(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038642
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】直話装置及び通話システム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20220303BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B3/00 S
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143250
(22)【出願日】2020-08-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】503135063
【氏名又は名称】日本昇降機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【識別番号】100175385
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(72)【発明者】
【氏名】岡本 成史
【テーマコード(参考)】
3F303
3F304
【Fターム(参考)】
3F303BA01
3F303EA02
3F303FA03
3F304ED17
3F304ED18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】インターホンを外部と通話可能に接続でき、インターホン用の各種データの更新を遠隔的に実行できる直話装置及び通話システムを提供する。
【解決手段】インターホンに接続される直話装置10は、起動信号に基づきインターホンと電話機21とを第1の通信回線N1を介して通話可能に接続し、管理用サーバコンピュータ24から第1の通信回線N1を介して受信したデータ信号に基づき第2の通信回線N2を介してクラウドサーバCにアップロードされた所定のデータをダウンロードする。電話機21との通話、管理用サーバコンピュータ24とのデータ通信、クラウドサーバからのデータダウンロードは独立した通信形態で行われるため、これらを同時並行して行うことができる。ダウンロードしたデータで記憶したデータを更新できるので動作プログラム等を最新の状態に維持できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかご内に設置されるインターホン及びこのインターホンを起動させる起動手段と電気的に接続されると共に、音声信号及びデータ信号による通信が可能な第1の通信回線に接続され、前記エレベータの駆動を制御する制御システムとは独立して設置される直話装置であって、
前記第1の通信回線を介して、前記インターホンと外部に設置された電話機とを通話可能に接続する機能及び外部に設置された管理用サーバコンピュータとの間でデータ通信を行う機能を有する通信手段と、
前記通信手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記起動手段から出力される起動信号に基づき、前記通信手段が前記インターホンと前記電話機とを通話可能に接続し、
前記管理用サーバコンピュータから送信される所定の指示情報を含むデータ信号に基づき、前記制御手段が予め定めた動作を行うように設定されている、
直話装置。
【請求項2】
前記通信手段は、インターネットに接続可能な第2の通信回線を介して、インターネット上に構築されたクラウドサーバと接続する機能を更に備え、
前記クラウドサーバからダウンロードしたデータを書き換え可能に記憶する機能を有する記憶手段を更に含み、
前記制御手段は、前記管理用サーバコンピュータから前記第1の通信回線を介して受信したデータ信号に含まれる所定の指示情報に基づき、前記第2の通信回線を介して前記クラウドサーバに接続し、前記クラウドサーバにアップロードされた所定のデータをダウンロードして前記記憶手段に記憶させるように設定されている、
請求項1記載の直話装置。
【請求項3】
前記クラウドサーバからダウンロードされるデータは、前記制御手段、前記通信手段、及び、前記記憶手段のうちの少なくとも1つの動作を制御するためのデータを含む、
請求項2記載の直話装置。
【請求項4】
前記第1の通信回線が電話回線であり、前記データ信号がSMS信号を含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載の直話装置。
【請求項5】
エレベータの乗りかご内に設置されるインターホン及びこのインターホンを起動させる起動手段と、
音声信号及びデータ信号による通信が可能な第1の通信回線と、
インターネットに接続可能な第2の通信回線と、
前記第1の通信回線に接続される電話機と、
前記第1の通信回線に接続される管理用サーバコンピュータと、
インターネット上に構築されるクラウドサーバと、
前記エレベータの駆動を制御する制御システムとは独立して設置され、前記インターホン及び前記起動手段と電気的に接続されると共に、前記第1の通信回線及び前記第2の通信回線に接続される直話装置とを含む通話システムであって、
前記直話装置は、前記起動手段から出力される起動信号に基づき前記インターホンと前記電話機とを前記第1の通信回線を介して通話可能に接続する機能、及び、前記管理用サーバコンピュータから前記第1の通信回線を介して受信した所定の指示情報を含むデータ信号に基づき前記第2の通信回線を介して前記クラウドサーバにアップロードされた所定のデータをダウンロードする機能を有している、
通話システム。
【請求項6】
前記第1の通信回線が電話回線であり、前記データ信号がSMS信号を含む、請求項5記載の通話システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの乗りかご内に設置されるインターホンと外部の管理センタ等の電話機とを通話可能に接続する直話装置及び通話システムに関し、詳しくは、エレベータの駆動を制御するシステムとは独立して設置され、直話装置の動作制御や通信のために必要なデータの更新を遠隔的に実行できるように構成された直話装置及び通話システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、複数のエレベータ制御装置と保守会社の監視センタとを通信回線で接続し、監視センタから各エレベータ制御装置の動作状態を遠隔的に監視することで、エレベータに異常が発生した場合に迅速な対応をとることができるエレベータ遠隔監視システムが記載されている。特許文献1のエレベータ遠隔監視システムは、エレベータの動作制御用データを保有するエレベータ制御装置とその更新用データを保有する遠隔監視センタとを、遠隔監視端末装置で通信回線を介し通信可能に接続する。