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特開2022-38803設備管理プログラム、設備管理方法、および設備管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038803
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】設備管理プログラム、設備管理方法、および設備管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20220303BHJP
【FI】
G06T19/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143468
(22)【出願日】2020-08-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】592090555
【氏名又は名称】パシフィックコンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山中 明彦
【テーマコード(参考)】
5B050
【Fターム(参考)】
5B050BA09
5B050BA13
5B050DA01
5B050EA07
5B050EA14
5B050EA18
5B050EA24
5B050EA28
5B050FA02
5B050GA08
(57)【要約】
【課題】極めて廉価な構成により、点群データを用いた設備の維持管理用の動画を得ることができるシステムを提供する。
【解決手段】本発明のプログラムは、コンピュータのプロセッサに、管理対象物を含む空間を3次元点群スキャナにより計測して取得した点群データの入力を受け付ける第1ステップと、取得した点群データのうち、一部の点データを複数選択して動画化する点群データを決定する第2ステップと、第2ステップにおいて選択された前記点データからなる点群データを動画化して、管理対象物が仮想空間上に3次元データとして示された管理用動画を生成する第3ステップと、を実行させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータのプロセッサに、
管理対象物を含む空間を3次元点群スキャナにより計測して取得した点群データの入力を受け付ける第1ステップと、
前記取得した点群データのうち、一部の点データを複数選択して動画化する点群データを決定する第2ステップと、
前記第2ステップにおいて選択された前記点データからなる点群データを動画化して、前記管理対象物が仮想空間上に3次元データとして示された管理用動画を生成する第3ステップと、を実行させるプログラム。
【請求項2】
前記第2ステップでは、
前記点群データのうち、互いに隣り合う点データ同士の位置間隔を規定することにより、前記取得した点群データのうちの一部を選択する処理を実行する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記第2ステップでは、
前記管理用動画の視点から、所定範囲外に位置する点群データを粗にすることにより、前記取得した点群データのうちの一部を選択する処理を実行する、請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記第2ステップでは、
前記管理用動画の視点が変化している過程において、前記点群データが予め設定された密度となるように、前記取得した点群データのうちの一部を選択する処理を実行する、請求項1から3のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項5】
前記第2ステップでは、
前記管理対象物とともに撮影された構造物のうち、単純な形状を有する構造物を構成する複数の点データを3次元モデル化し、3次元モデル化した部分の点データ以外の点データを複数選択して動画化する点群データを決定する処理を実行する、請求項1から4のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項6】
コンピュータのプロセッサに、
前記管理用動画上に表現された前記管理対象物に対して、当該管理対象物の属性情報が記され、かつ前記管理用動画において、当該管理対象物と重なるようにユーザにより配置された銘板データをリンクさせる第4ステップを実行させる、請求項1から5のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項7】
前記銘板データには、前記管理対象物の管理に用いられる管理用データがリンクされている、請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記管理用データは、前記管理対象物に関する管理台帳である、請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記管理用データは、前記管理対象物の様子をリアルタイムで撮影するウェブカメラによる撮影データである、請求項7に記載のプログラム。
