、基底層に存在する表皮幹細胞を増殖させ、表皮のターンオーバーを活性化させる。ターンオーバーの促進はしわやたるみを抑制する。
【0024】
また、ウンベリフェロン誘導体により増加した7型コラーゲンは真皮層において弾性線維として働き、真皮層を強固にし、皮膚に柔軟性を与える。
【0025】
さらに、生成された7型コラーゲンは表皮細胞においてケラチンを増加させ、表皮細胞を強固にして、紫外線や細菌感染に対して抵抗性を示す。角質層では角質バリアを強固にする。
【0026】
一方、7型コラーゲンは皮膚線維芽細胞に対し、3型コラーゲン、4型コラーゲンやエラスチンを増加させることにより、弾性線維を強固にする。
【0027】
7型コラーゲンはミトコンドリアでピルビン酸からTCAサイクルを利用したATP産生を促進してエネルギーを産生する。すなわち、このウンベリフェロン誘導体はこの7型コラーゲンの増加を介してATP産生を増加させる。ATP産生により皮膚細胞の機能性を高める。
【0028】
皮膚表皮細胞においてこのウンベリフェロン誘導体は7型コラーゲンの増加とともにATP量を増加させる。ATPは細胞の形状維持やケラチン産生などの機能に必要であることからこのウンベリフェロン誘導体によるATP産生作用は表皮細胞増殖を促進する。特に、ケラチンの増加により角質バリアが強固になり、皮膚の防御機能が亢進する。このように、7型コラーゲンの増加に加えてケラチン及びATP量の増加は皮膚表皮細胞を活性化し、美容作用に優れている。
【0029】
このウンベリフェロン誘導体はウンベリフェロン、イノシン及びプロリンを原料として有機化学的に合成することができ、これは標準品として構造解析の目的で利用できる。また、ダイヤイオンHP-20(三菱化学(株)社製)及びXAD-2またはXAD-4(ロームアンドハース社製)、セファデックスLH-20(アマシャムファルマシア社製)、イオン交換担体IRA-410(ロームアンドハース社製)、逆相担体DM1020T(富士シリシア社製)により精製され、純度98%以上の精製品を得ることができる。
【0030】
このウンベリフェロン誘導体の構造は核磁気共鳴装置(例えば、ブルカー製NMR)により、CD3OD中における1H-NMRと13C-NMRの解析を行うことにより解析される。この構造は600MHzの1H-NMR解析により、1.77、2.21、2.49、2.67、2.84、3.18、4.31、5.56、5.76、5.99、6.38、8.07、8.27及び8.48ppmにピークが認められる。
【0031】
さらに、CD3OD中13C-NMRの解析により、19.8、28.0、28.4、43.1、50.8、74.3、90.1、101.6、104.0、107.8、111.4、132.7、133.3、134.3、137.7、160.2、165.3、167.8、170.4、172.8及び188.2ppmにピークが認められる。
【0032】
このウンベリフェロン誘導体は水酸基やケトン基を有することから抗酸化作用を発揮して細胞膜の安定化作用を発揮する。たとえば、皮膚表皮細胞の細胞膜を安定化して細胞の維持及び増殖に寄与する。
【0033】
ここで示すウンベリフェロン誘導体は過剰量を摂取した際には生体内で分解され、排泄されることから安全性が高い。また、体内や環境中での蓄積性は認められず、環境への安全性も高い。
【0034】
また、このウンベリフェロン誘導体は皮膚のメラニン細胞にも反応して抗酸化作用を発揮してメラニンの産生を抑制する。すなわち、豊富な水酸基が酸化反応を抑制してメラニン産生を抑制する。
【0035】
このウンベリフェロン誘導体の製造方法としては有機化学的に合成する方法があり、その他に穀類、植物、野菜類、藻類や動物から抽出する方法、また、穀類や植物などを発酵して得ることが可能である。
【0036】
このうち、発酵法により植物から製造されることは安全性が高く、製造効率が高いことから好ましい。発酵に用いられる植物としてコリアンダーなどが用いられる。その他、アミノ酸、有機酸を豊富に含有している米糠、米、米胚芽、緑茶、緑豆などの豆類、ラベンダーなどのハーブ類、ベルガモットやミカンなどの柑橘類が適している。特に、ウンベリフェロンを豊富に含むココナッツ、コリアンダーやセイヨウトウキは原料として好ましい。
【0037】
たとえば、このウンベリフェロン誘導体の製造方法としてはコリアンダー(学名Coriandrum sativum)と触媒として利用する白金粉末を添加し、乳酸桿菌により発酵させ、精製する製造方法である。乳酸桿菌は食用の有用菌であり、コリアンダーからウンベリフェロンを遊離させ、アミノ酸を産生する有用な微生物であり、発酵法も食用として安定し、日本国内の発酵法も確立されていることから好ましい。すなわち、コリアンダーと白金粉末を乳酸桿菌により発酵させた発酵液を精製する製造方法により製造される7型コラーゲン増加を介した皮膚表皮細胞増殖作用を呈するウンベリフェロン誘導体とすることにより製造方法を限定した目的とするウンベリフェロン誘導体が特定されることは好ましい。この発酵法による製造方法は化学合成による製造方法とは異なり、天然に存在する製造方法であり、不純物も天然物となることから安全性の点においても好ましい。