そして、制御用データの更新用データが有る場合、遠隔監視端末装置が更新用データを遠隔監視センタの記憶手段から取得し、この取得した更新用データをエレベータ制御装置の記憶手段に反映させる。これにより、遠隔監視センタ側の負荷を低減しつつ、個々のエレベータの制御用データを最新の状態に更新することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベータの乗りかごには通常、非常時に管理センタ等の外部の人間と通話を行うことが可能なインターホンが設置されている。従ってインターホンで外部と通話するためには、インターホンの通話動作を制御するため通話制御装置、インターホンを外部と通話可能に接続するための通信回線、及び、インターホンによる通話対象となる電話機等を含む通話システムが、駆動系の遠隔監視システムに加えて必要である。一般に、駆動系の遠隔制御システムと通話系制御システムとで、制御装置、通信回線、及び監視センタを共用化している場合が多い。このため、エレベータの動作を遠隔制御しているときはインターホンによる通話が制限され、反対にインターホンで通話をしているときはエレベータの遠隔操作が制限されるという問題がある。
【0005】
又、通話システムにおいて、インターホンによる通話を制御するためのプログラムや設定データ等は更新が必要な場合があるが、特許文献1には、駆動系の制御データを更新することは記載されているが、通話用データを更新する手段については記載がない。
【0006】
本発明は、エレベータの駆動を制御するシステムとは独立して設置され、インターホンを外部と通話可能に接続することができると共に、インターホンの動作制御用のデータや通信処理のために必要なデータの更新を遠隔的に実行できる直話装置及び通話システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、エレベータの乗りかご内に設置されるインターホン及びこのインターホンを起動させる起動手段と電気的に接続されると共に、音声信号及びデータ信号による通信が可能な第1の通信回線に接続され、エレベータの駆動を制御する制御システムとは独立して設置される直話装置であって、第1の通信回線を介してインターホンと外部に設置された電話機とを通話可能に接続する機能及び外部に設置された管理用サーバコンピュータとの間でデータ通信を行う機能を有する通信手段と、通信手段の動作を制御する制御手段とを備え、起動手段から出力される起動信号に基づき通信手段がインターホンと電話機とを通話可能に接続し、管理用サーバコンピュータから送信される所定の指示情報を含むデータ信号に基づき制御手段が予め定めた動作を行うように設定されているものである。
【0008】
このように構成すると、非常ボタン等の起動手段が出力する起動信号により、直話装置が、乗りかご内のインターホンと外部の電話機とを通話可能に接続して、乗員と外部のオペレータとが会話可能となる。外部の管理用サーバコンピュータから送信されるデータ信号に含まれる指示情報に従い、直話装置は予め定められた動作を実行する。インターホンと電話との間の音声通信と、管理用サーバコンピュータとの間のデータ通信とは、互いに独立して行われる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、通信手段は、インターネットに接続可能な第2の通信回線を介して、インターネット上に構築されたクラウドサーバと接続する機能を更に備え、クラウドサーバからダウンロードしたデータを書き換え可能に記憶する機能を有する記憶手段を更に含み、制御手段は、管理用サーバコンピュータから第1の通信回線を介して受信したデータ信号に含まれる所定の指示情報に基づき第2の通信回線を介してクラウドサーバに接続し、クラウドサーバにアップロードされた所定のデータをダウンロードして記憶手段に記憶させるように設定されているものである。
【0010】
このように構成すると、直話装置は、管理用サーバコンピュータからデータ信号を受信すると、これに含まれる指示情報に基づき、クラウドサーバに接続して、クラウドサーバにアップロードされた所定のデータをダウンロードし、記憶手段がこのデータを記憶する。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成に加えて、クラウドサーバからダウンロードされるデータは、制御手段、通信手段、及び、記憶手段のうちの少なくとも1つの動作を制御するためのデータを含むものである。
【0012】
このように構成すると、制御手段、通信手段、及び、記憶手段のうちの少なくとも1つの動作を制御するためのデータを、クラウドサーバからダウンロードして記憶部に記憶する。具体的には、インターホンと電話機との通話を制御するプログラム、管理用サーバコンピュータとのデータ通信を制御するプログラム、及び、クラウドサーバからのデータのダウンロードを制御するプログラム、並びに、各プログラムを実行するのに必要な設定データをそれぞれ個別に、又は2つ以上を同時に、クラウドサーバからダウンロードして、記憶部に記憶する。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成に加えて、第1の通信回線が電話回線であり、データ信号がSMS信号を含むものである。
【0014】
このように構成すると、直話装置に予め定めた動作を行わせるための指示情報を含むデータ信号を、電話回線を利用して管理用サーバコンピュータから直話装置へSMS信号として送信する。
【0015】
請求項5記載の発明は、エレベータの乗りかご内に設置されるインターホン及びこのインターホンを起動させる起動手段と、音声信号及びデータ信号による通信が可能な第1の通信回線と、インターネットに接続可能な第2の通信回線と、第1の通信回線に接続される電話機と、第1の通信回線に接続される管理用サーバコンピュータと、インターネット上に構築されるクラウドサーバと、エレベータの駆動を制御する制御システムとは独立して設置され、インターホン及び起動手段と電気的に接続されると共に、第1の通信回線及び第2の通信回線に接続される直話装置とを含む通話システムであって、直話装置は、起動手段から出力される起動信号に基づきインターホンと電話機とを第1の通信回線を介して通話可能に接続する機能、及び、管理用サーバコンピュータから第1の通信回線を介して受信した所定の指示情報を含むデータ信号に基づき第2の通信回線を介してクラウドサーバにアップロードされた所定のデータをダウンロードする機能を有しているものである。
【0016】
このように構成すると、直話装置は、起動手段から出力される起動信号により、乗りかご内のインターホンと外部の電話機とを通話可能に接続して、乗員と外部のオペレータとを通話可能にする。直話装置は、管理用サーバコンピュータから所定の指示情報を含むデータ信号を受信すると、クラウドサーバから所定のデータをダウンロードする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の構成に加えて、第1の通信回線が電話回線であり、データ信号がSMS信号を含むものである。
