IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイシン化工株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-加熱調理用容器の蓋体 図1
  • 特開-加熱調理用容器の蓋体 図2
  • 特開-加熱調理用容器の蓋体 図3
  • 特開-加熱調理用容器の蓋体 図4
  • 特開-加熱調理用容器の蓋体 図5
  • 特開-加熱調理用容器の蓋体 図6
  • 特開-加熱調理用容器の蓋体 図7
  • 特開-加熱調理用容器の蓋体 図8
  • 特開-加熱調理用容器の蓋体 図9
  • 特開-加熱調理用容器の蓋体 図10
  • 特開-加熱調理用容器の蓋体 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038667
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】加熱調理用容器の蓋体
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143281
(22)【出願日】2020-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】599031249
【氏名又は名称】ダイシン化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】真柴 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】荒木 務
(72)【発明者】
【氏名】上田 銘華
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013AA10
3E013BA02
3E013BB06
3E013BB08
3E013BC04
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF02
3E013BF29
3E013BF33
3E013CC04
(57)【要約】
【課題】加熱調理される容器のオレフィン系樹脂シートから構成される蓋体において、レーザ加工によって孔を形成した場合に白色粉が付着した場合でも、蓋体の商品価値が損なわれないようにする。
【解決手段】本発明に係る加熱調理用容器の蓋体は、オレフィン系樹脂シートから構成され、加熱調理時に前記容器内で発生する蒸気を容器外に排出する、レーザ加工で形成された通気孔4を有し、少なくとも前記の通気孔4の周囲に光を散乱させる光散乱部3aが形成されている。ここで光散乱部3aは、蓋体の表面及び/又は裏面に形成された複数個の点状凹部31から構成されているのが好ましい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理される容器の蓋体であって、
オレフィン系樹脂シートから構成され、
加熱調理時に前記容器内で発生する蒸気を容器外に排出する、レーザ加工で形成された通気孔又は通気弁を有し、
少なくとも前記の通気孔又は通気弁の周囲に光を散乱させる光散乱部が形成されている
ことを特徴とする加熱調理用容器の蓋体。
【請求項2】
前記光散乱部が、蓋体の表面及び/又は裏面に形成された複数個の凹部及び/又は凸部から構成されている請求項1に記載の加熱調理用容器の蓋体。
【請求項3】
前記凹部及び/又は前記凸部が、点状又は線状である請求項2に記載の加熱調理用容器の蓋体。
【請求項4】
前記凹部がレーザ加工で形成されたものである請求項2又は3に記載の加熱調理用容器の蓋体。
【請求項5】
前記凹及び/又は凸部が金型加工により形成されたものである請求項2又は3に記載の加熱調理用容器の蓋体。
【請求項6】
加熱調理される容器の蓋体の製造方法であって、
オレフィン系樹脂シートを金型加工によって蓋体前駆体を成型する工程と、
成型された前記蓋体前駆体にレーザ加工によって、加熱調理時に前記容器内で発生する蒸気を容器外に排出する通気孔又は通気弁を形成する工程と、
前記蓋体前駆体の少なくとも前記の通気孔又は通気弁の周囲に、光を散乱させる光散乱部を形成する工程と、
を有することを特徴とする加熱調理用容器の蓋体の製造方法。
【請求項7】
前記光散乱部が、前記蓋体の表面及び/又は裏面に形成された複数個の点状又は線状の凹部から構成され、前記複数個の点状又は線状の凹部がレーザ加工によって形成される請求項6記載の蓋体の製造方法。
【請求項8】