【請求項10】
前記管理用データは、前記管理対象物に対して施される保守・点検作業の作業内容を撮影し、前記作業内容の説明が付されたマニュアル動画である請求項7に記載のプログラム。
【請求項11】
前記第4ステップでは、前記銘板データの表示形態を調整する処理を実行する、請求項6に記載のプログラム。
【請求項12】
前記管理対象物は、既設の下水設備である、請求項1から11のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項13】
コンピュータのプロセッサが、
管理対象物を含む空間を3次元点群スキャナにより計測して取得した点群データの入力を受け付ける第1ステップと、
前記取得した点群データのうち、一部の点データを複数選択して動画化する点群データを決定する第2ステップと、
前記第2ステップにおいて選択された前記点データからなる点群データを動画化して、前記管理対象物が仮想空間上に3次元データとして示された管理用動画を生成する第3ステップと、を実行する方法。
【請求項14】
管理対象物を含む空間を3次元点群スキャナにより計測して取得した点群データの入力を受け付ける第1手段と、
前記取得した点群データのうち、一部の点データを複数選択して動画化する点群データを決定する第2手段と、
前記第2手段が選択した前記点データからなる点群データを動画化して、前記管理対象物が仮想空間上に3次元データとして示された管理用動画を生成する第3手段と、を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設備管理プログラム、設備管理方法、および設備管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の設計を目的として点群データを3次元モデル化するBIM/CIM、経年劣化の計測を目的とするMMS等の分野において、3次元点群スキャナにより取得した点群データを利用するシステムが知られていた。
下記特許文献1には、このようなシステムとして、建築・土木の施工分野において、点群データから3次元モデル化されたデータをイメージ化して、現場の進捗状況を作業員が直感的に把握可能とするシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-148946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、施設全体の維持管理に点群データを活用しようとするとデータ量が膨大になるため、3次元モデル化する作業には、膨大な工数、およびそれによる膨大な費用を要する。その結果、例えば既設のインフラ施設のように、高い収益が期待されるわけではない施設の管理に、このような点群データを用いた管理システムを導入するのは困難であった。
【0005】
本発明は、極めて廉価な構成により、点群データを用いた設備の維持管理用の動画を得ることができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプログラムは、コンピュータのプロセッサに、管理対象物を含む空間を3次元点群スキャナにより計測して取得した点群データの入力を受け付ける第1ステップと、取得した点群データのうち、一部の点データを複数選択して動画化する点群データを決定する第2ステップと、第2ステップにおいて選択された前記点データからなる点群データを動画化して、管理対象物が仮想空間上に3次元データとして示された管理用動画を生成する第3ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、極めて廉価な構成により、点群データを用いた設備の維持管理用の動画を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るシステムの構成を示すブロック図である。
図2図1に示すスキャナが取得する点群データの一例を示す図である。
図3図1に示す制御デバイスにおけるCPUの機能的構造を示すブロック図である。
図4】本発明に係るシステムにより生成した管理用動画の一例を示す図である。
図5図4に示す管理用動画のA部拡大図である。
図6図4に示す管理用動画に、銘板データを張り付けた状態を示す図である。
図7図6に示す管理用動画のA部拡大図である。
図8図7に示す銘板データと関連付けられた管理台帳の一例を示す図である。
図9】本発明に係るシステムの処理を説明する図である。
図10】本発明に係るシステムの変形例により作成した管理用動画の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
<全体概要>
本発明は、3次元点群スキャナ15(図1参照)により取得した点群データから3次元モデル化することなく作成された動画に、設備の情報をリンクさせ、当該設備の維持管理に用いる動画を提供する設備管理システム1(以下、システム1という)である。
また、点群データを利用するうえで、システム1では、データ量を軽減させずに点群データの描画速度を向上させる機能により、点群データの3次元モデル化による加工コストを大幅に軽減する。