【0018】
このように構成すると、直話装置は、管理用サーバコンピュータから電話回線を通じて受信したSMS信号に基づき、クラウドサーバから所定のデータをダウンロードする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、インターホンと外部の電話機との音声信号による通話と、管理用サーバコンピュータとの間のデータ通信とは独立しているから、これらを同時並行して実行することができる。従って、インターホンによる通話を遮断することなく、管理用サーバコンピュータから送信されるデータ信号の指示情報により直話装置の動作を遠隔制御することができる。又、直話装置はエレベータの駆動系制御システムから独立して設置されるので、直話装置の動作とエレベータの駆動系制御システムの動作とが互いに干渉し合うことがない。従って、エレベータの動作が遠隔操作されている時でも、インターホンによる通話や管理用サーバコンピュータとのデータ通信が可能である。直話装置は既存のエレベータシステムに付加することが可能なので、これにより、既存のエレベータに新たな通話機能を追加することができる。或いは、既存の通話装置を本件の直話装置に置き換えることで、より高度な通話サービスを提供することが可能となる。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、直話装置はクラウドサーバからデータをダウンロードするように設定されているので、データのダウンロードが管理用サーバコンピュータの負荷を増大させない。これにより、管理用サーバコンピュータが複数の直話装置を管理している場合でも、管理用サーバコンピュータの処理動作を円滑に保つのに有利である。直話装置とクラウドサーバとは第2の通信回線を介して接続されるから、クラウドサーバからのデータのダウンロード中でも、インターホンによる通話や、直話装置と管理用サーバコンピュータとのデータ通信を維持できる。直話装置はエレベータの駆動系制御システムと独立しているから、クラウドサーバからのデータのダウンロードが、エレベータの駆動制御に影響を及ぼすことがない。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、記憶部に記憶されているデータをダウンロードしたデータで更新することができるので、直話装置の動作に必要な各種データを最新の状態に維持することができる。
【0022】
請求項4記載の発明によれば、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、電話回線を利用するSMS通信は、電話番号で接続先を特定する。このため、原則的に1対1での通信となるから、他機器への影響が少ない。SMS通信の仕様に基づき、送信先において通知の有無を確認することなく直接通知がなされるから、管理用サーバコンピュータからの指示情報を直話装置へ確実に届けることができる。電話回線を利用するSMS通信は、インターネットを通じた通信と比較して到達率が高く、災害や障害等に強い。SMS通信は発信と着信との間のタイムラグが少ないので、データ伝達の即時性に優れる。
【0023】
請求項5記載の発明によれば、インターホンと電話機との通話、直話装置と管理用サーバコンピュータとの間のデータ通信、及び、クラウドサーバから直話装置へのデータのダウンロードは、それぞれ独立した通信形態で行われるから、これらを同時並行して行うことができる。直話装置とエレベータの駆動系制御システムとは独立して設置されるので、直話装置の動作がエレベータの駆動系制御システムに干渉することがない。これにより、エレベータの動作が遠隔操作されている時でも、インターホンによる通話、管理用サーバコンピュータとのデータ通信、クラウドサーバからのデータダウンロードが可能である。クラウドサーバからダウンロードしたデータで直話装置に予め記憶されているデータを書き換えることができるので、直話装置の動作プログラム等を最新の状態に維持することができる。
【0024】
請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の発明の効果に加えて、電話回線を利用するSMS通信は、電話番号で接続先を特定する。このため、原則的に1対1での通信となるから、他機器への影響が少ない。SMS通信の仕様に基づき、送信先において通知の有無を確認することなく直接通知がなされるから、管理用サーバコンピュータからの指示情報を直話装置へ確実に届けることができる。電話回線を利用するSMS通信は、インターネットを通じた通信と比較して到達率が高く、災害や障害等に強い。SMS通信は発信と着信との間のタイムラグが少ないので、データ伝達の即時性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施の形態による通話システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態による通話システムにおいて、インターホンによる通話開始時の動作状況を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態による通話システムにおいて、インターホンによる外部の電話機との通話状況を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態による通話システムにおいて、記憶部のデータ更新を開始する動作状況を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施の形態による通話システムにおいて、更新用データのダウンロード状況を示すブロック図である。
【
図6】本発明の実施の形態による通話システムにおいて、音声ガイダンスの開始を指令する状況を示すブロック図である。
【
図7】本発明の実施の形態による通話システムにおいて、インターホンを通じた音声ガイダンスを実行している状況を示すブロック図である。
【
図8】本発明の実施の形態による通話システムにおいて、インターホンと外部の電話機との通話を直話装置で録音している状況を示すブロック図である。
【
図9】本発明の実施の形態による通話システムにおいて、直話装置で録音した通話の音声データをクラウドサーバにアップロードする状況を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[全体構成]
図1は本発明の実施の形態による通話システムSの概略構成を示すブロック図である。
【0027】
