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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038871
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】二次電池及び二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20220303BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20220303BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20220303BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220303BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M4/02 Z
H01M4/13
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143572
(22)【出願日】2020-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼士 祐輔
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H028AA05
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC10
5H028CC12
5H028HH01
5H028HH03
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL06
5H029AM02
5H029AM07
5H029BJ14
5H029HJ08
5H029HJ09
5H029HJ12
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA07
5H050CB07
5H050FA05
5H050FA08
5H050FA10
5H050HA08
5H050HA09
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】効果的にハイレート劣化の進行を抑制する。
【解決手段】二次電池は、セパレータ5を挟んで積層された正負の電極シート35を捲回してなる電極体10を備える。そして、電極体10は、この電極体10の捲回軸方向に離間した一対の低空隙率部51と、これら両低空隙率部51間に設けられた該両低空隙率部51よりも空隙率の高い高空隙率部52と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを挟んで積層された正負の電極シートを捲回してなる電極体を備え、
前記電極体は、該電極体の捲回軸方向に離間した一対の低空隙率部と、前記両低空隙率部間に設けられた該両低空隙率部よりも空隙率の高い高空隙率部と、を備える二次電池。
【請求項2】
前記各電極シートには、互いに異なる空隙率を有して前記電極体の周方向となる前記各電極シートの長さ方向に延在する第1領域及び第2領域が設定されるとともに、
前記各電極シートは、前記電極体の捲回軸方向となる前記各電極シートの幅方向に離間した一対の前記第1領域間に該各第1領域よりも前記空隙率の高い前記第2領域が配置された構成を有する請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記各電極シートは、前記電極体の捲回軸方向となる前記各電極シートの幅方向に離間した一対の前記第2領域間に前記第1領域が配置された構成を有する
請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記各電極シートは、シート状の集電体と該集電体上に積層された電極活物質層とを有するものであって、
前記第2領域は、前記電極活物質層に設けられた複数の微細穴を有する穴空け加工部である請求項2又は請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記各電極シートは、シート状の集電体と該集電体上に積層された電極活物質層とを有するものであって、