前記の通気孔又は通気弁と、前記複数個の点状又は線状の凹部とが、レーザ加工によって一つの工程で形成される請求項7記載の蓋体の製造方法。
【請求項9】
前記光散乱部が、蓋体前駆体の表面及び/又は裏面に形成された複数個の凹部及び/又は凸部から構成され、前記凹部及び/又は凸部が金型加工によって形成される請求項6記載の蓋体の製造方法。
【請求項10】
前記蓋体前駆体を成型する工程において前記凹部及び/又は凸部が同時に形成される請求項9記載の蓋体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理用容器の蓋体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストアやスーパーなどではプラスチック製の容器に食品を収容した各種弁当や調理済み食品が数多く販売されている。ここで使用される容器は、食品等を収容可能な上面開口の容器本体と、この容器本体の上面開口に着脱自在に取り付けられた蓋体とから構成され、容器本体内に食品が収容された後、容器本体の開口に蓋体が取り付けられ、容器本体と蓋体とがフィルム包装材で固定される。そして、容器本体と蓋体とがフィルム包装材で固定されたままで電子レンジ(マイクロ波照射)で加熱される。
【0003】
このような用途に用いられる電子レンジ加熱調理用の容器では、加熱した際に発生する収容物由来の蒸気によって容器本体及び蓋体が過度に膨張したり破裂しないように、発生した蒸気を容器から外に放出させる弁や孔を蓋体に設ける必要がある。一方で、蓋体に設けた弁や孔から埃や虫等が容器内に侵入することを防止する必要もある。
【0004】
そこで、蓋体に形成する弁や孔として種々のものが提案されている。本出願人も切込みによってそれ自体が補強リブの役割を果たす舌片を蓋体に設けることを既に提案している(特許文献1)。また、蓋体にレーザ加工によって所定形状の排気長孔を形成することも提案されている(特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3138601号
【特許文献2】特開2019-108173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、樹脂シート材から構成される蓋体に蒸気を排出するための弁や孔を形成する場合、カッターやドリル、針刺し、金型裁断といった切断・切削加工であると、当該弁や孔の形状の各々に対応した切断具や切削具が必要となる。また、蓋体を刃物で直接切断・切削するので、蓋体にゆがみが生じ残留応力などにより変形することもある。加えて、加工時に微粉末が発生し異物混入の原因となることもある。そこで、近年、短時間で精度よく加工でき、ゆがみや残留応力の少ないレーザ加工による穿設が行われつつある。
【0007】
蓋体に用いられる樹脂シート材の材質として、これまで、透明性に優れた熱可塑性樹脂であるポリスチレン、ポリ塩化ビニル等が広く使用されてきた。一方、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂は、耐熱性や耐衝撃性には強いが透明性が劣るという問題点があったが、近年、ソルビトール系化合物などを用いた結晶核剤を添加することで透明性を得る技術が開発され、包装用容器の蓋体の材料としても利用されるようになってきた。
【0008】
ところが、オレフィン系樹脂シートを用いた蓋体に、レーザ加工によって孔を穿設すると、孔の周囲に白色粉が付くという不具合が発生した。このような付着物が蓋体に生じると蓋体自体の汚れや曇りとして商品価値が損なわれる。
【0009】
そこで本発明の目的は、オレフィン系樹脂シートから構成される蓋体において、レーザ加工によって孔を形成した場合に白色粉が付着した場合でも、蓋体の商品価値を損なわないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成する本発明に係る蓋体は、加熱調理される容器の蓋体であって、オレフィン系樹脂シートから構成され、加熱調理時に前記容器内で発生する蒸気を容器外に排出する、レーザ加工で形成された通気孔又は通気弁を有し、少なくとも前記の通気孔又は通気弁の周囲に光を散乱させる光散乱部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
前記構成の蓋体において、前記光散乱部は、蓋体の表面及び/又は裏面に形成された複数個の凹部及び/又は凸部から構成されているのが好ましい。
【0012】
また前記構成の蓋体において、前記凹部及び/又は前記凸部が、点状又は線状である構成とするのが好ましい。