本例の通話システムSは、エレベータの乗りかご30に設置されるインターホン32及びこのインターホン32を起動させる起動手段31と、音声信号及びデータ信号による通信が可能な第1の通信回線N1と、インターネットに接続可能な第2の通信回線N2と、第1の通信回線N1に接続される電話機21及び管理用サーバコンピュータ24と、インターネット上に構築されるクラウドサーバCと、インターホン32及び起動手段31と電気的に接続されると共に、第1の通信回線N1及び第2の通信回線N2に接続される直話装置10とを含む。
【0028】
(インターホン)
エレベータの乗りかご30内には、外部と通話するためのインターホン32とこれを起動させるための起動手段31とが設置される。インターホン32は、音声を収音するマイクロホン(以下、マイク34と略称する)及び音声を出力するスピーカ33を備える。インターホン32を起動させるための起動手段31は、例えば非常ボタンで構成される。インターホン32及び起動手段31は、直話装置10と信号線で電気的に接続され、非常ボタン等の起動手段31を操作して起動信号が直話装置10へ出力されると、インターホン32が通話可能に準備されるように構成される。例えば、非常ボタンを押すことによりインターホン32に通電が開始され、この通電開始を直話装置10が検知して、直話装置10との間で音声信号の送受信が開始されるよう構成するとよい。
【0029】
(第1の通信回線)
第1の通信回線N1は、電話回線が利用され、例えばLTE規格に従う通信回線(LTE回線)が使用される。第1の通信回線N1を介して直話装置10と接続される電話機21及び管理用サーバコンピュータ24は、通常、エレベータが設置されている建物の外部に設けられる通話管理センタ20内に配置される。管理用サーバコンピュータ24は、通信装置23と共に、サーバ装置22を構成する。直話装置10と電話機21との間は音声信号による通信が行われ、直話装置10と管理用サーバコンピュータ24との間はデータ信号による通信が行われる。本例では、直話装置10と管理用サーバコンピュータ24との間のデータ通信にSMS信号が利用される。
【0030】
(第2の通信回線)
第2の通信回線N2は、直話装置10をインターネットに接続するための通信回線である。第1の通信回線N1とは別個の回線を利用してもよいが、インターネットに接続するために利用されるISP(Internet Service Provider)までの経路は、第1の通信回線N1である電話回線を利用してもよい。
【0031】
(クラウドサーバ)
クラウドサーバCは、インターネット上に構築された仮想サーバであり、インターネットに接続可能な第2の通信回線N2を介して直話装置10と接続し、インターネットを経由して直話装置10との間でデータのアップロード及びダウンロードを含むデータ通信か可能なように構成されている。又、クラウドサーバCは、第2の通信回線N2を介して管理用サーバコンピュータ24とも接続できるように構成され、インターネットを経由して管理用サーバコンピュータ24との間でデータのアップロード及びダウンロードを含むデータ通信が可能となっている。尚、クラウドサーバCは一般に、複数のコンピュータからのアクセス対応を想定して構築されているため、クラウドサーバCを利用することでデータ通信の信頼性を向上させることができる。
【0032】
(直話装置)
直話装置10は、通信機能を実現するための通信手段14、通話機能を実現するための音声処理手段11、データを保存する機能を有する記憶手段16、及び、各手段の動作を制御するための制御手段15を含む。
【0033】
通信手段14は、第1の通信回線N1を介してインターホン32と電話機21とを通話可能に接続する機能、第1の通信回線N1を介して直話装置10と管理用サーバコンピュータ24とをデータ通信可能に接続する機能、及び、第2の通信回線N2を介して直話装置10とクラウドサーバCとをデータ通信可能に接続する機能を有する。本例では、第1の通信回線N1がLTE回線の場合、LTE通信モジュールを含む通信手段14が使用される。LTE規格に従うLTE通信モジュールは一般的に、電話通信、SMS通信、及びインターネット通信を無線で行う。従って、LTE通信を行う通信手段14を使用することで、直話装置10に備えられるインターフェースを簡素にできると共に、直話装置10の設置作業も簡単になる。
【0034】
音声処理手段11は、インターホン32における音声の入出力を実現するためのものであり、音声信号の種類を変換(DA/AD変換)する音声信号変換部12、音声信号のコーデック処理、周波数の調整、信号強度の調整等を行う信号調整部13等を含む。本例の音声処理手段11は、電話機21との間では、第1の通信回線N1(LTE回線)を通じて送信される音声信号をインターホン32のスピーカ33から音声として出力可能な音声信号に処理すると共に、収音時にインターホン32のマイク34から出力される音声信号を第1の通信回線N1を通じて伝送可能な信号に処理する機能を有する。又、制御手段15との間では、制御手段15から出力される音声信号をスピーカ33から音声として出力可能な信号に変換すると共に、収音時にマイク34から出力される音声信号を制御手段15が処理可能な信号に変換する機能を有する。このような音声処理手段11は、音声基板や音声信号変換器等により実現される。
【0035】
記憶手段16は、直話装置10の各種動作を制御するための各種設定データを書き換え可能に記憶する機能を有するものである。記憶手段16が記憶するデータは、具体的には、通信手段14、音声処理手段11、記憶手段16、及び制御手段15の各動作を制御するためのプログラムとそれらプログラムを実行する際に必要とされる各種設定データを含む。このような記憶手段16は、ハードディスク(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、USBメモリ、SDカード等で実現することができ、これらのうちから使用環境や必要容量に応じ、最適のものを選択して使用される。
【0036】
制御手段15は、記憶部に記憶されるプログラム等のデータに基づき、通信手段14、音声処理手段11、記憶手段16、及び、制御手段15自体の動作を制御して、予め定めた動作を実行させる機能を有する。このような制御手段15は、例えば、CPUやMPU等の演算部やRAM等の主記憶部を備える小型コンピュータで実現することができる。
【0037】
(管理人室等)
エレベータが設置されている建物内又はその近くに設けられる管理人室40や機械室等には通常、エレベータのインターホン(子機)32と通話可能に接続される親機インターホン41が設置される。親機インターホン41は、エレベータ内のインターホン(子機)32と、起動手段31(非常ボタン)を操作することにより通話できるよう構成される。そこで、直話装置10を親機インターホン41とも接続して、親機インターホン41、インターホン(子機)32、及び外部の電話機21の三者間で相互に通話できるよう構成してもよい。又、エレベータの乗りかご30が複数併設されている場合、親機インターホン41は、通話対象とするインターホン(子機)32を選択できる機能を有する。そこで、直話装置10を親機インターホン41と接続し、親機インターホン41が選択したインターホン(子機)32だけを外部の電話機21と通話可能に接続するよう構成してもよい。