前記第1領域は、前記電極活物質層上に積層された絶縁被膜層を有して積層方向に圧縮された積層圧縮成形部である請求項2~請求項4の何れか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記各電極シートは、シート状の集電体と該集電体上に積層された電極活物質層とを有するものであって、
前記第1領域及び第2領域は、互いに前記電極活物質層の材料密度が異なる
請求項2~請求項5の何れか一項に記載の二次電池。
【請求項7】
セパレータを挟んで積層された正負の電極シートを捲回してなる電極体を備えた二次電池の製造方法であって、
互いに異なる空隙率を有して前記電極体の周方向となる前記各電極シートの長さ方向に延在する第1領域及び第2領域を前記各電極シートに形成する工程を備えるとともに、
前記第1領域及び第2領域を前記各電極シートに形成する工程は、前記電極体の捲回軸方向となる前記各電極シートの幅方向に離間した一対の前記第1領域間に該各第1領域よりも前記空隙率の高い前記第2領域を配置するものである二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池及び二次電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セパレータを挟んで積層された正負の電極シートを捲回してなる電極体を備えた二次電池がある。例えば、特許文献1に記載の二次電池は、その電極体に非水性の電解液を含浸させたリチウムイオン二次電池としての構成を有している。更に、その電極体を正負の電極端子を有したケース内に封缶することにより単電池が形成される。そして、上記従来例の二次電池は、複数の単電池が束ねられた組電池としての構成を有している。
【0003】
また、上記のような電極体を備える二次電池には、大きな電流が流れるハイレート充放電時、その電極体が膨張することで、この電極体に含浸された電解液が外部に流出するという問題がある。
【0004】
この点を踏まえ、上記特許文献1に記載の二次電池は、組電池を構成する各単電池間に介在されたスペーサが、そのケースを介して電極体の端部に荷重を加える構成となっている。更に、例えば、特許文献2には、そのスペーサによる押圧位置及び非押圧位置を予め規定する構成が開示されている。そして、このような構成を採用することで、上記のようなハイレート劣化の進行を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-4724号公報
【特許文献2】特開2018-181765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術のようにケースの外側から電極体を押圧する構成では、その荷重の印加による電解液の流出抑制効果にも限りがある。そして、その荷重の印加により、ケースの耐久性が低下する、或いは、その電極反応にムラが生ずる等といった問題が発生する可能性があることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、効果的にハイレート劣化の進行を抑制することのできる二次電池及び二次電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する二次電池は、セパレータを挟んで積層された正負の電極シートを捲回してなる電極体を備え、前記電極体は、該電極体の捲回軸方向に離間した一対の低空隙率部と、前記両低空隙率部間に設けられた該両低空隙率部よりも空隙率の高い高空隙率部と、を備える。
【0009】
上記構成によれば、電極体の捲回軸方向において、その低空隙率部を超えた電解液の流動が抑制される。その結果、電極体に含浸された電解液が、一対の低空隙率部間に挟まれた高空隙率部内に留まりやすくなる。そして、これにより、その電極体の軸方向端面を介した電解液の流出を抑制することができる。
【0010】
更に、高空隙率部よりも大きな密度を有する低空隙率部は、その高空隙率部よりも大きな膨張率を有している。このため、ハイレート充放電時には、その膨張率の差異に基づいて、低空隙率部から高空隙率部に向かう電解液の流れが形成される。そして、これにより、高空隙率部内の電解液に対流が生ずることで、その電極体に含浸された電解液に塩濃度のムラが生じ難くなる。従って、上記構成によれば、効果的に、そのハイレート劣化の進行を抑制することができる。
【0011】