【0013】
また前記構成の蓋体において、前記凹部がレーザ加工で形成されたものであるのが好ましい。
【0014】
また前記構成の蓋体において、前記凹部及び/又は凸部が金型加工により形成されたものであるのが好ましい。
【0015】
そしてまた本発明に係る加熱調理用容器の蓋体の製造方法は、オレフィン系樹脂シートを金型加工して蓋体前駆体を成型する工程と、成型された前記蓋体前駆体にレーザ加工によって、加熱調理時に前記容器内で発生する蒸気を容器外に排出する通気孔又は通気弁を形成する工程と、前記蓋体前駆体の少なくとも前記の通気孔又は通気弁の周囲に、光を散乱させる光散乱部を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0016】
前記構成の蓋体の製造方法において、前記光散乱部が、前記蓋体前駆体の表面及び/又は裏面に形成された複数個の点状又は線状の凹部から構成され、レーザ加工によって形成されるようにしてもよい。この場合、前記の通気孔又は通気弁と、前記複数個の点状又は線状の凹部とはレーザ加工によって一つの工程で形成されるのが好ましい
【0017】
また前記構成の蓋体の製造方法において、前記光散乱部が、前記蓋体前駆体の表面及び/又は裏面に形成された複数個の凹部及び/又は凸部から構成され、前記凹部及び/又は凸部が金型加工により形成されるようにしてもよい。この場合、前記蓋体前駆体を成型する工程において、前記凹部及び/又は凸部が金型加工により同時に形成されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、オレフィン系樹脂シートから構成される蓋体にレーザ加工によって孔を形成した場合に蓋体に白色粉が付着した場合でも、当該付着が外観上目立たず蓋体の商品価値を損なわない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る蓋体を用いた加熱調理用容器の一例を示す斜視図である。
図2図1に示す蓋体2の天壁21に形成された光散乱部3aおよび通気孔4の拡大平面図である。
図3】光散乱部3aおよび通気孔4の部分垂直断面図である。
図4】蓋体2に形成された通気弁5の一例を示す部分平面図である。
図5】光散乱部の他の例を示す拡大平面図である。
図6】光散乱部の他の例を示す拡大平面図である。
図7】蓋体2の製造方法の一例を示す概略工程図である。
図8】光散乱部の他の例を示す拡大平面図である。
図9図8に示す光散乱部および通気孔4の部分垂直断面図である。
図10】光散乱部の他の例を示す部分垂直断面図である
図11図9に示す光散乱部を作製するための金型の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る加熱調理用容器の蓋体(以下、単に「蓋体」と記すことがある。)について図に基づいてさらに説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。なお、本明細書における「X方向」および「Y方向」は図に示すX方向およびY方向をいうものとする。
【0021】
(第1実施形態)
図1に、電子レンジ加熱調理用容器Vの一例を示す。この図に示す電子レンジ加熱調理用容器Vは、上面開口の逆円錐台形状を有する容器本体1と、容器本体1の上面開口を封鎖する蓋体2とを備える。容器本体1は、円板形状の底壁11と、底壁11の周縁から半径方向外方に向かって上方に傾斜する周壁12とを有する。そして容器本体1の周壁12の上部には、蓋体2を取り外し可能に装着するための第1係合部13が設けられている。底壁11、周壁12及び第1係合部13は、例えば発泡性を有する耐熱性樹脂を金型で熱成形することによって一体に成形されている。
【0022】
一方、蓋体2は、円形状の天壁21と、天壁21の周縁から半径方向外方に向かって下方に傾斜する周壁22と、周壁22の下周端から半径方向外方に略水平に延出するフランジ部23と、フランジ部23の外周部に形成された、容器本体の第1係合部13に気密に係合する第2係合部24とを備える。そして、天壁21の平面視における略中央部には、四角形状の領域に複数個の点状凹部31が形成された光散乱部3aが形成され、光散乱部3aの領域内に8個の長孔形状の通気孔4が設けられている。
【0023】
蓋体2の材質は、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂であり、特に、耐熱性や耐衝撃性などの観点からポリプロピレンが好適に使用される。後述するように、これらのオレフィン系樹脂のシート状物が金型加工によって蓋体形状に成形される。