【0038】
このウンベリフェロン誘導体は医薬品として注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。
【0039】
また、経口剤としては錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤は、シェラックまたは砂糖で被覆することもできる。
【0040】
さらに、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の素材を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を添加することができる。
【0041】
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
【0042】
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
【0043】
食品製剤として美容に対する健康食品、美容を目的とした美容食品、美容を目的とした食品滋養強壮剤、毛髪の促進のための食品などに利用される。また、保健機能食品として、栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
【0044】
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、皮膚の防御を含む全身の健康を維持する目的として、飼料や動物用サプリメントとして利用される。
【0045】
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができ、しわの形成を抑制する化粧料となる。化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。特に、表皮細胞を増殖させることから、しわ対策や美容作用を期待した化粧料に利用される。
【0046】
また、植物活性化剤として植物を元気にさせる用途にも使用できる。豆類、穀物、米類、根菜類や花にも使用でき、収穫高や品質を高め、植物の生育と寿命を高める。切り花の保持にも利用できる。
【0047】
以下に、清浄な発酵タンクにコリアンダーの葉または果実と白金粉末を添加し、乳酸桿菌により発酵させ、得られた発酵物を精製する工程よりなるウンベリフェロン誘導体の製造方法について説明する。目的とするウンベリフェロン誘導体は式(1)で示される分子式C23H21O8N5からなり、7型コラーゲン増加作用を介した皮膚表皮細胞増殖作用を呈する物質である。ここに示す製造方法は天然物のみを原料とする発酵法及び精製法による。この発酵法と精製法は化学合成による製造方法とは異なり、化学的な不純物ができにくく、安全性が高く、環境に悪い影響を及ぼさない。
【0048】
原料となるコリアンダーは学名Coriandrum sativumであり、セリ科食用植物である。パクチ―やシャンツァイ(香菜)とも呼ばれ、食用の野菜や香辛料として流通している。特に、日本産のコリアンダーは新鮮で高い品質であることから好ましい。特に、有機JAS認定の有機コリアンダーは千葉県や茨城県で入手できる。用いる部位は葉の部分である。その他、果実や種子も利用できる。
【0049】
また、コリアンダーの代替として、ウツボグサ(学名PRUNELLA VULGARIS)、エゾムラサキ(学名MYOSOTIS SYLVATICA)、オオシマザクラ(学名PRUNUS SPECIOSA)、オドリコソウ(学名LAMIUM ALBUM)、オニユリ(学名LILIUM TIGRINUM)、カワラヨモギ(学名ARTEMISIA CAPILLARIS)、ゲンノショウコ(学名GERANIUM THUNBERGII)コブシ(学名MAGNOLIA KOBUS)、サトザクラ(学名PRUNUS LANNESIANA)、シマカンギク(学名CHRYSANTHEMUM INDICUM)、スイカズラ(学名LONICERA JAPONICA)、スミレ(学名VIOLA MANDSHURICA)ソメイヨシノ(学名PRUNUS YEDOENSIS)、ツバキ(学名CAMELLIA JAPONICA)、ハマナス(学名ROSA RUGOSA)サクラソウ(学名PRIMULA SIKKIMENSIS)、ヤマザクラ(学名PRUNUS SERRULATA)、サイカチ(学名GLEDITSIA JAPONICA)、ヒシ(学名TRAPA JAPONICA)、マルキンカン(学名CITRUS JAPONICA)、オウレン(学名COPTIS JAPONICA)、カガミグサ(学名AMPELOPSIS