上記課題を解決する二次電池において、前記各電極シートには、互いに異なる空隙率を有して前記電極体の周方向となる前記各電極シートの長さ方向に延在する第1領域及び第2領域が設定されるとともに、前記各電極シートは、前記電極体の捲回軸方向となる前記各電極シートの幅方向に離間した一対の前記第1領域間に該各第1領域よりも前記空隙率の高い前記第2領域が配置された構成を有することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、簡素な構成にて、容易に、その捲回軸方向に離間した一対の低空隙率部と、これら両低空隙率部間に設けられた高空隙率部と、を備えた電極体を形成することができる。
【0013】
上記課題を解決する二次電池において、前記各電極シートは、前記電極体の捲回軸方向となる前記各電極シートの幅方向に離間した一対の前記第2領域間に前記第1領域が配置された構成を有することが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、電極体に対し、その捲回軸方向両側を一対の低空隙率部に挟まれた複数の高空隙率部を形成することができる。その結果、より効果的に、そのハイレート劣化の進行を抑制することができる。
【0015】
上記課題を解決する二次電池において、前記各電極シートは、シート状の集電体と該集電体上に積層された電極活物質層とを有するものであって、前記第2領域は、前記電極活物質層に設けられた複数の微細穴を有する穴空け加工部であることが好ましい。
【0016】
即ち、電極活物質層に複数の微細穴を有する穴空け加工部は、穴空け加工が施されていない部分との比較において、より高い空隙率を有している。従って、上記構成によれば、容易に、精度よく、電極体を構成する各電極シートに対して、異なる空隙率を有した第1領域及び第2領域を設定することができる。
【0017】
上記課題を解決する二次電池において、前記各電極シートは、シート状の集電体と該集電体上に積層された電極活物質層とを有するものであって、前記第1領域は、前記電極活物質層上に積層された絶縁被膜層を有して積層方向に圧縮された積層圧縮成形部であることが好ましい。
【0018】
即ち、電極活物質層と絶縁被膜層とが一体に圧縮された積層圧縮成形部は、絶縁被膜層を有しない部分よりも圧縮率の高い高密度な組成を有する。従って、上記構成によれば、容易に、精度よく、電極体を構成する各電極シートに対して、異なる空隙率を有した第1領域及び第2領域を設定することができる。
【0019】
上記課題を解決する二次電池において、前記各電極シートは、シート状の集電体と該集電体上に積層された電極活物質層とを有するものであって、前記第1領域及び第2領域は、互いに前記電極活物質層の材料密度が異なることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、容易に、精度よく、電極体を構成する各電極シートに対して、異なる空隙率を有した第1領域及び第2領域を設定することができる。
上記課題を解決する二次電池の製造方法は、セパレータを挟んで積層された正負の電極シートを捲回してなる電極体を備えた二次電池の製造方法であって、互いに異なる空隙率を有して前記電極体の周方向となる前記各電極シートの長さ方向に延在する第1領域及び第2領域を前記各電極シートに形成する工程を備えるとともに、前記第1領域及び第2領域を前記各電極シートに形成する工程は、前記電極体の捲回軸方向となる前記各電極シートの幅方向に離間した一対の前記第1領域間に該各第1領域よりも前記空隙率の高い前記第2領域を配置するものである。
【0021】
上記構成によれば、簡素な構成にて、容易に、その捲回軸方向に離間した一対の低空隙率部と、これら両低空隙率部間に設けられた高空隙率部と、を備えた電極体を形成することができる。そして、これにより、効果的にハイレート劣化の進行を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、効果的にハイレート劣化の進行を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】二次電池の斜視図。
図2】電極体の分解図。
図3】二次電池の側面図。
図4】電極体の斜視図。
図5】電極体の側面図。
図6】電極シートの平面図。
図7】電極シートの断面図。
図8】電極シートの製造工程を示すフローチャート。
図9】第2の実施形態における電極シートの製造工程を示すフローチャート。
図10】第2の実施形態における電極シートの製造工程を説明する断面図。
図11】第2の実施形態における電極シートの断面図。
図12】別例の電極シートの断面図。
図13】別例の電極体の側面図。