さらにシステム1は、個々の管理対象物の位置情報および属性を示す銘板データ90(図6参照)を動画内の設備に貼付し、設備情報の検索を容易にするものである。
図1は、システム1の構成を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、システム1は、ユーザ端末10と3次元点群スキャナ15とを備える。なお、ユーザ端末10および3次元点群スキャナ15は、それぞれ複数台設けられてもよい。
ユーザ端末10および3次元点群スキャナ15は、広域ネットワーク100を介して互いに通信可能に構成されている。
【0012】
ユーザ端末10は、ユーザが使用する端末である。ユーザとは、管理対象物の保守・点検作業を担当する作業員やその状況を監督する監督者である。
ユーザ端末10は、3次元点群スキャナ15が撮影した点群データを取得し、後述する各種の処理を行った後に、点群データにより構成される管理用動画をユーザに対して表示する。ここで、点群データとは、座標情報により位置が記述される点データの集合により構成されている。
【0013】
ユーザ端末10の例には、パーソナルコンピュータ、タブレット、および、スマートフォン等の電子機器が含まれる。代表的なユーザ端末10は、制御デバイス20と、記憶デバイス30と、通信デバイス40と、表示デバイス50と、入力デバイス55と、を備える。
【0014】
制御デバイス20は、CPU21およびRAM22を備え、ユーザ端末10を統括制御する。
CPU21は、記憶デバイス30が記憶するコンピュータプログラムに従う処理を実行するプロセッサである。
RAM22は、CPU21による処理実行時に作業用メモリとして使用される。以下では、CPU21により実行される処理を、制御デバイス20が実行する処理として説明する。
【0015】
記憶デバイス30は、各種コンピュータプログラムおよびデータを記憶する。記憶デバイス30は、例えばフラッシュメモリ又はハードディスク装置で構成される。ユーザ端末10には、点群データを描画するためのアニメーションソフトを含む、本発明に係るアプリケーションプログラムがインストールされ、記憶デバイス30に記憶される。また、3次元点群スキャナ15から取得された点群データも記憶デバイス30に記憶される。
【0016】
制御デバイス20は、このアプリケーションプログラムに従う処理を実行することにより、3次元点群スキャナ15から取得した点群データに、後述する各種の処理を行い、その結果を表示デバイス50に表示する。
【0017】
通信デバイス40は、広域ネットワーク100と接続された装置と通信可能に構成される。
表示デバイス50は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイで構成される。表示デバイス50は、制御デバイス20に制御されて、各種画面をユーザに向けて表示する。各種画面には、点群データから作成された後述する管理用動画を含む。
【0018】
入力デバイス55は、ユーザからの入力操作を受け付けて、対応する操作信号を制御デバイス20に入力するように構成される。
入力デバイス55は、例えばキーボードであってもよいし、表示デバイス50と一体に構成されるタッチパネルであってもよい。入力デバイス55は、表示デバイス50に表示される画面に対するタッチ操作および書込操作を受け付けて、その操作信号を制御デバイス20に入力する。
【0019】
3次元点群スキャナ15は、イメージセンサ25と、処理デバイス70と、記憶デバイス80と、表示デバイス50と、入力デバイス55と、通信デバイス40と、を備えている。
イメージセンサ25は、撮影対象である管理対象物をスリットレーザー光でスキャンし、その反射光を受光して、対象物との距離情報を三角測距の原理によって得ることで、管理対象物の3次元形状を取得する。
【0020】
処理デバイス70は、CPU71およびRAM73を備える。CPU71は、記憶デバイス80が記憶するコンピュータプログラムに従う処理を実行するプロセッサである。
RAM73は、CPU71による処理実行時に作業用メモリとして使用される。
【0021】
通信デバイス40は、広域ネットワーク100を通じてユーザ端末10と通信可能に構成される。
処理デバイス70は、アプリケーションプログラムが起動されると、イメージセンサ25を稼働させ、対象物の点群データを取得する。また、処理デバイス70は、ユーザ端末10からの指示に基づき、取得した点群データをユーザ端末10に送信する。
【0022】
次に、3次元点群スキャナ15が計測して取得する点群データについて説明する。図2は、図1に示すスキャナが取得する点群データの一例を示す図である。
図2に示すように、点群データを構成する点データは、プロット毎のデータIDに対する座標情報を含んでいる。点群データはこのようなデータIDおよび座標情報の集合として扱われる。
【0023】
次に、制御デバイス20におけるCPU21の機能について説明する。図3は、図1に示す制御デバイス20におけるCPU21の機能的構造を示すブロック図である。
