(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038722
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】発光モジュール及び照明器具
(51)【国際特許分類】
F21V 19/00 20060101AFI20220303BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20220303BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220303BHJP
F21Y 105/14 20160101ALN20220303BHJP
【FI】
F21V19/00 150
F21S2/00 100
F21V19/00 170
F21Y115:10 500
F21Y105:14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143357
(22)【出願日】2020-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 信一
【テーマコード(参考)】
3K013
【Fターム(参考)】
3K013AA06
3K013BA01
3K013CA05
3K013CA07
(57)【要約】
【課題】金属プリント配線板と発光モジュールが取り付けられる板金との間に絶縁耐圧性能の確保及び漏れ電流の抑制を図るためのシートを必要としない発光モジュール及び照明器具を提供する。
【解決手段】発光モジュールは、照明器具を構成する板金に取り付けられる発光モジュールであって、金属からなるベース基板と、ベース基板の一方の面に形成された絶縁層と、を有する金属プリント配線板と、光源が実装されたプリント回路層であって、ベース基板の一方の面に絶縁層を介して形成されたプリント回路層と、を備え、絶縁層の厚さが、180μmよりも大きく、ベース基板の厚さの5分の2以下であるものである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明器具を構成する板金に取り付けられる発光モジュールであって、
金属からなるベース基板と、前記ベース基板の一方の面に形成された絶縁層と、を有する金属プリント配線板と、
光源が実装されたプリント回路層であって、前記ベース基板の一方の面に前記絶縁層を介して形成された前記プリント回路層と、
を備え、
前記絶縁層の厚さが、180μmよりも大きく、前記ベース基板の厚さの5分の2以下である発光モジュール。
【請求項2】
前記絶縁層は、複数の層によって形成されている請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記絶縁層の厚さが、200μm以上、350μm以下である請求項1又は2に記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記ベース基板の厚さが、700μm以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項5】
前記プリント回路層の面積が、10000mm2以上である請求項1~4のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の発光モジュールと、
前記発光モジュールが取り付けられる前記板金と、
を備え、
前記金属プリント配線板が前記板金に直接取り付けられている照明器具。
【請求項7】
前記金属プリント配線板と電気接続されており、前記光源に電力を供給する点灯装置を更に備え、
前記点灯装置が非絶縁型電源である請求項6に記載の照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光源が実装された金属プリント配線板を備えた発光モジュール及びこの発光モジュールを備えた照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、照明器具を構成する板金に取り付けられる発光モジュールであって、金属からなるベース基板と、ベース基板の一方の面に形成された絶縁層と、を有する金属プリント配線板を備えた発光モジュールが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発光モジュールは、金属プリント配線板に形成された絶縁層の厚さが薄い。そのため、特許文献1の従来の発光モジュールは、照明器具を構成する板金に発光モジュールを直付けした際に大地間の漏れ電流が大きくなる場合があり、絶縁耐圧性能の確保及び漏れ電流の抑制の両方又は一方を満足させることができない場合がある。そのため、特許文献1の発光モジュールは、光源が実装された金属プリント配線板と発光モジュールが取り付けられる板金との間に絶縁耐圧性能の確保及び漏れ電流の抑制を図るためのシートが必要となる。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するものであり、金属プリント配線板と発光モジュールが取り付けられる板金との間に絶縁耐圧性能の確保及び漏れ電流の抑制を図るためのシートを必要としない発光モジュール及び照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る発光モジュールは、照明器具を構成する板金に取り付けられる発光モジュールであって、金属からなるベース基板と、ベース基板の一方の面に形成された絶縁層と、を有する金属プリント配線板と、光源が実装されたプリント回路層であって、ベース基板の一方の面に絶縁層を介して形成されたプリント回路層と、を備え、絶縁層の厚さが、180μmよりも大きく、ベース基板の厚さの5分の2以下であるものである。
【0007】
本開示に係る照明器具は、上記構成の発光モジュールと、当該発光モジュールが取り付けられる板金と、を備え、金属プリント配線板が板金に直接取り付けられているものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の発光モジュールは、絶縁層の厚さが、180μmよりも大きく、ベース基板の厚さの5分の2以下である。発光モジュールは、当該構成により絶縁性能の向上を図ることができ、浮遊容量の減少による漏れ電流の抑制を図ることができる。そのため、発光モジュールは、金属プリント配線板と発光モジュールが取り付けられる板金との間に絶縁耐圧性能の確保及び漏れ電流の抑制を図るためのシートを設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る照明器具及び発光モジュールの断面模式図である。
【
図2】比較例に係る照明器具及び発光モジュールの断面模式図である。
【
図3】実施の形態に係る照明器具の模式図及び発光モジュールの正面模式図である。
【
図4】実施の形態に係る発光モジュールの断面模式図及び大地間の漏れ電流に関わる式である。
【
図5】実施の形態に係る発光モジュールの絶縁層の厚さとベース基板の厚さとの比率と、リフロー後の金属プリント配線板の反りの影響の結果とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態に係る発光モジュール10及び照明器具100について、図面を参照して説明する。なお、明細書に示す構成要素の形態は、あくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。また、
図1を含む以下の図面では、各構成部材の相対的な寸法の関係及び形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。また、理解を容易にするために方向を表す用語あるいは向きを適宜用いるが、それらの表記は、説明の便宜上用いる記載であり、装置、器具、あるいは部品等の配置、方向及び向きを限定するものではない。方向あるいは向きを表す用語は、例えば、上、下、右、左、前、後、表または裏等がある。
【0011】
実施の形態.