図14】別例の電極体の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1の実施形態]
以下、二次電池に関する第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、二次電池1は、正極3、負極4、及びセパレータ5を一体化した電極体10と、この電極体10を収容するケース20と、を備えている。そして、本実施形態の二次電池1は、そのケース20内の電極体10に、図示しない非水性の電解液を含浸させたリチウムイオン二次電池としての構成を有している。
【0025】
詳述すると、本実施形態の二次電池1において、正極3、負極4、及びセパレータ5は、シート状の外形を有して積層される。そして、これら正極3及び負極4、及びセパレータ5の積層体を捲回することにより、正極3と負極4との間にセパレータ5を挟み込む状態で、その径方向に正負の電極とセパレータ5とが交互に並ぶ電極体10が形成されている。
【0026】
また、本実施形態のケース20は、扁平略四角箱状のケース本体21と、このケース本体21の開口端21xを閉塞する蓋部材22と、を備えている。そして、本実施形態の電極体10は、径方向外側から押圧されることにより、そのケース20の箱形状に対応する扁平した外形を有するものとなっている。
【0027】
さらに詳述すると、図2に示すように、本実施形態の二次電池1において、正極3及び負極4は、それぞれ、シート状の外形を有した集電体31と、この集電体31上に積層された電極活物質層32と、を備えた電極シート35としての構成を有する。
【0028】
具体的には、アルミニウム等を素材とする正極集電体31P上に、正極活物質となるリチウム遷移金属酸化物を含んだスラリーを塗工することにより、その正極活物質層32Pを備えた正極3用の電極シート35Pが形成される。また、銅等を素材とする負極集電体31N上に、負極活物質となる炭素系材料を含んだスラリーを塗工することにより、その負極活物質層32Nを備えた負極4用の電極シート35Nが形成される。更に、本実施形態の二次電池1において、これら正負の電極シート35P,35Nは、帯状に整形される。そして、本実施形態の電極体10は、セパレータ5を挟んで積層された正負の電極シート35P,35Nが、その帯形状の幅方向(図2中、左右方向)に延びる捲回軸L周りに捲回された構造を有している。
【0029】
また、図1に示すように、ケース20の蓋部材22には、ケース20の外側に突出する正極端子37及び負極端子38が設けられている。更に、図2に示すように、各電極シート35には、それぞれ、その集電体31上に電極活物質層32が形成されていない未塗工部39が形成されている。そして、本実施形態の二次電池1は、これらの未塗工部39を利用して、その正極3を構成する電極シート35Pと正極端子37とが電気的に接続され、及び、その負極4を構成する電極シート35Nと負極端子38とが電気的に接続される構成となっている。
【0030】
具体的には、図1及び図2に示すように、本実施形態の電極体10は、その捲回軸Lが長尺略矩形板状をなす蓋部材22の長手方向(図1中、左右方向)に沿う状態で、ケース本体21内に収容される。また、この電極体10は、その捲回軸Lの一端側(図2中、左側の端部)に正極3を構成する電極シート35Pの未塗工部39Pを有し、他端側(同図中、右側の端部)に負極4を構成する電極シート35Nの未塗工部39Nを有している。更に、本実施形態の二次電池1においては、この状態で、その正極3を構成する電極シート35Pの未塗工部39Pと正極端子37とが接続部材37xを介して接続されるとともに、その負極4を構成する電極シート35Nの未塗工部39Nと負極端子38とが接続部材38xを介して接続される。そして、本実施形態の二次電池1は、その後、ケース本体21の開口端21xに対して蓋部材22を接合することにより、その正極3と正極端子37、及び負極4と負極端子38とが電気的に接続された状態で、この電極体10をケース20内に封缶する構成となっている。
【0031】
尚、本実施形態の二次電池1において、ケース本体21及び蓋部材22は、例えば、アルミニウム合金やステンレス鋼等の金属材料を用いて形成される。そして、これらのケース本体21及び蓋部材22は、例えば、レーザー溶接等を用いて液密に接合される。
【0032】
また、図3に示すように、二次電池1は、その電極体10とともにケース20内に収容される絶縁フィルム41を備えている。更に、この絶縁フィルム41は、ケース本体21の開口端21x側に開口する袋形状を有してケース20内に収容される。そして、本実施形態の二次電池1は、この絶縁フィルム41の袋形状内に電極体10を配置することで、その電極体10とケース20とが絶縁される構成になっている。
