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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038525
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】回転電機のロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20220101AFI20220303BHJP
【FI】
H02K1/27 501H
H02K1/27 501E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143090
(22)【出願日】2020-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】門脇 渉
(72)【発明者】
【氏名】上辻 清
(72)【発明者】
【氏名】牧志 渉
(72)【発明者】
【氏名】浅井 満季
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智則
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 康
(72)【発明者】
【氏名】片桐 慶大
(72)【発明者】
【氏名】水野 峻史
(72)【発明者】
【氏名】清水 謙太
(72)【発明者】
【氏名】宮重 敬太
(72)【発明者】
【氏名】菊池 駿介
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA01
5H622CA07
5H622CB04
5H622PP11
5H622PP16
5H622PP18
(57)【要約】
【課題】強度を維持しながら、コストが高い部材の使用割合を減らして、低コスト化できる回転電機のロータの提供にある。
【解決手段】回転電機のロータ15は、第1筒部材16と、第1筒部材16の径方向に重ねられる第2筒部材17と、第1筒部材16の内側に設けられる磁性体と、第1筒部材16により保持される軸部材と、を備えている。第1筒部材16は、第2筒部材17が径方向に重ねられる筒本体部22と、軸部材を保持するとともに筒本体部22よりも径方向に肉厚とする肉厚部23と、を有し、第2筒部材17の軸方向の端部17Aの端面は、筒本体部22の外周面22Aと肉厚部23の外周面23Dとを接続する段差面23Aに当接する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の第1筒部材と、
前記第1筒部材の径方向に重ねられる第2筒部材と、
前記第1筒部材の内側に設けられる磁性体と、
前記第1筒部材により保持される軸部材と、を備えた回転電機のロータであって、
前記第1筒部材は、
前記第2筒部材が前記第1筒部材の径方向に重ねられる筒本体部と、
前記筒本体部から前記第1筒部材の軸方向に延在し、前記軸部材を保持するとともに前記筒本体部よりも前記第1筒部材の径方向に肉厚とする肉厚部と、を有し、
前記肉厚部は、前記筒本体部の外周面と前記肉厚部の外周面とを接続する段差面と、を有し、
前記第2筒部材の軸方向の端面は前記段差面に当接することを特徴とする回転電機のロータ。
【請求項2】
前記第2筒部材は、前記磁性体の径方向の外側で保持されることを特徴とする請求項1記載の回転電機のロータ。
【請求項3】
前記第1筒部材における前記肉厚部と反対側の端部と径方向に重ねられ保持される第3筒部材が備えられ、
前記第2筒部材における軸方向の一方の端部は前記段差面に当接し、
前記第2筒部材における軸方向の他方の端部は前記第3筒部材と当接することを特徴とする請求項1又は2記載の回転電機のロータ。
【請求項4】
前記軸部材は、
前記第1筒部材から前記軸部材の軸方向に突出する第1軸部と、
前記肉厚部に挿入され、前記第1軸部よりも外周径が小さい第2軸部と、を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の回転電機のロータ。
【請求項5】
前記第1筒部材は、前記第2筒部材よりも径方向の外側に位置し、