JAPONICA)、カナムグラ(学名HUMULUS JAPONICUS)、クサボケ(学名CHAENOMELES JAPONICA)、コウホネ(学名NUPHAR JAPONICUM)、ササユリ(学名LILIUM JAPONICUM)、ジャノヒゲ(学名OPHIOPOGON JAPONICUS)、シラカンバ(学名BETULA PLATYPHYLLA)、スギ(学名CRYPTOMERIA JAPONICA)、センブリ(学名SWERTIA JAPONICA)、ツメレンゲ(学名OROSTACHYS JAPONICA)、トチバニンジン(学名PANAX JAPONICUS)、ネズミモチ(学名LIGUSTRUM JAPONICUM)、ネナシカズラ(学名CUSCUTA JAPONICA)、ハンノキ(学名ALNUS JAPONICA)、ヒキオコシ(学名ISODONIS JAPONICUS)、ヒトリシズカ(学名CHLORANTHUS JAPONICUS)、ヒノキバヤドリギ(学名KORTHALSELLA JAPONICA)、フキ(学名PETASITES JAPONICUS)、ボタンボウフウ(学名PEUCEDANUM JAPONICUM)、マゴジャクシ(学名GANODERMA NEO-JAPONICUM)、ヤブジラミ(学名TORILIS JAPONICA)、ヤマノシモ(学名DIOSCOREA JAPONICA)、ワサビ(学名WASABIA JAPONICA)の全草、種子、菌糸体や子実体が用いられる。いずれも天然物であり、安全性が高い点から好ましい。
【0050】
コリアンダーは発酵の前に、株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH-40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD-7、VD-20、中山技術研究所製DM-6などの粉砕機で粉砕される。この粉砕により発酵の工程が効率的に進行しやすいことから好ましい。白金粉末は日本産が好ましい。浅野商店の白金粉末(白金消粉、0.3μm)は品質が高いことから好ましい。
【0051】
用いる乳酸桿菌は学名Lactobacillusの細菌であり、通常の発酵に利用される有用菌であり、真正類、ラクトバチルス科に属す。形状が桿状で、胞子を形成せずに、主として乳酸を発酵する。いくつかの亜種があるが、ラクトバチルス カゼイの発酵力が安定している。
【0052】
この乳酸桿菌は安全性が高く、使用経験が豊富である。特に、活性が高い東亜薬品工業株式会社製のLC菌末トーアカゼイ菌は好ましい。また、発酵の反応性が高く、使用しやすい点から好ましい。
【0053】
前記の発酵に関するそれぞれの添加量は、コリアンダー1重量に対し、白金粉末0.0001~0.001重量、乳酸桿菌0.001~0.08重量が好ましい。乳酸桿菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
【0054】
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
【0055】
また、この発酵は、35~41℃に加温され、発酵は2日間から10日間行われる。
【0056】
発酵後、95℃程度の加温により乳酸桿菌が死滅し、発酵が停止される。この発酵の工程によって目的とするウンベリフェロン誘導体が製造される。触媒として白金粉末は沈殿として回収される。
【0057】
前記の発酵により生成された発酵物は含水エタノールで抽出されることは、生成物を効率良く回収でき、次の工程が実施しやすいことから、好ましい。また、得られた発酵物を超音波破砕処理することは、生成物が分離しやすいことから、好ましい。また、凍結乾燥などにより、濃縮することは、以下の工程が短時間に実施できることから好ましい。
【0058】
前記の発酵物を分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
【0059】
例えば、分離用担体または樹脂により分離され、分取されることは好ましい。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン-ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1~300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
【0060】
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
【0061】
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
【0062】
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
【0063】
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