【0038】
尚、インターホン32及び直話装置10の動作電力は、通常時は商用電源から供給されるが、停電時でもインターホン32による通話を可能にする必要がある。そのため、管理人室40等には、停電等の非常時に電力をインターホン32及び直話装置10へ供給するための独立電源42が備えられる。独立電源42としては、蓄電池やUPS(無停電電源装置)等が使用される。
【0039】
(駆動系制御システム)
エレベータが設置されている建物には、乗りかご30の昇降や扉の開閉動作を実行するためのエレベータ駆動装置51と、このエレベータ駆動装置51を制御するための駆動系制御装置52とを含む駆動系制御システム50が設けられている。この駆動系制御システム50は、駆動系通信回線53を介して駆動系管理センタ54と接続され、エレベータの動作を遠隔的に監視し、必要に応じて遠隔的に制御できるよう構成されている。本例の通話システムSは、この駆動系制御システム50とは独立して設けられており、それぞれの動作が互いに干渉することが無いよう構成されている。このため、駆動系制御システム50によりエレベータの遠隔操作が行われている最中でも、インターホン32と外部の電話機21との通話や直話装置10と管理用サーバコンピュータ24との間のデータ通信を実行することが可能となっている。但し、駆動系管理センタ54と通話管理センタ20との間で、それぞれが取得した情報を互いに共有化できるようにシステム構築するのが好ましい。
【0040】
以上のように構成された通話システムSの各種動作を以下に説明する。
【0041】
[通話機能]
図2は本発明の実施の形態による通話システムにおいて、インターホンによる通話開始時の動作状況を示すブロック図であり、
図3は本発明の実施の形態による通話システムにおいて、インターホンによる外部の電話機との通話状況を示すブロック図である。
【0042】
インターホン32は、故障や停電等によりエレベータの乗りかご30内に乗員が閉じ込められた時に使用されることが想定される。
【0043】
図2及び
図3を参照して、停電が生じたときには、UPS等の独立電源42からインターホン32及び直話装置10へ動作電力が供給される。非常ボタン等の起動手段31を操作すると、インターホン32に通電されると共に、起動手段31から直話装置10の制御手段15へ起動信号が出力される。起動手段31を受信した直話装置10は、制御手段15によって通話対象となる通話管理センタ20の電話機21の電話番号を記憶手段16から読み出し、通信手段14を制御して、第1の通信回線N1(LTE回線)を介し、読み出した電話番号へ架電する。その結果、架電した電話番号に該当する電話機21と通信手段14との間で回線接続が確立すると、第1の通信回線N1及び音声処理手段11を介して、インターホン32と電話機21との間で相互の通話が可能となる。
【0044】
又、必要に応じ、通話管理センタ20側から乗りかご30のインターホン32へ架電することも可能である。この場合、外部の電話機21から、通信手段14のLTE通信モジュールに割り当てられている電話番号に架電すると、通信手段14が着信を検知し電話機21との間で回線接続を確立する。その結果、インターホン32と電話機21との間での通話が可能となる。
【0045】
[データ更新機能]
図4は本発明の実施の形態による通話システムにおいて、記憶部のデータ更新を開始する動作状況を示すブロック図であり、
図5は本発明の実施の形態による通話システムにおいて、更新用データのダウンロード状況を示すブロック図である。
【0046】
直話装置10の記憶手段16には、直話装置10の各種機能を実現するための各種データが記憶されている。このデータは状況に応じ内容を書き換えたり新規のデータを追加したりする等の更新処理が必要となる場合がある。このような場合、本例の通話システムSは、以下のような手順で、記憶手段に記憶したデータを遠隔的に更新する。
【0047】
図4及び
図5を参照して、まず始めに、更新用のデータを予めクラウドサーバCにアップロードして準備しておく。これは例えば、第2の通信回線N2を介しインターネットに接続した管理用サーバコンピュータ24からクラウドサーバCへ、必要なデータをアップロードすればよい。或いは、他のコンピュータから更新用データのアップロードを行ってもよい。
【0048】
クラウドサーバCへの更新用データのアップロードが完了したならば、管理用サーバコンピュータ24から第1の通信回線N1を介して直話装置10へSMS信号を送信する。SMS信号に含まれる情報(電文内容)としては、データのダウンロードの実行命令、ダウンロードするデータの種別、接続先のクラウドサーバCを特定する情報(IPアドレス等)等が含まれる。直話装置10は、通信手段14で受信したSMS信号を制御手段15へ伝送し、制御手段15はSMS信号に含まれる情報(電文内容)に基づき、通信手段14を制御して、第2の通信回線N2及びインターネットを介し、指定されたクラウドサーバCと接続する。そして、クラウドサーバCから、SMS信号により指定されたデータをダウンロードして、記憶手段16に記憶されているデータの書き換えや新規データの追加等の更新処理を実行する。
【0049】
直話装置10の記憶手段16に記憶されるデータは例えば以下のようなものが挙げられる。
1)通信手段における外部の電話機との間での発信・着信を制御するためのプログラム
2)架電対象となる発信先の電話機の電話番号
3)通信手段における外部の管理用サーバコンピュータとの間でのデータ通信(SMS通信)を制御するためのプログラム
4)管理用サーバコンピュータに割り当てられた電話番号
5)クラウドサーバとの間でデータのアップロード・ダウンロードを制御するためのプログラム
6)クラウドサーバのIPアドレス
7)音声処理手段の動作を制御するプログラム
8)音声信号のDA/AD変換、周波数調整、コーデック処理、信号増幅等に関する設定用データ
9)インターホンのスピーカへ出力される音声データ
10)記憶手段に対するデータの入出力を制御するプログラム
11)記憶手段に記憶されたデータの更新を実行するためのプログラム