【0024】
容器本体1には、電子レンジで加熱調理されることでそのまま食べることができる麺類、ご飯、食材などが内容物として収容された後、蓋体2によって容器本体1の上面開口が気密に封鎖され、さらに必要により容器Vの外周が樹脂フィルムなどで包装される。
【0025】
(通気孔)
図2に、蓋体2の天壁21の略中央部に形成された光散乱部3aおよび通気孔4の拡大平面図を示し、図3に光散乱部3aおよび通気孔4の部分垂直断面図を示す。通気孔4は幅Wで長さLの長孔であって、X方向に所定間隔で2個、Y方向に所定間隔で4個の合計8個形成されている。もちろん通気孔4の形成個数は、容器V内で発生した収容物由来の蒸気を容器内から外に放出させることができる限りにおいて特に限定はなく、1個であってもよいし2個以上であってもよい。また通気孔4の幅Wおよび長さLは、蒸気を容器内から外に放出させることができ、且つ通気孔4から埃や虫等が容器内に侵入しない限りにおいて特に限定はないが、通気孔4の幅Wは0.5mm以上1.5mm以下の範囲が好ましい。また通気孔4の長さLは0.5mm以上50mm以下の範囲が好ましい。
【0026】
なお、本発明における通気孔4は長孔に限定されるものではなく、円形状や多角形状などであっても勿論構わない。これらの場合、孔の大きさ(形状)は容器内の蒸気を外に放出でき且つ埃や虫などの容器内への侵入を抑制できるように適宜決定すればよい。
【0027】
本発明において通気孔4はレーザ加工によって形成される。蓋体2に通気孔4の形成予定位置にレーザ光が照射されると、蓋体2を構成するオレフィン系樹脂シートがレーザ光によって加熱され溶融蒸発して通気孔4が形成される。このとき溶融蒸発した成分の一部が蓋体2の表面に付着することが本発明の解決課題とするところである。なお、図3に示すように、レーザ加工によって蓋体2に通気孔4や点状凹部31を形成した場合、蓋体2のレーザ光入射側面及び出射側面の通気孔4や点状凹部31の周囲に断面が半円状の盛り上がり部分91が形成される。
【0028】
(通気弁)
また通気孔4に代えて通気弁5を蓋体2に設けて容器内で発生した蒸気を容器外に放出させるようにしてもよい。図4に、通気弁5の一例を示す。図4に示す通気弁5は、無端状の閉ライン(図4では円形)に沿って且つ閉ラインの一部を残してレーザ加工によって蓋体2を溶融切断することで形成される。通気弁5は、溶融切断されなかった閉ラインの一部(蓋体2との接続部51)を中心に紙面に対して垂直方向に揺動可能で、容器内の圧力が所定圧以上になると、通気弁5の自由端側が蓋体2との接続部51を中心に外方に向かって揺動して開放状態となる。
【0029】
(光散乱部3a)
図2に示すように、8個の通気孔4の周囲には光散乱部3aとしての多数の点状凹部31が形成されている。光散乱部3の形成領域は、少なくとも通気孔4の周囲であり、好ましくは、レーザ加工によって通気孔4が形成される際に、蓋体材料が溶融蒸発し煙り状となったものが蓋体表面に付着する範囲である。具体的には、光散乱部3は通気孔4から5mm以上離れた範囲まで形成されているのが望ましい。また、光散乱部3の平面外形は、四角形に限定されるものではなく、製造者や販売者などの商標やロゴ、あるいは商品表示、所望の意匠などであってもよい。
【0030】
光散乱部3aは多数の点状凹部31から構成されることによって、蓋体2に照射された光を散乱させ、その結果、レーザ加工によって通気孔4を形成する際に蓋体表面に付着した白色付着物を目立たなくする作用を奏する。点状凹部31の形状や形成間隔等は、光を散乱させて白色付着物を目立たなくする作用を奏する限りにおいて特に限定はない。図3に示すように、通常、点状凹部31の最大幅wは0.1mm以上1mm以下の範囲が好ましく、形成間隔Pは最大幅wに対して1/2以上1/1以下の範囲が好ましい。また、点状凹部31の深さdは蓋体2の厚みDに対して1/4以上1/2以下の範囲が好ましい。
【0031】
点状凹部31の断面形状は略半円状に限定されるものではなく、三角形状などの多角形状などであっても構わない。ただし、点状凹部31をレーザ加工によって形成した場合には、図3に示すように、断面形状は略半円形状となる。
【0032】
光散乱部3aは点状凹部31の外、線状凹部、点状凸部、線状凸部から選択される1種類又は2種類以上の組み合わせによっても構成可能である。図5に示す光散乱部3bは、X方向に対して約45°傾斜した線状凹部32aが所定間隔で平行に複数本設けられた形態である。なお、この図では各々の線が線状凹部32aを示している。線状凹部32aの幅や断面形状、形成間隔は図3を用いて説明した点状凹部31における例示がここでも適用される。