図3に示すように、CPU21は、データ取得部21Aと、選択部21Bと、動画生成部21Cと、動画編集部21Dと、を備えている。
データ取得部21Aは、インストールされたアプリケーションプログラムを実行し、管理対象物を含む空間を3次元点群スキャナ15により計測して取得した点群データの入力を受け付ける。
【0024】
選択部21Bは、取得した点群データのうちの一部の点データを複数選択し、アニメーションソフトを用いて動画化する点群データを決定する。
ここで、動画化する点群データとは、データ取得部21Aが3次元点群スキャナ15から取得した点群データの一部であり、管理用動画として動画化される点群データである。
動画生成部21Cは、アニメーションソフトを用いて、選択した点データからなる点群データを動画化して、管理対象物が仮想空間上に3次元的に描画された管理用動画を生成する。
【0025】
図4は、システムにより生成された管理用動画の一例を示す図である。図5は、図4に示す管理用動画のA部拡大図である。
図4および図5に示すように、管理用動画では、管理対象物の形状が、無数の点データにより表現される。図4および図5では、管理対象物として既設のインフラ設備である下水設備が描画されている。
【0026】
図4および図5に示す管理用動画は、管理対象物に対する視点を自由に変更することができる。すなわち、管理用動画が示す仮想空間内を、前後左右、又は上下に移動するように視点を変更することで、管理用動画の見え方が変更される。管理用動画における視点の移動は、360°左右回転や、360°上下回転のように行うこともできる。
また、管理用動画はある視点を基準にして、その拡大や縮小を自由に行うことができる。管理用動画を閲覧することで、現時点での管理対象物の形状を確認することができる。このように、管理用動画は、ユーザの視点移動の操作により、経時的に点群データの画像(静止画)が変化する。このため、管理用動画は、視点移動の操作を行わない場合には、画像(静止画)として表示されてもよい。
【0027】
次に、選択部21Bが、点群データを選択する方法について説明する。選択部21Bは、点群データのうち、互いに隣り合う点データ同士の位置間隔をユーザからの入力値により規定することで、点群データのうちの一部を選択する処理を実行する。ここで、選択部21Bは、点群データを構成する複数の点データを削除したり、削除したうえで新たに点群データを保存したりする必要はなく、以後の処理において描画する点データを選択する処理に留める。
例えば、互いに隣り合う点データ同士の位置間隔が、1mmピッチである場合に、当該位置間隔を2mmピッチと規定することで、約半分の点データを選択することができる。
このため、ユーザが入力した点データの位置間隔により、画一的に点データを選択することで、点データを選択する作業を容易に行うことができる。
【0028】
また、選択部21Bは、管理用動画の視点から、所定範囲外に位置する点群データを粗にすることにより、点群データのうちの一部を選択する処理を実行してもよい。
この場合には、例えば、管理用動画が示す仮想空間において、視点から前方に向けて半径10mの空間の内側に位置する点群データについては2mmピッチで選択し、視点から前方に向けて半径10mの空間よりも外側に位置する点群データについては、4mmピッチで選択するように規定することができる。これにより、管理用動画における視点から近い範囲について、点群データを密にして、視点の近くに位置する3次元形状が識別しやすくなる。
【0029】
また、選択部21Bは、管理用動画の視点が変化している過程において、点群データが予め設定された密度となるように、点群データのうちの一部を選択する処理を実行してもよい。
この場合には、例えば、視点を動かしている場合には、点群データが4mmピッチとなるように設定し、視点が静止している場合には、点群データが2mmピッチとなるように設定する。これにより、管理対象物の3次元形状を確認している作業において、視点を動かして確認するべき箇所を探しているタイミングでは点群データが粗くなり、アニメーションソフトによる点群データの描画速度を早くすることができる。一方、視点を固定して管理用動画を閲覧しているタイミングでは、点群データが密になり、詳細の形状を確認することができる。
なお、前述した点データの選択方法は、複数の方法を同時に、又は順番に行ってもよい。
【0030】
また、前述のように、互いに隣り合う点データ同士の位置間隔を広くして、点群データにおける点データの分布密度を粗にした際に、点データのサイズを大きくしてもよい。例えば、点データ同士の感覚を1mmから2mmに変更した際に、距離が変化した比率に応じて、点データの直径を倍の大きさにすることができる。これにより、点データの分布密度が粗になった場合であっても、点データ同士の間の隙間が広くなるのを抑えることで、点群データ全体の視認性を確保することができる。なお、点データの大きさの変化率は、点データ同士の位置間隔の変化率と異なっていてもよい。
【0031】