前記第1筒部材は、前記第2筒部材よりも被削性に優れている材料により形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の回転電機のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のロータに関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機のロータに関する従来技術としては、例えば、特許文献1に開示されているロータ構造を挙げることができる。特許文献1に開示されているロータは、円筒状の永久磁石と、永久磁石の外周に設けられる永久磁石飛散防止用の第1保護環と、第1保護環よりも熱伝導率及び導電率の高い第2保護環と、を備える。第2保護環は、永久磁石に渦電流損失が発生することを抑制することができる。第1保護環は、第2保護環に比べて強度が高いため、ロータが回転しているときに永久磁石が飛散するのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-283920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、第2筒部材(第1保護環)が第1筒部材(第2保護環)に比べて強度が高いため、第2筒部材の切削性が第1筒部材に比べて劣り、製造時のコストが割高となる。一方、製造コスト削減のために第2筒部材の材料を削減することも考えられるが、単に第2筒部材の材料を削減すると製造コストの削減はできるものの、ロータの強度を担保することができない。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、第1筒部材よりも加工が困難な第2筒部材の材料削減と、ロータの強度の維持を両立可能とする回転電機のロータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、円筒状の第1筒部材と、前記第1筒部材の径方向に重ねられる第2筒部材と、前記第1筒部材の内側に設けられる磁性体と、前記第1筒部材により保持される軸部材と、を備えた回転電機のロータであって、前記第1筒部材は、前記第2筒部材が前記第1筒部材の径方向に重ねられる筒本体部と、前記筒本体部から前記第1筒部材の軸方向に延在し、前記軸部材を保持するとともに前記筒本体部よりも前記第1筒部材の径方向に肉厚とする肉厚部と、を有し、前記肉厚部は、前記筒本体部の外周面と前記肉厚部の外周面とを接続する段差面と、を有し、前記第2筒部材の軸方向の端面は前記段差面に当接することを特徴とする回転電機のロータ。
【0007】
第1筒部材に肉厚部が設けられ、肉厚部の段差面に第2筒部材の軸方向の端部が当接する。このため、第2筒部材の軸方向の長さの短縮化を図ることでき、肉厚部によってロータの強度が担保される。したがって、ロータの強度を担保することができるとともに、第2筒部材の材料を削減できる。その結果、ロータの製造コストを低減することできる。
【0008】
また、上記の回転電機のロータにおいて、前記第2筒部材は、前記磁性体の径方向の外側で保持される構成としてもよい。この場合、回転中の磁性体が遠心力を受けて径方向の外側へ飛散しようとしても、磁性体の径方向の外側で保持される第2筒部材によって磁性体の飛散を防止できる。
【0009】
また、上記回転電機のロータにおいて、前記第1筒部材における前記肉厚部と反対側の端部と径方向に重ねられ保持される第3筒部材が備えられ、前記第2筒部材における軸方向の一方の端部は前記段差面に当接し、前記第2筒部材における軸方向の他方の端部は前記第3筒部材と当接する構成としてもよい。この場合、第1筒部材における肉厚部と反対側の端部には、第3筒部材が径方向に重ねられ保持される。
このため、第2筒部材が第1筒部材の肉厚部と第3筒部材の間に保持され、第2筒部材を所定の位置で固定することができる。また、第3筒部材が径方向に重ねられ保持されることで、第1筒部材の筒本体部の強度を補うことができる。
【0010】
また、上記回転電機のロータにおいて、前記軸部材は、前記第1筒部材から前記軸部材の軸方向に突出する第1軸部と、前記肉厚部に挿入され、前記第1軸部よりも外周径が小さい第2軸部と、を備える構成としてもよい。
この場合、肉厚部に挿入されている第2軸部の外周径を第1軸部の外周径よりも小さくするにつれて、肉厚部の径方向の厚みを変えることなく、肉厚部の外周径を小さくすることができる。その結果、肉厚部の強度を維持しつつ、肉厚部の外周径を小さくすることができる。
【0011】
前記第1筒部材は、前記第2筒部材よりも径方向の外側に位置し、前記第1筒部材は、前記第2筒部材よりも被削性に優れている材料により形成されている構成としてもよい。
この場合、第2筒部材は第1筒部材の内側に位置されている。切削加工が困難な第2筒部材が外側になく第1筒部材が切削加工対象となるため、全部材を組付けた後に、外周の切削加工が容易になる。その結果、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、第1筒部材よりも被削性が劣る第2筒部材の材料削減と、ロータの強度の維持を両立可能とする回転電機のロータの提供にある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る回転電機を示す縦断面図である。