【0064】
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(HP-20型またはHP21型、三菱化学(株)社製)及びXAD-2またはXAD-4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH-20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA-410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
【0065】
これらのうち、ダイヤイオンHP-20型、セファデックスLH-20及びDM1020Tはさらに好ましい。
【0066】
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1~35倍量が好ましく、4~25倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4~30℃が好ましく、10~25℃がより好ましい。
【0067】
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
【0068】
セファデックスLH-20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
【0069】
ダイヤイオンHP-20型及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
【0070】
また、活性を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
【0071】
また、最終抽出を食用油や化粧料に用いる油脂で実施することは、得られる活性部分が油の中で安定に維持することから好ましい。例えば、大豆油、米ぬか油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油で抽出することは好ましい。
【0072】
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは一例であり、素材、原料や検体の違いに応じて常識の範囲内で条件を変更させることが可能である。
【実施例0073】
千葉県産の有機JASコリアンダーをJA千葉中央会(千葉市)より購入して用いた。この葉部分1kgをミキサー(二軸型破砕機NS、株式会社新居浜鐵工所製)により粉砕した。なお、コリアンダーの果実部分1kgを用いても製造することができる。しかし、果実は葉より高価であるため、葉部分の方が経済的である。
【0074】
このコリアンダーの粉砕物をオートクレーブ(トミー精巧製、SR-240)に入れて121℃で15分間滅菌した。
【0075】
これとは別に東亜薬品工業株式会社製のLC菌末トーア カゼイ菌(乳酸桿菌)を滅菌水に懸濁して35℃で1日間発酵させて前培養液とした。
【0076】
前記のコリアンダーの粉砕物1kgと浅野商店(東京都)から購入した白金粉末(白金消粉、0.3μm)0.1gを清浄な発酵タンクに添加した。さらに、ここに前記の乳酸桿菌前培養液を添加して37℃から39℃の発酵タンクで2日間発酵させた。発酵の程度は発酵液の粘性の低下を指標とした。発酵が進むほどコリアンダーの食物繊維が分解され、粘度が低下した。得られた発酵物を95℃で1時間滅菌させ、ろ紙によりろ過してろ液を得た。
【0077】
これをウンベリフェロン誘導体含有エキスとした。これを以下の精製をするまで冷暗所保管した。
【0078】
前述のウンベリフェロン誘導体含有エキス500gに5%エタノール含有精製水1Lを添加した。これを濾紙により濾過し、濾液を得た。次に、ダイヤイオンHP-20型(三菱化学製)200gを5%エタノール液に懸濁・充填したカラムに供した。
【0079】
これに5%エタノール液の3Lを添加して清浄し、さらに、15%エタノール液を2L添加して洗浄した。この後、70%エタノールを供して目的とするウンベリフェロン誘導体を溶出させた。精製されたウンベリフェロン誘導体を減圧蒸留により、エタノール部分を除去し、水溶液とした。この精製工程を4回繰り返した。4回目に得られた分画の水溶液を減圧乾燥後、乾燥させ、粉末とし、これを検体1とした。
【0080】
以下にウンベリフェロン誘導体の同定試験について説明する。
(試験例1)
【0081】
上記のように得られた実施例1のウンベリフェロン誘導体である検体1を核磁気共鳴装置(NMR、ブルカー製)で解析した。
【0082】
その結果、CD3OD中600MHzの1H-NMR解析により、1.77、2.21、2.49、2.67、2.84、3.18、4.31、5.56、5.76、5.99、6.38、8.07、8.27及び8.48ppmにピークが認められた。
【0083】