【0033】
図6に示す光散乱部3cは、X方向に対して約45°傾斜し所定間隔で平行に複数本設けられた第1線状凹部32bと、第1線状凹部32bに対して垂直に交差し所定間隔で平行に複数本設けられた第2線状凹部32cとを有する形態である。この図においても各々の線が線状凹部32b,32cを示している。線状凹部32b,32cの幅や断面形状、形成間隔は図3を用いて説明した点状凹部31における例示がここでも適用される。
【0034】
図5及び図6に示す光散乱部3b,3cの形態であっても、レーザ加工によって通気孔4を形成する際に蓋体表面に付着した白色付着物を目立たなくする作用を奏する。なお、線状凹部32a,32b,32cは、図5及び図6に示したような連続するものであってもよいし、破線のような不連続な線状であっても構わない。
【0035】
以上、図2図5図6に示した光散乱部3a,3b,3cの実施形態は点状凹部31及び線状凹部32a,32b,32cから構成されるものであったが、光散乱部が凸部から構成される形態や凸部と凹部とから構成される形態であっても、照射された光が散乱し本発明の効果が奏される限りにおいて本発明に適用することができる。また、図2図5図6に示した光散乱部3a,3b,3c(以下、「光散乱部3」と記すことがある。)の実施形態では点状凹部31及び線状凹部32a,32b,32cは蓋体2の外面側に設けられていたが、光散乱部3は蓋体2の内面側あるいは外面側及び内面側の両面に設けられていてもよい。
【0036】
(蓋体の製造)
以上説明した蓋体2の製造方法について説明する。図7に蓋体2の製造工程概略図を示す。軸芯81にロール状に巻き付けられた厚さ0.1mm程度のオレフィン系樹脂シートSを巻き出して加熱手段によって加熱し樹脂シートSを軟化させる。次に、軟化した樹脂シートSを金型成形装置82の所定位置に位置決めして、下型82bを上型82aの方向に移動させて樹脂シートSを上型82aの下面(成形面)に接触させるとともに、上型82aと樹脂シートSとで形成される密閉空間の空気を上型82aに形成された排気孔821を介して排気して圧力を低下させて樹脂シートSを上型82aの下面(成形面)に密着させる(真空成形)。このとき同時に、上型82aと下型82bを囲む空間を加圧することで樹脂シートSを上型82aの下面(成形面)に一層密着させるようにしてもよい(真空空圧成形)。
【0037】
次いで、成形された樹脂シート(蓋体前駆体LC)を金型から外した後、冷却する。そしてレーザ加工によって蓋体前駆体LCに通気孔4(または通気弁5)を形成する。この時、光散乱部3を構成する点状凹部31及び/又は線状凹部32a,32b,32cをレーザ加工によって同時に形成するのが効率的である。この場合、通気孔4(または通気弁5)を形成した後に光散乱部3を形成してもよいし、その逆であってもよい。あるいは通気孔4(または通気弁5)の形成と光散乱部3の形成を並行して行ってもよい。
【0038】
このとき、前述のように、レーザ加工によって溶融した樹脂シート成分の付着が予想される領域には、点状凹部31や線状凹部32a,32b,32cから構成される光散乱部3が形成されるので、蓋体前駆体LCの表面に溶融樹脂シート成分が付着しても、製造された蓋体2の商品価値が損なわれることはない。
【0039】
本発明で使用可能なレーザ装置としては従来公知のものが使用でき、例えば、炭酸ガスレーザやルビーレーザ、半導体レーザ、アルゴンレーザ、エキシマレーザなどが挙げられる。
【0040】
その後、レーザ加工によって通気孔4(通気弁5)及び光散乱部3が形成された蓋体前駆体LCから、打ち抜き加工によって蓋体2が打ち抜かれる。なお、蓋体2が打ち抜かれた後の残樹脂シートはスクラップとして巻取機で巻き取られる。
【0041】
(第2実施形態)
図8及び図9に第2実施形態に係る光散乱部3d及び通気孔4の平面図及び部分垂直断面図を示す。本実施形態の光散乱部3dは、X方向に所定間隔で平行に複数本設けられた第1線状凸部33aと、Y方向に所定間隔で平行に複数本設けられた第2線状凸部33bとから構成されている。蓋体2の全体形状及び通気孔4については第1実施形態と同じであるのでここでは説明を省略する。
【0042】