本例の通信システムは、データ更新の指令にSMSを利用することにより、次のような利点を有する。電話回線を利用するSMS通信は、電話番号で接続先を特定するため、原則的に1対1での通信となるから他機器への影響が少ない。送信先において通知の有無を確認することなく直接通知がなされるから、管理用サーバコンピュータからの指示情報を直話装置へ確実に届けることができる。電話回線を利用する通信は、インターネットを通じた通信と比較して到達率が高く、災害や障害等に強い。SMS通信は発信と着信との間のタイムラグが少ないので、データ伝達の即時性に優れる。直話装置側と管理用サーバコンピュータ側とで加入している通信業者が同一又は特定関係にある場合、SMSの通信料金が低額又は無料となることが有り、通信コストを削減できる可能性が有る。
【0050】
又、データのダウンロード先としてクラウドサーバを利用することにより、次のような利点を有する。クラウドサーバからデータをダウンロードするように設定されているので、データのダウンロードが管理用サーバコンピュータの負荷を増大させない。又、データのダウンロード中でも、管理用サーバコンピュータに他の処理を実行させることができる。これにより、管理用サーバコンピュータが複数の直話装置を管理している場合でも、管理用サーバコンピュータの処理動作を円滑に保つのに有利である。
【0051】
更に本例の通話システムによれば、インターホンと電話機との通話、直話装置と管理用サーバコンピュータとの間のデータ通信、及び、クラウドサーバから直話装置へのデータのダウンロードがそれぞれ独立した異なる通信形態で行われるから、これらを同時並行して行うことができる。直話装置とエレベータの駆動系制御システムとは独立して設置されるので、直話装置の動作がエレベータの駆動系制御システムに干渉することがない。これにより、エレベータの動作が遠隔操作されている時でも、インターホンによる通話、管理用サーバコンピュータとのデータ通信、クラウドサーバからのデータダウンロードが可能である。
【0052】
[音声ガイダンス機能]
図6は本発明の実施の形態による通話システムにおいて、音声ガイダンスの開始を指令する状況を示すブロック図であり、
図7は本発明の実施の形態による通話システムにおいて、インターホンを通じた音声ガイダンスを実行している状況を示すブロック図である。
【0053】
本例の通話システムSは、必要に応じ、記憶手段16に記憶された音声データをインターホン32のスピーカ33から音声として再生し、乗りかご30内の乗員に音声ガイダンスを行う機能を有している。
【0054】
図6及び
図7を参照して、例えば停電時等、乗りかご30の乗員に対し音声ガイダンスを行う必要があると通話管理センタ20のオペレータが状況判断すると、管理用サーバコンピュータ24から直話装置10に対し、音声ガイダンスの実行を指令する情報を含むSMS信号を、第1の通信回線N1を介して送信する。このSMS信号に含まれる情報(電文内容)としては、音声データの再生命令、再生する音声データを特定する情報、音声ガイダンスを行うインターホンを特定する情報、再生音量、再生回数、再生間隔等である。又、通話管理センタ20のオペレータが、音声メッセージとして再生する文言を含むSMS信号を作成してもよい。通信手段14によってSMS信号を受信した直話装置10は、制御手段15がSMS信号で指定された音声データを記憶手段16から読み出し、これを音声処理手段11を通じてインターホン32のスピーカ33へ出力する。又は、SMS信号に再生用の文言が含まれる場合、制御手段15でこれを読み出し、音声信号に変換してスピーカ33へ出力するようにしてもよい。その結果、乗りかご30内に音声ガイダンスが実行される。
【0055】
記憶手段16には、複数種類の音声データが記憶され、それらのうちから状況に応じ音声ガイダンスするのに最適な音声データが選択されて再生される。音声ガイダンスされるメッセージとしては、閉じ込め事故が発生したときに乗りかご30の乗員に対し対応状況を知らせるもの(例「ただ今、作業員が救出に向かっております。」)、通話中に通話している現場の位置を確認するためのもの(例「このエレベータの管理番号はxxxxx、〇〇〇〇ビルです。」)、エレベータの点検中であることを知らせるもの(例「現在、点検中です。」)等が挙げられる。
【0056】
本例の通話システムSによれば、記憶手段に記憶させる音声データを複数種類用意することにより、状況に応じた異なる音声ガイダンス実行できる。記憶手段に記憶させた音声データをインターホンのスピーカで再生するから、管理用サーバコンピュータから直話装置へ出力するSMS信号に含ませる指示情報の内容を単純化することができ、指示から再生までを迅速化できる。SMS通信は電話通信と同時に行うことが可能なので、インターホンと電話機との間の通話を遮断することなく、音声ガイダンスの実行を指示することが可能である。尚、記憶手段に記憶される音声データは、前述のデータ更新機能を利用して、修正したり追加したりすることが可能である。
【0057】
[録音機能]
図8は本発明の実施の形態による通話システムにおいて、インターホンと外部の電話機との通話を直話装置で録音している状況を示すブロック図であり、
図9は本発明の実施の形態による通話システムにおいて、直話装置で録音した通話の音声データをクラウドサーバにアップロードする状況を示すブロック図である。
【0058】
本例の通話システムSは、インターホン32と外部の電話機21との通話を録音する機能を有している。
【0059】
図8を参照して、インターホン32と電話機21との間で通話が開始されたとき、乗員等がマイク34に向かって発話した音声は、マイク34がこれを音声信号に変換する。制御手段15は、この音声信号を音声処理手段11の音声信号変換部12を通じて取得する。他方、電話機21を通じてオペレータが発話することでスピーカ33から出力される音声については、インターホン32内又は乗りかご30内で跳ね返った反響音をマイク34が収音して音声信号に変換し、これを音声処理手段11を通じて制御手段15へ出力する。このようにしてマイク34に入力された音声及びスピーカ33から出力された音声は、制御手段15によって、例えば乗りかご30又はインターホン32を特定するための管理番号等の情報と録音日時情報(録音開始日時及び録音終了日時のいずれか一方又は両方を含む情報)とを付与した音声データとして記憶手段16に保存される。
【0060】
図9を参照して、本例の通話システムSでは、記憶手段16に保存された録音データを管理用サーバコンピュータ24に取り込んで、管理することが可能となっている。管理用サーバコンピュータ24から直話装置10へSMS信号で指示されることにより、又は、制御手段15による録音処理が終了したことに基づき、制御手段15が通信手段14を制御して、第2の通信回線N2を介しクラウドサーバCに接続する。そして制御手段15は、記憶手段16に記憶されている録音データをクラウドサーバCにアップロードする。データのアップロードが完了したならば、制御手段15から管理用サーバコンピュータ24へ、SMS信号によって、録音データのクラウドサーバCへのアップロード完了通知、及びアップロードした録音データの情報等を伝達する。管理用サーバコンピュータ24は、このSMS信号を受信すると、これに含まれる情報に基づき、第2の通信回線N2を介してクラウドサーバCに接続し、指定された録音データをダウンロードする。管理用サーバコンピュータ24では、ダウンロードした録音データに、管理番号、録音日時、録音状況種別(故障時、停電時、修繕時、点検時等の区別)、通話担当者等の情報を紐づけてデータベースに保存する、このようにすれば、データベースの多数の録音データを、管理番号や録音日時等の特定の項目で篩い分けて管理したり通話内容の分析を行ったりすることで、エレベータの通話サービスの品質向上に役立てることが容易となる。