動画編集部21Dは、管理用動画上に表現された管理対象物に対して、銘板データ90をリンクさせる処理を実行する。ここで、銘板データ90は、管理対象物の属性情報のうちの一部が記されたプレート状をなし、管理用動画が示す仮想空間上に表示される表示板を示すデータである。銘板データ90は、管理用動画において、管理対象物の設備と画面上の位置が重なるように、ユーザがその位置を操作して配置されることで、当該設備とリンクされる。
【0032】
図6は、図4に示す管理用動画に、銘板データ90を張り付けた状態を示す図である。図7は、図6に示す管理用動画のA部拡大図である。
図6および図7に示すように、管理用動画に描画された施設のうち、ポンプや配電盤といった保守・点検が必要となる設備毎に、銘板データ90が張り付けられている。
銘板データ90は、画面の左端にその名称をリスト表示することができる。リスト表示された銘板データ90の名称を選択すると、管理用動画上の該当する設備が拡大表示される。
【0033】
銘板データ90は、そこに記された属性情報が示す設備を構成する点データを基準に位置が設定されている。すなわち、銘板データ90は、当該点データが含む座標情報が示す仮想空間上の座標位置に固定される。
具体的には、銘板データ90を新たに管理用動画に登録する際に、ユーザが設備を構成する点データを選択してクリックする。そのクリックした際の管理用動画の視点から見て、最も近い位置にある点データの座標情報が、銘板データ90の座標情報となる。そして、当該点データから視点に向かう方向を、銘板データ90が向くように銘板データ90の向きが設定される。
【0034】
銘板データ90には、管理対象物の管理に用いられる管理用データがリンクされている。図8は銘板データ90とリンクされた管理用データの一例である管理台帳を示す図である。
図8に示すように、管理台帳には、設備の各属性が記載されている。管理台帳を確認することで、当該管理対象物の詳細を確認することができる。
管理用動画上の銘板データ90、又はリスト表示された銘板データ90の名称を選択することで、管理台帳の内容を閲覧することができる。
【0035】
銘板データ90と管理台帳とは、双方向に検索可能となっている。すなわち、管理台帳のデータに記載されたURLから、管理用動画の銘板データ90にアクセスすることで、管理台帳に記載されている設備が、どのような場所でどのような状態で使用されている設備であるかという情報を、銘板データ90が付された管理用動画を閲覧することで確認することができる。
【0036】
また、動画編集部21Dは、銘板データ90の表示形態を調整する処理を実行する。銘板データ90の表示形態とは、銘板データ90の表示位置、サイズ、色のうちの少なくともいずれか1つである。
例えば、ユーザが確認したい銘板データ90を選択することで、その内容を拡大表示することができる。このため、銘板データ90に記載された情報が確認しやすくなる。また、ユーザが、銘板データ90が表示される位置を移動させて、銘板データ90の背景の形状が確認しやすくなる。
【0037】
また、動画編集部21Dは、銘板データ90の色を変化させる。
例えば、動画編集部21Dは、銘板データ90とリンクされた管理台帳を参照し、点検の時期に差し掛かっている管理対象物の設備について、該当する銘板データ90の色を、自動的に他の銘板データ90の色と変えてもよい。
また、動画編集部21Dは、点検作業が済んだ管理対象物の設備に該当する銘板データ90の色を、点検作業の担当者の入力により、他の銘板データ90の色と変化させてもよい。
このように、銘板データ90の色を変化させることで、保守・点検作業において留意すべき設備がどれであるかを即座にユーザに把握させることができる。
【0038】
また、銘板データ90とリンクされた管理用データは、管理台帳でなくてもよい。
例えば、管理対象物の様子をリアルタイムで撮影するウェブカメラによる撮影データを管理用データとして、銘板データ90とリンクさせることができる。これにより、例えば銘板データ90にリンクされたURLをクリックすることで、当該管理対象物のリアルタイムでの様子が撮影されたウェブカメラの動画を閲覧することができる。
【0039】
また、銘板データ90とリンクされた管理用データは、管理に使用される情報であってもよい。例えば、管理用データとして、管理対象物に対して施される保守・点検作業の作業内容を撮影し、作業内容の説明が付されたマニュアル動画を、銘板データ90とリンクさせることも可能である。この場合には、銘板データ90にリンクされたURLをクリックすることで、マニュアル動画を閲覧することができる。
【0040】
次に、図9を用いて、システム1の処理について説明する。図9は、システム1の処理を説明する図である。
まず、3次元点群スキャナ15が点群データの撮影を実行する(ステップS101)。この際、3次元点群スキャナ15は、管理対象物の3次元データを、3次元座標により記述する点群データを取得する。
【0041】
次に、ステップS101の後に、制御デバイス20は、点群データの取得を3次元点群スキャナ15に指示する(ステップS201)。
次に、ステップS201の後に、3次元点群スキャナ15は、点群データをユーザ端末10に向けて送信する(ステップS102)。