(照明器具100)
図1は、実施の形態に係る照明器具100及び発光モジュール10の断面模式図である。
図1に示すように、照明器具100は、発光モジュール10と、発光モジュール10が取り付けられる板金5と、を備える。照明器具100は、発光モジュール10の金属プリント配線板6が板金5に直接取り付けられている。
【0012】
図2は、比較例に係る照明器具100L及び発光モジュール10Lの断面模式図である。比較例に係る照明器具100L及び発光モジュール10Lは、発光モジュール10の金属プリント配線板6が板金5に直接取り付けられていない。比較例に係る照明器具100L及び発光モジュール10Lは、光源4が実装された金属プリント配線板6と発光モジュール10Lが取り付けられる板金5との間に絶縁耐圧性能の確保及び漏れ電流の抑制の一方または両方を図るためのシート8が必要となる。
【0013】
これに対し、
図1に示す照明器具100及び発光モジュール10は、絶縁層2の厚さを特定することによって、絶縁耐圧性能を高め大地間の漏れ電流を抑えることができる。そのため、照明器具100は、ベース基板1と板金5と間に比較例に示すシート8を設ける必要がない。
【0014】
図3は、実施の形態に係る照明器具100の模式図及び発光モジュール10の正面模式図である。照明器具100は、
図3に示すように点灯装置9を備えている。点灯装置9は、金属プリント配線板6と電気接続されており、光源4に電力を供給する。点灯装置9は、非絶縁型電源である。非絶縁型電源は、入力と出力とが電気的に絶縁されていない。そのため、入力と大地との間の漏れ電流が大きくなる傾向にある。非絶縁型電源を用いる時は、漏れ電流が大きくなる傾向にあるため実施の形態に係る照明器具100及び発光モジュール10にはより有効である。発光モジュール10の金属プリント配線板6にはコネクタ7が実装されている。コネクタ7は、複数の光源4に接続された電線が取り付けられ、コネクタ7と点灯装置9とが電気的に接続されている。
【0015】
(発光モジュール10)
発光モジュール10は、金属からなるベース基板1と、ベース基板1の一方の面に形成された絶縁層2と、を有する金属プリント配線板6を有する。また、発光モジュール10は、光源4が実装されたプリント回路層3であって、ベース基板1の一方の面に絶縁層2を介して形成されたプリント回路層3を有する。発光モジュール10は、照明器具100を構成する板金5に取り付けられる。
【0016】
ベース基板1は、アルミ等をベース材料とする金属基板である。ベース基板1は、ベース基板1と板金5との間に絶縁耐圧性能の確保及び漏れ電流の抑制を図るための
図2に示すシート8等を配置することなく板金5に直接取り付けられる。ベース基板1は、厚さが700μm以上であることが望ましい。また、プリント回路層3の電極面積Sは、10000mm
2以上であることが望ましい。プリント回路層3の電極面積Sは、面積が大きくなるほど絶縁層厚を上げることが有効になる。なお、ベース基板1の厚さ、プリント回路層3の厚さ、後述する絶縁層2の厚さは、ベース基板1、プリント回路層3及び絶縁層2の積層方向における各部材の厚さである。
【0017】
絶縁層2は、エポキシ樹脂等の絶縁性材料から形成されている。絶縁層2は、複数の層によって形成されている。絶縁層2は、ピンホール対策となるため、製造工程で複数回塗り重ねられることによって形成されることが望ましい。
【0018】
光源4は、ベース基板1上に形成されたプリント回路層3に実装される電子部品である。光源4は、電力の供給を受けて発光する。本実施の形態では、光源4として、LED(Light Emitting Diode)を用いる。光源4の形状は様々なものがあり、樹脂パッケージで覆われた表面実装型のもの、あるいは、セラミックパッケージにドーム型のレンズが付いた表面実装型のもの等がある。
【0019】