【0061】
[その他の実施の形態]
上記の実施の形態において、起動手段は操作ボタンの操作により起動信号を出力するように構成されているが、停電が生じると自動的に起動信号を出力するように構成してもよく、或いは、マイクに入力される音声の音量を常時監視して、音量が一定値を超えると自動的に起動信号が出力されて、外部の電話機との通話が可能になるよう構成してもよい。
【0062】
又、インターホンで通話可能な外部の電話機は、通話管理センタに設置される電話機のほか、LTE回線を通じて通話可能な携帯電話機としてもよい。
【0063】
直話装置は、既存のエレベータを有する建物の管理人室や機械室等に後から追加して設置してもよく、建設当初から組み込んだ設計としてもよい。
【0064】
第1の通信回線は、LTE規格以外の他の通信規格により電話通信及びデータ通信をするものでもよい。この場合、直話装置と第1の通信回線とを、モジュラーケーブル等を用いる有線接続としてもよい。
【0065】
第2の通信回線は、第1の通信回線を利用せず、Wi-fi等の異なる規格でインターネットに接続するものとしてもよい。更には、直話装置と第2の通信回線とを、LANケーブル等を用いる有線接続としてもよい。
【0066】
音声処理手段の音声変換部と音声信号調整部とは、1つの基板上に実装されるものでもよく、別体の装置で構成してもよい。
【0067】
直話装置との間でデータのアップロード・ダウンロードを行うサーバコンピュータは、クラウドサーバ以外に、専用のデータベースサーバを使用してもよい。
【符号の説明】
【0068】
S…通話システム
C…クラウドサーバ
10…直話装置
11…音声処理手段
12…音声信号変換部
13…信号調整部
14…通信手段
15…制御手段
16…記憶手段
20…通話管理センタ
21…電話機
22…サーバ装置
23…通信装置
24…管理用サーバコンピュータ
30…乗りかご
31…起動手段
32…インターホン(子機)
33…スピーカ
34…マイク
40…管理人室
41…親機インターホン
42…独立電源
50…駆動系制御システム
51…エレベータ駆動装置
52…駆動系制御装置
53…駆動系通信回線
54…駆動系管理センタ
N1…第1の通信回線
N2…第2の通信回線
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
【手続補正書】
【提出日】2020-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、エレベータの乗りかご内に設置されるインターホン及びこのインターホンを起動させる起動手段と電気的に接続されると共に、音声信号及びデータ信号による通信が可能な第1の通信回線に接続され、エレベータの駆動を制御する制御システムとは独立して設置される直話装置であって、第1の通信回線を介してインターホンと外部に設置された電話機とを通話可能に接続する機能及び外部に設置された管理用サーバコンピュータとの間でデータ通信を行う機能を有する通信手段と、通信手段の動作を制御する制御手段とを備え、起動手段から出力される起動信号に基づき通信手段がインターホンと電話機とを通話可能に接続し、管理用サーバコンピュータから送信される所定の指示情報を含むデータ信号に基づき制御手段が予め定めた動作を行うように設定されているものである。
詳しくは、通信手段が、インターネットに接続可能な第2の通信回線を介して、インターネット上に構築されたクラウドサーバと接続する機能を更に備え、クラウドサーバからダウンロードしたデータを書き換え可能に記憶する機能を有する記憶手段を更に含み、制御手段は、管理用サーバコンピュータから第1の通信回線を介して受信したデータ信号に含まれる所定の指示情報に基づき第2の通信回線を介してクラウドサーバに接続し、クラウドサーバにアップロードされた所定のデータをダウンロードして記憶手段に記憶させるように設定されているものである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
このように構成すると、非常ボタン等の起動手段が出力する起動信号により、直話装置が、乗りかご内のインターホンと外部の電話機とを通話可能に接続して、乗員と外部のオペレータとが会話可能となる。外部の管理用サーバコンピュータから送信されるデータ信号に含まれる指示情報に従い、直話装置は予め定められた動作を実行する。詳しくは、直話装置は、管理用サーバコンピュータからデータ信号を受信すると、これに含まれる指示情報に基づき、クラウドサーバに接続して、クラウドサーバにアップロードされた所定のデータをダウンロードし、記憶手段がこのデータを記憶する。インターホンと電話との間の音声通信と、管理用サーバコンピュータとの間のデータ通信とは、互いに独立して行われる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、クラウドサーバからダウンロードされるデータは、制御手段、通信手段、及び、記憶手段のうちの少なくとも1つの動作を制御するためのデータを含むものである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明の構成に加えて、第1の通信回線が電話回線であり、データ信号がSMS信号を含むものである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
請求項4記載の発明は、エレベータの乗りかご内に設置されるインターホン及びこのインターホンを起動させる起動手段と、音声信号及びデータ信号による通信が可能な第1の通信回線と、インターネットに接続可能な第2の通信回線と、第1の通信回線に接続される電話機と、第1の通信回線に接続される管理用サーバコンピュータと、インターネット上に構築されるクラウドサーバと、エレベータの駆動を制御する制御システムとは独立して設置され、インターホン及び起動手段と電気的に接続されると共に第1の通信回線及び第2の通信回線に接続される直話装置とを含む通話システムであって、直話装置は、起動手段から出力される起動信号に基づきインターホンと電話機とを第1の通信回線を介して通話可能に接続する機能、及び、管理用サーバコンピュータから第1の通信回線を介して受信した所定の指示情報を含むデータ信号に基づき第2の通信回線を介してクラウドサーバにアップロードされた所定のデータをダウンロードする機能を有しているものである。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の構成に加えて、第1の通信回線が電話回線であり、データ信号がSMS信号を含むものである。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