【0042】
次に、ステップS102の後に、データ取得部21Aは、3次元点群スキャナ15から送信された点群データを受け付ける(ステップS202)。
次に、ステップS202の後に、選択部21Bは、ユーザの指示により、取得した点群データのうち、動画化する点データを複数選択し、動画化する点群データを決定する(ステップS203)。
【0043】
次に、ステップS203の後に、動画生成部21Cは、アニメーションソフトを実行し、点群データから管理用動画を生成する(ステップS204)。これにより、管理対象物が点群により描画された管理用動画が生成される。
【0044】
次に、動画編集部21Dは、銘板データ90を張り付ける処理を実行する(ステップS205)。この処理では、ユーザが、管理用動画において、銘板データ90の位置を、当該銘板データ90が示す管理対象物の位置と合わせることで行われる。
これらの処理により作成された管理用動画を、管理対象物の保守・点検作業において、作業員が閲覧しながら管理対象物の状態を確認したり、管理対象物の属性を確認したりすることで、管理対象物の保守・点検作業が行われる。
【0045】
以上説明したように、システム1によれば、従来のシステムとは異なり、点群データから3次元モデルを作成することなく、一部の点データを選択したうえで管理用動画を生成する。このため、費用がかさむ3次元モデリングの作業を省略することができ、極めて廉価な構成により、点群データを用いた設備の維持管理用の動画を得ることができる。
これにより、高い収益が期待されない既設のインフラ施設の管理対象物の維持管理に、点群データを用いた管理用動画を採用することができる。
【0046】
また、保守・点検の現場での作業では、現地に点検に行く必要があることと、維持管理の費用を抑える観点から、汎用のポータブルなパソコンを使用する必要があるが、点群データのデータ容量が大きく、汎用のパソコンで点群データのイメージ処理を円滑に行うのが難しかった。
これに対してシステム1では、取得した点群データの一部を選択して表示することにより、動画化に要する処理の負荷を低減し、特に高い処理能力を有しない汎用のパソコンを用いた点群データのイメージ処理を円滑に行うことができる。
【0047】
また、点群データを3次元モデル化すると、実際の構造から乖離した近似的な形状として表現されるため、管理対象物の状態をリアルに表現することに改善の余地があった。
これに対してシステム1では、点群データを3次元モデル化することなく、そのまま用いることにより、維持管理の費用を抑えるとともに、管理対象物の状態を現実の状態に即してリアルに表現することができる。
【0048】
また、昨今の少子高齢化に伴い、熟練した技術者の維持管理ノウハウを若者に継承したり、外国人労働者の採用を進めるうえで、動画を活用して円滑な指導を行ったりすることが求められていた。
これに対して、システム1では、点群データにより描画された管理用動画に、例えば維持管理作業のマニュアル動画をリンクして記憶させることで、熟練した技術者の維持管理ノウハウを、後世に正確に継承したり、外国人労働者の採用を進めるうえで、円滑に指導を行ったりすることができる。
【0049】
また、維持管理業務のデジタル化によって、現地に赴いて行う作業の工数を減らすとともに、例えばパンデミック等の非常事態の発生により、人の物理的な移動が困難な状況下でも、可能な限り業務が実行できるようにすることが求められていた。
これに対して本発明では、動画により維持管理に付随する確認作業等を行うことができるので、現地に赴いて行う作業に要する工数を減らして、維持管理を効率化できるとともに、パンデミック等の非常事態が生じたことにより人の物理的な移動が困難な状況下でも、可能な限り業務が実行できるようになる。
【0050】
また、点群データを構成する点データのうちの一部を削除することなく、描画する点データを選択する処理を行うので、一部の点データを削除した後の点群データを新たに保存する必要がなく、処理の負荷を抑えることができる。
【0051】
また、管理用動画上の管理対象物に対して、銘板データ90をリンクさせることにより、管理対象物である設備の属性を管理用動画に描画することで、当該設備の状態等を容易に確認することができる。
【0052】
また、銘板データ90に管理対象物の管理に用いられる管理用データがリンクされているので、様々な管理用データを銘板に紐づけて、保守・点検作業に活用することができる。
【0053】
また、管理対象物が、既設の下水設備である場合には、ポンプや配管のような複雑な形状の構造物を、点群データを用いて3次元形状を簡易に描画することができる。
【0054】
<変形例>
次に、本発明の変形例について図10を用いて説明する。図10は、システム1の変形例により作成した管理用動画の一例を示す図である。
この変形例では、取得した点群データにおいて、管理対象物とともに撮影された構造物のうち、単純な形状を有する構造物を3次元モデル化し、3次元モデル化した部分の点データを、動画化する点群データの候補から除外する。そして、3次元モデル化した部分の点データ以外の点データから、一部の点データを複数選択して動画化する点群データを決定する処理を実行している。