図2】第1の実施形態に係る回転電機が有するロータの縦断面図である。
図3】第2の実施形態に係る回転電機が有するロータの縦断面図である。
図4】第3の実施形態に係る回転電機が有するロータの縦断面図である。
図5】第4の実施形態に係る回転電機が有するロータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る回転電機について図面を参照して説明する。図1に示すように、回転電機は、筒状のハウジング11内に収容されている。ハウジング11は、有底筒状の第1ハウジング部材12と、第1ハウジング部材12に連結される板状の第2ハウジング部材13と、を備えている。第1ハウジング部材12および第2ハウジング部材13は金属製であり、例えば、アルミニウム製である。
【0015】
第1ハウジング部材12は、板状の底壁12Aと、底壁12Aの外周部から筒状に延びる周壁12Bと、を有している。第2ハウジング部材13は、周壁12Bにおける底壁12Aとは反対側の開口を閉塞した状態で第1ハウジング部材12に連結されている。
【0016】
第1ハウジング部材12の底壁12Aの内面には、円筒状のボス部12Cが突出した状態で設けられている。また、第2ハウジング部材13の内面には、円筒状のボス部13Bが突出した状態で設けられている。両ボス部12C、13Bの軸線Pは一致している。ボス部12Cに設けた凹部には第2軸受25Bが備えられ、ボス部13Bに設けた凹部には第1軸受25Aが備えられており、第1軸受25A及び第2軸受25Bは、次に説明する回転電機のロータ15を回転可能に支持する。軸線Pはロータ15の回転中心を示す。
【0017】
回転電機は、ステータ14と、ロータ15と、を備えている。ステータ14は、第1ハウジング部材12の周壁12Bの内周面に固定される円筒状のステータコア14Aと、ステータコア14Aに巻回されるコイル14Bと、を有する。
【0018】
図2に示すように、ロータ15は、円筒状の第1筒部材16と、円筒状の第2筒部材17と、円筒状の第3筒部材18と、磁性体である円柱状の永久磁石19と、軸部材としての円柱状の第1軸部材20および第2軸部材21と、を備えている。ロータ15は、ハウジング11において、ステータ14の径方向内側に回転可能な状態で配置されている。
【0019】
第1筒部材16は、第2筒部材17の材料よりも被削性に優れているステンレス鋼により形成されており、筒状の筒本体部22と、第1筒部材16の中心を軸方向に貫通し、第1筒部材16の内周面16Bを形成する貫通孔24と、筒本体部22の一方の端部に連結された筒状の肉厚部23と、を有している。
【0020】
筒本体部22の外周面22Aは、軸方向において一定の外周径である。肉厚部23の外周面23Dは、軸方向において一定の外周径である。肉厚部23の外周径は、筒本体部22の外周径に比べて大きく、内周径は同じ大きさである。貫通孔24により形成される内周面16Bは軸方向において一定の内周径である。また、筒本体部22は、肉厚部23と同軸である。貫通孔24は、筒本体部22と肉厚部23の外周径と同軸である。貫通孔24には、円柱の永久磁石19が同軸となるように挿入されている。貫通孔24には、挿入された永久磁石19の一方の端部と突き合うように第1軸部材20が挿入されている。挿入された永久磁石19の他方の端部と突き合うように第2軸部材21が挿入されている。
【0021】
筒本体部22は、永久磁石19の径方向の外側で、ステータ14の内側に位置する。筒本体部22の軸方向の長さは、少なくともステータコア14Aの軸方向長さよりも大きい。肉厚部23は、第1軸部材20の径方向の外側にある。肉厚部23には、筒本体部22の外周面22Aと肉厚部23の外周面23Dとを接続する段差面23Aが形成される。段差面23Aは、軸線P方向と直交する面であって、肉厚部23の外周面23Dと筒本体部22の外周面22Aとを接続する周方向にわたって形成される環状の面である。肉厚部23は、段差面23Aとは反対側に端部23Bを有し、径方向内側に内周面23Cを有する。筒本体部22は、肉厚部23とは反対側の端部22Cを有する。
【0022】