さらに、CD3OD中13C-NMRの解析により、19.8、28.0、28.4、43.1、50.8、74.3、90.1、101.6、104.0、107.8、111.4、132.7、133.3、134.3、137.7、160.2、165.3、167.8、170.4、172.8及び188.2ppmにピークが認められた。
【0084】
以下に、13C-NMRの解析結果のチャートを示した。(横軸単位はppm、縦軸単位はピーク強度を示す。)
【0085】
つまり、実施例1の検体1は有機化学的に合成し精製された標準品と同一の分析結果を示した。目的とするウンベリフェロン誘導体と同定された。すなわち、1分子のウンベリフェロン、1分子のイノシン及び1分子のプロリンを含有していた。
【0086】
これは式(1)で示す構造体と同一の構造であった。また、高速液体クロマトグラフィーにより単一ピークを示す目的とするウンベリフェロン誘導体が同定され、その純度は99.1%であった。
【0087】
以下に、皮膚表皮細胞増殖作用の確認試験について述べる。すなわち、ヒト皮膚表皮細胞を用いて7型コラーゲンの増加及び皮膚表皮細胞増殖作用の評価を実施した。なお、この試験方法は生化学的及び分子生物学的に有効成分の働きを検証できる再現性のある常法であり、試験成績も豊富であり、信頼性も高い方法である。
(試験例2)
【0088】
コスモバイオより購入したヒト皮膚表皮細胞(Zenbio製、ケラチノサイト、正常ヒト皮膚表皮細胞)を試験に用いた。培養液としては専用の培養液(Zenbio製)を購入して用いた。予め培養した1000個の細胞を35mm培養シャーレに播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。ここにAGEs(AGEs-BSA、メルク製)10μgを添加した。AGEsは表皮細胞を障害させ、コラーゲンなどを分解することにより皮膚に刺激を与える加齢物質として用いた。ここに、検体1の1mg/mLの溶液を培養液に溶解して添加した。溶媒対照として培養液のみを用いた。なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。
【0089】
これを48時間培養した。生細胞数をトリパンブルー色素法により顕微鏡下で計数した。さらに、細胞を0.05%トリプシン溶液にて剥離して遠心分離後、細胞部分をPBS溶液に懸濁した。この細胞懸濁液を超音波破砕して細胞破砕液を調製した。
【0090】
この細胞破砕液の7型コラーゲン量をMBL社製の7型コラーゲン定量キットにより定量した。
【0091】
さらに、細胞破砕液に含有されるATP量をATP定量キット(funakoshi製、BioVision製)により測定した。ここではATP量は比色法により定量される。測定範囲は1μMから1000μMであった。なお、実験は3回繰り返し、その平均値を算出した。
【0092】
その結果、いずれもAGEsの添加条件下、検体1の1mg/mLを添加した表皮細胞群の細胞数は溶媒対照群の値に比して平均値として239%に増加した。対照として用いたEGF(コスモバイオ製)添加群では188%の増加であり、検体1添加群の方が表皮細胞の増殖性に優れていた。また、検体1の1mg/mLを添加した表皮細胞群の細胞破砕液に含まれる7型コラーゲンは溶媒対照群の値に比して338%となり、7型コラーゲンの著しい増加が認められた。なお、EGF添加群の7型コラーゲンは溶媒対照群の値に比して110%であった。
【0093】
さらに、表皮細胞群の細胞破砕液に含まれるATP量は検体1の1mg/mLを添加した表皮細胞群では溶媒対照群に比して平均値として209%に増加していた。
【0094】
これらの結果から、検体1はヒト皮膚表皮細胞を増殖させ、かつ、7型コラーゲンを増加させ、さらに、ATP量を増加させると結論された。
【0095】
加えて、上記の表皮細胞に含有されるケラチン量をHuman keratin1 ELISAキット(AB CLONAL製)により定量した。その結果、検体1の1mg/mLを添加した表皮細胞群の細胞内0ケラチン量は溶媒対照群の値に比して平均値として193%に増加した。対照として用いたEGF添加群では溶媒対照群の値に比して169%の増加であり、検体1添加群の方が表皮細胞のケラチン産生に優れていた。
【0096】
一方、安全性試験の一環として人工皮膚であるEpiSkin(SkinEthic社製)を用いた皮膚刺激性実験では、検体1の添加により刺激性は認められず、安全性が確認された。なお、この刺激性試験法は細胞を用いる皮膚刺激性試験評価法として動物を使用しない代替法試験法として確立されている。
本発明で得られるウンベリフェロン誘導体は7型コラーゲンを増加させ、皮膚表皮細胞増殖作用を示し、かつ、副作用が少ないことから、国民のQOLを改善し、美容作用を介して健康な労働人口を増加させる。かつ、美容及び医療にかかる経費を削減できる経済的効果が期待される。