【0055】
図10に示すB部は、管理対象物である施設の床を指している。この床については3次元形状を点群で正確に描画する必要はない。そして、ユーザが床の一部の領域を指定することで、床を3次元モデル化する処理を実行する。そして、3次元モデル化した部分の点群データについては、動画化する点群データの候補から除外する。そして、3次元モデル化した点データ以外の点データを複数選択して動画化する点群データを決定する。
これにより、床を構成する複数の点データからなる点群データが、一つの3次元モデルに置き換えられるため、データの数を大幅に削減することができ、アニメーションソフトによる点群データの描画処理の負荷を効率的に削減することができる。
【0056】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。また、上記実施形態および変形例で説明した装置の構成は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせ可能である。
また、本発明のプログラムは、複数のソースコードにより表現されてもよいし、本発明のシステム1は、複数のハードウェア資源により実現されてもよい。
【0057】
例えば、上記実施形態では管理対象物として、下水設備を例に挙げて説明したが、このような態様に限られない。管理対象物としては、例えば他の既設のインフラ設備として、上水設備、鉄道、トンネル、道路、公園、空港、港湾、河川、ダム、学校、電力設備、ガス設備、地下施設、廃棄物処理施設等、様々な分野に適用することができる。また、既設の設備への採用に限られず、新設の設備にシステム1を採用してもよい。
【0058】
<付記>
本発明の実施形態について、以下に付記を示す。
【0059】
(付記1)
コンピュータのプロセッサに、
管理対象物を含む空間を3次元点群スキャナ15により計測して取得した点群データの入力を受け付ける第1ステップ(ステップS202)と、
取得した点群データのうち、一部の点データを複数選択して動画化する点群データを決定する第2ステップ(ステップS203)と、
第2ステップにおいて選択された点群データを動画化して、管理対象物が仮想空間上に3次元データとして示された管理用動画を生成する第3ステップ(ステップS204)と、を実行させる設備管理プログラム。
【0060】
(付記2)
第2ステップ(ステップS203)では、
点群データのうち、互いに隣り合う点データ同士の位置間隔を規定することにより、取得した点群データのうちの一部を選択する処理を実行する、(付記1)に記載の設備管理プログラム。
【0061】
(付記3)
第2ステップ(ステップS203)では、
管理用動画の視点から、所定範囲外に位置する点群データを粗にすることにより、取得した点群データのうちの一部を選択する処理を実行する、(付記1)又は(付記2)に記載の設備管理プログラム。
【0062】
(付記4)
第2ステップ(ステップS203)では、
管理用動画の視点が変化している過程において、点群データが予め設定された密度となるように、取得した点群データのうちの一部を選択する処理を実行する、(付記1)から(付記3)のいずれかに記載の設備管理プログラム。
【0063】
(付記5)
第2ステップ(ステップS203)では、
管理対象物とともに撮影された構造物のうち、単純な形状を有する構造物を構成する複数の点データを3次元モデル化し、3次元モデル化した部分の点データ以外の点データを複数選択して動画化する点群データを決定する処理を実行する、(付記1)から(付記4)のいずれかに記載の設備管理プログラム。
【0064】
(付記6)
コンピュータのプロセッサに、
管理用動画上に表現された管理対象物に対して、当該管理対象物の属性情報が記され、かつ管理用の動画において、当該管理対象物と重なるようにユーザにより配置された銘板データ90をリンクさせる第4ステップ(ステップS205)を実行させる、(付記1)から(付記5)のいずれかに記載の設備管理プログラム。
【0065】
(付記7)
銘板データ90には、管理対象物の管理に用いられる管理用データがリンクされている、(付記6)に記載の設備管理プログラム。
【0066】
(付記8)
管理用データは、管理対象物に関する管理台帳である、(付記7)に記載の設備管理プログラム。
【0067】
(付記9)
管理用データは、管理対象物の様子をリアルタイムで撮影するウェブカメラによる撮影データである、(付記7)に記載の設備管理プログラム。
【0068】
(付記10)
管理用データは、管理対象物に対して施される保守・点検作業の作業内容を撮影し、作業内容の説明が付されたマニュアル動画である(付記7)に記載の設備管理プログラム。
【0069】
(付記11)
第4ステップ(ステップS205)では、銘板データ90の表示形態を調整する処理を実行する、(付記6)に記載の設備管理プログラム。
【0070】
(付記12)
管理対象物は、既設の下水設備である、(付記1)から(付記11)のいずれかに記載の設備管理プログラム。