【0033】
更に、図1に示すように、本実施形態の二次電池1においては、蓋部材22に設けられた注入口42を介して、そのケース20内に電解液が注入される。尚、リチウムイオン二次電池としての構成を有する二次電池1の電解液には、有機溶媒中に支持塩となるリチウム塩を溶解させたものが用いられる。そして、本実施形態の二次電池1は、これにより、そのケース20内に封缶された電極体10に対して電解液が含浸される構成になっている。
【0034】
本実施形態の二次電池1において、注入口42は、長尺略矩形板状をなす蓋部材22の長手方向略中央部分に形成された安全弁43の近傍に設けられている。また、ケース20内には、その含浸により電極体10に保持させる液量を超えた余剰の電解液が注入される。そして、本実施形態の二次電池1は、電解液の注入後、例えば、レーザー溶接等によって、その注入口42が封止される構成となっている。
【0035】
(ハイレート劣化の抑制構造)
次に、本実施形態の二次電池1において、その電極体10に形成されたハイレート劣化抑制構造について説明する。尚、以下に参照する各図中の電極体10については、説明の便宜上、その形状を簡略化して図示するものとする。
【0036】
図4及び図5に示すように、本実施形態の二次電池1において、電極体10は、その捲回軸Lの軸線方向に沿って交互に設けられた低空隙率部51及び高空隙率部52を備えている。具体的には、本実施形態の電極体10は、捲回軸Lの軸線方向において、その両端部及び中央部に設けられた低空隙率部51a~51cと、これらの各低空隙率部51間に設けられた高空隙率部52a,52bと、を備えている。そして、本実施形態の二次電池1は、これにより、その電極体10に生ずるハイレート劣化の進行を抑制する構成となっている。
【0037】
即ち、大きな電流が流れるハイレート充放電時には、その電極体10が膨張することにで、この電極体10に含浸された電解液が外部に流出するという問題が生ずる。具体的には、セパレータ5を挟んで積層された正負の電極シート35を捲回してなる本実施形態の電極体10においては、その正負の電極シート35の巻き目が現われる電極体10の軸方向端面10sから(図2参照)、この電極体10の外部に電解液が流出する。更に、このような電解液の流出は、正極3を構成する電極シート35Pよりも、リチウムイオンの脱挿入による膨張収縮の大きい負極4を構成する電極シート35Nにおいて、より顕著なものとなる。このため、ハイレート充電時には、その塩濃度の低い電解液が外部に流出し、ハイレート放電時には、その塩濃度の高い電解液が外部に流出する。そして、これにより、その電極体10に含浸された電解液に塩濃度のムラが生ずることで、二次電池1の内部抵抗が上昇することになる。
【0038】
この点を踏まえ、本実施形態の電極体10は、上記のように捲回軸方向に離間して設けられた一対の低空隙率部51,51間、換言すると、二つ一組の低空隙率部51,51の間に、その高空隙率部52を配置する構成となっている。具体的には、本実施形態の電極体10に設定された2つの高空隙率部52a,52bのうち、一方の高空隙率部52aは、電極体10の捲回軸方向、一方側の端部(各図中、左側の端部)に設けられた低空隙率部51aと中央部に設けられた低空隙率部51cとを対として、これらの両低空隙率部51a,51c間に配置されている。そして、他方の高空隙率部52bは、その電極体10の捲回軸方向における他方側の端部(各図中、右側の端部)に設けられた低空隙率部51bと中央部に設けられた低空隙率部51cとを対として、これらの両低空隙率部51b,51c間に配置されている。
【0039】
即ち、このような構成を採用することで、電極体10の捲回軸方向において、その各低空隙率部51を超えた電解液の流動が抑制される。その結果、電極体10に含浸された電解液が、その一対の低空隙率部51,51間に挟まれた高空隙率部52内に留まりやすくなる。そして、本実施形態の電極体10は、これにより、この高空隙率部52を補液スペース55とすることで、その軸方向端面10sを介した電解液の流出を抑制する構成になっている。
【0040】
更に、高空隙率部52よりも大きな密度を有する低空隙率部51は、その高空隙率部52よりも大きな膨張率を有している。このため、ハイレート充放電時には、その低空隙率部51から高空隙率部52に向かう電解液の流れが形成される。そして、本実施形態の電極体10は、これにより、高空隙率部52内の電解液に対流が生ずることで、その含浸された電解液に塩濃度のムラが生じ難い構成となっている。