第2筒部材17は、チタン合金の筒状部材で、内周面17Cと、外周面17Dと、を有する。内周面17Cは、軸方向において一定の内周径である。外周面17Dは、軸方向において一定の外周径である。外周面17Dの外周径は、肉厚部23の外周面23Dの外周径よりも小さい。第2筒部材17の軸方向の長さは、少なくともステータコア14Aの軸方向長さと等しい。第2筒部材17の厚みは、筒本体部22の厚みよりも薄くなっている。第2筒部材17は、筒本体部22と同軸となるように筒本体部22の径方向の外側に圧入される。また、第2筒部材17の内周面17Cは、筒本体部22の外周面22Aに当接して固定されている。第2筒部材17は、軸方向において肉厚部23側の端部17Aと、軸方向における端部17Aと反対側の端部17Bと、を有する。端部17Aの端面は、段差面23Aに当接する。第2筒部材17の材料は、第1筒部材16の材料に比べて強度が高く、切削加工や研削加工などが困難である。
【0023】
第3筒部材18は、ステンレス鋼の筒状部材で、内周面18Cと、外周面18Dと、を有している。内周面18Cは、軸方向において一定の内周径である。外周面18Dは、軸方向において一定の外周径である。外周面18Dの外周径は、肉厚部23の径方向の強度と一致させるように肉厚部23の外周面23Dの外周径と同じである。第3筒部材18の厚みは、第2筒部材17の厚みよりも厚くなっている。第3筒部材18は、筒本体部22と同軸となるように筒本体部22の径方向の外側に圧入される。また、第3筒部材18は、第2軸部材21の径方向の外側にあり、かつ内周面18Cが筒本体部22の外周面22Aに当接して固定されている。第3筒部材18の軸方向の端部は、第2筒部材17側の端部18Aと、反対側の端部18Bと、を有する。端部18Aは、第2筒部材の端部17Bに当接する。端部18Bは、筒本体部22の端部22Cの径方向外側に位置している。
【0024】
第2筒部材17は、ステータコア14Aの内側に位置している。第2筒部材17と筒本体部22を合わせた径方向の厚みは、肉厚部23の径方向の厚みよりも薄い。第3筒部材18と筒本体部22を合わせた径方向の厚みは、第2筒部材17と筒本体部22を合わせた径方向の厚みよりも厚い。
【0025】
永久磁石19は、円柱である。永久磁石19は、第1筒部材16の内側で同軸に配置され、第1筒部材16の内周面16Bに圧入されている。永久磁石19における軸線P方向の長さは、第1筒部材16における軸線P方向の長さよりも短い。永久磁石19は、貫通孔24に挿入されている状態では、軸方向において肉厚部23側の端部19Aと、第3筒部材18側の端部19Bと、を有する。
【0026】
第1軸部材20は、鉄系材料で、円柱である。第1軸部材20の一部は、肉厚部23の内側で同軸に配置され、貫通孔24に圧入されている。第1軸部材20は、両端部にそれぞれ端部20Aと、端部20Bと、を有する。端部20Aは、肉厚部23側から第1筒部材16の貫通孔24に挿入され、永久磁石19の端部19Aに当接する。端部20Aの軸方向における位置は、肉厚部23の外周面23Dと筒本体部22の外周面22Aとを接続する段差面23Aの軸方向における位置と同じである。第1軸部材20と永久磁石19は、外周径が等しく、同軸である。
【0027】
第1軸部材20は、ボス部13Bの内側を通過するとともに第2ハウジング部材13を貫通してハウジング11の外へ突出している。第1軸部材20は、第1軸受25Aを介してボス部13Bに支持されることにより、ハウジング11に回転可能な状態で支持されている。第1軸部材20は、端部20Aの反対側の端部20Bに、タービン26が取り付けられている(図1を参照)。タービン26は、第1軸部材20と一体回転可能である。よって、タービン26は、第1軸部材20の回転が駆動力として伝達されることにより駆動する。したがって、タービン26が取り付けられた第1軸部材20は、駆動力を出力する出力軸である。
【0028】
第2軸部材21は、鉄系材料で、円柱である。第2軸部材21の一部は、筒本体部22および第3筒部材18の内側で同軸に配置され、筒本体部22の貫通孔24に圧入されている。第2軸部材21は、両端部にそれぞれ端部21Aと、端部21Bと、を有する。端部21Aは、第3筒部材18側から第1筒部材16の貫通孔24に挿入され、永久磁石19の端部19Bに当接する。端部21Aの軸方向における位置は、第3筒部材18の端部18Aの軸方向における位置と同じである。第2軸部材21と永久磁石19は、外周径が等しく、同軸である。
【0029】
第2軸部材21の端部21Bは、ボス部12Cの内側に挿入されている。ボス部12Cの内周面と第2軸部材21の外周面との間には、第2軸受25Bが設けられている。そして、第2軸部材21は、第2軸受25Bを介してボス部12Cに支持されることにより、ハウジング11に回転可能な状態で支持されている。
【0030】