又、直話装置はクラウドサーバからデータをダウンロードするように設定されているので、データのダウンロードが管理用サーバコンピュータの負荷を増大させない。これにより、管理用サーバコンピュータが複数の直話装置を管理している場合でも、管理用サーバコンピュータの処理動作を円滑に保つのに有利である。直話装置とクラウドサーバとは第2の通信回線を介して接続されるから、クラウドサーバからのデータのダウンロード中でも、インターホンによる通話や、直話装置と管理用サーバコンピュータとのデータ通信を維持できる。直話装置はエレベータの駆動系制御システムと独立しているから、クラウドサーバからのデータのダウンロードが、エレベータの駆動制御に影響を及ぼすことがない。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、記憶部に記憶されているデータをダウンロードしたデータで更新することができるので、直話装置の動作に必要な各種データを最新の状態に維持することができる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加えて、電話回線を利用するSMS通信は、電話番号で接続先を特定する。このため、原則的に1対1での通信となるから、他機器への影響が少ない。SMS通信の仕様に基づき、送信先において通知の有無を確認することなく直接通知がなされるから、管理用サーバコンピュータからの指示情報を直話装置へ確実に届けることができる。電話回線を利用するSMS通信は、インターネットを通じた通信と比較して到達率が高く、災害や障害等に強い。SMS通信は発信と着信との間のタイムラグが少ないので、データ伝達の即時性に優れる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
請求項4記載の発明によれば、インターホンと電話機との通話、直話装置と管理用サーバコンピュータとの間のデータ通信、及び、クラウドサーバから直話装置へのデータのダウンロードは、それぞれ独立した通信形態で行われるから、これらを同時並行して行うことができる。直話装置とエレベータの駆動系制御システムとは独立して設置されるので、直話装置の動作がエレベータの駆動系制御システムに干渉することがない。これにより、エレベータの動作が遠隔操作されている時でも、インターホンによる通話、管理用サーバコンピュータとのデータ通信、クラウドサーバからのデータダウンロードが可能である。クラウドサーバからダウンロードしたデータで直話装置に予め記憶されているデータを書き換えることができるので、直話装置の動作プログラム等を最新の状態に維持することができる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明の効果に加えて、電話回線を利用するSMS通信は、電話番号で接続先を特定する。このため、原則的に1対1での通信となるから、他機器への影響が少ない。SMS通信の仕様に基づき、送信先において通知の有無を確認することなく直接通知がなされるから、管理用サーバコンピュータからの指示情報を直話装置へ確実に届けることができる。電話回線を利用するSMS通信は、インターネットを通じた通信と比較して到達率が高く、災害や障害等に強い。SMS通信は発信と着信との間のタイムラグが少ないので、データ伝達の即時性に優れる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかご内に設置されるインターホン及びこのインターホンを起動させる起動手段と電気的に接続されると共に、音声信号及びデータ信号による通信が可能な第1の通信回線に接続され、前記エレベータの駆動を制御する制御システムとは独立して設置される直話装置であって、
前記第1の通信回線を介して前記インターホンと外部に設置された電話機とを通話可能に接続する機能、前記第1の通信回線を介して外部に設置された管理用サーバコンピュータとの間でデータ通信を行う機能、及びインターネットに接続可能な第2の通信回線を介して、インターネット上に構築されたクラウドサーバと接続する機能を有する通信手段と、
前記通信手段の動作を制御する制御手段と、
前記クラウドサーバからダウンロードしたデータを書き換え可能に記憶する機能を有する記憶手段とを備え、
前記起動手段から出力される起動信号に基づき、前記通信手段が前記インターホンと前記電話機とを通話可能に接続し、
前記制御手段は、前記管理用サーバコンピュータから前記第1の通信回線を介して受信したデータ信号に含まれる所定の指示情報に基づき、前記第2の通信回線を介して前記クラウドサーバに接続し、前記クラウドサーバにアップロードされた所定のデータをダウンロードして前記記憶手段に記憶させるように設定されている、
直話装置。
【請求項2】
前記クラウドサーバからダウンロードされるデータは、前記制御手段、前記通信手段、及び、前記記憶手段のうちの少なくとも1つの動作を制御するためのデータを含む、請求項1記載の直話装置。
【請求項3】
前記第1の通信回線が電話回線であり、前記データ信号がSMS信号を含む、請求項1又は請求項2に記載の直話装置。
【請求項4】
エレベータの乗りかご内に設置されるインターホン及びこのインターホンを起動させる起動手段と、
音声信号及びデータ信号による通信が可能な第1の通信回線と、
インターネットに接続可能な第2の通信回線と、
前記第1の通信回線に接続される電話機と、
前記第1の通信回線に接続される管理用サーバコンピュータと、
インターネット上に構築されるクラウドサーバと、
前記エレベータの駆動を制御する制御システムとは独立して設置され、前記インターホン及び前記起動手段と電気的に接続されると共に、前記第1の通信回線及び前記第2の通信回線に接続される直話装置とを含む通話システムであって、
前記直話装置は、前記起動手段から出力される起動信号に基づき前記インターホンと前記電話機とを前記第1の通信回線を介して通話可能に接続する機能、及び、前記管理用サーバコンピュータから前記第1の通信回線を介して受信した所定の指示情報を含むデータ信号に基づき前記第2の通信回線を介して前記クラウドサーバにアップロードされた所定のデータをダウンロードする機能を有している、
通話システム。
【請求項5】
前記第1の通信回線が電話回線であり、前記データ信号がSMS信号を含む、請求項4記載の通話システム。