【0071】
(付記13)
コンピュータのプロセッサが、
管理対象物を含む空間を3次元点群スキャナ15により計測して取得した点群データの入力を受け付ける第1ステップ(ステップS202)と、
取得した点群データのうち、一部の点データを複数選択して動画化する点群データを決定する第2ステップ(ステップS203)と、
第2ステップにおいて選択された点群データを動画化して、管理対象物が仮想空間上に3次元データとして示された管理用動画を生成する第3ステップ(ステップS204)と、を実行する設備管理方法。
【0072】
(付記14)
管理対象物を含む空間を3次元点群スキャナ15により計測して取得した点群データの入力を受け付ける第1手段21Aと、
取得した点群データのうち、一部の点データを複数選択して動画化する点群データを決定する第2手段21Bと、
第2手段21Bが選択した点群データを動画化して、管理対象物が仮想空間上に3次元データとして示された管理用動画を生成する第3手段21Cと、を備える設備管理システム1。
【符号の説明】
【0073】
1 管理システム
10 ユーザ端末
20 制御デバイス
60 サーバ
100 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-02-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータのプロセッサに、
管理対象物を含む空間を3次元点群スキャナにより計測して取得した点群データの入力を受け付ける第1ステップと、
前記取得した点群データのうち、一部の点データを複数選択して動画化する点群データを決定する第2ステップと、
前記第2ステップにおいて選択された前記点データからなる点群データを動画化して、前記管理対象物が仮想空間上に3次元データとして示された管理用動画を生成する第3ステップと、
前記管理用動画上に表現された前記管理対象物に対して、当該管理対象物の属性情報が記され、かつ前記管理用動画において、当該管理対象物と重なるようにユーザにより配置された銘板データをリンクさせる第4ステップと、を実行させるプログラム。
【請求項2】
前記第2ステップでは、
前記管理対象物とともに撮影された構造物のうち、単純な形状を有する構造物を構成する複数の点データを3次元モデル化し、3次元モデル化した部分の点データ以外の点データを複数選択して動画化する点群データを決定する処理を実行する、請求項に記載のプログラム。
【請求項3】
前記銘板データには、前記管理対象物の管理に用いられる管理用データがリンクされている、請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記管理用データは、前記管理対象物に関する管理台帳である、請求項に記載のプログラム。
【請求項5】
前記管理用データは、前記管理対象物の様子をリアルタイムで撮影するウェブカメラによる撮影データである、請求項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記管理用データは、前記管理対象物に対して施される保守・点検作業の作業内容を撮影し、前記作業内容の説明が付されたマニュアル動画である請求項に記載のプログラム。
【請求項7】
前記第4ステップでは、前記銘板データの表示形態を調整する処理を実行する、請求項1から6のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項8】
前記管理対象物は、既設の下水設備である、請求項1からのいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項9】
コンピュータのプロセッサが、
管理対象物を含む空間を3次元点群スキャナにより計測して取得した点群データの入力を受け付ける第1ステップと、
前記取得した点群データのうち、一部の点データを複数選択して動画化する点群データを決定する第2ステップと、
前記第2ステップにおいて選択された前記点データからなる点群データを動画化して、前記管理対象物が仮想空間上に3次元データとして示された管理用動画を生成する第3ステップと、
前記管理用動画上に表現された前記管理対象物に対して、当該管理対象物の属性情報が記され、かつ前記管理用動画において、当該管理対象物と重なるようにユーザにより配置された銘板データをリンクさせる第4ステップと、を実行する方法。
【請求項10】
管理対象物を含む空間を3次元点群スキャナにより計測して取得した点群データの入力を受け付ける第1手段と、
前記取得した点群データのうち、一部の点データを複数選択して動画化する点群データを決定する第2手段と、
前記第2手段が選択した前記点データからなる点群データを動画化して、前記管理対象物が仮想空間上に3次元データとして示された管理用動画を生成する第3手段と、
前記管理用動画上に表現された前記管理対象物に対して、当該管理対象物の属性情報が記され、かつ前記管理用動画において、当該管理対象物と重なるようにユーザにより配置された銘板データをリンクさせる第4手段と、を備えるシステム。