【0041】
詳述すると、図6に示すように、本実施形態の二次電池1において、その電極体10を構成する各電極シート35には、互いに異なる空隙率を有して、その帯形状をなす各電極シート35の長さ方向(図6中、上下方向)、つまりは捲回されることにより電極体10の周方向に延在する帯状の第1領域R1及び第2領域R2が設定されている。更に、本実施形態の各電極シート35においては、その第1領域R1が低空隙率領域αとしての構成を有し、その第2領域R2が高空隙率領域βとしての構成を有する。そして、本実施形態の各電極シート35は、それぞれ、その電極体10の捲回軸方向となる帯形状の幅方向(図6中、左右方向)に離間した対となる二つ一組の第1領域R1,R1の間に、これら両第1領域R1,R1よりも空隙率の高い第2領域R2が配置された構成となっている。
【0042】
具体的には、図6及び図7に示すように、本実施形態の各電極シート35は、それぞれ、その集電体31上に積層された電極活物質層32の幅方向両端部及び中央部に第1領域R1を有している。そして、これらの各第1領域R1間に挟まれた幅方向位置に、それぞれ、その第2領域R2を有している。
【0043】
即ち、各電極シート35において、電極活物質層32の幅方向中央部に設けられた第1領域R1は、幅方向に離間した一対の第2領域R2,R2間に配置されている。そして、本実施形態の二次電池1においては、セパレータ5を挟んで積層されたこれらの各電極シート35を捲回することにより、上記のように、その捲回軸方向に沿って交互に設けられた低空隙率部51及び高空隙率部52を備える電極体10が形成されている(図4及び図5参照)。
【0044】
さらに詳述すると、図8のフローチャートに示すように、本実施形態の二次電池1においては、各電極シート35の製造時、集電体31上に電極活物質を含んだスラリーを塗布することにより電極活物質層32を形成した後(ステップ101)、その電極活物質層32に対する穴空け加工が行われる(ステップ102)。
【0045】
具体的には、この穴空け加工は、例えば、レーザー照射、或いは金型等を用いて行われる。また、穴空け加工が施されることにより、その電極活物質層32に複数の微細穴(図示略)が形成される。更に、この穴空け加工は、各電極シート35の第2領域R2に対して行われる。そして、本実施形態の各電極シート35は、これにより、その互いに異なる空隙率を有した第1領域R1及び第2領域R2が形成される構成となっている。
【0046】
次に、本実施形態の作用について説明する。
即ち、電極シート35の電極活物質層32に対して穴空け加工を施すことで、その穴空け加工が施された部分、つまり穴空け加工部60は、複数の微細穴を有するものとなる。従って、上記のように各電極シート35の第2領域R2を対象とした穴空け加工を実行することにより、その第2領域R2が高空隙率領域βとなる。そして、この第2領域R2との比較において、その穴空け加工が施されていない第1領域R1が低空隙率領域αとなる。
【0047】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)二次電池1は、セパレータ5を挟んで積層された正負の電極シート35を捲回してなる電極体10を備える。そして、電極体10は、この電極体10の捲回軸方向に離間した一対の低空隙率部51と、これら両低空隙率部51間に設けられた該両低空隙率部51よりも空隙率の高い高空隙率部52と、を備える。
【0048】
上記構成によれば、電極体10の捲回軸方向において、その低空隙率部51を超えた電解液の流動が抑制される。その結果、電極体10に含浸された電解液が、一対の低空隙率部51,51間に挟まれた高空隙率部52内に留まりやすくなる。そして、これにより、その電極体10の軸方向端面10sを介した電解液の流出を抑制することができる。
【0049】
更に、高空隙率部52よりも大きな密度を有する低空隙率部51は、その高空隙率部52よりも大きな膨張率を有している。このため、ハイレート充放電時には、その膨張率の差異に基づいて、低空隙率部51から高空隙率部52に向かう電解液の流れが形成される。そして、これにより、高空隙率部52内の電解液に対流が生ずることで、その電極体10に含浸された電解液に塩濃度のムラが生じ難くなる。従って、上記構成によれば、効果的に、そのハイレート劣化の進行を抑制することができる。