次に、本実施形態の作用について説明する。上記構成のロータ15において、図示しない駆動回路によって制御された電力がコイル14Bに供給されると、永久磁石19が回転しようとして、永久磁石19を介して第1筒部材16、第2筒部材17および第3筒部材18が永久磁石19と一体的に回転する。そして、第1筒部材16と、第1軸部材20との固定部分においてトルクが第1筒部材16から第1軸部材20に伝達されるとともに、第1筒部材16と第2軸部材21との固定部分においてトルクが第1筒部材16から第2軸部材21に伝達され、第1軸部材20及び第2軸部材21が一体的に回転する。このようにして、第1筒部材16、第2筒部材17、第3筒部材18、第1軸部材20、第2軸部材21、および永久磁石19が一体となって回転する。
【0031】
第1軸部材20は、肉厚部23によって固定され十分な強度を保っているため、ロータ15の回転中に第1筒部材16から脱落することがない。第2軸部材21は、筒本体部22と第3筒部材18によって固定され十分な強度を保っているため、ロータ15の回転中に第1筒部材16から脱落することがない。
【0032】
第2筒部材17は、筒本体部22の軸方向において肉厚部23と第3筒部材18の間に位置しているため、第2筒部材が第1筒部材の軸方向全長にわたって設けられる場合に比べて、軸方向に短縮化される。
【0033】
本実施形態によれば以下の作用効果を奏する。
(1)第1筒部材16に肉厚部23が設けられ、肉厚部23の外周面23Dと筒本体部22の外周面22Aとを接続する段差面23Aに第2筒部材17の軸方向の端部17Aが当接する。このため、第2筒部材17の軸方向の長さの短縮化を図ることでき、肉厚部23によってロータ15の強度が担保される。したがって、ロータ15の強度を担保することができるとともに、第2筒部材17の材料を削減できる。その結果、ロータ15の強度を担保しつつロータ15の製造コストを低減することができる。
【0034】
(2)第2筒部材17は、永久磁石19の径方向の外側で保持される。この場合、ロータ15の回転中に、永久磁石19が遠心力を受けて径方向の外側へ飛散しようとしても、永久磁石19の径方向の外側で保持される第2筒部材17によって永久磁石19の飛散を防止できる。
【0035】
(3)第1筒部材16における肉厚部23と反対側の端部には、第3筒部材18が第1筒部材16の径方向外側に重ねられ保持される。このため、第2筒部材17が第1筒部材16の肉厚部23と第3筒部材18の間に保持され、第2筒部材17を所定の位置で固定することができる。また、第3筒部材18が第1筒部材16の径方向外側に重ねられ保持されることで、筒本体部22の強度を補うことができる。また、第2筒部材17は軸方向において第1筒部材16の肉厚部23および第3筒部材18によって保持されるので、軸方向に位置ずれすることがない。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る回転電機について説明する。本実施形態は、ロータの第1筒部材および第1軸部材の構成が第1の実施形態とは異なる。第1の実施形態と共通する要素については第1の実施形態の説明を援用し、同じ符号を用いる。
【0037】
図3に示すように、ロータ30は、第1筒部材31と、第2筒部材17と、第3筒部材18と、磁性体である永久磁石19と、軸部材としての第1軸部材32および第2軸部材21と、を備えている。
【0038】
第1筒部材31は、筒状の筒本体部33と、筒本体部33の一方の端部に連結された筒状の肉厚部34と、第1筒部材31を同軸に貫通する貫通孔35と、を有する。筒本体部33は、第1の実施形態の筒本体部22と同様に、軸方向において一定の外周径の外周面33Aと、軸方向において一定の内周径の内周面33Bと、を有している。また、筒本体部33は、肉厚部34と同軸である。第1筒部材31を貫通する貫通孔35は、大径孔35Aと、大径孔35Aよりも孔径が小さい小径孔35Bと、を有している。貫通孔35の大径孔35Aは、筒本体部33の内周面33Bを形成する。筒本体部33は、肉厚部34側の端部と反対側に端部33Cを有している。
【0039】
肉厚部34の外周面34Aは、軸方向において一定の外周径であり、小径孔35Bにより形成される内周面34Bは軸方向において一定の内周径である。貫通孔35の小径孔35Bは、肉厚部34の内周面34Bを形成する。肉厚部34の外周径は、筒本体部33の外周径に比べて大きい。肉厚部34の内周径は、筒本体部33の内周径に比べて小さい。また、肉厚部34は、筒本体部33と同軸である。
【0040】