図8及び図9に示す光散乱部3dが、第1実施形態の光散乱部3a~3cと大きく異なる点は、本実施形態の光散乱部3dでは、樹脂シートSが厚みをほぼ維持した状態で屈曲することで第1線状凸部33a及び第2線状凸部33b(以下、単に「線状凸部33」と記すことがある。)を形成している点にある。このような線状凸部33の形成によっても照射された光の散乱が起こる。線状凸部33の延在方向に対して垂直方向の断面形状は三角形状であり、その中心角θの角度は30°以上90°以下であるのが好ましい。勿論、線状凸部33の断面形状は三角形状に限定されるものではなく、照射された光を散乱させる作用を奏する限りにおいて多角形状や半球状であっても構わない。
【0043】
線状凸部33の高さaに特に限定はないが、通常、0.1mm以上1.0mm以下が好ましい。また線状凸部33の形成ピッチbについても特に限定はないが、通常、0.5mm以上2.0mm以下が好ましい。
【0044】
図10は、図8及び図9に示した蓋体2の線状凸部33を180°反対にして線状凹部34としたものである。このような線状凹部34の形成によっても照射された光の散乱が起こり、蓋体表面に付着した白色付着物を目立たなくする作用が奏される。図10に示す線状凹部34の深さa、形成ピッチb、三角形状の凹部の中心角θの好適範囲は、図9に示した線状凸部の高さa、形成ピッチb、中心角θがここでも同様に適用される。
【0045】
(蓋体2の製造)
このような樹脂シートSが屈曲されて成形される線状凸部33や線状凹部34は、図7に示した蓋体2の製造工程において、加熱により軟化した樹脂シートSを金型成形装置82で成形する際に、樹脂シートSと接触する上型82a又は下型82bの成形面に線状凹部や線状凸部を設けておくことによって形成することが可能である。例えば、図11に示すように、上型82aとして内上面(成形面)に複数の線状凹部822が所定間隔で平行に設けられたものを用いると、真空成形によって上型82aの成形面に、加熱によって軟化した樹脂シートSが密着したときに、上型82aの線状凹部822に樹脂シートSが入り込み、その結果樹脂シートSが屈曲して線状凸部33が形成される。反対に、下型82bとして上面(成形面)に複数の線状凹部(不図示)が所定間隔で平行に設けられたものを用いるとともに、樹脂シートSを下型82bに密着させる真空成形を行えば、下型82bの成形面に樹脂シートSが密着したときに、下型82bの線状凹部(不図示)に樹脂シートSが入り込み、その結果樹脂シートSが屈曲して線状凹部34が形成される。このように、上型82a及び下型82bの成形面に所望の形状を設けておくことによって、上型82a又は下型82bの成形面に密着した樹脂シートSに上型82a又は下型82bの成形面の表面形状が凹凸を逆として写し取られて蓋体2に所望の凹凸形状が形成可能となる。
【0046】
このように、蓋体前駆体LCを金型成形によって作製する工程において同時に線状凸部33を形成することにより製造効率が向上する。もちろん、必要により蓋体前駆体LCを作製する工程とは別工程として蓋体前駆体LCに線状凸部33を形成する工程を設けても構わない。
【0047】
その後、図7に示される第1実施形態の製造工程と同様に、線状凸部33が形成された蓋体前駆体LCは金型から外された後冷却され、次いでレーザ加工によって蓋体前駆体LCに通気孔4(または通気弁5)が形成される。その後、打ち抜き加工によって蓋体前駆体LCから個々の蓋体2が抜き落とされる。
【0048】
以上、図9図10に示した光散乱部3dは、樹脂シートSが屈曲してなる線状凸部33又は線状凹部34から構成されるものであったが、光散乱部3dは樹脂シートSが屈曲してなる点状凸部や点状凹部から構成される形態であっても、照射された光が散乱し本発明の効果が奏される限りにおいて本発明に適用することができる。
【0049】
(その他)
以上説明した実施形態の蓋体2では、光散乱部3は蓋体2の通気孔4の周囲にのみ設けていたが、蓋体2の全体に光散乱部3を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、オレフィン系樹脂シートから構成される蓋体2にレーザ加工によって孔を形成した場合に蓋体2に白色粉が付着した場合でも、当該付着が外観上目立たず蓋体2の商品価値は損なわれない。
【符号の説明】
【0051】
1 容器本体
2 蓋体
3a~3d 光散乱部
4 通気孔
5 通気弁
S 樹脂シート
V 容器
LC 蓋体前駆体
31 点状凹部
32a~32c 線状凹部
33a,33b 線状凸部
34 線状凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11