【0050】
(2)電極体10を構成する各電極シート35には、互いに異なる空隙率を有して電極体10の周方向となる各電極シート35の長さ方向に延在する第1領域R1及び第2領域R2が設定される。そして、各電極シート35は、電極体10の捲回軸方向となる各電極シート35の幅方向に離間した一対の第1領域R1間に、これらの両第1領域R1よりも空隙率の高い第2領域R2が配置された構成を有する。
【0051】
上記構成によれば、簡素な構成にて、容易に、その捲回軸方向に離間した一対の低空隙率部51と、これら両低空隙率部51間に設けられた高空隙率部52と、を備えた電極体10を形成することができる。
【0052】
(3)各電極シート35は、電極体10の捲回軸方向となる各電極シート35の幅方向に離間した一対の第2領域R2間に、第1領域R1が配置された構成を有する。
上記構成によれば、電極体10に対し、その捲回軸方向両側を一対の低空隙率部51に挟まれた複数の高空隙率部52を形成することができる。その結果、より効果的に、そのハイレート劣化の進行を抑制することができる。
【0053】
(4)各電極シート35は、シート状の集電体31と、この集電体31上に積層された電極活物質層32と、を有する。そして、第2領域R2は、その電極活物質層32に設けられた複数の微細穴を有する穴空け加工部60として構成される。
【0054】
即ち、電極活物質層32に複数の微細穴を有する穴空け加工部60は、穴空け加工が施されていない部分との比較において、より高い空隙率を有している。従って、上記構成によれば、容易に、精度よく、電極体10を構成する各電極シート35に対して、異なる空隙率を有した第1領域R1及び第2領域R2を設定することができる。
【0055】
[第2の実施形態]
以下、二次電池に関する第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0056】
本実施形態においては、上記第1の実施形態との比較において、その電極体10を構成する各電極シート35Bの構成、詳しくは、その互いに異なる空隙率を有して電極体10の周方向に延在する第1領域R1及び第2領域R2の構造、及び、その製造方法が相違する。
【0057】
詳述すると、図9図11に示すように、本実施形態においては、各電極シート35Bの製造時、集電体31上に電極活物質を含んだスラリーを塗布することにより電極活物質層32を形成した後(ステップ201)、その電極活物質層32上に、絶縁被膜層70が形成される(ステップ202)。
【0058】
具体的には、この絶縁被膜層70は、絶縁性の金属酸化物を用いて形成されることにより、熱抵抗層(HRL:Heat Resistance Layer)71としての機能を有する。また、この絶縁被膜層70は、各電極シート35Bにおける第1領域R1を設定する位置、即ち、各電極シート35Bの幅方向両端部及び中央部に形成される。更に、本実施形態では、上記ステップ202において、電極活物質層32上に絶縁被膜層70を積層した後、各電極シート35Bを、その電極活物質層32及び絶縁被膜層70の積層方向(図10中、上下方向)、つまりは各電極シート35Bの厚み方向に圧縮する(ステップ203)。そして、これにより、その部分的に絶縁被膜層70が積層された各電極シート35Bを平坦化することで、互いに異なる空隙率を有して各電極シート35Bの長さ方向(図10及び図11中、紙面に直交する方向)、つまりは電極体10の周方向に延在する第1領域R1及び第2領域R2が形成される構成となっている。
【0059】
即ち、本実施形態の各電極シート35Bにおいて、第1領域R1は、電極活物質層32上に積層された絶縁被膜層70を有して積層方向に圧縮された積層圧縮成形部75としての構成を有している。つまり、本実施形態の各電極シート35Bにおいては、電極活物質層32と絶縁被膜層70とが一体に圧縮されることにより、絶縁被膜層70を有しない第2領域R2よりも、その第1領域R1の方が、より圧縮率の高い高密度な組成を有するものとなっている。そして、本実施形態の各電極シート35Bは、これにより、その低空隙率領域αとしての構成を有する第1領域R1と、高空隙率領域βとしての構成を有する第2領域R2と、を備えるものとなっている。
【0060】
以上、本実施形態においてもまた、これらの各電極シート35Bを捲回することで、当該各電極シート35Bに形成された第1領域R1及び第2領域R2が、それぞれ、その電極体10に設定された低空隙率部51及び高空隙率部52を形成する。従って、本実施形態の構成を採用しても上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