肉厚部34には、肉厚部34の外周面34Aと筒本体部33の外周面33Aとを接続する段差面34Cおよび肉厚部34の内周面34Bと筒本体部33の内周面33Bとを接続する段差面34Eが形成される。段差面34Cは、軸線P方向と直交する面であって、肉厚部34の外周面34Aと筒本体部33の外周面33Aとを接続する周方向にわたって形成される環状の面である。段差面34Eは、軸線P方向と直交する面であって、肉厚部34の内周面34Bと筒本体部33の内周面33Bとを接続する周方向にわたって形成される環状の面である。肉厚部34は、段差面34Cとは反対側に端部34Dを有する。
【0041】
第1軸部材32は、円柱状の第1軸部36と、第1軸部36よりも外周径が小さい円柱状の第2軸部37と、から構成される。第1軸部36は、第2軸部37と同軸で連結されている。第1軸部36には、第1軸部36の外周面と第2軸部37の外周面とを接続する段差面36Aが形成される。第2軸部37は、第1軸部36とは反対側の端部に端部37Aを有している。第1軸部材32は、端部37Aとは反対側の端部(図示せず)にタービン26(図示せず)が取り付けられている。
【0042】
段差面36Aは、肉厚部34の端部34Dの端面に当接している。第2軸部37は、永久磁石19と同軸となるように肉厚部34の内周面34Bに固定されている。第1軸部36は、第1軸受25Aを介してハウジング11に回転可能な状態で支持されている。永久磁石19の端部19Aの端面は、段差面34Eおよび第2軸部37の端部37Aに当接している。段差面34Cには、第2筒部材17の端部17Aの端面が当接している。
【0043】
段差面34Cの径方向の長さは、第1の実施形態における段差面23Aの径方向の長さよりも短い。つまり、肉厚部34の外周径は、第1の実施形態の肉厚部23の外周径よりも小さくなる。これにより、ステータ14の内側にロータ30を挿入する際に、肉厚部34がステータ14に接触することを抑制できるので、ステータ14と第2筒部材17とのエアギャップが小さくなる。その結果、エアギャップの磁界が強くなり、回転電機の出力を高めることができる。
【0044】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る回転電機について説明する。本実施形態は、ロータの第3筒部材の構成が、第1の実施形態とは異なる。第1の実施形態と共通する要素については第1の実施形態の説明を援用し、同じ符号を用いる。
【0045】
図4に示すように、本実施形態のロータ40は、第1筒部材16と、第2筒部材17と、第3筒部材41と、永久磁石19と、第1軸部材20および第2軸部材21と、を備えている。第3筒部材41は、環状の本体部42と、本体部42に連結された筒状の薄肉筒部43と、を有している。
【0046】
本体部42は、軸方向における端部42Aと、軸方向における端部42Bと、を有しているほか、外周面42Cを有している。また、本体部42は、第1筒部材16の筒本体部22を挿通可能とする通孔により形成される内周面42Dを有している。端部42Aは、薄肉筒部43の軸方向の端部43Aと連結されている。薄肉筒部43は、端部43Aの反対側の端部43Bを有するほか、外周面43Cと、内周面43Dと、を有している。薄肉筒部43の外周径は、本体部42の外周径よりも小さい。薄肉筒部43の内周径は、本体部42の内周径よりも大きく、第2筒部材17の外周径の大きさと等しい薄肉筒部43は、第2筒部材17と同軸となるように第2筒部材17の外周面17Dで固定される。端部43Bの端面は、肉厚部23の段差面23Aに当接する。
【0047】
本実施形態では、第2筒部材17の外周面17Dを第3筒部材41の薄肉筒部43が覆うように第2筒部材17に保持される。このため、第1の実施形態および第2の実施形態よりも筒本体部22の外側における強度を高めることができる。したがって、ロータ40の回転中に必要な強度を十分に担保することができることから、第1の実施形態および第2の実施形態よりも第2筒部材17の肉厚を薄くできる。これにより、コストが高い第2筒部材17の使用量を抑えることでロータ40の低コスト化を図ることができる。
【0048】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る回転電機について説明する。本実施形態は、ロータの第1筒部材、第3筒部材および第1軸部材の構成が、第1の実施形態とは異なる。第1の実施形態と共通する要素については第1の実施形態の説明を援用し、同じ符号を用いる。
【0049】
図5に示すように、本実施形態のロータ50は、第1筒部材51と、第2筒部材17と、第3筒部材52と、永久磁石19と、第1軸部材32および第2軸部材21と、を備えている。なお、第1軸部材32は第2の実施形態と同じ構成であるため符号を共通としている。
【0050】