プリント回路層3には、配線パターンが形成されている。プリント回路層3は、コネクタ7を介して点灯装置9と接続されており、点灯装置9からプリント回路層3に所定の電流が流れることで光源4を点灯させることができる。
【0020】
図4は、実施の形態に係る発光モジュール10の断面模式図及び大地間の漏れ電流に関わる式である。
図4に示すように、誘電体となる絶縁層2の浮遊容量Cは、「C=ε×S/d」で表すことができる。なお、εは誘電率であり、Sは電極面積であり、dは誘電体の厚さである。
【0021】
図2に示した比較例に係る照明器具100L及び発光モジュール10L等の従来の絶縁層2の厚さは、例えば、120μmである。従来の絶縁層2の厚さ(例えば、120μm)では、誘電体となる絶縁層2の厚さdが薄いため、プリント回路層3とベース基板1との間に生じる浮遊容量Cが、ガラスエポキシ基板等の他のリジット基板よりも大きくなり、大地間の漏れ電流が増加する。
【0022】
一般的に照明器具及び発光モジュールは、プリント回路層3の面積である電極面積S、発光モジュール10以外の点灯装置、及び、電線等からの漏れ電流にもよるが、照明器具100全体の大地間の漏れ電流を抑えることが必要となる場合がある。そのためには、誘電体となる絶縁層2の浮遊容量Cが小さい方が望ましい。
【0023】
実施の形態に係る発光モジュール10は、絶縁層2の厚さが、180μmよりも大きく、ベース基板1の厚さの5分の2以下である。また、絶縁層2の厚さは、200μm以上、350μm以下であることが更に望ましい。
【0024】
図5は、実施の形態に係る発光モジュール10の絶縁層2の厚さとベース基板1の厚さとの比率と、リフロー後の金属プリント配線板6の反りの影響の結果とを示す図である。
図5に示すように、基板の反りについて、金属プリント配線板6では、絶縁層厚:ベース基板厚比で400:860(1:2.2)で基板が反り、300:1060(1:3.5)で基板が反らない。ベース基板1と絶縁層2とは線膨張係数が異なる。そのため、発光モジュール10は絶縁層2を厚くしすぎるとリフロー時に金属プリント配線板6に反りが発生してしまう。そのため、絶縁層2の厚さの上限は、ベース基板1の厚さの5分の2以下とすることが望ましい。
【0025】
(照明器具100及び発光モジュール10の作用効果)
照明器具100及び発光モジュール10は、絶縁層2の厚さを180μmよりも大きくすることによって絶縁性能向上を図ることができ、浮遊容量Cの減少による漏れ電流の抑制を図ることができる。
【0026】
照明器具100及び発光モジュール10は、絶縁層2の厚さがベース基板1の厚さの5分の2以下に形成されていることによって、金属プリント配線板6の反りを抑制することができる。
【0027】
絶縁層2は、複数の層によって形成されている。絶縁層2は、製造工程で複数回塗り重ねて形成されることによって絶縁層2にピンホールが形成されることを抑制することができる。
【0028】
照明器具100及び発光モジュール10は、このように絶縁層2の厚さを絶縁層としての特性と、ベース基板1の特性及び厚さとを考慮して厚くすることで、絶縁耐圧性能を高め大地間の漏れ電流を抑えることができる。そのため、照明器具100は、ベース基板1と板金5との間に比較例に示すシート8を設ける必要がない。照明器具100及び発光モジュール10は、シート8を設ける必要がなく、金属プリント配線板6を板金5に直付けできるため部品点数を減らすことができ、組立工数減によるトータルコストを削減することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 ベース基板、2 絶縁層、3 プリント回路層、4 光源、5 板金、6 金属プリント配線板、7 コネクタ、8 シート、9 点灯装置、10 発光モジュール、10L 発光モジュール、100 照明器具、100L 照明器具。