図12に示す電極シート35Cのように、第1領域R1と第2領域R2とで、電極活物質層32の材料密度が異なる構成を採用してもよい。このような構成を採用しても、その第1領域R1及び第2領域R2に対して、互いに異なる空隙率を設定することができる。
【0063】
例えば、この図12に示す別例においては、各電極シート35Cの製造時、集電体31上に電極活物質層32を形成する際、第1領域R1と第2領域R2とを区別して、その電極活物質を含んだスラリーの塗工が行われる。具体的には、第2領域R2に対しては、粒子の大きさが略均質なスラリーを塗布する一方、第1領域R1に対しては、その第2領域R2に塗布するスラリーの粒子よりも小さな粒子が混在したスラリーを塗布する。即ち、比較的大きな粒子と小さな粒子とが混在することにより、その大きな粒子が形成する隙間内に小さな粒子が入り込む。そして、これにより、第2領域R2よりも第1領域R1の材料密度を高くすることで、高材料密度部81である第1領域R1が低空隙率領域αとなり、低材料密度部82である第2領域R2が高空隙率領域βとなる。
【0064】
・上記実施形態では、電極体10は、その捲回軸方向、両端部及び中央部に設けられた低空隙率部51a~51cと、これらの各低空隙率部51間に設けられた高空隙率部52a,52bと、を備えることとした。
【0065】
しかし、これに限らず、例えば、図13に示すように、電極体10Dの捲回軸方向、その両端部に設けられた低空隙率部51に加え、これらの両低空隙率部51の間となる位置に、互いに離間した複数の低空隙率部51を設ける。そして、これら各低空隙率部51間に、それぞれ、高空隙率部52を配置する構成としてもよい。このような構成を採用することで、その捲回軸方向両側を一対の低空隙率部51に挟まれた高空隙率部52の数を増やすことができる。
【0066】
・また、図14に示す電極体10Eのように、捲回軸方向に離間した一対の低空隙率部51間に配置された高空隙率部52の数が一つの構成としてもよい。即ち、捲回軸方向に離間した一対の低空隙率部51及びこれら両低空隙率部51間に配置された高空隙率部52の組数は、任意に変更してもよい。
【0067】
・上記各実施形態では、セパレータ5とともに捲回されることにより電極体10を構成する各電極シート35に対し、互いに異なる空隙率を有して電極体10の周方向となる各電極シート35の長さ方向に延在する第1領域R1及び第2領域R2を設定する。そして、電極体10の捲回軸方向となる各電極シート35の幅方向に離間した一対の第1領域R1間に、これらの両第1領域R1よりも空隙率の高い第2領域R2を配置することにより、電極体10の低空隙率部51及び高空隙率部52を形成することとした。しかし、これに限らず、正負の電極シート35の何れか一方、例えば、負極4を構成する各電極シート35Nにのみ、その第1領域R1及び第2領域R2を設定する構成としてもよい。
【0068】
・上記各実施形態では、集電体31上に積層された電極活物質層32の構造に基づいて、各電極シート35に空隙率の異なる第1領域R1及び第2領域R2を形成することにより、電極体10の低空隙率部51及び高空隙率部52を形成することとした。しかし、これに限らず、その他の方法により、電極体10に低空隙率部51及び高空隙率部52を形成しておよい。例えば、集電体31の構造に基づいて、第1領域R1及び第2領域R2を形成する構成としてもよい。そして、セパレータ5の構造に基づいて、電極体10の低空隙率部51及び高空隙率部52を形成する構成であってもよい。
【0069】
・上記各実施形態では、二次電池1は、リチウムイオン二次電池としての構成を有することとしたが、ケース20内の電極体10に電解液を含浸させる構成であれば、リチウムイオン電池以外の構成を有した二次電池に適用してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…二次電池
5…セパレータ
10…電極体
35…電極シート
51…低空隙率部
52…高空隙率部
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
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図10
図11
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図13
図14