本実施形態の第1筒部材51は、筒状の筒本体部53と、筒本体部53の一方の端部に連結された筒状の肉厚部54と、第1筒部材31を同軸に貫通する貫通孔55と、を有している。筒本体部53は、軸方向において一定の外周径の外周面53Aと、軸方向において一定の内周径の内周面53Bと、を有している。また、筒本体部53は、肉厚部54と同軸である。第1筒部材51を貫通する貫通孔55は、大径孔55Aと、大径孔55Aよりも孔径が小さい小径孔55Bと、を有している。貫通孔55の大径孔55Aは、筒本体部33の内周面53Bを形成する。筒本体部53は、肉厚部54側の端部と反対側に端部53Cを有している。
【0051】
筒本体部53の外周面53Aは、軸方向において一定の外周径であり、内周面53Bは軸方向において一定の内周径である。貫通孔55の小径孔55Bは、肉厚部34の内周面34Bを形成する。肉厚部54の外周面54Aは、軸方向において一定の外周径であり、肉厚部54の内周面54Bは軸方向において一定の内周径である。肉厚部54の外周径は、筒本体部53の外周径に比べて大きく、肉厚部54の内周径は筒本体部53の内周径に比べて小さい。また、肉厚部54は、筒本体部53と同軸である。
【0052】
肉厚部54には、肉厚部54の外周面54Aと筒本体部53の外周面53Aとを接続する段差面54Cおよび肉厚部54の内周面54Bと筒本体部53の内周面53Bとを接続する段差面54Eが形成される。段差面54Cは、軸線P方向と直交する面であって、肉厚部54の外周面54Aと筒本体部53の外周面53Aとを接続する周方向にわたって形成される環状の面である。段差面54Eは、軸線P方向と直交する面であって、肉厚部54の内周面54Bと筒本体部53の内周面53Bとを接続する周方向にわたって形成される環状の面である。肉厚部54は、段差面54Cとは反対側に端部54Dを有する。第2筒部材17は、筒本体部53の内周面53Bと永久磁石19との間に固定されている。
【0053】
第3筒部材52は、筒本体部53の外周面53Aに固定される外環部56と、筒本体部53の内周面53Bと第2軸部材21との間に固定される内環部57と、から構成される。外環部56は、肉厚部54側の端部56Aと、端部56Aの反対側の端部56Bと、内周面56Cと、外周面56Dと、を有する。内環部57は、肉厚部54側の端部57Aと、端部57Aの反対側の端部57Bと、径方向内側の内周面57C、外周面57Dと、を有する。
【0054】
第2筒部材17の端部17Aの端面は、段差面54Eに当接している。第2筒部材17の端部17Bは、内環部57の端部57Aに当接している。第2筒部材17の内周面17Cは、内環部57の内周面57Cと同径である。第3筒部材52における外環部56は、内環部57の外側における筒本体部53で固定されている。したがって、本実施形態のロータ15の外周面は、切削加工や研削加工が困難な第2筒部材17が外側に露出されず、第1筒部材51が加工対象となる。このため、第1~第3の実施形態に比べて全部材を圧入した後に、第1筒部材51、第1軸部材32および第2軸部材21が同軸となるように加工する同軸加工が優れている。これにより、製造コストを低減することができる。
【0055】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0056】
〇 上記の実施形態では、磁性体の両端部に軸部材の軸端部が当接するようにしたが、この限りではない。例えば、磁性体を円筒体とし、軸部材が磁性体と同軸上に挿入され、磁性体の両端から突出するように軸部材の両端部が延在するようにしてもよい。
〇 上記の実施形態では、第1筒部材における筒本体部の外周径は軸方向にわたって同一となるようにしたが、複数の溝部を形成してもよい。この場合、第1筒部材に発生する渦電流を抑制することができる。
〇 上記の実施形態では、第1筒部材、第2筒部材、第3筒部材および永久磁石等が同軸となるように配置されているが、この限りではない。例えば、同軸でなくても設計上の公差範囲にあるほぼ同軸であればよい。
〇 上記の実施形態では、第2筒部材の材料はチタン合金としたが、この限りではない。例えば、ニッケル合金や炭素繊維強化材としてもよい。
〇 上記の実施形態では、第1筒部材の材料はステンレス鋼としたが、この限りではない。例えば、銅やアルミニウム、ニッケル合金としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
15、30、40、50 ロータ
16、31、51 第1筒部材
17 第2筒部材
18、41、52 第3筒部材
19 永久磁石
20、32 第1軸部材
21 第2軸部材
22、33 筒本体部
23、34、54 肉厚部
23A、34C、54C 段差面
36 第1軸部
37 第2軸部
図1
図2
図3
図4
図5